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続続・ひとでなし(2/2)

2017.10.21.Sat.
(前話はこちら)

 完全に斉藤を怒らせたと思ったし、二度と俺に話しかけて来ることもないだろうと思っていたのに、意外にもその日の仕事終わり、斉藤から飲みに誘われた。

 なぜ島さんに斉藤と寝たことを喋ったのか、それらしいストーリーは就業中に考えていたがこちらから言うのは藪蛇になる気がして、先を歩く斉藤のあとに黙って続いた。

 斉藤は馴染みの店を通りすぎ、コンビニに入った。カゴを取ってその中に酒を次々入れていく。

「そんなにどうするんだよ」

 今夜飲むの付き合え、と言ってからずっと押し黙っている斉藤へ声をかけた。

「つまみはなにがいい」

 手に取ったスルメを見たまま斉藤が応えた。無視されなかったことにほっとする。

「どこで飲む気だよ」
「お前んち。嫁にも今夜は遅くなるって連絡しておいた」

 それって、もしかして。

「いいのか?」
「会社に残るにはそれしかないんだろ」
「あれはあの人が勝手に言いだしたことで……、もうそんな必要ないんだぜ。あの人には適当に言っておくから」
「島さんがお前と寝たらリストラはないってはっきり言ったんだ。確実な方を選ぶ。お前は信用ならないしな」

 島さんにはなんのメリットもないこんな条件、当然疑われるのは俺だ。

 一度も二度も一緒、か。斉藤を騙したことに変わりはない。どうせもう嫌われている。軽蔑されて、汚いとまで言われた。だったら便乗してしまえばいい。

「つまみなら俺が適当に作るよ」

 斉藤の手からスルメを取って棚に戻した。

「お前の気が変わる前に行こう」

 レジへ進むと斉藤もついてきた。こいつ、本気だ。



 俺の部屋へ入るなり、斉藤は「風呂借りていいか」とシャワーを浴びた。その間に俺は酒のアテになりそうなものを作った。

 斉藤のために料理を作ってやれることが嬉しいと思う半面、きっとこれが最後になると思うと寂しくて胸が痛くなった。

 友達のままでいた方が良かったんじゃないかと後悔が襲ってくる。

 料理の皿と酒を並べていたらバスタオルを腰に巻いた斉藤が戻って来た。テーブルの上を見て「うまそう」と呟く。俺は簡単に嬉しくなる。

 島さんと出会うまでは自他ともに認める地味で目立たないタイプだった。人との会話が苦手で一人でいるほうが気楽だった。

 島さんに処世術を含め色々な手解きを受けてからは考えがかわり人を苦手に思うこともなくなった。自分が他人からどう見られているか、どう見せたいか、それを教えてもらってから自信がついて人との付き合いも楽しいものに変わった。

 斉藤の目に俺は自信家で鼻持ちならない奴に見えているだろうが、根っこの部分は昔と変わらない。女々しいところがあるし、小さなことに一喜一憂するし、優柔不断だ。

 斉藤にフェラをさせた日の夜は眠れなかった。手料理を振る舞うことが楽しい。それを褒められると嬉しい。このあとすることを思うとドキドキするし、それが終わったあとのことを思うと悲しい。

 このままなにもせず、ただ酒を飲んだだけで別れたら、また前の様に戻れるだろうか。

 淡い期待を抱いていたら「お前も風呂に入ってこいよ」と斉藤に言われた。斉藤の目的はただ一つ。家族を守ること。いつもそうだ。

 きつい仕事でくたくたになった日でも、嫁の料理を食べたら元気が出ると俺にのろけてくる。仕事のミスで厳しく叱られても子供の顔を見ると頑張ろうと思えるんだ、と写真を見せて来る。

