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待田くんに春の気配(2/3)

2015.08.31.Mon.
<前話はこちら>

 部屋は散らかっているというのでリビングに通された。本当に親の姿はなかった。もし遠野がいなかったら今頃佐々木と二人きりで、どうしていいかわからず逃げ出したくなっていただろう。

 佐々木はキッチンで俺たちのお茶を用意してくれている。俺はベランダに出た。マンションの最上階とあって景色がいい。ついてきた遠野が「友達とやらはいつ来るんだよ」と小突いてきた。

「俺に言われても知るか。佐々木に聞けよ」
「ほんとにその友達とやらは来んのかね」
「来るだろ。お前のこと好きって言ってるんだから」
「嘘くせえ」
「そんな嘘ついてどうするんだよ」
「いや……まぁいいや。そのうちわかんだろ」

 遠野の機嫌が微妙に悪い。かろうじて笑ってはいるけど、目つきがいつもの柔らかい感じとは違う。いきなりダブルデートみたいなものに連れ出されたのだから怒るのも無理ないかもしれない。

「ごめん」 
「お前に謝ってもらってもね」

 遠野は肩をすくめて部屋に戻って行った。見ると、お茶の用意が終わった佐々木が俺たちを手招きしている。俺も部屋に入った。

「佐々木の友達っていつ来るわけ?」

 ソファに腰をおろして遠野が訊ねた。

「それがね、さっき連絡きて、用事が出来たから来られないんだって」

 遠野の隣に座って佐々木が答えた。テーブルの横で立ったままの俺を、遠野がちらりと見上げてきた。遠野に無駄足を踏ませてしまった。申し訳なくて「帰ろうか」と提案しようと口を開いた時、

「今日は三人でいいじゃない! せっかく集まったんだし楽しくしようよ! 失恋したばっかりだから、人数多いほうが気が楽になるんだよね。ね、いいでしょ、待田」

 佐々木が捲し立てるように言って俺の手を握って来た。しっとりしてて、細くて、男とは違う感触に動転した俺は、勢いにおされて頷いてしまった。遠野にはあとできちんと謝ろう。遠野が居づらくならないように、佐々木がいちゃついてきても相手にしないようにしよう。

 佐々木が「ゲームでもする?」と言い出し、三人でもできるカーレースのゲームをすることになった。子供の頃からあるシリーズもののゲームでつい夢中になった。遠野も楽しそうでほっとする。佐々木がジュースやらお菓子やらを次々出して来るので腹も満たされた。

「なんか、ムキになりすぎて汗かいちゃった。軽くシャワー浴びてくるね」

 ゲームを始めて小一時間が経った頃、佐々木はそう言うと本当にゲームをやめて浴室へと消えた。いろいろ生々しい想像をして俺はもうゲームどころじゃない。

「確かにちょっと汗かいたかも」

 別の意味で興奮していることを誤魔化すためにゲームに疲れたふりをするも、童貞の白々しい演技なんて遠野にはバレバレだったようで、「お前には刺激が強すぎるだろうな」と笑われた。

「俺はお前と違って女の家とか慣れてないんだ」
「あのビッチ、三人でヤル気だ」
「ヤ……まさか!」

 ぎょっとして大きな声が出た。

「俺が渡したゴムはちゃんと持ってるか? いつでも使えるように出しやすいとこに移動させとけよ」
「使わないよ! っていうか三人でとか、いくら佐々木でもそれはないだろ!」
「あいつの股の緩さをお前が知らないだけだよ。ゲームの最中、すげえわざとらしいボディタッチが何度もあっただろ。あれ、誘ってんだよ。最初からそのつもりだったんじゃね? 友達の話とか、嘘臭かったもん」

 確かにボディタッチは多かった。正直、下半身が反応しそうになるくらいに多かった。佐々木はただ楽しんではしゃいでいるだけだと思っていたのに、あれは罠だったのか! しかも最初からそのつもりで遠野を誘ったなんて……!

「さ、ささ、さん、さ、さんっ……まじでっ」
「落ち着けよ、俺はお前と佐々木で3Pなんてちんこ腐っても嫌だから安心しろ」
「俺だって嫌だわ! どーすんだよ! 佐々木はその気なんだろ?!」
「俺はバックレる。先に帰るから、お前は佐々木にゆっくりじっくり手解きしてもらえ」
「えっ、帰んの?!」

 腰をあげかけた遠野の腕を咄嗟に掴んで引き留めた。遠野が帰ったら俺は佐々木と二人きりになってしまう。

「俺も帰る! 俺に佐々木の相手は無理だ! 怖い! だ、だって、俺、童貞だぞ?! 彼女いたことないんだぞ?! どうしていいかわかんねえよ!」
「この前教えてやっただろ。向こうはもうわかりやすいくらい乗り気なんだから、キスして押し倒して乳揉めばいいんだよ」
「そのあとはどうするんだよ! 簡単に言うな! 俺はお前と違うんだ! 途中までしか教えてくれなかったくせに! ちゃんと最後まで教えろよ!!」

 テンパりすぎて俺は遠野を責めるように声を荒げていた。怒鳴られた遠野が驚いた顔して俺を見つめてる。とんでもない責任転嫁だ。自信がないのを遠野のせいにしている。

「お前、自分がなに言ってるかわかってる?」

 薄く目を細めて遠野が囁くように言う。怒らせた! 無理もない。騙されて連れてこられた上、逆切れされたんじゃ俺だってキレる。

「ご、ごめん、俺……やっぱり俺も一緒に帰――ッ」

 言い終わる前に俺の口は遠野の唇で塞がれていた。いきなりのことで固まって至近距離にある遠野の目を見返した。怒ったような遠野の目も、まっすぐ俺を見つめ返して来る。肩を掴まれ押し倒された。軽く押されただけだったのに、俺は簡単に床の上に寝転がっていた。

