インモラル 2
2019.07.28.Sun.
大人の時間。
※男女性描写あり。
学校から帰って来たら玄関にハイヒールが揃えてあった。兄が連れこんだ女だ。
初めてじゃない。僕がいるから控えてくれるけど、たまに、ある。
足音を忍ばせ兄の部屋へ。そっと扉を開けたら、性交の匂いと音が漏れてきた。
「ただいま、お兄ちゃん!」
わざと大声を出し、部屋の明かりをつけてやる。兄の上に乗っていた女が振り返った。
ふうん。美人じゃん。胸も大きい。
「弟?」
女は自分の下にいる兄に訊ねた。前に来た女はこれをしたら慌てて出て行ったのに、この女は平然と長い髪をかきあげている。
「哲郎、おかえり。悪いんだけどそこ締めてくれる?」
兄は女の腰から顔を覗かせ僕に言う。僕は足で戸をしめてやった。
「いや、哲郎くん、君も出て行きなさいよ。いま何してるかわかるでしょ」
「お兄ちゃんおなかすいた。ホットケーキ作ってよ」
「私が作ってあげようか?」
女が僕に笑いかける。赤い唇。長い睫毛。揺れる腰。嫌がらせが通じない。
「結構です」
「じゃあ、そこで見てる?」
女は背中を丸めると兄にキスした。
「お兄ちゃんのばか、あほ、インポ」
悪口を言って部屋を出た。自分の部屋で学校の宿題を始める。耳を澄ませば女の喘ぎ声が聞こえる。わざとかも。一時間ほどして今度はシャワーの音が聞こえてきた。やっと終わったようだ。
「哲郎、入るぞ」
腰にタオルを巻いた兄が部屋にやってきた。勉強机に向かう僕の横に立って見下ろしてくる。
「なに怒ってんの」
「新しいセフレ?」
「そういう言葉を使いなさんなって。セフレじゃないよ。お友達。もう帰ったよ。ホットケーキ焼く?」
「いらない。あんなの見せられて食欲失せた」
「お前が勝手に入ってきたんでしょうが」
「汚い」
「お兄ちゃんは大人なの。汚いことも必要なの」
「僕もいつかあんなことするの?」
「そりゃいつかはするだろ」
「じゃあ、キスのしかた教えてよ」
「そんなの練習しなくたって、そのうちうまくなってくよ」
「僕とキスしてよ」
兄はむ、と眉間にしわを作った。
「兄弟でなあ」
「血は繋がってないよ」
「未成年相手に」
「殺し屋が何言ってんの」
「それもそうか」
顎を掴まれ、上を向かされた。顔が近づいて、唇が合わさる。驚く僕の唇を割って舌をいれてきた。歯の裏や口蓋を舐められたとき、腰がぞくぞくした。舌と舌が触れ合って、クチュクチュ絡め合うと頭がぼーっとして、なにも考えられなくなる。
「はあっ」
離れた一瞬のすきを縫って息を吸いこむ。
「鼻で息すんだよ」
兄が教えてくれた。鼻で呼吸する。ボディソープの匂いがする。
兄の首に腕を回した。兄は僕の腰に腕をまわしてきた。上からグイグイ押しつけられて首が痛くなってくる。
「はあっ、あ、お、にいちゃ」
息苦しくて顔を背けた。兄の口が追いかけて来てまた塞がれる。溺れる。キスに溺れてしまう。
「や、あ、もう、わか…、わかったってば」
椅子からずり落ちた格好でギブアップ。兄は舌なめずりして勝ち誇った顔。
「今度から大人の時間を邪魔しちゃいけません」
そう言うと部屋から出て行った。くそっ。
※男女性描写あり。
学校から帰って来たら玄関にハイヒールが揃えてあった。兄が連れこんだ女だ。
初めてじゃない。僕がいるから控えてくれるけど、たまに、ある。
足音を忍ばせ兄の部屋へ。そっと扉を開けたら、性交の匂いと音が漏れてきた。
「ただいま、お兄ちゃん!」
わざと大声を出し、部屋の明かりをつけてやる。兄の上に乗っていた女が振り返った。
ふうん。美人じゃん。胸も大きい。
「弟?」
女は自分の下にいる兄に訊ねた。前に来た女はこれをしたら慌てて出て行ったのに、この女は平然と長い髪をかきあげている。
「哲郎、おかえり。悪いんだけどそこ締めてくれる?」
兄は女の腰から顔を覗かせ僕に言う。僕は足で戸をしめてやった。
「いや、哲郎くん、君も出て行きなさいよ。いま何してるかわかるでしょ」
「お兄ちゃんおなかすいた。ホットケーキ作ってよ」
「私が作ってあげようか?」
女が僕に笑いかける。赤い唇。長い睫毛。揺れる腰。嫌がらせが通じない。
「結構です」
「じゃあ、そこで見てる?」
女は背中を丸めると兄にキスした。
「お兄ちゃんのばか、あほ、インポ」
悪口を言って部屋を出た。自分の部屋で学校の宿題を始める。耳を澄ませば女の喘ぎ声が聞こえる。わざとかも。一時間ほどして今度はシャワーの音が聞こえてきた。やっと終わったようだ。
「哲郎、入るぞ」
腰にタオルを巻いた兄が部屋にやってきた。勉強机に向かう僕の横に立って見下ろしてくる。
「なに怒ってんの」
「新しいセフレ?」
「そういう言葉を使いなさんなって。セフレじゃないよ。お友達。もう帰ったよ。ホットケーキ焼く?」
「いらない。あんなの見せられて食欲失せた」
「お前が勝手に入ってきたんでしょうが」
「汚い」
「お兄ちゃんは大人なの。汚いことも必要なの」
「僕もいつかあんなことするの?」
「そりゃいつかはするだろ」
「じゃあ、キスのしかた教えてよ」
「そんなの練習しなくたって、そのうちうまくなってくよ」
「僕とキスしてよ」
兄はむ、と眉間にしわを作った。
「兄弟でなあ」
「血は繋がってないよ」
「未成年相手に」
「殺し屋が何言ってんの」
「それもそうか」
顎を掴まれ、上を向かされた。顔が近づいて、唇が合わさる。驚く僕の唇を割って舌をいれてきた。歯の裏や口蓋を舐められたとき、腰がぞくぞくした。舌と舌が触れ合って、クチュクチュ絡め合うと頭がぼーっとして、なにも考えられなくなる。
「はあっ」
離れた一瞬のすきを縫って息を吸いこむ。
「鼻で息すんだよ」
兄が教えてくれた。鼻で呼吸する。ボディソープの匂いがする。
兄の首に腕を回した。兄は僕の腰に腕をまわしてきた。上からグイグイ押しつけられて首が痛くなってくる。
「はあっ、あ、お、にいちゃ」
息苦しくて顔を背けた。兄の口が追いかけて来てまた塞がれる。溺れる。キスに溺れてしまう。
「や、あ、もう、わか…、わかったってば」
椅子からずり落ちた格好でギブアップ。兄は舌なめずりして勝ち誇った顔。
「今度から大人の時間を邪魔しちゃいけません」
そう言うと部屋から出て行った。くそっ。

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