FC2ブログ

君が笑った、明日は晴れ(44/89)

2020.05.16.Sat.
1話前話

 浦野の中はキツくて熱かった。

「河中……痛い」
「うん、もう少し我慢して。全部入ったら楽だから」
「ほんとに?」

 返事をするかわりに腰を打ちつけ、一気に根元まで入れた。浦野の体が反り返る。

「ごめん、僕も余裕なくて焦っちゃった。浦野が好きでたまらないんだ」
「痛いよ」

 涙の滲む目尻を舐めてやった。そのまま口づけする。

「動くよ?」

 浦野の返事を待たずに腰を動かした。

 心と体、きれいに切りはなされたように、体は快感を得て反応しているのに、心のほうはまったく醒めていた。機械的に腰を動かし、自分の男性器へ刺激を与える作業に没頭した。

 まったく浦野のことを考えていなかった。それなのに、浦野はわずかばかりの快楽を得たのか、呻くだけだった声に変化があらわれ始めた。

「なんか、変な感じ」

  わけのわからない感情に戸惑い、僕にそれを訴えてくる。

「変じゃないよ、気持ちいいんだよ」
「そうなのかな。河中は?」
「僕も気持ちいい。大好きだよ、浦野」
「うん、俺も」

 僕に向かって手を伸ばしてくる。浦野はキスが好きらしい。こんなふうに先輩にキスをねだったんだろう。先輩は流されるまま、浦野とキスを重ねた。大方そんなとこだろう。あの人は流されやすい人だから。

 浦野の股間のものを握ってしごいた。

「あっ」
「一緒にいこう」

 浦野のものをしごきながら、僕も腰を動かした。

「僕と先輩、どっちが好き?」
「河中が好きっ」
「じゃあ、もう先輩に会わないでね。僕だけの浦野でいてくれるね」
「はっ、あっ、もう、出る」

 浦野が先に出し、僕も少しあとで果てた。

 ※ ※ ※

 身繕いを終えた浦野がチラチラと僕を見る。

「どうしたの?」
「なんか、恥ずかしいなぁと思ってさ」
「何が?」
「だって河中とこんなことになるなんて、いまだに信じられないもん」
「僕のどこが好き?」
「うーん、はじめは顔だけで好きになったけど、今は優しいところが好きかな」

 顔と優しいところ、ね。これからはそれを使って浦野を僕に引き止めていよう。もう二度と先輩に近づかせないために。

「先輩のこと、まだ好き?」
「うん……やっぱり好きかな。山口さんてかっこいいし優しいから。河中もそこが好きなんだろ?」
「うん、そうだね」

 かっこいいのは認めるけど、先輩が優しいとは同意できない。いったい先輩はどんな姿を浦野に見せていたんだろう。またぞろ嫉妬心がわきあがってきた。

「でも先輩、男はムリな人だから」
「そうかな? 俺とキスしたし、裸で抱き合ったよ」

 裸で抱き合った? こいつ、何をしゃあしゃあと言ってくれるんだ。

「河中は山口さんとはほんとに何もしてないの?」
「はは、しないよ。浦野も、もう僕がいるんだから先輩の優しさにつけこんでこれ以上あの人に迷惑かけるなよ。いいね?」

 浦野はとたんに真面目な表情になってじっと僕を見つめた。

「それって俺を山口さんに近づけないために言ってるんじゃないよな?」

 と聞いてくる。間抜けなガキかと思っていたら意外に鋭い読みをする。僕はわざとらしいくらい優しい笑顔を作って浦野の肩を抱き寄せた。

「あの人にはただの片思いだけど、浦野には本気になりそうなんだ。だから他の男に近づいて欲しくない。こんなふうに言われるの迷惑?」
「ううん、迷惑じゃない」

 浦野は俯いて、「ちょっと嬉しい」と小さな声でつけたした。

 1時間目終了のチャイムが鳴った。

「そろそろ戻ろうか」

 立ち上がって浦野に手を伸ばした。僕の手を掴み、浦野も立ち上がる。寝癖をなおしてやると恥ずかしそうに俯いた。

 これから目一杯優しくして甘やかしてやる。だから僕を好きになれ。僕に夢中になれ。心が僕で占められて先輩のことは忘れてしまえ。



関連記事
スポンサーサイト
[PR]