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雨の日の再会(2/2)

2017.11.21.Tue.
(前話はこちら)

 結局、仕事が終わるまで生田のことが頭から離れなかった。高校生の頃にした色々なこととか、今頃可愛い彼女とセックスしてんのかな、とか。

 俺もそうだけど、あの頃生田はまだ童貞だった。今はもう童貞じゃないんだろうな。もしかしてまだ童貞だったりして。とか。そんなくっだらないことばかり考えていた。

 仕事が終わり、従業員通用口へ向かう。意外な再会にずっと胸がザワザワと騒ぎっぱなしだ。普通に帰る気になれない。いつもと違うことをして気を紛らわせたい。

 今日は一人で飲みに行こうか。いつもの安酒じゃなく、ちょっと値の張る……お姉ちゃんのいる店とかでもいいかもしれない。

 そんなことを思いながら守衛さんに挨拶をして店を出た。駅に続く角を曲がる。柱にもたれて立っていた男が俺を見つけて手をあげた。

「お疲れ」

 親しみのこもった笑顔で近づいて来るのは生田だ。

「お前、なんでここに……」
「待ってた。良かったー。ラストまでだったらかなり待つなーって思ってたから」
「だからなんでここに……彼女は?」
「振られた」
「はあ?」
「その話はいいから。このあと時間ある?」
「ねえよ」

 咄嗟に嘘をついた。だって、生田のことで頭いっぱいになってる時にいきなり目の前に現れて「待ってた」とか言われたらどういう態度取ればいいかわかんなすぎる。

「デート?」
「ちげえよ」
「じゃ何」
「別に。飲みに行こうと思ってただけ」
「誰と?」
「……一人で」
「じゃ今度一緒に飲みに行こう。奢るし」

 言うと生田は俺の肩に腕を回してきた。生田に押されるように足を踏み出す。

「村上って彼女は? 結婚はしてなさそうだけど」

 俺の左手を見て生田が言う。

「彼女も嫁もいねえよ」
「なら良かった。約束、覚えてるよな?」
「約束?」

 さっき会った時に何か約束したっけ? やり取りを思い出してみるがそれらしきものはない。

「次は全部使うって約束。ローション、いっしょに買いに行く?」

 生田の言葉の意味がわかってさらにパニクッた。高校時代の約束のことを言っているのだ。生田と会った最後の日、今度はスカート、マニキュア、口紅、全部使ってやろうという約束を。

「なっ、なに言って……!」
「駅の裏手、ちょっと行ったとこにラブホあったよな。そこ、いこっか」
「ほ、本気かよ?!」
「やだ?」
「やじゃないけど」

 何も考えず即答したあと急激に顔が熱くなった。前にもこんなことがあった気がする。

「ラブホならローションあるよな。スカートはないけど」
「別に……必要ないだろ」

 肯定的な俺の言葉に生田は笑って頷いた。

 まじか。数年ぶりの予期せぬ再会を果たした直後、心の準備も出来てないのにラブホに行くことになっちまった。もう俺たちは大人だ。素股なんかじゃ終わらないに決まってる。ついにやってしまうんだ。本番を!!



 生田とこれからやることにドキドキしすぎていて男同士でホテルに入る羞恥や抵抗感などすっかり忘れていた。

「さきシャワー浴びる?」

 と生田に訊かれなんとなく頷いた。気が付いたら腰にバスタオルを巻いてベッドに座っていた。記憶が飛ぶほど緊張と興奮がすごい。

 同じくシャワーを浴びた生田が戻って来た。前は図体がでかいという印象しかなかったけど、こうしてみると逞しいというか羨ましいというか男として嫉妬するというか、まぁなんだ、つまりはエロいよな。直視できずに俯いてしまう。

「あった、ローション」

 ベッドに乗った生田から無邪気な声がした。ろーしょん? ああ、ローション。あったんだ。ローション。

「じゃ、素股からする?」

 手に中身を出しながら生田が言った。素股から順番にやってく気かよ。こっちはもう心臓爆発しそうなんだぞ。

「それは……もうやったし……どうせならしてないこと、しよう」
「それもそうだな」

 笑みを濃くすると生田はいきなり俺に覆いかぶさりバスタオルの中に手を入れて来た。むぎゅっとちんこを握る。ローションがヌルヌルする。その手でグチュグチュと扱かれた。

「じゃあ、なにしよっか」

 ハァハァする俺を見下ろしながら生田が呟く。なにってもう決まってんじゃん。

「い、生田のしたいことで」
「いいの?」

 頷いたらバスタオルをはぎ取られた。勃ったちんことそれをしごく生田の手が丸見えだ。なんてエロい光景だろう。

「村上ってほんと、快楽に流されやすいよな。昔っから」
「お前だってっ」
「俺はさー、けっこう我慢と忍耐の人だったよ。雑だったけど計画的犯行だったし。あんなにうまくいくと思わなくて逆にびっくり」
「なっ、なんのことだよ」
「ほんとにまだわかんない?」

 生田の手がちんこから離れたと思ったらその奥をヌルッと触られた。ちんこの奥。尻の間。本来排泄器官のそこ。今日はそこ使うんだと思ってさっき入念に洗った記憶だけは混乱のなか覚えている。

「引っ越しするってわかってから、なんとかしてお前に触る方法はないかって、苦し紛れの策だったんだぜ。スカートめくりから素股っておかしいと思わなかった?」
「え、お、思わなかっ……あ? あっ、あ……」

