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カインとアベル(3/3)

2018.12.07.Fri.


「前に彼女とエッチしたのいつ?」
「いつって……わかんね……、三ヶ月? くらい、前」
「回数も、俺としてるほうが多いんじゃない? 最近忙しくてしてなかったけどさ。それでも三ヶ月も前ってことはないでしょ」

 押されてベッドに仰向けになった。俺の足を押し開いて、守がのしかかってくる。

「弟よりセックスしてない彼女と、ほんとに結婚する気?」
「えっ? あ」

 さっきむかついて彼女と結婚するとかしないとか口走った気がする。

「あ、あれは……ただの勢いつーか、あくまで未定の予定であって……」
「じゃ、まだ結婚はしない? 彼女もつれこない?」
「……来ない」

 というか、守の気を引くための嘘だ。

 良かった、と守は嬉しそうに笑った。

「お互い誤解も解けたし、兄ちゃん、俺にちんぽ入れて欲しい?」
「な、なんで、毎回それ言わすんだよ……! なんの意味があるんだよ、どうせやること同じだろ!」
「同じじゃないよ。ちゃんと兄ちゃんに言って欲しいんだよ。兄ちゃんに求められてんだって実感したいの」
「そんな……でも……」
「兄ちゃんは昔からなんでもできて優秀だったよね。俺の憧れだったよ。その兄ちゃんが俺のために恥ずかしいの我慢してくれんのがすっごい嬉しい。だって兄ちゃん、高校入ったくらいから冷たくなったじゃん。反抗期になった俺の相手が面倒臭かったんだろうけど。おまけにその頃ショタだって自覚してさ。だからあの日、俺の部屋に来て、俺のためにセックスしてくれて、死ぬほどうれしかったよ。俺、出来損ないだからさ。こうでもしなきゃ、兄ちゃんに触ることもできないんだ」
「お前は出来損ないなんかじゃない!」

 電話でも守は自分を出来損ないだと言った。俺も頭に血が上って、守に出来損ないだと言ってしまった。

「さっきは……頭きて。お前に彼女できたと思って。俺とやってる時に、彼女の電話出るとかまじありえないだろって。だから……、出来損ないだなんて、ほんとに思ってない」
「ユキさんに、嫉妬したってこと?」

 頷くと守は笑った。

「兄ちゃん、俺のこと超好きなんじゃん。じゃあ、言えるよね? 俺のなにが、どこに欲しい?」

 亀頭を肛門になすりつけながら守が意地悪く訊ねる。

「う、あ、守の……、ちんこ、俺の、後ろ……!」
「何回も言ってるのにまだ恥ずかしい? 守の勃起おちんぽ、兄ちゃんのおまんこに入れて、でしょ」
「なんで……! 俺、いま、翔太だろ」
「俺はもうずっと、兄ちゃんだと思って抱いてたけど?」
「ど、どういう」
「わかるでしょ。俺も兄ちゃんのこと、超好きだってこと」

 ずぶっと守のちんこが入ってきた。

「はあっ!」
「あれ、さっきまで入れてたのになんかキツい。仲直りセックスで興奮してる?」
「守、守……! あ、あ、やば……変、ああ、ああっ」

 俺のちんこから精液がビューっと飛び出した。

「すっげ、トコロテンじゃん。兄ちゃん、スケベな体になったよね」
「ああっ、守、動くな、まだ……動いたら……ッ!」

 頭の中が真っ白になった。体がガクガク震える。精液が出ていないのに俺は絶頂を迎えていた。

「またイッた? ドライ? まじで?!」

 楽しげに興奮した守の声も遠く聞こえる。頭の先からつま先まで快感が全身に広がっている。気持ちよさがホワホワと心地よい感覚。

「そんな気持ちいい?」
「い、い……気持ちい……!」
「兄ちゃん、俺のちんぽ好きでしょ?」
「う、うう」
「素直になんなよ。守のおちんぽだいしゅきって言ってみな」

