伴侶(2/2)
2014.10.30.Thu.
<前話はこちら>
「あぁっ、も…とき、くんっ」
「あんまり声出さない方がいいですよ、ここの壁、薄いらしいから」
「はぁ、あ、あぁっ、でも…っ」
「悠さんのいいとこに当たってる?」
コクコクと頷く。彼が腰を動かすたび、男らしい肉厚な笠が僕の敏感な場所を擦っていくのだ。
「ここ?」
角度をつけて浅い挿入で僕を追い詰める。
「あぁっ、あ、や、やめ、基樹くん…っ」
「ここでしょ?」
ガクガクと震える僕を、楽しそうに基樹くんが見下ろしている。子供のように笑いながら、でもしっとり濡れた大人の目をして。僕はそんな彼の表情に、いつもゾクゾクと欲情していたのだ。
「はぁっ、あっ、基樹くん、もっと、して」
「いいの? いつも泣いちゃうのに」
「もう、泣かされてる」
「それもそうだね」
僕の手を握り、彼の体が伸びあがる。ゆっくりと長いストローク。浅い場所を擦られると涙腺が緩み、奥深い挿入が欲しくなる。最奥に届いたときは、その充足感から泣きだしそうになる。結局どちらであっても僕は泣かされてしまうのだ。
「悠さん、いま、誰のこと思ってるの?」
「君のこと…、僕の頭には基樹くんのことしかないよ、初めて会ったときから、ずっと」
「ほんと? 支配人じゃなくて?」
「僕はつまらなくて小さな人間だから、君がオーナーのお嬢さんと結婚するって聞いて動揺したんだ。二人が店に来た夜、一人に耐えられなくて支配人に縋り付いてしまった。こんなこと言い訳にもならないけど」
「あの日か…。俺は沙織さんと結婚なんかしないよ。悠さんに捨てられて自棄になって見合いしただけだから」
「でも、西浦くんが――」
……それも嘘だったのかもしれない。僕に新しい恋人がいると基樹くんに嘘をついたように、僕には基樹くんが結婚すると嘘を。
「西浦って…隣のガキ?」
目を細めて隣の壁を睨み付ける。
「あいつとも寝た?」
「寝てなんか…!」
「じゃあキスはした?」
「…し、した……」
「これだから悠さんを一人にしておけないんだよ」
と舌打ちする。
「ごめん…。メモには、なんて?」
「連絡くれって。俺の携帯の番号と一緒に」
「そうだったんだ。知らなくて、ごめんね」
「連絡こないから怖くて不安でたまらなかった。知らない男相手に嫉妬で怒り狂ってた。もうどこにも行かないで、悠さん」
悲痛なほど寂しげな目で言われて胸が締め付けられた。
「どこにも行かないよ。僕に飽きた君から消えろって言われても、捨てないでくれって泣いて縋り付く覚悟が出来たんだから」
「悠さんに飽きるわけないでしょ。悠さんがいてくれたら他に何もいらないって俺の言葉、忘れた?」
覚えている。忘れるわけがない。
「悠さんでなきゃ駄目なんだ」
「僕も、基樹くんでないと駄目だ」
彼の目が優しく細められる。無邪気なほどに安堵した笑みで、僕までつられて頬が緩む。
顔が近づいて唇が合わさる。角度をかえ、触れ合うだけのキスを何度も何度も繰り返した。離れていた分を取り戻すように。
「ずっとそばにいてくれる?」
「……いさせて欲しい」
「悠さん、愛してる」
「あんまり僕を、甘やかさないで」
肘をついて体を起こした。抜けないように腰を押さえつけながら基樹くんの胸を押し倒す。僕のやりたいことを察して基樹くんが背中を支えてくれた。
「初めてだから、うまくできるかわからないけど」
「顔、真っ赤だよ」
もう何を見られたっていい。
基樹くんの胸に手を置いて、ゆっくり腰を上げ下げした。ダイレクトに基樹くんの存在が伝わってくる。
