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好きと言って(4/4)

2014.09.01.Mon.
<前話はこちら>

 薬が切れてから、さりげなく沖田を避けてきたが、いまは土屋が沖田を追い掛け回していた。
 話しかけようと近づくと沖田はすっと離れ、友人たちの輪に加わった。話しかける隙を与えなかった。
 移動教室も別々になった。お昼も誘われなくなった。沖田がいないと教室に居場所がない。それどころか、沖田の庇護から土屋が外れたと見るや否や、すぐまた便所飯くんと呼ばれ、悪意のあるからかいの的になった。
 前は鋭い目つきで監視していた沖田は何も言わない。見てもいない。顔を背けて土屋と目も合わせてくれない。
 勇気を出してお昼を一緒に食べようと声をかけてみた。

「便所飯、調子乗んなよ。俺らとお前は身分が違うの。お前は身をわきまえて便所でメシ食ってろよ」

 以前、土屋の弁当から卵焼きを取ろうとして沖田に手を叩かれた男だ。その時のことを根に持っているのか、ことさらねちっこく土屋に絡んでくる。

「お前は黙ってろ」

 沖田の一言でそいつはピタリと口を閉じた。不満そうに土屋を睨む。

「おい、土屋、顔貸せ」
「あ、うん」

 沖田のあとについて教室を出た。
 何も言わない沖田の背中を不思議な思いで見つめながら歩いた。前はあんなに怖くて苦手で目も合わせたくない相手だったのに、いまはこの至近距離でも平気だ。振り向いて話しかけてくれないかとさえ思う。

 沖田は渡り廊下の手前にある自販機の前で立ち止まった。そこで缶ジュースを一本買う。ピーチソーダだった。沖田に飲むかと勧められて一口もらった。思えばこれがすべての始まりだった。沖田にハラハラしっぱなしで、いつしか新田が好きだったことなど忘れていた。

「もう俺に関わるな」

 ポツリと沖田が言った。

「俺のこと好きなんじゃないの?嫌いになった?」

 目を伏せたまま沖田はフッと笑った。

「すげえよ、お前。精神的にボコボコだよ俺」
「なんで?」

 視線をあげた沖田が静かに睨んでくる。怒っている。

「お互い嫌な思いすんのヤだろ。だからもう話しかけてくんな」
「俺は別に嫌な思いなんかしてないけど」

 クワッと一瞬、沖田の目が吊り上がった。また怒らせたようだが、土屋にはなにがいけないのかかまるでわからなかった。

「…いい加減、人の気持ち弄ぶのはやめろよ。俺がやなんだよ。もうお前のツラ見たくねえんだよ。お前を振り回したのは謝る。だからもう俺の視界から消えろ、消えてくれ、頼むから」

 沖田は疲れた顔で億劫そうに言葉を吐き出した。
 どうして終わらせようとするのだろう。こっちの気持ちはお構いなしで理不尽だ、と土屋は思った。

「俺のこと好きになってくれたんじゃないの?」
「だから…!そういう思わせぶりなのやめろって言ってんだよ!」
「そんなつもりじゃ…俺はただ、沖田くんが俺のこと好きなのか確かめたくて…」
「もう好きじゃねえよ、嫌いだよ、自惚れんなクソ野郎が」

 そんなことを言いながら沖田は泣きそうな顔だった。なぜ怒っているのかはわからないが、自分が沖田を悲しませていることはわかった。

「ごめん、沖田くん」

 沖田の腕を掴んだ。びくっと大きく震える。ピーチソーダが零れて沖田の手を濡らした。土屋はその手を舐めた。

「…っ!な、に、すんだよ…!!」
「俺も好きだって言ったら、また俺のこと、好きになってくれる?」
「なっ…なに言って…お前、やっぱおかしいよ、異常だ、病院行けよ」

 言葉は辛辣でも沖田の動揺が掴んだ手から伝わってくる。
 鼓動が大きくなる。二人の息遣いが交わる。

「俺も、沖田くんのこと、好きになったんだけど…」

 沖田の顔が歪む。

「沖田くんは?俺のこと、好き?」
「……っかじゃねえの…お前…」
「ほんとの気持ち、教えてよ。好き?嫌い?」

 土屋にとって大事な質問だった。勘違いや嘘であっては困るのだ。だから真剣に問いかけた。
 好きと言って。好きだと言って。願う気持ちで沖田を見つめた。
 真摯な眼差しに、沖田は居心地悪そうに眼を泳がせた。そして長く長く躊躇ったあと、コクリと頷いた。

「すき……」


 二人きりになれる場所を探したらまた体育倉庫に来ていた。薄暗く黴臭い場所で抱き合う。自分が薬など使わなくても沖田相手に興奮し勃たせることができるのは今までの行為で証明済みだが、いわば素面状態の沖田が本当に自分と同じ反応を示すか不安だった。
 キスしながら股間をまさぐった。硬く熱いものが手に当たる。