 なんでこいつは毎回俺に言わせようとする言葉がかわるんだ。しかも決まって恥ずかしい言葉に。

「メスイキするくらい、気持ちよかったんだろ? 彼女とヤッてここまで気持ち良くなったことあんの? ないだろ」

 守のちんこがゆっくり出たり入ったりしている。二度続けてイッたばかりの俺にはそれすら快感が強すぎる。

「待っ──あ──……あ、やめ、あ、あぁッ」
「またイキそ? すっげー。めちゃくちゃ敏感になってるじゃん。ほら、素直に言わなきゃ、また強制アクメきちゃうよ?」

 俺のちんこの根本を強く握って守が腰を振る。

「わかっ……!! わかった、だからやめ……ストップ!!」
「じゃ、言って。守のおちんぽ気持ち良すぎてメスイキとまんないって」
「ま、守の、おちんぽ、気持ちよくて、メスイキ、とまんない」
「兄ちゃんかわいい」

 嬉しそうに言うと守は俺にキスをしてきた。ヌルヌルと溶け合うようなねちっこいやつ。どっちのかわかんない唾液を何度も飲み下した。

「俺とセックスすんの、好き?」
「さっき言っただろ」
「あれは俺のちんぽが好きかどうかだろ。いま訊いてんのは俺とセックスすんのが好きかどうか。さっき兄ちゃん、嫌々してるって言ってたじゃん。自分を犠牲にして、我慢して俺とセックスしてたって」
「あっ、あれも、お前に彼女が出来たと思ったから」
「ああいう時って本心が出るよね。あれが兄ちゃんの本心だったわけ?」
「違う! いや、最初はそりゃ嫌々だったけど……! でも、今は違うって……、そんなん、俺の反応間近で見てるお前が一番よくわかってんだろ」

 守は意地の悪い顔でニヤニヤ笑っている。

「まあね。いくら弟がホモでショタコンの引きこもりでも、家から出すために普通セックスしないよね。言われるままに恥ずかしい格好して、外でヤッたり、あそこの毛、剃らせたりさ。素質がなきゃやんないし、あんなに何度もイカないよね」
「わかってるくせに、今更訊くなよ」
「兄ちゃんがかわいい反応するから、いじめたくなっちゃうんだよ」

 俺の乳首を弄りながら守は腰を動かした。心地よい快感がじんわりそこから広がっていく。それに身を任せたらまたイケる自信がある。何度もイクのが怖い。経験したことないような強い絶頂感だった。あれを立て続けに何度も食らったら気が狂いそうだ。

「あっ、そだ、また忘れるとこだった」

 守は机のスマホを取った。俺にレンズを向けてシャッターを切る。

「ちょ! なにするんだよ!」
「ユキさんにね、兄ちゃんとのハメ撮り見せろって言われてたんだ」
「ハメ……! お前! ユキって奴にどこまで話した?!」
「全部知ってるよー。そこまでしてくれるなんて、素晴らしいお兄さんだねって褒めてたよ」
「なんでそんなこと! 兄弟なんだぞ!」
「ユキさんて聞き上手なんだもん。口は堅い人だから安心していいよ。だから俺もフィギュアの制作、頼めたんだし。あ、データは渡さないから。だってユキさん、兄ちゃんオカズにシコりそうだもん。俺に負けず劣らずの変態だからさー」

 しゃべってる間も守はシャッターを押し続けた。パシャ、パシャ、と俺の顔や体、勃起ちんこや結合部に至るまで、すべてを撮影した。

「写真撮られて興奮してる? 我慢汁いっぱい垂れてるよ。中もギチギチに締め付けちゃってさ」
「や、やめ……、恥ずかしい、だろ……!」
「兄ちゃんのいやらしいフィギュア、作ってもらおうね」

 スマホを横に置くと守はガンガン突き上げてきた。

 俺と守の関係を、見ず知らずの第三者に知られている。それどころか、ハメ撮り写真を見られてそれを参考にフィギュアを作られるのだ。

 守はそれをどうする気だろう。部屋に飾ってたまに動かして、時々はオナニーに使ったりするんだろうか。守にとって俺は少年より性欲をかきたてられる存在になれたのだろうか。

「守……、俺、もう、ショタの格好、しなくてもいいのか……?」
「しなくていいよ。はっきり言って、初めから似合ってなかったしね。兄ちゃんがしたいなら別にしてもいいけど。俺はどんな格好の兄ちゃんでも興奮できる性癖になったから」
「じゃあ、もうしない」
「どんな姿でも、兄ちゃんはかわいいよ」
「俺のこと、好きか?」
「好きだよ」

