FC2ブログ



更新履歴・お知らせ

2017/11/20
雨の日の再会1、更新

2017/11/19
ピンクの唇、完結

2017/11/2
赤い爪、完結

2017/10/28
スカートめくり、完結

2017/10/23
続続続・ひとでなし2、完結

2017/10/22
続続続・ひとでなし1、更新

2017/10/21
続続・ひとでなし2、完結

2017/10/20
続続・ひとでなし1、更新

2017/10/19
続・ひとでなし2、完結

2017/10/18
続・ひとでなし1、更新

2017/09/08
ひとでなし2、完結

2017/09/07
ひとでなし1、更新

2017/09/02
ほんとにあったら怖い話2完結

2017/09/01
ほんとにあったら怖い話1更新

2017/07/28
コンビ愛更新、完結

2017/07/06
第二ボタン2更新、完結

2017/07/05
第二ボタン1更新

2017/05/25
ちょろくない2更新、完結

2017/05/24
ちょろくない1更新

2017/05/16
やっぱちょろい2更新、完結

2017/05/15
やっぱちょろい1更新

2017/02/11
メリクリあけおめ2更新、完結

2017/02/10
メリクリあけおめ1更新

2016/11/14
義父の訪問更新、完結

2016/10/27
覗き2更新、完結

2016/10/26
覗き1更新

2016/10/22
終わらない夜2更新、完結

2016/10/21
終わらない夜1更新

2016/10/16
凹の懊悩2更新、完結

2016/10/15
凹の懊悩1更新

2016/09/28
可愛さも憎さも百倍2更新、完結

2016/09/27
可愛さも憎さも百倍1更新

2016/09/22
利害の一致2更新、完結

2016/09/21
利害の一致1更新

2016/09/16
楽しい記憶喪失!3更新、完結

2016/09/15
楽しい記憶喪失!2更新

2016/09/14
楽しい記憶喪失!1更新

2016/09/13
楽しい同棲!2更新、完結

2016/09/12
楽しい同棲!1更新

2016/09/11
Phantom15更新、完結

2016/09/10
Phantom14更新

2016/09/09
Phantom13更新

2016/09/08
Phantom12更新

2016/09/07
Phantom11更新

2016/09/06
Phantom10更新

2016/09/05
Phantom9更新

2016/09/04
Phantom8更新

2016/09/03
Phantom7更新

2016/09/02
Phantom6更新

2016/09/01
Phantom5更新

2016/08/31
Phantom4更新
リンク一件追加

2016/08/30
Phantom3更新

2016/08/29
Phantom2更新

2016/08/28
Phantom1更新

2016/08/04
嘘7更新、完結

2016/08/03
嘘6更新

2016/08/02
嘘5更新

2016/08/01
嘘4更新

2016/07/31
嘘3更新

2016/07/30
嘘2更新

2016/07/29
嘘1更新

2016/07/18
Love Scars3更新、完結

2016/07/17
Love Scars2更新

2016/07/16
Love Scars1更新

2016/07/13
行きつく先は5更新、完結

2016/07/12
行きつく先は4更新

2016/07/11
行きつく先は3更新

2016/07/10
行きつく先は2更新

2016/07/09
行きつく先は1更新

2016/07/04
電話が鳴る7更新、完結

2016/07/03
電話が鳴る6更新

2016/07/02
電話が鳴る5更新

2016/07/01
電話が鳴る4更新

2016/06/30
電話が鳴る3更新

2016/06/29
電話が鳴る2更新

2016/06/28
電話が鳴る1更新

2016/06/16
今日の相手も2更新、完結

2016/06/15
今日の相手も1更新

2016/06/08
今日の相手は2更新、完結

2016/06/07
今日の相手は1更新

2016/05/25
いおや2更新、完結

2016/05/24
いおや1更新

2016/05/14
奇跡2更新、完結

2016/05/13
奇跡1更新

2016/04/28
ターゲット2更新、完結

2016/04/27
ターゲット1更新

2016/03/02
視線の先2更新、完結

2016/03/01
視線の先1更新

2016/02/23
性癖の道連れ2更新、完結

2016/02/22
性癖の道連れ1更新

2016/02/15
DL販売お知らせ

2016/01/20
尾行2更新、完結

2016/01/19
尾行1更新

2015/12/07
遺作2更新、完結

2015/12/06
遺作1更新

2015/12/02
昼夜2更新、完結

2015/12/01
昼夜1更新

2015/11/26
大小2更新、完結

2015/11/25
大小1更新

2015/11/15
彼はセールスマン2更新、完結

2015/11/14
彼はセールスマン1更新

2015/10/22
2度あることは2更新、完結

2015/10/21
2度あることは1更新

2015/09/18
死神さんいらっしゃい2更新、完結

2015/09/17
死神さんいらっしゃい1更新

2015/09/08
Congratulations2更新、完結

2015/09/07
Congratulations1更新

2015/09/01
待田くんに春の気配3更新、完結

2015/08/31
待田くんに春の気配2更新

2015/08/30
待田くんに春の気配1更新

2015/08/11
亀の恩返し2更新、完結

2015/08/11
亀の恩返し1更新

2015/08/07
Aからのメール2更新、完結

2015/08/06
Aからのメール1更新

2015/07/06
5年後2更新、完結

2015/07/05
5年後1更新

2015/07/04
待っててね2更新、完結

2015/07/03
待っててね1更新

2015/05/11
その後3更新、完結

2015/05/10
その後2更新

2015/05/09
リクエスト小説
その後1更新

2015/05/05
待田くんに春はこない2更新、完結

2015/05/04
待田くんに春はこない1更新

2015/04/30
楽しいシーソーゲーム!2
更新、完結

2015/04/29
楽しいシーソーゲーム!1更新

2015/04/21
楽しい親子喧嘩!1
楽しい親子喧嘩!2更新、完結

2015/04/16
楽しい放課後!2更新、完結

2015/04/15
楽しい放課後!1更新

2015/04/06
楽しい合コン!2更新、完結

2015/04/05
楽しい合コン!1更新

2015/04/01
楽しいお見舞い!2更新、完結

2015/03/30
楽しいお見舞い!1更新

2015/03/24
楽しい旧校舎!2更新、完結

2015/03/23
楽しい旧校舎!1更新

2015/03/16
楽しい入院生活!2更新、完結

2015/03/15
楽しい入院生活!1更新

2015/03/05
楽しい遊園地!2更新、完結

2015/03/04
楽しい遊園地!1更新

2015/02/27
楽しいロッカールーム!2更新、完結

2015/02/26
楽しいロッカールーム!1更新

2015/02/16
楽しいOB会!2更新、完結

2015/02/15
楽しいOB会!1更新

2015/02/14
一周年!!
いつもありがとうございます!
君は日向の匂い更新、完結
シンデレラアイドルのSSです

2015/02/13
保健室の先生2更新、完結

2015/02/12
保健室の先生1更新

2015/02/11
teeth2更新、完結

2015/02/10
teeth1更新

2015/02/09
楽しい初カノ!2更新、完結

2015/02/08
楽しい初カノ!1更新

2015/01/31
楽しい勉強会!2更新、完結

2015/01/30
楽しい勉強会!1更新

2015/01/23
楽しいお泊り!2更新、完結

2015/01/22
リクエスト小説
楽しいお泊り!1更新

2015/01/08
明けましておめでとうございます!
本年も宜しくお願い致します!
リクエスト小説
両想い1、2更新、完結

2014/12/12
楽しい合宿!2更新、完結

2014/12/11
楽しい合宿!1更新

2014/12/01
アガルタ2更新、完結

2014/11/30
リクエスト小説
アガルタ1更新

2014/11/23
朝のお楽しみ2更新、完結

2014/11/22
リクエスト小説
朝のお楽しみ1更新

2014/11/14
即位式2更新、完結

2014/11/13
即位式1更新

2014/11/04
裏ドSくん3更新、完結

2014/11/03
裏ドSくん2更新

2014/11/02
裏ドSくん1更新

2014/11/01
ひみつのドSくん2更新、完結

2014/10/31
ひみつのドSくん1更新

2014/10/30
伴侶1、2更新、完結

2014/10/27
支配人3更新、完結

2014/10/26
支配人2更新

2014/10/25
支配人1更新

2014/10/24
隣人3更新、完結

2014/10/23
隣人2更新

2014/10/22
隣人1更新

2014/10/15
元上司2更新、完結

2014/10/14
リクエスト小説
元上司 1更新

2014/10/10
ニコニコドッグⅡ 2更新、完結

2014/10/09
リクエスト小説
ニコニコドッグⅡ 1更新

2014/10/04
茶番2更新、完結

2014/10/03
リクエスト小説
茶番1更新

2014/09/12
「ちょろい 2」更新、完結

2014/09/11
「ちょろい 1」更新

2014/09/08
「新雪の君」更新、完結

2014/09/06
コメントお返事させて頂きました

2014/09/05
「すばらしい日々3」更新、完結

2014/09/04
「すばらしい日々2」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/09/03
リクエスト小説
「すばらしい日々1」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/09/01
「好きと言って4」更新、完結

2014/08/31
「好きと言って3」更新

2014/08/30
「好きと言って2」更新

2014/08/29
リクエスト小説
「好きと言って1」更新

2014/08/24
「純粋に近付いた何か2」更新、完結

2014/08/23
リクエスト小説
「純粋に近付いた何か 1」更新

2014/08/15
コメントお返事させて頂きました

2014/08/14
再会2更新、完結
コメレスさせて頂きました

2014/08/13
リクエスト小説「再会1」更新
「ノビ」の続編です

2014/07/26
コメントお返事させて頂きました

2014/07/25
息子さんを僕にください2更新完結

2014/07/24
リクエスト小説「息子さんを僕にください1」更新
娘さんを僕に下さいとは無関係ですw

2014/07/22
コメントお返事させて頂きました

2014/07/20
久しく為さば須らく2更新、完結
コメントお返事させて頂きました

2014/07/19
リクエスト小説「久しく為さば須らく1」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/07/18
コメントお返事させて頂きました

2014/07/16
コメントお返事させて頂きました

2014/07/15
コメントお返事させて頂きました

2014/07/14
コメントお返事させて頂きました

2014/07/13
リクエスト小説「嫉妬せいでか2」更新、完結
コメお返事させて頂きました

リクエスト小説「嫉妬せいでか1」更新

2014/07/11
拍手お返事させて頂きました
お知らせ一件

2014/07/10
コメント、拍手お返事させて頂きました

2014/07/09
拍手お返事させて頂きました

2014/07/08
コメント、拍手お返事させて頂きました
耽溺 2更新、完結

2014/07/07
拍手お返事させて頂きました
リクエスト小説「耽溺 1」更新

2014/07/06
拍手お返事させて頂きました

2014/07/05
拍手お返事させて頂きました

2014/07/04
コメント、拍手、お返事させて頂きました

2014/07/03
コメント、拍手、お返事させて頂きました
吉原と拓海その後 2更新、完結

2014/07/02
コメント、拍手、お返事させて頂きました
吉原と拓海その後1更新しました

2014/07/01
コメントお返事させて頂きました
シンデレラアイドル2更新、完結

2014/06/30
拍手お返事させて頂きました
シンデレラアイドル1更新しました

2014/06/29
リクエスト募集してます

2014/06/27
拍手お返事させて頂きました

2014/06/24
目は口ほどに 更新、完結

2014/06/17
茶々丸更新、完結
獣姦っぽい

2014/06/11
連鎖 2更新、完結

2014/06/10
連鎖 1更新

2014/06/07
拍手お返事させて頂きました

2014/06/06
拍手お返事させて頂きました

2014/06/05
拍手お返事させて頂きました

2014/06/04
元旦那さん 2更新、完結

2014/06/03
元旦那さん 1更新
旦那さんの続きです

2014/05/29
昨日の記事の続きで拍手お返事させてもらっています

2014/05/28
旦那さん 2更新、完結

2014/05/27
旦那さん 1更新

2014/05/22
夢の時間2更新、完結

2014/05/21
アンケート1位小説「親子」
夢の時間1更新

2014/05/16
この物語はフィクションです更新、完結

2014/05/14
アンケート1位小説「教師と生徒」で先生受け。
信じて下さい更新。完結

2014/05/11
純粋とは程遠いなにか2更新。完結
ダウンロード販売のお知らせ

2014/05/09
純粋とは程遠い何か1更新

2014/05/01
長男としての責務2更新。完結

2014/04/30
長男としての責務1更新

2014/04/27
セフレ更新。完結

2014/04/21
嘘が真になる2更新。完結

2014/04/20
嘘が真になる1更新。
アンケート終了しました
投票してくださった皆さんありがとうございました!

2014/04/15
親切が仇になる2更新。完結

2014/04/14
親切が仇になる1更新

2014/04/11
家庭教師更新。完結

2014/04/09
惚れ薬2更新。完結

2014/04/08
惚れ薬1更新

2014/04/05
ニコニコドッグ更新。完結

2014/04/03
健やかなるときも病めるときも更新。完結
アンケート設置1ヶ月記念更新
回答ありがとうございます!