 指が俺のなかに入ってきた。ツプリ、と一本。ゆっくり奥まで押し込まれる。

「マニキュア塗って扱き合うとか。口紅塗ってフェラとか。普通、男同士でそこまでするか? もしかして、気持ちよけりゃ誰でも良かったってこと?」
「ちがっ……あ、う……生田の、指、がっ……」

 中でグリグリと回転しながら動かされた。解しながら広げているんだろう。そしてそこに生田はちんこを突っ込むつもりなんだ。

「俺だったからってこと?」
「あ、当たり前だろっ……今だって! こんな恥ずかしいこと……お前とじゃなきゃできねえよ!」
「痛い? ちんこ、小さくなってる」
「痛くないけど……初めてだし、やっぱ怖えよ」
「優しくする」

 生田の言葉を聞いてカァッと全身火がついたみたいに熱くなった。優しくする、だって。現実にそんなこと言う奴いるんだ。そんでもって、処女の女の子みたいな自分が恥ずかしい。

「そろそろ入れるぞ」

 生田は俺の膝を両脇に抱え持ち、ぐいと自分のほうへ引きよせた。それだけでもう股間が密着してしまう。

「さすがにもうわかってると思うけど、俺、お前のこと好きだったんだ」
「いいっ、いま言わなくてっ」
「引っ越して諦めたつもりだったけど、やっぱり忘れられなくてたまに村上の画像見て思い出したりしてた」

 俺の画像というと、例のあのエロ画像か。ゆみりんじゃなく、俺をおかずにして抜いてたんだろうか。そうだとしたら、俺と同じじゃん。

「今日、偶然会って、諦めるなんて無理だってわかった。村上だって気付いた瞬間に、抱きしめてキスしてめちゃくちゃセックスしたいって思ったからな。逆に一緒にいる彼女にまったく性欲わかなくて、正直に言ったら振られたしな」
「だからっ、そういうのいま言うなって」

 恥ずかしすぎて両手で顔を隠した。自分が期待していた以上の出来事にどう対処していいかわからない。

「いま言わないと、次、ないかもしれないだろ」
「なんでないって決めつけるんだよっ、また前みたいに急にいなくなる気かよ!」
「お前に振られたらそうなる」
「振らねえよ! いいからさっさとちんこ入れろよ!」
「やる前にちゃんとしときたかったけど……、流されやすいお前じゃ無理か。いいよ。時間かけて俺のこと好きになってもらうから」

 呆れたように、そしてちょっと楽しげに言うと生田はちんこを俺のなかに入れてきた。でっぷりとした亀頭がまずギュウッと押し込まれ、さすがの苦痛を和らげようと体の力を抜くことに集中している俺のちんこを優しく扱きながらゆっくり竿も入れてきた。

「これを耐えられるってことは、ちょっとは俺のこと好きだよな?」

 生田のちんこが中でグングンと動くのを感じる。熱くて硬くて逞しい。そんなもので貫かれているのに、どうしてこんなに幸せを感じるんだろう。これが愛ってやつだろうか。

「俺のこと好きだったから、フェラしてくれたのか?」
「まだそこ? そうだよ、好きだからフェラしたんだよ。ほんとはお前の精子飲みたかったけど、引かれると思ってやめた。あれが今でも悔やまれる」

 これもやっぱり愛なんだろう。生田は俺が好き。ちんこ突っ込まれることが気持ちいい俺も、生田が好きなんだ。俺だってちゃんとわかっている。

「俺も、生田のちんこしゃぶって精子飲んでみたいかも」

 ぎょっと生田は細い目を目いっぱい見開いた。

「お前なに言ってるかわかってる?」
「わかってるよ」
「ああもう! 絶対わかってない!」

 もどかしそうに大きな声を出したあと、生田は俺の腰を抱えなおすとモノを出し入れし始めた。

「痛くないか?」
「気持ちいい……っ」
「お前なあっ」

 俺は正直に答えたのに生田のほうは変な顔つきだ。怒っているようにも、困っているようにも見える。とりあえず俺の体のことを考えてくれたのか、ローションを注ぎ足した。

 滑りがよくなって生田の腰の動きが早くなった。摩擦で中が熱い。

「気持ちい……もっと、なか擦って」

 さっきまであんなにおしゃべりだったくせに今は黙って腰を振っている。だからグチュグチュとか、パンパンとか、セックスのいやらしい音がよく聞こえる。生田の息遣いも荒い。俺も変な声が出る。

「あ、あっ、生田、そこ! そこがいいっ……そこもっとして……!」
「ここ?」
「ああっ、あっあんっ」

 尾てい骨をビリビリっと電気が走ったみたいだった。そこに狙いをつけて腰を動かす生田の顔は元に戻っていた。

 高校の頃より精悍で、男の色気が増した顔。

「俺と付き合ってくれる?」
「それ、俺の台詞だから」
「生田、チューしたいっ」

 ねだったら生田の顔が近づいて来た。ベロチューのあまりの気持ちよさに俺はあっけなく昇天してしまった。





オロチの恋 (2)

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雨の日の再会(1/2)

2017.11.20.Mon.
(「スカートめくり」→「赤い爪」→「ピンクの唇」)