 嬉しいと同時に悲しい。

 親父、母さん、親不孝な息子でごめん。たぶん俺も守も、一生独身。誰とも結婚しないし、子供も作らないと思う。

 誰にも迷惑かけずに、二人だけで生きていくから。それが俺たち兄弟の幸せだから。

「忘れないうちに、もう一回、メスイキしとこうね」

 ガクガクと激しく揺さぶられる。

「ああっ! あ、あんっ、だ、めっ、そんな強くしたら、あっ、ああっ!」

 強い刺激にまた頭の奥から白い靄が広がっていく。

「兄ちゃんのアヘ顔も写真撮っとかないと。これはユキさんには見せないよ、俺だけのものだもん」

 守の声。カメラのシャッター音。全部が遠い。

 ただただ、ぬるま湯みたいな気持ち良さに包まれて、俺は幸せだった。




蟷螂の檻(1)


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カインとアベル(2/3)

2018.12.06.Thu.
<前話はこちら>

 あいかわらず翔太くんの衣装はきつかった。スカートから俺のちんぽははみでてるし、上の衣装も小さくて腹が見えている。

「兄ちゃん、ここ、伸びてきちゃってんじゃん。ちゃんと剃らなきゃ」

 自分のちんこを俺にぶっさしながら守が俺の陰毛を撫でる。中途半端な伸びかけで手に引っかかる感触が気持ち悪い。

「もう、剃んねえよ……!」
「こんなので、彼女とセックスしてたの?」
「するわけないだろ」
「セックスレスで、彼女に怪しまれない?」

 守の言う通り。彼女には浮気の探りを何度か入れられた。

 守に剃られたのは二度目。一度目は疲れているとかなんとかで誤魔化せた。立て続けの二度目はそれも通用しなくなって、守が会いにくるせいで休日も会えない日が続き、彼女が浮気を疑うのも当然だった。

 実際、これは浮気みたいなもん。いや、実の兄弟でセックスしてるなんて浮気以上か。人を異常な泥沼に引きずり込んでおいて、守のクソ野郎は……!

 ゆさゆさ揺さぶられて、もうすぐイキそうって時に守のスマホが鳴った。

「あっ」

 と声をあげた守は机のスマホに手を伸ばし、こともあろうか電話に出た。

「もしもし!」
「嘘だろ……」

 ショタアニメのコスプレさせた実の兄にちんこ突っ込んでる状況で電話に出るか?!

「いま思い出したとこ! ほんとだって!」

 家族以外と明るく話をする守なんて何年ぶりにみるだろう。小学/生以来じゃないか?

「それはあとで……うん、そう……何言ってんの、おかしいんじゃない。本気で言ってる?」

 キャッキャと守が笑う。電話の相手はそれなりに親しい相手。まさかと思うが彼女じゃないよな?

「もー、仕方ないなあ。ユキさんだから特別だよ。でもちょっとだけ!」

 ユキ?! いまこいつ、ユキっつったか?!

 まじで相手彼女かよ!!

「……ほんとそれな! いまのとこ就職してよかったわー。ユキさんいなかったらとっくに辞めてたかもしんない」

 はあ?

 こいついまなんつった?

「いやほんと。俺って出来損ないだからさ。生きてく楽しみできたのも、ユキさんのおかげだよ」

 ギュッて。心臓のあたりが苦しくなった。

 こいつをあの部屋から出すために俺が払った犠牲はなんだったんだ?

 どんな理由であれ、こいつがまっとうな大人として働きだして、兄として嬉しかったんだぞ。

 俺の処女も、近親相姦の罪の意識も、精液まみれのプライドも、俺が差し出したものは一切守の口からは語られない。

 ユキさんのおかげ? ユキさんがいなきゃ仕事辞めてた? ユキさんのおかげで生きていくのが楽しい?

 ふざけやがって。

 俺はなんだったんだよ。

 俺はお前のなんだったんだよ!!!

