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君が笑った、明日は晴れ(36/89)

2020.05.08.Fri.
1話前話

 浦野に協力してやると約束してから、浦野は俺に相談のメールを送ってくるようになった。

 河中をデートに誘うために教室を訪ねたが、本人を目の前にすると緊張して名乗るだけで帰ってしまった、と浦野はメールしてきた。とりあえず、頑張れ、と返信した。

 次の日、遊園地に誘おうとしたが、あまり好きじゃないと言われた、という内容のメールがきた。遊園地……。思わず苦笑した。かわいいこと考える。

 河中と映画をみたことを思い出し、映画は好きみたいだから誘ってみろとアドバイスした。

 翌日の帰り道、河中が浦野のことを話してきた。ちょくちょく顔を見せるくせにはっきりしない態度で、それが迷惑そうだった。

 河中に探りをいれてみたが、まったく浦野に興味がない様子。かわいそうな浦野。おまけに俺が誘うように言った映画もあっさり断られ、その上河中に好きなのかと問い詰められ、散々な目にあったようだ。

 河中の話では、浦野は脱兎のごとその場からく逃げ出したというから、ショックが大きすぎて今日俺にメールしてこなかったのだと納得した。悪いことをしたと少し罪悪感。

 その日の夜、浦野に電話で呼び出された。面倒で断りたいところだが、少しは俺にも責任があるようだし、電話口で浦野が泣いていたので仕方なく出かけた。

 駅から少し離れた公園で待ち合わせ。浦野は先に来ていた。泣きはらした目許が外灯に照らし出される。すっかり落ち込んでずっと無言のまま目を伏せている。

 まだ振られたわけでもないのにそこまで落ち込まなくてもいいだろうと思うのだが、結果は目にみえているので俺も強く言えず、黙って公園を歩いてベンチに座った。

「話は河中から聞いたよ」
「うん……」
「なにをそんなにしょげてんだよ。好きかどうか、聞かれただけなんだろ」
「うん」
「その時ついでに告白しちまえばよかったのに」
「そんな事怖くて出来ないよ。俺、ぜったい河中に嫌われた。河中に呼びとめられたのに無視して逃げたもん。ぜったい嫌われた」

 と両手で顔を覆った。この世の終わりでもあるまいし。

「そんなに落ち込むほどの相手かねえ」
「山口さんは河中のそばにいてドキドキしないの?」

 俺があいつのそばにいるわけじゃなくて、あいつが俺のまわりをチョロチョロしてるだけなんだけどな。そこが少し気になったがいちいち訂正するのも大人げない。

「ドキドキどころか、あいつは性格が悪いからな、好きになれないな」

 なんせ俺を縛ってむりやり犯した奴だ。好意を持てるわけがない。

「河中のどこが性格悪いの」
「ああ見えて意外に底意地が悪いだろ。悪知恵も働くし、Sっ気がある変態だし」
「それ、本当に河中のこと?」

 おっと、言い過ぎたか。こいつは河中に純情なイメージを持っているんだったな。あの猫被りめ、うまく化けてやがる。

「お前にもそのうちわかるかもな」
「山口さんは河中のことよくわかってるんだね」
「そうか?」
「うん、そうだよ。……山口さんと河中って本当に何もないの?」
「ないよ」

 答えながら内心どきりとした。抜けた童顔のくせに、こいつはたまに鋭いからな。

「良かった」

 安心したように笑う浦野を見て俺もほっとした。何か気付いているわけではならしい。

「お前ももっと強引にいけよ。俺としてはさっさと誰かに河中を持って行って欲しいんだからさ」
「ご、強引に?」
「そうさ。この際あいつを襲ったらどうだ?」
「でっ、出来るわけないだろ、そんなこと!」

 真っ赤になっちゃって。こいつのリアクションは見ていて面白い。

「それが出来なけりゃ一生見てるだけの片思いしてろ」

 怒る元気も出てきたみたいだし、もう俺は帰っていいだろう。ベンチから立ち上がった俺を浦野が見上げてきた。

「山口さん、もう帰るの。もっと話をしたいのに」
「まだなんかあるのか」
「うん……」
「なんだよ」

 浦野は目を伏せながら、俺の手を握り、クイと引っ張った。

「あの、さ、キスしても、いい?」
「何言い出すんだ、お前」
「こ、このまえの復習」

 すっかり病みつきになったようだ。経験なかった奴がハマると男でもお構いなしになるから恐ろしいな。と言っても俺がはめたようなもんだけど。

「河中じゃなくて俺でいいのか?」
「うん、だから、早く」

 今度はグイと強く腕を引っ張られた。やれやれ、仕方ないな。俺はまたベンチに座り、浦野の首を掴んでキスしてやった。あ、俺、男同士のキスに抵抗感がなくなってきてる。ハマってるのはもしかして俺のほうか?

 浦野は待ちきれないというふうに自分から舌を入れてきた。ずいぶん大胆な動きに俺の方が焦る。

「ま、待てって」

 肩をもって浦野を引き剥がす。浦野は不満顔。

「そんなにがっつくなよ、相手に引かれるぞ」
「だって俺……山口さんと話してたらこの前したキスのこと思い出して、たまんなくなったんだもん」

 そんなふうに甘えて言うなよ。こっちが照れるわ。

「だからってガツガツいくと相手は引くぞ。これが河中だったら馬鹿にされて鼻で笑われるぞ」
「ん……じゃぁ、次はもっとゆっくりする」

 とまた口を寄せてきた。今度は落ち着いてゆっくり舌を絡ませる。少しは慣れてきたようで、生意気にも俺の反応を窺うように薄目をあけて見てきた。

「……俺、少しはうまくなった?」

 口を離して浦野が言う。

「まぁまぁじゃない」
「もう1回……」

 俺はまた浦野にキスされた。



蜜果(4)

この2人好き~
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