 夕方になって店内のBGMが変わった。どうやら外は雨が降って来たらしい。

 朝に見た天気予報では降水確率は60パーセント。出かける前の空は明るかったから大丈夫だと思って傘をもってこなかった。駅直結の百貨店だから店から駅まで濡れる心配はないが、最寄り駅から家までの道のりを考えると帰りが憂鬱だ。

 しかもあと二時間ほどであがりの時間。止んでいる可能性は低い。

 今日の晩飯は何にしよう。実家を出て早3年。一人暮らしスキルはぜんぜん向上していない。汚部屋だし、洗濯は洗濯機任せ、皺のついたシャツでも平気で着てるし、炊飯器はあるけど米を炊いたのは一人暮らしを始めた頃の数回だけだ。

 見かねた母ちゃんが頃合いを見て掃除をしに来てくれる。そのたびに「早く彼女作りなさいよ」と急かされるのが鬱陶しい。

 大学の頃に一度彼女はできた。おとなしめでかわいい子だった。何度か家に来て掃除や料理もしてくれた。彼女っていいもんだなと実感してたのは俺だけだったようで、突然「村上くんとは合わないと思う」と言われて振られた。

 言われた瞬間は腹が立った。その理由もなんだ、と納得できなかったが、問い詰めて話し合うことを考えたら面倒臭くなって腹立ちは収まった。

 その後も、好きになれそうないい子はいたけど、付き合えたあとを想像したら急に面倒になって、1人のまま25歳になってしまった。
 別に不便も不満もない。洗濯はなんとかなってるし、掃除はたまに母ちゃんがやってくれるし、食事は外食やコンビニで充分。下の処理は雑誌やDVDで間に合ってる。

 不便も不満もないけど、たまに漠然とこのままでいいのかなーってのはある。今日みたいに雨が降ってなんとなく憂鬱な気分の時に、女連れでやってくる客を見たときなんか。

「啓ちゃん、これ似合いそう」

 売り場であがる女の声。新作のニットカーディガンを恋人らしき男に合わせている。若くて可愛い子だ。そんな子に服を選んでもらっている男の顔は後ろ姿で見えない。タッパはある。これで顔も良くて収入も高かったら世の中不公平だよな

「あ、こっちもいいかもー」

 女の子が男の腕を引いて移動した。すかさず男の身なりをチェックする。スーツも時計も靴も安くはないけど高くもないものばかりだ。ファッションにあまり興味がないタイプなのかもしれない。

「啓ちゃんも選んでよ」
「なんでもいいよ」
「誕生日プレゼントなんだよ。啓ちゃんが気に入ったものあげたいの」

 ダサくはないけど垢ぬけてもいない彼氏のために、彼女が服を選ぶなんてのはよく見る光景だ。俺の生活のなかにはないけど。

 困ったように頭を掻く男の横顔が見えた。平均ど真ん中のフツメンで安心する。あれならまだ俺のほうがちょっとイケてるはずだ。なのにどうして俺には若くて可愛い彼女がいないんだろう。

 他に欠点はないか男をまじまじ観察する。彼女は冬物小物を見ているのに、男のほうは興味なさそうにコートを眺めている。結婚したら彼女の尻に敷かれるタイプだろうな。

 あんまりジロジロ見過ぎていたので男と目が合ってしまった。営業用スマイルで軽く会釈する。たいてい目礼を返されて目を逸らされるのに、男は俺を凝視していた。

「……村上?」

 男の口から出て来たのは俺の名前だった。驚いて男の顔を見つめ返した。過去の知り合いファイルをひっくり返して目の前の顔と照合する。ヒットしたのは高校時代のあいつ。

「生田?」

 さっきまでつまんなそうだった男の顔に笑みが広がった。細い目がさらに細くなる。見覚えのある笑い顔。生田で間違いない。

「久し振りだな。最初わからなかった」

 ツカツカ近づいてきて生田が懐かしそうに言う。俺は名前を呼ばれるまで気づきもしなかった。きっとこいつとの記憶を封じ込めたせいだろう。

「ここで働いてるの?」
「うん、まあ」
「俺もこの近くで働いてるんだ。まさかこんな近くで村上が働いてたなんて思いもしなかった。偶然だよな」

 よりによって生田と仕事場が近いなんて最悪な偶然だ。

「あれって彼女?」

 手袋を手に取って見ている彼女に視線をやる。生田も彼女を見て頷いた。

「可愛いじゃん。生田が好きだったゆみりんにちょっと似てる」
「ゆみりんね。懐かしい」

 ゆみりんは語学留学したいと言ってアイドルグループを脱退後イギリスへ渡り、その二年後には現地の青年実業家と結婚したと報道があった。アイドルに興味なんかないのに、生田が好きだったという理由だけでゆみりんの動向には詳しくなってしまった。だが今の口ぶりだと生田はもうゆみりんのファンをやめてしまっているのかもしれない。

 あんなにゆみりんゆみりんと言っていたくせに。

 なんだか腹が立つ。腹を立てたら色々なことを一気に思い出した。スカートを穿いて生田に素股されたこととか、俺にマニキュアを塗ったあと「しごいて」と生田がちんこ出してきたこととか、ピンク色の口紅を塗った生田にフェラされたこととか、69したこととか。