「すごい…本当に勃起してる…」
「ばっ…か、てめぇだってそうだろ」

 顔を真っ赤にさせながら沖田も股間に手を伸ばしてくる。性急な動作でズボンをずりおろすと、飛び出したペニスを握った。
 お互いのものを扱きあった。沖田に頭髪を掴まれて乱暴なキスを受ける。吐息が熱い。唾液が零れる。土屋も夢中で吸いながら沖田の胸に手を這わした。
 小さな乳首を指で弾いたり、強弱をつけて摘まむと、沖田の体がピクンと跳ねる。

「俺に触られて嫌じゃない?」
「や、なわけ、ねえだろ…!」

 掠れた声で沖田が答える。体もピンクに色づいて色っぽい。
 沖田の服を脱がせて胸に吸い付いた。

「はぁっ…あっ…んっ…んん…」
「気持ちいい?」
「…そんなの、いちいち聞くな…」

 土屋の舌と手の動きに、沖田が反応を見せる。喘ぎ声を漏らす。惚れ薬を使わずに。

「ほんとに俺のこと、好きなんだね」

 ただ確かめたいだけなのに、これを言うと沖田は一瞬怯えた表情を見せた。そして困惑気味に目を逸らす。

「お前ってなに考えてっかわかんねえ」
「沖田くんのことだよ」
「……もういいから、早く入れろよ」

 顔を真っ赤にしながら土屋のペニスを引っ張る。
 ひくつくアナルに自分の勃起をあてがった。欲情しきった目が土屋を見上げている。沖田がこんな顔を見せるなんて。手で支えるペニスがグンと膨らんだ。
 媚薬でおかしくなっている沖田とは何度もセックスしたが今日は違う。本心から土屋のペニスを欲しがり股を開いている。
その中へズブズブと身を埋めていった。きついが中は熟んで熱い。沖田の勃起も衰えない。フルフルと震えながら先走りを溢れさせている。

「沖田くんて、意外といやらしいんだね」

 沖田の体が強張り、ギュッと締め付けられた。見ると沖田が鬼の形相で睨んでいた。

「ごめん!だって、すごく気持ちよさそうだし…」
「うるせえ!黙って腰振ってろ!」

 言われた通り腰を動かした。「いやらしい」と言われたことがよほど恥ずかしかったのか沖田は唇を噛みしめて声を殺していた。しかし土屋が少し角度をかえて突きあげると、堪え切れずに声をあげた。

「あぁっ!…ん!あっ…はぁ…あっ、ああっ…!」

 薬なんかなくてもこんなに淫らな声をあげ、表情を見せてくれる。土屋にはそのすべてが驚きと感動の対象だった。
 ペニスを握った。2、3擦ると沖田が泣きそうな顔を持ち上げた。

「やっ、やめ…出る…」
「先にいっていいよ」

 口許に腕を当ててぎゅっと固く目を瞑る。ハァハァと荒い息遣い。胸が大きく上下している。

「ふっ…んっ…あ、あぁ…あっ、出る、イク、土屋…あ、イク…っ!!」

 びゅるっと大量の精液が飛び出して沖田の腹に着地した。

「いっぱい出たね」
「や、もう…擦んな…」
「沖田くんはいつも1回じゃ終わらないでしょ」

 腰を打ち付ける。摩擦でさらにペニスが硬く研がれる。夢中になって出し入れした。

「はぁっ、あっ、あんっ…あ、土屋、あっ、あ…」
「大好きだよ、沖田くん」

 熱い塊を沖田の中へ吐き出した。


 チャイムの音が聞こえた。5限目が終わったようだ。

「そろそろ教室に戻ろっか」
「真面目か。もう6限もふけちまえよ」
「駄目だよ」

 制服を手繰り寄せる。沖田のズボンに硬い手触りがあった。持ち上げた拍子にポケットからそれが滑り落ちる。床に転がった小瓶を見て、土屋はサァッと血の気が引いた。
 見覚えのある小さな瓶。占い師の婆。

「これ…」

 拾い上げる。家に置いてあるから自分のじゃない。それに中身が入っている。

「あぁ、それ。占い師みたいな胡散臭い婆にもらった」

 もしかして使ったのか?いま自分が抱いている沖田への感情もさっきまで欲情にかられるまま執拗に沖田の体を愛撫したのも、もしかしてこの薬のせいだったのか?
 そういえばここへ来るまえ、自販機の前でジュースを一口もらった。まさかあの中に…!

「沖田くん、これ…!!」
「惚れ薬なんだとよ、ふざけてんよな。誰がそんなもん信じるかっての。馬鹿は信じて買っちゃうんだろうけどな。あ、飲むなよ、なに入ってるかわかんねえから」

 改めて瓶を見る。よく見るとシールの封が切られていなかった。沖田は使っていない。自分の感情も、衝動も、全部本物。まがい物なんかじゃない…!

「沖田くんて、かっこいいね」
「はあ?なんだよ急に」
「すごく、すごく、かっこいいね!」
「うるせえわ、男に突っ込まれてアンアン言ってる俺のどこが」
「そこはすごくやらしくて可愛いと思う!」
「殺すぞ」

 照れ隠しの制服が顔に投げつけられた。痛くない。少し面映い。
 6限もふけろと言った沖田が制服を身に着けている。その腰に、土屋は抱き付いた。


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