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Love Scars (3/3)

2016.07.18.Mon.
<前話はこちら>

 二人は小さな公園に入って行った。雑草は伸び放題で、錆びた鉄棒と砂の固まった砂場があるだけの不人気な公園らしく他に人の姿はない。二人は植え込みの向こうへ姿を消した。

 木の陰に隠れながらそっと窺う。横には大きなマンションがあり、仕切りになっている壁にトオルは押し付けられていた。

「ちゃんと二人に奉仕してあげなきゃ駄目じゃないか」
「ご、ごめん、でも、今日は……!」
「今日は?」
「近田、くん、いなかったじゃんかよ」
「僕がいないとできないの? 僕のせいだって言うの?」
「違うっ、そうじゃなくて……! 近田くんがいないと、困る」
「どうして困るの?」
「あの水上って奴、なんか知んないけどキレて怖えし、向居はめちゃくちゃやるし」
「めちゃくちゃに犯されるの、好きだろ?」

 トオルの頬に近田は指先を這わす。それだけでトオルは顔を赤くしてギュッと目を瞑った。

「好き、じゃなっ……」
「忘れちゃった? ビデオに撮ってるから見せてあげようか? ホモの人たちにいっぱい犯されて喜んでる姿」
「あれは……! クスリのせい、だし……!」
「そうかな? じゃあ、これはなに?」
「あっ!」

 近田が股間を触ると、トオルは女みたいな声をあげた。ズボンを押し上げる膨らみ。ただ近田が目の前で喋っているだけで、トオルは勃起させていた。

「吐くくらい酷いことされたのに、どうしてこんなにしてるのかな?」
「は……ぁっ……それ、は……」
「ちゃんと僕に教えてくれる?」
「近田くんは、俺に……っ……優しくして、くれる、からっ……!」
「こんな目に遭うようになったのは僕のせいなのに?」
「最初に……、金取った、俺が……悪いンだし……」
「ちゃんとわかってるなんて、いい子だね、トオル」

 近田が顔を寄せる。待っていたように、トオルも顔を近づけて二人は唇を重ねた。長く深く。弾けるような水音が聞こえて来る。俺の頭に血が上る。

「正解のご褒美が欲しい?」

 近田の問いかけにトオルが躊躇いがちに頷く。

「じゃあ、どうしなきゃいけないかわかるよね?」

 トオルはしゃがみこんで近田の股間に顔を埋めた。丹念に、充分な時間をかけてそれを研ぎ上げる。そそり立つペニス越しに近田を見上げ、許しをもらうとトオルは壁に手をついて立った。背後から近田がトオルを刺し貫く。

「あっ、あああぁぁっ……!!」

 トオルの背がしなる。近田が舌なめずりをしながら腰を振る。俺の目は二人の結合部へ吸い寄せられる。いつもなら向居の目や、近田にバレるのが怖くて直視できなかった場所を、今日は思う存分ガン見できる。

 位置的に近田の腰で全部は見えないが、引いた時は近田のペニスがわずかに見えた。

 近くでちゃんと見たのは数えるほど。実は綺麗な色をしている。血管の浮き上がりやカリの反り具合は男らしい。亀頭は涎が出るほど魅力的だった。

 それを生で、あの汚らしいトオルのケツに突っ込んでやっている。どす黒い感情が俺を蝕む。睨むように見ながら俺は自分のペニスを握って扱いた。

「ふあぁっ、ああっ……ん……! はあぁぁ……あん……!!」

 近田の腰の動きに合わせてトオルも尻を揺らしている。色のついた気持ち悪い喘ぎ声が聞こえて来る。

「今日はまだ中に出されてないの?」
「う、んっ! 俺…ッ…吐いちゃった、から……!」
「そっか。じゃあ今日はトオルの望みをきいてあげる。どうして欲しい?」
「ど……って……?」
「なんでもトオルの望みを叶えてあげる。いま止めてもいいし、このまま続けててもいい。どこに欲しいのか、欲しくないのか、ちゃんと僕に言ってごらん」

