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更新履歴・お知らせ

2017/09/08
ひとでなし2、完結

2017/09/07
ひとでなし1、更新

2017/09/02
ほんとにあったら怖い話2完結

2017/09/01
ほんとにあったら怖い話1更新

2017/07/28
コンビ愛更新、完結

2017/07/06
第二ボタン2更新、完結

2017/07/05
第二ボタン1更新

2017/05/25
ちょろくない2更新、完結

2017/05/24
ちょろくない1更新

2017/05/16
やっぱちょろい2更新、完結

2017/05/15
やっぱちょろい1更新

2017/02/11
メリクリあけおめ2更新、完結

2017/02/10
メリクリあけおめ1更新

2016/11/14
義父の訪問更新、完結

2016/10/27
覗き2更新、完結

2016/10/26
覗き1更新

2016/10/22
終わらない夜2更新、完結

2016/10/21
終わらない夜1更新

2016/10/16
凹の懊悩2更新、完結

2016/10/15
凹の懊悩1更新

2016/09/28
可愛さも憎さも百倍2更新、完結

2016/09/27
可愛さも憎さも百倍1更新

2016/09/22
利害の一致2更新、完結

2016/09/21
利害の一致1更新

2016/09/16
楽しい記憶喪失!3更新、完結

2016/09/15
楽しい記憶喪失!2更新

2016/09/14
楽しい記憶喪失!1更新

2016/09/13
楽しい同棲!2更新、完結

2016/09/12
楽しい同棲!1更新

2016/09/11
Phantom15更新、完結

2016/09/10
Phantom14更新

2016/09/09
Phantom13更新

2016/09/08
Phantom12更新

2016/09/07
Phantom11更新

2016/09/06
Phantom10更新

2016/09/05
Phantom9更新

2016/09/04
Phantom8更新

2016/09/03
Phantom7更新

2016/09/02
Phantom6更新

2016/09/01
Phantom5更新

2016/08/31
Phantom4更新
リンク一件追加

2016/08/30
Phantom3更新

2016/08/29
Phantom2更新

2016/08/28
Phantom1更新

2016/08/04
嘘7更新、完結

2016/08/03
嘘6更新

2016/08/02
嘘5更新

2016/08/01
嘘4更新

2016/07/31
嘘3更新

2016/07/30
嘘2更新

2016/07/29
嘘1更新

2016/07/18
Love Scars3更新、完結

2016/07/17
Love Scars2更新

2016/07/16
Love Scars1更新

2016/07/13
行きつく先は5更新、完結

2016/07/12
行きつく先は4更新

2016/07/11
行きつく先は3更新

2016/07/10
行きつく先は2更新

2016/07/09
行きつく先は1更新

2016/07/04
電話が鳴る7更新、完結

2016/07/03
電話が鳴る6更新

2016/07/02
電話が鳴る5更新

2016/07/01
電話が鳴る4更新

2016/06/30
電話が鳴る3更新

2016/06/29
電話が鳴る2更新

2016/06/28
電話が鳴る1更新

2016/06/16
今日の相手も2更新、完結

2016/06/15
今日の相手も1更新

2016/06/08
今日の相手は2更新、完結

2016/06/07
今日の相手は1更新

2016/05/25
いおや2更新、完結

2016/05/24
いおや1更新

2016/05/14
奇跡2更新、完結

2016/05/13
奇跡1更新

2016/04/28
ターゲット2更新、完結

2016/04/27
ターゲット1更新

2016/03/02
視線の先2更新、完結

2016/03/01
視線の先1更新

2016/02/23
性癖の道連れ2更新、完結

2016/02/22
性癖の道連れ1更新

2016/02/15
DL販売お知らせ

2016/01/20
尾行2更新、完結

2016/01/19
尾行1更新

2015/12/07
遺作2更新、完結

2015/12/06
遺作1更新

2015/12/02
昼夜2更新、完結

2015/12/01
昼夜1更新

2015/11/26
大小2更新、完結

2015/11/25
大小1更新

2015/11/15
彼はセールスマン2更新、完結

2015/11/14