 そしてそのあと俺たちはキスしたんだ。口紅を俺に塗るだけならわざわざキスなんかしなくたっていいのに。

 あの時の唇の柔らかさとか思い出したら、まともに生田の顔を見られなくなった。

「あのあと、どうしてたんだよ」
「あのあと?」
「引っ越したあと!」
「黙って行ったから怒ってる?」
「別に!」
「口調が怒ってる」
「俺には一言くらいあってもいいじゃん」
「村上にだけは言えなかったんだよ」
「なんで」

 なんでだろう、と生田は俺をじっと見た。懐かしむようでもあり、寂しげでもある、物憂げな眼差しだ。そんな目で見つめられたらのどがきゅっと狭まるじゃないか。

 気付くと手袋を見ていた彼女がこちらを見ていた。

「彼女のとこに戻ってやれよ。誕生日プレゼント買ってもらうんだろ」
「村上が見繕ってよ」
「やだよ。よその店で買え」
「そんなこと言って。店員失格だろ」
「うるせえ。仕事の邪魔。いちゃつくならよそでやれ」

 生田を彼女の方へ押しやった。やれやれって肩をすくめる生田が不意に振り返り、俺の耳元に顔を寄せて囁いた。

「そういえば、ローションは買ったくれた?」
「は……? え──あ……っ!」

 何のことか思い出した俺を見届けると、生田はにやりと笑みを残して彼女の元へ戻って行った。2、3言葉を交わすと二人は別の店舗へ移動した。

 それを見送る俺の頭の中ではさっきの生田の言葉が何度も何度も繰り返されている。

 生田も高校時代のあの出来事と最後のやりとりを完全に覚えているということだ。俺だってしっかり覚えている。簡単に忘れられるわけがない。生田も同じということだ。

 もし生田の引っ越しがなくて、あの続きがあったなら。俺たちはセックスしたんだろうか。




見せかけ俺さまくん

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ピンクの唇(1/1)

2017.11.19.Sun.
(「スカートめくり」→「赤い爪」)

「週末の連休さー、どっか行かない?」

 休み時間、勇気ふり絞って生田を誘ってみたのに、

「連休は無理かなー」

 ってあっさり断られてやんの俺。なんだよ。泊まりで遊びに行こうと思ってたのに。やらしいこといっぱいして、なんだったら勢いで……とか思ってたのにさ。ケッ。

「そんなことより」

 俺の勇気をそんなこと呼ばわりかよ。

「今度は口紅買ってみた」

 机の上に身を乗り出した生田は声を潜めて言った。

「口紅……」

 唇をピンク色にした自分の姿が頭に浮かんだ。その口でなにすんの。なにする気だよ、生田。

「また俺が塗るのかよ」
「嫌だったら今度は俺が塗るよ」

 口紅を塗った生田を想像する。でかい図体に似合わなすぎる。でも俺ばっかスカート穿いたりマニキュア塗ったり不公平だ。

「じゃあ今日、俺んち来る?」
「行く」

 というわけで放課後、生田が俺んちにやってきた。母ちゃんのパートが終わるのが17時。買い物やらしてくるから帰宅は18時前。あんまり時間に余裕はない。

「どんな口紅?」

 だから今日のアイテムお披露目を急かす。生田はポケットからそれを出した。そんなもの入れて授業受けてたのか。時間があったらそこいじって笑ってやるんだけど今日は割愛する。

 銀色のケースの口紅を手に取った。母ちゃんも使ってそうな奴だ。蓋を取ったら思っていたより薄いピンク色の口紅だった。

「これ、今日はお前が塗んの?」
「村上が嫌なら俺が塗るよ」

 嫌じゃないけど進んで塗るのもおかしいと思われるしな。

「じゃ今日は生田で」
「おっけー」

 返事をすると生田は迷いなく口紅を塗った。リップ塗るみたいに割と豪快だ。だからちょっとはみ出してるし。

「どう?」
「うん。ピンク」

 生田の唇はしっかりピンク色で、男の顔には不自然な色合いだった。やっぱり見た目のごつい男には似合わないんだな。

「それで? 今日はそれ塗ってどうすんの?」

 恐る恐る尋ねる。

「うーん。やっぱ、フェラ?」
「フェッ!!」

 素っ頓狂な声が出た。頭の片隅でちょこっと想像はしたよ? 素股と手コキしたらもうフェラかセックスしか残ってねえもん。でもさすがにそれはって否定するじゃん。生田がやるとは思えなかったし、自分にやらせるとも思わなかったし。

 でも生田は確かにフェラと言った。自分が口紅を塗っているのにも関わらず!

「い、生田がしてくれんの?」
「舐めるだけな。する振りだけ」
「振りね、焦ったわー」

 でも舐めてはくれんのかよ!!!!!