僕の太ももの下に手を入れて、基樹くんが僕の体を揺さぶる。腰を動かし、下から突き上げてくる。
「あ…ん…っ、やっ…基樹くんは、そんな…動かないで……っ!」
「繋がってるところがよく見えるよ。すごくエロい」
「言わないで…っ、恥ず…かしい、から…っ…あっ、はぁ…んっ!」
「キスして」
乞われて基樹くんにキスした。抜けそうな感覚がして慌ててしまう。基樹くんの手が僕の双丘を掴んで押さえ込み、リズムをつけて腰を揺すった。
「ん…んっ…あ、あぁ…ぁ…っ」
結合した場所から、粘り気を増した大きな音が聞こえるようになってきた。
「あ…やばいかも…俺、イキそう…」
顔をしかめながら基樹くんが目を瞑る。半開きの唇から荒い呼吸が繰り返される。
基樹くんがイクときの顔を見下ろせるなんて新鮮だ。しかも僕が彼の射精をコントロールできるなんて初めてじゃないだろうか。
「イキたい? 基樹くん…っ」
「うん、イキたい…っ…つうか、もうイク…」
苦しそうな基樹くんの顔を見ているとゾクゾクとした興奮が込み上げてきた。腰に力を入れて、上下に動かす速度を上げた。
「んっ、はぁっ、あぁっ、あっ、はぁっ…イッて…! 基樹くん、僕の中でイッて…!」
「悠さん、そんなに動いたら…っ!」
僕の中でグッと基樹くんが大きく膨らんだ。直後、硬直しながら熱い精液を噴き上げる。それを体の奥で感じた。
「珍しく積極的だね」
はぁ、と息を吐き出して、基樹くんは前髪を掻きあげた。少しアンニュイな表情も色っぽくて格好いい。
基樹くんがいつもやるように、僕は基樹くんの乳首に吸い付いた。
「ちょっ…悠さん?」
「基樹くんに、もっと気持ちよくなってもらいたいんだ」
「充分気持ちいいよ」
「いつも基樹くんが僕にしてくれることを僕もしてあげたい」
「その気持ちだけでお釣りがくるよ」
僕の背中を抱きながら基樹くんが体を起こした。僕は簡単に引っくり返って、また基樹くんを下から見上げていた。
「次は俺の番だから」
キスされながらペニスをゆっくり扱かれた。基樹くんの唇が、僕の口からのど、鎖骨、胸へと音を立てながら移動していく。
「それ…くすぐったい…」
「悠さんの全部が愛しいんだ」
「僕も、基樹くんの全部が好きだよ」
僕のなかの基樹くんがピクと動いた。心なしが大きくなっている。
「ほんと言うとさ、悠さんが働きたいって言いだしたとき、反対したかったんだ。外に出て、悠さんが俺以外の奴を好きになったらどうしようって、他の誰かが悠さんを好きになって迫ったらどうしようって、すごく不安で、誰の目にも触れさせたくなかった。物わかりのいい振りしてOKしたけど、悠さんがいなくなってすぐ後悔した。我が儘になっても、やっぱり反対しとけばよかったって」
だんだん口調が強いものになっていた。結果として、基樹くんの不安は的中してしまったことになる。
「俺、自分がこんなに嫉妬深いなんて、悠さんに会うまで知らなかったよ」
苦しそうに心情を吐露する。そんな思いをさせてしまったのは僕のせいだ。
「嫉妬するのは僕も同じだよ。基樹くんの会社の若い子たちに嫉妬してた。君と一緒に仕事が出来る別れた妻にすら、嫉妬しているんだから」
「部長に? だから俺、ゲイだって」
「わかってても嫉妬しちゃうんだよ」
基樹くんは目をぱちくりさせた。また僕の中で基樹くんが育つ。
「そういえば沙織さんにも嫉妬してくれたんだよね。そういうの表に出してくれないから、ちょっと嬉しいかも」
「――――っ…あ…!」
また…っ!