 床に手をついた遠野が俺の顔を覗きこんでくる。

「ほんとに最後まで教えて欲しいか?」
「さ、最後……?」

 遠野がいつもと違ってまじな顔をするから、俺は怖くなって目を泳がせた。最後まで教えろって確かに言ったけど。そんなの本気で言ったんじゃ……

「この前の続き。教えて欲しいんだろ? 今から教えてやる」

 そう言うと遠野はまた俺にキスしてきた。今度は舌まで入れて来て中を舐め回しながら、それと同時に股間を揉んできた。

「んあ?! ちょ、まっ」
「時間あんまねえぞ」

 遠野の目がすばやく何かを窺うように動いたのを見て、浴室の佐々木のことを思い出した。まだシャワーの音は聞こえるが、いつ出て来るかわからない。

「じゃ、ちょ、やめ……っ」
「今更遅い」

 ズボンのチャックを下ろされ、中から半立ちのものを引っ張り出された。相手は遠野なのに、キスされただけでもうこれだ! 恥ずかしくて顔から火が出そうになる。

 片手で俺のものを扱きながら、遠野はもう片方の手で前をくつろげ、自分のものも取り出した。ついこの前見たばかりの、勃起した遠野のちんこだ。

 遠野は腰を近づけて、亀頭同士を擦り合わせた。手とは違う感触に体がゾクゾク震える。なんだよ、これ……!!

「うっ……」
「これ、兜合わせっていうの」

 ズリズリと大きく動かしながら楽しそうに遠野が言う。裏筋にぬるっとした感触。遠野の先走りだ。そして俺の亀頭もすでにヌルヌルになっていた。

「ふ…っ…ん、あ、あぁ……!!」
「結構いいだろ」
「ひぁ……っ、い、う、んっ……」

 今度は二本をまとめて握って扱かれた。手と遠野のちんこ、両方で擦られてるようで、なんかもうたまんない感じになる。腹がビクビク脈打って、呼吸も乱れて、変な声が出る。

「あっ、あ、そんなにコスるな……!」
「こうやって感じさせて、相手の気持ちが昂ぶってきたら、次のステップな」

 いきなり尻の後ろに手を突っ込まれ、指先で穴を探り当てられた。次のステップって……もしかして突っ込むとこまでやるつもりなのか? 本気?! 俺が突っ込まれる方?!

「なんで!? どこ触ってんだよ!」
「最後まで教えろって言ったの、お前だろ。ここが嫌なら口に突っ込んでやろうか?」
「どっちも嫌だ……って、遠野! おま、指入れんなぁ!!」

 ぐりぐり回しながら遠野の指が奥へと入り込んでくる。本来出す器官だ。半端ない異物感に粟立つ俺を無視して、遠野は指をまわしながら出したり引いたりを続ける。

「遠野っ、お前……おま……う、あっ」

 指の関節を曲げられて中が広げられる。上向きの指でぐっと押されたところが何かのツボなのか、根本の奥のほうがジンと熱くなった。そこを何度も擦られていると射精感が高まって、気持ちいいんだか悪いんだかわけがわからなくなる。

「も…おっ……やめ……ぁっ……あッ……!」
「腰抜けそうになるだろ? ここ、前立腺っつって、男のGスポットみたいなもん」

 なんか聞いたことある名前! だけど、それってだいたい病気かホモネタのときに耳にするんだが。あ、いま俺たちがやってる行為ってホモセックスになるのか! 俺、遠野とセックスしてるのか?!

「う、あぁ……あっ、やめ、遠野っ……あぁ……ん」
「気持ちいい?」

 足の間、俺の息子越しに遠野のニヤついた顔が見えた。なぜにこいつはこんなに楽しそうなんだ!

「お前、なんでこんな……詳し……ンだよ……!」
「男の体も女の体と大差ねえよ。突っ込む穴があって、擦ればお互い気持ちよくなる。現にお前、もうイキそうだろ」

 前立腺をグリグリされながらちんこもゴシゴシ扱かれて強制射精待ったなしといった感じだった。普段一人でやるより正直何倍も気持ちがいい。この快感の中、射精出来たらどんなに……と期待していたら、突然遠野の手が離れて行った。

「……え?」
「ほんとはもっと解した方がいいんだけど、時間もないから短縮バージョン。朝お前にあげたゴム、使うぞ」

 いつの間にか遠野の手にはコンドームが。前回のブラを外す手際といい、こいつにはスリの才能があるようだ。

「お前のことだから付け方もろくに知らないだろ」

 ピリリと袋を破いて中からゴムを取り出すと、遠野は俺の先端にそれを押さえつけ、擦るようにクルクルと巻き下ろしていった。器用だな、と感心する無駄のない動き。逆に言うとどんだけつけ慣れてるんだよ。




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待田くんに春の気配(1/3)

2015.08.30.Sun.
<前話「待田くんに春はこない」はこちら>

 冗談だか本気だかわからない感じで「付き合ってよ」と佐々木に言われたわけだけども、それと同じことを遠野にも言っていたことがわかったので俺の心は九分九厘断る方向で決まっていたのだが。

 月曜の朝、教室に入ると佐々木が駆け寄ってきて「今日のお昼、一緒に食べよ?」と耳打ちしてきてつい「お、おう」と承諾してしまった。弱すぎるぞ俺。既成事実とやらで固められて付き合うことになってしまいそうじゃないか。

 佐々木の見た目は悪くない。ただ遠野曰く、男を切らしたことがないのが自慢のビッチらしいし……。そんなに経験豊富なら、すごいテクとか持っていそうだな。

 ピンクな妄想に取りつかれていたら「what’s up!」と強い力で背中を叩かれて体がよろけた。見ると遠野だ。欧米か。

「いてえだろ、この野郎」
「鼻の下伸ばしてなに考えてたんだ、この野郎」
「べっ、別になにも!」

 友達同士で喋っている佐々木のほうをチラっと見てにやりと遠野が笑う。

「付き合うことにしたんだ?」
「付き合わないよ! ただちょっと……昼飯を一緒に……」
「流されやすい奴だなぁ。こっちまで食われないように気を付けろよ」

 ぎゅっと俺の股間を鷲掴んだあと、遠野は自分の席へと向かった。掴まれた感触にちょっと腰が引け気味の俺。ブラのホックを外す練習した週末が嫌でも思い出されてしまう。ただの友達の遠野と、キスしたり、扱きあったりしたんだよな。あいつの唇、柔らかかったなぁ……。

 またピンク色の妄想が始まりそうになり、慌てて追い払った。遠野で妄想とか。いくら今まで彼女がいなかったからって。ファーストキスが遠野だからって。ありえない。ありえないぞ。



 昼になると佐々木は当然のように「一緒に食堂行こ」と誘ってきた。これってもう付き合ってることになるんだろうかと思いつつ、「お、おう」と周りを気にしつつ教室を出る。

 ビッチな佐々木の次の男は待田だという目で見られているのだろうか。それちょっと恥ずかしい。いかにもヤルために付き合うみたいじゃないか。いや、そうなのか。いや、待てよ、俺って佐々木のこと、好きなんだっけ?