 生田が普通だから俺のほうも心臓バクバクなの気取られないよう平静を装うけど顔の熱さとじわっと滲み出た汗はどうしようもない。

「ほら、出せ」

 パンパンと軽く股間を叩かれた。焦ってベルトを外すのにちょっと手間取る。生田に見られると余計に緊張してしまう。

 やっと前が開いた。ボロンとちんこを外に出す。抑えてるからまだフニャッてるけど、いつでもガッチガチに勃たせられる。

 俺のちんこをじっと見てた生田が「フフッ」と笑った。

「なに笑ってんだよ」
「や。まじでこれ舐めんのかーって」

 人にちんこ出させたあとで我に返ってんじゃねえよ。俺が恥ずかしいだろ。

「やめとく?」
「やる」

 どっちだよ。ちんこを隠す俺の手を剥がして、生田は顔を近づけて来た。俺のちんこのすぐ近くに生田の顔がある。フゥッと息を吹きかけられて背中がゾワゾワした。

 ピンクの唇の間から赤い舌が出て来て亀頭をペロリと舐めた。まじで。まじで舐めやがった。

 もう精神力で抑えることは不可能で、俺のちんこが空気を入れた風船みたいに膨らんで立ちあがっていく。眩しそうに目を細めて生田がそれを見ている。

 また先端に舌が触れた。さっきよりリアルに舌の温かさと濡れた感じが伝わってきてやばい。

「女にされてるみたい?」
「えっ」

 急に声をかけられて咄嗟に返事ができなかった。

「口だけ見てたら女みたい?」
「あっ、うん」

 正直、生田のピンク色の唇なんて見てなかった。視界には入ってたけど、俺のちんこをペロペロと舐める生田の姿に集中していた。俺の友達。俺と同じ男。俺より図体のでかい生田が、跪いてちんこを舐めているのだ。信じられない光景だ。

 躊躇がなくなったのか、最初より口を大きく開けて、舌も目いっぱい伸ばして生田は俺のちんこを下から上へとベロベロ舐めた。

 こいつ、なにやってんだろう。俺のちんこなんか舐めて。ホモでもないのに。こいつ、ほんとに何考えてんだよ。

 頭の片隅で冷静にそんなことを思う。だけどそれを上回る興奮があった。舐められるだけじゃ、物足りなかった。

「しゃぶれる?」

 ダメ元で訊いてみる。生田の目が笑った。

 頭の位置を高くして、生田は上からパクッと俺のちんこを咥えた。本当にしてくれた。驚きで一瞬息が止まるほどだった。胸が苦しい。心臓が破裂しそうなほどバクバクいっている。

 温かい口腔内に亀頭が包まれている。見えない内部では濡れた舌がぬるりと周囲を舐めるように動く。腰が抜けそうだった。

「座っていい?」

 咥えたまま生田が頷く。ゆっくり後ろへ下がってベッドに腰をおろした。その間ずっと俺のちんこを咥えこんだままだ。すっぽんかよって思ったけど飲みこんだ。

 抱きつくように生田の腕が腰に巻きついてきた。そしてゆっくり生田の頭が下がっていった。ピンクの唇が根本近くまで下りてくる。ジュルッと一回唾液を啜りあげたあと、今度は上へと戻って行った。

 これもう完全にフェラじゃん。舐める振りとかじゃないじゃん。そんでめちゃくちゃ気持ちいいじゃん。エロ動画見て予想はしてたけど、想像以上の気持ちよさじゃん。

 速度の遅さがだんだん物足りなくなって、俺は生田の頭に手を当て、下がる時にそっと力を入れてみた。驚きと非難の混じった目が俺を見上げる。

「ごめん、めっちゃ気持ちいい」

 素直な言い訳をしたら生田が笑ったように見えた。許してくれたと思いたい。

 生田のフェラによって俺のちんこは完全勃起状態だ。いつだって戦いに行ける臨戦態勢。挑むべき敵地が見当たらないのが残念だが、このヌルヌルとして熱い生田の口の中は居心地がいいのでここから出たくないのも本音だ。

 ジュプジュッジュルッ、と音を立てて生田の頭が上下する。速度も増してますます気持ちいい。

 ふと思いついてスマホでそんな生田を撮影した。撮られたことに気付いた生田は俺とスマホを交互に見たが何も言わなかった。いつも俺のこと撮ってんだからそりゃ文句なんかないだろう。

 俺のちんこを咥える生田の口元を接写する。ほんとにこいつ、俺のちんこ咥えてんだなって実感する。でも一番興奮するのは生田の顔も体も写った画像だ。一生懸命俺のちんこしゃぶってくれる姿を残しておきたくてムービーでも撮影した。

 生田が写真撮ってた気持ちがなんとなく理解できた。プライドとか、羞恥とか、そういうの全部我慢して自分に奉仕してくれてる姿ってなんか健気だし、愛おしい。

 チュポンッと音を立てて生田の口から抜け出た。

「はあー、顎疲れる」

 と生田は顎をさすった。

「俺のでかい?」
「でかくはねえけど、咥えるのは疲れる」
「そゆもんかー。じゃあ、お前の咥えたらもっと疲れんだろな」
「そっか。一緒にやればいいんだ」
「一緒にってどうやって?」
「69」

 リアルに「ハッ」とした。噂のアレか! 頭の位置逆にしてお互いしゃぶりあうアレ!! 69!!!

「やっ……やる? の?」

 恐々訊ねてみるが、ほとんど覚悟はついていた。しゃぶられながら次は俺の番かーと思っていたし。

「やじゃない?」
「俺もやるつもりだったし」
「じゃ、やるか」

 決まるやいなや、生田はズボンとパンツを脱ぎすててベッドに乗った。注目すべきは股間の一物だ。いつの間にか勃ってる。やっぱでかい。あれを口の中に……? 思わず咽喉が鳴った。

 頭を逆にして俺と生田はベッドに寝転がった。目の前に生田の股間。生田の目の前には俺の股間があるんだろう。

 そびえ立つ立派なものを目の前に躊躇してたら、こうやるんだぞと言わんばかりに生田は俺のものを咥えた。乾いていたちんこがまた濡れた空間に包まれる。もう躊躇いなんか感じない舌使いだ。上下左右縦横無尽に生田の頭が動いてベロンベロンと舐めてくれる。

