可愛さも憎さも百倍(2/2)
2016.09.28.Wed.
<前話>
肛門にひろ君の先端があてがわれる。俺は鋭く息を吸いこんだ。次の瞬間、硬いペニスが俺を引き裂きながら中に入って来た。
「ひぃ……い、いっ……! あ、ああぁっ……!!」
「あー、すっごい、きつい……」
ひろ君は少し顔を歪めて笑いながら、背を伸びあがらせた。反り返ったペニスが俺の内部をグリッと抉って俺は息を詰まらせた。
「真吾のここ、想像してたよりすごくいいよ。処女まんこみたい」
「い、あっ……ひろ君……! やだぁあっ、あ、痛いっ……痛いよおぅっ」
「痛い? ……ほんとだ、少し血が出てるね。あとで手当てしてあげるよ」
俺に酷いことしながら、いつも通りの優しい口調で言う。言ってることと、やっていることがちぐはぐだ。これは本当にひろ君なのか? これは現実?
「ああぁっ、やだ、ひろ君、やめてっ、あっ、あっ」
ひろ君は抜き差しを止めない。頭を持ち上げると、ひろ君のペニスが俺の中を出たり入ったりしているのが見えた。
「やあっ、あっ、あんっ、だめぇっ」
「どこだったかな……ここ? ここかな?」
ひろ君は腰を小刻みに動かしながら、中での位置を微調整する。さっき指で見つけた前立腺とやらを探しているんだろう。
「あっ、や、そこ、いやっ」
ビクンッと体が跳ねあがる場所を突かれた。俺の様子を見てひろ君はにやりと笑った。
「ここか。真吾も気持ちよくしてあげるからね」
ひろ君は器用に前立腺を的確に擦りながら腰を振った。
「あっ、あんっ、あぁあっ、そこだめっ、ひろ君! やだっ、あっ、はぁんっ!」
痛みのなかに快感が生まれる。ペニスの根本を内側から刺激されて、そこを中心に快楽が広がっていく。だらんと力の抜けていた俺のペニスが、ふるふると立ちあがり始めた。
「真吾、気持ちいいだろう? 中がうねってる」
ふふっとひろ君の笑い声。俺は曖昧に首を振った。
「ああっ、違っ……気持ちよく、なっ、ああぁんっ」
「体は正直だよ。ほら、こんなに濡れてる」
俺のペニスを握り、先端をクチュクチュと揉みしだく。さっきの射精の残滓だけじゃない潤いが、そんないやらしい音を立てているのだ。顔だけじゃなく、体中が熱くなった。
「やっ、あっ! はぁっ! あんっ」
「気持ちいいんだろう? 真吾」
「ああぁんっ、やらっ……気持ち、よく、なっ……っ」
「真吾のオマンコは、グチュグチュに濡れて喜んでるよ」
「オマンコじゃ、ないよっ、はっ、あっ、ああっ」
「ちんこ突っ込まれたら、そこはもう、オマンコなんだよ。真吾は女の子になっちゃったんだ」
「違うっ、俺は……! 女じゃ、な、あっ、あぁんっ」
ペニスをごしごし扱かれて、咄嗟にひろ君の腕を掴んだ。
「そんな、しちゃ……、また、出ちゃうよ、ひろ君……」
「イッちゃいなよ。真吾のイクところ見せて。俺が好きなんだろ? お願い聞いてくれるよね?」
「なんで……? なんでこんなこと、するの? ひろ君は、俺のこと……好き?」
「もちろん。俺も真吾のことが好きだよ」
「誰よりも……? 彼女より?」
べそをかく俺を見て、ひろ君は苦笑した。
「順番に意味なんかある? そんなつまらないことにこだわっていたら、俺とこんなこと、出来ないよ? それでいいの?」
「いやっ……、あ、わかんない……っ、わかんないよ」
「真吾はまだ子供だから」
俺を子供扱いすることで、ひろ君はこの話題を切りあげてしまった。俺の腰を抱え直し、パンパンと音を立てながらペニスを突きたてる。
「ああっ、あんっ、だめ、ひろ君! 出ちゃうっ! また精液出ちゃうよ!」
「俺のことが好きなら、エッチな真吾を見せて」
「はあぁっ、あっ、あっ! ひろ君、好きっ! 大好き! 見て! 見てて! イクところ……! 俺がイクとこ、見てて……ッ!!」
「見ててあげる。イッてごらん、真吾」
俺はひろ君に見守られながら精液を吐きだした。ひろ君はあいかわらず優しい眼差しを俺に向けている。口の端には笑みが浮かんでいて、ひろ君の期待通りにできたのだと、俺は嬉しくなった。
「じゃあ、そろそろ俺も終わりにしようかな」
「ひろ君もイクの?」
「そうだよ。どこに欲しい?」
「えっ」
「真吾の中がいい? 顔? 口の中がいいかな? 初めてだから、真吾の希望を聞いてあげるよ」
ひろ君が提案する一つ一つの場面が、勝手に頭に描かれる。どれであってもぞくぞくと甘美な震えが走る。全部がいい。全部して欲しい。それはさすがに無理だから、俺は、「中に出して」とお願いした。
ひろ君は口を左右に吊り上げた。
「お望み通りに。俺の可愛い真吾」
そう言って、ひろ君は激しいピストンを開始した。
※ ※ ※
夕飯を食べていたら、母さんが思い出したように言った。大学を出たあと、ひろ君は家を出て一人暮らしをするらしい、と。
「そんなの俺、聞いてない!」
先週の日曜に、ひろ君の部屋でセックスした時には何も言われなかった。だから心底驚いてつい大きな声が出た。
「どうしてあんたに言わなきゃいけないの」
母さんは俺の剣幕に鼻白んだ顔つきで、次のおかずに手を伸ばす。
俺にはそれを聞く権利があるはずだ。だって、中三のあの日から、俺とひろ君はセックスする仲なんだから。
ひろ君はモテるから、俺の他にも大勢の女の子とセックスしている。ひろ君は皆を愛してくれるけれど、誰にも夢中にならない。平等にその愛を分け与えてくれる。この三年で俺以外に二人の男ともセックスしたみたいだけど、「やっぱり真吾が一番いい」と俺を抱いて言っていた。
男の中で俺が一番なら、それ以上望むことはない。人気者のひろ君を独占したいなんて、身の程知らずもいいところだ。けれど、愛の供給が終わるなんて話は受け入れられない。それがなくちゃ生きていられないほど好きにさせたのは、ひろ君本人なのに。
夕飯のあと、俺はひろ君の家に向かった。玄関を開けたのはひろ君のお母さんで、「宏之は自分の部屋にいるわよ」と教えてくれた。
ひろ君の部屋の戸をノックして、ドアノブを回す。勉強机に向かっていたひろ君が振り返り、俺だとわかると困った顔をした。
「これから出かけなきゃいけないんだ」
「彼女に会うの?」
「友達だよ」
「セックスする友達?」
「しない方の友達だよ」
ひろ君が苦笑する。ということは、大学の男友達なのかもしれない。
「引っ越しするって聞いた」
「ああ、おばさんに? そうだよ。ここからじゃ、就職先に遠いからね」
「俺を置いていくの? 俺はどうなるの?」
「俺のことは忘れて受験勉強に集中するんだね」
「嫌だ。今更ひろ君を忘れるなんてできないよ。俺のこと、好きって言ってくれたじゃん」
「好きだよ。今も昔も俺の可愛い真吾だよ。もう、可愛いって形容できる姿じゃなくなったけどね」
この三年で俺のほうが体格がよくなっていた。
「俺もひろ君が好きだよ。誰よりも好きだよ。だから行かないでよ」
「たまに遊びに来るといいよ。今はまず、受験に集中しないとね」
高校受験の時に俺に手を出しておいて、引っ越しするからと俺を突き放すなんて無責任だ。こんなに好き合っているのに。
「ひろ君、俺はもう子供じゃないよ」
「そうだね。だったら、俺の事情もわかるだろう?」
「初めてセックスした時の、ひろ君と同じ年になったよ」
一歩一歩、ひろ君に近づいた。ひろ君の顔から笑みが薄れていく。俺が目の前に立つと、その顔から完全に笑みが消えていた。
「ひろ君、俺が好きでしょ?」
何か言おうとしてひろ君の口が開いた。でも言葉が発せられることはなかった。
「俺もひろ君が好きだよ。だから、抱いてあげるね」
ひろ君は目を見開いた。椅子から立ちあがり逃げようとする。その腰に抱きついてベッドに押し倒した。ひろ君は見たことのない顔で「ふざけるなっ」と俺を殴った。酷い。三年前のひろ君と同じことをしているだけなのに。俺はあの時、殴ったりなんかしなかったのに。
カッとなってひろ君の首に手をかけた。力を込めるとひろ君は目を剥いた。俺の腕に爪を立て、足をばたつかせる。顔が赤くなっていくひろ君にキスした。
手を緩めると、ひろ君はゴホゴホと咳き込んだ。充血して涙の滲む目で俺を睨みつける。
「お前……っ、なんてこと……、くそっ! ゴホッ……退け! 可愛がってやった恩も忘れやがって!」
バチンと頬を打った。手加減したのに、ひろ君の体は大きく傾いでベッドに突っ伏した。ひろ君は怯えた顔で俺を見上げた。
「い、嫌だ、やめろ……!」
「土壇場になって怖くなっちゃった? 大丈夫だよ、誰だって最初は怖気づくものだから」
ひろ君は顔を歪めた。まさか自分が言ってきた言葉を聞かされる側にまわるとは思わなかったんだろう。
俺はひろ君の上に乗って、服のなかに手を入れた。
「ひっ……やめっ……真吾、嫌だっ、やめろ……!」
「静かにしないと、おばさんに聞かれちゃうよ」
ひろ君は助けを求める目を部屋の外へ向けた。でも結局迷って目を伏せた。年下の男に襲われている姿なんか誰にも見られたくないよね。馬鹿だなぁ。つまらないプライドにこだわって、逃げだせるチャンスを自分で諦めるんだから。
でも、そんなところも、俺は愛してあげるよ。
「俺の可愛いひろ君」
肛門にひろ君の先端があてがわれる。俺は鋭く息を吸いこんだ。次の瞬間、硬いペニスが俺を引き裂きながら中に入って来た。
「ひぃ……い、いっ……! あ、ああぁっ……!!」
「あー、すっごい、きつい……」
ひろ君は少し顔を歪めて笑いながら、背を伸びあがらせた。反り返ったペニスが俺の内部をグリッと抉って俺は息を詰まらせた。
「真吾のここ、想像してたよりすごくいいよ。処女まんこみたい」
「い、あっ……ひろ君……! やだぁあっ、あ、痛いっ……痛いよおぅっ」
「痛い? ……ほんとだ、少し血が出てるね。あとで手当てしてあげるよ」
俺に酷いことしながら、いつも通りの優しい口調で言う。言ってることと、やっていることがちぐはぐだ。これは本当にひろ君なのか? これは現実?
「ああぁっ、やだ、ひろ君、やめてっ、あっ、あっ」
ひろ君は抜き差しを止めない。頭を持ち上げると、ひろ君のペニスが俺の中を出たり入ったりしているのが見えた。
「やあっ、あっ、あんっ、だめぇっ」
「どこだったかな……ここ? ここかな?」
ひろ君は腰を小刻みに動かしながら、中での位置を微調整する。さっき指で見つけた前立腺とやらを探しているんだろう。
「あっ、や、そこ、いやっ」
ビクンッと体が跳ねあがる場所を突かれた。俺の様子を見てひろ君はにやりと笑った。
「ここか。真吾も気持ちよくしてあげるからね」
ひろ君は器用に前立腺を的確に擦りながら腰を振った。
「あっ、あんっ、あぁあっ、そこだめっ、ひろ君! やだっ、あっ、はぁんっ!」
痛みのなかに快感が生まれる。ペニスの根本を内側から刺激されて、そこを中心に快楽が広がっていく。だらんと力の抜けていた俺のペニスが、ふるふると立ちあがり始めた。
「真吾、気持ちいいだろう? 中がうねってる」
ふふっとひろ君の笑い声。俺は曖昧に首を振った。
「ああっ、違っ……気持ちよく、なっ、ああぁんっ」
「体は正直だよ。ほら、こんなに濡れてる」
俺のペニスを握り、先端をクチュクチュと揉みしだく。さっきの射精の残滓だけじゃない潤いが、そんないやらしい音を立てているのだ。顔だけじゃなく、体中が熱くなった。
「やっ、あっ! はぁっ! あんっ」
「気持ちいいんだろう? 真吾」
「ああぁんっ、やらっ……気持ち、よく、なっ……っ」
「真吾のオマンコは、グチュグチュに濡れて喜んでるよ」
「オマンコじゃ、ないよっ、はっ、あっ、ああっ」
「ちんこ突っ込まれたら、そこはもう、オマンコなんだよ。真吾は女の子になっちゃったんだ」
「違うっ、俺は……! 女じゃ、な、あっ、あぁんっ」
ペニスをごしごし扱かれて、咄嗟にひろ君の腕を掴んだ。
「そんな、しちゃ……、また、出ちゃうよ、ひろ君……」
「イッちゃいなよ。真吾のイクところ見せて。俺が好きなんだろ? お願い聞いてくれるよね?」
「なんで……? なんでこんなこと、するの? ひろ君は、俺のこと……好き?」
「もちろん。俺も真吾のことが好きだよ」
「誰よりも……? 彼女より?」
べそをかく俺を見て、ひろ君は苦笑した。
「順番に意味なんかある? そんなつまらないことにこだわっていたら、俺とこんなこと、出来ないよ? それでいいの?」
「いやっ……、あ、わかんない……っ、わかんないよ」
「真吾はまだ子供だから」
俺を子供扱いすることで、ひろ君はこの話題を切りあげてしまった。俺の腰を抱え直し、パンパンと音を立てながらペニスを突きたてる。
「ああっ、あんっ、だめ、ひろ君! 出ちゃうっ! また精液出ちゃうよ!」
「俺のことが好きなら、エッチな真吾を見せて」
「はあぁっ、あっ、あっ! ひろ君、好きっ! 大好き! 見て! 見てて! イクところ……! 俺がイクとこ、見てて……ッ!!」
「見ててあげる。イッてごらん、真吾」
俺はひろ君に見守られながら精液を吐きだした。ひろ君はあいかわらず優しい眼差しを俺に向けている。口の端には笑みが浮かんでいて、ひろ君の期待通りにできたのだと、俺は嬉しくなった。
「じゃあ、そろそろ俺も終わりにしようかな」
「ひろ君もイクの?」
「そうだよ。どこに欲しい?」
「えっ」
「真吾の中がいい? 顔? 口の中がいいかな? 初めてだから、真吾の希望を聞いてあげるよ」
ひろ君が提案する一つ一つの場面が、勝手に頭に描かれる。どれであってもぞくぞくと甘美な震えが走る。全部がいい。全部して欲しい。それはさすがに無理だから、俺は、「中に出して」とお願いした。
ひろ君は口を左右に吊り上げた。
「お望み通りに。俺の可愛い真吾」
そう言って、ひろ君は激しいピストンを開始した。
※ ※ ※
夕飯を食べていたら、母さんが思い出したように言った。大学を出たあと、ひろ君は家を出て一人暮らしをするらしい、と。
「そんなの俺、聞いてない!」
先週の日曜に、ひろ君の部屋でセックスした時には何も言われなかった。だから心底驚いてつい大きな声が出た。
「どうしてあんたに言わなきゃいけないの」
母さんは俺の剣幕に鼻白んだ顔つきで、次のおかずに手を伸ばす。
俺にはそれを聞く権利があるはずだ。だって、中三のあの日から、俺とひろ君はセックスする仲なんだから。
ひろ君はモテるから、俺の他にも大勢の女の子とセックスしている。ひろ君は皆を愛してくれるけれど、誰にも夢中にならない。平等にその愛を分け与えてくれる。この三年で俺以外に二人の男ともセックスしたみたいだけど、「やっぱり真吾が一番いい」と俺を抱いて言っていた。
男の中で俺が一番なら、それ以上望むことはない。人気者のひろ君を独占したいなんて、身の程知らずもいいところだ。けれど、愛の供給が終わるなんて話は受け入れられない。それがなくちゃ生きていられないほど好きにさせたのは、ひろ君本人なのに。
夕飯のあと、俺はひろ君の家に向かった。玄関を開けたのはひろ君のお母さんで、「宏之は自分の部屋にいるわよ」と教えてくれた。
ひろ君の部屋の戸をノックして、ドアノブを回す。勉強机に向かっていたひろ君が振り返り、俺だとわかると困った顔をした。
「これから出かけなきゃいけないんだ」
「彼女に会うの?」
「友達だよ」
「セックスする友達?」
「しない方の友達だよ」
ひろ君が苦笑する。ということは、大学の男友達なのかもしれない。
「引っ越しするって聞いた」
「ああ、おばさんに? そうだよ。ここからじゃ、就職先に遠いからね」
「俺を置いていくの? 俺はどうなるの?」
「俺のことは忘れて受験勉強に集中するんだね」
「嫌だ。今更ひろ君を忘れるなんてできないよ。俺のこと、好きって言ってくれたじゃん」
「好きだよ。今も昔も俺の可愛い真吾だよ。もう、可愛いって形容できる姿じゃなくなったけどね」
この三年で俺のほうが体格がよくなっていた。
「俺もひろ君が好きだよ。誰よりも好きだよ。だから行かないでよ」
「たまに遊びに来るといいよ。今はまず、受験に集中しないとね」
高校受験の時に俺に手を出しておいて、引っ越しするからと俺を突き放すなんて無責任だ。こんなに好き合っているのに。
「ひろ君、俺はもう子供じゃないよ」
「そうだね。だったら、俺の事情もわかるだろう?」
「初めてセックスした時の、ひろ君と同じ年になったよ」
一歩一歩、ひろ君に近づいた。ひろ君の顔から笑みが薄れていく。俺が目の前に立つと、その顔から完全に笑みが消えていた。
「ひろ君、俺が好きでしょ?」
何か言おうとしてひろ君の口が開いた。でも言葉が発せられることはなかった。
「俺もひろ君が好きだよ。だから、抱いてあげるね」
ひろ君は目を見開いた。椅子から立ちあがり逃げようとする。その腰に抱きついてベッドに押し倒した。ひろ君は見たことのない顔で「ふざけるなっ」と俺を殴った。酷い。三年前のひろ君と同じことをしているだけなのに。俺はあの時、殴ったりなんかしなかったのに。
カッとなってひろ君の首に手をかけた。力を込めるとひろ君は目を剥いた。俺の腕に爪を立て、足をばたつかせる。顔が赤くなっていくひろ君にキスした。
手を緩めると、ひろ君はゴホゴホと咳き込んだ。充血して涙の滲む目で俺を睨みつける。
「お前……っ、なんてこと……、くそっ! ゴホッ……退け! 可愛がってやった恩も忘れやがって!」
バチンと頬を打った。手加減したのに、ひろ君の体は大きく傾いでベッドに突っ伏した。ひろ君は怯えた顔で俺を見上げた。
「い、嫌だ、やめろ……!」
「土壇場になって怖くなっちゃった? 大丈夫だよ、誰だって最初は怖気づくものだから」
ひろ君は顔を歪めた。まさか自分が言ってきた言葉を聞かされる側にまわるとは思わなかったんだろう。
俺はひろ君の上に乗って、服のなかに手を入れた。
「ひっ……やめっ……真吾、嫌だっ、やめろ……!」
「静かにしないと、おばさんに聞かれちゃうよ」
ひろ君は助けを求める目を部屋の外へ向けた。でも結局迷って目を伏せた。年下の男に襲われている姿なんか誰にも見られたくないよね。馬鹿だなぁ。つまらないプライドにこだわって、逃げだせるチャンスを自分で諦めるんだから。
でも、そんなところも、俺は愛してあげるよ。
「俺の可愛いひろ君」
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可愛さも憎さも百倍(1/2)
2016.09.27.Tue.
※無理矢理、イミフ
塾からの帰り道、近所のひろ君を見つけた。道路を挟んだ反対側の歩道を、駅に向かって歩いている。その隣には彼女っぽい綺麗な女の人がいた。少し前、家の近くでひろ君と一緒にいた人とは違う人だ。
ひろ君はかっこいいからモテる。背も高くて、頭もよくて、運動神経も抜群だから、女の子が放っておかないのだ。
家が近所だから俺はひろ君とよく遊んでもらっていた。一通りの遊び方、集団での身の処し方、やっていいこととダメなことの線引き、人に対する思いやり、色んなことを教わった。
ひろ君が中/学生になってからは一緒に遊ぶことはなくなったけれど、たまに外で顔を合わせるといつも笑顔で声をかけてくれる。一人っ子の俺には、ひろ君は憧れの存在であり、親に相談しにくいことも話せるお兄さん的な存在でもあった。
俺は足を止め、遠ざかっていくひろ君の後ろ姿を眺めた。きっと彼女を駅まで送るところなのだろう。送ったあと、ひろ君は来た道を戻ってくるはずだ。
俺はひろ君を待つことにした。
20分ほどしてひろ君は一人で戻って来た。さっき別れた彼女とLINEでもしているのか、スマホを操作しながら歩いている。しばらくして、やっと俺に気付いた。
「真吾」
驚いた顔つきで俺の名前を呼んで、すぐ笑顔を見せてくれる。
「塾の帰り?」
「うん。さっき終わったとこ」
「来年高校受験だっけ。頑張らないとな」
「ひろ君も大学受験でしょ?」
「そうだよ。俺も頑張んないと」
俺たちは家に向かって並んで歩いた。ひろ君はスマホをズボンのポケットに仕舞った。ひろ君はマナーとか常識とかをわきまえている人だ。それがわかっていても、彼女とのLINEより俺を優先してくれたことが嬉しい。
「さっき彼女と歩いてるとこ見たよ」
「彼女じゃないよ、友達」
ひろ君は照れたように笑った。ひろ君は少し垂れ目気味だ。気弱に見える優しい笑顔が俺は大好きだ。
「じゃあ、前に家に来てた人が彼女?」
「よく見てるなぁ。あの子も違うよ、ただの友達」
「彼女いないの?」
「いるよ」
「彼女いるのに、女の子と二人で会ってるの?」
「勉強見て欲しいって頼まれたんだ。彼女も知ってるよ」
「怒らない?」
「怒ったりするような子じゃないよ」
俺だったら嫌だけどなぁ。高校生の恋愛は、まだ中/学生の俺にはよく理解できない。
「そうだ、ひろ君。俺にも勉強教えてよ」
「えっ?」
ひろ君はなぜか心底びっくりしたような顔で俺を見た。驚いて丸かった目を段々細めて、俺のことをまじまじと見つめたあと、「いいよ」と薄く笑った。
それはあまり見たことのない笑顔だった。
「じゃあ、次の土曜日、うちにおいで」
いつもの優しい顔に戻ってひろ君が言う。俺は喜んで「うん」と返事をした。
土曜日になって、俺は勉強道具を詰めた鞄を手に、ひろ君の家に向かった。約束をした夜から、毎日楽しみで仕方がなかった。
ひろ君は俺の憧れ。優しいお兄さん。ひろ君が作りだす柔らかい雰囲気が大好きで、一緒に遊んでもらっていた頃は、夕方になって別れるのが寂しくてしようがなかった。夏休みにはお互いの家に泊まりあいもした。俺の第一志望はひろ君が通っている高校だ。一緒に通えなくても、ひろ君が通っていた高校がいい。
俺はひろ君が大好きだ。クラスのかわいい子を見てドキドキするように、ひろ君に対してもドキドキしてしまう。これが恋なのかどうか、まだよくわからない。
インターフォンを鳴らすと、玄関の戸が開いてひろ君が出て来た。いつもの目尻の下がった笑顔で「どうぞ」と俺を中に入れてくれる。
小/学生の頃に何度も来たことのあるひろ君の部屋。ベッドが新しいものに変わっている。机に並ぶ教科書や参考書は難しそうなものばかり。クローゼットに入り切らない服がハンガーでカーテンレールにかけられている。もう小/学生の部屋じゃない。高校生の部屋。俺の部屋と比べて全然大人っぽく見える。
「ジュース入れて来るから待ってて」
ひろ君が部屋からいなくなった。俺は部屋を見渡したあと、ベッドに寝転がってみた。いい匂いがする。香水? 整髪料? 洗剤の匂い? とにかくずっと嗅いでいたい匂いだ。
このベッドの上で、ひろ君は彼女とセックスしてるんだろうか。
想像したら、股間が熱くなってきた。
慌てて床に正座した。ひろ君が戻って来る前に静めないと。
深呼吸を繰り返す。なかなか治まらない。足音が聞こえて来たので、床に正座し、テーブルの下に隠した。飲みきりサイズの缶ジュースを二本持ったひろ君が部屋に戻って来た。一本を俺に差し出す。それを受け取った。気付かれてはいないはず。
「勉強する?」
ひろ君は向かいに腰を下ろして胡坐を組んだ。
「もうちょっとあとで」
いまやってもどうせ集中できない。それにひろ君に近づかれたらバレるかもしれないし、余計に意識して困ることになりそうだ。
ジュースの缶に口をつけたひろ君が俺をじっと見ている。
「な、なに?」
「真吾も大きくなったなあと思ってね」
小/学生の頃と比べているのか、ひろ君は懐かしそうに目を細める。
「彼女はいるの?」
「いないよ、いるわけないじゃん」
「今まで一度も?」
「そうだよ」
「ふぅん、じゃあまだ何も知らないんだね」
ひろ君はジュースの缶をテーブルに置くと、床の上を移動して俺の隣にやってきた。肩に腕をまわし、顔を覗きこんでくる。
「勉強、始めよっか?」
囁くように言うと、俺の顎を掴んで自分のほうへ向け、キスをした。驚く俺の目の前に、ひろ君のドアップ。同じように俺を見つめる目がすぐそこにある。
唇には柔らかい感触。本当にキスされている。唇の表面を舐められた。間を割ってこじ開け、舌が中に入ってくる。それと同時に、服の下にひろ君の手が侵入してきた。手触りを楽しむように地肌を撫でる。
「んっ、えっ……あ、んっ」
舌を吸われた。ぬるぬると絡めとられて、舌の裏側や口蓋まで嘗め尽くされた。ほんわかとしたひろ君に似つかわしくない、凄くいやらしい動き。腰のあたりがジンと熱くなる。
「ちょ……ん、ひろ、君……っ」
胸を押し返した。ひろ君の顔が離れていく。でも服の中の手はまだ動き続けている。俺の乳首を探り当てると立たせるように摘まんで、こねくり回す。刺すような刺激。痛いわけじゃない。胸がどきどきする。
ひろ君はいやらしいことをしているのに、いつも通りの優しい笑顔で「ん?」と首を傾げた。
「えっ……? ひろ君……?」
ひろ君は一層笑みを濃くすると、俺の服をたくしあげ、現れた乳首をぺろりと舐めた。
「あっ」
裏替えった声が出た。悪戯っぽい目で俺をちらっと見てから、ひろ君は乳首を口に含んだ。見えないところでチュウチュウと吸われている。敏感に立ちあがった乳首にひろ君の舌を感じる。熱い空間の中で、ぬるぬると舌が軟体動物みたいに動いている。
「あっ、あっ、ひろ君っ」
俺の憧れのお兄さんが、俺の乳首を吸っている。その絵面に頭がクラクラする。
いきなり股間を触られた。いつの間にかそこはもうガチガチに勃起していた。それをジーンズの上から擦られた。
「やっ、あっ、だめ、ひろ君……!」
駄目と言いながら俺の足が勝手に開いて行く。望みを叶えるように、ひろ君の手がジーンズを脱がす。俺は腰をあげた。パンツまで脱がされて、勃起ちんこを隠すものは何もなくなってしまった。
乳首から口を離したひろ君が、俺の股間を見下ろす。ひろ君に見られていると思うと、先からカウパーがじわりと滲み出た。そのぬかるみに、ひろ君は爪を立てた。
「あうっ」
「男とするのは初めてなんだ。一応、調べたけどね」
「なに、なんのこと?」
「セックスだよ。もっと面倒なことになるかと思ったけど杞憂だったね。真吾もそのつもりだったなんて驚いたよ」
「えっ、違う、違うよ!」
「ここ、こんなにして、それは説得力がないよ。真吾も他の女の子たちと変わらないね。可愛いよ」
「えっ……?」
頭に蘇った光景。駅に向かって歩くひろ君と、かわいい女の人。ひろ君は彼女じゃないと言った。ただの友達だと。俺もあの人と同じってこと?
