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君が笑った、明日は晴れ(28/89)

2020.04.30.Thu.
1話前話

 俺の許しをもらった途端、河中はまた前のように教室にやってくるようになった。俺はあまりベタベタされるのは好きじゃなくて、最近河中に食傷気味だった。

 河中から離れて一息つきたくて屋上へやって来たのに、河中以上に暑苦しくて鬱陶しい先客がいて思わず舌打ちした。

 引き返そうとしたが、扉の軋んだ音に宮本が振りかえって俺に気付いた。宮本も俺を見た途端、顔を歪めて舌打ちする。

「何しに来たんだ、てめえ」
「ちょっと息抜きに。お邪魔みたいなんで帰ります」

 宮本が一年の男に迫っているところだった。フェンスに押し付けられた一年が縋るような視線を寄越してきたが、俺にはどうしようもない。

「おい、待てよ」

 宮本に呼び止められた。やれやれ。天を仰いで溜息をつく。今日はついてないのかもしれない。

「なんすか」
「河中は一緒か」
「いや、俺一人」

 こいつ、まだ河中に未練があるのか。

「お前と河中、どうなってんだよ」
「どうって、どうもないすよ」
「あいつ、お前にべったりじゃねえか」
「はは、鬱陶しくて仕方ないんすよ。あいつ、引き受けてくれませんか」
「いいのか?」

 宮本が真剣な表情で聞いてきた。そうとうあいつに惚れこんでるんだな。まったく、顔がかわいいからってそこまでマジになれるかね。

「どうぞどうぞ」
「本気で言ってんだな」

 疑り深い奴だな。さっさと持ってけよ。

「のしでもつけたほうがいいすか」

 それでもまだ言葉の真意をはかるようにじっと睨み付けてくる。俺は肩をすくめて少し笑った。

「わかった。じゃあ、河中は俺がもらう。いいな」
「どうぞお好きに。今だったら俺の教室にいるんじゃないかな」

 宮本の口に笑みが浮かんだ。一年の肩を掴んでいた手をはなし屋上から出て行く。前を通り過ぎる時にきっちり俺を睨んでいった。まったくいちいち疲れる。

 俺は日陰に座って煙草を口に咥えた。火をつけ煙を吐き出す。昼飯のあとだからか欠伸も一緒に出た。

 宮本のやつ、本当に河中のところへ行ったのかな。宮本に迫られて困る河中を想像したらにやけてきた。毎日あいつにつきまとわれてたまった俺のストレスを思い知れ。

「あの、ありがとうございました」

 さっき宮本に迫られ困っていた一年がやってきて頭をさげる。 タイプは河中と違って爽やかで男らしい感じだが、まだ幼さの抜けない童顔。あいつ、ほんとに将来犯罪者になるんじゃねえのか。

「俺は何もしてないから」
「いえ、俺、本当に困ってたんで助かりました」

 ハキハキした口調で言って、一年は俺の隣に腰をおろした。

「河中って、1年2組の河中のことですか?」
「さぁ、俺の知ってる河中が何組なのか知らないから」
「女の子みたいな顔した……」
「はは、じゃ、その河中だ」

 あいつ、有名なんだな。まあ、あの顔じゃ無理もないか。

「大丈夫かな、河中の奴。あの人しつこいから」
「お前もずいぶんしつこくされたのか」
「あ、まぁ。……山口さんですよね」
「そうだけど、俺のこと知ってんの」
「はい、宮本さんを負かした人だって。あの人にしつこくされたら山口さんを頼ればいいって」
「誰だ、そんな迷惑なこと言ったのは」
「あ、いえ、噂です」

 とんでもない噂だな。ほんとに誰か俺のとこに来たらどうすんだよ、面倒臭い。

「それただのデマだから、信じるなよ」
「でも俺、助けてもらいました」

 キラキラする目で俺を見る。なんか苦手なタイプだなぁ。

「君、河中の知り合い?」
「あ、俺、浦野です。べつに河中とは知り合いでもなんでもないんです。ただあの外見だから皆かわいいって噂してて、どんなのか一度教室まで見に行ったことがあります」

 暇だなぁ、こいつも。

「ほんとにあいつ、女の子みたいでびっくりしちゃって。山口さん、河中を助けに行かなくていいんですか」
「なんで俺が」
「だって、二人は付き合ってるんでしょう?」
「は? 誰がそんなこと言った?」
「噂です……」

 溜息が出た。とんでもない噂が出回っているらしい。煙草を消して立ち上がった。

「浦野、俺に関する噂は全部デタラメだ。信じるな。今度俺の噂を話す奴がいたらそいつにもそう言っとけ」
「あ、はい」

 ここに長居しても休める気がしない。仕方なく屋上をあとにした。




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君が笑った、明日は晴れ(27/89)

2020.04.29.Wed.
1話前話

 最近重夫の河中への態度が軟化したように思う。

 とにかく重夫は自分に付きまとう河中を鬱陶しがってまともに顔を見もしなかった。 俺は河中が不憫で仕方なくて、もっと優しくしてやるように何度も重夫に言った。それがようやく効果をあらわしはじめたのかもしれない。

 うん、いいことだ。

 今日も河中は重夫に会いに教室までやってきて、つい先日返ってきた中間考査の結果を見て言葉をなくしている。

「先輩……欠点がたくさんありますね」
「うるせえな」

 俺も人のことは言えない点数ばかりなので、ここはおとなしく二人のやり取りを見守ることにしよう。

「いつもこんな点数なんですか」
「ほっとけよ」

 額に手を当て河中は溜息をついた。アンニュイな表情の河中も可愛いな。

「こんなんじゃ期末が終わっても夏休みは補習行かなくちゃいけませんよ」
「毎度のことだ。恒例行事だよ」

 それは俺も同じだ。

「いばることじゃありませんよ。夏休み、僕と出かける約束でしょ」
「そんな約束したか?」

 え、それは俺も聞き捨てならないぞ。二人でどこに行くつもりだ? 俺も仲間に入れてくれよ。

「約束したじゃないですか。休みに入ったらどっか行きたいですねって言ったら、そうだなって答えたじゃないですか」

 え、それって約束したっていうのか? 俺と重夫はあっけに取られて河中を見た。

「馬鹿じゃねえの」

 面倒くさそうに吐き捨て、重夫は席を立った。

「どこ行くんですか」
「屋上。ついてくんな」

 前に出た河中の足が、重夫の最後の一言でぴたっと止まる。まったく重夫の奴、こんなに可愛い河中の何がそんなに不満なんだ。かわいそうに河中は俯いて落ち込んでいるじゃないか。ここは俺の出番だな。