 斉藤は俺の気持ちを知らない。責めるのはお門違い。でものろけられる度に、斉藤が守る家族に嫉妬していた。

 何も知らず騙されているだけとは言え、家族を守るために家族を裏切ることを選択したのは斉藤本人だ。その共犯になれたことに仄暗い喜びを感じている。

「先に飲んでろ」

 あんなに酒を買いこんだのはどうせ素面じゃできないからだろう。斉藤を残して俺もシャワーを浴びることにした。

 入念に体を洗い、斉藤を受け入れる準備を整えた。今度こそこれが最後になる。できるだけ長引かせてやろう。

 部屋に戻ると斉藤はビール片手にぼうっとテレビを見ていた。バラエティ番組なのにクスリとも笑っていない。こんな状況じゃ仕方がない。

 斉藤の後ろを通ってベッドの上へ移動した。一糸まとわぬ姿で寝転がる。斉藤はビールを一口飲むとリモコンでテレビを消した。ゆっくり腰をあげるとこちらへやってくる。

「これで会社に残れるんだな」

 上から俺を見下ろして言う。

「約束する」

 疑うように俺をじっと見たあと、斉藤は小さく頷いた。

 いきなり足を持ち上げられた。奥の窄まりを見た斉藤が「入れて大丈夫か?」と訊いて来る。

 大丈夫だと答えればそこにぴたりと温かいものが触れた。今日は舐めてやらなくても勃っているらしい。斉藤も少しは興奮しているようだ。

「待て。タンマ。今日はジェルを使う」

 ベッドの下からボトルを取り出してそれを自分の股間と斉藤のペニスにかけた。なじませるように斉藤の勃起を扱いた。斉藤はぼんやりと見ている。

「ジェルなんてもの、いつも用意してるのか」

 呟くように言った。

「いつ何時必要になるかわからないだろ。男のたしなみだよ」
「CAの彼女に悪いと思わないのか」
「別れた」

 CAの彼女がいたことは事実だ。でも好きにはなれなかった。それでも構わないという彼女と肉体関係を続けていたがいつの間にか連絡がこなくなった。新しい男が出来たのだろう。

「お前みたいな奴、誰かと付き合っちゃ駄目だろ。絶対相手を不幸にする」
「だな」
「女だけじゃなく、男とも遊びまくってるんだろ。俺には考えられない」

 誘われた相手と食事に行き、そんな雰囲気になったら断れずに寝る。好きになれるかもしれないと期待して付き合ってはみるが、結局無理で別れるを繰り返す。斉藤だけじゃなく、周りには俺は相当な遊び人に見えているのだろう。

 本当に好きになった人とは結ばれない。独身で恋人もいないのだから、誘惑に乗って少し遊ぶくらいいいじゃないか。

「既婚者の嫉妬か?」
「可哀想な奴だと思ってんだよ。幸せが何かわからないまま死んでくんだろ、どうせ」
「ひでえな。わかんないだろ」

 と笑いはしたが、実際その通りかもしれない。

「もういいだろ」

 斉藤は俺の手を止めた。ジェルは全体に行き渡り、俺の体温ですっかり温められている。

 俺が寝転がると斉藤は俺の穴にペニスをあてがった。簡単に亀頭が入った。ジェルのおかげで痛みがかなり軽減されている。

 ゆっくり奥が広げられていく。根本まで入ると斉藤は動きを止めた。

「やっぱり前は痛かったんだろ」
「いや。ちょー気持ちよかった」
「ふぅん。慣れてるから?」
「まぁ、それなりに」

 男との経験は島さんと斉藤の二人だけだ。その意味を悟られたくないからごまかした。

「島さんとも寝てるのか?」

 俺が斉藤とセックスしたと島さんが知っている理由。斉藤でも勘付くだろうと思っていた。下手な嘘はさらなる疑惑を生む。それは自分の首を絞めかねない。

「昔の話だ。学生の頃に。遊びでな」
「お前が入れられる方?」
「当たり前だろ。あの人を抱くなんて想像つかねえよ」
「あの人って言い方やめろよ」
「なんで」
「仮にも先輩だろ。それに部署は違っても上司だ」

 まぁ確かに、と思っていたら突然斉藤が動きだした。ぐっと腰を引いたかと思ったらまたずぶっと奥まで入ってくる。ジェルがあるから摩擦も小さい。

「はっ……あ、あっ……」
「苦しいのか?」

 もちろん苦しさはある。でも好きな奴と望んでセックスしているのだから喜びが勝る。

「も、ちょい、上擦って」
「上って……」

 俺に言われた通り斉藤は動いた。島さんに気持ちいい場所を教えられた。そこを擦られるとイケる体になってしまった。

「ここ?」
「そこ……ッ……あ……、あっ……!」
「ここをすれば気持ちいいのか?」

 頷くと斉藤はそこを重点的に責めた。前回はただ早く終わらせるために腰を振ってるだけだったのに、今日は俺のことを気にかけてくれる。お人よしすぎる。

 もっと自分本位に動いてくれていいのに。斉藤を諦めようとしている俺にその優しさは辛い。

「はあっ……ああァ……」

 長引かせるつもりがもうイッてしまいそうだ。先端を両手で包みこんでその中へ吐きだした。

「もうイッたのか?」

 斉藤が目ざとく気付いた。

「イッた。でもまだ足んねえ」
「どうせ俺がイクまで終わりじゃないんだろ」
「わかってんなら、お前の濃いセーシ、俺のなかにドバドバ出せよ」
「お前、他に何人の男とやってんだよ」

 俺を蔑む目。無言で笑い返すことしか出来ない。真実なんか絶対伝えられない。





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