僕の中が基樹くんでいっぱいになっていた。完全に復活したものが僕の弱いところを圧迫し始める。少し力を入れただけで背筋に快感が走った。
熱く火照った僕の顔を見ながら、基樹くんがニヤニヤと笑う。
「さっきからキュウキュウに締め付けてくるけど、それっておねだり?」
「そんなんじゃ……!」
「違うの?」
「…っ…ち…ちがわない…」
「悠さん、可愛いすぎ」
こんなおじさん、可愛くなんかないのに。
僕の顔の横に手をついた基樹くんが、キスしながらゆっくり腰を動かし始めた。緩やかな抽挿。じわじわと体全体に火が広がっていくようだ。
「ん、ん…っ…、ハァ…ンッ…あ…ぁ…」
「悠さんの中、気持ちいい。ずっとここにいたい」
「僕、も…っ、気持ちいい…、基樹くんに、ずっと中にいてほしい…」
「その言葉だけでイキそう…勿体ないから我慢するけど」
「なに、言ってっ…ンッ…」
「悠さんがお爺さんになるまで、毎日、ずっと抱く。俺の体なしじゃいられないくらいに」
「あっ、くぅ…ん…っ」
いつの間にか僕も腰を揺らしていた。それに気づいて基樹くんの動きが早まる。
「気持ちいい? 悠さん」
「は、あっ…気持ち、いい…、基樹くん…あぁんっ…僕また…」
「イッちゃいそう?」
「う、ンッ…いっ…ちゃいそう…っ!」
「朝までまだ時間があるよ。何度だってイッて、悠さん」
「あぁっ…あっ、や…だっ…いや、あっ、そんなに近くで見ないで…っ」
「どうして? イクときの悠さんの顔、すごくエロくて好きなのに」
基樹くんはもっとよく見えるように僕の前髪を掻きあげた。触れ合うぐらい目の前から、喘いで身をくねらせる僕を見つめる。
「もう…あ、出る…んっ、基樹くん、いや、あぁっ…見ないで…っ、あっ、あ…アァン!!」
間近で見つめられる羞恥のなか、僕は基樹くんに扱かれながら達した。
「二回目だけど結構出たね」
敏感な先に指を当て、クルクルと円を描いたあとペロッと舐めとった。
「久し振りの悠さんの味」
恥ずかしくて顔を赤くする僕を見て笑う。
「体中、ベトベト。あとで一緒にお風呂入ろう」
「ここのお風呂、狭くて…近くに銭湯があるんだ」
「いいね。でもそこでしたくなって立たせちゃったら困るな。あ、立たなくなるまでやればいいのか」
「ばかっ」
クスリと笑いあいながら、僕たちはまたキスをした。
※※※
仕事に遅れさせるわけにはいかないので、朝になると基樹くんを風呂に押しこみ、その間に僕は簡単な朝食を作った。
基樹くんのためにご飯を作るのは久しぶりで嬉しくなる。彼と離れて暮らすなんてもう考えられない。
お風呂から出てきた基樹くんも同じ気持ちになってくれたのか、朝食をとりながら、今晩には二人のマンションに帰って来ること、この部屋はすぐ解約の手続きをして、荷物を取りに来る以外では出入りしないことなどを話し合った。
「今の仕事、続けたかったら続けていいよ」
味噌汁を飲み干して基樹くんは言った。僕を閉じ込めたいとまで言っていたのに。強がっているのは僕を見ない伏せられた目でわかる。
「ううん、支配人にはもう辞めるって言ってあるんだ」
「未練はない?」
「ないよ」
未練は本当にない。ただ、
「今月いっぱいは働かせてほしい。急に辞めるのは店のみんなに悪いから」
そうだね、と基樹くんの理解をもらい、僕は残りの数週間を勤め上げた。
諸井さんにはすべてを話した。
「こんなことならあなたを皿洗いのままにしておくべきでしたね」
本心の見えない笑顔で握手を求められ、しなやかな手を握り返した。心が折れていた状態ではあったが、一時的にでも、少し惹かれていたのは事実だ。この包容力に縋り付き、救われていた。
