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すばらしい日々(1/3)

2014.09.03.Wed.
<前話「大迷惑@一角獣」はこちら>

 連休に有休を合わせた長期休暇を取ってこちらへやってくるという嫁の計画を聞かされたとき、俺は英一のケツにちんこを突っ込んだままだった。

「えっ、こっちくんの?!」

 驚いて言うと、電話の向こうで嫁は「嫌なの」と不機嫌そうに言い、英一は気まずそうな顔で腰をずらして体を起こした。ズルリと俺のちんこが抜け出る。萎みかけたそれがゆっくり頭を垂らしていく。

「嫌じゃないって、ちょっとびっくりしただけ。だって明美、こっち来るのすごく嫌がってたから」
『嫌がってたわけじゃないよ。買ったばかりの家を空けるのが嫌だったの。人に貸すなんてもってのほかだし、私も仕事あったから残っただけだもん』

 その話はもういい。異動が決まったときに散々話し合った。

「で、いつくんの?」
『明日だよぉ!』

 驚いたでしょ、うふふっ。と嫁の笑い声を聞きながら俺は頭が真っ白になった。顔面蒼白になりながら英一を見ていたら、なにか察したらしく、英一はそそくさと服を身に着け始めた。
 我に返り、腕を掴んでとめた。声に出さず「でも」と英一が口を動かす。

「明日の何時?新幹線?飛行機?…わかった、じゃあ明日、空港に迎えに行くから。うん…気を付けて来いよ。…そんなことないって。楽しみにしてるって。うん…わかってるって。じゃあ、明日」
「奥さん、明日来るみたいですね」

 服を着た英一が三角座りで俺に言う。俺は力なく頷いた。

「はぁ…あんなに来るの嫌がってたくせに、明日は観光に連れてけってさ」
「仲いいんですね」
「そりゃ夫婦だからな…って俺、無神経?」
「別に。最初から田中さんが既婚者なのは知ってたし」

 と床に「の」の字を書いている。
 一年半前、ゲイのハッテンバと知らずに公園で飲んでいた俺はそこで英一に出会った。出会ったその日のうちに勢いだけで肉体関係を持った。それ以来、セフレのような友人のような状態を続けていた。
 俺は女が好きだし、今だって性欲がたまったときはエロDVDの女の体を見ながら抜いている。それとは別に英一のことも抱きたくなる。無性に一人が嫌で会いたくなる。 
 英一に連絡を取り、都合が合えば部屋に呼んだ。英一のほうから連絡を寄こすことは滅多にないが、たまにふらりとやってくることがあった。そんな時は二人の気分次第でセックスしたり、テレビを見て過ごしたりした。

 好きだの嫌いだの言ったことはないが、肌を合わせている以上、憎からず思っているはずだ。明日からしばらく嫁がいるから連絡は遠慮してくれ、と言うのはさすがにちょっと躊躇してしまう。

「続き…どうする?」
「明日奥さん来るんでしょ。においが残ってたらやばいじゃないですか。今日はもう帰ります」
「なんか悪いな」
「何も悪くないですよ。田中さんの夫婦仲壊したくないし。俺も責任持てないし」

 鞄を背負って英一は部屋を出て行った。あまりにあっさり引き下がったので、身勝手にも俺の方が少し腹を立てたくらいだった。


 翌日、嫁の明美が本当にやってきた。久しぶりに見た嫁はなんだか別人のように見えた。それを口にすると「あなたのためにおしゃれしてきたのに」と口を尖らせる。確かに付き合い始めの頃のように若々しく見えた。
 観光するあいだ嫁が腕を組んできた。妙に気恥ずかしい。逃げようとすると、今度は手を繋いできた。何年振りかの恋人繋ぎだ。

 外食し、部屋に戻ると嫁が抱き付いてきた。「ずっと会いたかった」と俺に口づけしてくる。久しぶりの嫁の体。やはり見ず知らずの他人に思えて緊張した。嫁は興奮しているようで、早く、と俺を急かしてくる。風呂も入らずセックスした。
 あらゆる場面で頭に英一がちらついた。英一のツボを心得たフェラに比べて嫁は下手糞だった。嫁を貫きながら、英一を思い出していた。一回で充分だと思ったのに、再度求められて義務的に立たせた。