 うどんとカレーのセットを頼み、佐々木と並んでテーブルにつく。佐々木ビッチという遠野の情報のせいで、AV女優の隣にいるような恥ずかしさと居心地の悪さを感じる。そんなこと知ったら佐々木は怒り狂いそうだけど。

「一口頂戴」

 佐々木は俺のカレーに手を伸ばしてきた。食べかけのカレーなのに、気にもせず一口食べて「学校のカレーって家のカレーより美味しく感じない?」とか言ってる。

 あれか。これは回し飲みの延長みたいなものか。男の食べかけのカレーでも、いまは平気でシェアできる時代なのか。俺は凄く意識してしまうんだけど。というかきっと、男が同じことしたら女から非難轟々だと思うけど。女ずるいぞ。

「待田っていままで付き合ったの何人?」

 自分のオムライスをつつきながら佐々木が横目に見てくる。「付き合ったことある?」じゃなくて「何人?」だって?!

 佐々木との常識の違いに背中がゾクゾクする。嘘ついたほうがいいのか。見栄はって適当な人数言っといた方が馬鹿にされないのは確かだが、すぐにボロが出そうだ。

 迷いに迷ったすえ「何人だと思う?」と質問に質問で返すと言うタブーを犯した。佐々木は一瞬面倒くさそうに眉を動かしたが「二人くらい?」と笑顔を持ち直した。

「まぁ、そんな……多いような少ないような……」
「私の経験人数知りたい?」
「え、いやぁどうかな」
「たぶんだけど、遠野よりは少ないよ」

 急に遠野の名前が出て来る。遠野もそれなりに多いはずだ。遊ぼうと誘ってもデートだと断られたことがしばしば。あまりプライベートを話したがらないから詳しくは知らないけど、たまに話を聞けば、たいてい前回とは違う子と付き合っているし。学校のなかじゃ常に数人の女の子をはべらせているから誰が本命かわからないし。本命じゃない子も、何人がいるみたいだし。

 あの遠野と張り合える経験人数なのだろうか。

「凄いな」

 素直な感想がぽろりと口から零れ出た。佐々木は気を悪くした様子もなく、むしろ笑みを濃くして「学校終わったら、うち来ない?」とすり寄って来た。

「うちって、佐々木の? 家?!」
「そうだよ。うちの親、共働きでいつも遅いから」

 佐々木は俺の太ももに手を乗せて来た。触れ合っているその場所が、灼熱の棒を押し付けられたみたいに熱い。俺、食われちゃうのか!?



「完全に食う気だな」

 昼休みのやり取りを話すと遠野は断言した。

「どどどどうしよう」
「ゴム持ってるか? あの糞ビッチのことだから性病には気を付けろよ」
「お前、最低……性病持ってるの?」
「知るか」
「遠野でも、佐々木とはヤッたことないのか?」
「残飯食うほど飢えてねえの」
「お前、最t……じゃあ俺はなんなんだよ」
「珍味だと思って行って来い。シュールシュトレミング? だっけ? あれだよ、あれ」

 世界一臭い食べ物か。佐々木がこの場にいたらぶっ殺されそうだ。

「お前も佐々木にビッチ扱いされてたけどな」
「俺はあいつの足元にも及ばねえよ」
「実際、何人なんだ?」
「なにが?」
「経験した人数」
「遊びとか、一回限りも入れて?」

 一回限りとかあるのかよ。もう俺とは別世界の話だ。聞いてて頭がくらっとする。

「やっぱいい」

 同じ男として自信なくしそうだ。

「で、真面目な話、コンドーム持ってるのか?」

 乾く暇もなさそうな遠野と違って、童貞の俺がそんなもの常備しているわけがないだろう。黙って首を振ると「俺に任せとけ」と遠野はどこかへ姿を消した。

 休み時間が終わる頃に戻ってきて、俺の胸ポケットへ何かを滑り込ませる。

「悪い、一個しか用意できなかった」
「コン……ドーム?」

 遠野は笑って俺の肩を叩くと自分の席へ戻って行った。俺は自分の胸ポケットへ手を当てた。カサリと小さな音を立てて確かにそこにある。遠野はこれをどこから調達してきたんだ? というか俺は今日、これを使って本当に童貞を捨ててしまうのか?!



 放課後になって佐々木が俺のところへやってきた。「行こ?」とガッチガチに固まっている俺の腕を掴んで立たせた。しかしそのあと佐々木が動こうとしないので不思議に思って見ると、佐々木は俺じゃなくクラスメートと談笑中の遠野を見ていた。

「ねえ、遠野も誘わない?」
「えっ、なんで」
「待田って遠野と仲良いから」

 確かに仲はいいけど、いまから佐々木の家に行ってヤルんじゃないの? 遠野も一緒に誘うってことはヤルつもりじゃないってことか? それとも本命は遠野ってことか?