「ありがとうございました」
礼を言って、店をあとにした。
自転車に跨った。
僕の向かう先は決まっている。もう迷うことはないだろう。この先なにがあっても、基樹くんのいる場所が僕の帰る場所なのだから。
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「あぁっ、も…とき、くんっ」
「あんまり声出さない方がいいですよ、ここの壁、薄いらしいから」
「はぁ、あ、あぁっ、でも…っ」
「悠さんのいいとこに当たってる?」
コクコクと頷く。彼が腰を動かすたび、男らしい肉厚な笠が僕の敏感な場所を擦っていくのだ。
「ここ?」
角度をつけて浅い挿入で僕を追い詰める。
「あぁっ、あ、や、やめ、基樹くん…っ」
「ここでしょ?」
ガクガクと震える僕を、楽しそうに基樹くんが見下ろしている。子供のように笑いながら、でもしっとり濡れた大人の目をして。僕はそんな彼の表情に、いつもゾクゾクと欲情していたのだ。
「はぁっ、あっ、基樹くん、もっと、して」
「いいの? いつも泣いちゃうのに」
「もう、泣かされてる」
「それもそうだね」
僕の手を握り、彼の体が伸びあがる。ゆっくりと長いストローク。浅い場所を擦られると涙腺が緩み、奥深い挿入が欲しくなる。最奥に届いたときは、その充足感から泣きだしそうになる。結局どちらであっても僕は泣かされてしまうのだ。
「悠さん、いま、誰のこと思ってるの?」
「君のこと…、僕の頭には基樹くんのことしかないよ、初めて会ったときから、ずっと」
「ほんと? 支配人じゃなくて?」
「僕はつまらなくて小さな人間だから、君がオーナーのお嬢さんと結婚するって聞いて動揺したんだ。二人が店に来た夜、一人に耐えられなくて支配人に縋り付いてしまった。こんなこと言い訳にもならないけど」
「あの日か…。俺は沙織さんと結婚なんかしないよ。悠さんに捨てられて自棄になって見合いしただけだから」
「でも、西浦くんが――」
……それも嘘だったのかもしれない。僕に新しい恋人がいると基樹くんに嘘をついたように、僕には基樹くんが結婚すると嘘を。
「西浦って…隣のガキ?」
目を細めて隣の壁を睨み付ける。
「あいつとも寝た?」
「寝てなんか…!」
「じゃあキスはした?」
「…し、した……」
「これだから悠さんを一人にしておけないんだよ」
と舌打ちする。
「ごめん…。メモには、なんて?」
「連絡くれって。俺の携帯の番号と一緒に」
「そうだったんだ。知らなくて、ごめんね」
「連絡こないから怖くて不安でたまらなかった。知らない男相手に嫉妬で怒り狂ってた。もうどこにも行かないで、悠さん」
悲痛なほど寂しげな目で言われて胸が締め付けられた。
「どこにも行かないよ。僕に飽きた君から消えろって言われても、捨てないでくれって泣いて縋り付く覚悟が出来たんだから」
「悠さんに飽きるわけないでしょ。悠さんがいてくれたら他に何もいらないって俺の言葉、忘れた?」
覚えている。忘れるわけがない。
「悠さんでなきゃ駄目なんだ」
「僕も、基樹くんでないと駄目だ」
彼の目が優しく細められる。無邪気なほどに安堵した笑みで、僕までつられて頬が緩む。
顔が近づいて唇が合わさる。角度をかえ、触れ合うだけのキスを何度も何度も繰り返した。離れていた分を取り戻すように。
「ずっとそばにいてくれる?」
「……いさせて欲しい」
「悠さん、愛してる」
「あんまり僕を、甘やかさないで」
肘をついて体を起こした。抜けないように腰を押さえつけながら基樹くんの胸を押し倒す。僕のやりたいことを察して基樹くんが背中を支えてくれた。
「初めてだから、うまくできるかわからないけど」
