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久しく為さば須らく(1/2)

2014.07.19.Sat.
<前話「長男としての責務」はこちら>

※男女性描写あり

 通勤するために乗った電車の窓から外を眺めていたら、ビルに掛けられた大きな看板が目に飛び込んできた。昨日までは猫耳の女の子だったのに、今朝は超ミニのセーラー服姿の少年にかわっている。知らない人はあれを見てすぐ男の子だとは気付くまい。俺だって数か月前まではその存在すら知らなかったのだから。
 ちょうど先週末、守に求められてしたコスプレがあれだった。魔法少年の翔太くん。名前まで知っている。

 いい年の大人がパンツ丸見えのミニスカートをはいて、似合いもしないパッツパツのセーラー服を着て、触手怪人に襲われるという設定で、実弟にバイブで犯される。こんな非日常を経験した俺が、何食わぬ顔をして朝の通勤電車に揺られているのだ。どうだ参ったか隣のおっさん!お前がいやらしい目で見てるあの看板の子が実は男の子で、隣に立ってる男がそのコスプレしながら実の弟とセックスしたなんて思いもしないだろう!俺だって泣けてくるぜ!

 翔太くんは今日も短いスカートの下から白いブリーフがチラりと見えていた。なぜ男なのにセーラー服なのか。なぜ短いスカートなのか。なぜ敵に犯されたあとじゃないと必殺技を使わないのか。本当は犯されるのを待っているのか。だからそんな扇情的な格好をしているのか。コスプレさせられる俺の身にもなってくれよ!

 憎さ百倍で翔太くんを睨んでいたせいだろう。先週末のことが次々頭のなかに蘇ってきた。
 結束バンドで両の親指を拘束され、にやついた顔で迫ってくる守の手にはバイブ。白のブリーフを履かされたまま、ずらした隙間からグロテスクな形のバイブがオイルでヌルヌルになった俺の肛門に突き立てられ、出し入れされた。脱ぐことを許されないので下着のなかに射精した。守にいやらしい言葉で辱められた。汚れた下着越しにちんぽを舐められた。俺はまた勃起させた。

 女装としてもコスプレとしても完成度の低い馬鹿げた格好で守に犯された。最初は「翔太くん」と呼んでいた守も、後半になってくると設定を忘れてしまうのか「兄ちゃん」と呼びながら腰を振っていた。そっちのほうがプレイの域を出てリアルセックスのような感じになってくるので俺は苦手だった。何かの役名で呼ばれていたほうが俺じゃない別人が守の相手をしているのだと、多少なり自己催眠をかけられるので救いがあるというのに。

「兄ちゃん、どう?ねぇ、気持ちいい?」

 そんな確認をされた日にはたまったものじゃない。
 勃起し、ケツ穴だけで射精できるようになってしまった俺が答えられる言葉は一つしかないのだ。

「……気持ちいい」

 ふとんに顔を擦りつけ、涎をしみこませながら恥を忍んで言うと、守はそれが嬉しいのか腰使いを激しくして俺のなかに精液を放った。
 まともな大人の振りをするというから守のショタホモ趣味に付き合ってやっているのに、事が終わったあと、結束バンドをハサミで切った守に「赤くなっちゃった。ごめんね、兄ちゃん」と擦れて血のにじむ指にチュッとキスされると、なんだか妙な気分になって俺も「別にいいけど」と責めもしないでおとなしく消毒されて絆創膏を貼られながら、これもショタプレイの一環なのかな、とか考えてしまう。そのあと守に乞われるまま朝まで一緒に寝たりして。

 どこからどこまでが守のプレイなのか、最近その境が曖昧だ。マズイな、と思う。
 はぁ、と口から出たため息が熱かった。股間が硬くなり始めていた。本当にマズイ。


 絵美と会うのは一週間ぶりだ。
 外で食事でも、と思ったが、絵美は部屋でのんびりしたいと言うので仕事終わり、マンションへ向かった。通された部屋。ローテーブルの上に結婚雑誌。

「あぁ、それ、今度結婚する友達が置いてったやつなの」

 ギクリとしてしまった俺を見て取り繕うように言いながら絵美は雑誌を片付けた。
 違う違う。俺は結婚したくないわけじゃない。むしろ結婚願望は強いほうだと自負しているほどで。絵美と築く幸せな家庭像を何度も思い描いて…いたはずなのに、なぜ俺は雑誌を見た瞬間、あんなにも焦ってしまったのか。

「どんなの。見せて」

 片付けた雑誌をテーブルに広げた。俺の反応を窺う視線を感じる。それを意識してると悟られないよう、俺は表情筋を自然な位置に保ちながら、焦った気持ちがページを繰る速度にあらわれないように最善の注意を払い、興味のない特集を熱心すぎない程度にまじまじ眺めた。情報は一切頭に残らない。