「別に二人でもいいんだけど。実は友達に遠野のこと好きって子がいてね、その子も誘ってるんだよね」
「あ、そうなの?」

 じゃあやっぱり今日はするつもりじゃないのか。安心するようながっかりするような。いや、これでいいんだ。付き合ってるかもわからない佐々木とそんなことするなんておかしいし、いきなり部屋に二人きりになるより、気心の知れた遠野が一緒にいてくれたほうが心強い。四人もいれば気まずい沈黙もできなくて楽しい時間を過ごせそうだし。

「だったら遠野も誘ってくるよ」

 俺は遠野へ近寄り声をかけた。話を聞いた遠野が顔をしかめる。

「なんで俺が」
「遠野が来なかったら佐々木の友達かわいそうだろ」

 俺の肩越しに佐々木を睨むように見て、遠野は舌打ちしたあと「仕方ないな」と承諾してくれた。



おれ、被害者

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亀の恩返し(2/2)

2015.08.11.Tue.
<前話はこちら>

 たどたどしいのは最初のキスだけで、その後の亀山くんは積極的だった。俺の服を脱がせると体中にキスの雨を降らしていった。

「受け入れてもらえるなんて思ってもいませんでした」

 感動したように言いながら俺の股間のものを手で扱く。もう焼肉どころではない。夢なんだからと開放的になった俺は自ら箍を外して、どうすれば気持ちいいかを亀山くんに伝え「して欲しい」とねだった。亀山くんは要求通りにしてくれた。

「あ、ああっ、気持ちいいよ、亀山くん……っ」
「僕もかつてないほど昂ぶっています」

 見ると亀山くんはびっくりするほど立派なものを持っていた。やっぱり亀だからだろうか。頭に浮かんだオヤジ臭い言葉は飲み込んで、かわりに「入れて欲しい」と尻を開いた。

「いきなり入れたら吾妻さんを傷つけてしまいます」
「待ってて」

 箪笥の引き出しからローションを取り出して亀山くんに渡した。亀山くんはムッと眉間にしわを作った。

「どうしてこんなものを持っているんですか? 恋人はいないはずじゃ」
「いないよ。それは……オナホを使うときに……」
「オナホとはなんですか?」

 真顔で聞かれて恥ずかしくなってしまう。亀だから人間のアダルトグッズなんか知らないのだろう。

「一人でやる時に使う道具のことで……」
「本当に恋人はいないんですか?」
「いないよ」
「良かった。嫉妬してすみませんでした」

 嫉妬されたと言われて舞い上がってしまう。こんなに可愛い子が、亀だなんて。亀に戻らず、このまま人間の姿で俺のそばにいて欲しい。

「ではまず、指から入れますね」

 亀山くんは手でローションを濡らし、俺の尻穴に指を入れて来た。他人にそこを弄られるなんて何年振りだろう。

「痛くはないですか?」
「気持ちいいよ」
「じゃあ動かしますね」

 ローションのおかげでスムーズに指が動く。内側から擦られる感覚が久し振りで最初は異物感が勝る。それも時間をかけて解されるうちに薄れて消えていった。

 指が2本に増やされ、グリグリ回しながら出し入れされる。関節を曲げられ広げられていく。

「うぁ……あぁ……ん……も……きて、亀山くんっ……」

 わかりました、と生真面目に返事をして亀山くんは指を抜いた。大きなペニスにローションを馴染ませギュッギュッと扱いてさらに育たせる。俺の咽喉がごくりと鳴った。

 大きな亀頭がギュムと押し込まれた。

「ふあっ、あっ……っ!」
「きついですか?」
「すごいね、亀山くんのちんぽ」
「僕の家系は代々巨根らしいです。吾妻さんに負担をかけてすみません」

 亀にも家系なんてあるのか。

「負担なんかじゃないよ。むしろ……興奮してる……早く、それで中を擦って欲しい」

 亀山くんは眼鏡を外して横に置いた。俺の大好物なアイテムがなくなっても、亀山くんは俺好みのもさいイケメンだった。夢はいろいろ好都合に出来ている。

「明日、腰がつらいかもしれませんよ」

 俺の腰を抱えなおして亀山くんが言う。目が覚めてもこの感覚を覚えていられるなら本望だ。

「早くきて」

 亀山くんの尻をつかんで引き寄せた。ずぶぶと深く挿入される。ピリピリとした痛みはあるが、亀山くんのペニスで内部を押し広げられていくのは何とも言えない幸福感があった。

「全部入りました」
「すごい…っ……入ってるだけで……感じるっ……!!」

 思いのほか広げられた内部が元に戻ろうときゅうきゅうと亀山くんを締め付けている。動いていないのに全体が感じてしまい、軽い絶頂が津波のように押し寄せる。

「……あ! 待っ……て……、まだ……!」

 ズルリと亀山くんが動いた。その一擦りで目の前が真っ白になって俺は射精していた。

「吾妻さん、もうイッたんですか?」

 亀山くんが俺の出した精液を確かめるように指に絡める。

「イッ……た……気持ち良すぎて……っ!!」
「早漏なところも可愛いです」

 俺はこんなに早漏じゃないと反論しようとしたら口を塞がれ、舌を差し込まれた。クチュクチュと音が立つほど中を舐めまわされる。俺の精液にまみれた手が、ペニスをつかんで扱き始める。

「はぁ……あ……あ、ん……っ……んん……」

 亀山くんはキスしながら、ペニスを扱きながら、ゆっくり腰も動かしだした。刺激が多すぎて脳みそが蕩けてしまいそうだ。

「吾妻さんに出会えてよかったです」
「……ん、あ、俺も…っ…君に、会えてよかっ……あぁっ、あ、あっ!」

 一番敏感な前立腺をごりっと擦られ声が飛び跳ねた。見つけたと言わんばかりに亀山くんはそこを重点的に擦りあげる。

「んあぁ! あっ、あん! だ……駄目……そんなに、しないで……っ!!」
「中はもうトロトロです」
「ああぁんっ、あっ、あ、ああっ!!」

 律動が繰り返される。中でローションと体液が掻きまわされてグチュグチュと音がする。このまま中に出して欲しい。亀山くんが亀だろうがなんだっていい。亀山くんのものが欲しい。

「出してっ……亀山くん! 俺の中でイッて!! 俺も…もう……イクから……あ、あ、あ……や…ぁはあぁぁんっ!!」

 激しいピストン運動にがくがく揺さぶられながら、俺は亀山くんより早く、二度目の射精をしていた。出している最中も亀山くんは動き続け、そして俺の願い通り、最後は中に出してくれたのだった。