「ちょ、やめっ」

 そんなにされたらすぐ出そうだ。なのに生田はやめないで激しさを増す。

「まじっ、あっ、出るって!」

 焦って生田の腰を叩いた。やっと動きが止まる。落ち着くために長く息を吐きだした。

「村上も早く」
「お前が邪魔してんだろ!」

 催促の声に言い返したあと、意を決して生田のちんこを舐めた。うわっ、思ってたより無味無臭。実感ないほど亀頭って柔らかいんだー。

 チュッと鈴口にキスする。チュウーッと吸うとカウパーが滲んできた。舌の先で味わうと少ししょっぱい感じがした。そして恐ろしいことにそれを汚いだとか気持ち悪いだとか思わない俺がいた。

 生田がしてくれたように俺も先端を咥えこんだ。舌と内頬の粘膜全体を使って生田を舐めてしゃぶる。時々カサがぴくぴくと動いた。握る陰茎がドクドク脈打ちながらまた体積を増す。普段握る自分のものより明らかに大きくて男らしいなぁと感心する。

 しばらく休憩していた生田もまた俺のものをしゃぶりだした。俺もしゃぶってるからか、さっきより大胆に、大きな音を立ててしゃぶってくれる。俺を気持ちよくしようと頑張ってるのが伝わってくるから、俺もお返しのつもりで舌を使った。

 目を瞑れば、ちんこと口の中の感覚だけになる。下半身だけじゃなく、頭までトロトロに蕩けてしまいそうな快感に全身包まれた。

「ハアァ……は……ァアッ……待っ……生田、出るから……くち、はなして……っ」

 もう我慢できなくて生田へ声をかけた。なのに生田は俺の尻をしっかり抱え込むとジュボジュボッと顔を前後に揺すった。

「あっ、や、まじで無理! 出るって! 出るから、口! あ、あっ……!」

 腰を引こうとしたががっちりホールドされて、逃げられないまま生田の口の中へ射精してしまった。二弾、三弾と続けて放出される精液を生田は口で受け止めている。全部出し切ったのを見計らって口をはなし、手を伸ばして取ったティッシュに吐き出した。

「なんで……やめろって言ったのに」

 申し訳なさと、信じられないくらいの気持ちよさに声が震えた。

「なんか、勢い?」

 生田は笑っている。口に射精されて平気なのか。どうしてそこまでできるんだよ。

「俺はできねえよ」
「俺も二度は無理。村上はしゃぶってくれるだけでいいから」

 頭の向きを揃えて生田の股間に顔を近づける。生田のちんこが目の前でグングンと揺れた。それを掴まえてまた咥える。さっきより大量の我慢汁で濡れている。それを俺の唾液でさらに濡らしながら顔を動かした。生田の言う通り、顎がつかれる作業だ。

 生田は上体を起こして俺を見ていた。やってるところが見やすいようにか、俺の前髪をかきあげる。

「上手い」

 褒められると単純に嬉しい。それに恥ずかしい。

 生田はまた、フェラする俺の写真を撮った。途中で動画に切り替えた。口はいいから手でしてくれと頼まれたのでしごいてやるとすぐ射精した。口でしてやれなかったせめてもの詫びとして俺が後処理をしてやった。その間、ずっと生田は動画を撮り続けていた。

 後片付けが終わり、手を洗っている時、鏡を見て重大な事実に気が付いた。

「俺、口紅塗ってないじゃん!」
「あ、ほんとだ」

 生田も気付いていなかったらしい。

「なんのためにフェラしたんだよー!」
「まぁいいよ。エロいの撮れたし」
「……ゆみりんだって思いこめんの?」
「村上でも充分気持ちよかったし興奮した。生田は?」
「う。俺も気持ちよかったけど」
「ならいいじゃん。でも口紅塗ったのが俺だけってのは不公平だよな」

 何か思いついた悪い顔で笑うと、生田は俺の顎を掴んで唇を合わせてきた。ぴったり密着して唇を擦り合わせるように動かす。

「お前のほうが似合うよ」

 やっと離れた生田の目が鏡へ向かう。釣られて俺もそっちを見たら、ほんのり唇がピンク色になっていた。つーかこれ、キスなんじゃね? 俺たちさっきキスしたんじゃね?!

「口紅の次は何にする?」

 動揺しまくる俺に生田が言う。なんの話だよ。口紅の次? まだ何かやるつもりかよ。この次って言ったらもう、アレしかないじゃん。素股、手コキ、フェラの次って言ったら本番しかないっしょ! こいつわかってて言ってんのか?

「スカートとマニキュアと口紅、全部使ってみる?」

 いいこと思いついた、みたいな顔をして生田が言った。

「使って……今度、なにすんの?」

 わかっているが恐る恐る訊ねる。俺をじっと見つめながらにんまり笑う顔に確信する。生田も俺と同じことを考えてる。

「それはその時の勢いで。じゃ、約束な」

 とかってはぐらかしたけど、絶対そう! 次はセックスするつもりだ!

 このまま突っ切ってしまっていいんだろうか。気持ちいこと大好きだけど、さすがにこのへんで止めなきゃやばくない?