「顔、真っ赤だよ」
もう何を見られたっていい。
基樹くんの胸に手を置いて、ゆっくり腰を上げ下げした。ダイレクトに基樹くんの存在が伝わってくる。
僕の太ももの下に手を入れて、基樹くんが僕の体を揺さぶる。腰を動かし、下から突き上げてくる。
「あ…ん…っ、やっ…基樹くんは、そんな…動かないで……っ!」
「繋がってるところがよく見えるよ。すごくエロい」
「言わないで…っ、恥ず…かしい、から…っ…あっ、はぁ…んっ!」
「キスして」
乞われて基樹くんにキスした。抜けそうな感覚がして慌ててしまう。基樹くんの手が僕の双丘を掴んで押さえ込み、リズムをつけて腰を揺すった。
「ん…んっ…あ、あぁ…ぁ…っ」
結合した場所から、粘り気を増した大きな音が聞こえるようになってきた。
「あ…やばいかも…俺、イキそう…」
顔をしかめながら基樹くんが目を瞑る。半開きの唇から荒い呼吸が繰り返される。
基樹くんがイクときの顔を見下ろせるなんて新鮮だ。しかも僕が彼の射精をコントロールできるなんて初めてじゃないだろうか。
「イキたい? 基樹くん…っ」
「うん、イキたい…っ…つうか、もうイク…」
苦しそうな基樹くんの顔を見ているとゾクゾクとした興奮が込み上げてきた。腰に力を入れて、上下に動かす速度を上げた。
「んっ、はぁっ、あぁっ、あっ、はぁっ…イッて…! 基樹くん、僕の中でイッて…!」
「悠さん、そんなに動いたら…っ!」
僕の中でグッと基樹くんが大きく膨らんだ。直後、硬直しながら熱い精液を噴き上げる。それを体の奥で感じた。
「珍しく積極的だね」
はぁ、と息を吐き出して、基樹くんは前髪を掻きあげた。少しアンニュイな表情も色っぽくて格好いい。
基樹くんがいつもやるように、僕は基樹くんの乳首に吸い付いた。
「ちょっ…悠さん?」
「基樹くんに、もっと気持ちよくなってもらいたいんだ」
「充分気持ちいいよ」
「いつも基樹くんが僕にしてくれることを僕もしてあげたい」
「その気持ちだけでお釣りがくるよ」
僕の背中を抱きながら基樹くんが体を起こした。僕は簡単に引っくり返って、また基樹くんを下から見上げていた。
「次は俺の番だから」
キスされながらペニスをゆっくり扱かれた。基樹くんの唇が、僕の口からのど、鎖骨、胸へと音を立てながら移動していく。
「それ…くすぐったい…」
「悠さんの全部が愛しいんだ」
「僕も、基樹くんの全部が好きだよ」
僕のなかの基樹くんがピクと動いた。心なしが大きくなっている。
「ほんと言うとさ、悠さんが働きたいって言いだしたとき、反対したかったんだ。外に出て、悠さんが俺以外の奴を好きになったらどうしようって、他の誰かが悠さんを好きになって迫ったらどうしようって、すごく不安で、誰の目にも触れさせたくなかった。物わかりのいい振りしてOKしたけど、悠さんがいなくなってすぐ後悔した。我が儘になっても、やっぱり反対しとけばよかったって」
だんだん口調が強いものになっていた。結果として、基樹くんの不安は的中してしまったことになる。
「俺、自分がこんなに嫉妬深いなんて、悠さんに会うまで知らなかったよ」
苦しそうに心情を吐露する。そんな思いをさせてしまったのは僕のせいだ。
「嫉妬するのは僕も同じだよ。基樹くんの会社の若い子たちに嫉妬してた。君と一緒に仕事が出来る別れた妻にすら、嫉妬しているんだから」
「部長に? だから俺、ゲイだって」
「わかってても嫉妬しちゃうんだよ」
基樹くんは目をぱちくりさせた。また僕の中で基樹くんが育つ。
「そういえば沙織さんにも嫉妬してくれたんだよね。そういうの表に出してくれないから、ちょっと嬉しいかも」
「――――っ…あ…!」
また…っ!