「河中君?」

「あっ、戸田さん!」

 あれ、今気付いたみたいなリアクション。さっきからずっと一緒にいたよ、俺。

「あいつ、河中が可愛いから照れ隠ししてんだよ。だから気にしなくていいからね」
「僕を慰めてくれてるんですか。優しいですね、戸田さんて」

 ニッコリ笑う河中に思わず見とれた。ほんっとに可愛いなぁ。どうしてこんなに可愛いんだろう。男子校にいるから余計にそう見えるのかな。いや、こいつは共学だろうとダントツ可愛いな。だって外を歩いている時にすれ違う女と比べても河中のほうが断然可愛いもんな。

「あれでも河中に優しくなったほうだよ。あいつなりに進歩してるから長い目で見てやってよ」
「僕に、優しい……?」
「ああ、だって前はまともに顔も見なかったのに、最近は普通に会話できてるほうだろ」
「そう……ですか?」
「あいつってへんに難しい性格してるから河中を持て余してんだよ。だから素直に優しくできないんだ」
「へぇ。戸田さんて先輩の事よく知ってるんですね」

 ん。 いま河中の目がキラッと鋭く光ったように見えたが気のせいか? 気のせいだな。だって河中ニコニコ笑ってるし。

「まぁ、一年の時からのツレだからな。あいつってあんな性格だろ、おまけに喧嘩っ早いから皆に誤解されることも多くてさぁ。俺しかダチって呼べる奴いないわけよ」

 君の大好きな重夫の唯一のダチよ。だからもうちょっと俺に興味持ってよ、河中ちゃん。

「自慢ですか、それ。僕へのあてつけですか。喧嘩売ってんですか。宣戦布告ですか」
「違う違う。俺はもっと君と仲良くなりたいなぁって」
「充分仲いいじゃないですか」

 河中の天使スマイルが炸裂した。

 その時運悪く俺の後ろを通り過ぎた奴がモロにそれを見てしまい撃沈した。かわいそうに。重夫のそばにいて見慣れている俺だって河中のこの笑顔は心臓に悪いというのに、防御もせずに気を抜いた状態で見たらひとたまりもない。

「君、山口とどこまでいったの」

 コラコラ、声をかけるんじゃない。河中の犠牲者は野球部の西田だった。

「どこって何の話ですか?」

 河中もこんな奴無視していいから。

「その、やっぱりあいつと、山口と付き合ってんの」
「僕の片思いなんです」

 頬を真っ赤にして河中が恥ずかしそうに俯く。か、かわいい……!!

「本当にあいつに惚れてんの」

 西だ以外の奴が集まってきた。こいつら、普段は遠慮して話しかけてこなかったけど、重夫がいない今、西田を突破口にしてなんとか河中の気を引きたいんだな。下心が見え見えだぞ。あぁ、やだやだ、男子校って。

 河中のまわりに人垣が出来ていた。その中心にいる河中は少し戸惑った顔でみんなの質問に答えている。

「え、携帯の番号ですか」

 河中、答えなくていいからそれ!!

「次の休みは塾で……」

 誰だ、休日に会う約束しようとした奴!!

「クリスマスの予定ですか?」

 どんだけ先の話してんだよ!!

 どいつもこいつも、重夫がいないと思って好き勝手してくれちゃって!

「その一年、困ってんのとちゃうか。それぐらいにしたれよ」

 救世主の声! そのしゃべり方はカンサイだな。人垣の向こう、頭ひとつ飛び出た柔道部のカンサイがこちらを見て苦笑していた。サンキュー、カンサイ!

「なんだよ、俺らはいま河ちゃんとはなしてんだからお前は関係ねえだろ」
「そうやけど……」

 カンサイってばおとなしい性格してるから、すぐ言い負かされるんだよな。それでもナイスファイトだったぜ、カンサイ!

「ありがとうございます、相田さん」

 河中がまっすぐカンサイを見つめて微笑んだ。カンサイの顔がほんのり赤くなる。あれ、こいつまでやられちゃったのか? ミイラ取りがミイラになってどうする!

「僕、先輩を迎えに行って来ます。もうすぐ昼休み終わっちゃいますから。それじゃ。戸田さん、相田さん」

 みんなの視線を一身に集めたまま、河中は教室を出て行った。

「かわいいなぁ、河中って」
「男にしとくのもったいないよ」
「俺の彼女よりかわいいかも」

 みんなが口々に言うのを聞きながら、アレ、と俺は思い出した。

「河中、なんでカンサイの名前知ってたんだろ」




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君が笑った、明日は晴れ(26/89)

2020.04.28.Tue.
1話前話

 ドクドクと河中の体液が俺の中に注がれる。さっきのも入ったままだから2回分。やばいって、タップンタップンだって。すげえ圧迫感。

 河中は俯いて呼吸を整えている。顔をあげ、満足げに微笑んだ。

「先輩、好きです」

 てめえが好きなのは俺じゃなくてセックスだろうが。

 言ってやろうと思ったが、河中が俺の中からズルリと抜け出す感覚に別の声が出た。

「ああぁ、ん」

 なんだいまの! 女みたいな声だった。河中の亀頭が出て行く感触がなんだかたまんなくて反射的に声が出ていた。河中は気に止めていない様子で、両手で前髪をかきあげ、後ろに撫でつけた。

「先輩のミルク飲んでシメとしますか」

 こいつって意外にタフだ。

 河中は俺の股間に屈みこんで遠慮も躊躇もなくパクッとそれを口に咥えこんだ。温かな粘膜に包まれ、俺の分身は喜びに体を震わせた。

 無理だと思っていたのに予想をはるかに上回る早さで果てた。

 もう流石にムリ。ジンジンして痛いほどだ。俺を丁寧に舐める舌の感触もない。

 疲れた。マットの上に四肢を投げ出した。

 口を拭いながら河中が俺の横に座り、

「ご馳走様でした」

 悪戯っぽく笑う。

「飲むなよ」

 俺は一度も誰かに飲んで欲しいと思ったことはない。あんなのAVの世界だけの話だ。俺はそう思っている。だからいままで彼女に飲ませたことは一度もない。 それなのに、どうしてこいつもカンサイも平気で飲めるんだ。

「もう味が薄くなってましたよ」

 知るかそんなこと。黙っていたら河中がふっと笑った。

「いまキスしたら嫌ですか?」

 今頃……。

「当たり前だろ」

 俺のザーメン味のキスなんてごめんだ。

 ん、なにキスありきで判断してんだ俺。フェラがなかったらキスしてもいいみたいじゃないか。 男同士でキスなんておかしいだろ。いや、それ以上のこともしちゃったんだけど。

「先輩、さっきの人、なんて名前なんですか」

 さっきの人? カンサイのことか?