 目が覚めるのが怖いな、と俺は目を開けられずにいた。外は朝の気配がある。朝になってしまった。夢の終わる時間がきてしまった。

 俺の望む恩返しが終わったのだ。亀山くんは姿を消してしまっているだろう。それを確かるのが怖い。

 布団のなかでグズグズしていたら、隣で誰かがもぞりと動いた。目を開けると亀山くんが寝惚け眼で布団から手を出して何か探している。眼鏡を見つけてかけると、俺を見た。起きていると気付くと「おはようございます」とにこりと笑う。

「まだいたんだ」
「すみません、すぐに帰ります」

 体を起こそうとする亀山くんに抱き付いた。

「まだ行かないで」
「迷惑では」
「いて欲しい」
「でも……仕事の時間が……僕も今日は朝から授業なんです」
「授業?」
「はい、大学の」
「亀なのに……?」
「それは名前だけです」

 亀山くんは苦笑した。

「亀でしょ? 人間なの?」
「吾妻さんの目には僕が本物の亀に見えているんですか?」

 ふるふると首を振る。

「だって、恩返しに来たって言ったじゃないか」
「それは僕の亀を助けていただいたから……本当に僕を亀だと思ってたんですか?」

 信じられない、という顔で言ったあと、亀山くんは事の真相を話してくれた。

 先日俺が助けた亀は亀山くんが実家で飼っている亀で、甲ちゃんという名前らしい。お母さんが日光浴をさせようと庭に放していたら、来客があって少し目を離したすきに家から出てしまったのだそうだ。

 そして偶然俺の前に甲ちゃんは現れ、探し回っていた亀山くんは、俺が甲ちゃんを河川敷へ連れて行く姿を見たのだという。その時はとにかく甲ちゃんの無事を確認することで頭がいっぱいで、立ち去る俺へのお礼など忘れて甲ちゃんのもとへ飛んでいったらしい。

 冷静になってから思い出しても時すでに遅く、亀山くんはお礼を言うために、あれから毎日、あの近くで俺を探していたという。

 そして俺を見つけたのだが、なぜか緊張して声をかけられない。タイミングを計りながら俺のあとをついて歩いていたら自宅まで突き止めてしまった。直接自宅へ行ったら不審がられてしまう。ではいつなら自然で気持ち悪がられないだろうかと考えていたら、どのタイミングでも不自然なような気がして八方塞がりの気分になってしまった。そして気が付くと、マンションの入居者募集の看板にある連絡先に電話していたというのだ。

「お礼を言うためだけに、わざわざ引っ越してきたのか?」
「昨日も言いましたが、お礼はただの口実だったような気がします。僕は一目見たときから、貴方のことが気になって頭から離れず、だから余計に意識してしまって、声をかけられなかったんです。甲ちゃんを助けて頂いたお礼よりも、吾妻さんと仲良くなることのほうが、いつからか重要になっていました。ストーカーのような真似事をしてすみません」
「いや、別に、いいんだけど」

 好みでもない女の人に同じことされたらドン引いてしまうだろうけど、モロ好みの亀山くんなら許してしまう。むしろ俺なんかにそこまで情熱かけてもらって嬉しいくらいだ。

「僕が亀じゃなくて人間でも好きでいてくれますか?」

 手を握って真摯に見つめられた。

「もちろん」

 俺もその手を強く握り返した。亀山くんが嬉しそうに笑う。これ以上ない恩返しをしてもらった。



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亀の恩返し(1/2)

2015.08.11.Tue.
 仕事からの帰りのことだ。道の真ん中で亀が歩いていた。おもちゃなんかじゃない。本物の亀だ。結構でかい。20センチは越えている。近づくと亀は方向をかえた。

 前方から車が走ってくるのが見えた。このままだと亀は轢かれてしまう。しかたなく両手で掴みあげた。思っていたより重たい。

 亀を持ったまま少し先の河川敷まで行きそこで放した。草の根をわけてズンズン行く亀は一度俺を振り返ると、まるでお礼でもするみたいに頭をさげた――ように見える仕草のあと、亀は雑草の中へ消えた。

 これで轢き殺されることはないだろう。

「恩返し、頼むぞ」

 浦島太郎の気分で呟いて俺も家に帰ることにした。



 亀を助けてやったことなんか忘れかけていた数日後、部屋でテレビを見ていたらチャイムが鳴った。モニターを見ると俯き加減の男が立っている。知らない奴だ。なにかの勧誘だったら面倒だなと思いつつ扉を開けた。

「夜分にすみません。隣に越してきました亀山といいます」

 のしのかかった箱を俺に向かって差出しながら、20歳前後に見える男は深々と頭を下げた。

「わざわざすいません」

 単身向けのマンションなのに挨拶に来るなんていまどき律儀な青年だ。しかも、近くで見ると俺好みの男だ。緑のTシャツを着て、手入れを怠ったボサボサ頭と、黒縁眼鏡。俺はこういうもさい男が大好きなのだ。

「あ、俺は吾妻です」
「これからよろしくお願いします、吾妻さん」

 亀山くんが右手を出してきた。それをおずおず握り返す。だって握手なんて滅多にしたことないから。亀山くんにぎゅっと強く握られて、おじさんの心はキュンとなった。



 翌日、亀山くんが夕飯のお裾分けだと言っておかずを持って来てくれた。ちょうど夕食前だったのでありがたく頂戴した。

 その数日後、人にたくさんもらったからと梨を持ってきた。初物だ。しかも好物だ。それもありがたく頂戴した。

 そのまた数日後、くじ引きで当たったが下戸なのでもらって下さいと酒を持ってきた。幻の酒と言われている銘酒だ。一度は遠慮したが是非にと言うのでやっぱりありがたく頂戴した。

 そのまた数日後、実家からお肉が送られてきたので一緒に焼肉しませんかと誘われた。さすがの俺もここまで貢がれているとなにか裏があるのではと疑い出した。

 あとになって法外な代金を請求されるのだろうか。それともなんだ、赤毛連盟のように留守にさせた間に悪事を働くつもりか。三階の真ん中に位置する俺の部屋からどこへ行こうと言うんだ。それはさすがに現実味がなさすぎる。