 体をぴたりとくっつけて、近田はトオルの耳元で言った。前に回した手はシャツのなかに入って動いている。トオルは顎をあげたり下げたりして、与えられる刺激に翻弄されていた。

「やっ……やめ……な……で…ッ…このまま……中、出して、欲しい……!」
「わかった。トオルの望み通りにしてあげるね」

 近田はトオルの腰を持つと、穿ちこむように尻を突きあげた。

「あはあぁっ! あぁんっ!! あっ、ああっ……!!」
「声大きすぎ」

 近田の笑い声。

「ん、ごめ……んっ!! んふぅっ……ううっ……あぁんっ」
「今度、大きな声を出せるホテルでしようか?」
「んっ! うんっ……いふっ……ホテル、いき、た……あはぁっ、ああん!」
「気持ちいい?」
「きもちぃ……っ! あっ、あっ、チカは……?!」

 切ない顔でトオルが近田を振り返る。近田は「気持ちいいよ」と骨ばった肩にキスしてやっていた。一瞬目の前が赤くなるほど頭に血が上った。

 チカという呼び方は俺しかしない。前に一度向居がチカと呼ぼうとしたが、不機嫌になるからやめとけと俺が止めた。

 実際、俺がそう呼び出した頃、近田は「女みたいだ」と嫌がっていたのだ。気にせず呼び続けていたら慣れたようだが、積極的に呼ばれたいあだ名ではなかったはずだ。

 俺の自尊心を満足させるためだけのものだった。ほんのちょっとの優越感のためにトオルの前でもチカと呼んでいた。普段トオルには全員「くん」付けで呼ばせていたが、こうして二人きりになった時は、以前からチカと呼んでいたのかもしれない。近田もそれを許していたのかもしれない。

 二人の間に割り込める隙間がない。悔しくてたまらないのに、二人を見続けてしまう。ペニスを扱く手を止められない。

「や、あっ、チカッ……、俺、も……い、イクッ」
「早くない?」

 揶揄する近田の声。

「だって……気持ちい…ッ…いっ、ち、チカのちんぽっ……気持ちくて……俺……もお……出ちゃ……ッ!!」

 ブロック塀にしがみつくようにトオルは背を丸めた。射精された精液が、ブロック塀を伝い落ちてくるのが見えた。

 なぜ近田に抱かれて達したのが俺ではないのか。惨めさに歯ぎしりしながら俺も射精をした。木にべったりとついた白い液体が、重力によってゆっくり下へ垂れて行く。泣きたくなるほど惨めな光景だ。

「次は僕の番だよ、トオル」
「はぁっ……はっ……あ……チカの、中に欲し…ぃ…」
「わかってる。トオルは僕に中出しされたいんだよね? トオルの中に全部出してあげる」
「んっ……早く……チカだったら俺、なにされてもい……から……っ」
「他の二人は?」
「あいつらは、や、だっ……チカだけ……! チカだけがいい……!!」

 トオルの言葉を聞いた近田は目と口を左右に釣りあげた。トオルが手中に堕ちたと確信した悪い笑顔だ。

 その後も近田は優しく甘い言葉を囁きながらトオルを犯した。最後はトオルの望みのまま中に出してやり、ねだられると口にキスもしてやっていた。ただの青姦している恋人同士にしか見えない。

 事が終わると二人は服装を整えた。トオルは気恥ずかしそうにブサイクな顔を俯けながら、チラチラと近田を窺い見ている。甘えが表情が憎たらしくて拳を叩きこみたくなるが、近田はニコリと笑い返している。

「今日は素直でいい子だったね。可愛かったよ」
「お、俺なんか、別にかわいくねえし」

 唇を尖らせて否定しているが満更でもない感じが殺したくなる。

「だからもう、このへんで許してあげようかなって思うんだ」
「……え?」
「トオルを解放してあげる。もう酷いことしないし、呼び出したりもしない」
「えっ? ……えっ?」