「相田だけど」
「相田さんか……」

 呟く河中の目が一瞬鋭く吊りあがったが、すぐいつもの表情に戻った。

「先輩、今日いっしょに帰りましょうね」

 可愛い顔をして河中が笑う。

 また教室に会いに来てもいいと言ってしまったんだ、仕方ない。戸田が河中河中とうるさかったから、あいつに任せればいいだろう。

 後片付けをし、制服を着て立ち上がった。腰が痛い。ほんと俺、2時間も授業サボってなにやってんだろ。

 体育倉庫を出た。眩しい日差しに目を細める。

「明日休みですね」

 戸締りをして河中が言う。鍵を受け取り、レンガの下に隠した。

「二人でどっか行きませんか?」
「なんで俺がお前と。お前誘う前に彼女を誘うよ」
「先輩冷たい」

 ボソッと河中が呟く。あ、こいつ、また泣くか? 少し焦ったが河中は泣いていなかった。唇を尖らせ俺を睨んでくる。明るい日の下で見ると本当に可愛い女の子にしか見えない。

「先輩ってオラネコ系なのかな」

 また何か俺の知らない言葉を呟いてすたすた歩く。そのあとをのんびり歩いていたらチャイムが鳴った。




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君が笑った、明日は晴れ(25/89)

2020.04.27.Mon.
1話前話

 やっぱり違う。カンサイの手と、河中の手。河中は俺の欲しいと思うところを望むまま与えてくれる。

 指だけじゃ、物足りない。

 そんな考えを見透かしたように、河中の雄が俺の中に入ってきた。深く貫かれて脳髄が痺れるような感覚を味わった。

 少し腰を動かしただけで河中は終わってしまった。腹の奥にたっぷり注がれる感覚に倒錯した快感を飲みこんで、

「は、ずいぶんお早いことで」

 河中に笑って見せた。挑発的な気分だった。俺の言葉に河中がむっとしたような顔をし、抜かずにまた腰を動かし始めた。中で河中の出したものが音を立てる。

「まだ序の口ですよ。先輩だって物足りないって顔してるじゃないですか」

 本当にそんな顔をしているのだろうか。そうだとしたらみっともない。本当に俺、どうしちゃったのかな。どっか壊れたのかもしれない。河中の言う通り、物足りなかったのだ。俺はまだ気持ち良くなってない。こんなんで終わらせんな、そう言いたかったのだ。

 奥深く突かれながら、取り繕うことをやめ、口から出る喘ぎ声もそのままにして、どうにでもなれという気持ちで快楽に身を委ねた。

 河中の荒い息遣いも俺を興奮させた。こいつも気持ちいいんだな、そう思うと、こんな奴でも少し愛おしく思えて来るから不思議だ。体を重ねると情がわいてくるもんなのかもしれない。

 河中に俺のものをしごかれ、白濁をぶちまけた。さっきカンサイに口でやられた時より数倍良かった。どうしてだろう? 律子とやる時も手より口でやってもらう方が俺は気持ちいいんだけど、今回河中に手で出されたのにめちゃくちゃ感じた。全部出し切ったんじゃないかっていうほどの満足感。

 まさか尻に河中のもの突っ込まれてるからあんなに感じたのか? おいおい、いくらなんでもそれはないでしょ。俺ってばこいつに開花させられちゃったってことか?

 ないない、絶対、ない。

 今ここに女がいたら、俺は迷わずそっちを選ぶね。

 そういや最近律子と会ってねえな。だからセックスもご無沙汰だ。だからだな、きっと。欲求不満だっただけだ。

「先輩、いっぱい出ましたね」

 河中がべっとり精液のついた手をわざわざ俺にかざして見せた。性格の悪い奴だ。

「早く抜けよ」
「なに言ってんですか。僕まだイッてないですよ」
「さっきいっただろうが」
「もう次の話してんですよ」 

 言って河中の腰は円を描いて俺の尻にぶつかってきた。

「先輩、三発目、いきますか?」

 ニヤニヤ笑いながら、疲れてくったりしている俺のモノを握り締めた。もう無理だって。

「馬鹿言うな、出るわけねえだろ」
「どうかな。わかりませんよ」

 俺の両足が河中の腕にすくいあげられた。あられもない恥ずかしい格好。すぐ前に河中の顔。ぞっとするほど綺麗に整った顔が、今は余裕をなくして切なそうに俺を見下ろしてくる。

「あ、先輩、そんなに締め付けないでもらえます? いっちゃいそうになるんで」
「知るかっ」

 河中の擦れた声にどきっとした。普段は女みたいで頼りなくてどん臭そうなこいつが、こんな時だけやたら色気のある男に見える。そんなふうに切り替えんなっての。

 どうしてこいつ、俺のことが好きなんだろう。俺は中学の時のこいつをまったく覚えてない。それくらい関わった時間は短いのに、俺を追いかけてわざわざ男子校に進学するなんて正気を疑う。こんな可愛い面してんだから、男だけじゃなくて女にだってモテたはずだ。もったいないことをしてるよな、こいつ。俺を好きになったって、時間の無駄だっていうのに。