「ひろ君、この前の人とも、したの?」
「したよ。たくさんの人と、たくさんセックスしたよ」
「う、嘘」
「本当だよ。女の子はみんな、俺とヤリたがるんだ。勉強教えてって、口実使ってさ。まさか真吾も俺としたいと思っているなんて思わなかったけど」
ひろ君の口から出て来る言葉はおよそひろ君には似つかわしくない、信じられないような言葉ばかりだった。女の子に優しくしろと俺に教えてくれたのは、ひろ君じゃなかった?
ひろ君は微笑みながら、俺のペニスを握った。それはこの混乱した状況においても、パンパンに膨れ上がって、少し擦られただけでも爆発しそうになっていた。
「やめて、ひろ君! やだ、嫌だっ」
「土壇場になって怖くなっちゃった? 大丈夫だよ、誰だって最初は怖気づくものだから」
「いやだっ、やっ、あっ、だめ、ひろ君……! 出ちゃうよ、出ちゃうから!」
「案外、男相手でも平気なもんだね。真吾だからかな」
独り言みたいに感想を呟きながら、扱く手つきを速くする。
「あっ、あっ、やだやだっ、ひろ君、やだっ、ああっ」
「あはは、いっぱい出た」
ペニスから噴きあがる精液を見てひろ君は声を立てて笑った。そしてティッシュで手を拭いたあと、どこからか出したボトルの中身を手に出した。とろりと粘度の高そうな、透明な液体。
「じゃあ次は俺の番だね」
俺の尻をベトベトの手で撫でる。奥の穴を探りあてると、指を入れて来た。
「あっ、嘘!」
「どこかな……あ、これかな? これが前立腺かな?」
ぐりっと中を圧迫された。ペニスの根本に鋭い刺激が走る。
「ああっ、ひろ君!」
「やっぱりこれだ。ここだね。覚えたよ」
言うとひろ君は指を抜いた。膝で立ちズボンを下ろすとペニスを扱きだした。ひろ君はペニスを出してどうするつもりなんだろう。考えるまでもない。
「ひろ君、いやだ、やめてよ……」
俺が涙ぐんで頼んでも、ひろ君は鼻歌まじりに自分のペニスにローションを馴染ませる手を止めない。その作業が終わると、ひろ君は俺を押し倒した。膝頭を持って左右に大きく開く。ひろ君の目に、俺のすべてが晒される。
「最初は痛いかもしれないけどみんな経験してることだから真吾も我慢してね」
肛門にひろ君の先端があてがわれる。俺は鋭く息を吸いこんだ。次の瞬間、硬いペニスが俺を引き裂きながら中に入って来た。
塾からの帰り道、近所のひろ君を見つけた。道路を挟んだ反対側の歩道を、駅に向かって歩いている。その隣には彼女っぽい綺麗な女の人がいた。少し前、家の近くでひろ君と一緒にいた人とは違う人だ。
ひろ君はかっこいいからモテる。背も高くて、頭もよくて、運動神経も抜群だから、女の子が放っておかないのだ。
家が近所だから俺はひろ君とよく遊んでもらっていた。一通りの遊び方、集団での身の処し方、やっていいこととダメなことの線引き、人に対する思いやり、色んなことを教わった。
ひろ君が中/学生になってからは一緒に遊ぶことはなくなったけれど、たまに外で顔を合わせるといつも笑顔で声をかけてくれる。一人っ子の俺には、ひろ君は憧れの存在であり、親に相談しにくいことも話せるお兄さん的な存在でもあった。
俺は足を止め、遠ざかっていくひろ君の後ろ姿を眺めた。きっと彼女を駅まで送るところなのだろう。送ったあと、ひろ君は来た道を戻ってくるはずだ。
俺はひろ君を待つことにした。
20分ほどしてひろ君は一人で戻って来た。さっき別れた彼女とLINEでもしているのか、スマホを操作しながら歩いている。しばらくして、やっと俺に気付いた。
「真吾」
驚いた顔つきで俺の名前を呼んで、すぐ笑顔を見せてくれる。
「塾の帰り?」
「うん。さっき終わったとこ」
「来年高校受験だっけ。頑張らないとな」
「ひろ君も大学受験でしょ?」
「そうだよ。俺も頑張んないと」
俺たちは家に向かって並んで歩いた。ひろ君はスマホをズボンのポケットに仕舞った。ひろ君はマナーとか常識とかをわきまえている人だ。それがわかっていても、彼女とのLINEより俺を優先してくれたことが嬉しい。
「さっき彼女と歩いてるとこ見たよ」
「彼女じゃないよ、友達」
ひろ君は照れたように笑った。ひろ君は少し垂れ目気味だ。気弱に見える優しい笑顔が俺は大好きだ。
「じゃあ、前に家に来てた人が彼女?」
「よく見てるなぁ。あの子も違うよ、ただの友達」
「彼女いないの?」
「いるよ」
「彼女いるのに、女の子と二人で会ってるの?」
「勉強見て欲しいって頼まれたんだ。彼女も知ってるよ」
「怒らない?」
「怒ったりするような子じゃないよ」
俺だったら嫌だけどなぁ。高校生の恋愛は、まだ中/学生の俺にはよく理解できない。
「そうだ、ひろ君。俺にも勉強教えてよ」
「えっ?」
ひろ君はなぜか心底びっくりしたような顔で俺を見た。驚いて丸かった目を段々細めて、俺のことをまじまじと見つめたあと、「いいよ」と薄く笑った。
それはあまり見たことのない笑顔だった。
「じゃあ、次の土曜日、うちにおいで」
いつもの優しい顔に戻ってひろ君が言う。俺は喜んで「うん」と返事をした。
土曜日になって、俺は勉強道具を詰めた鞄を手に、ひろ君の家に向かった。約束をした夜から、毎日楽しみで仕方がなかった。
ひろ君は俺の憧れ。優しいお兄さん。ひろ君が作りだす柔らかい雰囲気が大好きで、一緒に遊んでもらっていた頃は、夕方になって別れるのが寂しくてしようがなかった。夏休みにはお互いの家に泊まりあいもした。俺の第一志望はひろ君が通っている高校だ。一緒に通えなくても、ひろ君が通っていた高校がいい。
俺はひろ君が大好きだ。クラスのかわいい子を見てドキドキするように、ひろ君に対してもドキドキしてしまう。これが恋なのかどうか、まだよくわからない。
インターフォンを鳴らすと、玄関の戸が開いてひろ君が出て来た。いつもの目尻の下がった笑顔で「どうぞ」と俺を中に入れてくれる。
小/学生の頃に何度も来たことのあるひろ君の部屋。ベッドが新しいものに変わっている。机に並ぶ教科書や参考書は難しそうなものばかり。クローゼットに入り切らない服がハンガーでカーテンレールにかけられている。もう小/学生の部屋じゃない。高校生の部屋。俺の部屋と比べて全然大人っぽく見える。
「ジュース入れて来るから待ってて」
ひろ君が部屋からいなくなった。俺は部屋を見渡したあと、ベッドに寝転がってみた。いい匂いがする。香水? 整髪料? 洗剤の匂い? とにかくずっと嗅いでいたい匂いだ。
このベッドの上で、ひろ君は彼女とセックスしてるんだろうか。
想像したら、股間が熱くなってきた。
慌てて床に正座した。ひろ君が戻って来る前に静めないと。
深呼吸を繰り返す。なかなか治まらない。足音が聞こえて来たので、床に正座し、テーブルの下に隠した。飲みきりサイズの缶ジュースを二本持ったひろ君が部屋に戻って来た。一本を俺に差し出す。それを受け取った。気付かれてはいないはず。
「勉強する?」
ひろ君は向かいに腰を下ろして胡坐を組んだ。
「もうちょっとあとで」
いまやってもどうせ集中できない。それにひろ君に近づかれたらバレるかもしれないし、余計に意識して困ることになりそうだ。
ジュースの缶に口をつけたひろ君が俺をじっと見ている。
「な、なに?」
「真吾も大きくなったなあと思ってね」
小/学生の頃と比べているのか、ひろ君は懐かしそうに目を細める。
「彼女はいるの?」
「いないよ、いるわけないじゃん」
「今まで一度も?」
「そうだよ」
「ふぅん、じゃあまだ何も知らないんだね」
ひろ君はジュースの缶をテーブルに置くと、床の上を移動して俺の隣にやってきた。肩に腕をまわし、顔を覗きこんでくる。
「勉強、始めよっか?」
囁くように言うと、俺の顎を掴んで自分のほうへ向け、キスをした。驚く俺の目の前に、ひろ君のドアップ。同じように俺を見つめる目がすぐそこにある。
唇には柔らかい感触。本当にキスされている。唇の表面を舐められた。間を割ってこじ開け、舌が中に入ってくる。それと同時に、服の下にひろ君の手が侵入してきた。手触りを楽しむように地肌を撫でる。
「んっ、えっ……あ、んっ」
舌を吸われた。ぬるぬると絡めとられて、舌の裏側や口蓋まで嘗め尽くされた。ほんわかとしたひろ君に似つかわしくない、凄くいやらしい動き。腰のあたりがジンと熱くなる。
「ちょ……ん、ひろ、君……っ」
胸を押し返した。ひろ君の顔が離れていく。でも服の中の手はまだ動き続けている。俺の乳首を探り当てると立たせるように摘まんで、こねくり回す。刺すような刺激。痛いわけじゃない。胸がどきどきする。
ひろ君はいやらしいことをしているのに、いつも通りの優しい笑顔で「ん?」と首を傾げた。
「えっ……? ひろ君……?」
ひろ君は一層笑みを濃くすると、俺の服をたくしあげ、現れた乳首をぺろりと舐めた。
「あっ」
裏替えった声が出た。悪戯っぽい目で俺をちらっと見てから、ひろ君は乳首を口に含んだ。見えないところでチュウチュウと吸われている。敏感に立ちあがった乳首にひろ君の舌を感じる。熱い空間の中で、ぬるぬると舌が軟体動物みたいに動いている。
「あっ、あっ、ひろ君っ」
俺の憧れのお兄さんが、俺の乳首を吸っている。その絵面に頭がクラクラする。
いきなり股間を触られた。いつの間にかそこはもうガチガチに勃起していた。それをジーンズの上から擦られた。
「やっ、あっ、だめ、ひろ君……!」
駄目と言いながら俺の足が勝手に開いて行く。望みを叶えるように、ひろ君の手がジーンズを脱がす。俺は腰をあげた。パンツまで脱がされて、勃起ちんこを隠すものは何もなくなってしまった。
乳首から口を離したひろ君が、俺の股間を見下ろす。ひろ君に見られていると思うと、先からカウパーがじわりと滲み出た。そのぬかるみに、ひろ君は爪を立てた。
「あうっ」
「男とするのは初めてなんだ。一応、調べたけどね」
「なに、なんのこと?」
「セックスだよ。もっと面倒なことになるかと思ったけど杞憂だったね。真吾もそのつもりだったなんて驚いたよ」
「えっ、違う、違うよ!」
「ここ、こんなにして、それは説得力がないよ。真吾も他の女の子たちと変わらないね。可愛いよ」
「えっ……?」
頭に蘇った光景。駅に向かって歩くひろ君と、かわいい女の人。ひろ君は彼女じゃないと言った。ただの友達だと。俺もあの人と同じってこと?
「ひろ君、この前の人とも、したの?」
「したよ。たくさんの人と、たくさんセックスしたよ」
「う、嘘」
「本当だよ。女の子はみんな、俺とヤリたがるんだ。勉強教えてって、口実使ってさ。まさか真吾も俺としたいと思っているなんて思わなかったけど」
ひろ君の口から出て来る言葉はおよそひろ君には似つかわしくない、信じられないような言葉ばかりだった。女の子に優しくしろと俺に教えてくれたのは、ひろ君じゃなかった?
ひろ君は微笑みながら、俺のペニスを握った。それはこの混乱した状況においても、パンパンに膨れ上がって、少し擦られただけでも爆発しそうになっていた。
「やめて、ひろ君! やだ、嫌だっ」
「土壇場になって怖くなっちゃった? 大丈夫だよ、誰だって最初は怖気づくものだから」
「いやだっ、やっ、あっ、だめ、ひろ君……! 出ちゃうよ、出ちゃうから!」
「案外、男相手でも平気なもんだね。真吾だからかな」
独り言みたいに感想を呟きながら、扱く手つきを速くする。
「あっ、あっ、やだやだっ、ひろ君、やだっ、ああっ」
「あはは、いっぱい出た」
ペニスから噴きあがる精液を見てひろ君は声を立てて笑った。そしてティッシュで手を拭いたあと、どこからか出したボトルの中身を手に出した。とろりと粘度の高そうな、透明な液体。
「じゃあ次は俺の番だね」
俺の尻をベトベトの手で撫でる。奥の穴を探りあてると、指を入れて来た。
「あっ、嘘!」
「どこかな……あ、これかな? これが前立腺かな?」
ぐりっと中を圧迫された。ペニスの根本に鋭い刺激が走る。
「ああっ、ひろ君!」
「やっぱりこれだ。ここだね。覚えたよ」
言うとひろ君は指を抜いた。膝で立ちズボンを下ろすとペニスを扱きだした。ひろ君はペニスを出してどうするつもりなんだろう。考えるまでもない。
「ひろ君、いやだ、やめてよ……」
俺が涙ぐんで頼んでも、ひろ君は鼻歌まじりに自分のペニスにローションを馴染ませる手を止めない。その作業が終わると、ひろ君は俺を押し倒した。膝頭を持って左右に大きく開く。ひろ君の目に、俺のすべてが晒される。
「最初は痛いかもしれないけどみんな経験してることだから真吾も我慢してね」
肛門にひろ君の先端があてがわれる。俺は鋭く息を吸いこんだ。次の瞬間、硬いペニスが俺を引き裂きながら中に入って来た。
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利害の一致(2/2)
2016.09.22.Thu.
<前話はこちら>
井口の腰を掴んで奥までちんこをハメた。解されてトロトロになったアナルは俺のちんこを喜んで迎え入れる。手招きするみたいに吸い付いて、お金絞りとる風俗嬢みたいに絡みついて、引く動作をすると行かないでとキュンキュンと締め付けてくる。たまらんな、これは。
気持ちよくって夢中で腰を振っていた。押して引いて。引いては押して。抜き差しを繰り返した。
「はぁあっ、あっ、ああっ」
井口も声をあげた。ちゃんと食ってんのかって心配になるくらい細っこい体。少し骨ばって筋張っているが、女と見えないこともない。しなる背中とか超えろいし。
これでもまだおもちゃのほうが良いって言えるのか!
パンパンと音を立てて高速ピストンで責め立てた。ちんこの根本のあたりがびっちゃり濡れた感触がする。泡立ったローションが抜き差しする度飛び散っていた。
「いあっ、あっ、あんっ! だめ……せんぱ、いっ! あっ、あぁんっ」
「オナニーばっかしてないで、生身の人間相手にしろよ」
「はあっ、あ、あいっ、はい! わかり、ま……ぃたあぁん!」
「ははっ、俺のちんこ、気持ちいいだろ?」
「はい! 気持ち、いっ! あっ、先輩のっ、ちんこっ、あっ、あんっ、気持ちいぃですっ」
やっぱアナルセックスって気持ちいいんじゃないか。なのにどうして歴代彼女は誰もさせてくれなかったんだろう。こいつの善がり狂う姿を見せてやりたい。
「出すぞ、中に」
「ひあぁっ、あいっ、出して、くらさっ……なか……あ、はあぁんっ」
喘ぎ声が止まらない井口の腰を抱え直し、グボグボと音がするほどちんこを尻穴に出し入れした。中はグチョグチョ。ちんこは熱々。陰嚢はカチカチだ。
ビュルルッと精液が管を駆け抜けた。灼熱の快感に頭が真っ白になる。ぴったり肌を密着させて井口の一番奥にしっかり注ぎ込んでやった。生中出し最高。
「ああ……いっぱい、中に……っ」
「わかる?」
小刻みに出し入れして、中に出した自分の精液を攪きまわした。たっぷり奥に溜まっている。グチョグチョと突いていたら、また勃起した。復活が早い。アナル効果だろうか。
「井口、お前、イッた?」
「まだ、ですけど」
「お前がイクまで、動いてやるから」
井口の体を倒し、上向きにした。戸惑いの表情を見せる井口の片足を持ち上げて、その付け根へまたちんこを突っ込む。ローションと俺の精液とでぬるんと入った。
「せ、先輩……? 顔、見えないほうがいいんじゃ」
「俺はもう一回イッたし」
「俺の顔見て、萎えません?」
言われてまじまじ後輩の顔を見る。男だ。どう見ても男だ。煙草休憩から戻った俺に「海外じゃ、煙草の匂いをさせてると出世できないそうですよ」って冷ややかな目を向けて来るムカつく後輩の顔だ。
なのに不思議と萎えない。スカした井口が勃起させてるのが可笑しいし、今日飲みに行くのだって嫌そうな顔したこいつがアナニー中毒だってことも笑えるし、俺にちんこ入れてと言ってくるのも驚きだし、ガンガン突かれまくってアンアン喘いでいるのも、普段の姿からは想像もつかなくて──というか想像したくない──何もかもが、新鮮で、意外で、面白い。
「わりと大丈夫」
「なら、いいですけど」
「キスする?」
「えっ、なんで?」
「雰囲気?」
「嫌です」
うん。やっぱムカつく。俺のちんこに屈服して女みたいに喘いでいる時のほうが可愛げがある。
井口の膝を押さえるように広げて、中心に腰を打ち付ける。井口は眉を寄せて顎を持ち上げた。
「ああっ」
晒されたのど元。噛みつきたい衝動にかられる。あばらの浮き出た平たい胸。色気もくそもねえのに、股間にくるものがあるのはなぜだ。
「はあぁん、ああっ、あ!」
井口のちんこは俺の動きに合わせてビタンビタンと腹に頭を打ち付けながら、透明な汁を撒き散らしている。触ってないが、このままいけるんだろうか。
「ああっ、先輩……! そこ…っ……もっと、して……くださ……っ!」
「え、どこ、ここ?」
「あひっ、あ、そこっ、そこです……っ、あっ、きもちい……! そこ、あぁんっ、気持ちいいっ」
枕をぎゅっと掴んで頭を振りながら、井口は気持ちいい気持ちいいと繰り返した。過呼吸を起こしたような息遣いで、その合間に女みたいに喘いで、俺のちんこが気持ちいいと口走りながらキュンキュンに締め付けて来る。
二度目は予定になかったのに、そんな井口を見てたらまた射精したくなってきた。熱々に蕩けたエロい穴に、何度も肉棒を突きたてた。
「あぁあっ、先輩のっ……おっきいちんこ、俺の……前立せ……んっ、ゴリゴリあたってます! 気持ちいいっ……あぁんっ、あっ、や、きた……! イク、先輩のちんこで俺、イッちゃいます……!!」
「おー、イッていいぞ」
後輩井口からイクイク宣言を聞かされる日がくるとはな……、感慨深い。
おもちゃなんかより生のちんこのほうが断然気持ちいいってわからせるために、ガンガンに突きまくった。カウパー出まくりのちんこで、井口の中を掻きまわしてやった。
「はあぁんっ、あ、あっ、あっ! 先輩っ……俺、もう、だめっ……っ……イク、イク……ッ……イッ──……あ、はあああぁっ……!!」
食いちぎられんじゃねえかって程、きつく締め付けられた。体を硬直させた井口のちんこから白い液体が勢いよく飛び出す。大きく上下する胸にまで飛んだ井口の精液。俺もイキそうになってちんこを引き抜いた。井口を跨いで胸にぶっかけてやった。
ハァハァと口で息しながら井口はそれを見ていた。文句でも言われるかと思ったが、呆れたように目を逸らしただけだった。
射精後に襲って来た賢者タイム。なんか色々取り返しがつかない気がして、俺は井口に背を向けながらティッシュでちんこを拭いた。井口はため息つきながら、無言でシャワーを浴びに行った。
中に出したし、胸にもかけたから、洗い流したほうがそりゃ手っ取り早いわな。
スーツを着て、ベッドでシャワーの音を聞いていたら、猛烈に帰りたくなった。このあとどんな顔して井口に会えばいいんだ。井口となに喋ればいいんだ。
ただアナルセックスしてみたかっただけの俺と、ただアナニーにハマッてちんこ突っ込まれてみたくなっただけの井口。オナニー行為の延長と言い張りたいところだが、これ立派なセックスじゃん。男同士の性交じゃん。ただのホモセックスじゃん。どう言い訳すんの。なんで俺、井口相手に一線越えちゃってんの。
口から深くて長い溜息が出た。やっちゃったって後悔の念しかない。
そうこうして井口がバスルームから出て来た。タオルで体を手早く拭きながら、俺に一瞥くれて、フフンって感じで鼻で笑った。
「なんだよ」
「やっちゃった、やべえ、どうしようって顔してるんですもん」
お見通しかよ。
「お前はなんでそんなに平然としてんの」
「正直、期待値上がりすぎてました。こんなもんかって感じですかね」
「めちゃくちゃ喘いで善がってたじゃねーか」
「一人でしてる時の方がもっとすごいですよ」
「ほんとかよ……」
あれ以上に乱れるわけ? 想像したら無意識に生唾飲みこんでいた。
「嘘ですよ」
すぐ信じる俺を嘲笑うように、井口は唇を歪めた。こいつほんとに可愛くねえわ。ベッドの上でちんこ突っ込まれてる時のほうがよっぽどいい。
「このこと、誰にも言うなよ」
「言いませんよ。先輩こそ、あることないこと、言いふらさないでくださいよ。そんなことしたら法的処置取りますから」
バスタオルを取って、井口も服を身につけた。さっきまで素肌で密着していたその体から、なんとなく目を離せないでいる。
ワイシャツのボタンを留め、ネクタイを締め、ジャケットを羽織ると井口は俺に向き直った。
「出ましょうか」
業務用の顔で言う井口に、いつものように財布を渡した。受け取りながら井口が微苦笑を浮かべる。
「いつも俺に財布渡しますけど、彼女にもそうなんですか」
「そうだな。小銭出すの面倒じゃん。ポイントカードなんかもややこしいし。人に任せちまう」
「盗られたりしません?」
「前に一度、金抜いた女いたな」
「学習しないんだか、お人よしなんだか」
軽く肩をすくめながら、井口は自動精算機で精算を始めた。俺の財布から三千円出して、足りない分は自分の財布から出した。
「お前も、全部は俺に奢らせねえよな」
「奢ってやったって恩着せがましく言われるの嫌じゃないですか」
「頑固なんだか、律儀なんだか」
理由はどうあれ先輩の財布に優しい後輩が可愛くて頭をくしゃくしゃっと撫でた。ものすごく嫌そうな顔で手を振り払われた。そうそう、最近の若い子は頭触られるの極端に嫌がるんだった。
ホテルを出て、駅に向かって歩いた。ちょっとした疲労と、気まずさから無言になる。くたびれた靴を見て、そろそろ買い替えなきゃなーとか考える。
「先輩も悪くなかったですよ」
「え?」
突然井口が話しかけて来た。
「先輩も、悪くなかったです。おもちゃ……より……、と、同じくらいには、良かったです」
「お前それ……、慎重に言葉選びすぎてだいぶ上から目線になってるけど」
「人のこと褒めるの苦手なんです」
と、顔を顰めて唇を尖らせる。確かにこいつが誰かのこと褒めてるの、見た記憶がないかも。ということは、いま改めて褒めたってことは、実際はかなり良かったということだろうか?