「あ、うん、それは明日……送らないよ、俺だけのもんだもん。見せるだけ。また明日……て、あ、ちょっ……」

 守を突き飛ばしてベッドから飛び降りた。ずるっとちんこが出る感触に危うく感じそうになったが、腹立つわ情けないやらでそれどころじゃない。

「なに、兄ちゃん、いきなり」

 守は通話を切ったスマホをまた机に戻すと、仁王立ちでブルブル震えている俺に手を伸ばしてきた。

「触んな、死ね!!!」

 俺の剣幕に驚いて守が手をひっこめる。

「あ、電話出たから怒ってる? ごめん、ちょっと約束あって、忘れてたから咄嗟に出ちゃったんだよ」
「だったらそっち……! 優先しろや……!!」
「えっ、なんで泣いてんの?」

 慌てて守が立ちあがる。守は全裸。俺はピチピチのコスプレ衣装。なにこの兄弟。いい年して、なんでこんな馬鹿げた格好で馬鹿げたやり取りしてんだろう。

「お前最悪! 俺にこんなことさせておいてさあ!!」
「えっと……、そんなに翔太くんやだった? 今更どうしたんだよ。いつもノリノリだったじゃん」
「いつも嫌々だったに決まってるだろ!! お前みたいな出来損ない! どうにかしなきゃと思って! 俺が犠牲になれば済む話だと思ったから! 我慢してお前の相手してやってたんだよ!」

 傷ついた顔で守が絶句する。なに被害者面してんだよ?! 俺にやったこと全部棚あげか!? 忘れたなんて言わせねえぞ!

「もう嫌だ! もうこんなことやめる! もう二度としないからな! 約束?! 知るか! お前がまた引きこもりに戻ろうが男の子に手を出して捕まろうが俺の知ったこっちゃねえ! お前のことなんかどうでもいい! 野垂れ死のうが、彼女とよろしくやってようが! 俺にはなんっっっっっっの! 関係もない!!!」

 怒鳴りながら涙が溢れて止まらなかった。情けねえ。弟にいいようにされて。挙句、ポイと捨てられて。

 裏切りだ。人を変態の道に引きずり込んでおいて、自分だけさっさとまともな道に戻るなんて。俺はもう、引き返せないっていうのに……!

「そんなに嫌々俺の相手してくれてたんだったら謝る。けどその前に、いっこ訊いていい? 彼女ってなんのこと?」
「はあ?! しらばっくれんな! 母さんも知ってんだぞ! お前がいま電話してた相手! ユキって女! 彼女なんだろ?!」

 ぽかんと顔をしたあと「ぶはっ」と守が吹きだした。

「ユキさん? 彼女? ありえねー!」

 腹抱えてエビぞりになって笑う。

「ユキさんて、俺の会社の人で男だよ、おとこ! 雪本って苗字でみんなからユキさんって呼ばれてるだけ。え、母さんも勘違いしてんの? まじかー」
「ごまかされねえぞ。さっきも電話で好きだとか会いたいとか話してたの聞いてたんだからな!」
「えー? あー、あれ! あれは……サプライズだからあんま言いたくないんだけど」
「言え!」

 考える時間を与えてはいけないと思って間髪入れず叫ぶ。

「仕方ないなあ。ユキさん、造形師でさ、兄ちゃんのフィギュア作ってもらってんの」

 どんな嘘も見破ってやるぞと待ち構えていたが、思いがけないワードに思考が一瞬止まった。

 ぞうけいしってなんだ。俺のフィギュア?

 フルチンのまま守はベッドに腰かけて話しだした。

「ユキさんが作ったフィギュア、俺もいっぱい持っててさ。覚えてる? 俺の部屋にあったやつ。あれ、三分の一はユキさんが作ったんだよ。いまのとこも、ユキさんがいるから面接受けたんだし。ユキさん、俺の性癖一発で見抜いてさ。ユキさんもショタ好きなんだよね。そんなわけで意気投合して、フィギュア作ってもらえることになったわけ」
「俺、俺の?」
「そう」
「兄ちゃんの小さい頃の写真いっぱい持ってって見せたんだけど、なんか違うなーって。どうせ作ってもらうならいまの兄ちゃんの姿がいいと思って。だから兄ちゃんの写真撮ってくるから待ってってお願いたタイミングで兄ちゃんが家に来るからさ。今日写真撮れそうってユキさんに電話してたの。好きだって言ったのはユキさんが作るフィギュアのこと。会いたいって言ったのは、兄ちゃんのフィギュア。これで誤解、解けた?」

