FC2ブログ

コンビ愛(1/1)

2017.07.28.Fri.
※エロ無し。以前出した短編集の一つの続編というかおまけ。
(簡単な前編あらすじ、というか設定。養成所時代からコンビを組むミヤ(受)と夜明(攻)。コントの打ち合わせをしていたら流れでセックスしてしまうがまだ付き合ってない感じ)


 家で飯食いながら仲のいい先輩芸人、森村さんの番組を見る。今回のトークテーマは「コンビ愛強すぎる芸人」で、続々仲が良いコンビが登場してくる。

 最後に俺の相方の夜明が出て来たので食べていたカップラーメンを吹きだしそうになった。

 俺はこの収録に呼ばれてないぞ?!

 司会の二人もまずそこを訝しみ、夜明に話しかけた。

「解散した?」
「してないです」

 夜明の否定に内心ホッとする。知らない間に見限られたんじゃないかとちょっと心配したじゃないか。

「僕もなんで今日呼ばれたのかわかんないんですよね。うち、そんなに仲良いほうじゃないんで」

 と夜明が発言すると、他の芸人から「楽屋にいる時いつも二人だけの世界作ってんだろ!」「お前ら二人距離近すぎなんだよ!」などと突っ込まれていて恥ずかしくなる。

 夜明は普段の会話は音量を抑えて喋るので、聞きとろうと思うと自然と距離が近くなり、顔を付き合わせる形になるのだ。傍目には仲良く見えるだろう。いや実際仲は悪くはない。この前なんか、コントの打ち合わせしてたら勢いでセックスしちゃったしな。

 あれはコントの内容が悪かった。ホモの整体師と客という設定。ローションプレイに俺の体が感じて勃起してしまい、その始末をつけると夜明に抜かれ、そのまま流れでセックスしていたのだ。

 ローションまみれだから変な気分になるし、すんなり挿入できちゃうし、意外に気持ちいいし、気持ちが高まって意味なくキスまでしたし。

 他のどのコンビ愛が強い芸人も、流石にこんなことまでしてないだろう。

 その俺が呼ばれず、なぜ夜明だけが番組に呼ばれたのか。

「実はですね、今回どうしても夜明くんと一緒にこれに出してくれという芸人がいましてね」

 と司会の舞原さんが振り返る。袖から後輩芸人の市原が現れた。

「みなさんポカンとしてますが、彼はシャンゴリラというコンビの市原くんと言って、夜明のことが好きすぎて好きすぎてどうしようもないというんですね」
「はい! 夜明さんがコンビ組んでくれるならいつでもシャンゴリラ解散します!」

 市原が大きな声で断言する。こいつのことは俺も知ってる。夜明の会話に何度となく出て来るし、仕事終わりを待ち伏せして夜明と飯を食いに行ったりしているからだ。

「そんなに夜明が好きなの?」
「はい! 知ってますか、芸人男前ランキングで一位なんですよ。見てください、このカッコいい顔。24時間365日見てても飽きないですしこれで飯5杯はいけますよね!」
「いやいや、そんな力説されても。せいぜい1杯やわ」
「食えるんかい」

 笑いが起こるなら、市原だけは真剣な顔だ。夜明のほうはヤレヤレって感じで笑っている。

「そこでですね、市原くんがどれだけ夜明のことが好きすぎるのか、ちょっと検証というかね、ドッキリを仕掛けてみましたんで、どうぞ」

 森村さんの振りで画面が切り替わった。都内某所の居酒屋の個室。そこに夜明と市原がやってきた。世間話をしながら食事をしている。その間、市原はあれやこれやと夜明のために甲斐がいしく動いていた。全身全霊で夜明のことを敬愛していますといった感じだ。こんなに後輩に慕われたら夜明も可愛がらずにおられないだろう。