 わかっちゃいるけど止められない。だって俺たちは馬鹿で愚かで向上心溢れる男子高校生だから。

「ロ、ローション、買っとく?」

 俺の提案に生田が爆笑した。

 ※ ※ ※

 週明け、期待に胸と股間を膨らませて登校したらなんと。生田が引っ越しのために転校したことを担任から告げられた。引っ越したのは連休中。急な引っ越しでもなく、前からわかっていたが本人の希望により今日まで黙っていたらしい。

 もちろん俺も初耳だった。




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赤い爪(1/1)

2017.11.02.Thu.
(前話「スカートめくり」)

「今日母ちゃん送別会とかで帰り遅いんだってー」

 って生田に言ったら「遊びにいっていい?」ときかれたのでOKした。

 帰る途中、生田が買い物があるというのでドラッグストアへ寄った。俺がヘアワックスやらを見ている間に生田は買い物を終えていた。

 家の前で近所のおばさんに呼び止められた。たくさんもらったからと梨をくれる。それに礼を言ってから中に入った。

「翔ちゃんって呼ばれてんの?」

 生田がからかうように言う。

「小さい頃はそう呼ばれてたんだよ」
「翔ちゃん」
「うるせえ。それよか、なんか飲む?」
「お茶ほしい」

 リビングのソファに鞄を投げ捨て、冷蔵庫のお茶をコップに注ぐ。対面キッチンなのでソファを背もたれにして床に座った生田が見える。

 俺の部屋でスカート穿いて素股したのはつい十日ほど前。今日もいやらしいことをする気なのかなとちょっと期待してしまう。

 お茶の入ったコップをテーブルに置いて、俺も生田の隣に座った。

「この前のスカートで思ったんだけど」

 座るのを待っていたように生田が口を開いた。しかも、いきなりスカートでした素股の話題。以心伝心かよ。生田もやらしいこと期待してたのかよ。

「お、おお。なに?」

 またしようって? ドキドキしつつ、先を促す。

「スカート穿いたらお前相手でも興奮できたじゃん。俺思ったんだけど、他にも道具使えば村上でも女だと思いこめるんじゃないかなって」
「ほおほお? 例えば?」

 期待通りの展開で俺は思わず前のめりだ。

 生田はドラッグストアの袋をガサガサやると、中から赤いマニキュアを取り出した。

「これを爪に塗れば女の手に見えなくないか?」

 そんなもの買ってたのかよ! という突っ込みは心に仕舞って「見える見える!」と俺は大きく頷いた。

「じゃ、手、出して」

 差し出された生田の手に手を重ねる。生田は小さな刷毛を使って俺の爪一枚ずつ赤く塗っていった。大きな図体をして細かい作業が得意らしく器用に爪を赤くしていく。

「うわー、女の爪って感じ」

 別人のようになっていく自分の手に感心する。

「この手で引っぱたかれたい」
「引っぱたいてやろうか?」
「ゆみりんがいい」
「あの子のビンタめちゃ強そう」
「中学まで空手やってたんだって」
「詳しすぎキモ」

 とか言ってたら全部塗り終わってた。まだ乾いていない爪にフーフー息を吹きかける。

「で、これ塗ってどうすんの? まじでビンタ?」

 生田は膝で立つとズボンのチャックを下げた。

「俺のちんこ扱いて」
「ちょっ、お前……! なんでもう勃起してんだよ!!」

 社会の窓から出されたちんこは立派に育って天を睨んでいた。

「塗りながら想像してた」
「童貞の想像力怖え」
「お前だって半立ちのくせに」

 むぎゅっと押された股間は生田のご指摘通りの状態。今からエロいことするぞって時に他人に指とか手を触られるのってそういう気分が倍増になる。それだけで気持ちよくなっちまう。

「ほら、しごいて」

 生田は俺の手を自分の股間に押し当てた。熱くて、硬くて、よく見ると脈動までわかりそうなくらいビキビキになった勃起ちんこ。やっぱこいつの俺よりでかいわ。

「次は生田がやれよ」
「わかってるって」

 頷いたのを見届けてから生田のちんこを握ってみた。赤い爪の手。そこだけ見たら本当に女が生田のちんこを握っているように見える。

「しごいて」

 生田は床に腰を戻すと足を広げた。空いた場所へ膝を進めて生田と向かい合った。自分の手元に集中して上下に動かしてみる。男同士だからどうされたら気持ちいいかわかっている。生田から喘ぎみたいな息遣いが聞こえて来た。

「どう?」
「やばい」

 細い目をさらに細くして、生田は自分の股間を凝視している。俺の顔を視界に入れないようにしているんだろう。女の手だと思いこむことに集中している様子だ。

 俺の手の中でムクムクと生田が大きくなる。鈴口からじわりとカウパーが滲み出した。

「イキそ?」
「もうちょい」

 シュッシュと扱く作業に集中してたら、カシャツとカメラのシャッター音がした。後ろに手をついて上体を逸らした生田がまたスマホで撮影してた。

「自分のちんこ撮ってどうすんだよ」
「ゆみりんがしてくれてるって想像しながら家帰ってやる」

 なにをやるんだよ。わかってるから聞かないけど。生田は何枚か写真を撮った。

「これ、見て」

 スマホを俺に見せる。生田のちんこを夢中でしごいている俺の姿が写っている。ちんこ大好きみたいじゃん。

「消せやまじで」
「この前のもまだ残ってる」
「消せっつーの」
「たまに見返してる」
「意味わかんね」
「また素股してえな」
「俺ばっかやらされてんじゃん。今日はちゃんと交代だかんな」
「イキそ」