「僕、トロマンってのがどんなのか知りませんけど、もしかしたら先輩みたいなのを言うのかな」

 腰を打ちつけながら、河中が何か呟いた。俺の頭は朦朧としていて意味がわからなかった。

「病み付きになっちゃいます」

 薄く開いた目に、河中の顔が映る。少し長めの前髪に隠れる額が汗で光っている。薄く開いた唇を見たら、なんだかキスしたくなってきた。

 河中の奴、今日は一度もキスしてこない。前のことで遠慮しているのか、カンサイとのことを怒っているのか、ただ単にしたいと思わないだけなのか。

「河中」
「はい、先輩」

 じっと河中を見つめた。河中は微笑を浮かべながら次の言葉を待っている。キスしろ、なんて恥ずかしくて俺から言えない。

「いきたいんですか、もう」

 勘違いして河中が俺のものを握った。信じられないけれど、俺の馬鹿息子は大きく成長して誇らしげに反りかえっていた。嘘だろ。何回出せば気がすむんだ。

「いくのは僕のあとに。今度は口でしてあげます。飲みたい、先輩の」

 俺の願いは河中に届かず、再び腰が深く繋がった。

「あっ」
「余裕なくてすみません。出していいですか」

 今更聞くな馬鹿。河中の腕にしがみついて頷いた。




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君が笑った、明日は晴れ(24/89)

2020.04.26.Sun.
1話前話

 嘘みたいにあっけなく果ててしまった。先輩とカンサイとの絡みを聞いていたせいで、妙に感情が昂って興奮状態にあったせいだ。そんな言い訳をするのも恥ずかしくて、荒い息をしながら先輩を見下ろした。

「は、ずいぶんお早いことで」

 先輩が皮肉に笑う。

「まだ序の口ですよ。先輩だって物足りないって顔してるじゃないですか」

 抜かずに腰を動かした。中でグチュと濡れた音がして先輩は顔を顰めた。

「あの人に指でいじられながら、僕の事思い出したりしましたか? あの人、体が大きいからアレもでかかったんじゃないですか。本当は指じゃなくてあっちを入れて欲しかったんじゃないですか」
「ベラベラうるせえ野郎だな」
「ダメですよ、他の男の咥え込んじゃ」
「ん、ああっ」

 腰をつき上げると先輩の口から嬌声が零れた。

「ここ、でしょ」
「あぁっ、あっ」
「なんだかんだ言っても体は素直ですもんね、先輩」
「う、るせ、んっ」
「あぁ、すごい締め付け。そんなに気持ちいいんですか」
「はぁっ、あっ、んっ」
「もうしゃべることも出来ませんか?」

 くすっと笑うと先輩は細めた目で僕を睨んだ。顔も体も上気して色っぽい。じっとりと汗が滲んだ体は僕の手のひらに吸いついてくる。今回で2度目。僕はすっかりこの体の虜になっている。

「あっ、河中っ、ゆっくり」
「すみません、つい」

 やばい。夢中になって腰を振っていた。先輩に止められなかったらまた出してしまうとろだった。

 腰の動きを緩くして、先走りでぬるぬるになった先輩のペニスを握った。やわらかな先を重点的にしごいてやると、またトロトロと透明な液体が零れてきた。

「気持ちいいですか?」

 囁くように訊ねると恍惚の表情のまま小さく頷く。先輩は物事を難しく考えない人だから、こういう時素直に反応してくれるので僕も楽しくなる。

 ねえ、先輩、覚えてる? 一週間前、僕に強/姦されたんですよ。それなのにまたこうして僕を受け入れてくれるなんて、本当に夢を見てるみたいです。

「あっ、あ、あ……」

 先輩の体が強張り、僕の腕を強く掴んできた。僕は腰を打ちつけた。

「も、出る……」
「いいですよ。出しちゃって」

 瞑っていた目が薄く開いてチラと僕を見た。イクのを我慢しているすごい色っぽい表情。また目を瞑り、眉を寄せる。イカせてあげるために手を上下に動かした。

「はあっ、あっ、あっ」

 白い液体が僕の手を汚した。



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君が笑った、明日は晴れ(23/89)

2020.04.25.Sat.
1話前話

 休み時間が終わり始業のチャイムが鳴った。涙は止まっていたけれど、心地よくて僕はまだ先輩の胸にしがみついたままでいた。

「河中、チャイム鳴った」
「そうですね」

 すぐ耳元で先輩の声が聞こえる。僕が恋焦がれてやまない人の声は、なんて淫靡に僕の鼓膜を揺さぶるんだろう。

「お前、さっきの時間もさぼったんだろ」
「それは先輩も同じでしょ」

 さぼってカンサイとあんなことしていたくせに。

 目の前に小さな胸の突起物が見えた。それを指先で触ると先輩が身をよじった。

「なにしてんの、お前」
「この前はここ、触らなかったなと思って」

 今度はそれを口に含んだ。

「やめろよ」

 舌で転がすと先輩の息は少し乱れた。さっきまでこれをカンサイが独占していたのかと思うと、どす黒い嫉妬の炎がまたチラチラ揺れ出す。

「あの人として物足りなかったんでしょ。続き、しませんか?」
「は? 続き?」

 答えずにズボンのファスナーをおろしながらそこへ屈みこんだ。

「ちょ、ちょっと、河中」

 慌てる先輩を無視して下着の中から引っ張り出したそれは、カンサイとの余韻を引きずっているのか、胸への刺激に反応したのか、すこし固くなっていた。青臭さの残る先輩のものを口にくわえ、舌を絡めた。

「河中、何してんだよ、お前は」

 後ろについた両手でずりずり下がっていこうとする先輩の腰を引き寄せる。一瞬のどの奥に当たってむせ返りそうになったが、涙目で見上げた先に先輩の戸惑う顔があって、その表情をかえようと僕は必死に舌を動かした。

「河中」

 かすれた声が僕の名前を呼ぶ。

 ついさっき出したばかりで時間がかかるかと思っていたが、意外に早く先輩のものは大きくなり、僕の口の中を占領していった。

「先輩、つらいでしょ、寝転がってください」
「ん、あ、ああ」

 溜息のような返事をして、先輩は素直に横になった。半開きの口から乱れた吐息が漏れている。感じている先輩の姿は僕を否応無しに興奮させた。

 先輩の視線が僕から外れたのをいいことに、一気に下着ごとスボンを脱がせた。驚いて先輩が顔をあげたが時すでに遅し。ニヤリと笑って先輩の亀頭を音を立ててしゃぶった。

「はあぁっ……」

 色っぽい声があがる。先輩の膝を立ててM字にし、その中心、さっきまでカンサイが触っていた場所に指をぐっと押し入れた。

「あっ!」

 先輩の体が緊張して強張る。きつい中で指を動かし、2本目を入れた。

「あぁ……」

 僕の指から押し出されるように、観念したような声が聞こえてきた。

 前の経験で先輩の快感の場所はわかっているからそこを遠慮なくいじった。先輩の体がびくんびくんと反応を示す。本当に先輩は感度がよろしい。

「あっ、やめ、河中」

 やめろと言われてやめるわけないじゃないですか。このかわいい先輩の痴態をカンサイにも見せたんでしょ。表でそれを聞いていた僕がどんな気持ちだったか。お転婆な先輩には少しお仕置きが必要だ。