『まず、市原がどれほど夜明のことを好きすぎるのかを確かめることにした』

 というナレーションが入った。これからドッキリ開始のようだ。

「お前さ、常々俺とコンビ組みたかったって言ってるけど、あれ、本気で言ってるのか?」
「もちろん本気っす!」

 市原の即答に夜明は下を向いて小さく笑った。

「ミヤのこと、どう思ってる?」
「はっきり言って邪魔っすね!」
「おい!」

 テレビの中の市原に向かって声を荒げてしまう。邪魔はないだろう。俺も先輩だぞ。

「夜明さんの笑いのテンポについてこれてないですよ。ツッコミの語彙が少なくて平凡だし、生ぬるい時が多いし」

 言い過ぎだろよ、おい……。でも的を射てて辛い。ドッキリだからこそ知れる本音だ。スタジオでは笑いが起きているが、俺はかなりダメージを受けている。

「よく見てるな。でも、あれはあれでいいとこあるんだよ」
「世間で言われてる癒し系でしょ? 芸人なのに意味わかんなくないっすか? 笑い取るのが仕事なのに癒し系とか」
「俺もそれに乗っかってるとこあるから耳が痛いな」
「夜明さんはそれを仕事に繋げてるじゃないですか! あの人はネタも考えないし、癒し系って属性すら活かせてないじゃないですか。俺だったら夜明さんのお荷物にはならないです!」
「市原、言い過ぎ」

 顔は笑っているが、夜明の声のトーンはマジだった。それが市原にも伝わったようで間髪入れず「すみません」と謝った。引き際心得てるところも腹立つ、こいつ。

『夜明への愛と三宅への敵対心がわかったところで、もっと踏み込んでみることにした』

 再びナレーションが入った。

「そんなに俺が好きなの?」

 夜明の直球な質問が市原にぶつけられる。さっさと済ませようと投げやりな感じ。相方の俺にはわかる。夜明の奴、ドッキリに飽きてきたな。

「好きっす。もう、マジで。引かれるくらい、本気のやつです」

 市原はさっきと変わらない熱量で質問に答える。

「本気のやつって?」
「夜明さんになら抱かれたいっす」

 なな、なんだって?! スタジオの方から悲鳴とどよめきの声。

「怖えよ」

 夜明は仰け反るように市原から顔を逸らした。

「俺が抱いてもいいっす」
「嫌だよ」
「やっぱりミヤさんみたいなかわいい系が好きなんですか」
「あれかわいい系か? っていうか、ちょっと待て。お前って男が好きなのか?」
「男は夜明さんだけっす。初めて夜明さん見た時、こんな格好いい人いるんだって雷に打たれたんですよ」
「恥ずかしいからそのへんで止めとこうか」
「俺、本気っす」
「わかったから」
「俺とコンビ組んでください」
「だから俺にはミヤがいるから」

 珍しく夜明が慌てている。俺も正直、どんな感情になればいいのかわからないでいる。

 市原が夜明のことが好きすぎることはよくわかった。それが性的な意味も含んでいることも。

 相方の俺としてはどういう反応が正解なんだ? いますっごいムカついてるのは正しいのか? 嫉妬は間違いじゃないか? セックスなんかしたことないコンビは、こんな奴が現れた時どう思うんだ?

 ラーメンを食べることも忘れて俺は画面を凝視し続けた。はっきり断らないで苦笑を続ける夜明にも苛々する。ちょっと受け入れてる感じが見てて嫌だ。

 いてもたってもいられなくなって夜明に電話をかけた。数コールで繋がった。

『はい』

 聞き慣れない声が聞こえて来た。

『ミヤさん? おはようございます! シャンゴリラの市原です!』
「なんでお前が夜明の携帯に出るんだよ!」

 さっきまでの苛立ちが声に出た。ほとんど怒鳴るように言っていた。

『夜明さん、いまトイレに行ってます。伝言あったら伝えておきますよ?』

 取りついでもらえないことに無性に腹が立った。どうしてこいつがそんなことを決めるんだ。どうしてこいつが邪魔をするんだ?!

「おい、市原。ハレトーク見たぞ」
『あっ、もしかして俺が夜明さんと出たの、見てくれたんですか?』
「ああ、見たよ。お前、そんなに夜明が好きか?」
『好きっす!』

 迷いのない即答にカッと頭に血が上った。

「言っとくけどあいつは俺のだから。変なちょっかいだすなよ。最初にあいつに目つけたのは俺だし、実際コンビ組んでるのも俺だから。お前があいつとコンビ組む日なんか未来永劫にこないから諦めろ。お前が俺たちの間に入り込む隙なんかねえんだよ」
「それ、ミヤさんが一方的にそう思ってるだけですよね? 夜明さんの本心はわかりませんよね」