「お茶入れるね。コーヒーがいい?」

 合格だったのか、絵美の声は明るい。俺も笑顔で「あー、お茶」と答えることが出来た。
 お茶を飲みながら絵美が「今度結婚する友達」の話をする。何回お色直しをするだとか、料理は有名シェフが手掛けるだとか、新婚旅行はどこどこの海外だとか。
 まだ結婚を焦る年齢ではないと思っていたが、絵美は今年27歳。そろそろ周りが結婚しだす時期で後れを取りたくないのかもしれない。

 空気の密度が濃くなっていく感じがした。見えない壁が迫ってくる。壁は絵美の声だった。絵美のしゃべる言葉が大きな塊となって俺に押し寄せてくる。雑誌の情報と同じく、絵美のしゃべる言葉の内容がまったく頭に入ってこない。呆然と絵美の顔を見ていたせいか、遠近の感覚がおかしくなってきて、俺は確かめるように絵美の腕を掴んだ。声がぱたりと止む。奥行きが生まれる。絵美を押し倒した。


 絵美が服を脱ぐときに部屋の明かりを消した。守に剃られた陰毛はだいぶ生えそろってきていたが、鋭い女の勘が怖くて見られたくなかった。
 キスしながら胸を揉みしだく。弾力の強い風船を掴んでいるようだ。乳首に吸い付く。なぜこれで興奮できていたのか、わからない。
 いきなり味覚を失い、料理の味がわからなくなった者のように、俺は興奮を感じなくなった絵美の体を前に愕然としていた。焦った。恐怖もあった。必死に絵美にむしゃぶりついた。絵美の声は悲鳴のようで耳をふさぎたくなった。
 指で絵美を責めながら根性で立たせた。久しぶりのセックスに余裕がない男を装いながら、急いで絵美に突き立てた。ぶるっと体が震えた。みるみる萎えていく。摩擦でなんとか立たせようと慌てて腰を振った。
 血液が引いていく。海綿体が萎んでいく。現場監督が「今日は撤収~」と言っているイメージが頭に浮かぶ。もうどんなに頑張っても無理だった。

 なぜだ。なぜ立たない。体の異変に頭が真っ白になった。きっと疲れているせいだ。たまたま今日は疲れたが溜まって絶不調なだけだ。
 バレる前に引き抜いた。え、と絵美が俺を見上げる。

「ごめん、もう出ちゃった」

 早漏だと思われた方がマシだ。

「嘘でしょ」

 絵美に笑われてもいい。

「ごめん」

 笑いながら、絵美から隠れてゴムを外し、さも使ったかのように口をしばってティッシュで包んだあとゴミ箱へ放り込んだ。

「久し振りだったから?」
「そうかも」
「かわいい」

 布団で胸を隠しながら絵美が体を起こして俺にキスする。

『かわいい』

 そのフレーズが守の声で再生され、俺はギュッと固く目をつぶった。



 親がいなくなることがあまりないので、実家に呼び出されるより守が俺の一人暮らしの部屋に来ることが多くなっていた。今日もコスプレ衣装を持参して守が部屋にやってきた。
 渡されたのはネルシャツとタンクトップに短パン。どぎつくないなと安堵していたら、「行くよ」と守はグローブを放って寄こした。

「え?」
「キャッチボール。兄ちゃんとするの久しぶりだなぁ」
「ちょっ、こんな格好で外に行くのか?!」
「そーだよ」

 当然という顔で言う。

「ばかなこと言うな、無理に決まってるだろ」
「大丈夫。ひと気のない場所リサーチ済みだから。そこまでは車で行くし」

 それなら大丈夫か、なんて思いかけていやいやと頭を振る。

「だ、誰かに見られたら…」
「まー、ちょっと変わった格好だなって白い目で見られるだろうけど、俺と一緒だし、変質者だとは思われないんじゃない?少なくとも通報はされないと思うよ」
「されたら一大事だ馬鹿」

 守の趣味なのに、俺の方が変態だと思われるじゃないか。

「そうなったら結婚どころじゃなくなるね」

 守はケタケタと笑った。


 俺の車で守が指示する場所まで移動する。尻に食い込むデニムのショーパン。下着を履いていないのでごわつく生地が気持ち悪い。素肌に座席のシートが擦れて気になって仕方なかった。それ以上に太ももを触る守の手が気になって運転どころではなかった。
 事故るから、と注意してもニタニタ笑っていうことを聞かない。
 俺の息遣いが荒くなる。股間が膨らみ始める。俺が勃起しているとわかっているくせに、守はそこには一切触れず、ただ三十手前のおっさんの太ももを、目的地につくまで撫で続けた。


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