僕の中が基樹くんでいっぱいになっていた。完全に復活したものが僕の弱いところを圧迫し始める。少し力を入れただけで背筋に快感が走った。
熱く火照った僕の顔を見ながら、基樹くんがニヤニヤと笑う。
「さっきからキュウキュウに締め付けてくるけど、それっておねだり?」
「そんなんじゃ……!」
「違うの?」
「…っ…ち…ちがわない…」
「悠さん、可愛いすぎ」
こんなおじさん、可愛くなんかないのに。
僕の顔の横に手をついた基樹くんが、キスしながらゆっくり腰を動かし始めた。緩やかな抽挿。じわじわと体全体に火が広がっていくようだ。
「ん、ん…っ…、ハァ…ンッ…あ…ぁ…」
「悠さんの中、気持ちいい。ずっとここにいたい」
「僕、も…っ、気持ちいい…、基樹くんに、ずっと中にいてほしい…」
「その言葉だけでイキそう…勿体ないから我慢するけど」
「なに、言ってっ…ンッ…」
「悠さんがお爺さんになるまで、毎日、ずっと抱く。俺の体なしじゃいられないくらいに」
「あっ、くぅ…ん…っ」
いつの間にか僕も腰を揺らしていた。それに気づいて基樹くんの動きが早まる。
「気持ちいい? 悠さん」
「は、あっ…気持ち、いい…、基樹くん…あぁんっ…僕また…」
「イッちゃいそう?」
「う、ンッ…いっ…ちゃいそう…っ!」
「朝までまだ時間があるよ。何度だってイッて、悠さん」
「あぁっ…あっ、や…だっ…いや、あっ、そんなに近くで見ないで…っ」
「どうして? イクときの悠さんの顔、すごくエロくて好きなのに」
基樹くんはもっとよく見えるように僕の前髪を掻きあげた。触れ合うぐらい目の前から、喘いで身をくねらせる僕を見つめる。
「もう…あ、出る…んっ、基樹くん、いや、あぁっ…見ないで…っ、あっ、あ…アァン!!」
間近で見つめられる羞恥のなか、僕は基樹くんに扱かれながら達した。
「二回目だけど結構出たね」
敏感な先に指を当て、クルクルと円を描いたあとペロッと舐めとった。
「久し振りの悠さんの味」
恥ずかしくて顔を赤くする僕を見て笑う。
「体中、ベトベト。あとで一緒にお風呂入ろう」
「ここのお風呂、狭くて…近くに銭湯があるんだ」
「いいね。でもそこでしたくなって立たせちゃったら困るな。あ、立たなくなるまでやればいいのか」
「ばかっ」
クスリと笑いあいながら、僕たちはまたキスをした。
※※※
仕事に遅れさせるわけにはいかないので、朝になると基樹くんを風呂に押しこみ、その間に僕は簡単な朝食を作った。
基樹くんのためにご飯を作るのは久しぶりで嬉しくなる。彼と離れて暮らすなんてもう考えられない。
お風呂から出てきた基樹くんも同じ気持ちになってくれたのか、朝食をとりながら、今晩には二人のマンションに帰って来ること、この部屋はすぐ解約の手続きをして、荷物を取りに来る以外では出入りしないことなどを話し合った。
「今の仕事、続けたかったら続けていいよ」
味噌汁を飲み干して基樹くんは言った。僕を閉じ込めたいとまで言っていたのに。強がっているのは僕を見ない伏せられた目でわかる。
「ううん、支配人にはもう辞めるって言ってあるんだ」
「未練はない?」
「ないよ」
未練は本当にない。ただ、
「今月いっぱいは働かせてほしい。急に辞めるのは店のみんなに悪いから」
そうだね、と基樹くんの理解をもらい、僕は残りの数週間を勤め上げた。
諸井さんにはすべてを話した。
「こんなことならあなたを皿洗いのままにしておくべきでしたね」
本心の見えない笑顔で握手を求められ、しなやかな手を握り返した。心が折れていた状態ではあったが、一時的にでも、少し惹かれていたのは事実だ。この包容力に縋り付き、救われていた。
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何日か前に書きあがってたやつが気に入らなくて書き直したら間があいてしまいました。
もう何がなんだかわからなくなって全部拾えてないかもしれませんが脳内補完してくれると幸せ最高ありがとうマジで!です。
しかしまぁ…風呂敷畳むのほんとに下手糞だなって絶望しました。気を取り直して明日、新しいの更新しまーす!