2014/04/02
お隣さん2更新。完結

2014/04/01
お隣さん1更新

2014/03/28
B3-17 はるか更新。完結

2014/03/27
会話の語尾は常にハートマーク更新。完結

2014/03/24
僕の居場所更新。完結

2014/03/21
兄弟愛(3/3)更新。完結

ストックを全て出し切ってしまいましたので毎日更新は今日で終わりになります。
これからは書き終わり次第更新していきますので、引き続きよろしくお願い致します。

2014/03/20
兄弟愛(2/3)更新。

2014/03/19
兄弟愛(1/3)更新。

2014/03/18
7歳の高校生更新。完結

2014/03/17
7歳の高校生更新

2014/03/16
裏の顔更新。完結
アンケート2位「教師と生徒」
少し違う感じになりました。

2014/03/15
残業も悪くない更新。完結
アンケート結果を反映させてみました。
アンケートに答えてくださった皆さんありがとうございます。引き続きお願い致します

2014/03/14
片思い更新。完結

2014/03/13
クラスの地味男更新。完結

2014/03/12
吉原と拓海更新。完結

2014/03/11
罠更新。完結

2014/03/10
同級生更新。完結

2014/03/09
目覚め更新。完結
FC2小説にて、
閃光戦士フラシュレッド!公開。完結。

2014/03/08
やってられない更新。完結

2014/03/07
地下の城ピュラタ更新。完結

2014/03/06
地下の城ピュラタ更新。

2014/03/05
部室にて更新。完結

2014/03/04
すべからく長生きせよ更新。完結

2014/03/03
秘め事更新。完結
アンケート設置。ご協力お願いします

2014/03/02
映画館にて更新。完結

2014/03/01
大迷惑@一角獣更新。完結

2014/02/28
大迷惑@一角獣更新。

2014/02/27
僕はセールスマン更新。完結

2014/02/26
俺のセールスマン更新。完結

2014/02/25
夏の夜更新。完結

2014/02/24
妄想更新。完結

2014/02/23
先生 その2更新。完結

2014/02/22
洞窟更新。完結

2014/02/21
洞窟更新。

2014/02/20
先生 その1(1-2)更新。
先生 その1(2-2)更新。完結

2014/02/19
娘さんを僕にください更新。完結

2014/02/18
ノビ更新。完結

2014/02/17
ノビ更新。

2014/02/16
1万3千円更新。完結

2014/02/15
1万3千円更新。

2014/02/14
ファンレター更新。完結

2014/02/14
ブログ始動。
「ファンレター」公開。

よろしくお願いします。

最新記事

カテゴリ

ダウンロード販売

DiGiket.comさん

薔薇色の日々
  (「裏の顔」改訂版)

不埒な短編集
 短編3つ

不埒な短編集第二
 短編3つ

月別アーカイブ

おすすめ


楽しいシーソーゲーム!(2/2)

<前話はこちら>

 部室の壁にかかっている時計を見る。後輩たちが戻ってくるまで二十分もない。何かの用事で誰かがここに来る可能性だってある。なのに俺たちは止めることが出来なかった。

 キスしながらお互いの服を脱がせあった。
 西山の手が俺の肌の上をすべり、乳首を指でこね回す。全身が痺れたようになる。

「ん、あっ」
「ここ、触られるの好きだよね」

 ふふっと笑った西山が俺の胸に吸い付く。口のなかでねっとりと蹂躙されて思わず西山の頭を掻き抱いた。

「やぁ……あ、あっ」
「こっちも、もう、こんなだ」

 緩めた前から西山の手が忍び込み直接俺のものを握った。触られる前から完立ちだ。少し扱かれただけでもうイキそうになる。

「ん、や、やめ……出ちゃう、からっ」
「先走りがすごいよ、祐太。口でやってあげようか?」
「や、いやだ……っ」
「どうしてやなの? フェラ好きでしょ?」

 西山は余裕のある目を俺に向ける。なんかもう全部お見通しって感じだ。むかつきから胸がつかえる。だけど、素直になりたいって思うから、俺はそのつかえを取っ払って口を開くのだ。

「お、お前で、イキてえから……や、だ……」

 俺が顔真っ赤にしながら言った言葉に、西山は軽く目を見張って息を吸い込んだ。

「祐太がかわい過ぎて別人みたいだ」
「死ね馬鹿」
「なに言われても全部かわいい」
「早くちんこ入れろ」
「それはちょっと萎える」

 とか言うけど、西山の股間にそびえ立つものは全然萎える気配がない。今日も血管ビキビキだし、凶暴なまでに極太だし、嘘みたいにカリ高だし、西山が2、3回扱いただけでまだムクムクと育っていくし。寝てる子起こすなよ。

「ベンチの上に横になって」

 言われてベンチに寝そべる。

「膝、持ってて」

 言われた通りにしてから、これすっごい恥ずかしい格好だと気付いた。子供におしっこさせる時の体勢だ。それを一人で、自分でやっているのだ。高3にもなって!

「西山、はやく……っ」

 西山の目に俺のあらゆるところが見えている。はやく隠して欲しいのに、西山はカウパーを亀頭に馴染ませながら、薄く息を吐き出した。

「…………祐太を一生、部屋に閉じ込めていられたらいいのに」
「な、なに言ってんだよ」
「さっきは二番目でもいいって言ったけど、やっぱ嫌だよ。祐太を誰にも渡したくない。誰の目にも触れさせたくないって思っちゃったんだ」

 自嘲するように笑い、西山は覆いかぶさってきた。俺の体中に唇を押し付けながら、指を中に入れてくる。中で指を回したり、関節を曲げたりして筋肉を解している。

「ひう、う……んぁ……」
「彼女にもそんな顔見せてるの?」
「彼女……?」

 あぁ、遥のことか、と気付くと同時に思い出したくない記憶が甦って来た。

 ライブのDVDを貸してあげると呼び出されて遥に会いに行った。暇だから映画でもと誘われ、そのあと軽く食事をした。これってデートみたいだなと思ったとき、思わず「俺たちまだ付き合ってないよね?」と遥に確認してしまった。頬を赤く染めた遥に「まだだよ」と言われて、つい「良かった」と本音が漏れた。

 怒って帰った遥から、それ以来、なんの連絡もない。毎日きていたラインもピタリとやんだ。

「付き合ってねえ、し…っ…」
「毎日連絡してるんだろ?」
「もう、してねえよ」
「どうして?」
「俺はモテるタイプじゃないって……お前が…っ…言ったくせに……」
「だって意外にモテるんじゃん」

 意外は余計だろうが。
 クスリと笑った西山が俺の前立腺をゴリゴリと押し込む。腰から力が抜けていく。

「…っ…う、あっ……あ、や…ぁ……っ」
「誰かのものにもなっちゃ駄目だよ」
「なん……ねぇ……よ……!」
「そんなのわからないだろ。すごく不安だ。怖いよ」
「ふぁ……あっ……俺は……お前の、もん、だろ……っ?!」

 目を見開いたと思ったら、西山は顔を伏せて肩を震わせた。

「……西、山……?」
「――――っあぁ……やっばい……イキそうになった」

 と顔をあげて苦笑する。俺はその頬に手を添えた。

「イクなら、お、俺ん中にしろ、よ」
「祐太、デレすぎ……!」

 抱き付いてきた西山は洪水になるほどのキスの雨を降らしながら指を抜いた場所に熱い怒張を宛がった。

「充分に慣らしてないから辛いかも」
「いい……時間っ……中途半端はお前も、嫌、だろ」
「後輩が戻ってきても、俺は最後までやるけどね」

 ふふっと笑って腰を押し進めてくる。こいつならやりかねない。いや、そういう実績を今まで築いてきた男だ、きっとやるだろう。

 興奮の裏で焦りが生じる。早いとここの馬鹿イカせねえと。

 西山の首に手をかけて引き寄せる。自分からキスしたのはこれが初めてだった。驚いた気配を感じながら舌を入れたら倍の力で吸い込まれた。西山の口のなかで絡まり、唾液まみれになる。

「んぅ…んっ……あ、はぁ……あ……っ」
「きつくない?」

 たぶん半分が収まったくらいで、西山が声をかけてきた。

「へい、きっ……ぁ……んっ……だから、はやく……もっと、奥、きて……っ」
「そんなこと言われたら祐太のこと滅茶苦茶にしたくなるよ」

 俺に覆いかぶさってきながら、西山は膝の裏に手を当てるとぐいと頭のほうまで押し上げて来た。俺の尻がほぼ真上を向く。その上から西山が蓋をするように腰を打ちこんできた。俺のなかを異物がゴリッと擦り上げる。

「ん、ぁああ……っ……あっ、あぁっ」
「どう? 奥まで届いた?」
「と……どいた……っ」
「根本まで、祐太のなかに入ってる。わかる?」
「わかるっ……おく、まで……きてる……っ」

 この体勢でキスを求められた。膝が俺の顔の横にまで届く。きつい体勢だ。でも俺は必死に唇を突き出して、西山の舌を吸っていた。

「動いて大丈夫?」
「早く、うごい、て……!」

 西山が体を浮かしたので圧迫感がなくなった。俺のなかにある熱い強直が蠢いているのがわかる。ゆっくりと引いて、ゆっくり押し戻ってくる。

「んあぁっ、あっ、や……やぁ……んっ」
「祐太のなか、すごく熱いよ。気持ちいい?」
「…っ…んっ……いい……、気持ち、い……っ」
「どこらへんが?」

 ゆっくりとじれったいほどの抜き差しを繰り返しながら楽しげに問うてくる。

「はぁ…ンッ……にしやまが……こすってる、とこ……全部……きもちい……!」
「俺のこと好き?」

 口調をかえず、今まで一度も聞いてこなかったことを訊いてきた。目を合わせると顔は笑ってはいるが目は真剣だ。

 また胸がつかえた。のどが詰まった。たった一言を送りだすのがこんなに困難だなんて。

「好き?」

 返事の遅い俺に、西山が少し不安げに首を小さく傾ける。

 俺は口を開いた。息を吸い込んで、今までずっとのどの奥で留まっていた言葉を声にした。

「好きに……決まってんだろ……!」

 そしたらなぜか涙まで零れてきて、西山をぎょっとさせてしまった。

「祐太?!」
「お前……ずっと俺のそばにいろよ!」
「いるよ!」
「離れたら許さねえからな」
「離れないよ!」

 二人とも同時に顔を寄せ合って唇を重ねていた。

 俺のなかをまさぐりながら西山の手が胸を撫でる。腰を動かして奥を押し開く。

「あ…はぁ、んっ……あ、そこっ……やだ……!」
「ここだよね」

 驚異的な厚さのカリが俺の前立腺をゴリゴリと刺激する。かと思いきや、極太の竿で全体を擦り上げられて、絶妙な緩急に射精感が押し寄せてくる。

「んあっ! 西山! あっ、あん! や、だっ……もう、それ……待っ……て……!」
「イキそう?」

 コクコクと頷く。

「前、触ってないのに?」
「…っ…や、あっ、あ……っ、も……で、る……ッ!」

 快感が波紋みたいに全身に広がって、もう止められなかった。なんの刺激も与えられていないのに俺は射精していた。

「イッちゃったね」

 まだタラタラと吐き続ける俺のちんこを西山が握った。最後の一滴を絞り取るみたいに手を動かす。

「やめっ……触んな!」
「ほんとに中に出していいの?」
「いいっつってんだろ……いつも、駄目って言っても出すくせに」
「じゃあ、少し急ぐよ」

 言われて時計を見るともういつ部員が返ってきてもおかしくない時間だった。

「きつくなった」

 呑気に西山は笑う。

「馬鹿っ、早くイケよ!」
「もうデレ終わり? 早いなぁ」

 って言いながら西山は腰を動かした。もうすっかり大きさに馴染んでいる。でも動かれると予想以上の範囲を擦られて改めてそのでかさを実感する。

 摩擦で滲み出た腸液がグチョグチョと音を立てる。イッたばかりなのに、奥を擦られてまた火が広がる。

「はぁ……あ、あぁっ……」
「かわいい、祐太」
「眼科、行け…っ……の、ばかっ……んあぁ、あっ、や……!」
「祐太のなか、あったかい」
「お前も、熱い……!」
「……もうすぐイキそう」
「……なかっ……西山ぁ……!」
「わかってる。全部、祐太にあげる」

 西山の腰の動きが激しくなった。浮き上がりそうになる俺の体を手で押さえながら叩き込んでくる。

 全身で西山を受け入れているような感覚に陥って頭が真っ白に溶けていった。

「あっ! あぁ! きもちい……! 気持ちいい、西山ぁ……!! も……っと、して……!! おく……欲し……ぃっ!」
「いっぱいあげるよ」
「あっ……や、だ、なんでっ……また、あっ、うそ……俺、イッちゃ……っ!!」

 西山が「一緒に」って俺の手を握った。大きな手を握り返して、体をビクビク震わせながら俺はまた射精した。ほとんど同時に体の奥で西山が爆ぜる。

 熱い迸りが俺の最奥で跳ね返った。



 換気のために窓を全開にして、急いで服を着た直後、後輩たちが部室に戻って来た。

 俺たちを見た後輩が「どうしたんですか?」と不思議そうに言うのを「ちょっと」とかわしてそそくさと部室を出る。
 途中で園とすれ違った。すれ違い様、園が挑発的な目を俺に向けてくる。その目をまっすぐ見返した。

「お前にはやらねえぞ」
「今だけですよ」

 相変らず憎たらしいことを言う一年だ。

 校舎に向かって歩いていたらチャイムが鳴った。

「お前先行ってろ。俺、トイレ行くから」
「あ、俺も手伝うよ」

 見ると西山は満面の笑顔。自然とため息が出る。

「お前ほんと、変態な」
「祐太に会って目覚めたんだよ」
「俺のせいかよ」
「そうだよ」
「じゃあ手伝わせてやる」
「うんっ」
「変な気起こすなよ」
「もう起こしてる」

 さわりと尻を撫でられて、驚いた拍子にさっき中出しされたものが漏れ出た気がする。西山を睨み上げると、待ち構えてたみたいに顔がすぐ近くにあって、止める間もなくキスされた。

「ばっ……かっ!」
「誰も見てないよ」

 確かに校舎の外れだから誰もいない。

「だったら、ちゃんとやれよ」

 西山の腕を掴んで、踵をあげた。



やじるし



関連記事
スポンサーサイト
[PR]


2015-04-30(Thu) 20:52| 楽しいシーソーゲーム!| トラックバック(-)| コメント 6

楽しいシーソーゲーム!(1/2)

楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!楽しい入院生活!楽しい旧校舎!楽しいお見舞い!楽しい合コン!楽しい放課後!楽しい親子喧嘩!

※完結!

 5回戦敗退、8強入りも果たせずに俺たちの夏は終わってしまった……。

 高校野球が終わった寂しさを噛みしめる間もなく中間試験が始まり、受験生だという現実を嫌というほど眼前に突き付けられた。

 たまに息抜きで野球部に顔を出し、グラウンドの隅っこでキャッチボールなんかをさせてもらいながら、来年こそは甲子園に行ってくれと練習する後輩を眺めたりした。

「恵護さん、俺のボール受けてくれませんか!」

 西山を見つけた園が隙を見つけては声をかけてくる。

「それは俺じゃなくて捕手の奴に言えよ」
「恵護さんだって捕手じゃないですか!」
「俺は補欠だし、それに引退したんだぞ」
「関係ないっすよ! 大学行っても野球は続けるんでしょう?!」
「どうだろう?」

 となぜか西山は俺の顔を見た。

「勉強もあるし、バイトもしてみたいし、いろいろ忙しくなるから野球はやらないかもしれないな」

 いろいろ、という言葉が湿っている気がしてぞわぞわと尻のあたりがむず痒くなった。西山の視線と言葉だけで、あれこれ思い出して恥ずかしくなってくる。

 俺はグローブで顔を隠して舌打ちした。

 西山の親父さんのお許しをもらってすぐ、西山の家に呼ばれて仲直りエッチのようなものをした。
 親父さんは留守なのかとか、家政婦さんはいないのかとか、どうでもよくなるくらい俺は感じまくって、よがりまくって、枯れるくらい声をあげた。

 西山には何度も好きだと言われた。「愛してる」と赤面ものの台詞も囁かれた。そのたびに俺は胸をつかえさせて、照れ隠しの暴言を吐いた。

 こんなのが続いたら確実にほだされてしまう。いやもう、ほだされてんのか。

 エッチの最中にまた「卒業したら一緒に暮らそうよ」と西山に言われてはっきり断れなかった。別にいいんじゃねと気持ちが傾いていた。

 親父さんっていう第一関門突破したところで、現実にはまだ問題山積みの関係だっていうのに。

 二人でベッドの中にいるときは忘れていることも、外の世界へ一歩踏み出すと否応なしに問題が浮き彫りになる。俺たちが男同士だっていうこと。まだまだ子供だっていうこと。俺の相手は西山で、西山の相手が俺だってこと。

 いつか破綻するの目に見えてるじゃん。そう冷静になったとき、親父さんに言われた言葉を思い出して、こんなの今だけだと素直になれなくなる。

 一方的に浴びせられる西山の愛情に溺れそうだ。

 能天天気に突っ走れる園が羨ましい。

「たまには園の相手してやれよ、俺は先に帰るから」
「えっ、祐太?!」

 西山を園に押し付けてグラウンドをあとにした。着替え終わった頃、西山が部室に駆けこんできた。

「一緒に帰ろう」
「園は?」
「知らない」

 とあっさり言い放つ。知らないことねえだろ。
 西山は基本優しいれど、こういう切り捨て方も出来る奴なんだと気付いて、俺もいつか……と考えたらちょっと怖くなる。

「あいつ、ほんとにお前に惚れてんだぞ」
「知ってる」

 あっけらかんと答えてユニフォームを脱ぐ。

「ちょっとは気持ち、考えてやれよ」

 好意がないと、こうも簡単に手を振りほどいて背中を向けられるなんて辛すぎる。
 つい、自分に置き換えて西山を非難したら、西山はちょっと驚いたように俺を見た。

「孝雄の気持ちを考えたらどうかなるの? おとなしく諦めてくれるの?」
「そうじゃなくてさ……高校だけじゃなくて、大学まで追いかけていくって決めてるくらいお前のこと好きなんだから、もうちょっと優しくしてやってもいいだろ」
「優しくしたら期待させちゃうじゃん。突き放しはしないけど、特別優しくする必要はないよね」

 至極真っ当な意見を返される。でもちょっとドライすぎないか? 西山にとって好きな奴以外、相手にする時間ももったいない程、どうでもいい存在なのか?