 焦った様子でトオルが馬鹿みたいに「えっ」を繰り返す。

「向居と水上にも言っておく。あっ、ビデオも全部消しておくから安心していいよ。あれで脅したりしないから」
「えっ、え、あ……あ、う、うん…………えっ?」

 まさに豆鉄砲を食らったハトのようだ。近田の言葉を処理しきれずに、パニクッている。

「今までご苦労さま。1万3千円分、きっちり返してもらったから」
「これで……終わり、ってこと……か?」
「そうだよ。じゃあね、トオル。バイバイ」

 笑顔のままぽんとトオルの肩を叩くと、身を翻した近田はさっさと公園を出て行った。取り残されたトオルは、茫然と近田の消えた方を見つめていた。



 もうトオルに関わるなと近田に言われた向居は、まだいいじゃないかとゴネたが、「じゃあこれからは向居一人でトオルを呼び出せばいいよ。僕はもう関わらない」と言われると渋々諦めた。自分一人ではトオルに返り討ちにされるとわかっているのだ。

「一人で勝手に決めちゃってごめんね」

 近田は俺に謝ってくれた。

「別に、俺らはお前の復讐に付き合ってただけだし。お前が満足したんならいいよ」
「満足できるかは、今後の結果次第だけどね」

 目を輝かせながら近田は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 それから一ヶ月後の夜、近田から電話がかかってきた。珍しく興奮した声で、『成功したよ!』と言う。

「なにに?」
『トオルだよ!』

 耳が腐るような名前を聞いて、電話をかけてきてくれた喜びも一瞬で消し去った。

『今日でちょうど一ヶ月経つから、電話してみたんだ。焦らすように世間話してたら、トオルのほうから会いたいって言ってきた。だから会ってあげたんだけどさ、あいつ、僕が話しかけると恥ずかしそうに俯くんだよね。僕のことまともに見らんないみたいでさ。僕が、つまんない? 帰る? って言ったら、嫌だ、一緒にいてって、裾握ってくんの』

 楽しそうな近田の声で嫌でもその光景が頭に浮かんでしまう。俺が出来ない媚びの入り混じった目でトオルは近田を見つめたのだろう。それを見た近田が歓喜したのも容易に想像できる。

『どうしたい? って聞いたら、なんて言ったと思う? 小さな声で、エッチして、だってさ。言い方もそうだけど、すっかり女って感じだよね。もう1万3千円は返してもらったよって言ってるのに、チカ頼むからって、目を潤ませて言うんだ。これ完全に成功したって言えるよね? トオルは僕に夢中だよね?』
「そうなんじゃないか」

 弾んだ近田の声とは打って変わって低く沈んだ声が出た。自分の試みが成功したことに喜ぶ近田はそれに気付かない。

「で、あいつとヤッたの?」
『うん。ホテル代はトオルが出した。カツアゲして僕から1万3千円奪ったあのトオルがだよ? 数か月で人ってああも変わるもんなんだね。あっ、水上も誘った方がよかった?』
「いらねえよ。俺、あいつに突っ込むとか、反吐出そうだし」
『反吐出させたくせによく言うよ』

 電話の向こうで近田が呆れたように笑う。そういえばそうだった。

「それ、まだ続けるのか?」
『続けるよ。トオルが僕の言うことを聞かなくなるまでは』
「死ぬまで続いたら?」
『死ぬまで続けるよ』

 近田はあっさり言いきった。俺の心をズタズタにするとも知らずに。

「ほどほどにしとけよ。性病とか怖いし」
『だね。お互いリスクがあるから生でするのは控えるよ』

 一ヶ月前、生でやってたくせに。お互いってことはトオルの心配もしてやってるのか。

『次は二ヶ月放置してみようと思うんだ。その時また水上に報告するよ』

 そんな報告いちいちしていらない。でも聞かずにはおられない。知らないでいたほうが傷つかずに済むとわかっているのに、把握しておきたいという気持ちのほうが強い。俺は嫉妬に支配されている。

『じゃ、また明日学校でね。おやすみ』
「おやすみ」

 きっと今夜から俺は安らかに眠ることなんてできないだろう。




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