「だったら最初から素直にそう言えよなー。まさか癖になっちゃったとか? もう疼く? また欲しいの?」
つい浮かれて悪のりしたら、井口の軽蔑した眼差しが鋭く俺に突き刺さった。
「冗談だって、おっかねーな」
「冗談なら笑えるやつにしてください。今日はタクシーで帰るんで、それじゃあここで」
駅前のタクシー乗り場で「お疲れさまでした」と軽く頭をさげると、井口はタクシーに乗り込んだ。実家暮らしは贅沢できていいなぁ。
井口を乗せたタクシーがロータリーを抜けて、少し先の信号で止まった。小さく見える井口の後頭部。それを見つめながら「振り返れ」と念じる俺がいる。
井口の腰を掴んで奥までちんこをハメた。解されてトロトロになったアナルは俺のちんこを喜んで迎え入れる。手招きするみたいに吸い付いて、お金絞りとる風俗嬢みたいに絡みついて、引く動作をすると行かないでとキュンキュンと締め付けてくる。たまらんな、これは。
気持ちよくって夢中で腰を振っていた。押して引いて。引いては押して。抜き差しを繰り返した。
「はぁあっ、あっ、ああっ」
井口も声をあげた。ちゃんと食ってんのかって心配になるくらい細っこい体。少し骨ばって筋張っているが、女と見えないこともない。しなる背中とか超えろいし。
これでもまだおもちゃのほうが良いって言えるのか!
パンパンと音を立てて高速ピストンで責め立てた。ちんこの根本のあたりがびっちゃり濡れた感触がする。泡立ったローションが抜き差しする度飛び散っていた。
「いあっ、あっ、あんっ! だめ……せんぱ、いっ! あっ、あぁんっ」
「オナニーばっかしてないで、生身の人間相手にしろよ」
「はあっ、あ、あいっ、はい! わかり、ま……ぃたあぁん!」
「ははっ、俺のちんこ、気持ちいいだろ?」
「はい! 気持ち、いっ! あっ、先輩のっ、ちんこっ、あっ、あんっ、気持ちいぃですっ」
やっぱアナルセックスって気持ちいいんじゃないか。なのにどうして歴代彼女は誰もさせてくれなかったんだろう。こいつの善がり狂う姿を見せてやりたい。
「出すぞ、中に」
「ひあぁっ、あいっ、出して、くらさっ……なか……あ、はあぁんっ」
喘ぎ声が止まらない井口の腰を抱え直し、グボグボと音がするほどちんこを尻穴に出し入れした。中はグチョグチョ。ちんこは熱々。陰嚢はカチカチだ。
ビュルルッと精液が管を駆け抜けた。灼熱の快感に頭が真っ白になる。ぴったり肌を密着させて井口の一番奥にしっかり注ぎ込んでやった。生中出し最高。
「ああ……いっぱい、中に……っ」
「わかる?」
小刻みに出し入れして、中に出した自分の精液を攪きまわした。たっぷり奥に溜まっている。グチョグチョと突いていたら、また勃起した。復活が早い。アナル効果だろうか。
「井口、お前、イッた?」
「まだ、ですけど」
「お前がイクまで、動いてやるから」
井口の体を倒し、上向きにした。戸惑いの表情を見せる井口の片足を持ち上げて、その付け根へまたちんこを突っ込む。ローションと俺の精液とでぬるんと入った。
「せ、先輩……? 顔、見えないほうがいいんじゃ」
「俺はもう一回イッたし」
「俺の顔見て、萎えません?」
言われてまじまじ後輩の顔を見る。男だ。どう見ても男だ。煙草休憩から戻った俺に「海外じゃ、煙草の匂いをさせてると出世できないそうですよ」って冷ややかな目を向けて来るムカつく後輩の顔だ。
なのに不思議と萎えない。スカした井口が勃起させてるのが可笑しいし、今日飲みに行くのだって嫌そうな顔したこいつがアナニー中毒だってことも笑えるし、俺にちんこ入れてと言ってくるのも驚きだし、ガンガン突かれまくってアンアン喘いでいるのも、普段の姿からは想像もつかなくて──というか想像したくない──何もかもが、新鮮で、意外で、面白い。
「わりと大丈夫」
「なら、いいですけど」
「キスする?」
「えっ、なんで?」
「雰囲気?」
「嫌です」
うん。やっぱムカつく。俺のちんこに屈服して女みたいに喘いでいる時のほうが可愛げがある。
井口の膝を押さえるように広げて、中心に腰を打ち付ける。井口は眉を寄せて顎を持ち上げた。
「ああっ」
晒されたのど元。噛みつきたい衝動にかられる。あばらの浮き出た平たい胸。色気もくそもねえのに、股間にくるものがあるのはなぜだ。
「はあぁん、ああっ、あ!」
井口のちんこは俺の動きに合わせてビタンビタンと腹に頭を打ち付けながら、透明な汁を撒き散らしている。触ってないが、このままいけるんだろうか。
「ああっ、先輩……! そこ…っ……もっと、して……くださ……っ!」
「え、どこ、ここ?」
「あひっ、あ、そこっ、そこです……っ、あっ、きもちい……! そこ、あぁんっ、気持ちいいっ」
枕をぎゅっと掴んで頭を振りながら、井口は気持ちいい気持ちいいと繰り返した。過呼吸を起こしたような息遣いで、その合間に女みたいに喘いで、俺のちんこが気持ちいいと口走りながらキュンキュンに締め付けて来る。
二度目は予定になかったのに、そんな井口を見てたらまた射精したくなってきた。熱々に蕩けたエロい穴に、何度も肉棒を突きたてた。
「あぁあっ、先輩のっ……おっきいちんこ、俺の……前立せ……んっ、ゴリゴリあたってます! 気持ちいいっ……あぁんっ、あっ、や、きた……! イク、先輩のちんこで俺、イッちゃいます……!!」
「おー、イッていいぞ」
後輩井口からイクイク宣言を聞かされる日がくるとはな……、感慨深い。
おもちゃなんかより生のちんこのほうが断然気持ちいいってわからせるために、ガンガンに突きまくった。カウパー出まくりのちんこで、井口の中を掻きまわしてやった。
「はあぁんっ、あ、あっ、あっ! 先輩っ……俺、もう、だめっ……っ……イク、イク……ッ……イッ──……あ、はあああぁっ……!!」
食いちぎられんじゃねえかって程、きつく締め付けられた。体を硬直させた井口のちんこから白い液体が勢いよく飛び出す。大きく上下する胸にまで飛んだ井口の精液。俺もイキそうになってちんこを引き抜いた。井口を跨いで胸にぶっかけてやった。
ハァハァと口で息しながら井口はそれを見ていた。文句でも言われるかと思ったが、呆れたように目を逸らしただけだった。
射精後に襲って来た賢者タイム。なんか色々取り返しがつかない気がして、俺は井口に背を向けながらティッシュでちんこを拭いた。井口はため息つきながら、無言でシャワーを浴びに行った。
中に出したし、胸にもかけたから、洗い流したほうがそりゃ手っ取り早いわな。
スーツを着て、ベッドでシャワーの音を聞いていたら、猛烈に帰りたくなった。このあとどんな顔して井口に会えばいいんだ。井口となに喋ればいいんだ。
ただアナルセックスしてみたかっただけの俺と、ただアナニーにハマッてちんこ突っ込まれてみたくなっただけの井口。オナニー行為の延長と言い張りたいところだが、これ立派なセックスじゃん。男同士の性交じゃん。ただのホモセックスじゃん。どう言い訳すんの。なんで俺、井口相手に一線越えちゃってんの。
口から深くて長い溜息が出た。やっちゃったって後悔の念しかない。
そうこうして井口がバスルームから出て来た。タオルで体を手早く拭きながら、俺に一瞥くれて、フフンって感じで鼻で笑った。
「なんだよ」
「やっちゃった、やべえ、どうしようって顔してるんですもん」
お見通しかよ。
「お前はなんでそんなに平然としてんの」
「正直、期待値上がりすぎてました。こんなもんかって感じですかね」
「めちゃくちゃ喘いで善がってたじゃねーか」
「一人でしてる時の方がもっとすごいですよ」
「ほんとかよ……」
あれ以上に乱れるわけ? 想像したら無意識に生唾飲みこんでいた。
「嘘ですよ」
すぐ信じる俺を嘲笑うように、井口は唇を歪めた。こいつほんとに可愛くねえわ。ベッドの上でちんこ突っ込まれてる時のほうがよっぽどいい。
「このこと、誰にも言うなよ」
「言いませんよ。先輩こそ、あることないこと、言いふらさないでくださいよ。そんなことしたら法的処置取りますから」
バスタオルを取って、井口も服を身につけた。さっきまで素肌で密着していたその体から、なんとなく目を離せないでいる。
ワイシャツのボタンを留め、ネクタイを締め、ジャケットを羽織ると井口は俺に向き直った。
「出ましょうか」
業務用の顔で言う井口に、いつものように財布を渡した。受け取りながら井口が微苦笑を浮かべる。
「いつも俺に財布渡しますけど、彼女にもそうなんですか」
「そうだな。小銭出すの面倒じゃん。ポイントカードなんかもややこしいし。人に任せちまう」
「盗られたりしません?」
「前に一度、金抜いた女いたな」
「学習しないんだか、お人よしなんだか」
軽く肩をすくめながら、井口は自動精算機で精算を始めた。俺の財布から三千円出して、足りない分は自分の財布から出した。
「お前も、全部は俺に奢らせねえよな」
「奢ってやったって恩着せがましく言われるの嫌じゃないですか」
「頑固なんだか、律儀なんだか」
理由はどうあれ先輩の財布に優しい後輩が可愛くて頭をくしゃくしゃっと撫でた。ものすごく嫌そうな顔で手を振り払われた。そうそう、最近の若い子は頭触られるの極端に嫌がるんだった。
ホテルを出て、駅に向かって歩いた。ちょっとした疲労と、気まずさから無言になる。くたびれた靴を見て、そろそろ買い替えなきゃなーとか考える。
「先輩も悪くなかったですよ」
「え?」
突然井口が話しかけて来た。
「先輩も、悪くなかったです。おもちゃ……より……、と、同じくらいには、良かったです」
「お前それ……、慎重に言葉選びすぎてだいぶ上から目線になってるけど」
「人のこと褒めるの苦手なんです」
と、顔を顰めて唇を尖らせる。確かにこいつが誰かのこと褒めてるの、見た記憶がないかも。ということは、いま改めて褒めたってことは、実際はかなり良かったということだろうか?
「だったら最初から素直にそう言えよなー。まさか癖になっちゃったとか? もう疼く? また欲しいの?」
つい浮かれて悪のりしたら、井口の軽蔑した眼差しが鋭く俺に突き刺さった。
「冗談だって、おっかねーな」
「冗談なら笑えるやつにしてください。今日はタクシーで帰るんで、それじゃあここで」
駅前のタクシー乗り場で「お疲れさまでした」と軽く頭をさげると、井口はタクシーに乗り込んだ。実家暮らしは贅沢できていいなぁ。
井口を乗せたタクシーがロータリーを抜けて、少し先の信号で止まった。小さく見える井口の後頭部。それを見つめながら「振り返れ」と念じる俺がいる。
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利害の一致(1/2)
2016.09.21.Wed.
「入れさせてって頼んだら、ありえないって振られちゃってさー。そんなにありえないことかな?」
居酒屋で先日彼女に振られたことを会社の後輩の井口に愚痴る。どんなに飲んでも見た目が変わらない井口は「人によるんじゃないですか」と投げやりな返事。
「お前は? ありなの、なしなの」
「俺は正直無しですね。ケツに入れたいと思ったことはないです」
「AVの見過ぎって言われた。ネットでもアナルセックスしたって書きこみ見るのに、なんで俺が付き合った女は誰も入れさせてくんねーんだ?」
「まあ普通は嫌なんじゃないですか。よっぽどの女でない限り。先輩は、なんでそんなにケツに入れたいんです?」
「気持ちいいらしいから。中出ししても妊娠しねーし」
「理由が最低ですね」
「あーあ、どっかにケツでやらせてくれる女、落ちてねえかな」
「そんなにケツでしたいなら男とヤッたらどうですか」
「この際、男でもいいかも。顔さえ見なけりゃ、かわんねえしな」
「飲み過ぎですよ。もう出ましょう」
井口に腕を引っ張られて席を立った。財布を井口に渡す。井口は二千円抜いて、足りない分は自分の財布から出して勘定を済ました。
店を出て、駅に向かう。隣の井口の足取りが、酔っぱらってる俺よりのろい。
「どうした?」
「ほんとに男とできます?」
さっき店でした話題だと思い出して、ノリで「できるできる」と返した。井口が完全に立ち止まる。自分の足元を見つめながら、
「入社したときから世話になってる先輩だから話すんですけど、俺、アナニーしてんですよね」
「あなにー?」
「オナるとき、ケツを弄るんです」
「え、そんなことやってんの」
「前立腺オナニーっつって、興味本位で始めてみたら、それ以来癖になって」
「好奇心は猫をも殺すっていうからな」
「今じゃエネマグラとか、アナルバイブ使うくらいハマッちゃって」
「よくわからんが、もう引き返せないとこまでドハマりしてんだな?」
「そこで提案なんですけど、先輩さえよければ、俺のケツ、使ってくれませんか?」
というわけで、俺たちはホテルに行くことになったのである。
である。じゃねーよ。どうすんだよ。男となんかできるかよ。俺がしたいのは女とのアナルセックスであって、ちんこがついてる男とセックスしたいわけじゃない。俺は女の体を抱きたいのだ。穴だけでいいなら、それこそオナホで充分だわ。
酒の席だけじゃなく普段の生活でも滅多に顔色を変えない井口が顔を真っ赤にしているもんだから、ノリで「できる」と言っただけとは今更言い出しにくい。
しかも自分のケツを使えなんて勇気ある変態的な提案をしたのに、嫌だなんて断りにくい。
ただでさえゆとりの新入社員の扱いは気を遣うのに、明日から俺が理由で出社拒否されて、その上井口の親が怒鳴り込んできたりなんかした日にはもう……。目も当てられねえ。
変わらないように見えて井口も相当酔ってるんじゃないの? 少し歩いて、水でも飲ませて落ち着かせたら正気に返るかも。そんな期待をしつつ、ゆっくりホテルに向かい、水を飲ませ、覚悟の表情がかわらない井口にシャワーを勧めた。
なのに。
「先輩も、シャワーどうぞ。その間に俺は準備しておきますから」
って。シャワーの終わった井口は仕事中みたいな顔つきでローションを手に出して言った。やる気満々だよこの子。どうしよう。
逃げるようにバスルームへ。井口が入ったあとだから湿気がこもって床も壁も濡れている。過去に経験のあるシチュエーション。しかしまさかベッドで待っているのが男とは。しかも会社の後輩。
最近の若い子って男同士とか平気なのか? 明日からどんな顔すればいいとか、ふつう考えないか? 俺が古いの? たった5歳しか違わないのに?
グルグル考えながら、頭と体を洗って、ちんこも念入りに手入れした。これ、本当に井口に入れるのか? そもそもあいつのケツで勃つか? 怯えて縮こまってんぞ。
酒のせいで無理だったー、が一番井口を傷つけない終わらせ方だ。この手でいこうと決めてバスルームを出る。いつの間にか照明が絞られて薄暗い。雰囲気だしてんじゃねえぞ。
ベッドの上に盛り上がり。近づくと、井口が布団をかぶって頭だけ出してた。寝ててくれりゃ、と思ったが、瞬きしないで天井を凝視している。こえーよ。
「変なこと頼んですみません。話の流れで……俺も酔ってて……、先輩にしか、こんなこと頼めなくて」
あいかわらず天井を見つめながら口だけを動かして言う。
「お前って、ホモなの?」
「ホモじゃないです。アナニーが好きなだけで。エスカレートして、ちんこ入れてみたいって思っただけで、ホモではないです」
エスカレートしすぎじゃね。まあ俺も、エッチへの好奇心が強すぎてアナルセックスに辿りついたわけだから、人のことは言えないが。
「準備できてんの?」
「はい。やりすぎて、一回出しました」
「いいよ、そんな報告してくんなくて……そんなに気持ちいーの?」
「……期待だけで俺、かなりやばいです」
興奮を抑え込んでいるのか声が熱っぽくて少し震え気味。怖い。
「かなり酒飲んだからなー。勃つかわかんねえけど、試す?」
「よろしくお願いします」
と言いつつ、井口は布団のなかで動かない。俺が布団めくってこいつの上になんの? 躊躇とムカつきを感じながら布団をはぎ取った。横たわる全裸の井口。天を睨む股間の一物。一回出したんじゃねえのかよ。
「……とりあえず、後ろ向けよ。やりづれーわ」
「その前に……」
体を起こした井口が俺のちんこに手を伸ばしてきた。握ってクニクニと揉み始める。
「俺じゃ勃たないでしょうから」
少し申し訳なさそうに言ってシコシコ擦る。井口相手でも、他人の手でこすられると血液が集まってしまう。勃ったら困るんだけど。
俺の股間に視線を注ぐ井口は、普段見ない顔つきだった。新入社員歓迎会を「僕、お酒あんまり好きじゃないんで」と断ろうとしたこいつが。部長の親父ギャグを鼻で笑って白けた顔をするこいつが。斜に構えて馬鹿騒ぎなんかしませんって顔してるこいつが。
雄(雌?)の顔つきで、呼吸も乱れさせて、勃起させながら俺のちんこをしごいている。
猥談に興味ないって態度だったくせに、俺のちんこに興味津々だったのかよ。
「舐めれる?」
「えっ」
思い付きが声に出てしまった。井口は狼狽えた目を俺に向けた。
「無理ならいーけど」
「……やってみますけど……下手だと思いますよ」
まじかよ。井口は口をあーんと開けると亀頭をぱくりと咥えた。舐めるんじゃなかったのか。口に入れてどうする気だ。しゃぶるつもりか。
遠慮がちな舌が先端を舐める。唇で絞る。あったかくてぬるぬるした口腔内。女と何も違わない。いや、同性の男にやらせてる征服感、背徳感はなんとも言えない興奮を生む。
どんどん血液が集まる。海綿体が充血する。咥えてる井口も少し大変そうだ。
熱い息を俺に吹きかけながら、とうとう井口は口を離した。完全に勃起している。酒で無理だった作戦は使えなくなってしまった。これはもう諦めて井口に突っ込むしかなさそうだ。
「中出しするぞ、俺」
「生ってことですか? 先輩がそうしたいなら」
どうせやるなら、やりたかったことやっておかなきゃやり損だ。
四つん這いになった井口がのそのそと後ろを向いてこっちに尻を突きだした。毛のないつるんとした綺麗な尻だ。触ってみると井口は体を強張らせ腰を揺らした。
肛門を覗きこむ。いつもアナニーしてバイブやら突っ込んでいる割にこちらも薄い色付きで綺麗なもんだ。ローションに濡れそぼるそこへ指を入れてみた。「んっ」と井口が小さく呻く。
そこは充分解されていた。柔らかくて温かくて、そのくせキュウキュウと物欲しそうに俺を締め付けて来る。体温でローションも温められていて、濡れた女のようだ。
顔さえ見なけりゃ、できそうだった。というかぶっちゃけ、早く入れたい。
「入れんぞ」
「はっ、はい!」
井口のケツにちんこをあてがい──、腰を進めてずぶっと亀頭を押し込んだ。ぶりんっと井口に頭を食われる。玩具で弄り倒したいやらしいケツ穴のくせに、焦るほどきつい処女ケツマンコだ。
「どーよ、井口。初めての、本物の、男の勃起ちんこは」
「あ、熱くて……硬くて、おっきくて……やばいです」
「おもちゃとは違うだろ」
「はいっ……ぜんぜ……違います……っ」
「どっちが気持ちいい?」
「おもちゃ……っ!」
「はあ? そんなわけねえだろ。俺の聞き違いだよな?」
「おもちゃだったら……自分の好きなとこ、好きなように、動かせます、からっ……」
「よーし、オナニーとセックスの違いを教えてやる」
居酒屋で先日彼女に振られたことを会社の後輩の井口に愚痴る。どんなに飲んでも見た目が変わらない井口は「人によるんじゃないですか」と投げやりな返事。
「お前は? ありなの、なしなの」
「俺は正直無しですね。ケツに入れたいと思ったことはないです」
「AVの見過ぎって言われた。ネットでもアナルセックスしたって書きこみ見るのに、なんで俺が付き合った女は誰も入れさせてくんねーんだ?」
「まあ普通は嫌なんじゃないですか。よっぽどの女でない限り。先輩は、なんでそんなにケツに入れたいんです?」
「気持ちいいらしいから。中出ししても妊娠しねーし」
「理由が最低ですね」
「あーあ、どっかにケツでやらせてくれる女、落ちてねえかな」
「そんなにケツでしたいなら男とヤッたらどうですか」
「この際、男でもいいかも。顔さえ見なけりゃ、かわんねえしな」
「飲み過ぎですよ。もう出ましょう」
井口に腕を引っ張られて席を立った。財布を井口に渡す。井口は二千円抜いて、足りない分は自分の財布から出して勘定を済ました。
店を出て、駅に向かう。隣の井口の足取りが、酔っぱらってる俺よりのろい。
「どうした?」
「ほんとに男とできます?」
さっき店でした話題だと思い出して、ノリで「できるできる」と返した。井口が完全に立ち止まる。自分の足元を見つめながら、
「入社したときから世話になってる先輩だから話すんですけど、俺、アナニーしてんですよね」
「あなにー?」
「オナるとき、ケツを弄るんです」
「え、そんなことやってんの」
「前立腺オナニーっつって、興味本位で始めてみたら、それ以来癖になって」
「好奇心は猫をも殺すっていうからな」
「今じゃエネマグラとか、アナルバイブ使うくらいハマッちゃって」
「よくわからんが、もう引き返せないとこまでドハマりしてんだな?」
「そこで提案なんですけど、先輩さえよければ、俺のケツ、使ってくれませんか?」
というわけで、俺たちはホテルに行くことになったのである。
である。じゃねーよ。どうすんだよ。男となんかできるかよ。俺がしたいのは女とのアナルセックスであって、ちんこがついてる男とセックスしたいわけじゃない。俺は女の体を抱きたいのだ。穴だけでいいなら、それこそオナホで充分だわ。
酒の席だけじゃなく普段の生活でも滅多に顔色を変えない井口が顔を真っ赤にしているもんだから、ノリで「できる」と言っただけとは今更言い出しにくい。
しかも自分のケツを使えなんて勇気ある変態的な提案をしたのに、嫌だなんて断りにくい。
ただでさえゆとりの新入社員の扱いは気を遣うのに、明日から俺が理由で出社拒否されて、その上井口の親が怒鳴り込んできたりなんかした日にはもう……。目も当てられねえ。
変わらないように見えて井口も相当酔ってるんじゃないの? 少し歩いて、水でも飲ませて落ち着かせたら正気に返るかも。そんな期待をしつつ、ゆっくりホテルに向かい、水を飲ませ、覚悟の表情がかわらない井口にシャワーを勧めた。
なのに。
「先輩も、シャワーどうぞ。その間に俺は準備しておきますから」
って。シャワーの終わった井口は仕事中みたいな顔つきでローションを手に出して言った。やる気満々だよこの子。どうしよう。
逃げるようにバスルームへ。井口が入ったあとだから湿気がこもって床も壁も濡れている。過去に経験のあるシチュエーション。しかしまさかベッドで待っているのが男とは。しかも会社の後輩。
最近の若い子って男同士とか平気なのか? 明日からどんな顔すればいいとか、ふつう考えないか? 俺が古いの? たった5歳しか違わないのに?
グルグル考えながら、頭と体を洗って、ちんこも念入りに手入れした。これ、本当に井口に入れるのか? そもそもあいつのケツで勃つか? 怯えて縮こまってんぞ。
酒のせいで無理だったー、が一番井口を傷つけない終わらせ方だ。この手でいこうと決めてバスルームを出る。いつの間にか照明が絞られて薄暗い。雰囲気だしてんじゃねえぞ。
ベッドの上に盛り上がり。近づくと、井口が布団をかぶって頭だけ出してた。寝ててくれりゃ、と思ったが、瞬きしないで天井を凝視している。こえーよ。
「変なこと頼んですみません。話の流れで……俺も酔ってて……、先輩にしか、こんなこと頼めなくて」
あいかわらず天井を見つめながら口だけを動かして言う。
「お前って、ホモなの?」
「ホモじゃないです。アナニーが好きなだけで。エスカレートして、ちんこ入れてみたいって思っただけで、ホモではないです」
エスカレートしすぎじゃね。まあ俺も、エッチへの好奇心が強すぎてアナルセックスに辿りついたわけだから、人のことは言えないが。
「準備できてんの?」
「はい。やりすぎて、一回出しました」
「いいよ、そんな報告してくんなくて……そんなに気持ちいーの?」
「……期待だけで俺、かなりやばいです」
興奮を抑え込んでいるのか声が熱っぽくて少し震え気味。怖い。
「かなり酒飲んだからなー。勃つかわかんねえけど、試す?」
「よろしくお願いします」
と言いつつ、井口は布団のなかで動かない。俺が布団めくってこいつの上になんの? 躊躇とムカつきを感じながら布団をはぎ取った。横たわる全裸の井口。天を睨む股間の一物。一回出したんじゃねえのかよ。
「……とりあえず、後ろ向けよ。やりづれーわ」
「その前に……」
体を起こした井口が俺のちんこに手を伸ばしてきた。握ってクニクニと揉み始める。
「俺じゃ勃たないでしょうから」
少し申し訳なさそうに言ってシコシコ擦る。井口相手でも、他人の手でこすられると血液が集まってしまう。勃ったら困るんだけど。
俺の股間に視線を注ぐ井口は、普段見ない顔つきだった。新入社員歓迎会を「僕、お酒あんまり好きじゃないんで」と断ろうとしたこいつが。部長の親父ギャグを鼻で笑って白けた顔をするこいつが。斜に構えて馬鹿騒ぎなんかしませんって顔してるこいつが。
雄(雌?)の顔つきで、呼吸も乱れさせて、勃起させながら俺のちんこをしごいている。
猥談に興味ないって態度だったくせに、俺のちんこに興味津々だったのかよ。
「舐めれる?」
「えっ」
思い付きが声に出てしまった。井口は狼狽えた目を俺に向けた。
「無理ならいーけど」
「……やってみますけど……下手だと思いますよ」
まじかよ。井口は口をあーんと開けると亀頭をぱくりと咥えた。舐めるんじゃなかったのか。口に入れてどうする気だ。しゃぶるつもりか。
遠慮がちな舌が先端を舐める。唇で絞る。あったかくてぬるぬるした口腔内。女と何も違わない。いや、同性の男にやらせてる征服感、背徳感はなんとも言えない興奮を生む。
どんどん血液が集まる。海綿体が充血する。咥えてる井口も少し大変そうだ。
熱い息を俺に吹きかけながら、とうとう井口は口を離した。完全に勃起している。酒で無理だった作戦は使えなくなってしまった。これはもう諦めて井口に突っ込むしかなさそうだ。
「中出しするぞ、俺」
「生ってことですか? 先輩がそうしたいなら」
どうせやるなら、やりたかったことやっておかなきゃやり損だ。
四つん這いになった井口がのそのそと後ろを向いてこっちに尻を突きだした。毛のないつるんとした綺麗な尻だ。触ってみると井口は体を強張らせ腰を揺らした。
肛門を覗きこむ。いつもアナニーしてバイブやら突っ込んでいる割にこちらも薄い色付きで綺麗なもんだ。ローションに濡れそぼるそこへ指を入れてみた。「んっ」と井口が小さく呻く。
そこは充分解されていた。柔らかくて温かくて、そのくせキュウキュウと物欲しそうに俺を締め付けて来る。体温でローションも温められていて、濡れた女のようだ。
顔さえ見なけりゃ、できそうだった。というかぶっちゃけ、早く入れたい。
「入れんぞ」
「はっ、はい!」
井口のケツにちんこをあてがい──、腰を進めてずぶっと亀頭を押し込んだ。ぶりんっと井口に頭を食われる。玩具で弄り倒したいやらしいケツ穴のくせに、焦るほどきつい処女ケツマンコだ。
「どーよ、井口。初めての、本物の、男の勃起ちんこは」
「あ、熱くて……硬くて、おっきくて……やばいです」
「おもちゃとは違うだろ」
「はいっ……ぜんぜ……違います……っ」
「どっちが気持ちいい?」
「おもちゃ……っ!」
「はあ? そんなわけねえだろ。俺の聞き違いだよな?」
「おもちゃだったら……自分の好きなとこ、好きなように、動かせます、からっ……」
「よーし、オナニーとセックスの違いを教えてやる」
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楽しい記憶喪失!(3/3)
2016.09.16.Fri.