 右手で体重を支えて体を起こし、上から先輩を見下ろした。暗くても先輩が真っ赤な顔をしているのがわかる。目を閉じて快楽に身を委ねる先輩の口からは断続的に声があがり、僕を煽る。

 滑らかな胸に吸いついた。カンサイが先輩のどこに触れ、どこを舐めたのかは知らないが、その痕跡全てを消し去りたかった。

「んあっ、そこ、やめろ」

 虚ろな目が、脇腹を舐める僕を見た。先輩は脇腹が弱いんだ。唇でそこを撫で、舌を這わせ、軽く吸い付くと、先輩は面白いくらいに反応する。

「あ、あっ……、やめろ、って、ば」
「先輩、かわいい。もう我慢できないよ」

 指を抜き取り、ズボンの中から猛ったものを出してそこへあてがった。正気を取り戻した先輩の目が不安そうに僕を見る。安心させるために少し微笑み、ぐっと腰を押し付けた。

「あっ、く」

 咽喉をさらして先輩がのけぞる。指でほぐしたとはいえ狭くてきつい。

 前も思ったけれど、先輩のここってすごい柔軟性を持っているくせに、いざ入れようとすると処女の鉄壁よろしく侵入を拒む。それなのに、中に入ってしまうと手のひらをかえして吸いついてくる。動くと根元はしっかり締め付け、中は複雑な蠕動運動で絡みついてくるから、その時の体調次第では入れただけでイッてしまいそうになる。とんでもない名器。ああ、カンサイに入れられなくて良かった。この尻を味わったら、もう二度と先輩のことを忘れられなくなる。

 倉庫の前で先輩とカンサイのやりとりに耳をすませていた僕のものは、大きくなったり小さくなったりしていたせいで、絶妙な締め付けにギブアップ寸前だった。

 入れただけでイッちゃうなんて男としてのプライドが! 必死に堪えたけれど、それも長く続きそうにない。 

「先輩、僕、もう、だめ」

 頭の中で白い閃光が走る。と同時に、先輩の中に熱いものを注ぎこんだ。




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君が笑った、明日は晴れ(22/89)

2020.04.24.Fri.
1話前話

 移動教室で廊下を歩いている時だった。ポケットに両手を突っ込んで俯きがちに歩く先輩を見つけた。一週間ぶりに見かける先輩の姿に胸が苦しくなった。

 先輩に声をかけたい。先輩のそばにいたい。先輩に笑いかけて欲しい。

 先輩は見つめる僕に気付かず歩いて行く。チャイムが鳴ったが、教室に戻る素振りがないから、サボるつもりなんだろう。

 名残惜しく後ろ姿を見つめていたら、先輩のあとをつける人物に気が付いた。

 先輩と同じクラスの人だ。ガタイが良いがおとなしい雰囲気の人で、関西弁を話すからクラスの人から「カンサイ」と呼ばれていた気がする。

 どうして先輩のあとをつけているんだろう。気になって僕も二人のあとをつけた。

 先輩が校舎裏の体育倉庫に入って行った。カンサイも少しあとに中に入っていく。僕は慎重に足音を消してそばに近づき、扉に耳をあて二人の話し声に神経を集中した。

  中では驚きの展開が待っていた。それを盗み聞きする僕は顔は、きっと青くなったり、白くなったりしていただろう。

 カンサイは先輩を好きだと告白した。そして事もあろうに先輩の精液を飲んだ(らしい)。 さらに先輩の中に指を入れ、 先輩のあのかわいい声を聞いた。

 嫉妬で胸が焼け付く。体が震える。邪魔をしてやりたい。中に入ってカンサイを蹴飛ばして、先輩は僕のものだと宣言したい。でも、先輩の反応が怖い。

 会わない一週間、僕の頭には先輩のことしか浮かばなくてノイローゼになりそうだった。会いたいのに会いにいけない苦しさ。あんなことをした僕を先輩は許さない。だから遠くから先輩を見かけるだけで我慢してきたのに、2年のクラス替えで同じクラスになった時から好きだった、と急にあらわれたカンサイが告白して、それどころか先輩のものを咥えて、僕しか飲んだことのなかった精液を飲んだなんて許せなかった。

 僕は3年もずっと苦しい片思いをしてきたんだ。先輩も先輩だ、どうしてそんな簡単に体を許しちゃうんだよ。

 カンサイが外に出てくる気配がして物影に身を隠した。倉庫から出てきたカンサイが幸せそうに笑っているのを見てさらに怒りが増す。

 カンサイが立ち去ったのを確認し、倉庫の扉に手をかけた。重い鉄の門を開き、薄暗い中を覗き込む。

「先輩?」
「河中、か?」

 声をかけると、強張った先輩の声がかえってきた。

~ ~ ~

 先輩はさっきから横を向いてずっと黙っている。ここでカンサイと何をしていたか、僕に知られたことが気まずいみたいだ。

 ズボンをはいて、上はシャツを羽織っただけという先輩の格好。 はだけた胸から情事のにおいがしているなんて本人は気付いてないに違いない。僕にはとんでもない挑発と誘惑。

「先輩」
「ん」
「どうしてあの人はOKだったんですか」
「何が」

 相変わらず横を向いたまま言う。

「先輩、ノンケでしょ。それなのに好きだって告白されたら男でもいいんですか。許しちゃうんですか」
「何の話だよ。俺があいつの筋肉触ってたらあいつが勃っちまって、それで責任取ってやっただけだよ」
「責任ってあんなことまでするんですか。あの人に飲ませてたじゃないですか、指入れるのも許してたじゃないですか」
「うるせえな、お前に関係ないだろ」