彼はセールスマン1更新

2015/10/22
2度あることは2更新、完結

2015/10/21
2度あることは1更新

2015/09/18
死神さんいらっしゃい2更新、完結

2015/09/17
死神さんいらっしゃい1更新

2015/09/08
Congratulations2更新、完結

2015/09/07
Congratulations1更新

2015/09/01
待田くんに春の気配3更新、完結

2015/08/31
待田くんに春の気配2更新

2015/08/30
待田くんに春の気配1更新

2015/08/11
亀の恩返し2更新、完結

2015/08/11
亀の恩返し1更新

2015/08/07
Aからのメール2更新、完結

2015/08/06
Aからのメール1更新

2015/07/06
5年後2更新、完結

2015/07/05
5年後1更新

2015/07/04
待っててね2更新、完結

2015/07/03
待っててね1更新

2015/05/11
その後3更新、完結

2015/05/10
その後2更新

2015/05/09
リクエスト小説
その後1更新

2015/05/05
待田くんに春はこない2更新、完結

2015/05/04
待田くんに春はこない1更新

2015/04/30
楽しいシーソーゲーム!2
更新、完結

2015/04/29
楽しいシーソーゲーム!1更新

2015/04/21
楽しい親子喧嘩!1
楽しい親子喧嘩!2更新、完結

2015/04/16
楽しい放課後!2更新、完結

2015/04/15
楽しい放課後!1更新

2015/04/06
楽しい合コン!2更新、完結

2015/04/05
楽しい合コン!1更新

2015/04/01
楽しいお見舞い!2更新、完結

2015/03/30
楽しいお見舞い!1更新

2015/03/24
楽しい旧校舎!2更新、完結

2015/03/23
楽しい旧校舎!1更新

2015/03/16
楽しい入院生活!2更新、完結

2015/03/15
楽しい入院生活!1更新

2015/03/05
楽しい遊園地!2更新、完結

2015/03/04
楽しい遊園地!1更新

2015/02/27
楽しいロッカールーム!2更新、完結

2015/02/26
楽しいロッカールーム!1更新

2015/02/16
楽しいOB会!2更新、完結

2015/02/15
楽しいOB会!1更新

2015/02/14
一周年!!
いつもありがとうございます!
君は日向の匂い更新、完結
シンデレラアイドルのSSです

2015/02/13
保健室の先生2更新、完結

2015/02/12
保健室の先生1更新

2015/02/11
teeth2更新、完結

2015/02/10
teeth1更新

2015/02/09
楽しい初カノ!2更新、完結

2015/02/08
楽しい初カノ!1更新

2015/01/31
楽しい勉強会!2更新、完結

2015/01/30
楽しい勉強会!1更新

2015/01/23
楽しいお泊り!2更新、完結

2015/01/22
リクエスト小説
楽しいお泊り!1更新

2015/01/08
明けましておめでとうございます!
本年も宜しくお願い致します!
リクエスト小説
両想い1、2更新、完結

2014/12/12
楽しい合宿!2更新、完結

2014/12/11
楽しい合宿!1更新

2014/12/01
アガルタ2更新、完結

2014/11/30
リクエスト小説
アガルタ1更新

2014/11/23
朝のお楽しみ2更新、完結

2014/11/22
リクエスト小説
朝のお楽しみ1更新

2014/11/14
即位式2更新、完結

2014/11/13
即位式1更新

2014/11/04
裏ドSくん3更新、完結

2014/11/03
裏ドSくん2更新

2014/11/02
裏ドSくん1更新

2014/11/01
ひみつのドSくん2更新、完結

2014/10/31
ひみつのドSくん1更新

2014/10/30
伴侶1、2更新、完結

2014/10/27
支配人3更新、完結

2014/10/26
支配人2更新

2014/10/25
支配人1更新

2014/10/24
隣人3更新、完結

2014/10/23
隣人2更新

2014/10/22
隣人1更新

2014/10/15
元上司2更新、完結

2014/10/14
リクエスト小説
元上司 1更新

2014/10/10
ニコニコドッグⅡ 2更新、完結

2014/10/09
リクエスト小説
ニコニコドッグⅡ 1更新

2014/10/04
茶番2更新、完結

2014/10/03
リクエスト小説
茶番1更新

2014/09/12
「ちょろい 2」更新、完結

2014/09/11
「ちょろい 1」更新

