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君が笑った、明日は晴れ(48/89)

2020.05.20.Wed.
1話前話

 河中と一緒に映画を見に行った時も思ったけれど、こいつってどうしてこういい匂いがするんだろう。

 河中は俺の胸に頭を乗せ、ずっと黙っている。

「もういいだろ、どけ」

 声をかけたが無反応。寝てるんじゃないだろうな。河中の頭に手を置いて前髪をかきあげた。長い睫毛が上下したのが見えた。起きている。

「聞いてんのか、人の話」
「聞いてます。もう少しだけ。ね、いいでしょ」

 と顔をこちらへ向けた。改めて見るとやっぱり女にしか見えない河中の顔。栗色のサラサラの髪が指に絡んで心地よい。肌も透き通るように白くて、唇だけが濡れて赤い。こいつの性格を知らなかったら、今のこの状況でいつまでも理性を保っていられる自信がない。こいつが性悪で良かったと思う。本性を知っているから以前のようにドキドキとうろたえることもない。

「河中、お前、何してる?」

 下半身でゴソゴソと河中の手が動いている。俺のベルトを外し、ズボンの中に手を入れてきた。

「おい!」

 起き上がろうとしたが上から押さえつけられた。

「勉強の前に、一回出してスッキリしましょうか」
「いい加減にしないと怒るぞ」
「最後までしませんから。先輩の出して終わりにしますから」
「そういう問題か!」
「最近、先輩に触ってなかったから我慢出来なくて。手と口でやるの、どっちがいいですか」
「どっちもいらねえよ、早くどけ」

 言い合う間、河中の手が俺のものを優しく揉みしだき、それが反応を見せはじめる。確かにこれは久し振りの感触だった。あれ、でも俺、つい最近誰かに触られたような気が……。思い出した。浦野だ。そういえば最近あいつ顔を見せない。メールもしてこない。どうしたんだろう。元気でやってるんだろうか。

 浦野としたことは、男同士の悪ふざけの範疇だ。だが河中は愛情を滲ませ俺に絡んでくるのでその行為にはセックスの意味合いが付いてまわる。あやうい駆け引き。普段ならはぐらかしてかわせるのに、部屋に2人きり、ベッドの上、こんな状況で俺は圧倒的に不利だった。

 河中の手が俺の先走りでヌルヌルになったそこを追い立てている。なのに俺はたいした抵抗もせず、ベッドの上で横になったままだ。 俺の顔を見ていた河中にキスされたが、それに応えて俺も舌を絡ませた。浦野のせいで、かなり抵抗がなくなっている。

 2人の唾液を咽喉を鳴らして飲み込んだ。口を離した河中がぞっとするほど妖艶に微笑んで俺を見下ろす。

「先輩、手より口でやるほうが好きでしたよね」

 河中の頭が下がっていった。俺のものが温かな粘膜に包まれる。

「はぁ」

 思わず溜息のような声が漏れた。浦野の拙い手なんか比べ物にならないくらい気持ちいい。理性が吹っ飛びそうだ。

 慈しむような河中の舌の動きは俺を焦らす以外のなにものでもなかった。イく寸前まで引っ張り上げられたと思ったらその直後突きはなされる、ということを何度か繰り返し、頭がおかしくなりそうだった。

「河中、も、ムリだって」

 チラと視線をこちらに飛ばし、目だけで河中が笑った。こいつ、わざとこんなことして俺の反応を楽しんでいたんだ。ふざけやがって。

 満足したのか、河中が俺を追い詰めはじめた。

「はぁっ、くっ、口、離せ、出る」

 言うことを聞かず、河中は俺のぶちまけたものを口で受け飲み込んだ。飲むなと何回言えばわかるんだこいつは。

 睨み付ける俺の視線を悠然と受け止めながら、河中はティッシュで後始末し、ズボンのファスナーをあげ、ベルトを締めた。ほんとに今日はそれだけでいいのか。少し拍子抜けしたような、ほっとしたような。

「母さん帰ってきたみたいですね。勉強しましょうか」

 扉の方を見ながら河中が立ち上がった。差し出された手を握って俺もベッドからおりた。確かに階下で物音が聞こえる。

 勉強机に向かって歩き出すと、河中が背中に抱きついてきた。

「ほんとは最後までしたかったんですけどね」

 俺の尻に河中の熱く猛ったものが押し付けられ、背筋がぞくっとした。

「馬鹿なこと言うな。俺はご免だぜ」
「冗談、ですよ」

 音を立てて頬にキスし、河中は離れた。悪戯っぽく笑う河中を睨みながら椅子に腰掛けた。なんで俺、ドキドキしてんだろ。河中の雄を押し付けられて、焦りと戸惑いの他に期待する気持ちが混ざっていなかったか? 服を元に戻された時も、少しガッカリしてなかったか?!

 俺、相当ヤバイとこまで来ちゃってるのかもしれない。

 机に向かう俺に覆いかぶさるように河中が手許を覗きこんでくる。ふわりと漂う河中の匂い。妙に居心地が悪い。

「お前、近いよ」

 左手で振り払った。河中が少し悲しそうに笑った。なんでそんな顔すんだよ。俺はお前を受け入れることはムリだって。そら見ろ、へんに気まずくなったじゃねえか。

 気詰まりな沈黙。その時ノックの音。

「あ、やっぱり山口君だったのね、いらっしゃい」

 河中のおふくろさんが顔を出し、にっこり笑った。重苦しい雰囲気が消えてほっとする。

「勉強してたの? スイカあるんだけど、少し休憩にしたらどう?」
「頂きます」

 立ち上がって部屋を出た。その時には河中も普段の表情に戻っていた。



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