 先輩の顔がこちらを向いた。関係ない。そんな言葉に僕がどれだけ傷つくか、先輩、考えたことありますか。

「先輩ってけっこうお転婆だったんですね。あの人として気持ち良かったですか?」
「べつに」

 と、煙草を口にくわえる。その煙草を取り上げたら先輩は僕を睨んだ。そうだ、ちゃんと僕を見て。

「僕も先輩が好きなんです。責任取ってくださいよ」
「何言ってやがる。それは俺の台詞だ」
「だったら責任取らせて下さい。先輩1回しかイッてないでしょ? 本当はあんまり気持ち良くなかったんじゃないですか? 声だって、僕とした時よりぜんぜんおとなしかった」

 先輩は顔を赤くして唇を噛む。図星だったみたいだ。

「どっちが良かったですか、僕とさっきの人」

 新しい煙草を箱から取り出し、口にくわえる。その横顔を睨むように見つめた。ポケットからライターが見つからず、先輩は苛立たしげに舌打ちする。僕の言葉を無視するつもりだ。

「ねえ、先輩、教えてくださいよ。どっちとやるのが気持ち良かったですか」
「うるせえな、どっちもかわんねえよ」
「本当ですか? 僕とした時のこと忘れたんですか? だって先輩、あんなに乱れて──」

 先輩に頬をぶたれて最後まで言うことが出来なかった。ジンジンと熱く痛み出す頬を茫然とおさえる。

「さっきからうるせえんだよ、てめえは。気分悪ぃ」

 あからさまに嫌悪感を示して歪む表情と、棘のある言葉に胸が詰まった。我慢していたものが涙となって目から零れた。

「僕だって先輩が好きなんです。あの人と僕と何が違うっていうんですか。どうして僕はダメなんですか。どうして僕にだけいつも辛く当たるんですか」

 先輩はいつも僕には笑いかけてくれない。いつもそれが寂しくて先輩に笑顔を向けられる人が羨ましかった。同級生というだけで先輩に対等に扱われ、冗談を言いあったり、ふざけあったりするクラスの人たちに嫉妬した。

 先輩を追いかけて同じ高校に進学したのに、目の前で僕以外の男といちゃつくのを見せつけられて、どうして前以上に苦しい思いをしなくちゃならないんだ。

 ずっと押し殺してきた感情はカンサイの登場で爆発してしまった。涙が止まらない。嗚咽に体が震える。

「おい、河中」

 涙を拭う指の間から、動揺している先輩の姿が見えた。

「なにも、そんなに泣くことじゃねえだろうが」
「……僕、いやです」
「何がいやなんだ」

 困ったような優しい口調だった。

「他の誰かに先輩を取られたくないです。また、先輩のそばにいたいです」
「だったらそうしろよ。ってか、俺、誰のものでもないんだけど」
「先輩」

 僕の顔は涙でぐちゃぐちゃだろう。恥ずかしいけれど、その顔で僕は先輩を見つめた。参ったな、そんな表情で先輩が僕を見つめ返してくる。好きで好きでたまらないと改めて思う。

「先輩……っ」
「うん?」

 先輩に抱きついた。温かい胸の中で子供みたいにワンワン泣いた。犬をあやすように先輩が僕の頭をなでる。

「まったく、なんで俺が」

 溜息交じりに言う先輩の声が、僕の頭上を通り過ぎて行く。先輩は優しい。先輩は涙に弱い。先輩は甘い。

「また、教室に会いに行ってもいいですか」
「好きにしろ」
「はい、好きにします」

 やっぱり諦めるなんて出来ない。遠くから見てるだけじゃ満足できない。カンサイにも、先輩の彼女にも、誰にもこの人を渡したくない。渡さない。 




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2020.04.23.Thu.
1話前話

 カンサイは自分の中指を口に入れ、唾液をからませたそれを俺の後ろにそっと当てた。思わず力が入る。やっぱり怖い。

「心配せんでもいいから。絶対痛くせえへんし、嫌やったらすぐやめるし」

 俺を安心させるように優しい声で言う。改めてなぜこんなことになっているのかと思わずにいられなかった。薄暗い体育倉庫、男同士で何をやっているんだ一体。

 カンサイの太い指がゆっくり中に入ってくる。

「んっ」
「まだいけるやろ?」
「あぁ」

 指が俺の中でクイクイ動いた。異物感しかない。

「痛いか?」
「ん、いや」

 俺の顔を覗き込むカンサイの息遣いが荒い。上から覗きこまれるのが恥ずかしくて顔を横に向けた。

「ごめん、山口、俺のん触って」

 手をカンサイの屹立にあてがわれた。 猛ったカンサイのものは目を見張るほどに大きく成長している。カンサイも出したくて仕方がないようだ。俺はそれを握って扱いてやった。やっぱりでかい。

「ふっ、あ」

 カンサイの鼻から息が漏れる。俺の手の中でカンサイがビクビク震える。

「あっ」

 今度は俺が声をあげた。

 以前河中が言っていた「ゼンリツセン」と言う場所に触れたらしかった。ここを触られると俺の意思に関係なく体が勝手に反応してしまう。カンサイの優しい目が俺をみおろしてきた。

「ここ、いいんか?」

 そんなこと聞かれて、うん、なんて返事できるか!