 辻褄は合っている。無理なところも破綻しているところもない……気がする。それでもどこかおかしいところはないかと守の話を反芻する。どこも見つけられない。というか、守の話を信じたい俺がいる。

「兄ちゃん、おいで」

 とまた守が手を伸ばす。なんで年下のお前のほうが兄貴ぶってんだ。

「おいでって、ほら」

 強引に俺の腕を掴んで隣に座らせた。

「俺に彼女できたかもって思って怒ったの?」
「ちげーし」
「もう俺の相手すんの、やになった?」
「だっ……それ、は……」
「そりゃ怒るよね。こんな格好させられて」

 守は翔太くんのスカートをもちあげた。

「ここ、こんなにされて」

 と伸びかけの股間の毛を撫でる。

「兄ちゃんはもう、俺のちんぽなしじゃ生きられないのにね?」
「なっ、そんなわけ!」

 守は俺の首を舐めながらちんこを握ってきた。萎えてたのに、真相がわかって、守に触られただけでそこはまた立ちあがる。






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カインとアベル(1/3)

2018.12.05.Wed.
<「長男としての責務」→「久しく為さば須らく」>

「あら、珍しい」

 久しぶりに実家に顔を出したら母さんが驚いた顔をした。

「ほい、土産」

 来る途中で買った饅頭を渡してリビングへ。親父がゴルフを見ているが守の姿はない。日曜の昼間だってのに、あいつはどこにいったんだ。

「守ならいないわよ」

 母さんの一言にぎょっと焦った。俺と守がしてるあれやこれやを見透かされたんじゃないかと思って。でも母さんは俺なんか見てなかった。饅頭の包みを開けながら、

「守ね、彼女できたみたい。ユキさんって名前の。最近ずっとメールとか電話でやり取りしててねー。嬉しそうな顔してんの。これもみんなお兄ちゃんのおかげだわ」

 と嬉しそうに言う。

 半年ほど前まで守は引きこもりだった。

 結婚を意識した彼女が俺の親に会いたいと言いだして、俺は長年見てみぬふりをしてきた引きこもりの弟をどうにかしなきゃと守の部屋を訪ねた。

 そこで初めて守がショタコン変態野郎だと知った。守は半裸の少年のポスターやフィギュアに囲まれた部屋で自分の変態世界に浸り切っていた。

 こうなるまで放置した責任は長男である俺にもあると思って、文字通り一肌脱いで守を社会へ引きずりだすことに成功した。

 あいつのために。あいつの言いなりになって。

 着たくもない小さな服を着せられて。なりたくもないショタコンアニメの主人公になりきって。したくもない守とのセックスに耐えてきたというのに。

「あいつに、彼女……?」

 腹の底にゾワゾワと黒いものが蠢いた。

 自分の存在を盾にして俺に変態趣味を強要していたくせに、自分はなにちゃっかり彼女とか作ってんだよ?!

 お前は小さな男の子にしか興奮しないショタホモだろうが! お前の歪んだ欲望に付き合ってやれるのは俺だけだろうが! 女とか! お前がさんざん汚らしいと罵倒してきた相手と今頃!!

 社会に出てみて、やっと生身の女の良さに気付けたって?!

 ざっけんな! 引退して髪の毛伸ばし始めた高校球児みたいな俺の股間はどうなるんだよ! お前が剃らせてくれって拝み倒してきたんだろうが!

 どうりで! 最近顔見せないと思ったら、彼女とやりまくってたからかよ!

 そういや、あいつのショタホモ趣味も本物か怪しいもんだ。いくら俺とセックスする条件があったからって、それまで後生大事にしてきたフィシュアやポスターをあっさり捨てられるなんて、所詮その程度の性癖だったってわけだ。

 ファッションショタホモかよ。矯正可能の性癖なんて偽物じゃねえか。本物のショタホモ野郎共に謝りやがれってんだ!!