 痛いところをつかれて言葉に詰まった。確かに言う通りだ。夜明の本心なんて知らない。いつもネタを考えてくれるのは夜明だ。ライブや番組の打ち合わせも夜明に任せてしまっている。

 あいつが俺とコンビを組むメリットってなんだろう? 何も思いつかなくて愕然となった。足元がガラガラと崩れていくような感じだ。

『それに俺、コンビ組めなくても恋人でもいいっす!』

「ばっ、ばかやろう。あいつはエロい姉ちゃんしか興味ねえんだよ。お前みたいなムキムキマッチョ、夜明が抱きたいと思うわけねえだろ!」

 なんとか言い返したものの、俺の思考はさっきの市原の発言に支配されていた。夜明が俺とコンビを組む理由。何も思いつかないじゃないか……。

『おい、勝手に人の性癖バラすなよ』

 聞き慣れた声に我に返った。夜明の声だ。

「なんで市原と一緒にいんだよ!!」
『なんでって、飯行きましょうって誘われたんだよ』
「ホイホイついて行くなよ! 人には危機感ないとか言っておいて!!」
『ちょっと落ち着けよ。どうして俺が市原とメシくっちゃいけないんだよ』
「ハレトーク見たんだよ!!」
『あー、あれ。見ちゃった?』
「俺絶対解散しないからな! 一生お前とコンビ組むから! お前は俺のもんだから!!」

 夜だっていうことも忘れて絶叫に近い音量で叫んでいた。その次の瞬間、いきなり玄関の戸が開いて、カメラと照明を持った大人たちがドカドカ部屋に入って来た。

「なっ、えっ?! え!?」

 照明が眩しくて目を細める俺の耳に夜明の笑い声が聞こえて来た。爆笑だ。

「ちょ……え、なにこれ?!」
『ドッキリだよ、バーカ』
「ドッキリ?! なんの?!」

 混乱する俺に夜明が説明してくれた。俺がさっきまで見ていたハレトークはスタッフがいつの間にか仕込んだ映像で、実際にいま放送されているものではないこと。市原も仕掛け人の一人で、本当のターゲットは俺だということ。

 今まさにハレトークの収録真っ最中で、俺の部屋には複数の隠しカメラが仕込まれていること、それを皆で見ていたことなどを教えてもらい、俺はますます混乱に陥った。

『舞原です。三宅くん、ごめんね』

 スタッフから渡されたイヤホンから司会の舞原さんの声が聞こえた。

『いま、コンビ愛強すぎる芸人の収録を行ってまして、しっかりミヤのコンビ愛も見せてもらいましたから!』
「えっ、ちょっと待って下さい! 意味がまだわかんないんですけど!」

 心臓ドキドキして汗が噴き出してきた。隠し撮りだって? 帰宅してからなにかおかしなことをしでかしてないか不安でたまらない。

『ミヤ、森村です。お前は俺のもんだからって言われた時、夜明くん真っ赤になってましたよ。夜明は否定してたけど、お前ら断トツでコンビ愛強すぎ芸人です』
「ちょっと森村さん、ちょっと待って下さい! いち、市原が! あいつが挑発してきたんですよ?!」
『そういう時に出るのが本音でしょ。待って、お前の相方に替わる』

 ミヤ、と俺を呼ぶ夜明の声が聞こえた。

『詳しいことは今度会った時に話すとして。まぁ、なんだ、ありがとう。嬉しかった。すげえ恥ずいけど。これからも末永くよろしく』
「えっ、ああ、うん。こ、こちらこそ」
『お前を相方に選んで良かった』

 耳が痛くなるほどの拍手と歓声が湧きあがった。

 汗が止まらないし、動機も収まらない。公共の電波でとんでもないことを口走ってしまった。そうだこれはコンビ愛だ。市原に嫉妬したのも、コンビ愛が故だ。相方への独占欲なんて、多かれ少なかれみんな持っているもののはずだ。

 きっと、そうだ。

 でも次、どんな顔して夜明に会えばいいんだろう。そしてこの放送をどんな顔してみればいいんだ。とりあえず今はテレビ用のコメントをしないといけない。

「俺たち、死ぬまで一緒だからな」





【続きを読む】
スポンサーサイト
[PR]

第二ボタン(2/2)