<1話、2話>
「次は僕の番ですよね」
西山の体が伸びあがる。俺の視界を塞ぐ大きな体。体格差以上の強い力が簡単に俺の両足を持ち上げ、折りたたんだ。上を向いて丸見えになった俺の穴に、西山のぶりんとでかい亀頭が押し当てられる。
童貞宣言した中3の西山は少し緊張の面持ちだ。唇を舐めながら、ゆっくり押し進めて来る。途中、不安げな顔で俺を見た。いつもこのあたりで痛がる彼女に止められてしまうのだろう。
「……来いよ」
俺の一言に、西山はパッと顔を明るくした。膝の位置を前に進め、慎重に亀頭を押し込んだ。そして竿にローションを塗ると、掘削するドリルのように小刻みに前後に動かしながら中に入って来た。
俺の肛門はもう目いっぱい開き切っている。決壊寸前だ。極太の竿の中央に差しかかったのが、慣れた日頃の感覚でわかる。メリメリと押し広げられ、括約筋が悲鳴をあげている。
ずん、と奥に重い衝撃があった。どうやらなんとか全部が収まったようだ。ぴっちりと蓋をされる感覚に息苦しさを覚えるほど馬鹿でかい。
「すごい……ほんとに入った……」
西山が驚きと関心の入り混じった表情で呟いた。結合部をまじまじ見て、その事実に感動している。
「僕、正直誰ともセックスできないんじゃないかって諦めかけてたんですよね。これで女の子の体壊しちゃうんじゃないかって思うと、怖くって。中根さんすごいですよ。僕のを根本までぐっぽり咥えこんで、感じちゃってるんですから」
嬉しそうに笑う西山の視線の先にあるのは、生まれたての小鹿のようにフルフルと頭を持ち上げる俺のちんこだ。さっきイッたばかりなのに、時間をかけてちんこを突っ込まれる間にまた復活を遂げていたのだ。
「動いて大丈夫ですよね?」
だってちんこ勃たせてるんですから、って後に続く言葉の幻聴が聞こえた。俺が返事をしないでいるのを肯定と取って、西山はゆっくり腰を引いた。俺の中で西山が大移動する。内臓引っ張られるような感じに俺は顔を顰める。
抜け出たところに西山はまたローションを足した。そしてまた押し戻してくる。
「苦しくないですか?」
ぶっちゃけすごく苦しい。でもそれを上回るものがある。だからこの苦しみは気持ちいいものになる。こんなのお前だけなんだぞ。
「だい、じょ……ぶ……っ……気持ちい、からっ……」
「僕も気持ちいいです。美衣に口でやってもらうより、自分でするより、中根さんの中が一番気持ちいい」
うっとりした目で俺を見つめながら、中3の西山が言う。こういう場面で他の女と比べる無神経さはさすが西山という感じだが、これが今のこいつの正直な感想なんだと思ったらその拙さも愛しく思えて来る。
「これで思い出さなかったら……許さねえからな」
「ははっ……怖いなぁ……、でも、なんだろ、すごく嬉しい」
息を弾ませながら俺を見て目を細める。あんまり見かけない優しい笑い方で俺の方がどきっとしてしまう。
「ドМか」
「僕が中根さんのこと好きになったの、わかる気がする」
そう言うと、腰の動きを速くした。ガンガンに掘られまくって俺の体がずり上がる。それをたまに引き戻しながら、西山はピストンを繰り返した。
「んんっ、あっ、ああぁっ、はあんっ」
「中根さんの中、グッチョグチョだよ。男でも濡れるの?」
「知らね……っ……んっ、あぁ……んっ…」
「柔らかいのにきつい……、あ、やば……!」
いきなり西山は腰の動きを止めた。俺のへそのあたりを凝視しながら、ぴくりとも動かない。大量の精液も出ていないようだから、イッたわけでもない。
「どうした?」
西山の視線が俺の顔へと辿りつく。すると「あっ」と目と口を開いた。
「なんだ?」
「やばかった。イキそうになっちゃった」
「お前いつも遅いんだから、たまには俺より先にイケよ」
「やだよ。僕のほうが先に終わっちゃうなんて、かっこ悪いでしょ」
俺はいつもかっこ悪かったのか。
「中根さんも、セックスに強い僕が好きでしょ」
「ばか、それだけじゃねえよ」
西山は意外そうに目をぱちくりさせた。
「じゃあ、僕のどこが好き? 教えてくれたら何か思い出すかもしれない」
ゆっくりと体の中の西山がまた動きだした。さっきので学習したのか、性欲を持てあました十代のがっつきはなくなって、自制を効かせたいやらしくもねちっこい動き方だ。
「馬鹿だし、変態だし、悪乗りするし……ぁ……絶倫で疲れる、しっ……あ、あと……すぐ調子に乗るし……っ……けどっ……」
「けど、なあに?」
幼い子供をあやすような優しくも妖しい口調で先を促される。拳のような亀頭でグリッと前立腺を擦られて、腰が跳ねあがった。
「お、俺のこと、いつも最優先にして、くれて……我が儘言っても笑って許してくれ、て……優しくて、頼り、なる、しっ……」
言ってる途中で自分が失ったものの大きさに悲しくなってきた。このまま思い出さなかったらどうしよう。どうして俺のこと忘れちゃうんだよ。
「いつも、うっとうしいくらい俺のこと好きだって言ってくるくせに……なのに……なんで……なんで俺のこと忘れんだよ!」
最後は叫ぶように言っていた。ずっと心に押し込めていた俺の本音。俺だけは特別、俺の事だけは忘れない、忘れていたとしてもすぐ思い出してくれる、そう思っていたのに。
いつまで経ってもこいつは思い出さないし。俺のことは「くん」付けだし、敬語だし、自分のことは「僕」って言うし、気持ち悪いんだよ馬鹿野郎!
本音をぶちまけてしまうと、堰を切ったように勝手に涙も出て来た。ついでに不満も爆発した。
「園のことは覚えてるくせに! なんで高校入ってからのことは全部忘れてんだよ! 俺のこと忘れたかったのかよ! 散々好きだとか言っといて! お前の好きはその程度だったのか!!」
「泣いて……?! ちょ、えっ、泣かないで、ごめん」
眉を下げた西山がオロオロした顔で腕を伸ばしてくる。それを叩き落とした。
「触んな! お前は西山じゃねえ! 俺の西山を返せ! ちんこも抜け! いつまで入れてんだ、このばか!」
来いよ、と自分で言った過去も忘れて、俺は西山の胸を蹴り、顔面を引っぱたいた。
「いっ、痛いっ、ちょっと……、祐太! 痛いって!」
「呼び捨てすんなボケがあぁぁっ!!」
「祐太! 俺だってば! ごめん! 俺! 記憶戻ったから! ほんとに俺なんだって!」
嘘つけゴラアアッと叫びながら西山のちんこから逃れた俺は立ちあがって西山を見下ろした。赤くなってる西山のほっぺに少し正気を取り戻す。
手負いの獣よろしくフーフー鼻息荒くしながら、見覚えのある、媚びつつもどっか余裕たっぷりな感じの西山の笑顔に気付いた。俺の機嫌を損ねたときの西山の顔にそっくり。もしかして本当に記憶が……?!
「お前……っ!」
俺の唸り声を聞いて、西山は、待って、というふうに胸の前で手を広げた。
「記憶喪失だったのは本当だから! ついさっき思い出したとこだから!」
「いつだ! いつ思い出した!」
「イキそうになった時! ぶわって、全部!」
「だったらすぐ言えよ!!」
「記憶喪失なんてレアな出来事この先ないし! だったら楽しんじゃおうって。それに、珍しく祐太が素直だったから、つい、調子に乗ってしまいまして。おかげで、祐太にどれだけ愛されてるか聞くことできたし」
西山の口がニヤリと左右に開く。中3の西山だと油断して、普段言わないようなことを口走った。思い出したら顔から火が出た。
下を向いても西山には丸見えなので後ろを向いた。ベッドのスプリングが軋んだと思ったら、西山に抱きしめられていた。肩に顎を乗せて、頬にキスしてくる。
「心配させてごめんね。不安にさせてごめんね。祐太のこと、忘れたかったわけないでしょ。忘れたくないから、実家に戻らずここに帰って来たんだよ。祐太のこと忘れてても、祐太の匂い嗅いだだけで変な気分になっちゃったし、祐太に触っただけで勃っちゃったんだよ。好きだって気持ちだけは忘れなかった証拠だよ」
「それただ、ヤリたいだけだろ」
「誰でもいいわけじゃないよ。祐太だけ」
頬に手が添えられた。優しい力で西山のほうへ向かされる。涙のたまった俺の目を見て、西山は本当に申し訳なさそうな顔をした。
「ふざけすぎたね。ごめんね、祐太」
「こんなの二度と嫌だ」
西山に抱きついた。あやす手が俺の頭を撫でる。大きくて優しい手。やっと俺の西山が戻って来た。
※ ※ ※
そのあといつも通り、仲直りセックスをした。次の日は学校を休んで朝からイチャイチャしていた。昼過ぎ、合鍵を使って勝手に入ってきた西山父に現場を見られたが、記憶を取り戻したことがわかると「明日から学校に行くように」と父親らしいことを言って帰った。
動じない西山父もそうだが、硬直する俺に挿入したまま平然と受け答えるする西山も相当おかしい。
「一日一回だっけ」
西山がすっとぼけて言ったのは、夕食の最中、急にムラついた西山に押し倒されて、今まさにちんこを入れられんとする時だ。
俺が良いと言った日は例外という抜け道を発見して、西山はご機嫌だった。
「次は僕の番ですよね」
西山の体が伸びあがる。俺の視界を塞ぐ大きな体。体格差以上の強い力が簡単に俺の両足を持ち上げ、折りたたんだ。上を向いて丸見えになった俺の穴に、西山のぶりんとでかい亀頭が押し当てられる。
童貞宣言した中3の西山は少し緊張の面持ちだ。唇を舐めながら、ゆっくり押し進めて来る。途中、不安げな顔で俺を見た。いつもこのあたりで痛がる彼女に止められてしまうのだろう。
「……来いよ」
俺の一言に、西山はパッと顔を明るくした。膝の位置を前に進め、慎重に亀頭を押し込んだ。そして竿にローションを塗ると、掘削するドリルのように小刻みに前後に動かしながら中に入って来た。
俺の肛門はもう目いっぱい開き切っている。決壊寸前だ。極太の竿の中央に差しかかったのが、慣れた日頃の感覚でわかる。メリメリと押し広げられ、括約筋が悲鳴をあげている。
ずん、と奥に重い衝撃があった。どうやらなんとか全部が収まったようだ。ぴっちりと蓋をされる感覚に息苦しさを覚えるほど馬鹿でかい。
「すごい……ほんとに入った……」
西山が驚きと関心の入り混じった表情で呟いた。結合部をまじまじ見て、その事実に感動している。
「僕、正直誰ともセックスできないんじゃないかって諦めかけてたんですよね。これで女の子の体壊しちゃうんじゃないかって思うと、怖くって。中根さんすごいですよ。僕のを根本までぐっぽり咥えこんで、感じちゃってるんですから」
嬉しそうに笑う西山の視線の先にあるのは、生まれたての小鹿のようにフルフルと頭を持ち上げる俺のちんこだ。さっきイッたばかりなのに、時間をかけてちんこを突っ込まれる間にまた復活を遂げていたのだ。
「動いて大丈夫ですよね?」
だってちんこ勃たせてるんですから、って後に続く言葉の幻聴が聞こえた。俺が返事をしないでいるのを肯定と取って、西山はゆっくり腰を引いた。俺の中で西山が大移動する。内臓引っ張られるような感じに俺は顔を顰める。
抜け出たところに西山はまたローションを足した。そしてまた押し戻してくる。
「苦しくないですか?」
ぶっちゃけすごく苦しい。でもそれを上回るものがある。だからこの苦しみは気持ちいいものになる。こんなのお前だけなんだぞ。
「だい、じょ……ぶ……っ……気持ちい、からっ……」
「僕も気持ちいいです。美衣に口でやってもらうより、自分でするより、中根さんの中が一番気持ちいい」
うっとりした目で俺を見つめながら、中3の西山が言う。こういう場面で他の女と比べる無神経さはさすが西山という感じだが、これが今のこいつの正直な感想なんだと思ったらその拙さも愛しく思えて来る。
「これで思い出さなかったら……許さねえからな」
「ははっ……怖いなぁ……、でも、なんだろ、すごく嬉しい」
息を弾ませながら俺を見て目を細める。あんまり見かけない優しい笑い方で俺の方がどきっとしてしまう。
「ドМか」
「僕が中根さんのこと好きになったの、わかる気がする」
そう言うと、腰の動きを速くした。ガンガンに掘られまくって俺の体がずり上がる。それをたまに引き戻しながら、西山はピストンを繰り返した。
「んんっ、あっ、ああぁっ、はあんっ」
「中根さんの中、グッチョグチョだよ。男でも濡れるの?」
「知らね……っ……んっ、あぁ……んっ…」
「柔らかいのにきつい……、あ、やば……!」
いきなり西山は腰の動きを止めた。俺のへそのあたりを凝視しながら、ぴくりとも動かない。大量の精液も出ていないようだから、イッたわけでもない。
「どうした?」
西山の視線が俺の顔へと辿りつく。すると「あっ」と目と口を開いた。
「なんだ?」
「やばかった。イキそうになっちゃった」
「お前いつも遅いんだから、たまには俺より先にイケよ」
「やだよ。僕のほうが先に終わっちゃうなんて、かっこ悪いでしょ」
俺はいつもかっこ悪かったのか。
「中根さんも、セックスに強い僕が好きでしょ」
「ばか、それだけじゃねえよ」
西山は意外そうに目をぱちくりさせた。
「じゃあ、僕のどこが好き? 教えてくれたら何か思い出すかもしれない」
ゆっくりと体の中の西山がまた動きだした。さっきので学習したのか、性欲を持てあました十代のがっつきはなくなって、自制を効かせたいやらしくもねちっこい動き方だ。
「馬鹿だし、変態だし、悪乗りするし……ぁ……絶倫で疲れる、しっ……あ、あと……すぐ調子に乗るし……っ……けどっ……」
「けど、なあに?」
幼い子供をあやすような優しくも妖しい口調で先を促される。拳のような亀頭でグリッと前立腺を擦られて、腰が跳ねあがった。
「お、俺のこと、いつも最優先にして、くれて……我が儘言っても笑って許してくれ、て……優しくて、頼り、なる、しっ……」
言ってる途中で自分が失ったものの大きさに悲しくなってきた。このまま思い出さなかったらどうしよう。どうして俺のこと忘れちゃうんだよ。
「いつも、うっとうしいくらい俺のこと好きだって言ってくるくせに……なのに……なんで……なんで俺のこと忘れんだよ!」
最後は叫ぶように言っていた。ずっと心に押し込めていた俺の本音。俺だけは特別、俺の事だけは忘れない、忘れていたとしてもすぐ思い出してくれる、そう思っていたのに。
いつまで経ってもこいつは思い出さないし。俺のことは「くん」付けだし、敬語だし、自分のことは「僕」って言うし、気持ち悪いんだよ馬鹿野郎!
本音をぶちまけてしまうと、堰を切ったように勝手に涙も出て来た。ついでに不満も爆発した。
「園のことは覚えてるくせに! なんで高校入ってからのことは全部忘れてんだよ! 俺のこと忘れたかったのかよ! 散々好きだとか言っといて! お前の好きはその程度だったのか!!」
「泣いて……?! ちょ、えっ、泣かないで、ごめん」
眉を下げた西山がオロオロした顔で腕を伸ばしてくる。それを叩き落とした。
「触んな! お前は西山じゃねえ! 俺の西山を返せ! ちんこも抜け! いつまで入れてんだ、このばか!」
来いよ、と自分で言った過去も忘れて、俺は西山の胸を蹴り、顔面を引っぱたいた。
「いっ、痛いっ、ちょっと……、祐太! 痛いって!」
「呼び捨てすんなボケがあぁぁっ!!」
「祐太! 俺だってば! ごめん! 俺! 記憶戻ったから! ほんとに俺なんだって!」
嘘つけゴラアアッと叫びながら西山のちんこから逃れた俺は立ちあがって西山を見下ろした。赤くなってる西山のほっぺに少し正気を取り戻す。
手負いの獣よろしくフーフー鼻息荒くしながら、見覚えのある、媚びつつもどっか余裕たっぷりな感じの西山の笑顔に気付いた。俺の機嫌を損ねたときの西山の顔にそっくり。もしかして本当に記憶が……?!
「お前……っ!」
俺の唸り声を聞いて、西山は、待って、というふうに胸の前で手を広げた。
「記憶喪失だったのは本当だから! ついさっき思い出したとこだから!」
「いつだ! いつ思い出した!」
「イキそうになった時! ぶわって、全部!」
「だったらすぐ言えよ!!」
「記憶喪失なんてレアな出来事この先ないし! だったら楽しんじゃおうって。それに、珍しく祐太が素直だったから、つい、調子に乗ってしまいまして。おかげで、祐太にどれだけ愛されてるか聞くことできたし」
西山の口がニヤリと左右に開く。中3の西山だと油断して、普段言わないようなことを口走った。思い出したら顔から火が出た。
下を向いても西山には丸見えなので後ろを向いた。ベッドのスプリングが軋んだと思ったら、西山に抱きしめられていた。肩に顎を乗せて、頬にキスしてくる。
「心配させてごめんね。不安にさせてごめんね。祐太のこと、忘れたかったわけないでしょ。忘れたくないから、実家に戻らずここに帰って来たんだよ。祐太のこと忘れてても、祐太の匂い嗅いだだけで変な気分になっちゃったし、祐太に触っただけで勃っちゃったんだよ。好きだって気持ちだけは忘れなかった証拠だよ」
「それただ、ヤリたいだけだろ」
「誰でもいいわけじゃないよ。祐太だけ」
頬に手が添えられた。優しい力で西山のほうへ向かされる。涙のたまった俺の目を見て、西山は本当に申し訳なさそうな顔をした。
「ふざけすぎたね。ごめんね、祐太」
「こんなの二度と嫌だ」
西山に抱きついた。あやす手が俺の頭を撫でる。大きくて優しい手。やっと俺の西山が戻って来た。
※ ※ ※
そのあといつも通り、仲直りセックスをした。次の日は学校を休んで朝からイチャイチャしていた。昼過ぎ、合鍵を使って勝手に入ってきた西山父に現場を見られたが、記憶を取り戻したことがわかると「明日から学校に行くように」と父親らしいことを言って帰った。
動じない西山父もそうだが、硬直する俺に挿入したまま平然と受け答えるする西山も相当おかしい。
「一日一回だっけ」
西山がすっとぼけて言ったのは、夕食の最中、急にムラついた西山に押し倒されて、今まさにちんこを入れられんとする時だ。
俺が良いと言った日は例外という抜け道を発見して、西山はご機嫌だった。
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楽しい記憶喪失!(2/3)
2016.09.15.Thu.
<前話はこちら>
歯磨きを済ませた西山は「おやすみなさい」と俺に挨拶すると、寝室のほうへ移動した。西山のいなくなったリビングで俺はため息をついた。
西山に記憶が戻る様子は少しもない。一度家に戻ろうとした西山が引き返してくれたときは何か思い出すんじゃないかと期待したが、甘かった。
父親を追い出したあとの西山は俺を知らない中3の西山のままで、名前にさん付けのままだし、敬語も崩さない。
高校時代の話を教えて欲しいというから話して聞かせたが、自分が経験した人生の話なのに、いちいち驚いたり関心したりする。
西山は色恋のことも知りたがった。梨香という彼女がいたことを話したら、なぜ別れたのかと聞かれて返答に困った。俺が原因だと言ったらきっと俺を恨むだろ。性格の不一致ということにして、園孝雄が高校まで西山を追いかけてきたぞ、と話題を変えた。
園の好意を知っていながら、好きじゃないからと冷たくあしらって来た西山なのに、小中一緒だった園のことはちゃんと覚えていた。「困った奴だなあ」と親しみのこもった苦笑に嫉妬した。
どうして俺と出会う前までのことしか覚えていないのだろう。どうして高校1年では駄目だったのだろう。喧嘩した直後の記憶喪失。俺のことが面倒になったから、存在そのものを忘れたかったのだろうか。
このまま思い出さなかったらどうしよう。いまの西山も充分に西山らしい。でも俺の知ってる西山じゃない。俺の隣に座らないし、風呂を覗きにこないし、隙あらば触ってこないし、甘えてキスもしてこない。
数日ならいいけど、何週間、何カ月と記憶が戻らない可能性だってある。俺のことを忘れた西山と暮らしていくのはけっこう辛い。
悪いことばかり考えて気持ちが落ち込む。だから考えるのはやめにして、俺も寝ることにした。
電気を消してソファに寝転がり、毛布を被った。西山の温もりや、肌が懐かしい。恋しい。泣きそうになって毛布を頭まで引きあげた。
「あのー、中根さん」
いきなり声がした。毛布から顔を出すと、リビングの入り口に西山が立っている。
「どうした?」
「もしかして、僕たちって一緒に寝てたんじゃないですか?」
西山は指をもじもじさせながら、恐る恐るというふうに訊ねる。心臓がバクン! と跳ね上がった。なにか思い出したのか?!
「どうしてそう思うんだ?」
逸る気持ちを表に出さないよう、声を押し殺した。
「サイドテーブルの引き出しにゴムとジェルを見つけちゃったんですよね。サイズ的に、僕が使ってたって可能性が一番高いなと思って」
と西山ははにかんだ。確かに、西山が使うコンドームはネットで注文するXLサイズ。それでも窮屈だと嫌がって使わない場合がほとんどだ。
「ゴミ箱みたら、まだ新しいティッシュも捨ててあったし。いつも一人でやる時とティッシュの捨て方が違うから、誰かとエッチしたのかなって」
俺を窺い見るように西山は小さく首を傾けた。
「で? なんで俺と一緒に寝てたと思ったわけ?」
「一人だけソファなんておかしいですもん。それに思い返してみると、中根さんの僕を見る目つきって、ちょっと普通じゃないですよ。大学の友達だっていう人たちとは明らかに違う。病院に来てくれた時も、事前に記憶喪失だって聞いてるはずなのに、顔色は真っ青だったし、一人だけ泣きそうだったし」
「そりゃ、一緒に住むくらい仲はいいんだから心配するだろ」
普通じゃないと言われた目を伏せたら、西山が近づいてきた。床に膝をついて、ソファに手を乗せ、顔を覗きこんでくる。
「中根さんは僕の恋人なんですか?」
核心をつく質問。嘘は許さないくりっと大きな目が俺をまっすぐ見つめてくる。俺はその目を直視できなかった。ソファに置かれた西山の大きな手に視線を落とした。
「もし、そうだったら?」
「一緒に寝ましょう。いつも通りにしていた方が、早く思い出せるかもしれない」
あっけらかんとした口調だった。俺は顔をあげた。
「気持ち悪いとか思わねえの?」
「父も昔、男と付き合ってたことがあるんですよ。その話を聞いてたからかな、驚きはあるけど、案外受け入れちゃってます」
西山は俺の頬に手を添えた。俺の顔をじーっと見つめたあと口角を持ち上げた。
「それによく見ると、中根さんって意外にかわいいですよ」
意外ってなんだよ、意外って。中3でもこいつはとことん失礼だ。何か言い返してやりたいけど、胸が詰まってなんも言えねえ。
行きましょ、と西山は俺の手を引いた。2人で寝室のベッドに入る。俺が左側、西山は右側。いつもの場所だ。西山本人なのに、別人と一緒に寝ているような緊張感。
西山に背を向けていたら、背後から抱きつかれた。しかも、手が俺の股間を鷲掴んでいる。
「おい、お前──!」
「僕たち、セックスしてるんですよね?」
耳元で囁く声。それはスイッチが入った時の西山の声だった。
「お前とはしてねえよっ!」
「……それ、今の僕とはって意味ですよね? 記憶失くす前の僕とはしてたんですよね?」
大きな手がゴリゴリと玉と竿を一緒に揉みしだく。同じ掌なのに、やはりいつもと触り方が違う。それなのに下半身に血液が集まって勃起させてしまう。
「放せ、よ! この……ばか!」
「頭は忘れても体は覚えてるもんなんですね。中根さんとベッドに入ったら、こんなになっちゃいました」
尻のあたりにごついものが押し当てられた。焼きゴテかと思うほど熱くて硬い。思わず腰が引けた。
「これを中根さんの中に入れてたんですか?」
首筋に西山の熱い息が吹きかかる。人の首元でハァハァするな!!