2014/09/08
「新雪の君」更新、完結

2014/09/06
コメントお返事させて頂きました

2014/09/05
「すばらしい日々3」更新、完結

2014/09/04
「すばらしい日々2」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/09/03
リクエスト小説
「すばらしい日々1」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/09/01
「好きと言って4」更新、完結

2014/08/31
「好きと言って3」更新

2014/08/30
「好きと言って2」更新

2014/08/29
リクエスト小説
「好きと言って1」更新

2014/08/24
「純粋に近付いた何か2」更新、完結

2014/08/23
リクエスト小説
「純粋に近付いた何か 1」更新

2014/08/15
コメントお返事させて頂きました

2014/08/14
再会2更新、完結
コメレスさせて頂きました

2014/08/13
リクエスト小説「再会1」更新
「ノビ」の続編です

2014/07/26
コメントお返事させて頂きました

2014/07/25
息子さんを僕にください2更新完結

2014/07/24
リクエスト小説「息子さんを僕にください1」更新
娘さんを僕に下さいとは無関係ですw

2014/07/22
コメントお返事させて頂きました

2014/07/20
久しく為さば須らく2更新、完結
コメントお返事させて頂きました

2014/07/19
リクエスト小説「久しく為さば須らく1」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/07/18
コメントお返事させて頂きました

2014/07/16
コメントお返事させて頂きました

2014/07/15
コメントお返事させて頂きました

2014/07/14
コメントお返事させて頂きました

2014/07/13
リクエスト小説「嫉妬せいでか2」更新、完結
コメお返事させて頂きました

リクエスト小説「嫉妬せいでか1」更新

2014/07/11
拍手お返事させて頂きました
お知らせ一件

2014/07/10
コメント、拍手お返事させて頂きました

2014/07/09
拍手お返事させて頂きました

2014/07/08
コメント、拍手お返事させて頂きました
耽溺 2更新、完結

2014/07/07
拍手お返事させて頂きました
リクエスト小説「耽溺 1」更新

2014/07/06
拍手お返事させて頂きました

2014/07/05
拍手お返事させて頂きました

2014/07/04
コメント、拍手、お返事させて頂きました

2014/07/03
コメント、拍手、お返事させて頂きました
吉原と拓海その後 2更新、完結

2014/07/02
コメント、拍手、お返事させて頂きました
吉原と拓海その後1更新しました

2014/07/01
コメントお返事させて頂きました
シンデレラアイドル2更新、完結

2014/06/30
拍手お返事させて頂きました
シンデレラアイドル1更新しました

2014/06/29
リクエスト募集してます

2014/06/27
拍手お返事させて頂きました

2014/06/24
目は口ほどに 更新、完結

2014/06/17
茶々丸更新、完結
獣姦っぽい

2014/06/11
連鎖 2更新、完結

2014/06/10
連鎖 1更新

2014/06/07
拍手お返事させて頂きました

2014/06/06
拍手お返事させて頂きました

2014/06/05
拍手お返事させて頂きました

2014/06/04
元旦那さん 2更新、完結

2014/06/03
元旦那さん 1更新
旦那さんの続きです

2014/05/29
昨日の記事の続きで拍手お返事させてもらっています

2014/05/28
旦那さん 2更新、完結

2014/05/27
旦那さん 1更新

2014/05/22
夢の時間2更新、完結

2014/05/21
アンケート1位小説「親子」
夢の時間1更新

2014/05/16
この物語はフィクションです更新、完結

2014/05/14
アンケート1位小説「教師と生徒」で先生受け。
信じて下さい更新。完結

2014/05/11
純粋とは程遠いなにか2更新。完結
ダウンロード販売のお知らせ

2014/05/09
純粋とは程遠い何か1更新

2014/05/01
長男としての責務2更新。完結

2014/04/30
長男としての責務1更新

2014/04/27
セフレ更新。完結

2014/04/21
嘘が真になる2更新。完結

2014/04/20
嘘が真になる1更新。
アンケート終了しました
投票してくださった皆さんありがとうございました!