 嫁も家に残り、一人寂しい思いをしていたのだ。だが俺には英一がいる。その後ろめたさから嫁の要求にすべて応えた。
 帰るまでの五日間、毎日セックスした。仕事終わりで疲れているときは正直寝かせてくれと思ったが、温かい食事を用意して待っててくれた妻を思うと断れなかった。

 だから嫁が土産を手に帰ったときはほっとした。その安堵を申し訳なく思いつつ、空港帰りに俺は英一に連絡を取っていた。


「奥さんがいなくなった途端僕を呼び出すなんて悪い人ですね」
「自分でもそう思う。でもお前に会いたくて仕方なかった」

 英一に抱き付き、懐かしいにおいを吸い込む。雄の匂い。柔らかくない体。なのにたまらなく欲情する。
 英一の服を剥ぎ取り、半立ちのちんぽをしゃぶる。一年前は自分が男のちんぽを進んでしゃぶる日がくるなんて想像したこともなかった。
 オイルで穴を解し、ゴムをはめて英一の中に入った。

「あ、あぁ…今日はなんだか…いつもより、大きい…?」
「そうか?久しぶりだからお前の穴がきつくなったんだろ」

 英一にキスした。音を立てて舌を絡めながら英一のちんぽを扱いた。英一の内部が痙攣するように俺を締め付ける。

「…っ…先に一回出していいか」
「今日は早いですね」
「お前が良過ぎるんだよ」

 腰を振った。英一は顎を持ち上げて咽喉を晒した。
 射精後、すぐまたエレクトした。新しいゴムをつけようとしたら止められた。

「そのままで」
「いいのか」
「田中さんの、中に欲しい」

 今度はバックから英一と繋がった。俺が突きあげるたび英一の背中がしなる。引き締まった体が俺の動きに合わせてビクビク反応する。

「はぁっ…んっ、あぁっ、あっ…、いいっ、気持ちいいっ…!」

 シーツに顔を押し付けて英一が自分のちんぽを扱いていた。ピストン運動を激しくする。

「あっ、あぁっ、あっ、あんっ、イク、イキそう、田中さん、イク…っ!」
「イケよ。俺はあと最低二回はイケる。お前もいまのうちに一回イッとけ」
「あぁっ!あんっ、そんなっ…激し、く…されたら…っ、あっ、やだっ、田中さ…っ、んっ、あっ、あぁっ、ああぁぁっ…!!」

 英一が果てたのを見下ろしながら俺は腰を振り続けた。
 嫁とさんざんセックスしてきた。昨夜もした。なのに英一に会ったとたん性欲のスイッチが入ってしまった。しかもぶっ壊れたかのように無尽蔵に湧き上がってくる。まるで英一と会っていなかった分を取り戻そうとしているみたいだった。

「もしかして俺、お前のこと好きなのかも」
「え…嘘…」

 驚いて英一が振り返る。

「迷惑か?」
「迷惑じゃ、ない…嬉しいです…」
「嫁よりお前の体のほうに興奮する。お前の顔見た途端、めちゃくちゃセックスしたくなった。嫁としてても、なんか…風俗行ってるみたいな感じだったんだ」
「俺は、違う…?」
「あぁ、お前とはちゃんとセックスしてるって感じがする。一回出してもまだイケる。お前にとって俺はただのセフレかもしれないけど」
「そんなこと、ないです…っ、俺は田中さんだけ、田中さんしか、嫌…」

 全身、ぞわりと総毛立った。目の前の引き締まった英一の体がたまらなくエロく見える。細い腰回り、適度な筋肉、汗で湿った肌、齧り付きたくなる項。こいつを独占したい、誰にもやりたくない。
 英一の腰をつかんで突き上げる。パンパンと音が鳴る。粘り気のある水音も弾ける。