 そういえば合コンのあの日、今すぐ梨香と別れてくると言い出した時も、本当にみんなの前で宣言しそうな勢いだった。そんなことをされたら梨香がどれほど傷ついたことか。

 それがわからない奴じゃないのに。

「お前、冷たすぎんだろ」

 つい、感情に走ってぽつりと零した。西山は少しむっとしたように眉間を寄せた。

「俺が好きなのは祐太だ。そのことは孝雄にも言ってある。それでも俺を好きでいるかどうかは孝雄の自由だから、俺や祐太が気にすることじゃないと思うけど」
「待て、お前、園に俺が好きだって言ったのか?!」
「言ったよ、夏の大会の前に」

 その頃の園の態度を思い出すと納得した。確かにあいつ、俺と西山の関係について断定するような言い方をしていた。
 というか……後輩に知られていたなんて……!

 羞恥心と怒りから体が熱くなってぶわっと全身の毛穴が開いた。

 園もこいつも、どうして周りのことなんかお構いなしで、一途に盲目的に突き進めるんだよ。色々考えて悩んでる俺が馬鹿みたいじゃん。

「お前と園ってお似合いだよ」

 鞄を持って部室を出ようとしたら、まだ着替え途中の西山も追いかけて来た。パンツ丸出しの馬鹿みたいな姿を見たら、自分がつまらないことにこだわる小さな人間みたいに思えて、泣きたくなるくらい情けなくて腹が立って……西山に八つ当たりしたくなったので、俺はその場から逃げ出した。

「祐太!」

 西山がズボンに足を取られて走れないのいいことに、呼び止める声を無視して学校を飛び出した。

 ※ ※ ※

 アラームの前に西山からのラインで目が覚めた。

『おはよう。昨日はごめんね』

 相変らずの内容にため息が出た。

 昨日部室の前で別れたあと、西山からの電話はジャンジャン鳴っていたし、メールもラインも次々送られてきていた。『どうしたの?』『怒ってる?』『ごめんね』という内容が半分。残り半分は『電話に出て』『返事ちょうだい』『心配してる』と俺の安否を気遣うものだ。

 まったく俺を責めやしない。

 一貫した態度にまた苛々する。秋広をいつまでも思い続ける親父さんそっくりだ。あいつもいい大人になってもまだ俺を好きだなんて言っていそうだ。

 腹がグルグルする。胸がムカムカする。朝っぱらから気分が悪い。
 のろのろ起き上がった頃、また西山からラインが入った。

『確かに俺が少し冷たかったのかもしれない。孝雄に優しくするよ』

 自分の意思を曲げて俺に媚びた形の打開案だ。俺は自分で言い出したことなのにむしょうに腹が立って、思わずスマホをベッドに叩きつけていた。



 もう朝練に出る必要もないのに、早めの時間に学校についた。教室に行ったって一人なのでグラウンドのほうへ足を向ける。

 掛け声が近くなり、野球部の後輩たちが練習している姿が見えてきた。俺もあそこにいた頃は、こんな気持ちになることもなかったのに。もうすぐ受験なのにこんなんで大丈夫か俺。

 ぼうっと眺めていたら園がいないことに気付いた。年中元気印の園が休みだなんて珍しい。

 目を動かして探すとバックネット裏を歩く園を見つけた。その横にはなぜか西山もいる。あの大きな体は間違いない。

 どうして西山が?

 二人は部室のあるほうへ向かって行き、俺の視界から消えた。俺の足も、二人のいる方へと動いていた。
 グラウンド側を歩くと他の部員に見つかるので中庭を抜けていく。気持ちが急いて早足になる。

 こんな朝早くから二人きりでどこへ何をしに行くんだ。

『孝雄に優しくするよ』

 頭には今朝のラインの内容がちらついて胸が重くなる。

 西山の言うことが正しいのは俺だってわかっていた。ただ、引っ込みがつかなくなって、自己弁護するみたいに西山を責めていただけだ。

 西山が絶対園を好きにならないとわかっていたから、だから優しくしろと言えた。西山が俺以外の男にまったく興味がないとわかっていたから、園がどんなにアピールしても平気でいられた。

 冷たく園をあしらう西山に安心していたくせに。本当は『優しくするよ』って一言でこんなに不安になるくせに。

 そのくらい、西山のことが――。

 校舎を左に曲がって進んだら部室棟が見えてきた。野球部はグラウンドに近い一番端。

 ほとんど小走りになって扉の前に立った。中から人の気配がする。かすかに聞こえる話し声に耳をすまし、その内容に頭の中が一瞬で茹った。

「……っ……恵護さ……」
「痛いか?」
「ちが、……ぁ……気持ち、い……」
「こら、孝雄、変な声出すなよ」
「だって……あっ、そこ……っ!」
「ここがいいのか?」
「あっ、あっ」
「こんなに硬くなるまで我慢して、馬鹿だな」
「うぅっ、あぁ……そこ、そんな、したら……恵護さんっ」

 全身の血液が沸騰しそうなほどの怒りに我を忘れた。

 あいつの優しくするってのは、セックスしてやるって意味になるのか?!
 ふざけんじゃねええぇぇぇぇっっ!!!

「なにやってんだゴラアァァッッ!!」

 肺活量マックスの大声で叫びながらドアを蹴破った。

「祐太?!」
「中根さん?!」

 ベンチに寝そべる園と、その上に跨る西山が飛び上がらんばかりに驚いて俺を見る。

 あれっ、二人とも服着てる……!?

 って気付いたけど怒りで暴走モードの俺はそのままズカズカ中に入って西山の胸倉を掴むと園の上から引きずりおろした。

 床に尻もちついた状態の西山を見下ろす。
 あれ、ちんこ出てない。ベルトも閉まってチャックもちゃんとあがってる。

「朝っぱらからなにやってんだよ!!」
「なにって……え、どうしてそんなに怒ってるの?」

 浮気現場を押さえられたはずなのに、西山はまったく言い訳をするでもなく、ただ俺の剣幕に驚いた様子で目をぱちくりさせる。ベンチから身体を起こして茫然と俺を見つめる園にも着衣の乱れは見られない。っていうか肩にタオルがかけられている。

「西山、お前っ、お前……っ!」

 まだ興奮状態だけれど、二人の状態を見る限りセックスしてたわけじゃないことがわかってきた。
 というか、これ、ただマッサージしてただけじゃね? 

 自分の壮大な勘違いに気付いて動機が激しくなって卒倒しそうになった。

「おま、お前、お前ら……こんなとこで何やってんだよ! 紛らわしいことしてんな! 馬鹿じゃねえの! 園、お前、一年だろうが! 三年になにやらせてんだよ! 西山、お前もお前だ! この馬鹿が!!」

 完全に八つ当たりモードに入って喚き散らした。

「祐太に言われて反省したから、孝雄に今までの態度を謝ろうと思って。ついでに練習見てたら孝雄の肩の調子が悪そうだからマッサージしてやってたんだけど……」

 まだ事態を把握しきれていない様子の西山が俺に怒られていると思って体を小さくする。こいつが馬鹿でよかった! 馬鹿でよかった!

「素人がマッサージとかなぁ! 揉み返し起こしたらどうすんだよ馬鹿! バァーカ!」
「ごめん……」

 思いっきり理不尽に怒られているのに西山が謝罪を口にする。すると、

「ばっかばかしー……恵護さん、謝る必要ないっすよ」

 白けた顔の園が吐き捨てた。

「この人たぶん、恵護さんが俺と浮気してると思って怒鳴り込んできたんですよ。外で盗み聞きして、セックスしてるとでも思ったんじゃないですか。自分の勘違いだってわかって、いま顔真っ赤にして誤魔化そうとしてるだけですから」

 俺を見てせせら笑う。園は馬鹿じゃなかった……!

「そう、なの?」

 園から俺に向き直った西山の顔が徐々ににやけていく。

「はあ?! そんなわけねえだろ! 勝手にしろよ、お前ら二人が何しようがどうだっていいし!」
「嫉妬、してくれたの?」
「するわけねえだろ!」

 腰をあげて立ち上がった西山が俺の手を掴んで顔を覗きこんでくる。見んな馬鹿!

「俺が孝雄と浮気したと思って、あんなに怒ったの?」
「違うっつってんだろ!」
「祐太の手、熱い。顔も真っ赤だよ」

 俺を抱きしめて「体も熱い」と呟く。

「浮気なんかするわけないだろ。こんなに祐太が好きなのに。愛してるって言ったよね? 俺は本気だよ。祐太は? そろそろ祐太の気持ち、聞かせてよ」
「……っ、うっせ……お前の好きなんか、聞きたくねえ……っ!」
「死ぬまで言い続けるよ。いや、死んでも言い続ける。祐太が好き。祐太を愛してる。一生そばにいる」
「うるせえっ、お前……男同士で……」
「関係ないよね」
「あるだろっ! 差別とかされんだぞ?! 親に紹介も出来ねえんだぞ?! 結婚出来ねえし、子供も作れねえんだぞ?!」
「祐太の両親には俺が土下座して謝るから!」

 西山の口から俺の親の話が飛び出てきて面食らった。いきなりなにを言い出すんだ。

「な……えっ?!」

 お前の話をしているんだぞ?!
 混乱してたら西山に両肩を掴まれた。

「孫の顔見せられないし、大事な長男を俺なんかが奪っちゃって本当に申し訳ないと思ってる。土下座したくらいじゃ許してくれないかもしれないけど、だけど、俺には祐太が必要だから、これだけは誰にどれだけ反対されても譲れない。俺の出来る限りで祐太を守る。どうしても子供が欲しいなら俺は身を引く。二番目で構わないから、そばにいることだけは許して欲しい。祐太の邪魔にならないようにするから。だから、男同士っていう理由なんかで、俺とのことを諦めようとしないでよ」

 今まで見たどの時よりも誠実で、男らしい顔をした西山を、俺は言葉もなくして見上げていた。

 こいつは自分のことじゃなくて、俺のことを真剣に考えてくれていたんだ。俺が西山の人生を考えたように。
 違うのは、俺は後ろ向きで、西山は前向きに考えてたってことだ。

 しがみつくように西山の胸に顔を埋めた。

「お前なぁ……お前は親の会社継ぐんだろ……」
「その必要はないって小さい頃から言われてるんだ。母さんが好き勝手やる人だからね。俺に強制したりしないよ」

 広い胸、逞しい腕の中、大きな手で頭をポンポンされる。この世にここほど安心できる場所は他にない。
 俺はここにいてもいいんだろうか。ここにいることでいつかこいつを傷つけたりしないだろうか。

「お取込み中申し訳ないんですけど」

 突如聞こえた第三者の声に恥ずかしいくらい驚いて顔をあげた。園が白けた顔つきで俺たちを見ていた。
 まじでこいつがいること忘れてたわ。

「そうやって見せつけるの、俺が出て行ってからにしてくれませんか」
「あ、悪い」

 あまり動じていない西山があっけらかんと謝る。園はちょっとふて腐れた様子でため息をつきながら俺たちの横をすり抜けた。

「今は退散しますけど、俺、恵護さんのこと諦めたわけじゃないっすから。大学はもちろん、就職先まで追いかけて行って、絶対俺のこと好きになってもらいますから」

 そう宣言すると園は部室を出て行った。園と西山って、ストーカー気質なところも似ている。

「あいつも諦め悪いな」

 苦笑しながら西山が呟く。その目がとても優しい目つきだったので、俺はちょっと危機感を抱いてしまう。

 西山のことなんて、最初は馬鹿騒ぎが好きな下品な奴って印象だったのに、合宿のあの日を境にぐいぐい言い寄られるようになって、一緒にいる時間も増えて、知らぬ間に、その存在が俺のなかでどんどんでかくなっていて。

 今じゃ、そばにこいつがいないと落ち着かなくなってしまった。失うことを考えると怖くなるほどに。好きだと言われると、蕩けるくらい幸せを感じてしまうほどに。

 いつの間にか西山と同じくらい、いや、もう西山以上に俺のほうが好きになっているのかもしれない。

「あいつと浮気したら、ぶっ殺すかんな」

 俺の声に西山は視線を落とした。

「するわけないだろ。祐太がいるのに」

 さっきより百倍優しい笑顔で俺にキスしてくれた。






関連記事

2015-04-29(Wed) 20:27| 楽しいシーソーゲーム!| トラックバック(-)| コメント 0

楽しい親子喧嘩!(2/2)

<前話はこちら>

「何しに来たんだ、お前は」

 親父さんは面倒くさそうに呟く。

「俺の祐太に手を出すな!」
「お前のもんじゃないだろう」

 西山の頬が痙攣する。

「お前は中根くんにフラれたんだろう?」
「……どうして知ってるんだよ」
「フラれたくらいで簡単に諦めて、意気消沈して彼を見つめることしかできないお前に出る幕はないよ」
「諦めてなんかない! 俺は中根くんが幸せになるならと思って……!」
「本当に好きなら、自分の手で、自分と一緒に幸せにしようと思うものだ」

 親父さんの言葉に西山がはっと息を飲む。自分は間違っていたのかと、頼りない目を俺に向けて来た。

 俺は西山を応援したくて、頬に手を添えて首を横に振った。お前は間違えてなんかない。俺に振り回されていただけだ。

「恵護、父さんは一緒に幸せになるべき相手を見つけた」
「まさか、中根くんなんて言わないだろうね」
「彼は亡くなった僕の恋人の生まれ変わりだ。豊川秋広、それが彼の本当の名前だよ」
「どうしたんだよ、父さん!」

 父親の正気を疑った西山が叫ぶ。さっきから親父さんの言っていることはおかしい。死んだ恋人に俺がそっくりだった、そこまでは理解できる。だからって生まれかわりだなんて!