初めてコメントさせていただきます。みゃおと申します。
こちらにはずっと前からお邪魔させていただいていて、作品は全部読ませていただいています。中には正直苦手な作品もありますが、でも必ず読んでます(笑)
基本ハピエンが好きなもので(^^♪
特に旦那さんシリーズは大好きで、元上司のあたりから「悠さん、基樹くんの2人はどうなっちゃうの? このまま終わるの? 絶対に別れないで~!!」と願っていたので、今日全て元鞘に戻ったのが本当に嬉しいです💖
しかも、ヤキモキしていた分、一気に2話もアップしてくださったので、滅茶苦茶嬉しすぎです~❤ ありがとうございます!!
本当に桜庭は憎たらしい!!
あいつさえ余計な事をしなければと思いましたが、どこかしら遠慮があった2人が、雨降って地固まるためには必要悪だったのかもと、やっと思えています。
悠さんと基樹くんからだけでなく、私からもパンチを!! ドカッ!!!
それと、支配人のようなキャラが大好きなので、この方でお話を書いていただけると、また嬉しいです。幸せになっていただきたい💕
それにしても悠さんは、若いイケメンの基樹くんをはじめ、同年代や年上やおまけに高校生まで、幅広い年代の男を吸い寄せてしまうなんて、なんて魔性の持ち主なんでしょう。
基樹くんの心配や心労が絶えないのが、理解できるような・・・。
この2人の今後の幸せなSSもぜひ読みたいです。
エロ満載で🎶
また、お邪魔させていただきますね。
ありがとうございます❤
基樹くん良かったね(_´Д`)ノ~~
途中モヤモヤしちゃいましたが、楽しかったです(@゜▽゜@)
ありがとうございました(≧ω≦)
まさかの支配人でリクエスト!ありがとうございます。結局思い届かず逃げられたのは気の毒なので、ちょっと支配人で話を考えてみます!
旦那さんはモテ期到来からの総受けだったので、立橋の影が薄くなり心労が募る一方的な展開でしたが、今後は変な虫がつかないよう牽制しつつ、独り占めしてイチャイチャすればいいと思いますw
そのへんのSSも考えてみたいです。
オテクさん
やっと完結しました^^
昼ドラ風にしたら途中は楽しかったんですけど結末が…風呂敷畳むのが説明ばかりになってもう大変でした。ビッチ化途中はほんと楽しかったんですけど…w
けっこう長くなったんですけど、読んでくださってありがとうございました!
楽しんで頂けて良かったです!一番長い話になったので途中で飽きられてしまうんではと不安でしたが、読んでもらえて嬉しいです!
こちらこそありがとうございます!
一瞬「西浦って誰だったっけ」と私の中でもう過去の人になって記憶が薄れてきていた西浦くんに注目してくださってありがとうございます!
書いてるときは私も彼に興味があったのでスピンオフ考えてみます!
二人が幸せになって、本当に嬉しいです。胸きゅんで見てました。 私も支配人さんの幸せss見たいです。よろしくお願いします。
コメありがとうございます!支配人へのリクエストありがとうございます。意外な人気w 二十歳ぐらいのときに書いていた小説の登場人物が支配人のモデルというか、再利用だったりするんですよね。その時も当て馬だったという。ちゃんとパートナーを作ってやりたいと思います!