2017.07.06.Thu.
<前話はこちら>

 母さんが日課のヨガを始めたのを確かめてから航士の部屋へ向かった。勉強している背中がかっこいいと思っていた。今はただひたらすら腹が立つだけだ。

「どうしたの、兄さん。また構って欲しいの?」

 椅子を回転させながら航士が振り返る。余裕ぶった態度。俺が全部知ってるなんて思ってもいないんだろう。

「お前、好きな子いるのか?」

 俺の質問に航士が軽く目を見張る。立ちあがって近寄ってくると「兄さんに決まってるでしょ」と俺の頬を手で包んだ。全部知ったいまでも、その手の温もりにドキドキしてしまう。間近で見つめられると心臓が苦しくなるんだ。

「放ったらかしにされて不安になった? 僕が好きなのは兄さんだけだよ。今も昔も。ずっと変わらない」

 と言ってキスしようとしてきたので思わず突き飛ばした。航士が驚いた顔をする。

「勝手にすりゃいいよ。お前がどこ受験しようが、誰と付き合おうが、俺にはどうでもいいし! 俺もお前のことなんか本気じゃないし、大学に可愛い子いっぱいるし! 男で実の弟なんか面倒なことばっかだし! だからお前も好きにしろよ。もう俺に遠慮することないから!」

 食事中、航士の顔を睨みながら責める言葉や文句ばかりが頭のなかをグルグル回っていた。でも兄としてのプライドからそのまま伝えることは出来なかった。振られるなら、こっちから振ってやる。それがわずかに残された俺の矜持だ。

「急にどうしたの、兄さん。僕、何かしたかな?」

 困惑した顔もかっこいいとか。どこまでもふざけた奴だ。

「もう全部知ってるから!」
「何を?」
「お前が奈緒子を好きなことに決まってるだろ」
「奈緒子?!」

 航士は目を大きく見開いた。

「なにがどうしてそういう結論になったのか、最初からちゃんと話してくれる?」

 とぼけるつもりか。上等だ。言い逃れできないよう、全部話して聞かせてやる。

 奈緒子から聞いた情報、母さんの話、俺の記憶等々、航士がひた隠してきたことと、俺の推理と結論を披露した。

 全部聞き終わった航士は額に手を当てて、深くため息をついた。今のうちになにか言い訳を考えているんだろうが、全部俺が論破してやる!

「僕が中学の時に奈緒子にボタンをあげたのは事実だよ」
「ほら! やっぱり!」
「でもあげたのは僕たちが卒業する時じゃないよ。兄さんの卒業式の日だ」
「お? 俺の?」
「奈緒子はね、昔から兄さんのことが好きだったんだよ。それで兄さんの卒業式の日の夕方、兄さんのボタンが欲しいって僕に頼みに来たんだ。兄さんのものは髪の毛一本誰にもあげたくなかったから僕のボタンをあげた。奈緒子には黙ってたけど、たぶん、ボタンのない僕の制服を見て気付いたんだと思う」

 新しい情報に頭が混乱する。奈緒子が俺を好きだったって? 航士がボタンをあげたのは、俺のボタンを奈緒子に渡したくなかったから?!

「そ、そんなのあとから何とでも言えるじゃん!」
「母さんがボタンを付け替えるのを兄さんも見てたんだろう? 考えてもみてよ、僕が卒業した時なら、わざわざボタンを付け替える必要はないよね? もう着ないんだから」

 確かに。言われてみればそうだ。

「付け替える必要があったのはあと一年、僕には制服を着る必要があったから。つまり奈緒子がボタンを欲しいと言いだしたのは僕がまだ中2のとき。兄さんが卒業する時なんだよ。これだけじゃなんの証拠にもならないけど、まだ僕を信じてくれない?」

 思い返すと、奈緒子も「卒業シーズン」という言い方をして、自分たちの卒業式だったとは一言も言っていなかった。

 もしかするとこれは本当に恥ずかしいことをやらかしてしまったのかもしれない。

「でも……でも、志望校が奈緒子と同じじゃんか」
「今日兄さんに聞くまで奈緒子の志望校なんか知りもしなかったし、知った今でもぶっちゃけ合否の結果も興味ないよ」
「じゃあ、なんで急に志望校かえたんだよ」
「家から通えるからだよ」
「は?」