 生田は目を伏せると吐息を漏らした。太ももがピクピクと痙攣している。ちんこは鋼鉄かってくらい硬い。

 話すのをやめて手を動かした。生田の腹が呼吸に合わせて上下している。たまに苦しそうに顔をしかめる。唾を飲む動作を見せる咽喉仏につられて俺も生唾を飲みこんだ。俺もちんこ触りてえ。

 生田は「ウッ」と呻ると射精した。俺の目の前まで白い液体が噴きあがる。ドクッドクッと飛び出してくる精液に目が釘付けだ。他人の射精の瞬間を初めて見た。しかも俺の手でイカせた。

 一瞬、冷静な部分が戻ってきた。生田のちんこ握りしめて俺なにやってんだろって。生田相手にエロい気分になるとかヤバイって。爪に塗られた強烈な赤が、俺の罪悪感みたいなものをものすごく刺激してきたんだけど、

「次、お前の番な」

 って生田の一言でそんなのすぐに消えてしまった。現金なものだが俺だって気持ちよくなりたい。年頃の男子高校生の頭の中は九割そのことで占められているのだ。

 身なりを整えた生田にマニキュアを塗ろうと構えたら「俺はいい」と断られた。

「約束が違え!」
「いやいや、もっといいこと思いついたんだって」

 ニヤリと笑うと生田は自分の前の床をパンパンと叩いた。

「後ろ向きに座って」
「えっ……ちょ……何する気だよ……」

 なんとなく察した俺は唇を尖らせながらも素直にその通りにした。座ると生田が後ろから覆いかぶさってくる。両手で俺の膝を広げ、ズボンのチャックを下ろした。隙間から膨らんだ股間が押しだされる。パンツにはもう染みが出来てる。生田の手が俺のちんこを外へ解放してくれた。

「自分でしごいて」
「ずりいぞ」
「女にしてもらってるって思いこめば大丈夫だって」

 生田に手を掴まれ、股間へと導かれた。視覚だけは騙せても、触覚までは騙せない。自分で自分のちんこ触ってるだけだし。こんなの普段のオナニーと変わんない。

「いつもやるようにさ」

 耳元で生田がしゃべるからくすぐったい。肩から生田がじっと俺の手元というか股間を覗きこんでいる。こいつに見られながらオナニーやれって?

「生田ばっかずるい」
「村上のオナニー見せて」

 コソリと生田の髪が耳に当たった瞬間、ゾクゾクッと変な震えが走った。くすぐったいのと、気持ちいいの、半分半分みたいな感じのやつだ。

 俺は生田に見られながらちんこを握って上下にしごいた。人にじっくり見られながらオナるのも初めての経験だ。妙な解放感にいつもより早くイキそうな気配。

「ン、はあっ……はあ……ッ……」
「いつもそうやってんの?」

 だから耳元で喋んなって。イキそうになるだろ。

「黙って見てろよ……、集中、できね……だろ……」

 喋りながら生田の頬に顔を寄せてみた。どういうつもりか、生田も頬を擦りつけてくる。猫みたいにスリスリと。ちょこっと唇が頬に当たってんだけど。

「はああっ、あ……イクかも」
「早くね?」
「だって……生田、見てるから……ぁあっ……」
「見られてると早くなんの?」

 顔の横で生田がクスクス笑う。ああ畜生。キスしたい気分。誰ともしたことねえけど。

「サービスな」

 そう言って生田は俺の手に手を重ねて、力強く扱いた。

「あっ、あっ、生田っ、ダメッ、やめろって!」

 俺の制止を無視して生田の手が動き続ける。もうほとんど生田に扱かれてるようなもん。めちゃくちゃ気持ちよくて、俺はすっかり生田にもたれかかって、それどころか生田の耳に口を押し当てていた。

「イクッ、あ、ああぁ、イクッ!」

 大股を開きながら豪快に射精してやった。



 手を洗い、興奮も冷めるとやっぱり多少気まずくなる。生田は無言でスマホをいじってる。終わった途端誰かとLINEでもやってんのかよ。最低なヤリチン男かお前は。

「写真送ったから」

 スマホから顔をあげて生田が言ったのと同時に俺のスマホが音を立てた。なにかは想像がつく。開いてみると生田のちんこを扱く俺の画像があらわれた。

「こんなのいらねえよ。つか消せって」
「消す消す」

 って言いながらポケットにスマホを仕舞いこむ。こんなの送られて俺どうすりゃいいんだよ。そんな画像残して生田に何の得があるんだよ。

「結論としてあれだな。マニキュアもありだったな」

 生田が俺の手を取った。自分で塗った赤い爪を満足げに見つめている。

「俺はただマスかいただけなんだけど」
「また次なんか考える」
「まだやんの」
「いや?」
「やじゃないけど」

 何も考えず即答してしまった。

「村上もちゃんと気持ちよくなること考える」
「それな」

 なんだか当たり前のように次もある話になっている。俺は気持ちいこと大好きだからいいけど、生田は男同士とかそういうの、気にしないんだろうか。これ以上はやっぱおかしいなーとか。我に返ったりしないのだろうか。

「スカート、マニキュア、次はなにがいいかなぁ」

 独り言みたいな生田の呟き。生田も気持ちいいことが大好きみたいだ。だからもうしばらく、なんにも気付いていないふりをしていよう。