 手で口を押さえて無視していたらその手を剥がされた。

「ええんやろ、ここ」
「あっ、ん」

 クイ、とカンサイの指が俺の敏感なところを触る。素直に反応する俺を見てカンサイは微笑んだ。

「好きやで、山口。お前とこんなことできて俺、夢見てるみたいや」

 言葉通り夢を見ているような口調で言う。そんなこと言われても恥ずかしくて何も答えられない。

 カンサイの指が俺の中で強弱をつけて動く。無骨な指をしているくせに、繊細な動きでなんだかじれったい。

 カンサイのものを扱いてやりながら、俺の頭は河中の指とカンサイの指を比べていた。やっぱり違う。河中の細くて長い指は的確に俺の弱いところを突いてきて、しかも執拗に俺を追いたてる。カンサイの手つきは優しい。なんだかそれが俺には物足りなく感じてしまうのだ。

 ああ、まただ。もっと、と思うのに、カンサイの指は遠慮して力を抜いてしまう。思わず恨めしくカンサイを睨んだ。 カンサイは感じ入った表情で熱い息を吐き出している。

「山口、出してもええかな」
「あ、うん」

 カンサイが近くに置いてあったティッシュを数枚引っ張り出して先端にあてがった瞬間、俺の手の中でカンサイが爆ぜた。ドクンドクンと脈打つそれを手のひらで感じながら、いったいどれくらい出すんだとその量にも感心した。

 カンサイが後片付けをするのを座って見ながら煙草を口に咥える。

 カンサイの指はもう抜かれているのに、まだ少し異物感が残っていてなんだかむずむずする。胸の奥で何かが燻っているのを感じながら携帯で時間を確認した。

「もうすぐ授業終わるな」
「もうそんな時間か。もっと山口と二人でおりたい」
「何言ってんだ。二人そろって二時間もふけってたらあることないこと噂されるだろ」
「山口とやったら噂になってもいい」

 カンサイの真剣な顔と口調にどぎまぎした。正面に見つめあうのが恥ずかしくて目を逸らす。

「あのさ、カンサイ、俺」
「待って、お前が男好きになられへんのは知ってる。だから今ここで俺を振らんといてくれ。いま、めちゃくちゃ幸せやねん」

 頭をかきながら弱々しく笑う。

 カンサイがそう言うなら、俺から言うことは何もない。

「実を言うとな、俺、お前が教室出て行ったの見て、きっと授業サボるつもりなんやと思って、お前のあとつけて来たねん。とにかくお前と話したくて、一緒におりたくて、俺も必死やったから」
「そうなんだ」

 ぎこちなく返事を返した。言われてみたらカンサイって真面目で授業をサボったりするようなタイプじゃない。わざわざ俺と話をするために授業をさぼらなくても、教室で話しかけてくればいいのに。

「ほんなら、俺先に教室戻るわ。今日はありがとうな」

 カンサイが立ち上がった。

「ん、いや、べつに」

 礼を言われるようなことは何もしてない。

 服装の乱れを正し、カンサイが倉庫から出て行った。俺は溜息をついてマットに横になった。

 1回出しているはずなのに消化不良の気持ち悪さが残っている。

 カンサイに触られながら、河中のことを思い出していた。あいつならもっとうまくやる、あいつならもっと俺を気持ち良くさせてくれる。そんなことを思っていた。

「俺、どうしちゃったんだろ」

 天井に向かってひとりごちた。

 ギギ、と音がして、また倉庫の扉が開いた。カンサイが戻ってきたのかと上体をおこし戸口を窺ったが、背に光を受けて立つその人影はカンサイより小さく細い。誰だ?

「先輩」

 か細い声に体が緊張した。

「河中、か?」
「はい」

 後ろ手に扉を閉め、俺の前までやって来た河中の顔が強張っている。 マットに座る俺を見下ろし、唇を噛んでいる。間違いない、さっきまで俺とカンサイが何をしていたのかこいつは知っているんだ。



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2020.04.22.Wed.
1話前話

 狭い体育倉庫に卑猥な音が響いている。 カンサイが俺の胸を吸う音、俺のものをしごく音、俺のあられもない声。膝がガクガク震えている。

「カンサイ……」
「なんや?」

 赤い舌を出して乳首を舐めていたカンサイが上目遣いに俺を見る。

「イキそうなんか?」
「俺、立ってるのつらいんだけど」
「そうか、ほんなら横になり」

 優しい動作で俺をマットの上に寝かせた。後輩とやる時もこいつはきっといつも優しいに違いない。河中みたいに縛って無理矢理、なんて思いつきもしないだろう。

 俺の顔を覗きこみながら手はまだ俺のものを握ったままだ。もう先走りでベトベトになっている。

「もうイカしたるからな」

 カンサイが俺の股間にまで下がり、それを口に咥えた。

「ちょ、カンサイ!」

 驚いて頭を持ち上げる。まさかそんなことカンサイにされるなんて思っていなかったから瞬間的に体中熱くなった。

「黙っとき、な」

 手で扱かれながら息子の頭は温かい粘膜に包まれ、音を立てて吸い上げられる。こいつ、うまい。戸惑いが大きかったのに、カンサイの舌使いにどうでもよくなってきた。

「はぁ、あぁ、もう、無理」

 俺の限界が近いと知ると追いたてるように動きが激しくなった。まずい、本当に出ちまう。

「カンサイ、もう、くち離せ」

 咥えたまま首を振る。ダメだって、もう出るって。必死に我慢したが、こらえきれずにカンサイの口の中に出した。 カンサイは口を上下させて全部搾り取ったあと、咽喉を鳴らしてそれを飲んだ。

「なんで飲むんだよ。はなせって言ったろ」

 口を拭きながらカンサイが顔をあげる。

「ごめんな、なんか興奮してもうて」

 ちらとカンサイの股間を見ると、怒張した先から我慢汁が垂れていた。

「俺は口では出来ねえけど、手で良かったら責任持ってやってやるから」

 上体を起こしてカンサイのものを握る。もうこれ以上ないほどに大きく張りつめ脈打っている。やっぱりこいつの、すごいわ。

「あんな、山口」

 頭をかきながらカンサイが口を開く。

「後ろでやっても、構へんかな?」
「後ろ?」
「うん、お前のケツの穴で」
「無理!」

 即答していた。こんなでかいのぶち込まれたら俺、壊れるって。

「痛ないようにするし、優しくするし、だから、頼まれてくれへん?」

 情けない顔で言われたって俺は無理!

「な、何言ってんだよ、カンサイ。それはお前の後輩に頼めよ。俺は気絶させられるなんて嫌だぜ」

 というか、これを相手にしたらやり殺されるわ!

「ちゃうって、だから気絶させてもうたんは、俺、イラついとって乱暴にしたせいやって」
「いやいやいや、そうは言われても」
「山口のこと、好きやねん」
「は?」

 唐突に何を言い出すんだこいつは。そんなこと言ってまでやりたいのか?