 こっちは真剣に聞いているのに間の抜けた答えが返って来た。

「前の志望校を決めた時はまだ兄さんとこうなる前だったから」

 と言って航士は俺の腰に手を回し自分のほうへ引きよせた。

「兄さんから離れることを第一条件に選んだ大学だったんだ。でも今は一分一秒も離れたくないから、行きたい学部があって家から通える大学を探したら、偶然奈緒子と同じだっただけ」

 航士が以前志望していた大学は県外で、合格したら寮に住むと話していたっけ。俺はそれを羨ましいと思いながら聞いていたけど、その頃の航士は好きになってしまった俺から離れるために家を出る覚悟をした時期だったのだ。

「本当に奈緒子のことは、なんとも思ってないんだな?」
「奈緒子がベッドの上で裸で寝てても勃たないよ」
「お、俺は……?」
「視界に入っただけで、めちゃくちゃヤリたくなる」

 俺の耳元で囁いた航士の股間は、それを証明するように熱く硬くなっていた。



「一瞬でも僕の愛を疑うなんて許さない。お仕置きが必要だね」

 と誤解が解けたあと、航士は俺をベッドに押し倒すと口と手で俺の体中を愛撫しまくり、ご褒美みたいなお仕置きで俺を一回イカせたあと、今日もこれで終わりかと落胆する俺の尻穴にローションまみれの指を突っ込んできた。

 いつもなら丁寧に解されるのだが、今日はある程度解すとすぐさま航士のちんこが入って来た。

「ごめんね。僕も相当、溜まってたみたい」

 とすまなさそうに言う航士がたまらなく愛しかった。自ら足を広げ航士を受け入れた。気持ちよくなってもらいたくて締め付けた。いつもより早く、航士は射精した。

 中出しをねだったのは俺だ。倒錯した快感に、ほぼ同時に俺も果てた。

 二人とも一度や二度じゃ収まらなかった。

 体位をバックにかえて、背後から貫かれた。

「うっ……ひぐぅ……ッ……ン……あっ、あはあぁんっ!」

 航士に突きあげられた拍子に口を塞い出ていた手が外れ、大きな声が漏れた。

「ちゃんと手で押さえてて。母さんに聞かれちゃう」
「ご、ごめっ……アッ、あ、待って……んんんっ!!」

 俺の腰を掴み、航士が高速ピストンで中を抉ってくる。さっき一度航士が出したものがグチョグチョと音を立てている。

 シーツは俺の出した精液ですでにドロドロだ。

「だから言ったのに。僕、止まらなくなるよって」

 俺が誘っても誘ってもなかなか最後までしてくれなかったことを言っているのだろう。俺は朝までだってこうしてたいのに。明日のことなんかどうだっていい。

 でも航士の受験勉強も邪魔はしたくない。

「ごめんっ、あんっ、航士……ごめ……でも……はぁんっ、あ、気持ち良い……ッ」
「僕も。兄さんのここ、すごく気持ちよくてずっと中に入ってたいよ」
「いれば……いいじゃんっ……ローターもディルドもやだッ……航士がいいっ……航士のちんぽでいっぱいして欲しい……っ」
「もちろん、死ぬまでいっぱいしてあげる。その前に」

 航士は俺のちんぽの根本をぎゅっと握った。

「僕のこと本気じゃないって? 大学の可愛い子に乗り換えるんだって?」
「あれは……! 勢いって言うか……」

 首をひねって見た航士はいつものように穏やかに微笑んでいたが、目は笑っていなかった。顔が整っているからか変に凄みがあってちょっと怖い。

「勘違いしただけで本心じゃないってわかってるつもりだけど、言われた時はショックだったし傷ついた。全くそんな気持ちがなければ出て来ない言葉だろうし」

「違う! ほんとにあれは嘘……っていうか……ほんとはお前に捨てられるのが怖くて仕方なかったんだ。夢中なのは俺だけだったんだって思ったら悲しかったし」
「僕のほうがずっと兄さんに夢中だよ。物心ついた頃から兄さんのことばかり見てる。僕の生活も人生も、全部兄さんが中心だ。やっと手に入れたのに、くだらない情報に惑わされないでよ。僕だけを信じて。僕だけを見て。僕だけを愛してよ」