「晩ご飯、食べてくでしょ? 今日はお鍋にしようかしらね~」

 親父と饅頭を頬張る母さんは嬉しそうだ。一時はどうなるかと将来が不安だった守が、自分の部屋を出て、鬱陶しかった髪の毛を切り、就職先を見つけてきたと思ったら今度は彼女だ。そりゃ嬉しいに決まっている。

 俺の預かり知らぬところでそういう展開だったなら、俺も素直に喜べただろう。だがしかし、俺はがっつり預かり知っている。なんなら巻きこまれている。挙句、使い終わったテイッシュみたいな扱いを受けている。

 処分されたフィシュアやポスターのように。守は俺を処分するだろう。俺が最初、守の存在を恥ずかしいと思ったように。守は彼女に、俺の存在を隠そうとするだろう。なかったことにするだろう。

 俺をさんざん犯しておきながら。ただの思いつきで人の股間パイパンにしておきながら。

「許すまじ」

 怒り心頭。体が震えた。



 夜の十時過ぎになって守が帰ってきた。玄関の靴で俺がいることには気づいているだろうにリビング素通り!

 階段上る守に「ごはんはー?」と母さんが声をかける。

「食べてきたからいらない」

 三週間ぶりぐらいに聞いた守の声。

「彼女と食べてきたのかしらねー」

 母さんは嬉しそう。確かに、誰かと外食している姿なんて半年前の守からは想像もできない。というか、厨二病こじらせた中三くらいからあいつ友達いなかったから、人付き合い自体いったい何年ぶりだって話になる。

 兄としては、弟がまともに生活していることを喜ぶべきなんだろうが。

 私生活にまで影響受けるくらい被害を被った俺としては、一言文句言ってやらなきゃ気がすまない。

 親父と母さんはクイズ番組を見ている。お互い回答を言い合う、仲睦まじい夫婦だ。彼女と結婚したら親父たちみたいになりたいと、密かに思っていた。今は二人に申し訳ない。

 のっぴきならない状況だったとはいえ俺は血の繋がった守とセックスした。そのことを知ったら二人は卒倒するだろう。

 勘当レベルのことをしたのに、当の守は俺の罪悪感なんかお構いなしで彼女なんか作りやがって。

 俺はそっとリビングを離れた。



 守の部屋の前で立ち止まる。中から微かに話声が聞こえてくる。誰かと一緒かと思ったが、守の声しか聞こえないから電話でもしているのだろう。

 あの守が、家族以外の誰かと電話で会話している。社会人なら当たり前の行動に、俺はまだ驚いてしまう。

 もしかして電話の相手は彼女かもしれない。ドアに耳をあて、聞き耳をたてる。

「……た……さすが……ユキ……ずっと……ん、好きだ……た……会いたい……」

 あー、もうこれ確定っすわ。

 電話の相手は彼女。守に彼女!!

 俺の自尊心も! 兄としてのプライドも!! 全部踏みにじって精液まみれにしてくれやがった守に彼女!!!

 笑わせやがる。

 ドアを蹴破らんばかりに開けると、守がビクッと体を震わせた。

「兄ちゃん……」
「あー、悪い悪い。電話中だった?」
「いや、いま終わったとこ」

 スマホを机に置いて、守はコートを脱いだ。コート脱ぐ間も惜しいくらい、早く彼女と電話でお話したかったんですね、わかります!

「最近どうよ」
「ぼちぼちやってるよ。仕事はしんどくて辞めたいけど、まあ、楽しいこともあるし」

 楽しいことってもちろん彼女のことデスよねー! もしかして相手は同僚か?

「兄ちゃんこそ、どうしたの。珍しいじゃん、こっち来るなんて」
「んー、ちょっと? こっちに用あって?」
「なに、俺の顔見たくなった?」

 どの口がそんなこと言うんだよ。

「ちげーよ。そろそろさー、彼女と正式な顔合わせ? した方がいいのかなーって思って」

 出任せに嘘をついた。守の顔から笑みが消える。

「結婚するってこと?」
「そりゃあお前、そのつもりで付き合ってんだし」
「ふうん」

 俺に背を向けコートをクローゼットにかける。下の引きだしをゴソゴソやって守が振り返る。手に持っているのは翔太くんの衣装。

「結婚してもこれは続けてよ。約束なんだから」

 と俺の足元に翔太くんの衣装を投げ捨てた。

「着て。早く」

 口調も動作もなんかキレ気味。

 おかしくない? お前はキレる立場にいないだろ。彼女いるくせになんでこんなことさせるのか意味わかんねえよ。やっぱお前、俺でしか興奮できないんじゃないのか?

 腕を伸ばし、衣装を拾った。






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