「あっ、アァンッ、あぁっ、アッ、もっと、して、もっと…!」
「はぁ…ぁ…あ、イクぞ、英一」
「中に…っ、田中さん、俺の中に…っ!」
「わかってる、中出ししてほしいんだろ。お前の腹ん中、俺の精子でいっぱいにしてやる」
「いっぱいにして…っ、田中さんっ、俺を田中さんで…あっ、あぁっ、んっ」
「英一、好きだぞ、英一…!」
「あぁっ、あんっ、俺も…っ、田中さん、好き…好きっ…!」

 激しく腰を打ち付けながら、英一の中へ吐き出した。

※ ※ ※

「なんだか締りのない顔」

 呆れたように言ったのは、数少ないゲイ友、タカ君。タカ君には同い年の恋人がいる。ラブラブなブログを読んでいたらつい「羨ましいです」と書き込んだのをきっかけに付き合いが始まった。
 今日は俺の大学の卒業記念にプレゼントを渡したいと喫茶店に呼び出された。

「好きになったセフレに振られそうってすっごい落ち込んで電話してきたの、つい2、3ヶ月月前じゃなかったっけ?」
「それがあのあと、好きだって言ってもらえたんだ」

 田中さんの奥さんが来るとわかったとき、嫌な予感がした。きっと罪の意識から俺との付き合はやめようと言いだすだろうと思っていた。田中さんはもともとノンケで、ただ寂しさと気持ちよさからズルズル続いているだけだと思っていたから。
 久し振りに会いに行ったときは怖くて仕方なかった。部屋に入るなり田中さんが抱き付いてきてセックスになだれ込んでも、終わったらこれで最後と言われるのだと覚悟していた。なのに「好きだぞ、英一…!」なんて言われるなんて…。

 それからというもの俺たちはハイペースで逢瀬を重ねて恋人同士のようにイチャイチャした。目を合わせればキスしたし、気分が乗ればセックスした。田中さんは離婚を口にした。もう少し考えてみて、と俺は言ったが、本心では早く別れて欲しいと願っていた。
 この前会ったとき、田中さんは結婚指輪を外していた。もう必要ない、と。

「思い出し笑いやめてー、キモイー、ニヤけすぎー」
「ごめん。だって、田中さんは俺のことただのセフレとしか思ってないと思ってたから」
「だから言ったじゃん。さっさと好きだって告白しちゃえばいいって」
「奥さんいるのに無理だよ。迷惑がられると思ってたし、それで気まずくなって会えなくなったら嫌だし」
「一目会ったその日から恋の花咲くこともある、ってねー」
「なにそれ」
「ごめんねー、おじさんでー」

 タカ君は田中さんと同じ、30歳だ。おじさんなんて思ったことない。
 携帯電話の着信音が聞こえてきた。

「あ、田中さんだ」
「噂をすればってやつ?」

 通話ボタンを押して耳に当てる。外からかけているのか、背後に雑音。

『あ、英一、あの、俺』
「どうしました?」

 受話口からは雑音ばかりが聞こえてくる。田中さんはずっと黙ったまま。もしかして電波が悪いのかな。もう一度声をかけようと息を吸い込んだとき、

『悪い。もうお前とは会えない。別れてくれ』
「えっ…どうしたんですか…?僕、何か気に障ることしました?」
『お前は悪くない。俺が全部悪いんだ。だからもう来ないでくれ』

 最後は投げつけるように言うと、田中さんは通話を切ってしまった。
 突然切り出された別れ。好きだと、妻と離婚すると言っていたのはつい先日のことなのに。指輪の外れたあとを罪悪感と幸福感を味わいながら眺めていたのはほんの数日前なのに。

「ちょっと、どうした?」

 携帯を耳に当てたまま呆然としている俺の顔の前でタカ君が手を振る。ぼんやりとタカ君に焦点を合わせた。

「別れようって。もう俺とは会えないって、田中さんが……」
「えっ」

 タカ君も絶句する。俺は泣き出しそうになるのを堪えることで精一杯だった。


スイッチON!

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