 懇願するような口調で言われて胸が痛んだ。こんなに好いてくれている航士を疑って本当に悪いことをした。毎日好きだと言ってくれるし、毎日キスもしてくれる。俺がねだれば勉強で忙しいのにその合間を縫って俺の相手もしてくれる。航士もずっと欲求不満だったはずなのに、文句ひとつ言わないで俺の欲求だけを沈めようと努力してくれる。

 これじゃ捨てられたって文句言えないや。

「ごめん、航士……俺、お前だけが好きだし、お前だけを見るよ」
「愛してくれないの?」

 そんなことを訊かれて顔が熱くなる。

「あ、あいしてるよっ」

 恥ずかしくて声が裏がえった。でも航士は笑わずに、「絶対、一生、二人一緒だからね」と執念が滲む真剣な口調で言った。

「わかってる。お前よりいい男なんか他にいないしな」
「それに、こんなに兄さんを愛してあげるのも、僕だけなんだからね」

 俺の背中にキスしたあと、航士は腰の動きを再開した。リズムよく突きあげられる。

「ふんっ、んんっ、あっ、あはぁっ、ああん!」
「大学を卒業したら家を出て2人で暮らそうね」
「あっ、ん、うんっ……一緒……!!」
「毎日好きなだけセックスしようね」
「やぁっ、あっ、出るッ、イクッ、航士……手ぇ、はなして……!!」
「愛してるよ、兄さん」
「あ……ッ!! ああ──ッ!! イッ……ぁ……ああぁ……っ!」

 航士が手を離した瞬間、勢いよく精液がぶちまけられた。



 友人たちと遊びに行くらしく、卒業式を終えた航士が着替えのために一旦家に帰って来た。リビングでテレビを見ていた俺に「早く帰るからね」と耳打ちついでにほっぺにキスする。

「卒業式の日くらい、ゆっくり馬鹿騒ぎして来いよ」
「早くこの続きしたいでしょ」

 言うと、いきなり口を合わせて濃厚なベロチューをしてきた。それだけで簡単に半立ちになる俺。したり顔の航士。

「あとこれ。もらってくれる?」

 差し出された航士の手には制服のボタン。

「これって」
「僕の制服の第二ボタン。兄さんにもらって欲しくて死守したんだよ」

 言われてみると、他のボタンは全部なくなっている。

「……やっぱり早く帰ってこい」
「そのつもりだよ」

 笑顔で航士が言う。こんなに愛されてていいんだろうか。





関連記事

第二ボタン(1/2)

2017.07.05.Wed.
<前話「兄弟愛」はこちら>

 父さんはまだ仕事中で、母さんは最近始めたヨガをやりだしたから最低30分はそっちに集中してくれるはずだ。

 抜き足差し足で航士の部屋の前に立ち、コンコンとノックしたら見とれるようなイケメンが出てきた。

「お風呂だったら兄さんが先に入って」
「じゃなくてっ」

 航士の部屋に入り、足で戸を閉めながら航士に抱きついた。つま先立って航士にキスする。背中と腰に手が回されるのを感じて、それだけでもう体がゾクゾクと興奮した。

「下に母さんがいるのに」
「ヨガ始めたから……っ」
「それで発情してるの?」

 発情なんて言われて恥ずかしいがその通りなので無言で航士を睨んだ。言わなくたってわかるだろう。航士はクスリと笑って俺の股間に太ももを押しつけて来た。

「もう、こんなにしてるの?」
「……ッ……だって……ずっと、してない……っ!」

 太ももでグリグリされて勝手に息が跳ねあがる。

 航士は受験生で今まさに追いこみ中の超多忙な時期。せっかく親が出かけた貴重なチャンスでさえ、勉強を理由に最後までしてくれないことが続いていた。俺の我慢も限界。

「この前手と口でしてあげたでしょ?」
「違う……航士の……入れて欲しいんだよ……!」

 こんなこと言わせんな! きっと航士はわかってて言わせてるんだ。恥ずかしがって顔真っ赤にしながら口にする俺を見て楽しんでいる。

 その証拠に満足げに微笑んでご褒美だと言わんばかりに俺のおでこにキスした。

「前も言ったけど、受験が終わるまでは我慢してもらわないと。志望校変えてギリギリなんだ」
「でも、一回くらい……ッ」
「最後まですると僕も夢中になって兄さんを責めちゃうから、疲れて勉強どころじゃなくなっちゃうんだよ」

 それはわかるけど。わかるけど!