「こんなこと母さんが知ったら……っ」
「母さんは知ってるよ。僕には忘れられない人がいる、君は永遠に二番だけどそれでもいいだろうかって、付き合う前に確認したんだ。母さんはそれでもいいと言ってくれた。今回のことも理解してくれるはずだ」

 近づいてきて俺に向かって手を伸ばして来る。西山はその手を叩き落とした。親父さんが西山を睨み付ける。

「恵護、振られたのにしがみついてみっともないぞ。中根くんの気持ちは、僕に別れろと言われてすぐお前と別れられる程度なんだ。その現実を受け入れろ」

 いやいやいや! お前が一番現実を受け入れろよ!

 西山は驚いた顔で俺を見て「父さんに、そんなこと言われたのか?」と新事実に目を見張っていた。

「だって……俺、お前の人生の邪魔したくねえし……! お前、モテるし……男子校だから、たまたま俺だっただけで……いつか絶対俺に飽きるだろっ」
「飽きるわけないだろ……!!」

 ぎゅうっと強く抱きしめられた。憤りだけじゃなくて、自分を信じてくれって言っているような力強さに思えて、俺は西山の胸にしがみついた。

「ごめんっ、西山」
「俺こそ父さんがそんなこと言ってたなんて知らなくてごめん。ごめん、中根くん、ごめん」

 チュッチュッと頭にキスされる。顔をあげればすぐさま唇にキスされた。俺は西山の首に腕をまわした。持ち上げるように抱かれながら濃厚な口づけをかわす。

「別れを惜しむのはそのくらいにしろ! 僕の目の前で!!」

 西山の親父さんが怒鳴って俺たちを引きはがした。

「中根くん! 君は秋広なんだよ! まさか僕を忘れたなんて言うんじゃないだろうね?!」
「俺、中根祐太ですけど」
「知ってるよ! でも君は秋広の生まれ変わりなの! 僕の恋人! 思い出して!」
「いや、思い出すも何も……」
「もう一度キスしたら思い出すかも!」

 西山の手から俺を奪い取って素早く唇を押し付けて来た。

「なにやってんだよ!」

 再び西山に奪還されて、腕のなかに確保される。親父さんは地団太を踏んだ。

「秋広を失って僕がどんなにつらかったか! お前にも話したことがあるだろう!」
「覚えてるし、気の毒にも思うけど、祐太は絶対渡せません! 俺が俺の手で幸せにしますから!」
「本当に秋広の生まれ変わりだったらどうするんだよ! 運命の二人を引き裂くのか!?」
「生まれかわりなんかあるわけないだろ!」

 高校生の息子に叱咤される父親。駄々をこねる様子は確かに西山の言う通り、子供そのものだった。あの夜俺が見た人は本当に別人だったんじゃないだろうか……。

 突然、耳鳴りがした。ぞくっと寒気も走り、頭にいつかの声が聞こえて来た。

 ――ニイサン。

 俺は旧校舎を見た。

 ――ボクノ ニイサンヲ トラナイデ。

 雷に打たれたような衝撃だった。

 西山を見て愛しさのあまり胸が痛くなったわけ。誰でもいいわけじゃなかったんだ。
 旧校舎の幽霊は豊川秋広! 交通事故で亡くなった親父さんの恋人だったのだ!

「にいさん!」

 俺は思わず叫んでいた。親父さんが目を見開いて俺を見た。

「そっ、その呼び方……! 僕を慕って「にいさん」と呼んでくれていたのを思い出したんだね!」
「違います!」

 叫びながら旧校舎を指さす。あんたの探している秋広はあそこにいる! あそこであんたをずっと待ち続けているんだよ!

「中に! 待ってるんだ、あんたを! 秋広って奴が、成仏できないで、旧校舎でずっとあんたを待ってるんだよ!」

 たどたどしく日本語を紡いで必死に伝えたのに、親父さんは眉を顰めて、

「幽霊話は信じないよ」

 この似た者親子め……っ!!

「いいから旧校舎に行け! 裏手にある桜の近くの窓から中に入れるから! 早く行ってやれよ!!」
「そうやって僕を追っ払う気だろう」
「3年6組だ! 違うか?!」

 親父さんの顔つきが一瞬でかわった。二階を見上げ「秋広」と呟く。

「ここで待っていなさい」

 急に大人に戻って言うと、親父さんは旧校舎の裏手へと姿を消した。
 俺の耳鳴りもやみ、頭に聞こえる声も消えた。

「幽霊の噂と結びつけるなんて、よく思いついたね。一時的には誤魔化せる」

 秋広の声が聞こえたなんて言ったって信じやしないだろう。

「聞いた話が似てたからさ。あの人、亡くなった恋人が忘れられなくて、この校舎見た途端、動揺しちゃったんじゃね? 昔の思い出とか甦って来て」

 適当な理由を作り上げる。

「中根くんってそんなに秋広って人に似てるのかな?」
「他人の空似だろ。だって何年前の話だよ。前にお前も言ってたじゃん。自己催眠みたいなもんだって。たまたま背格好が似てたから生まれ変わりだって思いこんじゃったんだよ」
「……俺も中根くんが死んじゃったら、正気でいられないだろうな」
「勝手に殺すな」
「俺が中根くんを幸せにしたい」

 ぎゅっと巨体が覆いかぶさるように抱き付いて来る。その背中に俺も腕をまわした。

「お前また教室から見てたのか?」
「あそこだったら中根くんをずっと見てても怒られないから」

 ぴったり俺に密着してすんすん匂いを嗅いでいる。犬かお前は。首筋も同じように匂いを嗅がれてくすぐったい。

「もっと近くで見てればいいだろ」
「いいの?」
「お前が練習来ないと俺がみんなに色々言われるんだよ」
「じゃあまた前みたいに一緒にいようか」
「……そうだな」

 西山の顔が目の前に迫って来た。俺からさきに目を閉じたら、応えるように唇にキスされた。

 音を立てて舌を絡ませながら、西山は手をユニフォームのなかに入れて来た。背中を撫で、脇腹を経て、前にまわってくる。

「んっ……待っ……て……」

 胸の先を摘ままれて甘い痺れが走った。

「またこうして中根くんに触ることができて嬉しい」

 そう言って足に間に太ももを入れてきて俺の股間をグイと押し上げてくる。

「なっ、や……やめろよ」
「俺、中根くんのこと一生諦められないと思う。中根くんが女の子を好きでも、たぶんずっと付き纏うと思う。ストーカーになったらごめんね、先に謝っておくよ」

 わりと真顔で言って西山はまた俺にキスをしてきた。ここ最近のことを思うと、西山にストーカーの気質は充分あるような気がした。

 西山の手が股間に差し込まれる。育ったものを確かめるように上下に手が動く。

「に……し、やまっ……ばか、お前っ」
「彼女がいてもいい。俺は二番でいいから、捨てないでよ」

 凛々しい顔で情けないことを言う。目がマジだから怖い。

「も…っ…やめ……場所考えろっ!」

 日曜とは言え、他にも部活動で学校に来てる奴らもいるんだ。抱き合って股間触られてるところを見られたらどんな噂を立てられるかわかったもんじゃない。

「じゃあ、俺を捨てない?」

 耳に口を当てて西山が囁く。それもうほとんど恫喝じゃん。この状況で首を横に振れるわけないじゃん。

「わかったからっ」

 途端に笑顔になって「良かった」と俺の額に口付けた。ほんとにこれで良かったんだろうか……。

「じゃあ、練習戻ろうか」
「え、お前の親父待たなくていいのかよ」
「いいよ。中根くんを見た父さんがまたおかしなこと言い出したら困るし」
「ちょっと錯乱しただけだろ」
「計算じゃないかなぁ。父さんは負けず嫌いだから平気で嘘つくんだよね」
「お前と一緒じゃん」

 どこまで似たもの親子なんだよ。

「今度から父さんに何か言われても無視していいから。事故で亡くなった秋広って人自体、嘘じゃないかって思えて来たよ」

 いや、それはきっと本当だろうけど。嘘だったら俺に憑りついたアイツは何者なんだって話だ。
 俺は旧校舎を見上げた。

 幽霊になってまで親父さんを待ち続けた秋広と、事故で亡くなった恋人が永遠に一番だと言い切れる親父さん。俺はそれほど深く誰かを好きだと思えるだろうか。愛し続けられるだろうか。

 視線を西山に移した。気付いた西山がにこりと笑う。馬鹿の一つ覚えみたいに俺に好きだと言ってくる西山なら、それが出来る気がした。俺はそこまで純粋じゃないけど。

「どうしたの、中根くん」
「別に……っていうか……名前……」

 いつまで中根って呼んでんだよ。なのに西山は「え?」ってきょとん顔だ。俺が恥ずかしいだろうが。

「だから、なまえ……って……やっぱ、なんでもない!」

 猛然と顔が熱くなってきた。そんな俺を見た西山が「祐太を犯したくなってきた」とねちっこい視線とともに呟いたので憤死しそうになった。わざとかこいつ!

 睨み付ける俺の顎に手をそえて西山が嬉しそうにキスの雨を降らす。無邪気な笑顔を見ていたら怒るのが馬鹿馬鹿しくなってきて、うるさいキス攻撃を手の平で塞いだ。

「かわいい。祐太、かわいい」
「うっせー馬鹿」

 砂利を踏む足音がして振り返ると、親父さんが校舎裏から戻って来た。
 警戒した西山が俺の肩を抱く。

「なんだ。お前たち、いたのか」

 俺たちの前に立ち止まり、しきりに手で顔を擦る。よく見ると瞼が腫れて目が赤い。

「中根くん、さっきは取り乱して悪かったね」

 親父さんが微笑む。優しいけれど、寂しい目に見えてなぜだか俺の胸が痛む。

「会えました?」

 そっと訊ねると、親父さんはゆっくり頷いた。

「僕と間違えて他の誰かを口説くなんてって怒られたよ」

 秋広も間違えて西山に発情してたけど。それはまぁ黙っててやろう。

「父さんまで幽霊話を信じるんですか」

 呆れたように口を挟む息子へ向き直ると、親父さんは軽く咳払いした。

「愛はすべてを可能にするんだよ、恵護。お前の見聞きしたものがすべてじゃない。奇跡は起こるんだ」

 西山は肩をすくめた。

「中根くん、秋広と再び会えたのは君のおかげだ。君が僕たちを引き合わせてくれた。感謝してもしきれない。君たちの交際を認めるよ。秋広恋しさに大人げないことをしてしまった僕をどうか許して欲しい」
「許すもなにも……」

 親父さんは俺の手を取った。

「もう一つ、たまにでいいから、僕のことをにいさんと呼んでもらえないかな?」
「父さん、また」

 西山が諫める。

「これくらいいいじゃないか! 僕の秋広はもうこの世にいないんだぞ! 秋広そっくりの男の子を見つけたと思ったらよりによって息子の恋人だし! なんて狭量な男だろう! そんな男に育てた覚えはないよ! 中根くん、やっぱり僕に乗り換えないかい?」

 握った手の甲にチュッと唇を押し当ててくる。この人、案外不純だな。

「申し訳ないですけど、俺はやっぱり、秋広さんのかわりにはなれないんで」

 お断りすると、親父さんはフッと目を細めて「そうだね」と少し寂しげに微笑んだ。

 西山が親父さんの手から俺の手をひったくり、「戻ろう、中根くん」と背中を押す。数歩進んでからここへ来た目的を思い出し、後ろに顔を向けた。

「あの、差し入れの荷物は……」
「あぁ、ごめん、君と二人きりになるための嘘」

 親父さんは平然と言うと、いたずらっ子のように舌を出した。ほんとに平気で嘘をつく親子だ。この親子にはもう騙されねえぞと心に誓い、俺は西山とグラウンドへ戻った。



ケダモノ彼氏!



関連記事

2015-04-21(Tue) 21:08| 楽しい親子喧嘩!| トラックバック(-)| コメント 10

楽しい親子喧嘩!(1/2)

楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!楽しい入院生活!楽しい旧校舎!楽しいお見舞い!楽しい合コン!楽しい放課後!

※健全。なんでも許せる人向け。

 夏の甲子園の正式名称は『全国高等学校野球選手権大会』という。各都道府県の地区大会に優勝した高校だけが出られる。

 一週間後に出場をかけた初戦を控えた今日、OB会から差し入れが届けられた。スポーツ飲料と粉末、栄養ドリンク、新しいボールの箱が高く積まれている。その横に、会の代表と一緒に西山の父親が並んでいたのには驚いた。

「こちらは西山のお父さんだ。お父さんの代で初めてうちは甲子園に出たんだぞ」

 と監督が紹介がてら豆情報を挟む。
 今日も髪を後ろへ撫でつけて、口元には優しげな笑みを浮かべている西山の父親は、俺たちをゆっくり見渡すと「いつも息子がお世話になっています」と軽く頭をさげた。

 ここに西山の姿はない。チラッと視線をあげた先の教室の窓は開いているから、今日もあそこで勉強をしているのだろう。

 捻挫をしたあの日、練習に戻って来いと西山に言ってみたが、結局あれから一日も顔を見せていなかった。

「残念ながら恵護はメンバー入りできなかったけど、OBとして君たちの活躍を応援しているから、これから始まる試合一つ一つを大切にして、全力で、悔いのないように頑張って下さい」

 西山父の言葉に全員で「はいっ!」と返事をする。

 父親と目が合った。俺を覚えているようで、他とは違う重い視線が絡み合う。俺が西山をフッたことを知っているような気がする。それでいいんだよと、目で言われているようで、俺のほうから視線を外した。

 差し入れの山と一緒に記念撮影をすることになった。端っこに並んだ俺の後ろにいつの間にか西山の父親が立っていた。

「久し振りだね。元気だった?」

 囁くような声で話しかけてくる。

「はい、まぁ」
「連絡してくれないから、どうしてるのか気になってたんだ」

 もらった名刺のことか。誰があんたなんかに連絡するか。

「約束を守ってくれて嬉しいよ。恵護は落ち込んでいるけど、それも少しの間だ」

 西山は家でも落ち込んでいるのか……。

 学校で見かける西山は、最近ますます周囲から孤立して、一人でいることのほうが多くなっていた。
 もちまえの明るさが消え、ノリが悪くなった西山は以前とは別人のようにおとなしい。

 園は顔を合わせると「あんたのせいだ」とネチネチ嫌味を言ってくる。綾瀬には「中根のほうが西山のマイペースに振り回されてるんだと思ってたけど、実際は逆だったな」と言われてしまった。

 他の連中も似たようなもので、西山はどうしたんだと訊ねてくるのは、暗に俺のせいだと思っているからだろう。
 そのくらい元気がないので、そんな姿を見たくない俺はいつも目を逸らしていた。

 写真撮影が終わり、もらった差し入れを部室へと運ぶ。
 監督と話をしていた親父さんが俺を手招きした。監督もこっちを見ているので無視するわけにいかず走って向かう。やって来た俺に向かって西山の親父さんは言った。

「まだ車に残っているのを忘れていたんだ。運ぶのを手伝ってくれるかな?」
「えっ」

 嫌だという思いが隠せず顔に出てしまう。監督は一言「行って来い」だった。
 仕方なく、西山の父親と連れだってグラウンドを離れた。

 来客用の駐車場は正門の右手にある。だが西山父は裏門のほうへと歩いていく。そっちには教職員用の駐車場があるから、そこに停めているのかもしれない。とりあえず親父さんのあとをついて歩く。

「甲子園、行ってくれよ」
「あ、はい……」
「恵護がベンチ入りしてくれてたら応援のし甲斐もあるんだけど、如何せんあいつは野球の才能はないからなぁ。本当に残念だよ」
「うちのOBだったなんて知りませんでした」
「父親が来るなんて嫌だと思ったからあいつがいる間は遠慮してたんだ」

 じゃあなんで今回は来たんだよ。

「じゃあどうして今日は来たんだって思ってるだろう?」

 親父さんが振り返り、悪戯っぽく笑う。見透かされた俺はどきりとして目を泳がせた。

「あれから家に来てないようだね」
「そ、そりゃあ……」
「友達付き合いは続けてくれても構わないんだよ。むしろどんどん遊びにおいで」
「なんで……?」

 そんなことを言う意味がわからない。真意をはかりそこねて戸惑ってしまう。

「俺は、あなたに言われたから、西山を振ったのに……どうしてそんなこと言うんですか? それって西山の気持ちを弄ぶことになるんじゃないですか?」
「君に気がないとわかれば諦めるさ。人は必ず立ち直る。この僕がそうだった。僕は昔、最愛の人を失ったんだ。それでも今こうして元気に生きているだろう?」

 失恋して失意のどん底だったときがあると、西山が話していたっけ。そのことを言っているのだろうか。

「運命の相手なら、必ずまたなんらかの形で再会する。人生とはそういうものなんだよ」

 左に曲がれば教職員用の駐車場なのに、西山父は右に進路を取った。

「あの、駐車場はこっちですけど」
「少し寄り道をしよう。僕たちがいた頃とずいぶんここも様変わりしたね。あそこの旧校舎ももうすぐ見納めだと思うと寂しいよ」

 かつての学び舎は建て替えられ、いま残っているのは取り壊しの決まっている旧校舎だけ。昔を懐かしみたいのかもしれないが、それは俺のいないときにやってくれないものだろうか。

 西山父は旧校舎の前に立つと、腰に手をあて、校舎を見上げた。

「君たちが本当に愛し合っていたなら、僕が反対しようが引き離そうが、決して諦めなかったと思うけどね。僕たちはそうだった」

 僕たち?