「僕も入れさせて下さい」
「なんでっ……」
「記憶を取り戻すためですよ」
言いながら俺のズボンとパンツをずり降ろし、直接握った。明確な意図を持った手つきで俺のちんこをしごいている。
「やめ……ろよ、こんなことして思い出すわけねえだろうが!」
「前に読んだ漫画に、手術中に記憶を取り戻す話がありましたよ。セックス中に思い出すかも」
こいつの口八丁手八丁は昔からだったんだな。関心してる場合じゃない。俺の首筋にキスしながら、先走りを指ですくって全体に馴染まるように上下に動かす。裸に剥かれた尻には西山の勃起ちんこが擦りつけられる。いつの間に外に出したんだ。先端が尻たぶを割って奥をツンツンと叩く。大量の我慢汁が出ているようでネチャネチャと粘ついた音がした。
「ふ……ぅ……っ……あ、ああ……」
「実は僕、童貞なんです。美衣って彼女がいるんですけど、痛がって入れさせてくんなくて」
猫の鳴き声みたいな名前の彼女は、きっと中3当時に付き合っていた子だろう。彼女はいるのにサイズの問題でさせてもらえないのは盛んな年頃には気の毒な話だ。
しかしなんだ、この感覚。どっかで見たような光景。デジャヴュ? 違うわ、高3の時の合宿だ。みんなの前で西山に犯されたあの日、同じようなやりとりしたんだ。こいつ全然変わってねえ。
「だから入れてもいいですか?」
「駄目に決まってん……あっ!」
ちんこから手が離れたと思ったら、今度は俺のケツを撫でてきた。そろそろと中心へ近づいて来る。割れ目にそって指を滑らせ、穴に辿りつくと軽く押した。
「男同士ってここに入れるんですよね」
「ばかっ、入れんな……入れん、なっ、あっ! やだっ……!」
グググ、と指が捻じ込まれる。潤いが足りなくて痛い。
「抜けよ……! も……っ……ちが……ぁ……痛えからっ……ローション使えこのクソ馬鹿!!」
「あっ、そっか」
指を抜くと西山はサイドテーブルの引きだしからローションを出した。そしてそれを俺の穴に突っ込んで一気に中身を押しだした。
「最初は慣らしたほうがいいですよね」
独り言みたいに呟いて指をそっと入れる。中のローションを擦りつけるように指を回したり、出し入れしたりする。
いつもなら指で刺激される場所がスルーされる。中3の西山が前立腺の場所や存在なんか知るわけないのだ。たまに当たってもすぐ行き過ぎてしまう。10段階で言うと、2か3程度の快感しか与えられない。物足りなくて、もっと欲しいと勝手に腰が揺れる。
「気持ちいい? 中根さん」
耳元で西山が囁く。俺は返事に困って黙った。気持ち悪くはないのだが、気持ちいいと言うと嘘になる気がする。西山だったらもっとうまくやる。俺が欲しがるところは過剰なほどに、気付かないところも愛撫して、俺を善がり狂わせる。
「なんか、思い出したかよ……?」
返事をせずに、祈る気持ちで問い返した。今度は西山が返事をしなかった。訝しんでいると仰向けにひっくり返された。いきなりの乱暴な動作に驚いて西山を見上げる。怒りと戸惑いの入り混じったような顔が俺を見下ろしていた。尖った唇は拗ねた子供みたいだ。
「西山……?」
西山は無言で俺の足の間に陣取ると、またローションを継ぎ足して指を入れてきた。グチュグチュと音を立てながらあちこち指で擦る。
「んっ」
俺が声をあげたところで一瞬動きを止めた。見つけた、と言わんばかりの顔でそこを執拗に弄りまくる。
「んっ、あっ、あっ」
「ここだ。ここがいいんだね?」
「あぁっ、やっ……あ…ッ…あ、いっ……」
勝ち誇った顔で舌なめずりしたかと思ったら、頭を下ろして俺のものをぱくっと咥えた。いつもの西山なら驚かないが、今は中3の西山だ。女とセックスしたことはおろか、男なんて性の対象外だったはずなのに、いきなりなんだ、この順応性は! 応用力は! 躊躇のなさは!!
「なっ、なに……やってんだよ、お前っ!」
「だって、負けたくないじゃないですか」
「誰に?!」
「記憶を失う前の僕に。僕のやり方じゃ気持ちよくなかったんでしょ? 前の西山だったらこうするのにって考えてたでしょ? 言わなくてもわかりますよ。セックスしてる最中、他の男のこと思い出されるの、むかつくじゃないですか。それが自分でも、誰かと比べられたら負けたくないじゃないですか」
バレてた……!! 西山の勘の鋭さにびっくりだ。気まずさに目が泳ぐ。西山は意に介さず、フェラを再開した。飴を転がすように口に含んだ亀頭を舐め回し、蜜を吸うように先走りを啜った。
「……っ……んっ……あ、あ……まっ……ああ、あ……ッ」
なかに入れた指を動かすことも忘れない。中を押し広げつつ、俺が反応を見せる場所を指の腹で擦りあげる。俺は腰をガクガク揺らしながら、西山の髪の毛を搔き乱した。
「だめ……、西山ぁ……! ああっ……も…ぉ…イクッ……から、はなせ……!」
軽く頭を押した。なのに西山は根本まで咥えこんで頭を上下に動かした。
「や、ん、あああっ……やめ……出ちゃ……っ……からっ……!! 西山……あっ、はあぁ……ん、あっ……あ、ああ──……ッ!!」
達する瞬間、気が遠のいた。俺が出し続けている間、西山は咥えたまま全部口の中に溜めた。出し終わると口を離し、ごくりと音を立てて飲みこんだ。
「飲ん……! なんで!? 馬鹿、飲まなくていいんだよ!」
「中根さんのだったらいいかなって」
唇を舐めつつ、にこりと爽やかに笑う。抵抗感なしかよ。そういえば合宿でヤラれたあともトイレでこいつにフェラされたんだっけ。そのあと中出しされたザーメン吸い出してあげるとも言われた。さすがにそれはさせなかったけど、俺が嫌だと言わなければこいつのことだ、きっとやっていただろう。それも喜々として。
ずっと一緒にいて忘れかけてたけど、こいつ根っからの変態なんだった。
歯磨きを済ませた西山は「おやすみなさい」と俺に挨拶すると、寝室のほうへ移動した。西山のいなくなったリビングで俺はため息をついた。
西山に記憶が戻る様子は少しもない。一度家に戻ろうとした西山が引き返してくれたときは何か思い出すんじゃないかと期待したが、甘かった。
父親を追い出したあとの西山は俺を知らない中3の西山のままで、名前にさん付けのままだし、敬語も崩さない。
高校時代の話を教えて欲しいというから話して聞かせたが、自分が経験した人生の話なのに、いちいち驚いたり関心したりする。
西山は色恋のことも知りたがった。梨香という彼女がいたことを話したら、なぜ別れたのかと聞かれて返答に困った。俺が原因だと言ったらきっと俺を恨むだろ。性格の不一致ということにして、園孝雄が高校まで西山を追いかけてきたぞ、と話題を変えた。
園の好意を知っていながら、好きじゃないからと冷たくあしらって来た西山なのに、小中一緒だった園のことはちゃんと覚えていた。「困った奴だなあ」と親しみのこもった苦笑に嫉妬した。
どうして俺と出会う前までのことしか覚えていないのだろう。どうして高校1年では駄目だったのだろう。喧嘩した直後の記憶喪失。俺のことが面倒になったから、存在そのものを忘れたかったのだろうか。
このまま思い出さなかったらどうしよう。いまの西山も充分に西山らしい。でも俺の知ってる西山じゃない。俺の隣に座らないし、風呂を覗きにこないし、隙あらば触ってこないし、甘えてキスもしてこない。
数日ならいいけど、何週間、何カ月と記憶が戻らない可能性だってある。俺のことを忘れた西山と暮らしていくのはけっこう辛い。
悪いことばかり考えて気持ちが落ち込む。だから考えるのはやめにして、俺も寝ることにした。
電気を消してソファに寝転がり、毛布を被った。西山の温もりや、肌が懐かしい。恋しい。泣きそうになって毛布を頭まで引きあげた。
「あのー、中根さん」
いきなり声がした。毛布から顔を出すと、リビングの入り口に西山が立っている。
「どうした?」
「もしかして、僕たちって一緒に寝てたんじゃないですか?」
西山は指をもじもじさせながら、恐る恐るというふうに訊ねる。心臓がバクン! と跳ね上がった。なにか思い出したのか?!
「どうしてそう思うんだ?」
逸る気持ちを表に出さないよう、声を押し殺した。
「サイドテーブルの引き出しにゴムとジェルを見つけちゃったんですよね。サイズ的に、僕が使ってたって可能性が一番高いなと思って」
と西山ははにかんだ。確かに、西山が使うコンドームはネットで注文するXLサイズ。それでも窮屈だと嫌がって使わない場合がほとんどだ。
「ゴミ箱みたら、まだ新しいティッシュも捨ててあったし。いつも一人でやる時とティッシュの捨て方が違うから、誰かとエッチしたのかなって」
俺を窺い見るように西山は小さく首を傾けた。
「で? なんで俺と一緒に寝てたと思ったわけ?」
「一人だけソファなんておかしいですもん。それに思い返してみると、中根さんの僕を見る目つきって、ちょっと普通じゃないですよ。大学の友達だっていう人たちとは明らかに違う。病院に来てくれた時も、事前に記憶喪失だって聞いてるはずなのに、顔色は真っ青だったし、一人だけ泣きそうだったし」
「そりゃ、一緒に住むくらい仲はいいんだから心配するだろ」
普通じゃないと言われた目を伏せたら、西山が近づいてきた。床に膝をついて、ソファに手を乗せ、顔を覗きこんでくる。
「中根さんは僕の恋人なんですか?」
核心をつく質問。嘘は許さないくりっと大きな目が俺をまっすぐ見つめてくる。俺はその目を直視できなかった。ソファに置かれた西山の大きな手に視線を落とした。
「もし、そうだったら?」
「一緒に寝ましょう。いつも通りにしていた方が、早く思い出せるかもしれない」
あっけらかんとした口調だった。俺は顔をあげた。
「気持ち悪いとか思わねえの?」
「父も昔、男と付き合ってたことがあるんですよ。その話を聞いてたからかな、驚きはあるけど、案外受け入れちゃってます」
西山は俺の頬に手を添えた。俺の顔をじーっと見つめたあと口角を持ち上げた。
「それによく見ると、中根さんって意外にかわいいですよ」
意外ってなんだよ、意外って。中3でもこいつはとことん失礼だ。何か言い返してやりたいけど、胸が詰まってなんも言えねえ。
行きましょ、と西山は俺の手を引いた。2人で寝室のベッドに入る。俺が左側、西山は右側。いつもの場所だ。西山本人なのに、別人と一緒に寝ているような緊張感。
西山に背を向けていたら、背後から抱きつかれた。しかも、手が俺の股間を鷲掴んでいる。
「おい、お前──!」
「僕たち、セックスしてるんですよね?」
耳元で囁く声。それはスイッチが入った時の西山の声だった。
「お前とはしてねえよっ!」
「……それ、今の僕とはって意味ですよね? 記憶失くす前の僕とはしてたんですよね?」
大きな手がゴリゴリと玉と竿を一緒に揉みしだく。同じ掌なのに、やはりいつもと触り方が違う。それなのに下半身に血液が集まって勃起させてしまう。
「放せ、よ! この……ばか!」
「頭は忘れても体は覚えてるもんなんですね。中根さんとベッドに入ったら、こんなになっちゃいました」
尻のあたりにごついものが押し当てられた。焼きゴテかと思うほど熱くて硬い。思わず腰が引けた。
「これを中根さんの中に入れてたんですか?」
首筋に西山の熱い息が吹きかかる。人の首元でハァハァするな!!
「僕も入れさせて下さい」
「なんでっ……」
「記憶を取り戻すためですよ」
言いながら俺のズボンとパンツをずり降ろし、直接握った。明確な意図を持った手つきで俺のちんこをしごいている。
「やめ……ろよ、こんなことして思い出すわけねえだろうが!」
「前に読んだ漫画に、手術中に記憶を取り戻す話がありましたよ。セックス中に思い出すかも」
こいつの口八丁手八丁は昔からだったんだな。関心してる場合じゃない。俺の首筋にキスしながら、先走りを指ですくって全体に馴染まるように上下に動かす。裸に剥かれた尻には西山の勃起ちんこが擦りつけられる。いつの間に外に出したんだ。先端が尻たぶを割って奥をツンツンと叩く。大量の我慢汁が出ているようでネチャネチャと粘ついた音がした。
「ふ……ぅ……っ……あ、ああ……」
「実は僕、童貞なんです。美衣って彼女がいるんですけど、痛がって入れさせてくんなくて」
猫の鳴き声みたいな名前の彼女は、きっと中3当時に付き合っていた子だろう。彼女はいるのにサイズの問題でさせてもらえないのは盛んな年頃には気の毒な話だ。
しかしなんだ、この感覚。どっかで見たような光景。デジャヴュ? 違うわ、高3の時の合宿だ。みんなの前で西山に犯されたあの日、同じようなやりとりしたんだ。こいつ全然変わってねえ。
「だから入れてもいいですか?」
「駄目に決まってん……あっ!」
ちんこから手が離れたと思ったら、今度は俺のケツを撫でてきた。そろそろと中心へ近づいて来る。割れ目にそって指を滑らせ、穴に辿りつくと軽く押した。
「男同士ってここに入れるんですよね」
「ばかっ、入れんな……入れん、なっ、あっ! やだっ……!」
グググ、と指が捻じ込まれる。潤いが足りなくて痛い。
「抜けよ……! も……っ……ちが……ぁ……痛えからっ……ローション使えこのクソ馬鹿!!」
「あっ、そっか」
指を抜くと西山はサイドテーブルの引きだしからローションを出した。そしてそれを俺の穴に突っ込んで一気に中身を押しだした。
「最初は慣らしたほうがいいですよね」
独り言みたいに呟いて指をそっと入れる。中のローションを擦りつけるように指を回したり、出し入れしたりする。
いつもなら指で刺激される場所がスルーされる。中3の西山が前立腺の場所や存在なんか知るわけないのだ。たまに当たってもすぐ行き過ぎてしまう。10段階で言うと、2か3程度の快感しか与えられない。物足りなくて、もっと欲しいと勝手に腰が揺れる。
「気持ちいい? 中根さん」
耳元で西山が囁く。俺は返事に困って黙った。気持ち悪くはないのだが、気持ちいいと言うと嘘になる気がする。西山だったらもっとうまくやる。俺が欲しがるところは過剰なほどに、気付かないところも愛撫して、俺を善がり狂わせる。
「なんか、思い出したかよ……?」
返事をせずに、祈る気持ちで問い返した。今度は西山が返事をしなかった。訝しんでいると仰向けにひっくり返された。いきなりの乱暴な動作に驚いて西山を見上げる。怒りと戸惑いの入り混じったような顔が俺を見下ろしていた。尖った唇は拗ねた子供みたいだ。
「西山……?」
西山は無言で俺の足の間に陣取ると、またローションを継ぎ足して指を入れてきた。グチュグチュと音を立てながらあちこち指で擦る。
「んっ」
俺が声をあげたところで一瞬動きを止めた。見つけた、と言わんばかりの顔でそこを執拗に弄りまくる。
「んっ、あっ、あっ」
「ここだ。ここがいいんだね?」
「あぁっ、やっ……あ…ッ…あ、いっ……」
勝ち誇った顔で舌なめずりしたかと思ったら、頭を下ろして俺のものをぱくっと咥えた。いつもの西山なら驚かないが、今は中3の西山だ。女とセックスしたことはおろか、男なんて性の対象外だったはずなのに、いきなりなんだ、この順応性は! 応用力は! 躊躇のなさは!!
「なっ、なに……やってんだよ、お前っ!」
「だって、負けたくないじゃないですか」
「誰に?!」
「記憶を失う前の僕に。僕のやり方じゃ気持ちよくなかったんでしょ? 前の西山だったらこうするのにって考えてたでしょ? 言わなくてもわかりますよ。セックスしてる最中、他の男のこと思い出されるの、むかつくじゃないですか。それが自分でも、誰かと比べられたら負けたくないじゃないですか」
バレてた……!! 西山の勘の鋭さにびっくりだ。気まずさに目が泳ぐ。西山は意に介さず、フェラを再開した。飴を転がすように口に含んだ亀頭を舐め回し、蜜を吸うように先走りを啜った。
「……っ……んっ……あ、あ……まっ……ああ、あ……ッ」
なかに入れた指を動かすことも忘れない。中を押し広げつつ、俺が反応を見せる場所を指の腹で擦りあげる。俺は腰をガクガク揺らしながら、西山の髪の毛を搔き乱した。
「だめ……、西山ぁ……! ああっ……も…ぉ…イクッ……から、はなせ……!」
軽く頭を押した。なのに西山は根本まで咥えこんで頭を上下に動かした。
「や、ん、あああっ……やめ……出ちゃ……っ……からっ……!! 西山……あっ、はあぁ……ん、あっ……あ、ああ──……ッ!!」
達する瞬間、気が遠のいた。俺が出し続けている間、西山は咥えたまま全部口の中に溜めた。出し終わると口を離し、ごくりと音を立てて飲みこんだ。
「飲ん……! なんで!? 馬鹿、飲まなくていいんだよ!」
「中根さんのだったらいいかなって」
唇を舐めつつ、にこりと爽やかに笑う。抵抗感なしかよ。そういえば合宿でヤラれたあともトイレでこいつにフェラされたんだっけ。そのあと中出しされたザーメン吸い出してあげるとも言われた。さすがにそれはさせなかったけど、俺が嫌だと言わなければこいつのことだ、きっとやっていただろう。それも喜々として。
ずっと一緒にいて忘れかけてたけど、こいつ根っからの変態なんだった。
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楽しい記憶喪失!(1/3)
2016.09.14.Wed.
<高校生編第1話、大学生編第1話>
西山と喧嘩したから家に戻りづらい。どうせ猫なで声でご機嫌取ってくるんだ。俺もなんだかんだで許しちゃって、そのあと調子に乗った西山にまたヤラれるんだ。
今までそういう流れを嫌というほど経験してきたから、今日は絶対帰らない。だから大学から漫喫へ移動して、漫画を読んでいた。
そんな時に、知らない番号から電話がかかってきた。無視するか悩んだ末、電話に出ると西山父だった。どうして俺の番号知ってるんだ?
『実は恵護の奴がね、大学の階段で足を滑らせて頭を打ってしまってね』
「えっ?!」
一瞬で血の気が引いた。わざわざ本人じゃなく西山父が電話してくるということは……
「大丈夫なんですか、あいつは?!」
今いる場所も忘れて声を荒げていた。
『心配いらない。大丈夫だよ。体だけは丈夫な奴だからね。頭にこぶが出来ただけで、ピンピンしているよ』
ああ、良かった。安堵の溜息が出る。スマホを持つ手が震えていた。最悪の事態が頭を過った。心底怖くて、どうにかなりそうだった。
『でもちょっと問題があってね』
「問題?」
『ぶつけどころが悪かったとしか言いようがないんだが、どうもここ数年の記憶がないらしくてね。いま医者が詳しく検査をしているところなんだが、あいつは自分を中/学生だと思っているようなんだ』
「中/学生?! き、記憶喪失ってことですか?!」
『作り話のようだが、そういうことになるね』
「じゃあ、俺のことも……」
『覚えていないかもしれない』
俺は言葉を失った。
病院からマンションに戻って来た西山は、部屋を見渡し「なんにも思い出せないや」と軽く肩をすくめた。見た目は普通の大学生。なのに中見は中学3年生。どことなく言葉遣いや仕草が子供っぽい。
俺はまだ信じられない気持ちでそんな西山を見つめる。
電話のあと急いで病院へ向かった。検査室の前には西山父の他に、事故当時一緒にいたという西山の大学の友人も数人いた。西山は彼らのことも覚えていないのだそうだ。
西山父の取り計らいで西山に会えることになった。俺を見ても西山は戸惑った表情を見せるだけで、何かを思い出すことはなかった。
「高校が一緒だったんだ。部活も同じ野球部で、お前とは卒業後、一緒に住むくらい仲良しだった。中根祐太くん。なにか思い出さないか?」
父親の問いかけにも困った顔で首を傾げるだけだった。もしかしたら俺のことだけは覚えているんじゃないかと淡い期待を抱いていただけに、その反応には落ち込んだ。
大学の友人とやらは先に帰った。俺たちは西山父と一緒にタクシーでマンションに戻って来たのがついさっき。
西山はあちこちを見て回ったあと、寝室の一つしかないベッドを見て、複雑な苦笑いで俺たちを振り返った。
「えっと……、同居、してるんですよね? 僕たちどこで寝てたんですか?」
どうする? という目を西山父が向けて来る。ここで一緒に寝ていると話せば、中3ならばなにか察する年齢だろう。中3の西山に、男同士で付き合っていると告げていいものだろうか。中3の西山と同じベッドで寝て良いものだろうか。それは猛烈に後ろめたい。
「俺は、リビングのソファで寝てるよ」
いまはこれが最善と思えて嘘をついた。西山がほっとしたように表情を緩める。中見は中3だとしても、外側は大学生の西山だ。西山にそんな顔をされるなんて、ショックだ。
「僕は明日からどうしたらいい? 大学に行けばいいの?」
西山は父親に訊ねた。自分の身に起きた出来事に取り乱すこともなく、あっけらかんと指示を仰ぐ態度はさすがだ。病院で記憶喪失だと言われた時も、「高校受験も大学受験も終わってるの? ラッキー!」と喜んだというからこいつの神経の図太さは筋金入りだ。
「大学には事情を説明するからしばらく休ませてもらえばいい。長引くようなら休学も考えよう。それまではおとなしくしていなさい」
父親の言葉にニヤッと嬉しそうに笑う。そんな西山を見て、本当に中3までの記憶しかないのだと思いしる。
「お腹すかない? 中根さんも、何も食べてないんじゃないですか?」
と自分のお腹をさする。他人行儀な「さん付け」と、敬語。そりゃ向こうは記憶喪失で自分のことを中3だと思ってるんだから、俺はいきなり現れた見知らぬ年上のお兄さんだろうけど。そんな言葉遣いはけっこう堪える。
俺の一瞬の表情を読んだのか、西山は少し動揺を見せた。そのあと、取り繕うように笑いかけて来た。見慣れているはずの西山の笑顔なのに、まったく別人のようだ。
西山父が料理をすることになった。そういえば今日は朝ご飯も作ってくれた。朝、テーブルにあった食器はすべて片付けられている。俺が怒って家を出たあと、西山が片付けてくれたのだろう。
どうして喧嘩してしまったのかと今更ながら悔やんでしまう。俺が知ってる西山は今朝で途切れている。最後の姿が、機嫌を損ねた俺に困っている西山だなんて。
豆腐の角にちんこぶつけて死ねばいいなんて言うんじゃなかった。あんなこと言ったから、西山は階段で頭ぶつけて俺との記憶を失くしちゃったんだ。
じわりと目の表面が熱く潤んだ。
「中根さん」
西山が顔を覗きこんできた。泣いてると悟られたくなくて、顔を背ける。
「そんなに心配してくれなくて大丈夫ですよ。頭に異常はなかったし、記憶もそのうちきっと戻りますから。だから元気出してください」
と事故の張本人がにこりと明るく笑う。暗い顔で落ち込む俺を励ますために。何歳でも西山は優しい。ますます胸が痛い。
「早く、俺のこと思い出せよ」
なんとか笑い返した。
そのあと西山父が作ってくれた夕飯を三人で食べた。食べている最中に、西山母から電話がかかってきて、しばらく親子の会話が続いた。何か思い出す様子はない。そもそも西山本人に焦ったところがない。鷹揚とした性格は昔からのようだ。
食事の片づけを済ませた西山父が「そろそろおいとまするよ」とスーツのジャケットを羽織った。それを見た西山もソファから腰をあげ、父親の隣に並んだ。
「恵護はここに残りなさい」
「えっ」
驚いて父親の顔を見返している。
「ここで寝泊まりするより、家にいたほうが思い出しやすいと思うんですけど。それに前は仲が良かったかもしれないけど、いまの僕には中根さんはよく知らない人だから気を遣っちゃうし」
と尤もな意見を述べる。以前の俺への態度としては考えられない素っ気なさ。だがこれも西山の一面であることは確かだ。眼中にない人間は冷淡に切り離せるのだ。まさか自分がそっち側に回るなんて。
父親はゆっくり首を振った。
「恵護の現在はここにある。過去のことを思い出すより、今を思い出さなくては意味がないだろう」
「でも……」
「だったらお前は家に戻りなさい。僕がここに残る」
「え?」
突飛なことを言い出す父親に目を大きくする。中3の西山は当然、旧校舎の幽霊のことも、豊川秋広に俺が似ていることも忘れているのだ。
だから、「じゃあ、そうします」とあっさり自分の鞄を肩に担いだ。何度も不思議そうに振り返りながら、本当にマンションを出て行ってしまった。
「送らなくていいんですか?」
「ここには何度か来たことがあるから一人で大丈夫さ」
「いや、一応、頭ぶつけたばっかだし」
「検査に異常はなし、聞いただろう」
「そうですけど……」
「薄情だよね。君を忘れてしまうなんて。僕だったら何があっても愛する人を忘れないけどね」
目を眇め、薄く笑いかけてくる。息子が大変な時に息子の恋人を口説いてくるかね。まあきっと本気じゃなくて、落ち込んでる俺を励ますためだろうけど。そんなとこまで父子で似てる。
「ソファで寝る必要はないからね。一緒にベッドで寝よう」
俺の肩に手を置いてにこりと笑う。本気で口説くつもりじゃ……ないと思ってたんだけど、違うかもしれない。
「やっぱり、一緒に帰ったほうがいいんじゃないですか。ていうか、あなたがここに泊まる必要まったくないですよね」
「いい機会だから君との親交を深めようと思ってね」
と壁に手をついて俺を見下ろす。恥ずかしげもなく壁ドンですよ!