 こんなに俺が誘って、しかもお願いまでしてるのに駄目なのか?! お前、昔から俺のこと好きなんじゃなかったのかよ!

「受験が終わったら毎日兄さんを抱いてあげる。何度もイカせて、何度も中出ししてあげるから。ね。今はこれで我慢して。かわいい僕の兄さん」

 俺の体を放すと航士はその場へ膝をつき、ズボンのベルトを緩めだした。いきり立ったものを引っ張り出して、それをペロリと舐める。

「今度、ディルドを買ってあげる。ローターで一人でやっちゃう兄さんなら、きっと気に入ると思うよ」
「ばっ、馬鹿にすんな……あっ!」

 パクッと先端が航士の口に消えたと思ったら、根本まで咥えこまれていた。熱くてヌルヌルと湿っていて気持ちがいい。

 ジュルッジュボッと音を立てながら航士が顔を前後に動かす。端正な顔が俺のちんぽを咥えて形を歪ませている。

「ああっ、あっ、あん……やっ、航士ぃ……!!」

 ジュルルルルッと強く吸い上げられて腰が抜けそうになり航士の頭にしがみついた。手で一回、口で一回出してもらったのはつい三日前のこと。昨日の夜は自分でもヌイた。それなのにもう膝がガクガクの快感に襲われて立ってられなくなる。

「イクッ……イッちゃ……!! やだっ、あぁんっ、やだってば! 航士の欲しい……!! 航士のちんぽ入れて……ッ!!」

 こんなに頼んでも航士の意思は固いようで、フェラをやめない。それどころかより強烈にフェラチオされて目の前がグニャグニャと歪んだ。

「ああっ、あっ! あっ! や……あ──イクッ──出る──っ!!」

 頭が真っ白になった瞬間。航士の頭を押さえつけながら俺はあっけなく射精していたのだった。



 大学の友達と少し遊んでから家に帰ったら玄関に見慣れない女物の靴が並んでいた。リビングから女の笑い声も聞こえる。

 また航士の知り合いか?! 邪魔してやろうと険しくなる顔のままリビングに入って行くと「おかえり!」と出迎えてくれたのは、近所に住む幼馴染みの奈緒子だった。

 家が近くて通う幼稚園も同じだったから、小さい頃はほとんど毎日のように遊んでいた。思春期に入った中学あたりから、すれ違っても目礼する程度だったが、高校生になった頃から顔を合わせれば挨拶するし、たまに立ち話をするくらいには戻っていた。

 航士と同い年だから今年受験で大変なはずなのに、油売ってて大丈夫なのか。

「奈緒子ちゃんがお裾分けのみかん持ってきてくれたのよ」

 母さんの言うとおり、テーブルにはビニール袋に入ったみかんが置いてあった。

「まだおじいちゃんちに大量にあるらしくて、送ってきたんだよねー」

 奈緒子のお母さんの実家でみかんの栽培をしているらしい。毎年たくさん送ってくるからうちもお裾分けでもらっていた。我が家の風物詩の一つだ。

「あ、奈緒子ちゃん、シュークリームあるの。一緒に食べない? 和希も食べるでしょ?」
「え、ああ、うん」

 受験生を引き止めて大丈夫かと奈緒子を見れば「やったー」と手を叩いて喜んでいた。意識したことなかったけど、やっぱりこいつも女の子なんだなぁ。

「用意してくるね。お飲み物は紅茶でいい?」
「私も手伝いまーす」
「いいのよ。座って待ってて」

 母さんがキッチンへ消えたので、俺と奈緒子二人になった。鞄をソファにおろして、奈緒子の向かいに座ってみかんに手を伸ばす。奈緒子にもらうみかんは毎年甘くておいしい。

「そういえば航士くん、受験勉強頑張ってる?」

 同じくみかんの皮を剥きながら奈緒子が言った。

「机にかじりついてやってるよ」
「さっき和希くんのお母さんに聞いたけど、志望校変えたんだって?」
「そ。ランクあげたからいま必死」
「そうなんだ……」

 黙々とみかんの皮を剥く。白いとこも綺麗に取り除く。

「うちの学校、もう午前授業だけになったんだよね」

 先にみかんを食べ始めていた奈緒子が言った。

「航士のとこは自由登校だって」

 俺も1つを口に放り込んだ。うん。甘い。

「受験受験で忘れがちだけど、もうすぐ卒業でしょ。なんだか早いなーって」
「そんなもんだよ。高3の三学期なんて」
「卒業って言えばさー、中学の卒業シーズンの頃に、航士くんから制服のボタンもらったことあるんだよね」
「はっ?!」