「僕と彼はそれは深く愛し合っていた。親にバレて反対されても、僕たちは愛を貫くことを選んだ。そのために勘当されても構わなかった。ここが君と恵護の違いだよ」

 以前西山の父親が言った、自分にも覚えがある、男子校には珍しくないことだと言っていた言葉を思い出す。この人もこの学校で、俺と西山のような関係を持った生徒がいたのだ。

「僕のほうが一つ上だったから、先に卒業して彼を迎え入れる準備をしていた。なのに、もうすぐ卒業という時に、彼は交通事故で亡くなってしまった」

 西山父はがくりと項垂れた。

「僕をあんなに愛してくれたのに。卒業したら一緒に暮らそうと約束をしたのに。僕を置いて、彼は逝ってしまったんだよ」

 親父さんが振り返る。さっきまで絶えずあった笑みが消えていた。真顔になった男は俺の肩をがしっと掴んだ。

「だけど、またこうして会えた。君は僕の秋広にそっくりだ。最初に君を見たときは心臓が止まるほど驚いたよ。特に僕を上目使いに見る目つきがそっくりだ。豊川と言う姓の親戚はいるかい?」

 と俺の目をじっと覗きこむ。

「い、いませんけど」
「じゃあ僕に会うために生まれ変わってきてくれたんだね。やっぱり僕たちは結ばれる運命だったんだよ」

 理解できないことを言ってにっこり微笑む。顔が近づいてきて、動けない俺の唇を塞いだ。慌てて胸を押し返して顔をずらした。骨が軋むほどの強い力で抱きしめられる。

「秋広……!」
「ちょ……っ、や、やめて下さいよ!! 秋広って誰なんですかっ!」
「恵護に君は渡さないよ。君は僕の秋広なんだからね。そのために君たちを別れさせたんだから」

 迫ってくる唇を避けながら、必死に腕の中で逃げまわった。西山の父親というだけあって、腕は太いし力も強くてびくともしない。

「や、だ……っ、やめ、ろ……! やめろってば!!」

 いい加減にしろ、この糞おやじ……!
 ぶん殴って逃げるしかねえと俺が握り拳を作ったとき、

「何してるんだ!」

 鋭い声が飛んできて、腕の力が少し弱まった。その隙に逃げ出し、声の主へと駆け寄った。
 西山は俺を抱き留めると、父親から隠すように自分の肩を前に出した。

「父さん、なにしてるんですか」

 西山の声は震えていた。見上げた西山のこめかみには血管が浮かんでいた。強く奥歯を噛みしめているのが顎の軋みでわかる。西山は激怒していた。

「事と次第によっては、いくら父さんでも許しませんよ」





関連記事

2015-04-21(Tue) 21:07| 楽しい親子喧嘩!| トラックバック(-)| コメント 0

楽しい放課後!(2/2)

<前話はこちら>

 下駄箱で靴をはき替えたあと、またおんぶされて駐輪場へ移動した。そこで青い自転車に乗り換えた。

「掴まってて」

 自転車を漕ぐ西山の胴に腕をまわした。腹筋が締まって硬くなっている。こうやって意識して西山の体に触るのは初めてだ。俺だって体は締まってるほうだし、筋肉だってついているけど、西山に比べれば貧相だ。

 西山は腕まわりだって太いし、太ももは力を入れるとズボンがぴったりと張り付く。本当に恵まれた体をしていた。

 この体で梨香を抱くのか。

 想像したらたまんない気持ちになった。部活でも、それ以外でも見慣れた西山の裸なのになんか切なくなってくる。……主に股間のあたりが。最悪だ。

 気分を逸らすために話題を探す。

「そういえばもうすぐお前の誕生日だな」
「なにかくれるの?」
「彼女からもらえよ」
「梨香とはもう一度ちゃんと別れた。だからあれ以来会ってないよ」

 髪が揺れる後頭部を見あげる。「別れる必要ないのに」とか「俺に気を遣うな」とか言葉は色々浮かんだけど、なんとなく言う気にならなくて黙っていた。ホテルデートがなくなったことに、安堵してもいた。

 園が言っていたけど、梨香はホテルデートの費用も西山に負担させるつもりだったのかもしれない。プレゼントは私、とか言って。想像したらむかついてくる。別れて正解だ、そんな女。

「思い出した。お前のせいで園に絡まれてんだけど」
「孝雄に?」
「お前にだったら抱かれてもいいってさ」
「ははっ、あいつ昔からそんなこと言ってたな」
「やったことあんの?」
「あるわけないじゃん」

 否定されてほっとしてる俺がいる。

「ヤラせてくれるなら、誰でもいいんじゃないの?」
「男だから人並みの性欲はあるけど、俺は中根くんが一番いいな」

 緩やかな坂に差し掛かり、西山はサドルから腰をあげた。

 女と別れて、まだ男の俺がいいなんて言ってると知ったら、西山の父親はまた俺に対して腹を立てるだろう。

 男に貢がせて当然って女でも、女ってだけで交際に口出しされないんだと思うと、なんとなく理不尽だという気持ちになる。

「お前の父ちゃんってどんな人? 厳しい?」
「まったく。優しい方だと思う。あ、この前家に来てくれた時、会ったらしいね。なんか話した?」

 対面したことは知っているようだが、話の内容までは聞いていないらしい。

「別に、挨拶しただけ。厳しい感じだったけど」
「ほんと? 疲れてたのかな? 友達連れてくと絶対一緒に遊びたがって、負けず嫌いだからムキになって一番楽しんじゃうような人だよ。厳しいなんてぜんぜん。俺より子供っぽい。母さんがよく、私は子供を二人育ててるって言ってたし」

 あの夜俺が会ったのは別人だったのかな、と思うほど西山が語る父親像とは違いがあった。

 子供なんかじゃなかった。分別をわきまえた大人の男って感じで、声を荒げたりせず静かに俺と西山の仲を牽制して、終わらせるように言ってきた。

 西山の父親のなかで俺は、息子をたぶらかす悪い男だから、害のない友達と態度が違うのも無理はない話だけど。

「うちの親って特殊な出会い方でさ、昔、うちの母さんはホームレスの支援活動をしていて、その時炊き出しに並んでたのが父さんだったんだって。付き合う前から母さんは父さんの面倒みてんの」
「ホームレスだったのか?」
「うん、短い期間だったらしいけど。失恋して自棄になってどん底だった父さんを放っておけないから保護したのが馴れ初めだって聞いてる」

 身なりがよくて物腰も柔らかで、ホームレスだったなんて想像もつかない。

「そっからよく社長になれたな」
「会社は母方の爺ちゃんのを引き継いだだけだよ。経営センスは母さんのほうがあったらしいけど、やりたいことがあるって父さんに押し付けて海外に行っちゃった」
「そーなんだ……でも、うまくいってるってことは優秀だってことだろ」

 なんで俺、親父さんのフォローしてんだ。

「どうかな。そういえば、父さんがイチゴ、ありがとうって。甘くておいしかったって」
「あ、食ったんだ」
「また連れておいでって言われた」

 それは絶対嘘だ。社交辞令だ。息子の前では童心を忘れない良きパパでいたいだけだ。

「中根くんがいいなら、またいつでも遊びに来てよ。友達としてでいいからさ」

 遠慮がちに誘われる。俺はそれに返事をすることが出来なかった。



 母ちゃんは捻挫して帰って来た息子を見て「ほんとドジね!」と呆れたように言い、西山には「また迷惑かけちゃってごめんなさいね、どうぞあがって」と満面の笑みを浮かべた。態度が違いすぎるぜ、母ちゃん。

 西山の手を借りてリビングに行き、ソファに腰を下ろした。母ちゃんはお茶の用意でキッチンに消えた。

「俺、もう行くよ」
「来たばっかだろ。座れば」

 隣を叩くと西山は大きな体を小さくしてちょこんと座った。

 ほとんど毎日顔を合わせてそばにいたから、急にいなくなると離れがたい気持ちが湧いてつい引き留めてしまった。
 さっきは背中越しだったけど、西山ときちんと向かい合って話をするのは合コンで突き放して以来で緊張する。

 お前とは無理ってフッたのに。思わせぶりな態度を取っている自覚はある。友達としての縁まで切らなくてもいいじゃないかと自分に言い訳をする。

「足は痛くない?」

 西山もなんとなく気まずいみたいで、当たり障りない会話を始めた。

「平気。すぐ治りそう」
「よかった。でも無理しないように」
「わかってるって」
「…………」
「…………」
「あ」
「えっ」
「あの子とうまくいってる?」
「あの子って?」
「合コンの」
「あぁ……、ラインはしてるけど、なんか面倒だな」

 昨日こんな夢をみただの、学校帰りに見つけた猫の写真だの送ってこられてもどう返していいか困る。既読無視したらしたで、怒ってるスタンプだけが送られてきたり。

 学校の友達とのやり取りはそんなに面倒じゃないのに。そもそも、意味のないことを送ってこないのに。

「そんなこと言ってたら怒られるよ」

 と西山は苦笑した。

 そうやって軽く受け流せるんだ。俺が女とラインやってても、怒ったり拗ねたりしねえんだ。
 西山の反応に俺のほうが不満を感じていた。

 母ちゃんが紅茶とクッキーを持って戻って来た。テーブルの横に座ってまた西山に礼を言っている。

「あんたもちゃんとお礼言ったの? この子ったらどうせ学校でも不愛想で口悪いんでしょ? 頭に来たら殴っていいからね」

 なんてこと言ってんだこの母親は。

「中根くんは可愛いですよ」

 西山はにっこり答えた。お前もなんてこと母親に言ってくれてんだ。

「やぁだ! こんなのが可愛いなんて、親の私でももう何年も思ってないのに! ありがとねぇ。うちの馬鹿息子と仲良くしてやってね」
「はい」

 はいって爽やかに返事してんじゃねえよ。

 母ちゃんはその後も居座って西山にいろいろ話しかけた。西山もいちいちそれに答えるから会話が終わらない。
 つまらなくて俺は一人クッキーを齧る。

 ラインの通知音が聞こえてポケットからスマホを出した。遥からだ。

『前に言ってたDVD、いつ貸せばいい?』

 そういえば合コンしたときそんな話をしたな。貸りるとなると会わなきゃいけない。真っ先に、面倒だという感情がわきあがる。

「彼女?」

 西山が画面をのぞき込んできた。なんとなく後ろめたくて隠してしまう。

「見んなよ」

 西山の視線がすいと俺の顔に移動した。射すくめるような鋭い眼差しにどきっとする。

「この子やっと彼女が出来たみたいなのよ。ご飯のときも、お風呂入ってるときも、ずっとピロンピロンって鳴ってうるさいったらもう。プリクラなんか貼っちゃって。受験生が浮かれるなって言ってやって」

 空気を読まない母ちゃんがデリカシーのかけらも感じないことを言い出した。焦る気持ちで母ちゃんを睨み付ける。どうして母親ってのは子供に恥をかかせることに熱心なんだろう。

 西山は穏やかに笑ってた。俺の目を見て、

「良かったね」

 と、それだけ言うと、前を向いて紅茶に口をつける。その態度に、なぜだか俺のほうが打ちのめされる。

「西山くんはモテそうよね。彼女いるんでしょ?」
「いないですよ」
「今は、いないだけでしょ?」
「振られたばかりなんです」

 西山の言葉にギクリと身が竦む。

「こんなに優しくてかっこいい男の子振るなんて、見る目ないねぇ、その子」

 なにも知らない母ちゃんが目の前で俺をこき下ろす。俺はわけのわからない汗を滲ませながら、クッキーを口に詰めた。

「祐太に彼女が出来るくらいだから、西山くんにもすぐいい人が現れるよ」
「でも俺はまだ諦めたくないんです」
「気持ちはわかるけど、前に進まなきゃ」
「そうなんですかね」
「そうよ!」
「そうかもしれないですね」

 呟くように言うと西山は目を伏せた。

「西山、俺の部屋行くぞ!」

 ソファから勢いよく立ち上がった。びっくりした顔で西山が俺を見上げる。その腕を取って引っ張り立たせた。ここにいたら母ちゃんの質問攻めにあって俺たちがダメージを食らう。

 足を引きずりながらリビングを出て、階段のある玄関に来たところで、西山は俺の腕をやんわりと解いた。

「もう帰るよ」

 と俺から一歩離れる。

 行くなよ、と咄嗟に言いかけて口を閉じた。さっきの会話のあとでどの面さげて引き留められるんだ。

「……母ちゃんがごめん」
「テニス部の奴に自転車を借りたんだ。そいつが帰るまでに返さないといけないから」

 ってことは今から学校に戻るわけだ。

「俺のために、ごめん。ありがとう……」
「主力メンバーのサポートも補欠の役割だから」
「あのさ、もし、お前が出たいんなら、練習来いよ」
「体動かしたくなったら顔出すよ」

 うんとは言わずに、西山は「じゃあ」と靴を履いた。見送りのため外に出ようとする俺を「いいよ」と手で制す。
 バタンと音を立てて扉が閉まった。外からスタンドをあげる音がして、俺は急いで玄関に下りた。

 外に出ると自転車に跨る西山の後ろ姿が見えた。遠ざかる姿を見ていたらキリキリ胸が締め付けられた。

 西山は今日、一度も俺のことを「祐太」って呼ばなかった。前みたいに「中根くん」としか俺のことを呼ばなかった。
 そんな資格はないのに、すごく寂しくなった。



どっちもどっち 2



関連記事

2015-04-16(Thu) 21:00| 楽しい放課後!| トラックバック(-)| コメント 2

楽しい放課後!(1/2)

楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!楽しい入院生活!楽しい旧校舎!楽しいお見舞い!楽しい合コン!