 しかし自分の家をあけるのは怖かったので「俺の部屋でやりませんか」と誘ってみたら「いいんですか?」とむしろ乗り気の態度で承諾された。

 俺が部屋を片付けている間に、亀山くんはホットプレートと具材の全てを運び入れた。実家から送られてきたという肉は化粧箱に入った見るからに上等そうなものだ。こんなものをただの隣人と分けようと考えるだろうか。また不安になってきた。

 亀山くんが肉と野菜をプレートに並べ始めた。下戸らしいので亀山くんにはお茶を用意し、自分はこの前もらった日本酒を卓に置いた。再度礼を言ってから乾杯をした。

 肉はとろけるような食感で、いやらしくて確かめにくいがA5ランクだろうと思われた。野菜も味が濃く、そこらのスーパーで安売りされているものとは思えなかった。

 食べれば食べるほど、亀山くんがなぜここまで俺にしてくれるのかわからなくなってしまう。

 ただの隣人というだけの俺になぜ。確かに最近は世間話なんかもするようにはなったけれど。

 わけのわからない不安から酒がすすんだ。自分でも酔っぱらっていると自覚するほどに飲んだ頃、亀山くんが初めて会ったときと同じ服装なことに気付いた。緑のTシャツ。あの日は気付かなかったが、左胸のところに小さな亀の絵がプリントされていた。思わず笑ってしまった。

「どうしました?」

 亀山くんが箸をとめて、いきなり笑い出した俺を見る。

「いや、亀山くんが、亀のTシャツを着てると思って」
「あぁ。僕は亀ですから」

 とプリントされた亀を触る。ふと、先日、亀を助けた記憶が甦った。

「実は少し前に亀を助けたことがあるんだ。恩返ししてくれって放したんだけど、もしかして亀山くんがその亀だったりして。恩返ししに来てくれたの?」

 亀山くんは正座して居住まいを正すと、床に手をついて頭をさげてきた。

「吾妻さんのおっしゃる通りです。恩返しに参りました」

 俺の冗談に乗ってくれたのだと思った。

「わぁ、ほんと? 竜宮城に連れてってくれるの?」
「竜宮城は無理ですが、吾妻さんになにかお礼をしたいと考えています」
「もう充分もらったけど」
「いえ、不十分です。隣に来てからどんなお礼がいいか考えていましたが、吾妻さんはなんでも喜んで下さるので、逆に何が良いかわからなくなってしまいました」
「ちょっと、亀山くん、冗談だって」
「なにが冗談なのでしょうか?」

 亀山くんは首を傾げた。それはもう真剣な顔で。

「冗談……じゃ、ないの?」
「僕は冗談が苦手です」

 ほんとに短い付き合いだが、亀山くんが冗談を言わない真面目な青年であることはなんとなくわかった。俺が自虐ネタを言ったときも、いちいち否定したり励ましてくれたりするようないい子なのだ。そんな亀山くんが俺の冗談に乗るわけがない。

「ほんとに、あの時の亀なの?」
「間違いありません。安全な河川敷に放してくれました。あの時は本当にありがとうございました。おかげで無傷ですみました」
「……嘘……え……」
「嘘ではありません。あの日から貴方の事が忘れられませんでした。恩返しはただの口実なのかもしれません。僕は貴方のことが好きになってしまいました」

 さらに驚愕の事実を告げられ、俺はもう、なにも考えられなくなってしまった。これは夢だ。夢に違いない。現実に亀が恩返しにくるなんてありえない。20歳前後の若い子が、30代半ばのおじさんを好きになるなんて。これはもう絶対に夢だ。

 夢なら何を言っても罪にはならないだろう。俺は開き直って亀山くんに言った。

「俺も、初めて見た時から君のことが好きだった」




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Aからのメール(2/2)

2015.08.07.Fri.
<前話はこちら>

 昼休みになるまでほとんど上の空だった。Aが同じ職場にいるのは間違いない。もしかしたら大家かもしれないし、違う誰かかもしれない。

 それを探るために仕事をしながらずっと同僚の様子を観察していた。誰も彼もが怪しく見える。結局誰かわからないまま昼休みになり、俺は言われた通りトイレの個室で待つことにした。

 それらしい奴はなかなか来ない。みんな用を足すとさっさとトイレを出て行ってしまう。十分経って自分からAに『トイレで待っています』とメールを送ってみた。

 すぐに『そこでオナニーしろ』と返って来た。騙されているのかもしれないが、メールの内容に興奮して俺はベルトを緩めた。

 便座の蓋の上に座って昨夜のようにちんぽを握る。怯えているくせにもう先走りが出ていた。いつも以上に感度が増している気がする。ネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外した。中に手を入れ、乳首も弄った。

 誰かがトイレにやってきた。Aだろうか。気配に意識を集中させながら手を動かし続ける。外の人物はゆっくりした足取りで個室の前を歩いた。一番奥、俺のいる個室の前まできて立ち止まる。

「はぁっ……はぁ……はぁ……っ」

 潰れそうなほど心臓がどきどき高鳴っていた。呼吸は自然と乱れ、膝はブルブルと震えた。

 外にAがいる。いつもいやらしい命令をする俺のご主人様が。ちんぽを扱く手つきが早くなる。もう出そうだ。

 目を閉じ、歯を食いしばった。頭のなかが真っ白になっていく。達する寸前、立ち上がって蓋をあけ、便器の中へ射精した。出し切り、壁に手をついて呼吸を整えた。外の人物は物音一つ立てない。気配がない。水を流した後そっと顔を出したら誰もいなくなっていた。

 追いかければ見つけられるかもしれないと思い、手を洗うと急いでトイレを出た。すると先の角から大家が姿を現した。俺を見て軽く口の端を持ち上げる。やっぱり大家が?