「僕のことはにいさんと呼んでくれて構わないよ」
「構いますって──ちょっと!」
顎クイされたと思ったら西山父の顔が近づいてきた。させるか! と間に手を挟む。片眉を持ち上げた西山父は俺の掌にキスを落とした。
「なに考えてんですか!! そうだ! 今朝! あんた俺の寝込み襲っただろ!!」
「可愛い寝顔に抑えが効かなくなってしまってね。眠りの姫にキスをする王子の心境だったよ。あのまま連れ帰ってしまいたかったくらいだ」
「そういうのほんとやめてください。俺は豊川秋広さんじゃないんで!」
西山父の腕から逃れた。すぐ追いかけて来た腕が腰に巻きついて引きよせる。今までのような冗談じゃなく、男の本気を感じさせる力強さ。頭に赤信号が灯る。
こちらも本気で逃げるための力を体に込めた時──。
玄関からガチャガチャと音がして、俺たちは思わず顔を見合わせた。近づいて来る足音を聞いて離れる。それとほぼ同時に、リビングに西山が戻って来た。
不思議そうに首を捻っている。
「どうした、恵護。今日は家に帰るんじゃなかったのか」
詰るような口調で西山父が訊ねる。
「よくわかんないけど、中根さんを一人にしちゃいけない気がして」
と、首の後ろを掻きながら、俺をまっすぐ見つめて来た。どうしてそんな感情を抱くのか、理由を探るような目だった。俺は期待を込めて見つめ返した。思い出せ。思い出してくれ。
「一人じゃない。父さんがいるじゃないか」
「僕もそう思ったんだけど、余計に心配になっちゃって」
お前のその勘は間違ってないぞ。それを糸口に全部思い出せ。
「中3のお前がいたら中根くんも迷惑だろうから家に帰りなさい」
父親の言葉に西山はぎゅっと眉根を寄せた。
「さっきお前の現在はここにあるとか言ってませんでした? やっぱり帰りません。ここに残ります。父さんこそ、中根さんの迷惑になるから帰ってよ。ほら、帰って、ほら!」
西山は父親の背中をグイグイ押して、玄関から外へ追い出してしまった。そして扉を閉めると鍵をかけた。パンパンと手を叩きながら振り返り「子供っぽい父ですみません」と笑った。
それに力なく笑い返した。
西山と喧嘩したから家に戻りづらい。どうせ猫なで声でご機嫌取ってくるんだ。俺もなんだかんだで許しちゃって、そのあと調子に乗った西山にまたヤラれるんだ。
今までそういう流れを嫌というほど経験してきたから、今日は絶対帰らない。だから大学から漫喫へ移動して、漫画を読んでいた。
そんな時に、知らない番号から電話がかかってきた。無視するか悩んだ末、電話に出ると西山父だった。どうして俺の番号知ってるんだ?
『実は恵護の奴がね、大学の階段で足を滑らせて頭を打ってしまってね』
「えっ?!」
一瞬で血の気が引いた。わざわざ本人じゃなく西山父が電話してくるということは……
「大丈夫なんですか、あいつは?!」
今いる場所も忘れて声を荒げていた。
『心配いらない。大丈夫だよ。体だけは丈夫な奴だからね。頭にこぶが出来ただけで、ピンピンしているよ』
ああ、良かった。安堵の溜息が出る。スマホを持つ手が震えていた。最悪の事態が頭を過った。心底怖くて、どうにかなりそうだった。
『でもちょっと問題があってね』
「問題?」
『ぶつけどころが悪かったとしか言いようがないんだが、どうもここ数年の記憶がないらしくてね。いま医者が詳しく検査をしているところなんだが、あいつは自分を中/学生だと思っているようなんだ』
「中/学生?! き、記憶喪失ってことですか?!」
『作り話のようだが、そういうことになるね』
「じゃあ、俺のことも……」
『覚えていないかもしれない』
俺は言葉を失った。
病院からマンションに戻って来た西山は、部屋を見渡し「なんにも思い出せないや」と軽く肩をすくめた。見た目は普通の大学生。なのに中見は中学3年生。どことなく言葉遣いや仕草が子供っぽい。
俺はまだ信じられない気持ちでそんな西山を見つめる。
電話のあと急いで病院へ向かった。検査室の前には西山父の他に、事故当時一緒にいたという西山の大学の友人も数人いた。西山は彼らのことも覚えていないのだそうだ。
西山父の取り計らいで西山に会えることになった。俺を見ても西山は戸惑った表情を見せるだけで、何かを思い出すことはなかった。
「高校が一緒だったんだ。部活も同じ野球部で、お前とは卒業後、一緒に住むくらい仲良しだった。中根祐太くん。なにか思い出さないか?」
父親の問いかけにも困った顔で首を傾げるだけだった。もしかしたら俺のことだけは覚えているんじゃないかと淡い期待を抱いていただけに、その反応には落ち込んだ。
大学の友人とやらは先に帰った。俺たちは西山父と一緒にタクシーでマンションに戻って来たのがついさっき。
西山はあちこちを見て回ったあと、寝室の一つしかないベッドを見て、複雑な苦笑いで俺たちを振り返った。
「えっと……、同居、してるんですよね? 僕たちどこで寝てたんですか?」
どうする? という目を西山父が向けて来る。ここで一緒に寝ていると話せば、中3ならばなにか察する年齢だろう。中3の西山に、男同士で付き合っていると告げていいものだろうか。中3の西山と同じベッドで寝て良いものだろうか。それは猛烈に後ろめたい。
「俺は、リビングのソファで寝てるよ」
いまはこれが最善と思えて嘘をついた。西山がほっとしたように表情を緩める。中見は中3だとしても、外側は大学生の西山だ。西山にそんな顔をされるなんて、ショックだ。
「僕は明日からどうしたらいい? 大学に行けばいいの?」
西山は父親に訊ねた。自分の身に起きた出来事に取り乱すこともなく、あっけらかんと指示を仰ぐ態度はさすがだ。病院で記憶喪失だと言われた時も、「高校受験も大学受験も終わってるの? ラッキー!」と喜んだというからこいつの神経の図太さは筋金入りだ。
「大学には事情を説明するからしばらく休ませてもらえばいい。長引くようなら休学も考えよう。それまではおとなしくしていなさい」
父親の言葉にニヤッと嬉しそうに笑う。そんな西山を見て、本当に中3までの記憶しかないのだと思いしる。
「お腹すかない? 中根さんも、何も食べてないんじゃないですか?」
と自分のお腹をさする。他人行儀な「さん付け」と、敬語。そりゃ向こうは記憶喪失で自分のことを中3だと思ってるんだから、俺はいきなり現れた見知らぬ年上のお兄さんだろうけど。そんな言葉遣いはけっこう堪える。
俺の一瞬の表情を読んだのか、西山は少し動揺を見せた。そのあと、取り繕うように笑いかけて来た。見慣れているはずの西山の笑顔なのに、まったく別人のようだ。
西山父が料理をすることになった。そういえば今日は朝ご飯も作ってくれた。朝、テーブルにあった食器はすべて片付けられている。俺が怒って家を出たあと、西山が片付けてくれたのだろう。
どうして喧嘩してしまったのかと今更ながら悔やんでしまう。俺が知ってる西山は今朝で途切れている。最後の姿が、機嫌を損ねた俺に困っている西山だなんて。
豆腐の角にちんこぶつけて死ねばいいなんて言うんじゃなかった。あんなこと言ったから、西山は階段で頭ぶつけて俺との記憶を失くしちゃったんだ。
じわりと目の表面が熱く潤んだ。
「中根さん」
西山が顔を覗きこんできた。泣いてると悟られたくなくて、顔を背ける。
「そんなに心配してくれなくて大丈夫ですよ。頭に異常はなかったし、記憶もそのうちきっと戻りますから。だから元気出してください」
と事故の張本人がにこりと明るく笑う。暗い顔で落ち込む俺を励ますために。何歳でも西山は優しい。ますます胸が痛い。
「早く、俺のこと思い出せよ」
なんとか笑い返した。
そのあと西山父が作ってくれた夕飯を三人で食べた。食べている最中に、西山母から電話がかかってきて、しばらく親子の会話が続いた。何か思い出す様子はない。そもそも西山本人に焦ったところがない。鷹揚とした性格は昔からのようだ。
食事の片づけを済ませた西山父が「そろそろおいとまするよ」とスーツのジャケットを羽織った。それを見た西山もソファから腰をあげ、父親の隣に並んだ。
「恵護はここに残りなさい」
「えっ」
驚いて父親の顔を見返している。
「ここで寝泊まりするより、家にいたほうが思い出しやすいと思うんですけど。それに前は仲が良かったかもしれないけど、いまの僕には中根さんはよく知らない人だから気を遣っちゃうし」
と尤もな意見を述べる。以前の俺への態度としては考えられない素っ気なさ。だがこれも西山の一面であることは確かだ。眼中にない人間は冷淡に切り離せるのだ。まさか自分がそっち側に回るなんて。
父親はゆっくり首を振った。
「恵護の現在はここにある。過去のことを思い出すより、今を思い出さなくては意味がないだろう」
「でも……」
「だったらお前は家に戻りなさい。僕がここに残る」
「え?」
突飛なことを言い出す父親に目を大きくする。中3の西山は当然、旧校舎の幽霊のことも、豊川秋広に俺が似ていることも忘れているのだ。
だから、「じゃあ、そうします」とあっさり自分の鞄を肩に担いだ。何度も不思議そうに振り返りながら、本当にマンションを出て行ってしまった。
「送らなくていいんですか?」
「ここには何度か来たことがあるから一人で大丈夫さ」
「いや、一応、頭ぶつけたばっかだし」
「検査に異常はなし、聞いただろう」
「そうですけど……」
「薄情だよね。君を忘れてしまうなんて。僕だったら何があっても愛する人を忘れないけどね」
目を眇め、薄く笑いかけてくる。息子が大変な時に息子の恋人を口説いてくるかね。まあきっと本気じゃなくて、落ち込んでる俺を励ますためだろうけど。そんなとこまで父子で似てる。
「ソファで寝る必要はないからね。一緒にベッドで寝よう」
俺の肩に手を置いてにこりと笑う。本気で口説くつもりじゃ……ないと思ってたんだけど、違うかもしれない。
「やっぱり、一緒に帰ったほうがいいんじゃないですか。ていうか、あなたがここに泊まる必要まったくないですよね」
「いい機会だから君との親交を深めようと思ってね」
と壁に手をついて俺を見下ろす。恥ずかしげもなく壁ドンですよ!
「僕のことはにいさんと呼んでくれて構わないよ」
「構いますって──ちょっと!」
顎クイされたと思ったら西山父の顔が近づいてきた。させるか! と間に手を挟む。片眉を持ち上げた西山父は俺の掌にキスを落とした。
「なに考えてんですか!! そうだ! 今朝! あんた俺の寝込み襲っただろ!!」
「可愛い寝顔に抑えが効かなくなってしまってね。眠りの姫にキスをする王子の心境だったよ。あのまま連れ帰ってしまいたかったくらいだ」
「そういうのほんとやめてください。俺は豊川秋広さんじゃないんで!」
西山父の腕から逃れた。すぐ追いかけて来た腕が腰に巻きついて引きよせる。今までのような冗談じゃなく、男の本気を感じさせる力強さ。頭に赤信号が灯る。
こちらも本気で逃げるための力を体に込めた時──。
玄関からガチャガチャと音がして、俺たちは思わず顔を見合わせた。近づいて来る足音を聞いて離れる。それとほぼ同時に、リビングに西山が戻って来た。
不思議そうに首を捻っている。
「どうした、恵護。今日は家に帰るんじゃなかったのか」
詰るような口調で西山父が訊ねる。
「よくわかんないけど、中根さんを一人にしちゃいけない気がして」
と、首の後ろを掻きながら、俺をまっすぐ見つめて来た。どうしてそんな感情を抱くのか、理由を探るような目だった。俺は期待を込めて見つめ返した。思い出せ。思い出してくれ。
「一人じゃない。父さんがいるじゃないか」
「僕もそう思ったんだけど、余計に心配になっちゃって」
お前のその勘は間違ってないぞ。それを糸口に全部思い出せ。
「中3のお前がいたら中根くんも迷惑だろうから家に帰りなさい」
父親の言葉に西山はぎゅっと眉根を寄せた。
「さっきお前の現在はここにあるとか言ってませんでした? やっぱり帰りません。ここに残ります。父さんこそ、中根さんの迷惑になるから帰ってよ。ほら、帰って、ほら!」
西山は父親の背中をグイグイ押して、玄関から外へ追い出してしまった。そして扉を閉めると鍵をかけた。パンパンと手を叩きながら振り返り「子供っぽい父ですみません」と笑った。
それに力なく笑い返した。
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2016.09.13.Tue.
<前話はこちら>
「こいつが祐太のなかに入りたいってさ」
それを握ると、西山はぎゅっぎゅとしごいた。恐ろしいほど胴回りのある竿部分には、のたうつ蛇のような血管が浮き上がり、定規をあてたら1センチはあるんじゃないかと思うほどカリ高で、亀頭もでっぷりとして肉厚。どっかの奇祭に参加すればありがたがられて崇め奉られるんじゃないだろうか。それほどの迫力。畏怖の念すら感じる。
あれが俺の体を貫くのだ。あんな凶悪なもので中を掻きまわされ、ベッドの上を引きずりまわされるのだ。それも、毎日! 最低2回は!!
きっと俺はこのあと西山にヤラれる。間違いなく。そしてクタクタな状態で風呂に入り、寝てしまいたいのを我慢してなんとか夕飯を食べたあとにまたヤラれる。そうに決まっている。これがいつものパターンだ。ひどいと、一緒に風呂に入ったときにも突っ込まれる。
「い、いやだ……っ」
俺は首を振った。
「今日はもう嫌だっ」
「一日一回はさせてくれる約束じゃなかったっけ?」
西山は俺の足を掴んでひょいと自分の肩に載せた。そしてしっかり解した穴へ、先端を押し当てた。粘液を馴染ませるように動かして周辺をこねくりまわす。
ぞわぞわっと毛が逆立った。毎回、ぶっ壊される恐怖に怯えながらも、それに与えられる快感は強烈で、正直、これ以上の快楽はこの先味わえないんじゃないかとさえ思えるほどだ。
だから怖いのに、期待してしまう。指より太いものを。出入り口だけじゃ物足りない。もっと奥を擦って欲しい、と。
西山とのセックスはある意味ギャンブルだ。限界近い負担を強いられるが、そのかわり得るものはでかい。一歩間違えば病院行き。なのにやめられない。完全に中毒だ。
自分のもののでかさを理解している西山は慎重にゆっくりと入れて来る。まずは幼/児の拳ほどある亀頭が。そして慰め程度のくびれを経て、最難関の竿部分。メリメリと括約筋が悲鳴をあげる。
そこを入れられる時、腕を伸ばし切って指の第一関節だけで辛うじて隣と繋がっている擬人化された括約筋の姿が数人頭に浮かぶ。みんな歯を食いしばり、汗水垂らして耐えている。この指が離れた時こそ、俺の肛門が決壊するときだ。頑張ってくれ、みんな!
そんな現実逃避をしながら、西山を受け入れる。俺、細見の男とならフィストファックできる気がする。やりたくないけど。
「ああっ、あっあ……っ……はああああぁ……!!」
「全部……、入った」
西山のほうもこの作業は気力と体力を使うらしく、頬を上気させて額に汗している。口元には満足げな笑み。乾いた唇を舐める動作が野獣じみててエロい。
「や……だ……、や……、動くな……まだ、や……」
「大丈夫、ゆっくりするから」
手を伸ばして俺の頭を撫でる。
「ひぅっ」
俺は目を白黒させる。体を動かしたせいで、中でごりりっと西山のちんこも動いたのだ。俺の悲鳴を喘ぎと勘違いしたのか、西山の目が喜色に輝く。
「ほんとに、俺と祐太の体の相性って抜群だよね」
「う、るせ……、おま……動くなよっ……!」
「すごく気持ちよさそう。梨香なんか痛がってばっかで、先っぽも入れられなかったのに」
こんな時に元カノの名前持ちだしてんじゃねえぞ、この無神経野郎がっ!! 俺だって最初は先っぽどころか1ミリたりとも入れさせたくなんかなかったんだよ! 部活の合宿で俺をむりやり犯したくせしやがって!
と咽喉元まで出かかった言葉を飲みこんだ。あの時の自分の痴態は忘れたくても忘れられない記憶となって脳に刻まれている。
西山に突っ込まれた俺は喘ぎまくって射精した。アナルセックスはもちろん、男女のセックスもしたことなかったのに。いきなりの、西山の極太勃起ちんこで俺はイッた。そのあとトイレでもまた西山に犯されてイッた。しかもトコロテンだ。申し開きできない。
西山の言う通り、相性は悪くはない。相性が良いことが問題なんだ。
「そろそろ動くよ」
「うっ、まだっ、あっ、ああっ」
ずぶぶと西山は腰を引いた。ぴったりと密着している上にカリ高なので粘膜が裏返るんじゃないかと不安になる。脱肛して病院に行くなんて嫌だ。
そしてまたゆっくりと押し戻される。馬鹿でかい亀頭が前立腺を擦る。通過すると文字通り腕ほどもある陰茎がそこを擦る。
ローションを継ぎ足しながら、ゆっくりと、出したり入れたりを繰り返す。伸びきった括約筋の苦痛も和らぎ、西山の大きさに不本意ながらも慣れていく。
グチュッグポッといやらしい音を立てながら、西山は腰の動きを速めていった。
一番感じるところをゴリゴリやられてちんこの根本がジンジンと熱くなってくる。射精したばかりなのに俺のちんこは芯を持ってゆらりと立ちあがった。西山の動きに合わせて頭を揺らす。鈴口からは透明な汁がトロリと垂れ落ちた。
「はあぁんっ、ああっ、あ、待っ……! 西山……!!」
「ねえ、やっぱり一日二回にしない?」
「やっ……だめっ! 絶対……や、だっ……!! やっ……あっ、あああっ」
「こんなにやらしい体してるくせに」
と、俺のちんこの裏筋をツンと指でなぞる。玉がきゅっと持ちあがる。
「俺の全部、祐太に注ぎ込みたいよ」
うっとりした顔で恐ろしいことを口にしたあと、西山は片膝を立てた前傾姿勢になった。俺の足を押さえつけながら腰を叩きこんでくる。尻から内臓のほうまで響くような重い一撃一打。
「ううぅ……んあぁっ! それ……や……ああっ、あんっ! 奥……まで、キテるからぁああっ!!」
脳内アドレナリンが出まくりだ。痛みは快感。苦しみは快楽。めちゃくちゃにしてくれ! そんな心境。
「俺も感じるよ、祐太の一番奥」
力を込めたのか、ぐわっと中で西山が膨らんだ。
「はぁああっ、あっ、全部っ……気持ちい……!! ああ……! またイキたくなるっ……」
「イッちゃえ」
「あっ、あんっ! ほんとに……出るっ……!! また……ああっ……すご……気持ち、いいっ……ぃ……はっ、あ、ああああぁっ……!!」
二回目の射精をした。中ではまだ西山が動き続ける。
「ひぃっ……ひっ……ま……あっ……んんっ……なに、これ……? また……なんかくる……! やだ、これ……!! 西山ぁ……っ」
絶頂が続いている感じがずっとする。イク感じが大波なら、今は小さい波がひっきりなしに押し寄せて来る感じ。休む間もなく、軽くイカされ続けてる。
「ああっ、あっ、や、だ……! 止め……西山、動く、なっ……ああぁんっ……だめ……て、ば……! あっ、ひ……いやっ、あっ、また……あ……イク……嫌だ、イク、怖いっ……!」
「大丈夫だよ、祐太」
俺の必死の訴えを一蹴し、西山はガンガン突きあげる。もうすぐそこだ。目の前には何もない。空虚だ。そこを越えたら強制的にまた達してしまう。落ちてしまう。
「あぁぁっ、あっ、いっ……ぁっ……ッ………………ッ!!」
真っ白な世界で声にならない叫びを上げながら俺は頂からダイブした。
「可愛い寝顔をして」
と笑いを含んだ声が聞こえた。男の声。西山だ。声のしたほうへ腕を伸ばす。手を握ってくれた。大きくて温かい手。
「目覚めのキスをご所望かな」
キザったらしい言い方にふっと頬が緩む。口が塞がれた。唇の間から舌が入り込んでくる。歯列をなぞられ、口を開いた。すぐ奥まで入ってきて、寝ぼけてる俺の舌を絡めとる。
「ん……ん……にしやま……」
「にいさんと呼んでもいいんだよ」
「ッ?!」
カッと目を開いた。ベッドに腰かけ、顔を覗きこんでいるのは西山じゃなく、西山の父親だった。
「ちょっ! えっ……?! あれっ?!」
舌を絡めた感触超リアルだった。口元拭ったらなんか濡れてる。やっぱりキスした?!
西山父は目が合うとにこりと笑いかけて来る。
寝込みを襲ってキスしやがったなこのクソ親父!! 俺はあんたの豊川秋広じゃねえっての!!
「おいっ、にしや――――ッ!!」
隣の西山を起こそうとして、自分が全裸だということに気付いた。そして当然隣の西山も。
慌てて布団を引きあげる。西山父を窺えばすべてお見通しって顔で、驚くなんて無駄と言わんばかりだ。
こういう時、どういう顔すればいいんだ?! 男の恋人の父親にゆうべの情事を全部悟られた朝のベッドの上で、しかも寝込み襲われてキスされたとか、なんかもう色々おかしくて処理できない。
そういえば前にも一度、西山としてる時の声を聞かれたことがあった。思い出したくない過去まで思い出して顔が熱い。
そういえば、どうしてこの人、ここにいるんだ? 鍵は?!
「うぅ……ん、もう起きたの……祐太……」
隣の西山ものんびりとご起床。俺の肩にちゅっとキスする。やめろ馬鹿!!
体をずらして、西山父の姿を見せる。俺の向こうに父親がいたのに、西山は特に驚きもせず、眠たそうな目で自分の父親を数秒見たあと、「おはよう、父さん」と朝の挨拶をした。そうそう、挨拶は大事……って今そんな悠長にしてる場合かよ!
「早いね」
寝癖のついた頭を掻きながら、西山が言う。まるで最初から来るのがわかってたみたいな口調。
「仕事に行く前に欲しかったからね。朝食を作っておいたからあとで食べるといい」
「あ、ほんと。ありがとう」
「じゃあもう僕は行くよ。君たちも学校に遅れないように」
「はい。いってらっしゃい」
手を振って西山父は寝室を出て行った。しばらくして玄関のほうから扉の開閉音と、施錠する音が聞こえて来た。ということは西山父は鍵を持ってるってことだ。確かにここはあの人の家だけども! 合鍵使って入りたい放題かよ! 俺たちのプライバシーは?! 俺の身の安全は?!
「どういうことだよ、おい、西山!」
「なにが?」
問い詰めるも、西山はきょとん顔だ。
「あの人が来るって知ってたのかよ」
「知ってるよ。母さんが欲しがってる資料を取りに行くって昨日連絡があったから」
「俺にも教えておけよ! こんなの見られたら、昨日俺たちが何してたかバレバレだろ!」
「別に構わないだろ」
「構うよ! 俺は常識人だからな! しかもあの人が合鍵持ってることも教えなかっただろ!」
「あ、そうだっけ。忘れてた。でも来る前は必ず連絡してくれるって」
「それをお前が忘れてたら意味ねえだろうが!! この馬鹿山!!」
「朝から元気だなぁ」
って西山が苦笑する。誰のせいで朝からこんなに怒り狂ってると思ってんだ!
えっ……朝……?
俺はここで重大な事実に気が付いた。もう朝? いつ寝た? 風呂に入った覚えも、晩飯食った覚えもないぞ。
記憶を遡る。夕飯前、イヤホンを探しに来た。そして西山とセックスすることになって……。2回イッたあとの記憶がない。もしかして、
「俺、昨日、気絶した?!」
「覚えてないの? 空イキして、飛んじゃったんだよ、祐太」
「空ッ……」
「ドライでイケたね」
おめでとう、みたいに言うんじゃねええええぇぇっ!!
そうだ、思い出いたぞ。ずっと軽くイキ続ける感じが続いて、怖くなって俺、西山に止めてくれって頼んだんだ。なのにこいつときたら、止めるどころかガンガンに突きまくってきやがった。
挙句のドライオーガズムだよ! 男なのにケツ掘られてメスイキしちゃったよ! しかも失神だよ! もう色々と泣きてえよ!
「赤飯炊く?」
「ってボケエェッ!! もうやだ! もう無理!!! もう二度とお前とはヤんねえ!!」
「なに怒ってるんだよ、祐太。一日一回……」
「させるか馬鹿野郎があぁぁああっ!! お前なんか豆腐の角にちんこぶつけて死ねばいいんだよ!!」
「斬新だなあ」
西山はプッと吹きだした。俺、ブチ切れ。枕で西山をタコ殴りにしたあと、ベッドを出てシャワーを浴びた。さすがになんか不味いぞと気付いた西山が、俺の周りをうろちょろしながら「ごめん」「ご飯食べよ?」「父さんのご飯おいしいよ?」ってご機嫌とろうとしてたけど全部無視して、支度をするととっとと家を出た。
テーブルに並んでた朝食。湯気の立つ味噌汁。うまそうだった。こんな喧嘩しなけりゃ食べられたのに。
昨夜もご飯を食べ損ねてる。電車の中で、お腹が鳴った。
「こいつが祐太のなかに入りたいってさ」
それを握ると、西山はぎゅっぎゅとしごいた。恐ろしいほど胴回りのある竿部分には、のたうつ蛇のような血管が浮き上がり、定規をあてたら1センチはあるんじゃないかと思うほどカリ高で、亀頭もでっぷりとして肉厚。どっかの奇祭に参加すればありがたがられて崇め奉られるんじゃないだろうか。それほどの迫力。畏怖の念すら感じる。
あれが俺の体を貫くのだ。あんな凶悪なもので中を掻きまわされ、ベッドの上を引きずりまわされるのだ。それも、毎日! 最低2回は!!