※健全

 ランニングのあと体操をして、次はキャッチボールだったのだが、いつも組んでた西山がいないので、俺は相手を探してあたりを見渡した。

「中根さん、ちょっといいですか」

 一年の園が話しかけて来た。
 園孝雄。期待の大型新人だ。身長は181センチ、76キロで西山に次ぐガタイの良さだ。西山が部に来なくなった今、実質的に園が一番と言える。

 西山と違い、小中ピッチャーで活躍し、エース候補として今から期待されている。

「今日も恵護先輩は休みなんですか?」

 ぶすっとした表情を隠しもしないできいてくる。

 園と西山は小中一緒だったらしい。最初の新入生の挨拶で、園は「尊敬する先輩は西山恵護さんです! 恵護さんとまた一緒に野球がやりたくてここに来ました!」とグラウンドに響き渡る声で叫んでいた。そこで園が西山の後輩だと知ったのだが、園の西山への慕いっぷりは少し度を超えていた。

 そもそも、小中いっしょだったなら西山に野球の才能がないのは知っているだろうに、高校で一緒に野球がやりたいというのは一歩間違えれば嫌味、侮辱にとられかねない。でも園は本気だったし、補欠で球拾いの西山を心底崇拝していた。

 監督に西山とバッテリーを組みたいと頼んでいたし、スパイクの紐がほどけていたらh跪いて結んでやるし、柔軟体操は西山とペアを組みたがるし、言われる前にパシリのお伺いを立て自ら買い出しに出かけて行くし、練習後には進んでマッサージもする。

 尊敬というには行き過ぎたものを感じる献身ぶりだった。

 だから園は西山がいなくて不満なのだ。そしてその不満を俺にぶつけてくる。

 園が西山に忠誠を見せるように、西山は俺に対して献身的だった。入学前の春休みから部活に参加して尊敬する先輩のそんな姿を見て来た園は、そんなことをさせる俺をよく思っていないようだった。俺がやらせてたわけじゃなく、西山が勝手にやってただけなのに。

 今だって背が高いのをいいことに威圧的に俺を見下ろして来る。他の部員にはにこにこしているくせに、俺が話しかけても嘲笑に近い薄笑いしか見せない。本当に腹の立つ一年なのだ。

「恵護さんが急に来なくなった理由、なにか知ってるんじゃないんですか」

 西山は合コンのあの日以降、部活に出てこなくなった。体も大きくて存在感があったため、いなくなると違和感があるほどだった。

 応援練習も、公式試合は常にベンチ外だった西山は今は教える立場なのでほとんど顔も出していないらしい。

 俺が来るなと言ったから。

 まさか本当に言う通りにするとは思わなかった。俺のせいだと思うとみぞおちのあたりがずしりと重くなる。

 だけど、部活で顔を合わせるのも気まずい。西山のことだから諦めずにまだ俺を口説いてきそうだし。お前の父親にやめろと言われたんだと言えば、そんなの関係ないと親を巻き込んで駄々をこねそうだから言えないし。

「あいつは受験生なんだって何回も言ってんだろ」

 園を睨み返す。

「恵護さん、落ち込んで元気がないです。中根さんと喧嘩したんじゃないんですか?」

 園は怯むどころか顎を出して胸を突き出してきた。

 確かに最近の西山は以前の元気はなさそうだった。たまに見かけるその姿は、練習試合に負けたときみたいに背中を丸めているし、いつも複数の友達とつるんでいたのに一人でいることが多くなった。そんなときはいつも物憂げな表情だ。

「中根さんが来るなとか言ったんじゃないんですか?」

 でかい図体のわりに観察眼もあるし鋭い奴だ。
 俺が黙って感心してたら「やっぱり!」と園は目を吊り上げた。

「俺は恵護さんと野球するためにここ来たんですよ。半年しかないのに、どうしてくれるんすか!」
「あいつの行く大学まで追いかけて行けよ」
「最初からそのつもりです!」

 本気で追いかけていく気か。

「お前、あいつのこと好きなの?」
「好きっす」

 食い気味で肯定された。

「それって」
「恵護さんになら抱かれてもいいっす」

 一片の躊躇も恥じらいも見せずにきっぱり言い切る。男前だな。言ってることはともかく。

「恵護さんは中根さんのことが好きみたいです。中根さんはどうなんですか」

 相手が誰だろうが、なんであろうが尻込みしない根性は認めるけど、その猪突猛進でデリカシーのないところは直せないもんかね。

「お前がどうだろうと知ったこっちゃねえけど、普通は男同士でありえねえって覚えとけよ」
「そんなの些細な問題です」

 グローブに拳を叩きこんで園が答える。
 些細だと思わない人もたくさんいるんだよ。

「西山は女いるぞ」

 知らなかったようで園は表情を変えた。

「聞いてません」
「元カノとより戻したんだ」
「梨香さんと? 嘘だ」
「ほんとだよ。俺の言うこと信じられないなら西山に聞け」
「あの人は恵護さんに貢がせるばっかりで俺は好きじゃありません」
「そんなの知るか。おら、練習の邪魔なんだよ」

 犬を追っ払うように園を追い返し、近くにいた綾瀬に声をかけてキャッチボールを始めた。

 離れたところでキャッチボールをする園が何か言いたげにチラチラ見てくるのが鬱陶しくて気が散る。

 おかげでフライ気味で飛んできたボールを取り損ねてしまった。完全に見失ってキョロキョロ探していたら、うっかりボールを踏んでしまった。バランスを崩し、地面に手をつく。痛みがやってきてうずくまった。

「大丈夫か、中根」

 綾瀬が駆け寄ってくる。

「挫いた?」
「っぽい」
「待ってろ」

 離れていった綾瀬が監督を連れて戻って来た。見せろと言われ、捻った足を監督に見せる。足首を動かされると痛くて顔を顰めた。

 保健室へ行くよう言われ、足を引きずりながらグラウンドを出た。

 保健室のおばちゃんに捻挫したことを告げると氷水の入ったビニール袋を手渡された。それを痛む場所に当てる。少し腫れてきた気がする。

 ガラリと保健室の戸が開いた。何気なく目をやり、戸口に立つ西山を見て驚いた。偶然、にしては出来過ぎたタイミングだ。

 西山は俺を見ずに、まっすぐ前を向いていた。

「どうかした?」

 おばちゃん先生が西山に声をかける。

「野球部です。中根くん、どうですか?」
「捻挫だね。今日一日、練習はやめたほうがいいと思う。君も野球部なら、監督の先生にそう言っといてくれない?」
「わかりました。僕から伝えておきます。中根くん」

 西山はここでやっと俺のほうに顔を向けた。

「鞄と制服持って来るから中根くんはここで待ってて」
「え、おい、西山――ッ」

 ペコッと頭を下げて西山は保健室の戸を閉めた。足音が遠ざかっていく。

 俺が捻挫したと知っている口振りだった。誰に聞いたんだろう。見てたのか? どこで? いつから?
 急に全身熱くなって、じっとり汗が出た。

「仲間思いね、彼」

 おばちゃんが惚れ惚れしたように呟く。

 俺は熱くなった顔を伏せ、捻挫の痛みも感じないほど動揺していた。



 十分ほど経って西山が戻って来た。言っていた通り、俺の鞄と制服を手に持っている。

「監督も帰ってゆっくりしろって」

 と制服をベッドに置いた。

「着替えるならカーテン締めなね」
「はい」

 おばちゃん先生に言われて西山はベッドを囲うようにカーテンを閉めた。布一枚で隔てただけなのに、西山と密室に閉じ込められたような息苦しさだ。

「出てけよ」
「着替えるの手伝うよ」
「一人でできる」
「俺に触られるのは嫌?」
「そういうことじゃなくて」
「友達に自転車借りたから、送っていくよ」

 俺のユニフォームを引っ張り上げて脱がせていく。

「人の話聞いてる?」
「来月は大会なんだから無理しない」

 甲子園に出れるかどうかの大事な初戦だ。一度でも負けたらチャンスを失う厳しいトーナメント戦。西山の言う通り、無理して長引かせるなんて馬鹿な真似は出来ない。

 子供みたいに西山に制服を着せてもらい、ボタンを留められる。ズボンもはき替えるとカーテンを開けた。

「湿布貼るからそこ座って」

 おばちゃん先生は足首の具合を見つつ、湿布を貼ると手早く包帯を巻いた。

「軽い捻挫だと思うけど、いま以上に腫れてきたり、歩けないほど痛かったり、自分でおかしいなって思ったら病院行くようにね」
「はい。ありがとうございました」

 一緒に頭を下げた西山は、当たり前のように俺の荷物を肩にかけている。

「乗って」

 と西山は俺に背を向けてしゃがんだ。

「おんぶ」
「い、いいよっ」
「背負ったほうが早いから。ほら」

 そうしてもらいな、っておばちゃん先生に言われて、仕方なく西山の背中におぶさった。軽々持ち上げられる。
 西山におんぶされたまま保健室を出て下駄箱へ向かう。誰にも会いませんように。

「俺が足捻ったのなんで知ってんだよ」

 大きな背中から問いかける。

「最近、教室で勉強してるんだ」

 三年の教室はグラウンドに面している。そこから見ていたのか。

「まさかずっと見てたのか?」
「たまたまだよ」

 ははって笑ってるけど、なんとなく嘘臭い。



どっちもどっち



関連記事

2015-04-15(Wed) 20:44| 楽しい放課後!| トラックバック(-)| コメント 3

楽しい合コン(2/2)

<前話はこちら>

 時間になり、カラオケボックスへ移動した。飲み物の食べ物を注文し、順番に歌をうたう。

 綾瀬は雪江とうまくいっているみたいで、よく笑いあって、触れ合うほど距離も近い。西山と梨香はもともと恋人同士だから隙間なくぴったりくっついている。
 こうして見るとお似合いの二人だった。梨香はもちろん、西山も楽しそうだ。

「私、この歌好きなんだ」

 端末を見ながら隣の遥が言った。

「どれ? あ、俺も好き」
「ほんと?! 学校で知ってる子があんまりいなくって」
「ちょっとマイナーだからね」
「でも祐太くんが好きだったなんて嬉しい! ライブのDVDは買った?」
「買ってない。持ってるの?」
「もちろん! 今度貸そうか?」
「いいの?」
「いいよ! あ、じゃあ、ライン教えてもらってもいい?」

 この自然な流れに驚きを禁じ得ない。実は相当遊び慣れてるのかなとIDをそらで言える遥の顔をこっそり見る。

「俺も教えてよ」

 西山が割って入ってきた。俺と遥の携帯にプリクラのシールを発見し、ちらっと俺に視線を送ってくる。お前だって撮ってただろうが。

 じゃあ俺らも、と便乗した綾瀬たちもスマホを取り出し、全員で連絡先を交換した。

「またこのメンバーで遊びに行きたいね。今度トリプルデートしようよ」

 梨香の提案に、遥と雪江も「いいね」と顔を綻ばせる。綾瀬なんかは願ってもない申し出に何度も頷いちゃってる。

 西山はあまり乗り気じゃなさそうな、微妙な笑い方をしていた。俺を見て咎めるように眉間を寄せる。お前にそんな顔する資格あるのかよ。
 睨み返してから目を逸らした。

 歌って、飲んで、食って、喋って。

 最初は強めの視線で絡んできた西山も、俺が無視し続けていたらだんだん気の弱い目になって、今では自信なさげに項垂れていた。

 綾瀬がトイレ、と席を立ったので俺もついて部屋を出た。案の定、西山も追いかけて来る。

 俺は綾瀬とばかり話をして西山を視界から追い出した。恨めし気な目が向けられる。冷たく見返したら、西山は途方に暮れた顔で肩を落とした。そんな顔したって知るか、二股野郎。

 手を洗ってトイレを出ようとする俺の腕を西山が掴んだ。

「綾瀬くん、先行ってて」

 俺を引き留めて西山が言う。綾瀬がきょとんと俺を見る。頷くと綾瀬はトイレを出て行った。
 俺は西山の腕を振り払った。

「なんだよ」
「怒ってる?」
「またそれかよ。怒ってねえって」
「俺、なにか悪いことした?」

 彼女キープしつつ俺のこと好きだのなんだの口説いてただろうが! 怒りが一気に込み上げて来たが、それを飲みこんで一息ついた。

「…………もうこういうのやめにしね?」
「こういうの?」
「お前にはちゃんと彼女いるじゃん。なのに俺ともって……おかしいだろ、常識的に考えて」
「梨香とは別れたって言ったよね」
「別れてねえだろ、距離置いてただけだろ」
「え――……あ、梨香はそう言ってたけど、俺は別れたつもりだ」
「別れても連絡は取り合ってたんだろ?」
「綾瀬くんに頼まれたからだよ。それまで一度も連絡してない」

 険しいほど真剣な顔をして西山が俺に迫ってくる。たぶん、嘘じゃない。西山は別れたつもりでいて、梨香は些細な痴話げんかだと思っていたんだろう。

 父親や梨香ほど詳しくない俺でも、西山が嘘をつかない奴だと知っている。この顔、この目が嘘をついていないとわかる。

「俺がまだ梨香と付き合ってると思ったから怒ってるの?」
「そんなわけねえだろ」
「じゃあ、今から戻ってちゃんと梨香と別れてくる。もう連絡もしない。もう会わないって言ってくるから」

 踵を返す西山の手を慌てて掴む。

「ばかっ! そんなの言わなくていい!」
「じゃあ、信じてくれる?」
「違う……別れる必要がねえって言ってんの!」
「え?」
「だから! もう、終わりにしようって言ってんの」

 意味を探って考え込んでいた西山の眉間の皺がぎゅっと深くなった。

「それ……俺とのこと、言ってるの?」
「そうだよ」
「なんで?」
「男同士でこんなのいつまでも異常だろ」
「異常なんかじゃない! 好きになったら正常も異常もないだろ!」

 目つきを鋭くした西山が声を荒げる。練習以外でこいつの大声を聞くのは初めてかもしれない。

「一緒に住もうって約束したのに!」
「そんな約束してねえよ。お前が勝手に言い出しただけだろ」

 目を見開いて西山は息を吸い込んだ。信じられないって顔で食い入るように俺を見つめたあと、ゆっくり息を吐き出した。

「…………俺、なんかした? なんでそんなに怒ってるの?」

 まだ俺が一時的にへそを曲げてるだけだと思っているようだ。そう願いたいだけかもしれないけど。

「今日、女の子と一緒にいて、やっぱこっちだなって思ったんだよ。俺は男だから。抱かれるほうじゃねえから。お前といたら俺は異常になる。俺は正常がいい。だからお前とは無理。嫌だ」