「お前には後輩が」
「向こうから告白してきてん。それで俺は好きな奴おるって言ってんけど、そいつはそれでもいいからって……。だから相手してやってただけで、俺は同じクラスになった時からお前が好きやってん」
「冗談、きついって」
「冗談ちゃう。ずっと話しかけたかったのに、お前は戸田とようつるんどるし、最近は河中もお前のまわりウロチョロしとったし、それで俺、イラついて後輩に八つ当たりして、気絶させてもうたんよ」

 えー、そうなんですか。俺のせいで後輩は失神させられたってことか? なんて気の毒な。

 というかカンサイ、同じクラスになった時から俺が好きだったって、本気で言ってんのか? なんだか最近よく告白されている。モテ期到来? 告白してくるのが男限定でぜんぜん嬉しくないんだけど。

「お前の気持ちはわかったけど、俺はやっぱり無理だよ」
「ほんなら、指だけ入れてもいいか?」

 カンサイは人差し指を立てた。その指すら太く長い。

「え、いや、でも」
「気持ち悪かったらすぐやめるし」

 カンサイに肩を持って押し倒された。

「山口ってけっこう感じやすいタイプみたいやし、案外気持ちよくなるんちゃうかな」

 言われて言葉につまる。河中に掘られて感じまくったのは記憶に新しい。あれは女相手では味わうことが出来ない快感だ。不安と一緒に、わずかな期待がわきおこる。

「指だけ、なら」
「うん、約束する」

 嬉しそうにカンサイが笑った。




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2020.04.21.Tue.
1話前話

 トランクスから取り出したカンサイのものは、まだ半立ちなのにすごい存在感だった。恥ずかしそうに目を瞑っているカンサイの顔を見ながらそれを手に握る。すごい重量感。完璧に俺の負けだ。

「こんなの入れたら、部の奴、ぶっ壊れたんじゃねえの」

 河中の時だって俺はずいぶん苦しい思いをしたものだ。こんなでかいのを受け入れた部の奴は大丈夫だったのかと、他人事ながら心配だ。

「1回、途中で気絶させてしまったことがある」

 マジかよ……。言葉も出なかった。

「あ、でも気絶さしてもうた時は、俺も苛立っとって、ちょっと乱暴に扱ってしまったんよ。普段はぜんぜんそんなことないんやで」

 俺に言い訳してどうする。俺は「へぇ」と生返事をかえし、相手を気絶させた凶器を感心して眺めた。

 それは刺激を与えると俺の手の中でグングン大きくなっていき、とうとう握った指先が繋がらなくなってしまった。

「ほんとにでけえな、お前の」
「そんなん言わんとってくれや。なんかめっちゃ恥ずかしいやん」
「恥ずかしがることねえよ。立派だって褒めてんだから」

 また手の中で大きくなった。これ以上まだ大きくなるのか?

 しばらくして先から透明なものがこぼれてきた。それを指に絡め、手のひらにおさまりきらない亀頭を扱いた。

「はあっ、あ、そんな、せんとってや」

 感じている声と表情。見ていると少し楽しくなってきた。

「お前って、けっこう感じやすいほう?」
「わからんけど、前に後輩から全身性感帯って言われたことある」
「後輩がお前の相手?」
「うん。あ、ん、山口のも、見せてや」
「いや、俺のは見せるほどのものじゃ」
「俺ばっかり、ズルイやんか」

 言い終わる前に、カンサイの大きな手が俺の股間をぎゅっと握った。手加減しているのだろうが、一瞬握りつぶされるのかと思うような握力だった。

「お前もちょっと勃ってるやん」

 無骨で大きな手がズボンのチャックを下ろし、トランクスから俺のものを引っ張り出して扱く。

 見かけに寄らず優しい手つきだった。それだけ慣れてるってことなんだろうか。

「山口、ちょっと膝で立って」

 上ずったカンサイの声に促され、俺は腰をあげた。カンサイの手がスボンを下着ごと膝までおろし、俺の腰を自分のほうへ引き寄せる。

「俺の肩、持っとき」

 優しい声で言う。少し恥ずかしいが、言われた通りカンサイの肩に手を置いた。

 右手で俺のものを扱きながら、左手は器用に俺のシャツのボタンをはずして行く。

「何すんだよ、カンサイ」
「いいから、黙っとき。気持ち良くさしたるから」

 ボタンを全部外し終わると、その中に手を入れて地肌に触ってきた。

「お、おい、カンサイ」

 他人に触れられる感触は、一週間前の河中とのことを思い起こさせ、なんとも言えない気分になった。思わず逃れるようにカンサイの肩を押した。

「邪魔やな、脱いでまうか」

 俺を無視してシャツを脱がせる。上半身裸にされ鳥肌が立った。

「寒い?」

 カンサイが見上げてくる。近くで見るとこいつ、けっこういい男だ。

「いや、ちょっと、っていうか、なんで裸になんなきゃなんないわけ」
「うん、まぁ、気にせんとこ」

 と、はにかむ。笑うとかわいい顔になる。

 また腰を引き寄せられた。カンサイが裸の俺の胸に口をよせ、ついばむようにキスをする。

「ちょっ、お前、何してんだよ」
「つらくなったら俺にしがみついてきていいから」
「あっ!」

 乳首を甘噛みされ、痛いようなむず痒いような感覚に声をあげていた。

「女じゃねえよ、俺」
「知らんのか、男でも感じるんやで、ここ」

 舌で転がされ、緩急をつけて乳首を吸われた。変な感じだ。痛くはないが、気持ちいいかというと、そうでもないような。よくわからない。

 カンサイは口で俺の平らな胸を吸いながら、手では俺の下半身のものを扱いた。

「はあっ」

 思わずカンサイの太い首に抱きついた。カンサイがふっと笑ったのが耳元で聞こえた。

「お前もたいがい、感じやすいのとちゃう?」

 笑いを含んだ声で言われ、恥ずかしさから顔が熱くなっていく。

 河中に触られイカされたことを俺の体は忘れていなかった。カンサイの大きく分厚い手でちょっと触られただけでその時の記憶が甦り、女の手とは違う的確な男の手つきに、 まざまざと河中とのセックスを思い出し、後ろへの刺激を俺の体は期待しているのだった。

 そんなこと、カンサイには絶対気付かれたくない。

 そう思うのに、チラと視線を落として、カンサイの一物を見てしまう。俺ってほんとにどうしちゃったんだろ?

 自己嫌悪に似た苦々しさを、快感と一緒に噛み締めた。



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