きっと俺はこのあと西山にヤラれる。間違いなく。そしてクタクタな状態で風呂に入り、寝てしまいたいのを我慢してなんとか夕飯を食べたあとにまたヤラれる。そうに決まっている。これがいつものパターンだ。ひどいと、一緒に風呂に入ったときにも突っ込まれる。
「い、いやだ……っ」
俺は首を振った。
「今日はもう嫌だっ」
「一日一回はさせてくれる約束じゃなかったっけ?」
西山は俺の足を掴んでひょいと自分の肩に載せた。そしてしっかり解した穴へ、先端を押し当てた。粘液を馴染ませるように動かして周辺をこねくりまわす。
ぞわぞわっと毛が逆立った。毎回、ぶっ壊される恐怖に怯えながらも、それに与えられる快感は強烈で、正直、これ以上の快楽はこの先味わえないんじゃないかとさえ思えるほどだ。
だから怖いのに、期待してしまう。指より太いものを。出入り口だけじゃ物足りない。もっと奥を擦って欲しい、と。
西山とのセックスはある意味ギャンブルだ。限界近い負担を強いられるが、そのかわり得るものはでかい。一歩間違えば病院行き。なのにやめられない。完全に中毒だ。
自分のもののでかさを理解している西山は慎重にゆっくりと入れて来る。まずは幼/児の拳ほどある亀頭が。そして慰め程度のくびれを経て、最難関の竿部分。メリメリと括約筋が悲鳴をあげる。
そこを入れられる時、腕を伸ばし切って指の第一関節だけで辛うじて隣と繋がっている擬人化された括約筋の姿が数人頭に浮かぶ。みんな歯を食いしばり、汗水垂らして耐えている。この指が離れた時こそ、俺の肛門が決壊するときだ。頑張ってくれ、みんな!
そんな現実逃避をしながら、西山を受け入れる。俺、細見の男とならフィストファックできる気がする。やりたくないけど。
「ああっ、あっあ……っ……はああああぁ……!!」
「全部……、入った」
西山のほうもこの作業は気力と体力を使うらしく、頬を上気させて額に汗している。口元には満足げな笑み。乾いた唇を舐める動作が野獣じみててエロい。
「や……だ……、や……、動くな……まだ、や……」
「大丈夫、ゆっくりするから」
手を伸ばして俺の頭を撫でる。
「ひぅっ」
俺は目を白黒させる。体を動かしたせいで、中でごりりっと西山のちんこも動いたのだ。俺の悲鳴を喘ぎと勘違いしたのか、西山の目が喜色に輝く。
「ほんとに、俺と祐太の体の相性って抜群だよね」
「う、るせ……、おま……動くなよっ……!」
「すごく気持ちよさそう。梨香なんか痛がってばっかで、先っぽも入れられなかったのに」
こんな時に元カノの名前持ちだしてんじゃねえぞ、この無神経野郎がっ!! 俺だって最初は先っぽどころか1ミリたりとも入れさせたくなんかなかったんだよ! 部活の合宿で俺をむりやり犯したくせしやがって!
と咽喉元まで出かかった言葉を飲みこんだ。あの時の自分の痴態は忘れたくても忘れられない記憶となって脳に刻まれている。
西山に突っ込まれた俺は喘ぎまくって射精した。アナルセックスはもちろん、男女のセックスもしたことなかったのに。いきなりの、西山の極太勃起ちんこで俺はイッた。そのあとトイレでもまた西山に犯されてイッた。しかもトコロテンだ。申し開きできない。
西山の言う通り、相性は悪くはない。相性が良いことが問題なんだ。
「そろそろ動くよ」
「うっ、まだっ、あっ、ああっ」
ずぶぶと西山は腰を引いた。ぴったりと密着している上にカリ高なので粘膜が裏返るんじゃないかと不安になる。脱肛して病院に行くなんて嫌だ。
そしてまたゆっくりと押し戻される。馬鹿でかい亀頭が前立腺を擦る。通過すると文字通り腕ほどもある陰茎がそこを擦る。
ローションを継ぎ足しながら、ゆっくりと、出したり入れたりを繰り返す。伸びきった括約筋の苦痛も和らぎ、西山の大きさに不本意ながらも慣れていく。
グチュッグポッといやらしい音を立てながら、西山は腰の動きを速めていった。
一番感じるところをゴリゴリやられてちんこの根本がジンジンと熱くなってくる。射精したばかりなのに俺のちんこは芯を持ってゆらりと立ちあがった。西山の動きに合わせて頭を揺らす。鈴口からは透明な汁がトロリと垂れ落ちた。
「はあぁんっ、ああっ、あ、待っ……! 西山……!!」
「ねえ、やっぱり一日二回にしない?」
「やっ……だめっ! 絶対……や、だっ……!! やっ……あっ、あああっ」
「こんなにやらしい体してるくせに」
と、俺のちんこの裏筋をツンと指でなぞる。玉がきゅっと持ちあがる。
「俺の全部、祐太に注ぎ込みたいよ」
うっとりした顔で恐ろしいことを口にしたあと、西山は片膝を立てた前傾姿勢になった。俺の足を押さえつけながら腰を叩きこんでくる。尻から内臓のほうまで響くような重い一撃一打。
「ううぅ……んあぁっ! それ……や……ああっ、あんっ! 奥……まで、キテるからぁああっ!!」
脳内アドレナリンが出まくりだ。痛みは快感。苦しみは快楽。めちゃくちゃにしてくれ! そんな心境。
「俺も感じるよ、祐太の一番奥」
力を込めたのか、ぐわっと中で西山が膨らんだ。
「はぁああっ、あっ、全部っ……気持ちい……!! ああ……! またイキたくなるっ……」
「イッちゃえ」
「あっ、あんっ! ほんとに……出るっ……!! また……ああっ……すご……気持ち、いいっ……ぃ……はっ、あ、ああああぁっ……!!」
二回目の射精をした。中ではまだ西山が動き続ける。
「ひぃっ……ひっ……ま……あっ……んんっ……なに、これ……? また……なんかくる……! やだ、これ……!! 西山ぁ……っ」
絶頂が続いている感じがずっとする。イク感じが大波なら、今は小さい波がひっきりなしに押し寄せて来る感じ。休む間もなく、軽くイカされ続けてる。
「ああっ、あっ、や、だ……! 止め……西山、動く、なっ……ああぁんっ……だめ……て、ば……! あっ、ひ……いやっ、あっ、また……あ……イク……嫌だ、イク、怖いっ……!」
「大丈夫だよ、祐太」
俺の必死の訴えを一蹴し、西山はガンガン突きあげる。もうすぐそこだ。目の前には何もない。空虚だ。そこを越えたら強制的にまた達してしまう。落ちてしまう。
「あぁぁっ、あっ、いっ……ぁっ……ッ………………ッ!!」
真っ白な世界で声にならない叫びを上げながら俺は頂からダイブした。
「可愛い寝顔をして」
と笑いを含んだ声が聞こえた。男の声。西山だ。声のしたほうへ腕を伸ばす。手を握ってくれた。大きくて温かい手。
「目覚めのキスをご所望かな」
キザったらしい言い方にふっと頬が緩む。口が塞がれた。唇の間から舌が入り込んでくる。歯列をなぞられ、口を開いた。すぐ奥まで入ってきて、寝ぼけてる俺の舌を絡めとる。
「ん……ん……にしやま……」
「にいさんと呼んでもいいんだよ」
「ッ?!」
カッと目を開いた。ベッドに腰かけ、顔を覗きこんでいるのは西山じゃなく、西山の父親だった。
「ちょっ! えっ……?! あれっ?!」
舌を絡めた感触超リアルだった。口元拭ったらなんか濡れてる。やっぱりキスした?!
西山父は目が合うとにこりと笑いかけて来る。
寝込みを襲ってキスしやがったなこのクソ親父!! 俺はあんたの豊川秋広じゃねえっての!!
「おいっ、にしや――――ッ!!」
隣の西山を起こそうとして、自分が全裸だということに気付いた。そして当然隣の西山も。
慌てて布団を引きあげる。西山父を窺えばすべてお見通しって顔で、驚くなんて無駄と言わんばかりだ。
こういう時、どういう顔すればいいんだ?! 男の恋人の父親にゆうべの情事を全部悟られた朝のベッドの上で、しかも寝込み襲われてキスされたとか、なんかもう色々おかしくて処理できない。
そういえば前にも一度、西山としてる時の声を聞かれたことがあった。思い出したくない過去まで思い出して顔が熱い。
そういえば、どうしてこの人、ここにいるんだ? 鍵は?!
「うぅ……ん、もう起きたの……祐太……」
隣の西山ものんびりとご起床。俺の肩にちゅっとキスする。やめろ馬鹿!!
体をずらして、西山父の姿を見せる。俺の向こうに父親がいたのに、西山は特に驚きもせず、眠たそうな目で自分の父親を数秒見たあと、「おはよう、父さん」と朝の挨拶をした。そうそう、挨拶は大事……って今そんな悠長にしてる場合かよ!
「早いね」
寝癖のついた頭を掻きながら、西山が言う。まるで最初から来るのがわかってたみたいな口調。
「仕事に行く前に欲しかったからね。朝食を作っておいたからあとで食べるといい」
「あ、ほんと。ありがとう」
「じゃあもう僕は行くよ。君たちも学校に遅れないように」
「はい。いってらっしゃい」
手を振って西山父は寝室を出て行った。しばらくして玄関のほうから扉の開閉音と、施錠する音が聞こえて来た。ということは西山父は鍵を持ってるってことだ。確かにここはあの人の家だけども! 合鍵使って入りたい放題かよ! 俺たちのプライバシーは?! 俺の身の安全は?!
「どういうことだよ、おい、西山!」
「なにが?」
問い詰めるも、西山はきょとん顔だ。
「あの人が来るって知ってたのかよ」
「知ってるよ。母さんが欲しがってる資料を取りに行くって昨日連絡があったから」
「俺にも教えておけよ! こんなの見られたら、昨日俺たちが何してたかバレバレだろ!」
「別に構わないだろ」
「構うよ! 俺は常識人だからな! しかもあの人が合鍵持ってることも教えなかっただろ!」
「あ、そうだっけ。忘れてた。でも来る前は必ず連絡してくれるって」
「それをお前が忘れてたら意味ねえだろうが!! この馬鹿山!!」
「朝から元気だなぁ」
って西山が苦笑する。誰のせいで朝からこんなに怒り狂ってると思ってんだ!
えっ……朝……?
俺はここで重大な事実に気が付いた。もう朝? いつ寝た? 風呂に入った覚えも、晩飯食った覚えもないぞ。
記憶を遡る。夕飯前、イヤホンを探しに来た。そして西山とセックスすることになって……。2回イッたあとの記憶がない。もしかして、
「俺、昨日、気絶した?!」
「覚えてないの? 空イキして、飛んじゃったんだよ、祐太」
「空ッ……」
「ドライでイケたね」
おめでとう、みたいに言うんじゃねええええぇぇっ!!
そうだ、思い出いたぞ。ずっと軽くイキ続ける感じが続いて、怖くなって俺、西山に止めてくれって頼んだんだ。なのにこいつときたら、止めるどころかガンガンに突きまくってきやがった。
挙句のドライオーガズムだよ! 男なのにケツ掘られてメスイキしちゃったよ! しかも失神だよ! もう色々と泣きてえよ!
「赤飯炊く?」
「ってボケエェッ!! もうやだ! もう無理!!! もう二度とお前とはヤんねえ!!」
「なに怒ってるんだよ、祐太。一日一回……」
「させるか馬鹿野郎があぁぁああっ!! お前なんか豆腐の角にちんこぶつけて死ねばいいんだよ!!」
「斬新だなあ」
西山はプッと吹きだした。俺、ブチ切れ。枕で西山をタコ殴りにしたあと、ベッドを出てシャワーを浴びた。さすがになんか不味いぞと気付いた西山が、俺の周りをうろちょろしながら「ごめん」「ご飯食べよ?」「父さんのご飯おいしいよ?」ってご機嫌とろうとしてたけど全部無視して、支度をするととっとと家を出た。
テーブルに並んでた朝食。湯気の立つ味噌汁。うまそうだった。こんな喧嘩しなけりゃ食べられたのに。
昨夜もご飯を食べ損ねてる。電車の中で、お腹が鳴った。
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楽しい同棲!(1/2)
2016.09.12.Mon.
<シリーズ第一話はこちら>
最後の段ボールが今日やっと片付いた。空になった段ボールを潰しながら、大学生が住むには贅沢な2LDKのマンションの寝室を見渡した。
ここは西山の両親が十数年ほど前に購入したマンションだ。まだ国内で仕事をしていた西山母のために、利便性の高いこの家を買ったらしい。
西山が小さい頃は新婚気分に戻るために、夫婦でここにこもることもあったという。西山母が海外での仕事を始めてからは、西山父が一人になりたい時、妻を思い出したい時に、たまに使用する程度で、それじゃ勿体ないからと高校を卒業した俺たちに貸してくれることになった。
ありがたい話すぎて恐縮してしまう。家具類はすべて揃っているので新たに買い足したものは自分たちの生活用品くらい。家賃も、ローンは払い終わっているので、光熱費だけでいいという。
西山家からの申し出でなければ、恵まれすぎた条件で怖くて借りられないほどだ。
ただ1つ、困ったことがあるとすれば、二つある部屋のうち、1つは西山母の書斎になっていて、今も荷物がいっぱいで使えないということ。
そのかわり、広い主寝室とLDKがあるので不便はない。不便はないが……
俺はため息つきつつ、キングサイズのベッドを見た。サイドボードにローションとコンドームが出しっぱなしだ。
部屋が一つしかないため必然的に俺と西山は同じ部屋で寝起きすることになる。西山夫妻が使っていたベッドは夫妻のお気に入りだから処分も出来ないし、他に置いておく場所もないからこれを使わなきゃいけない。
あの性欲大魔神の西山と。一つ屋根の下って考えただけでも下半身が怠くなってくるのに。四年も同じ部屋、同じベッドで寝起きしなきゃならないなんて。大学を卒業する前に俺の精気全部吸い取られて死んじゃうんじゃないだろうか。
かと言って、一人暮らしをするにはお金がかかりすぎるし、ここがあるのに西山がよそに部屋を借りる利点はないし、同居を誘える友達が西山以外他に思い当たらないし、俺だって、西山のことは嫌いじゃないし。いやまぁ、むしろ好きだし……。好きだからセックスもしてるんだし……。
鉄筋コンクリートで気密性が高い分譲マンションでなければ、俺のあの声は隣近所に筒抜けだろう。そう思ったら顔が熱くなった。
ここへ越してきてから毎日だ。それはもう、昼夜を問わず、西山がその気になればその時がベッドタイムだ。
西山は馬鹿で体力があり余ってるから、セックスした次の日、朝一から講義でも目覚ましが鳴れば起きあがって朝飯食って学校に行く。すっきり晴れ晴れとした顔つきで。
俺のほうは眠いわ腰は怠いわで、学業に支障をきたすほど疲労困憊してるっていうのに。
さすがにそろそろ控えなきゃな。新生活の興奮も収まった。もうはしゃいでる場合じゃない。
「祐太、どうしたの?」
いつまでも戻らない俺を訝しんで西山が寝室にやってきた。
「ちょっと荷物片してた」
「イヤホンは見つかった?」
「うん、あった」
通学の電車の中が暇だから音楽でも聴こうと思ってイヤホンを探していたのだ。緊急性のない最後の段ボールから出て来た。ほかに漫画数冊と、体がなまらないようにと持ってきたグローブとボールなんかもあった。
運動はしてないけど、体力使うことだけは毎日している自負はある。
「同じ電車だったら良かったのにね」
床に転がるボールを見つけて、西山はそれを拾い上げた。そして上目遣いに俺を見て、意味深にニヤリと笑う。
「なに考えてんだよ、変態」
「俺の考えてることがわかるの?」
「どうせろくでもないことだろ」
「満員電車で痴/漢ごっこしてみたい」
ほんとろくでもねえ奴。
「電車の方向が逆で良かった」
「悪いおじさんにいやらしいことされてない?」
足を一歩踏み出して西山が俺の前に立つ。西山の声の色がかわった。少し低くなって、ねっとりした感じ。俺を見下ろす目も仄暗い。こいつ、スイッチ入れやがったな。
「晩飯はできたのか? 腹減った、食おうぜ!」
西山が本気になる前に部屋を出よう。と、したのだが、逞しい腕に掴まれて、強風に煽られる落ち葉の如く俺はベッドの上に投げ出されていた。すぐさま上に西山がのしかかる。
「答えて、祐太。痴/漢、されてない?」
「されるわけねえだろ」
「ほんとに一度も?」
「お前、頭おかしいんじゃねえか。俺をよく見ろよ、男だぞ、痴/漢なんかされるわけないだろ」
「それはわかってるんだけどね。なかには物好きがいるかもしれないでしょ。俺みたいな奴には、祐太って可愛くて無防備な小鳥も同然だから」
って舌なめずりする。俺が鳥なら西山はネコ科の動物だろう。もちろん、猫なんてかわいいもんじゃなく、ライオンとか百獣の王的なやつだ。
それを納得してしまう体格だし、風格も備わってる。悔しいが、俺が西山に勝てるところは何もない。体の大きさも、力の強さも、身体能力の高さも、全部西山のほうが上。勝っていたのは野球のセンスくらいで、それも高校卒業して野球をやめたから、何もなくなってしまった。
「重いから退けよ」
体を押し返した。当然びくともしない。
「誰かに喰われないように気を付けなきゃ駄目だよ。俺はもう、そばで守ってやれないんだから」
西山の手が服の中に入って来た。乳首を探し当て、親指で弾く。
「お前に守られるほど落ちぶれてねえわ! って、どこ触ってんだよ! 馬鹿! 飯!」
「ご飯はあとでいいよ」
子供をあやすような口調で言って俺の口を塞ぐ。ぬるっと舌が入ってくる。窒息しそうなほど奥まで突っ込んできて口中舐め回しやがる。
「んっ、んんっ! やっ……ぁ……んっ……」
その間も乳首を摘まんだりひっぱたりして弄り続ける。太ももで股間をゴリゴリと押してくる。勝手にそこに血液が集まって、硬くなってしまう。
「んぁ……あっ、や、だっ……やだって……!」
ぷはっと口を離して西山を睨みつけた。やる気満々の獣の目をしている。普段はくっきり二重のくりっとした目が、こんな時は切れ長で妖艶なものにかわる。色気ありすぎ。部室で馬鹿騒ぎしてた奴と同一人物だと思えない。こいつ、どんどん大人っぽくなる。
「嫌だって言っても、イキまくるの、祐太でしょ」
口の端を持ち上げて笑う。ぞくっとする表情に俺は絶句してしまう。
服をたくしあげ、西山は俺の胸に吸い付いた。すでに勃っている乳首を口に含み、舌で愛撫しながら手は俺の股間を包みこむ。ジーンズの上から玉と竿を揉みしだかれて、半立ちだったものが完全に勃起した。
「ほら。もうこんなにして。本当に嫌だったら、こんな風にはならないでしょ」
西山の手がベルトを外し、チャックを下ろす。熱い空気のこもったジーンズのなかに手を入れて、俺の勃起ちんこを外へ解放した。
「嫌だっ……だって、だって……」
「だって、なに?」
「だってお前、寝る前にまたヤルつもりだろ?! 今やって、寝る前にもやって……、そんなの俺がきつい! 死ぬ!」
「大丈夫、死なないよ」
にっこり笑ってんじゃねえ! やられる本人が死ぬって言ってんだよ!
「なあ、まじで、一日に何回もすんのは無理だって……! 一回で充分だろ? 毎日なんだぞ? お前は体力馬鹿だから平気かもしんないけど、俺は体力も性欲も普通だからきついんだよ。せめて一日一回! 週5で頼む!」
割と本気で懇願した。最後はエッチさせてと頼みこむ男みたいになったけど、意味合いがまるで逆なのが恐ろしい。ほとんど毎日、最低2回。多いと3回。休みの日は服を着させてもらえなかったこともある。
こんなのを繰り返していたら、本当に俺は死んでしまう……!!
西山は少し考えたあと、
「わかった。一日一回、週5だね。いいよ、それで」
と意外にあっさりと承諾した。
「高校の時を思えばそれでも贅沢な条件だよ。祐太と同棲できて、少し浮かれすぎてたみたいだ。祐太の負担も考えないで、独りよがりだった。ごめん、祐太」
感動するほど物わかりがいい。これほんとに西山か? 俺はまた言葉を失ってまじまじ西山の顔を見た。
「これからは一回の質をあげていくからね」
「えっ」
「がっつきすぎて、質より量になってたよね」
「えっ、ちょっ」
「今日から時間をかけて、じっくり丁寧に祐太のこと、愛してあげるからね」
あいかわらずむかつく上から目線で言うと、西山は俺のパンツとズボンを引き抜いて股間を晒した。天を向くちんこを一気に咽喉の奥までぱくりと咥えて、粘膜全部でしごく。
「あぁっ、うそ……! はっ、あ、ちがっ……そうじゃ、な……っ!!」
質はこのままでいい。充分だ。これ以上ねちっこくやられたら気がおかしくなる。口でグポグポと扱かれてあっという間に達しそうだ。西山の髪に指を入れて掻きまわした。
「あっ、あぁん、だめ、やだあぁぁ……! 違うっ、西山……はっ、はあぁっ……」
「わあってうよ」
先を口に含んだまま喋んな! 舌の先で尿道こじ開けられる。ゾクゾク背中が震える。
「……あっ、あ、あっ」
陰嚢を揉んでいた手の先が奥をつんつんと突く。そこがキュッと収縮するのがわかる。からかうように何度かつつかれたあと、今度は無機質なものがそこに当たった。西山お気に入りのアイテム、蛇腹式のローションだ。
ゆっくり冷たい液体が体の中に入って来た。
「んん……あ、ああ……!」
全部出し切るとそれが抜け、かわりに西山の指が入ってきて中をグチャグチャと掻きまわした。全体に馴染ませるような出し入れが終わると、次に指を中でまわしたり、関節を曲げたりして拡げていく。
指の腹や関節で前立腺を刺激することも忘れない。解すのと同時進行で俺を喘がせるツボを押し続ける。
「いあ……っ……あっ、あっ、や、だ……そこっ……西山、だめっ……はぁんっ……あっ、ああんっ」
「祐太かわいい。うねって俺の指に絡みついて来るよ」
と前立腺を擦りあげる。
「はあぁんっ! やっ……あっ、ああ……ゆびっ……そんなにしたら…ぁっ……やだっ……」
「イッちゃいそう?」
低音で囁くように言われて、俺はこくこくと何度も頷いた。
「ひ……ッ……うんっ……ぁああっ……もお……無理……っ! イッちゃうっ……ああぁっ、俺……西山ぁ……指、だけ、で……イッちゃ……っ、あ、やっ、ああぁあっ……!!」
ぎゅっと腰に力が入る。イク気配を察したように、西山はまた俺のちんこを咥えた。ほとんど同時に、熱い塊が管を走り抜け、西山の口の中へ飛びこんでいった。慣れたもので、西山はそれをごくりと飲むと、最後の一滴まで搾り取るように先端を啜る。
「も……いいっ、い……ってば! ひっ、強いからっ……イッたばっかで……や、やめっ」
ハァハァ荒く呼吸して一息つこうとしてるのに、西山はまだ指を動かし続ける。強すぎる刺激に足がガクガク震える。
「指じゃやだ? もっと太くておっきいの入れてあげようか?」
なんて言う。変態エロ親父かお前は!! それにお前の「太くておっきい」は過小評価過ぎるだろうが! お前のちんこは「極太の化け物」サイズのくせに!