「血相変えてどうしたんですか?」

 からかうように大家が言う。

「誰か、と、すれ違ったか?」

 緊張のせいか声が上擦った。

「いいえ? 誰も」

 と首を振る。誰かと対するときにいつも見せる無気力な笑みを滲ませている。見慣れた笑い方なのに、今日は意味があるように見える。

「市井さん、ネクタイ、歪んでますよ」
「えっ」

 大家が一歩踏み出し、俺のネクタイを掴んだ。キュッと首元で締め直すと手を離した。

「どうしたんですか。顔、真っ赤ですけど」
「う……」

 指摘されるとさらに顔が紅潮していくのがわかる。思わず俯いた。すると大家が「ふふっ」と笑い声をあげた。

「もしかしたらなんですけど、市井さんって俺のこと好きじゃないですか?」
「!!」

 反射的に顔をあげてしまった。否定しようとしたのに咄嗟のことで言葉が見つからない。そもそも大家の言う通りなのだ。

「やっぱそうですか」

 大家は笑みを濃くする。

 なぜバレたのだろう。自分がゲイだということはもちろん、大家に好意を持っているなんておくびにも出さずに仕事をしてきたつもりだ。確かに今日はじろじろ大家を見てしまっていたが、普通それだけで同性相手に好かれているとは思わない。バレるはずがない。大家がAでない限り。

 やはり大家がAなのだ。俺の願望なんかじゃない。それ以外考えられない。昨日送ったオフィスの様子で、大家は自分のデスクが使われていると気付き、その理由にも気付いてしまったのだ。

「誰にも言うつもりはないんで、安心していいですよ」
「お、俺は、なにをすれば……?」
「なにって……なにかしてくれるんですか?」

 俺は大家の腕を掴んでトイレへ引き返した。一番奥の個室へ連れ込み、鍵をかける。

「ちょ、市井さん、なにする気ですか?」
「大家の望むことなら、なんでも」

 跪いて大家のベルトに手をかけた。頭上から「まじかよ」という呟きが聞こえる。ズボンと下着をおろし、口を開いて大家のちんぽを迎えに行った。柔らかいそれを口のなかで愛撫する。

「市井さん、まじで俺のこと好きなんですか?」
「あぁ……大好きだ……大家のこれも……」

 少し硬くなってきたものを引っ張るように吸い上げる。唾液を絡めながら頬の粘膜を使って扱くようにしゃぶる。

「うまそうにしゃぶりますね」
「らって……大家のちんぽらし……おいひぃはらっ……」
「ははっ、なに言ってんのかわかんないですよ」
「口にらして……大家のセーシ、ほひい……!」
「後輩のザーメン口に出して欲しいんですか?」

 頷いたら頭を押さえ込まれた。奥までちんぽが挿し込まれる。大家は俺の咽喉の奥でちんぽを扱くように腰を動かした。遠慮のない道具みたいな扱いに興奮する。苦しくて涎を垂れ流しているのに、俺のちんぽは勃起する。

「気持ちいいですよ、市井さんのフェラ……っ」
「はぁ……んっ、んぐぅ……う、ぇ……ッ」

 大家の腰の動きが早くなる。口の中のちんこもパンパンに膨らんで今にも爆発しそうだ。

「出しますよ? 市井さん」

 うんうんと頷きながら強く吸いあげた。ドクンという脈動とともに生温い液体が口のなかに吐きだされる。大家の精子。大家の精液で口の中が汚されている。仕事場の男子トイレで。

「……っ!!」

 自分の手のなかで俺も射精した。



 俺がうがいをしている間に大家はトイレを出ていなくなっていた。もう少し話をしたかったのに残念だ。しかし焦る必要はない。毎日会社で顔を合わせるのだ。なかなか趣味の合うパートナーには巡り合えない。職場が同じだなんて奇跡のような出逢いだ。しかも俺がいいと思っていた大家がAだったなんて。

 顔がニヤけそうになるのを抑えこんで仕事場に戻る。もう昼休みも終わる時間でほとんどが食事から戻ってきていた。今日は昼食抜きになってしまったが構わない。

 大家は例の無気力な笑顔で女子社員と話をしていた。さっきトイレであった出来事なんかもう忘れたような様子だ。さすがは俺の見込んだご主人様だ。

 昼休憩が終わって仕事を再開する。携帯にAからのメールがきた。ああ見えて大家はマメな性格のようだ。

『尻軽の淫乱め。相手は誰でもいいのか?』

 メールの意味がわからず眉をひそめた。またすぐメールがきた。本文なし、画像のみ。画像を開いて息を飲みこんだ。

 手前に大家らしき男の頭と、その下で股間に顔を埋める俺の姿が写っていた。大家の両手は俺の頭を押さえ込んでいるので撮影は出来ない。それに、アングルとドアの上部が一部写りこんでいることから、これがトイレの外、ドアの上から撮影されたのだとわかる。撮られていたなんてまったく気が付かなかった。

 送り主は間違いなくA。ということは、大家はAではないということになる。ではいったい誰が……。

 またメールがきた。

『さっきの画像をばらまかれたくなかったら、今すぐそこでオナニーをしろ』

 顔から血の気が引いた。墓穴を掘ってAにホモだとバレてしまったこと。本物のAを間違えて怒らせてしまったこと。

『許してください。本当に大家がご主人様だと思って間違えてしまったんです。他のことならなんでも言うことをきくので、それだけは勘弁してください』

 メールを送ってしばらく待つと、Aから返信がきた。

『奴隷のくせにご主人様の言うことがきけないのか? 残念だ。画像をみんなに見てもらうことにしよう』

 読み終わるのと同時にパソコンの画面にメール受信の通知がきた。俺だけじゃなく隣にも、そのまた隣のパソコンにも同じ通知がきているようだった。

 俺は震える手でマウスをクリックした。




渇かないバイパスコート

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Aからのメール(1/2)

2015.08.06.Thu.
※挿入なし、なんでもOKな人向け

『夜のオフィスでオナニーするんだ』

 ご主人さまのAからきた今週の課題メール。想像したら俺の中のMっ気が刺激されて興奮した。ネットでご主人様を募ったのは一ヶ月前。何通か送られてきたメールの中から、趣味の合いそうな一人を見つけて、やり取りを始めた。