 俺の言葉を聞いて西山が顔を歪める。見てられなくて俯いた。

「お前もいつか絶対そう思う」
「思わない」

 怒りのこもった力強い声が否定する。

「梨香、ちゃんが……、お前の誕生日にデートしたいって。なんか夜景の見えるホテル取って……とか、言ってた。やったな。俺じゃなくて、ちゃんと女の子の相手したら、すぐ目が覚めるから」
「覚めないよ。ここで一方的に終わらせられたら一生引きずる。俺を捨てるの?」
「捨てるもなにも、付き合ってもねえのに」
「祐太は恥ずかしがりやだから、はっきり好きだって言ってくれないだけで俺は付き合ってるつもりだった」
「好きじゃねえから言わなかったんだよ」
「じゃあなんで俺とあんなことしたんだ?」
「お前に無理矢理やられてたんだ」

 睨めあげると西山は一瞬たじろんだように顎を引いたが、すぐ言い返してきた。

「ほんとに全部、無理矢理だった? 祐太は嫌々俺に付き合ってくれてたのか?」
「合宿でよってたかって俺を押さえつけて強姦したこと、忘れたのかよ」

 ハッとして西山は口を閉ざした。きっとこれが西山の一番の負い目だ。その証拠に西山はなにも言い返せずに目を伏せた。

「もう二人では会わねえ。俺に触るな。俺たちはただの野球部の仲間。それだけだ」
「そんなの俺には無理だ」

 覇気のない声がか細く呟く。

「これ以上お前の好き勝手にやられるのは俺が嫌なんだ。友達なら、やめてくれるだろ」
「いまさら友達になんて」
「だったらもう、赤の他人だ」

 弾かれたように顔をあげた西山はほとんど泣きそうな表情だった。胸が締め付けられる。

「どうせお前はもう練習に出なくたっていいんだし、受験勉強に専念しろよ」

 三年間ベンチ外だった部員は、この時期になると練習には参加しなくてもよくなる。すでに何人かは受験に備えて顔を見せなくなっていた。

「部活に来るなってこと?」
「来たって球拾いと応援練習だろ」
「酷いよ」

 確かに俺は酷いことを言っている。だけどそばにいたらどうしたってお互い意識してしまうだろう。

「でもそれが現実だろ。受験に備えて勉強してるほうがよっぽど有意義だ。じゃ、そういうことだから」
「祐太」

 捨てられた子供みたいに俺の名前を呼ぶ西山を置いて、みんなの待つ部屋に戻った。

 遥の隣に座って他愛のない会話をしてすごく。しばらくして戻って来た西山は梨香が「どうしたの?」と声をかけるほど青い顔をしていた。

「なんでもないよ」

 力のない声で答えて、無理な作り笑いを浮かべる。綾瀬が事情を問う目を俺に向けて来たが、気付かないふりをして遥と会話を続けた。

 梨香はあいかわらず西山にべったりっくっついていた。何が何でも別れる気はないらしい。
 俺には関係ない。どうだっていい。
 相手が梨香なら、西山の父親も文句はないんだろう。

 俺と西山はほとんど目も合わさず、会話に至っては一言も交わすことなく、夜になってカラオケボックスを出た。

「みんなこのあとどうするの?」

 西山の腕に腕をまきつけて梨香が俺たちの顔を見渡した。

「私は恵ちゃんと別行動するから、みんなも好きにしちゃったら?」

 はなからそのつもりらしい綾瀬と雪江が好都合とばかりに頷く。俺は遥に「どうする?」と小声で尋ねた。

「今日はもう疲れちゃったし、あんまり遅くなると……」
「そうだね。じゃあ、送るよ」
「ありがと、祐太くん」

 西山の視線を感じる。だけど俺が顔を前に戻すと同時に背けられた。

 カラオケボックスの前で俺たち三組は別れた。





関連記事

2015-04-06(Mon) 20:22| 楽しい合コン!| トラックバック(-)| コメント 4

楽しい合コン!(1/2)

楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!楽しい入院生活!楽しい旧校舎!楽しいお見舞い!

※健全!エロなし

 練習が休みの今日、綾瀬に駅前のモスへ連れて行かれた。入り口のそばから「あの子どう思う?」と綾瀬はレジに立つ女の子を指さす。

「どうって?」
「可愛いと思わない?」

 確かに可愛いし、笑顔の接客も好感が持てる。

「可愛いと思うけど」
「だろ? やっぱそうだよな!」

 なぜか嬉しそうに俺の背中をバシバシ叩く。こんなにテンションあがってる綾瀬も珍しい。

「好きなの?」
「言わせんなよ馬鹿」

 自分が連れて来たくせに。全力でうざい。

「じゃ帰るか」
「待て待て。奢るから」

 と言うので、彼女のレジに並んでセットを注文した。二階席へは行かず、一階のカウンター席につく。

「あの子、S女の子なんだ」

 ポテトを口に放り込んだら綾瀬が言い出した。S女は俺たちの学校とは駅を挟んで反対側にある女子高だ。そこそこ偏差値も高く、通う女の子のレベルも高いと聞く。

「そんな感じの子だな」

 校則に厳しい学校らしく、レジで見た彼女は黒髪で化粧けもなかった。

「俺ら高3じゃん。夏の大会終わったら引退じゃん。そしたら受験じゃん。大変な時に励まし合える彼女がいたらいいなって思うだろ?」
「うーん、まぁ」

 いまはもうすぐ始まる地方大会に向けて毎日練習漬けだから、引退したあとのことなんてまだ考えられない。

「お前も、今度はちゃんとした彼女、欲しいだろ?」

 人の古傷をつつくなよ。無言で睨むと、綾瀬はレジの彼女に勧められて注文した季節限定のデザートを俺の前に置いた。プリンか。仕方ねえ。許してやる。

「だからさぁ、合コンしたいと思ってさ」
「すれば」
「お前も一緒に!」
「俺は当分いいわ。前ので懲りたし、いまは野球だけでいい」
「もうポテト食っただろ! デザートもあげただろ!」
「だったら返すよ」
「もう食ったから遅い!」
「他の奴誘えよ」
「俺の周りで一番人畜無害そうなのお前なんだよぉ! 男子校の野球部ってだけで絶対警戒されるじゃん! 野獣扱いじゃん! みんなもれなく下品で野蛮じゃん!」

 そういうお前も野球部だろうが。それに人畜無害そうって男としてどうなの俺。

「お前、彼女欲しくねえの? 野球部の連中とばっかつるんで童貞のまま卒業するの? 彼女いない歴=年齢でいいの?」

 なんでそこまで必死なんだよ。卒業までに彼女作らないと死ぬのかお前は。
 しかし綾瀬の言う通り、いつまでも野球部の奴らとつるんでばかりというのも問題だ。特に西山とは。

 つい先日、西山の親父さんにヤッてることがバレてしまった。しかも、俺が誘ったみたいに疑われて、さっさと関係を終わらせろと迫られた。あの時、あんたの息子が俺を襲ったんだと言ってやればよかった。今頃になってムカムカしてくる。

 あの時はバレた焦りと恥ずかしさでテンパッて頭が真っ白になってしまったのだ。

 何も知らない西山は以前通り俺にベタベタ構ってくる。気まずさから無意識に突き放してしまうと「怒ってる? 俺なんかした? 熱があるって騙したから? 一緒に暮らそうって言ったから? 俺重い?」と、大雑把な性格のくせに不安がって聞いて来る。

 俺が悪いことをしているみたいじゃないか。

 俺が優柔不断な態度を取り続けるうちは、西山との関係はいつまでもずるずる続きそうだった。
 親父さんの言う通り、このあたりが潮時で、俺から終わらせる必要があるのだろう。

 最近ティッシュの減りが遅いなと思って、原因が西山とセックスしてるからだと気付いたときの衝撃を思い起こす。
 自慰が減るほど俺は西山と……男とセックスしているのだ。健全な男子高校生にあるまじき非常事態だ。
 男子校で周りに女がいないからだ。たまには女子と触れ合ったほうがいいかもしれない。

「まぁ……いっか、合コンくらい」

 俺が言うと、綾瀬は顔を明るくした。

「来る? 来てくれる?!」
「うん、行く。っていうかどうやってS女のあの子と合コンセッティングするんだよ?」
「大丈夫、アテがあるから!」

 というわけで合コンすることになったのだった。

 ※ ※ ※

 いや別に彼女とかすぐ欲しいと思ってないし。よく見られようとか。かっこいいって言われたいとか。モテたいとか。彼女出来るかもとか。そんな下心のためにファッション雑誌立ち読みして、前の晩から着ていく服選んだわけじゃないから。

 身だしなみだし。あの高校の生徒だせえって言われないためだし。普段面倒くさがってしない髪のセットを頑張ったのも、たまたまドラッグストア行ったらワックス安かったからだし。

 っていちいち自分に言い訳を並べながら支度して、待ち合わせ場所に十五分前に向かったらすでに綾瀬がいた。

 綾瀬も気合の入った格好をしていた。なにそのお洒落眼鏡。お前視力悪くないだろ。真っ青なカーディガンとか。お前の普段着黒ばっかだろ。

 お互いの格好を無言でチェックし合って、意味もなく笑い合う。

「で、綾瀬の目当ての子、来るの?」
「来る! らしい。絶対呼んでって頼んであるから」
「誰に?」
「西山」

 と綾瀬が指さした先に、手を振ってこっちにやってくる西山がいた。

「……なんであいつがいんの」
「西山に頼んだからな」
「なんで」
「あいつの元カノがS女なんだよ。知らなかった?」

 そういえばいたな、と思い出す。西山のちんこがでかすぎるから最後までさせてくれなかったという彼女が。
 そうか。元カノに連絡取って合コンセッティングしたのか。っていうかまだ連絡は取り合ってたんだ……。

「早いね、二人とも」

 やってきた西山は、服装も髪型もまったく普段通りだった。なんの変哲もない薄手のグレーのセーターから白い襟を出してカーゴパンツをはいているだけなのに、タッパがあるからいやに様になっている。西山がモデル体型だったことを俺たちは今になって思い出し、敗北感から唇を噛んで下を向いた。

「俺に黙って行くつもりだった?」

 西山が俺の肩を掴む。顔をあげると、口は笑ってるのに目は笑っていない西山が俺を見下ろしていた。

 あ。こいつ怒ってるかも。

「最近俺のこと避けてない?」
「……別、に」

 心当たりがありすぎて声が固くなった。

「綾瀬くんに頼まれたんだろ? 俺も行くから」

 とにっこり笑う。やっぱこいつ怒ってる……。



 時間ちょうどに女の子3人組がやってきた。前に見たレジの彼女もいる。フリフリのピンクのスカートが可愛くて、隣の綾瀬は言葉も失って惚けている。

「お待たせ、恵ちゃん」

 真ん中の髪の長い子が西山に笑いかける。この子が西山の元カノだろう。三人の中で一番目鼻立ちがはっきりした美人だった。どこでこんな子と知り合うんだ。

 元カノは「私は梨香」と名乗ったあと、レジの彼女を「こっちは雪江」、もう一人を「こっちは遥」と紹介した。
 俺たちも簡単に自己紹介し、カラオケボックスが入っている近くのビルへ移動した。

 綾瀬が受付をして戻ってきた。混んでいてあと一時間待たなければならないことを告げる。ビルの一階がゲームセンターなのでそこで時間を潰すことになった。

「恵ちゃん、久し振りにプリクラ撮ろうよ」

 元カノの梨香が西山の腕を引いてプリクラコーナーへ消えていった。久し振りってことは以前も撮ったことがあるんだろう。
 そういえば、遊園地の観覧車でキスもしたことあるんだよな。それ以上のことも……。

「私たちはどうします?」
「えっ?」

 いきなり真横で声がして見下ろすと、ショートカットの遥が立っていた。
 綾瀬はいつの間にか雪江とクレーンゲームを始めている。

「すでに二組、出来上がってますよね。私たちってついでに呼ばれたみたい」

 と苦笑する遥ちゃんが可愛くて胸がどきどきする。

 それに、こうして誰かを見下ろすのってちょっと新鮮だった。女の子ってこんなに小さいんだ。西山が俺を見下ろすくらいの角度がある。

「綾瀬があの子に一目惚れしたみたいで」
「雪江には内緒だけどって、梨香に聞きました。梨香も、西山くんに会えるから喜んでました」
「別れた彼氏に会うのって嫌じゃないの?」
「あの二人、別れてないですよ?」
「えっ?」

 西山は別れたと言っていたぞ?

「喧嘩はしたみたいですけど、しばらく距離を置こうって話になって、それから梨香は連絡がくるのをずっと待ってたんです。だから西山くんから電話があって、すごく嬉しかったみたいですよ」
「あー……そうなんだ……」

 てことは、二人は別れたわけじゃなかったのか。西山は梨香をキープしつつ、ずっと俺を口説いていたのか?

 出来上がったプリクラを手に西山たちが戻って来た。梨香の手は西山の腕に絡みついている。確かにあんなことが出来るのはラブラブな恋人同士でしかありえない。

「遥さん、俺らもプリクラ撮らない?」
「遥でいいですよ。私も祐太くんって呼んでいいですか?」
「うん。敬語も必要ないから」

 俺が手を出すと、遥はちょっと驚いたあと、恥ずかしそうに手を繋いだ。
 西山の視線を感じつつ、俺たちもプリクラコーナーへ向かった。

 俺はわけがわからないので、遥が全部ボタンを押してあとはポーズをとるだけ。二人で落書きをし、出来上がったプリクラを店のハサミで半分に切り分けた。

 遥は一枚をスマホのケースに貼りつけた。そんなとこに貼ったら学校とか家で人に見られるじゃん。いいのか、見られても。別にやましくないし。たかがシールだし。知り合いになった記念だし。じゃあ俺も、とスマホの裏に貼った。うっわ、恥ずかしい。

 戻ると西山たちはクレーンゲーム、綾瀬はエアホッケーをやっていた。完全に3組にわかれている。
 梨香の腕には地縛霊になった猫のぬいぐるみがある。次は白い狛犬を取るつもりらしい。

「あーん、だめだめっ、行き過ぎだよ、恵ちゃん!」
「さっき梨香が言ったところでとめたら駄目だったじゃん。俺のほうがうまいんだから見てろって」
「絶対取ってよ、恵ちゃん」

 レバーを握る西山に梨香がベタベタ纏わりつく。どっからどうみても恋人同士。誰がどう見ても一線越えた恋人同士。彼女が痛がって未挿入らしいけど。……想像したらなんか胃がムカついてきた。

「あ、可愛い~」

 遥の声に振り返る。遥は背中にチャックのあるクマを見ていた。

「それ、欲しいの?」
「昔から好きで集めてるんだよね」
「取ってあげるよ」

 五百円を投入しレバーをにぎる。無造作にただ寝そべっているだけの30センチ越えのクマの胴体を狙う。調整して降下ボタンを押す。うまく胴体を挟みこんだが重すぎて持ち上がらない。

「頭からずらしていったらどうかな?」

 遥の助言を参考にもう一度。今度は頭を狙う。頭がでかすぎてアームの幅におさまりきらず顔に刺さった。

「やだっ、お尻からのほうが良かったのかな?」

 じゃあ今度はケツから……。持ち上がったが、やっぱり頭が重くてアームから滑り落ちた。
 ほんとにこれ取れるのかよ!