ギリッと睨みつけた先、足の間に、その化け物はいた。俺のちんこがはるか遠くにあるような錯覚を抱かせるほど、遠近感の狂った規格外にでかい凶器がゆらりと頭をもたげ、俺を見据えている。ヒクッと俺の咽喉が鳴る。
「こいつが祐太のなかに入りたいってさ」
最後の段ボールが今日やっと片付いた。空になった段ボールを潰しながら、大学生が住むには贅沢な2LDKのマンションの寝室を見渡した。
ここは西山の両親が十数年ほど前に購入したマンションだ。まだ国内で仕事をしていた西山母のために、利便性の高いこの家を買ったらしい。
西山が小さい頃は新婚気分に戻るために、夫婦でここにこもることもあったという。西山母が海外での仕事を始めてからは、西山父が一人になりたい時、妻を思い出したい時に、たまに使用する程度で、それじゃ勿体ないからと高校を卒業した俺たちに貸してくれることになった。
ありがたい話すぎて恐縮してしまう。家具類はすべて揃っているので新たに買い足したものは自分たちの生活用品くらい。家賃も、ローンは払い終わっているので、光熱費だけでいいという。
西山家からの申し出でなければ、恵まれすぎた条件で怖くて借りられないほどだ。
ただ1つ、困ったことがあるとすれば、二つある部屋のうち、1つは西山母の書斎になっていて、今も荷物がいっぱいで使えないということ。
そのかわり、広い主寝室とLDKがあるので不便はない。不便はないが……
俺はため息つきつつ、キングサイズのベッドを見た。サイドボードにローションとコンドームが出しっぱなしだ。
部屋が一つしかないため必然的に俺と西山は同じ部屋で寝起きすることになる。西山夫妻が使っていたベッドは夫妻のお気に入りだから処分も出来ないし、他に置いておく場所もないからこれを使わなきゃいけない。
あの性欲大魔神の西山と。一つ屋根の下って考えただけでも下半身が怠くなってくるのに。四年も同じ部屋、同じベッドで寝起きしなきゃならないなんて。大学を卒業する前に俺の精気全部吸い取られて死んじゃうんじゃないだろうか。
かと言って、一人暮らしをするにはお金がかかりすぎるし、ここがあるのに西山がよそに部屋を借りる利点はないし、同居を誘える友達が西山以外他に思い当たらないし、俺だって、西山のことは嫌いじゃないし。いやまぁ、むしろ好きだし……。好きだからセックスもしてるんだし……。
鉄筋コンクリートで気密性が高い分譲マンションでなければ、俺のあの声は隣近所に筒抜けだろう。そう思ったら顔が熱くなった。
ここへ越してきてから毎日だ。それはもう、昼夜を問わず、西山がその気になればその時がベッドタイムだ。
西山は馬鹿で体力があり余ってるから、セックスした次の日、朝一から講義でも目覚ましが鳴れば起きあがって朝飯食って学校に行く。すっきり晴れ晴れとした顔つきで。
俺のほうは眠いわ腰は怠いわで、学業に支障をきたすほど疲労困憊してるっていうのに。
さすがにそろそろ控えなきゃな。新生活の興奮も収まった。もうはしゃいでる場合じゃない。
「祐太、どうしたの?」
いつまでも戻らない俺を訝しんで西山が寝室にやってきた。
「ちょっと荷物片してた」
「イヤホンは見つかった?」
「うん、あった」
通学の電車の中が暇だから音楽でも聴こうと思ってイヤホンを探していたのだ。緊急性のない最後の段ボールから出て来た。ほかに漫画数冊と、体がなまらないようにと持ってきたグローブとボールなんかもあった。
運動はしてないけど、体力使うことだけは毎日している自負はある。
「同じ電車だったら良かったのにね」
床に転がるボールを見つけて、西山はそれを拾い上げた。そして上目遣いに俺を見て、意味深にニヤリと笑う。
「なに考えてんだよ、変態」
「俺の考えてることがわかるの?」
「どうせろくでもないことだろ」
「満員電車で痴/漢ごっこしてみたい」
ほんとろくでもねえ奴。
「電車の方向が逆で良かった」
「悪いおじさんにいやらしいことされてない?」
足を一歩踏み出して西山が俺の前に立つ。西山の声の色がかわった。少し低くなって、ねっとりした感じ。俺を見下ろす目も仄暗い。こいつ、スイッチ入れやがったな。
「晩飯はできたのか? 腹減った、食おうぜ!」
西山が本気になる前に部屋を出よう。と、したのだが、逞しい腕に掴まれて、強風に煽られる落ち葉の如く俺はベッドの上に投げ出されていた。すぐさま上に西山がのしかかる。
「答えて、祐太。痴/漢、されてない?」
「されるわけねえだろ」
「ほんとに一度も?」
「お前、頭おかしいんじゃねえか。俺をよく見ろよ、男だぞ、痴/漢なんかされるわけないだろ」
「それはわかってるんだけどね。なかには物好きがいるかもしれないでしょ。俺みたいな奴には、祐太って可愛くて無防備な小鳥も同然だから」
って舌なめずりする。俺が鳥なら西山はネコ科の動物だろう。もちろん、猫なんてかわいいもんじゃなく、ライオンとか百獣の王的なやつだ。
それを納得してしまう体格だし、風格も備わってる。悔しいが、俺が西山に勝てるところは何もない。体の大きさも、力の強さも、身体能力の高さも、全部西山のほうが上。勝っていたのは野球のセンスくらいで、それも高校卒業して野球をやめたから、何もなくなってしまった。
「重いから退けよ」
体を押し返した。当然びくともしない。
「誰かに喰われないように気を付けなきゃ駄目だよ。俺はもう、そばで守ってやれないんだから」
西山の手が服の中に入って来た。乳首を探し当て、親指で弾く。
「お前に守られるほど落ちぶれてねえわ! って、どこ触ってんだよ! 馬鹿! 飯!」
「ご飯はあとでいいよ」
子供をあやすような口調で言って俺の口を塞ぐ。ぬるっと舌が入ってくる。窒息しそうなほど奥まで突っ込んできて口中舐め回しやがる。
「んっ、んんっ! やっ……ぁ……んっ……」
その間も乳首を摘まんだりひっぱたりして弄り続ける。太ももで股間をゴリゴリと押してくる。勝手にそこに血液が集まって、硬くなってしまう。
「んぁ……あっ、や、だっ……やだって……!」
ぷはっと口を離して西山を睨みつけた。やる気満々の獣の目をしている。普段はくっきり二重のくりっとした目が、こんな時は切れ長で妖艶なものにかわる。色気ありすぎ。部室で馬鹿騒ぎしてた奴と同一人物だと思えない。こいつ、どんどん大人っぽくなる。
「嫌だって言っても、イキまくるの、祐太でしょ」
口の端を持ち上げて笑う。ぞくっとする表情に俺は絶句してしまう。
服をたくしあげ、西山は俺の胸に吸い付いた。すでに勃っている乳首を口に含み、舌で愛撫しながら手は俺の股間を包みこむ。ジーンズの上から玉と竿を揉みしだかれて、半立ちだったものが完全に勃起した。
「ほら。もうこんなにして。本当に嫌だったら、こんな風にはならないでしょ」
西山の手がベルトを外し、チャックを下ろす。熱い空気のこもったジーンズのなかに手を入れて、俺の勃起ちんこを外へ解放した。
「嫌だっ……だって、だって……」
「だって、なに?」
「だってお前、寝る前にまたヤルつもりだろ?! 今やって、寝る前にもやって……、そんなの俺がきつい! 死ぬ!」
「大丈夫、死なないよ」
にっこり笑ってんじゃねえ! やられる本人が死ぬって言ってんだよ!
「なあ、まじで、一日に何回もすんのは無理だって……! 一回で充分だろ? 毎日なんだぞ? お前は体力馬鹿だから平気かもしんないけど、俺は体力も性欲も普通だからきついんだよ。せめて一日一回! 週5で頼む!」
割と本気で懇願した。最後はエッチさせてと頼みこむ男みたいになったけど、意味合いがまるで逆なのが恐ろしい。ほとんど毎日、最低2回。多いと3回。休みの日は服を着させてもらえなかったこともある。
こんなのを繰り返していたら、本当に俺は死んでしまう……!!
西山は少し考えたあと、
「わかった。一日一回、週5だね。いいよ、それで」
と意外にあっさりと承諾した。
「高校の時を思えばそれでも贅沢な条件だよ。祐太と同棲できて、少し浮かれすぎてたみたいだ。祐太の負担も考えないで、独りよがりだった。ごめん、祐太」
感動するほど物わかりがいい。これほんとに西山か? 俺はまた言葉を失ってまじまじ西山の顔を見た。
「これからは一回の質をあげていくからね」
「えっ」
「がっつきすぎて、質より量になってたよね」
「えっ、ちょっ」
「今日から時間をかけて、じっくり丁寧に祐太のこと、愛してあげるからね」
あいかわらずむかつく上から目線で言うと、西山は俺のパンツとズボンを引き抜いて股間を晒した。天を向くちんこを一気に咽喉の奥までぱくりと咥えて、粘膜全部でしごく。
「あぁっ、うそ……! はっ、あ、ちがっ……そうじゃ、な……っ!!」
質はこのままでいい。充分だ。これ以上ねちっこくやられたら気がおかしくなる。口でグポグポと扱かれてあっという間に達しそうだ。西山の髪に指を入れて掻きまわした。
「あっ、あぁん、だめ、やだあぁぁ……! 違うっ、西山……はっ、はあぁっ……」
「わあってうよ」
先を口に含んだまま喋んな! 舌の先で尿道こじ開けられる。ゾクゾク背中が震える。
「……あっ、あ、あっ」
陰嚢を揉んでいた手の先が奥をつんつんと突く。そこがキュッと収縮するのがわかる。からかうように何度かつつかれたあと、今度は無機質なものがそこに当たった。西山お気に入りのアイテム、蛇腹式のローションだ。
ゆっくり冷たい液体が体の中に入って来た。
「んん……あ、ああ……!」
全部出し切るとそれが抜け、かわりに西山の指が入ってきて中をグチャグチャと掻きまわした。全体に馴染ませるような出し入れが終わると、次に指を中でまわしたり、関節を曲げたりして拡げていく。
指の腹や関節で前立腺を刺激することも忘れない。解すのと同時進行で俺を喘がせるツボを押し続ける。
「いあ……っ……あっ、あっ、や、だ……そこっ……西山、だめっ……はぁんっ……あっ、ああんっ」
「祐太かわいい。うねって俺の指に絡みついて来るよ」
と前立腺を擦りあげる。
「はあぁんっ! やっ……あっ、ああ……ゆびっ……そんなにしたら…ぁっ……やだっ……」
「イッちゃいそう?」
低音で囁くように言われて、俺はこくこくと何度も頷いた。
「ひ……ッ……うんっ……ぁああっ……もお……無理……っ! イッちゃうっ……ああぁっ、俺……西山ぁ……指、だけ、で……イッちゃ……っ、あ、やっ、ああぁあっ……!!」
ぎゅっと腰に力が入る。イク気配を察したように、西山はまた俺のちんこを咥えた。ほとんど同時に、熱い塊が管を走り抜け、西山の口の中へ飛びこんでいった。慣れたもので、西山はそれをごくりと飲むと、最後の一滴まで搾り取るように先端を啜る。
「も……いいっ、い……ってば! ひっ、強いからっ……イッたばっかで……や、やめっ」
ハァハァ荒く呼吸して一息つこうとしてるのに、西山はまだ指を動かし続ける。強すぎる刺激に足がガクガク震える。
「指じゃやだ? もっと太くておっきいの入れてあげようか?」
なんて言う。変態エロ親父かお前は!! それにお前の「太くておっきい」は過小評価過ぎるだろうが! お前のちんこは「極太の化け物」サイズのくせに!
ギリッと睨みつけた先、足の間に、その化け物はいた。俺のちんこがはるか遠くにあるような錯覚を抱かせるほど、遠近感の狂った規格外にでかい凶器がゆらりと頭をもたげ、俺を見据えている。ヒクッと俺の咽喉が鳴る。
「こいつが祐太のなかに入りたいってさ」
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Phantom (15/15)
2016.09.11.Sun.
<1話、2話、3話、4話、5話、6話、7話、8話、9話、10話、11話、12話、13話、14話>
用心に用心を重ね、何度もシミュレーションし、計画を練り直し、何通りもの案を考え、実行できるように準備した。
マンションの住人と男子学生の行動パターンを調べ上げた。午前11時を過ぎると住人に会うことはほとんどない。男子学生は授業には一応出ているようで、9時から18時頃までは授業のない時間も大学にいることがほとんどだということがわかった。
マンションの非常ドアは中から施錠されているだけで、開けておいても誰も気付かないし、利用もしない。監視カメラもなく、ここから出入り自由だった。
下調べをしている時、一度男子学生とニアミスした。春の終わり頃、彼は半袖の服を取りに来たようだった。なんとか会わずに済んだ。恋人とも順調なようで安心した。
拾った保険証でトランクルームの契約をした。契約するときには普段着ないカジュアルな服を着て、野球帽で顔を隠した。四ヶ月という短期問契約で、使用料は前払い。契約書には事前に暗記しておいた最上渓一の名前と住所を書いた。
引っ越し業者を呼んで、契約しておいたトランクルームへ荷物を運んでもらった。立ちあったのは最初と最後、鍵の開け閉めが必要な時だけ。業者に何か言われたら男子学生の兄で通そうと決めていたが、特に何も言われることもなく、引っ越しは完了した。
学生の部屋に戻り、がらんとした空間に座り込んだ。本当に実行する気かと何度も自問自答する。ここまでやって今更引き返せるのかと声がする。
久世の会社帰りや、借りているワンルームのあたりをウロウロして、遠目に何度か顔は見ていた。青白い顔をしていて、疲れている様子だった。仕事がきついのか、留美に振られたからか。
たまに後輩らしい青年と飲みに行くこともあった。
見知らぬ青年に笑いかける久世を見るのは辛かった。人見知りであるはずなのに、青年とはずいぶん親しげに見えた。それほど多く時間を共有しているということだろう。
物陰から盗み見している自分がひどく惨めだった。
恋人になりたいなんて身の程知らずなことを願ったりしなかったのに。ただ、そばにいられれば、それだけが望みだったのに。
自分の知らない間に久世はどんどん交友関係を築いて広げていく。その中に久世の心を射止める者が出て来るだろう。そしていつか結婚報告されるのだ。結婚式の招待状が送りつけられ、数年後に家族写真の年賀状が届く。久世のそばに自分の居場所はなくなる。
冷静ではいられない。平気なわけがない。それは耐えられない苦痛だ。
樫木は実行する決心をした。
そもそもが成功するか怪しい計画だ。男子学生が帰って来れば即刻終了。小さな綻びから破綻してしまう危うい綱渡りだ。その時にはすべてを捨てる覚悟で、樫木は久世の帰りを待ち伏せし、スタンガンで襲いかかった。
男子学生の部屋に連れて行き、気絶している久世の衣類を脱がせた。全裸になった久世にしばらく見とれた。これから久世と一緒にいられる。最長で三ヶ月、短くて数時間。しっかり目に焼き付けてから次の作業にかかった。
期間を三ヶ月間と決めたのは、運が良ければ次の衣替えの時期まで男子学生は戻ってこないと踏んだからだ。
逃げられないよう足首にSM用の鍵付きバンドを巻き、ロープを括りつけた。ロープの長さはある程度行動はできるようにしてある。
ベランダと窓の雨戸は閉めておいた。目隠し用の布を枕元に置き、パソコンで作成したメモは、目を覚ました久世が部屋を見渡した時最初に見つけられるように床に置いて、樫木は部屋を出た。
久世が目を覚ましたのは数時間後、明け方近くだった。盗聴器と隠しカメラで、近くに停めた車からその様子を窺っていた。
久世は自分の置かれた状況に顔を青くして混乱していた。無理もない。長い時間をかけてメモを読み、長い時間茫然としたあと、震える手で目隠しを取った。
ベッドの上で膝を抱え、小さくなるとピクリとも動かなくなった。
樫木は事前に用意しておいた香水をつけた。二種類の香水をブレンドしたもので、世界に一つの香水になっている。失敗しながら試行錯誤し、一番上品な匂いになる二種類を選んだ。
これで久世が他の誰かと自分の匂いを間違えることはないはずだ。この匂いを嗅げばいつどこにいても自分を思い出すはずだ。
しばらくモニターを観察してから部屋に戻った。音を聞きつけ、久世はさらに小さくなって怯えていた。心が痛むと同時に、愛おしさが溢れてきて樫木は無意識に笑みを湛えていた。
まず目隠しの状態を確かめ、それから久世の体に触れた。極度の緊張のせいで久世の体は冷たかった。触ると肌が粟立るのが見えた。ブルブルと震えだし、「助けて」と掠れた声を出した。
傷つけるつもりなんかないとわかってもらうために、ことさら優しくした。愛情を伝えるために体中に口づけた。
「許して……っ」
瀕死の者のような悲痛な叫び声だった。本人は大きな声を出しているつもりなのだろうが、部屋の空気をわずかに震わせる程度の声量なのが哀れだった。
抵抗すればスタンガンの存在を耳に教えた。石像のように固まった久世を四つん這いにさせ、大人になってからは誰にも見せたことがないだろう場所を見た。
すすり泣く久世を慰めるように舌を這わせた。今までの思いの丈をぶつけるように、丁寧に時間をかけて丹念に舐め解した。何時間だって舐めていられる。
手足が疲れたのか久世はベッドに突っ伏した。太ももがガクガク震えていた。つい夢中になってしまったことに気付いた。名残惜しかったが次の段階へ移った。
ローションで穴を潤わせ、ペニスを挿入した。自分のしでかしたことも忘れてその瞬間は恍惚に浸った。
久世の負担を考え、慣れるまでは動かずじっとしていた。久世の中は温かくて蕩けそうだった。射精の予感を紛らわそうと久世の体を舐めながら、苦痛を和らげてやるためにペニスを触った。
久世の様子をみながら腰を動かしたり、止めたりした。嗚咽を漏らすだけの久世も、ペニスを刺激され続けて射精した。手にかかった生温かい液体を舐め取った。久世のものなら何もかもが愛しい。
我ながらよく持ったと感心するほど長い時間のあと久世のなかに精を放った。力尽きたのか久世はぐったりと横たわる。
お湯で絞ったタオルで久世の体を綺麗に拭いた。涙のあとが痛々しい顔は優しく、精液にまみれた性器は包みこむように、全身の汚れをくまなく拭い取った。
布団のなかに寝かせると、久世は気絶するように眠りに落ちた。
時計を見ると正午を過ぎていた。驚くほど時間の経過が早い。
それから毎日、自宅と監禁部屋の往復だった。
仕事は夕方にして、学生が学校に行っているはずの時間は久世と一緒にいた。
最初の一ヶ月は久世の態度は硬かった。樫木が来たとわかると硬直し、体を震わせ、触ると許してと泣き、犯すと声すら失って呻くだけだった。
二ヶ月目から少しかわってきた。樫木が危害を加えないことが理解できたのか、なすがまま、体を預けて来るようになった。心細さからか、逃げる好機を狙ってか、話しかけてくるようになったのもこの頃だ。
三ヶ月目は別人になったと言ってよかった。樫木が部屋に入って雑事を片付けている間、その物音や気配を追って顔を動かしていた。深く息を吸いこむ動作も見られた。香水の匂いを、樫木の匂いだと認識しているのだ。
シャワーで体を洗ってやると礼を言われるようになった。キスをすると舌を絡ませてきた。体を触れば甘ったるい吐息を漏らした。性器を擦れば声をあげた。ペニスを挿入すれば気持ちいいと喘ぐようになった。
本能的な自己防衛から来る変化だとわかっていても、乱れる久世を見るのは興奮したし、嬉しかった。この時間が永遠に続けばいいのにと願った。何度目隠しを外し、自分のマンションへ連れ帰って一生閉じ込めておこうと思ったか知れない。
そろそろタイムリミットが近づいていた。物悲しく思いながらベッドの久世を見下ろした。
「……どうしたの? 早く、入れて……っ……僕のなか、もうトロトロだよ……? あなたのを入れて欲しくてヒクヒクしてるの……見えるでしょ……?」
淫らに変貌した久世を置いていくくらいなら、繋がったままの現場を取り押さえられ、何もかも失ったほうがマシだと思えて来る。
「ねえ、早く……僕のなか、あなたのでグチャグチャに掻きまわして……っ」
頭を振って感傷を吹き飛ばした。ゆっくり味わうようにペニスを挿入した。中は熱くうねっている。直接敏感な部分を擦り合うのはこれが最後だ。明日からは証拠を消すための、最終段階に入る。
この匂いを覚えておいて。次に会う時まで忘れないで。必ず迎えに行くから。その時まで愛しい人よ、待っていて。
用心に用心を重ね、何度もシミュレーションし、計画を練り直し、何通りもの案を考え、実行できるように準備した。
マンションの住人と男子学生の行動パターンを調べ上げた。午前11時を過ぎると住人に会うことはほとんどない。男子学生は授業には一応出ているようで、9時から18時頃までは授業のない時間も大学にいることがほとんどだということがわかった。
マンションの非常ドアは中から施錠されているだけで、開けておいても誰も気付かないし、利用もしない。監視カメラもなく、ここから出入り自由だった。
下調べをしている時、一度男子学生とニアミスした。春の終わり頃、彼は半袖の服を取りに来たようだった。なんとか会わずに済んだ。恋人とも順調なようで安心した。
拾った保険証でトランクルームの契約をした。契約するときには普段着ないカジュアルな服を着て、野球帽で顔を隠した。四ヶ月という短期問契約で、使用料は前払い。契約書には事前に暗記しておいた最上渓一の名前と住所を書いた。
引っ越し業者を呼んで、契約しておいたトランクルームへ荷物を運んでもらった。立ちあったのは最初と最後、鍵の開け閉めが必要な時だけ。業者に何か言われたら男子学生の兄で通そうと決めていたが、特に何も言われることもなく、引っ越しは完了した。
学生の部屋に戻り、がらんとした空間に座り込んだ。本当に実行する気かと何度も自問自答する。ここまでやって今更引き返せるのかと声がする。
久世の会社帰りや、借りているワンルームのあたりをウロウロして、遠目に何度か顔は見ていた。青白い顔をしていて、疲れている様子だった。仕事がきついのか、留美に振られたからか。
たまに後輩らしい青年と飲みに行くこともあった。
見知らぬ青年に笑いかける久世を見るのは辛かった。人見知りであるはずなのに、青年とはずいぶん親しげに見えた。それほど多く時間を共有しているということだろう。
物陰から盗み見している自分がひどく惨めだった。
恋人になりたいなんて身の程知らずなことを願ったりしなかったのに。ただ、そばにいられれば、それだけが望みだったのに。
自分の知らない間に久世はどんどん交友関係を築いて広げていく。その中に久世の心を射止める者が出て来るだろう。そしていつか結婚報告されるのだ。結婚式の招待状が送りつけられ、数年後に家族写真の年賀状が届く。久世のそばに自分の居場所はなくなる。
冷静ではいられない。平気なわけがない。それは耐えられない苦痛だ。
樫木は実行する決心をした。
そもそもが成功するか怪しい計画だ。男子学生が帰って来れば即刻終了。小さな綻びから破綻してしまう危うい綱渡りだ。その時にはすべてを捨てる覚悟で、樫木は久世の帰りを待ち伏せし、スタンガンで襲いかかった。
男子学生の部屋に連れて行き、気絶している久世の衣類を脱がせた。全裸になった久世にしばらく見とれた。これから久世と一緒にいられる。最長で三ヶ月、短くて数時間。しっかり目に焼き付けてから次の作業にかかった。
期間を三ヶ月間と決めたのは、運が良ければ次の衣替えの時期まで男子学生は戻ってこないと踏んだからだ。
逃げられないよう足首にSM用の鍵付きバンドを巻き、ロープを括りつけた。ロープの長さはある程度行動はできるようにしてある。
ベランダと窓の雨戸は閉めておいた。目隠し用の布を枕元に置き、パソコンで作成したメモは、目を覚ました久世が部屋を見渡した時最初に見つけられるように床に置いて、樫木は部屋を出た。
久世が目を覚ましたのは数時間後、明け方近くだった。盗聴器と隠しカメラで、近くに停めた車からその様子を窺っていた。
久世は自分の置かれた状況に顔を青くして混乱していた。無理もない。長い時間をかけてメモを読み、長い時間茫然としたあと、震える手で目隠しを取った。
ベッドの上で膝を抱え、小さくなるとピクリとも動かなくなった。
樫木は事前に用意しておいた香水をつけた。二種類の香水をブレンドしたもので、世界に一つの香水になっている。失敗しながら試行錯誤し、一番上品な匂いになる二種類を選んだ。
これで久世が他の誰かと自分の匂いを間違えることはないはずだ。この匂いを嗅げばいつどこにいても自分を思い出すはずだ。
しばらくモニターを観察してから部屋に戻った。音を聞きつけ、久世はさらに小さくなって怯えていた。心が痛むと同時に、愛おしさが溢れてきて樫木は無意識に笑みを湛えていた。
まず目隠しの状態を確かめ、それから久世の体に触れた。極度の緊張のせいで久世の体は冷たかった。触ると肌が粟立るのが見えた。ブルブルと震えだし、「助けて」と掠れた声を出した。
傷つけるつもりなんかないとわかってもらうために、ことさら優しくした。愛情を伝えるために体中に口づけた。
「許して……っ」
瀕死の者のような悲痛な叫び声だった。本人は大きな声を出しているつもりなのだろうが、部屋の空気をわずかに震わせる程度の声量なのが哀れだった。
抵抗すればスタンガンの存在を耳に教えた。石像のように固まった久世を四つん這いにさせ、大人になってからは誰にも見せたことがないだろう場所を見た。
すすり泣く久世を慰めるように舌を這わせた。今までの思いの丈をぶつけるように、丁寧に時間をかけて丹念に舐め解した。何時間だって舐めていられる。
手足が疲れたのか久世はベッドに突っ伏した。太ももがガクガク震えていた。つい夢中になってしまったことに気付いた。名残惜しかったが次の段階へ移った。
ローションで穴を潤わせ、ペニスを挿入した。自分のしでかしたことも忘れてその瞬間は恍惚に浸った。
久世の負担を考え、慣れるまでは動かずじっとしていた。久世の中は温かくて蕩けそうだった。射精の予感を紛らわそうと久世の体を舐めながら、苦痛を和らげてやるためにペニスを触った。
久世の様子をみながら腰を動かしたり、止めたりした。嗚咽を漏らすだけの久世も、ペニスを刺激され続けて射精した。手にかかった生温かい液体を舐め取った。久世のものなら何もかもが愛しい。
我ながらよく持ったと感心するほど長い時間のあと久世のなかに精を放った。力尽きたのか久世はぐったりと横たわる。
お湯で絞ったタオルで久世の体を綺麗に拭いた。涙のあとが痛々しい顔は優しく、精液にまみれた性器は包みこむように、全身の汚れをくまなく拭い取った。
布団のなかに寝かせると、久世は気絶するように眠りに落ちた。
時計を見ると正午を過ぎていた。驚くほど時間の経過が早い。
それから毎日、自宅と監禁部屋の往復だった。
仕事は夕方にして、学生が学校に行っているはずの時間は久世と一緒にいた。
最初の一ヶ月は久世の態度は硬かった。樫木が来たとわかると硬直し、体を震わせ、触ると許してと泣き、犯すと声すら失って呻くだけだった。
二ヶ月目から少しかわってきた。樫木が危害を加えないことが理解できたのか、なすがまま、体を預けて来るようになった。心細さからか、逃げる好機を狙ってか、話しかけてくるようになったのもこの頃だ。
三ヶ月目は別人になったと言ってよかった。樫木が部屋に入って雑事を片付けている間、その物音や気配を追って顔を動かしていた。深く息を吸いこむ動作も見られた。香水の匂いを、樫木の匂いだと認識しているのだ。
シャワーで体を洗ってやると礼を言われるようになった。キスをすると舌を絡ませてきた。体を触れば甘ったるい吐息を漏らした。性器を擦れば声をあげた。ペニスを挿入すれば気持ちいいと喘ぐようになった。
本能的な自己防衛から来る変化だとわかっていても、乱れる久世を見るのは興奮したし、嬉しかった。この時間が永遠に続けばいいのにと願った。何度目隠しを外し、自分のマンションへ連れ帰って一生閉じ込めておこうと思ったか知れない。
そろそろタイムリミットが近づいていた。物悲しく思いながらベッドの久世を見下ろした。
「……どうしたの? 早く、入れて……っ……僕のなか、もうトロトロだよ……? あなたのを入れて欲しくてヒクヒクしてるの……見えるでしょ……?」
淫らに変貌した久世を置いていくくらいなら、繋がったままの現場を取り押さえられ、何もかも失ったほうがマシだと思えて来る。
「ねえ、早く……僕のなか、あなたのでグチャグチャに掻きまわして……っ」
頭を振って感傷を吹き飛ばした。ゆっくり味わうようにペニスを挿入した。中は熱くうねっている。直接敏感な部分を擦り合うのはこれが最後だ。明日からは証拠を消すための、最終段階に入る。
この匂いを覚えておいて。次に会う時まで忘れないで。必ず迎えに行くから。その時まで愛しい人よ、待っていて。
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