 これまでも命令するメールは何通かもらって実行してきた。たとえば下着をはかないで会社に行ったり。完全に勃起させた状態で深夜のコンビニに行って買い物したり。

 今回は仕事場でオナニー。AVなんかでよくあるシチュエーションだ。今日は俺がやるのだ。誰もいないオフィスで。ちんぽを出して。扱くのだ。考えただけで勃起して先が濡れそうだ。

 だらだらと仕事をしてわざと残業する。一人、また一人と退社していき、フロアには俺一人になった。

 辺りを見渡してからズボンのチャックを下げる。そっと中に手を入れて緩く扱く。もう熱い。もう固い。
 普段人がたくさんいる仕事場での行為。その背徳感。と同時に感じる解放感。たまらなくて癖になりそうだ。

 Aにオナニーを開始しましたとメールを打つ。しばらくして写メを送れとメールがきた。勃起ちんこの写真を撮りメールに添付して送った。会社だという証明のため、少しだけ周りの景色も写りこませておいた。

 顔も名前も知らない、会ったこともない他人に卑猥な画像を送りつける。そのことも興奮材料になってオナニーは捗った。

 机の下で隠れるようにしていたのをやめ、通路のど真ん中で扱いた。息遣いをわざと荒くした。

 どうせなら、大家のデスクでやってやろうと移動した。大家は2歳年下の後輩で、俺の好きなタイプの男だ。大家に蹂躙される場面を想像しながら右手を動かす。

 ――市井さん、男にケツ掘られるの大好きなホモだったんですか? ちょっと気持ち悪いっすね。俺のちんぽで気持ちよくならないで下さいよ。動くのやめますよ?

「アッ……あぁっ、いや、だ……やめないで……ッ」

 大家のデスクにカウパーを擦りつけながら、尻に突っ込めるものはないかと目で探す。ペン立てに大家がいつも使っているノック式のボールペンを見つけた。こんなもの入れたら傷つけてしまう。かと言って他に入れられそうなものはない。仕方なく突っ込むのは諦めて大家のボールペンを口に咥えた。舌を絡ませながら手も動かし続ける。

 ――そんなもの舐めて美味しいですか? ほんとは俺のちんぽしゃぶりたいんじゃないんですか?

「……舐めたい……大家のちんぽ、しゃぶって精液…飲みたい……っ」

 ――ド変態じゃないですか。じゃあ市井さんのケツマンに中出し種付けしたら、俺のちんぽ舐めさせてあげますよ。好きなだけしゃぶっていいですよ?

「嬉しぃ……っ……俺、に……中出し、してっ……いっ…ぱい……大家の欲しい……精液、大好き……!」

 我慢できなくなって自分の指をうしろへ持って行った。中指を出入りさせながらギンギンにまで膨らんだちんぽを扱く。

 また携帯が鳴ってメールが届いた。先走りでベトベトになった右手でメールを開く。動画を録って送れとあった。スマホを書類ケースに立てかけて、俺は言われた通り動画を撮影した。

「はぁ……あぁん……気持ちい……オナニー気持ちいいっ……あぁ……あんっ」

 大家の椅子に腰かけ、レンズに向かって大股を開いてオナる。イク、イクと言いながら射精した。大家の机の上に俺の吐きだした精液がベットリ。それも撮影してからAへ動画を送った。次はどんな指示がくるだろう。胸を高鳴らせながら後始末をして待っていたが、それきりメールはこなかった。少し物足りない気もしたが、大家のデスクでオナニーしたことに満足してその日は帰宅した。

 

 翌日いつものように出社して仕事をしていた。自然と目が大家を追う。大家はなにも知らずに、俺が昨夜オナニーして精液を出した机で仕事をしている。なにか考えこんボールペンで唇をトントン叩いている。俺が咥えて唾液まみれにしたボールペンだ。股間が勝手に硬くなってくる。

 じっとりと見ていたら大家と目が合ってしまった。急いで目を逸らし、仕事を続けた。昨日、大家に犯される想像をしながらオナッたせいで、前以上にあいつのことが気になるようになってしまった。

 チラチラと大家を盗み見しながら仕事をしていたら、机に置いておいた携帯が振動した。誰かと思えばAからだ。

『仕事中?』

 そうです、と手短に返す。

『昨日、オナニーした場所だろ? 思い出してちんぽ弄ったりしないのか?』
『思い出すけど、仕事中だからできません』
『やってみろよ。昨日みたいに』

 動画が添付されていた。周りを確認してから開くと、大股開きでちんぽを扱く俺が再生される。大家のデスク。飛び出す精液。机を汚す白濁。胸がきゅうと狭まる感覚。下腹部に血液が集まる。俺だって弄りたい。

『ドMの変態なら出来るだろ?』

 今度は画像が添付されていた。自分の送ったものだと思って開いたら心臓が止まりそうになった。画面に映し出されているのは仕事中の俺の姿。いつ撮られたのかわからないが同じフロアの、かなり近い距離から撮られた写メだった。いま着ているものと同じ服装。つまり今日。

 Aが近くにいる!

 咄嗟に周囲を見渡した。みんな仕事をしている。普段通りの態度で。しかしこの中にAがいるのは確かだ。最初から俺だと気付いてメールしてきたのか? 昨日送ったオフィスの様子で俺だと気付かれただけなのか? 騙されているのかもしれないという恐怖がこみあげてきて動悸が早くなる。

 また携帯が振動した。

『俺を探しているのか? 会いたいなら昼休みにトイレの一番奥の個室で待っていろ』

 顔をあげてぐるりと辺りを見た。俺に注視している人間はいない。同僚はみんな自分の仕事をこなしている。ふと大家に目をやった。パソコンに向かっていた大家も、俺の視線に気づいたようにこちらを見た。そして小さく会釈を寄越す。

 まさか。まさか大家が。
 もしご主人様が本当に大家ならそれこそAV並みの設定じゃないか。

 ありえないと否定しつつも、その可能性を期待してしまう自分がいる。大家がAなら。俺は、何をされても喜んでしまうだろう。




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