 ボタンがどうしたと一瞬意味がわからなかったが、卒業シーズンにもらうボタンと言えばあれだ。制服の第二ボタンのことだ。

「航士が? 奈緒子に?!」
「うん。私が欲しいって頼んだわけじゃなくて、航士くんから自主的に自分の制服のボタンくれたの。あれってどういう意味だったんだろう?」

 首を傾げて奈緒子は「ウフフッ」と笑った。なんだその満更でもない感じ。

「ちゅ、中学の頃の話だろ」

 残りのみかんを口に詰め込んだ。中/学生の頃はすでに航士は俺のことが好きだったはずだ。本人がそう言っていた。あれは嘘だったのか?

「私も忘れてたんだけどね。あまり意味のない思い付きの行為だったのかなーって。でも、航士くんが志望校変えたってさっきおばさんに聞いた時、なんか繋がったっていうか、思い出しちゃったんだよね。私の志望校と同じだったから」

 あやうくみかんを吹きだすところだった。航士の志望校が奈緒子と同じ?!

「奈緒子も、××大なのか?」
「うん。ねえ、航士くんっていま、彼女いるの? もしかして私のこと好きなんだと思う?」

 そんな赤い顔して聞かれたって返答に困る。航士と付き合ってるのは俺のはずだし。航士が好きなのも、俺のはずなんだ。奈緒子の話が出た記憶は最近ないし、奈緒子を意識しているような素振りも見せたことがない。

 でもなんとも思ってない女の子に自分の制服のボタンを渡すだろうか。もとの大学なら推薦余裕って話も聞いていたのに、急きょ志望校を変えたのだって思えばおかしな話だ。

 例えば母さん経由で奈緒子の志望校を知り、同じ大学に通うために変更したのかもしれない。俺と同じ大学じゃないのも、ランクが違うからと割り切っていたが、奈緒子のためならランクをあげて必死に勉強したくなるのか。

 本命と遊びの違い? 男と女の違い? やっぱり兄弟でなんて御法度すぎて最初から本気じゃなかったってことか?

「それとなく、航士くんに訊いてみてくれない?」

 手を合わせた奈緒子に頼まれて頷くしかなかった。




 夕飯だと呼ばれて下におりてきた航士が、テーブルのみかんを見るなり「奈緒子が来てたの?」とひとつを手に取った。奈緒子のことだと勘が鋭いじゃねえか。

「奈緒子もお前と同じ大学を受験するんだって」
「へえ、知らなかったな」

 平然と嘘つきやがって。揃って合格した暁には交際申し込んでバラ色のキャンパスライフを送る計画なんじゃないのか?

「一緒に勉強でもすれば? 情報交換できていいんじゃね?」
「僕は一人でやるほうが性に合ってるから」

 そりゃ俺の目の前で堂々とイチャつけるはずないもんな。俺にあんなことして、あんなこと言っておいてさ。

 母さんが皿をテーブルに並べだしたので会話は終わった。航士に「彼女」がいるかどうか訊くのを忘れていた。夕飯のあとできいてやろう。



 俺より先に食べ終わると航士は勉強のためにさっさと自分の部屋へ戻った。テレビのバラエティ番組を見て笑い声をあげる母さんにさりげなく奈緒子の志望校を訊いてみると、奈緒子のん言う通り、航士と同じ大学だった。

 やっぱり母さん経由で知ったに違いない。

「航士の中学の制服ってまだとってる?」
「中学の? たぶんあると思うけど。どうして?」
「あいつの制服のボタンってなくなってた?」
「どうだったかなぁ。あっ、そういえば、一個ボタンがなくなったから和希の制服のボタンを付け替えたことがあったわね」

 言われて思い出した。航士が制服のボタンを一個なくしたからと言って、俺の制服から航士の制服へボタンを付け替えたことがあった。その現場を俺は確かに見た。

 奈緒子の言ったことは本当だったんだ。

 あの大ウソつき野郎。




よなよなもしもし

【続きを読む】
関連記事