「苦戦してるね。俺がやってみるよ」

 腕に梨香をくっつけた西山が隣にきて、硬貨を投入した。

「祐太は短気で一回で落とそうとするから駄目なんだよ。こういう大きいのは数回にわけてスライドさせるんだ」
「知らねえよ」

 西山はクマの足にアームをひっかけ、体をすこし横にずらすことに成功した。

「すごーいっ! 動いた!」

 まだ落ちていないのに遥が手を叩いて喜ぶ。どうせ俺は短気で下手糞だよ。

「ねぇ、中根くん」

小さな声で呼ばれて振り向くと、梨香が服の裾を引っ張っていた。「こっち」と手招いて、少し離れた場所へ俺を連れだす。

「恵ちゃんと仲いいんでしょ?」
「別に……他の奴らと同じくらい」

 心にやましいところがあるので声が裏返りそうになる。

「実は、恵ちゃんが好きな子がいるって言い出したんだけど、心当たりない?」

 首を傾げてじっと俺を見上げる。目が怖い。ほんとは俺のことだってわかってんのか? 西山の性格を考えたら「相手は中根くんだよ」と平然と告白していそうな気もする。この女、俺だとわかった上で牽制しにきたのか?!

「絶対に恵ちゃんの勘違いなの。エッチなことさせてくれるから好きだと思い込んでじゃってるだけなの」

 梨香の言葉がグサリ、と心臓に刺さる。的を射ているというか、それが真実だと思う。彼女に拒絶されていた時に、ヤレる俺を見つけて夢中になっているだけ、性欲を好意と勘違いした典型的な思いこみ。

「ずっと我慢させてた私も悪いんだけど……。でもちゃんと仲直りできたら、させてあげようかなって思ってて」

 頬を赤く染めながら梨香は体をくねらせた。

「来月、恵ちゃんの誕生日なのね。その時に夜景が綺麗なホテルの最上階の部屋で、仲直りデートしようって計画してるから、中根くんのほうから説得してあげてくれない? 変な女と遊んでばかりいないで、ちゃんと彼女を大事にしてやれって」

 有無を言わさぬ強引な目が俺を見つめる。俺のことだと知っているのかわからないが、その目に見つめられると身を焼かれるような恥ずかしさが込み上げて来た。

 梨香は自分が本命の彼女だと自信を持っている。西山が浮気していようが、それくらいで心を揺らすこともなく、またやり直そうと考えている。

 そんな自信の前に、俺は自分がとても卑しい存在に思えてきた。まるで、正妻の前に引っ張り出された愛人のような気分だ。

「そういうのは西山に言ってよ」
「恵ちゃん、ああ見えて頑固で意地っ張りだから」

 西山の父親と同じことを言って梨香はにっこり笑った。それだけ西山のことをよくわかっているというわけだ。

「仲がいい中根くんのことなら、恵ちゃんも耳を傾けるかもしれないし」

 お願いね。
 そう言って俺の手を握った。俺は蛇に睨まれた蛙のように、こくりと頷くしかなかった。






関連記事

2015-04-05(Sun) 22:25| 楽しい合コン!| トラックバック(-)| コメント 0

楽しいお見舞い!(2/2)

<前話はこちら>

 ジェルと指で解したとは言え、大振りな亀頭一つ入れるのも大変な負担がある。しかも西山のちんこはカリ高でカサも肉厚なので括れに到達するまでがとてもきつい。俺の括約筋は限界にまで広げられるのだ。

 そこを通過しても、今度は極太のサオが待っている。弾力のある亀頭と違い、鋼鉄のような硬さと女の腕ほどの太さがある。それがずっと続くのだ。

「くぅ……う、ううっ……あ、あっ……や……まだ……かよっ!」
「一昨日の晩から抜いてないからいつもより大きいかも」

 少し申し訳なさそうに言う。熱でオナニーどころじゃなかったのだろう。毎日抜いてるらしい西山にしたらたった一日しなかっただけでも相当貯まっているはずなのに、自制を効かせて慎重に腰を進めてくる。見上げた顔は興奮のために色づいて、額には汗が光って見えた。

「ばか、お前……熱あるってのに」

 額の髪の毛を梳くって汗を拭ってやると、その手にキスされた。小指を噛まれ、口に含んで舐められる。熱い舌が指にねっとり纏わりつくのが見える。やべぇ、エロい。

「俺も下の名前で呼んでいい?」
「だめ」

 反射的に断って西山がむっと眉を寄せた。

「なんで矢神くんは良くて俺は駄目なの?」
「だって、高校の奴らみんな苗字呼びだし」

 尻すぼみに声が小さくなる。反対する正当な理由なんてない。ただ俺が恥ずかしいだけだ。

「なおさら祐太って呼びたい」
「呼ぶな」
「祐太」
「呼ぶなっつってんだろ」
「怒った顔も可愛い」
「はっ? 頭おかしいんじゃね」
「顔、真っ赤だよ、祐太」

 にこにこ言われてますます顔が熱くなる。小中の親しい友達は下の名前で呼ぶ奴が多い。別になんとも思わなかったのに、西山に「祐太」って呼ばれると恥ずかしい。なぜかわからないけど、すごく気恥ずかしくて顔を隠したくなる。

「好きだよ、祐太」
「…っ……るせぇ……」
「寝てる間ずっと祐太のこと考えてた」
「考えんな」
「祐太がずっとそばにいてくれたらいいのになって」

 西山が身動ぎ、俺のなかをごりっと擦る。

「はっ! あぁ……んっ」
「だから一緒に暮らさない?」
「……え……えっ?」

 いまなんつった?

「毎日会えるのが当たり前だったけど、これって今だけなんだよ。だから卒業したら一緒に暮らそう」
「う、あっ、なに……言って…ン……だよっ」

 ぐぷっぐぷっと西山が抜き差しを始めた。話をしている間に大きさに馴染み、苦痛も少ない。それを俺の様子から感じ取った西山は徐々にスピードをあげていった。

「俺は本気だよ。本気で祐太が好きだ」
「お、まえっ……男……同士だぞ……っ…・…!」
「わかってる。同じものついてんだから」

 きゅっと俺のちんこを握って上下に手を動かす。

「い、やっ……あ、あっ、さわる……な!」
「こんな気持ちになったの、祐太が初めてなんだ。おかしくなりそうだよ」

 引いたものを一気に奥まで捻じ込まれた。

「ああぁっ!! んっ……や……あ、ああっ……!」
「料理上手な可愛い子と結婚して、子供も二人くらい作って普通に暮らしてくもんだと思ってたのにね」

 引きは浅く、押しは強く腰を振ってさらに奥までこじ開けられる。

「だったらっ……そ……しろよっ!」
「こんなに祐太が好きなのに、他の誰かに目が行くと思う?」

 俺に覆いかぶさりピストンを激しくする。ジュプッジュボッてジェルと体液が掻きだされる音がするくらい、極太ペニスが俺のなかを凶暴に擦りあげていく。

「はぁん! あっ……あぁ! いやぁっ、やっ、やだっ……そんな、に……すん……な!」
「祐太しか目に入らない。他の誰にも興味がない」
「あっ、や……う、そ……ばっか……」
「ほんとだよ」

 今まで見たことないくらい西山は優しく微笑んだ。冗談でも嘘でも場を盛り上げるだけの睦言でもないんだとわかる。

「俺と一緒に暮らそう、祐太」
「ん、はぁっ……やっ……名前…や…だ……呼ぶなって、ば……あ、んん……!」
「祐太がいてくれたら何もいらない。俺のそばにずっといてほしい」

 耳を塞ぎたいほどだった。西山の声で紡ぎ出される言葉一つ一つが俺の心を愛撫していくのだ。ほだされるとはこういう感覚なのかもしれない。セックスの最中聞かされるとこっちの理性が乱されてどうにかなりそうだ。

「い……っ、あ、い、いいっ……でる……っ」
「俺の全部祐太にあげる。だからずっと俺のそばにいて」
「もぅ……や、あ、あぁっ……西山ぁ……もっとして……おく……してっ……きもち、いいっ……もう、出ちゃ……から……もっと、こすって……イカせて……!」

 まともじゃいられないくらい、気持ちよかった。女みたいにあんあん声あげて、もっととねだりながら西山を締め付けていた。

 俺の要求にこたえて西山もピストン運動を激しくする。西山も限界に近いのがわかる。一緒にイキてえ……なんてゲロ甘いこと考える俺がいる。

「あっ、あっ! イク―――ッ!!」 
「俺から離れられなくなればいいのに」

 射精する瞬間、目を細めながら西山が呟く声が聞こえた。



 36.8度。もう一度計ったら36.7度。興奮収まって下がってきてるじゃねえかよ。

「お前、ほんとに熱あった?」

 ベッドに全裸のまま寝そべる西山を見下ろす。西山は目を逸らした。

「朝はあった」
「俺が来たときは?」
「朝は39度あった」
「ふらついたのは演技か?」
「昨日は立つのも辛かった」
「また俺を騙したのか?」
「……イチゴ渡したらすぐ帰りそうだったから」

 毎度のことだし、いい加減学習しないで騙される俺にも問題がある。メシ平らげて盛る元気があるんだからもっと早い段階で気付けたはずだ。

 いやでもやっぱ腹立つけど。

「トイレ借りる」
「あっ、じゃあ」
「お前は来るな」

 こいつが来たら余計に時間がかかる。西山は残念そうな顔で一度持ち上げた頭を再び枕に戻した。

 さすがにフルチンでウロウロはできないのでパンツをはいてシャツを着た。部屋を出て階段をおりる。広くて静かな家。あいつがここで一人きりだったのにかわりはない。それに同情だけじゃないのは、俺自身、もう隠せなくなっていた。

 精液をあらかた出してからトイレを出た。外国みたいに広い洗面所で手を洗って上へ戻ろうとしたら、リビングの明かりがついていることに気付いた。

 そういえば下に来たときも明るかった気がする。電気の消し忘れだろうかと何気なく近づいて、かすかに香るにおいに違和感を覚えた。

 香水の匂い。初めて嗅ぐ匂い。西山は香水なんてつけないから、いったい誰が――。

 固まっていたら肩を叩かれ飛び上がった。

「あぁ、ごめん。驚かせたかな?」

 振り向くと、大柄な男が一人立っていた。柔和な笑みを浮かべる男は西山にとてもよく似ていた。後ろへ撫でつけた髪や、落ち着いて余裕のある笑みは別人だが、目尻の優しさや、凛々しい眉と顎の形はそっくりで、父子なのだと初対面の俺でもすぐにわかった。

 西山の親父さんは仕事帰りなのかワイシャツにスラックスのままだった。

 いったいいつ、帰って来たのだろう。熱を出して寝込む息子を心配して、帰宅してすぐ部屋に様子を見に行ったかもしれない。

「あ、俺――僕、えっと」

 自分がシャツにパンツ姿だと思い出し、カアッと顔に熱があがった。

「恵護は元気になったようだね」

 意味深に笑みが濃くなる。やっぱり全部バレているんだ……! 羞恥が限界を超えて卒倒してしまいそうだった。
 西山の親父さんは「ふふっ」と息子そっくりな笑い方をした。

「僕にも覚えのあることだから、そんなにあたふたしなくたっていいよ」
「す、は、あ、すいません……」
「男子校にはよくあることだよ。それこそ一過性の発熱みたいなものだ。若くて経験の少ないうちはそれを本気だと勘違いしてしまうけれどね」

 笑顔のまま冷たい眼差しで射すくめられて血の気が引いた。

「君だって遊びだろう? まさか本気だなんて馬鹿なこと言わないだろうね?」

 親父さんはソファの背もたれに腰をおろし首を傾げた。俺は何も言えずに俯いた。膝が震えているのが見える。

「あれはね……、恵護はああ見えて非常に頑固でね、自分で決めたことは意地でも曲げない奴なんだ。だけど、人を傷つけられない優しい奴でもある。だから、君から恵護をフッてやってくれないかな? 君の言うことならきくと思うから。今ならまだ、ありきたりな若気の至りで済む話だよ」

 親父さんの言う通りだろう。今ならまだ笑い話で終わらせられる。

 西山に一緒に暮らそうと言われた時、そんな未来を少し想像して、あいつと一緒なら楽しいだろうなと思った。あいつが馬鹿をやって、それに俺が怒って、だけど、なんだかんだでうまくやっていけるんじゃないかって……。

 でもきっとそれは子供同士だから成立する話なんだ。現実はそんなに甘いもんじゃない。もうすでに父親から反対されている。俺の親だって、俺たちがしていることを知ったら猛反対するだろう。あれほど西山を気に入っていた母親だって、二度と会うなと言ってくるに違いない。

「恵護は女の子が好きだったはずなんだけど、君は」
「僕も、そうです」

 奥歯を噛みしめた。恥ずかしい。そして、西山を誘ったのは俺からのように言われて屈辱的だった。

「なら、未練なんか感じずに、恵護と別れられるね?」
「もともと付き合ってませんから」

 顔をあげ、西山の父親を睨む。親父さんは薄く息を飲んだ。

「そう。じゃあ、わざわざこんなこと言う必要もなかったね」
「失礼します」

 一礼して背を向ける。

「あぁ、待って」

 腕を掴んで引き留められた。

「恵護のことで困ったことがあったら連絡をして」

 と名刺入れから名刺を一枚出した。これこそ必要ねえよ。

「……お邪魔しました」

 ひったくるように名刺を受取ってリビングを出た。こめかみがドクドク脈打っていた。頭が痛い。きっと香水のせいだ。
 部屋に戻って深呼吸した。西山はベッドの上で大の字になって寝息を立てていた。

「すっきりした顔しやがって」

 学校じゃふざけたことばかりやる奴だけど、根は優しいし、めったに怒らないし、顔だっていい方だ。背も高いし、本来の身体能力は優れているほうだし、成績だって悪くない。他校の子が告白してきたこともある。男子校でなければ、きっともっとモテてただろう。

 若気の至り――――口の中で呟く。

 愛だの恋だの言ったって、卒業して身近に女がいる環境になれば西山も我に返って目を覚ます。俺がさんざん言ってきたことだ。男同士でありえないって。

 何度も肌を合わせて、何度も好きだと言われて、言葉でも行動でも好意を示され続けて、感覚が麻痺しちゃったんだな。ほだされかけてほんと馬鹿みたいだ俺。

 西山が目を覚まさないよう静かに服を着て部屋を出た。親父さんに捕まりたくなくて、それこそ尻尾を巻いて家から逃げ出した。



主従な同級生



関連記事

2015-04-01(Wed) 20:44| 楽しいお見舞い!| トラックバック(-)| コメント 4

ご挨拶

お越しくださりありがとうございます。 初めに「当ブログについて」をご一読くださいますようお願い致します。
管理人が以前、某掲示板で書いていたものをここで再利用しています。決してパクリでは御座いません。そしてお願い。GKさんの小説を保存しておられる方いましたらぜひご連絡頂けないでしょうか。いまとても読みたいのです…

お世話になってます

参加してます

惚れリンク

最新コメント

カウンター