2014/04/15
親切が仇になる2更新。完結

2014/04/14
親切が仇になる1更新

2014/04/11
家庭教師更新。完結

2014/04/09
惚れ薬2更新。完結

2014/04/08
惚れ薬1更新

2014/04/05
ニコニコドッグ更新。完結

2014/04/03
健やかなるときも病めるときも更新。完結
アンケート設置1ヶ月記念更新
回答ありがとうございます!

2014/04/02
お隣さん2更新。完結

2014/04/01
お隣さん1更新

2014/03/28
B3-17 はるか更新。完結

2014/03/27
会話の語尾は常にハートマーク更新。完結

2014/03/24
僕の居場所更新。完結

2014/03/21
兄弟愛(3/3)更新。完結

ストックを全て出し切ってしまいましたので毎日更新は今日で終わりになります。
これからは書き終わり次第更新していきますので、引き続きよろしくお願い致します。

2014/03/20
兄弟愛(2/3)更新。

2014/03/19
兄弟愛(1/3)更新。

2014/03/18
7歳の高校生更新。完結

2014/03/17
7歳の高校生更新

2014/03/16
裏の顔更新。完結
アンケート2位「教師と生徒」
少し違う感じになりました。

2014/03/15
残業も悪くない更新。完結
アンケート結果を反映させてみました。
アンケートに答えてくださった皆さんありがとうございます。引き続きお願い致します

2014/03/14
片思い更新。完結

2014/03/13
クラスの地味男更新。完結

2014/03/12
吉原と拓海更新。完結

2014/03/11
罠更新。完結

2014/03/10
同級生更新。完結

2014/03/09
目覚め更新。完結
FC2小説にて、
閃光戦士フラシュレッド!公開。完結。

2014/03/08
やってられない更新。完結

2014/03/07
地下の城ピュラタ更新。完結

2014/03/06
地下の城ピュラタ更新。

2014/03/05
部室にて更新。完結

2014/03/04
すべからく長生きせよ更新。完結

2014/03/03
秘め事更新。完結
アンケート設置。ご協力お願いします

2014/03/02
映画館にて更新。完結

2014/03/01
大迷惑@一角獣更新。完結

2014/02/28
大迷惑@一角獣更新。

2014/02/27
僕はセールスマン更新。完結

2014/02/26
俺のセールスマン更新。完結

2014/02/25
夏の夜更新。完結

2014/02/24
妄想更新。完結

2014/02/23
先生 その2更新。完結

2014/02/22
洞窟更新。完結

2014/02/21
洞窟更新。

2014/02/20
先生 その1(1-2)更新。
先生 その1(2-2)更新。完結

2014/02/19
娘さんを僕にください更新。完結

2014/02/18
ノビ更新。完結

2014/02/17
ノビ更新。

2014/02/16
1万3千円更新。完結

2014/02/15
1万3千円更新。

2014/02/14
ファンレター更新。完結

2014/02/14
ブログ始動。
「ファンレター」公開。

よろしくお願いします。

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薔薇色の日々
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楽しいお見舞い!(1/2)

楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!楽しい入院生活!楽しい旧校舎!

 学校から戻って晩飯を食べていたら、

「たまには西山くんに遊びに来てもらったら?」

 と母親がまた言い出した。

 盲腸の時以来、うちの母ちゃんは西山のことを気に入って、ふと思い出しては「西山くん、元気? 最近、遊んでるの?」と言ってくる。はいはい、と普段は聞き流すのだが、珍しく西山が熱を出して昨日から欠席していたらしいので、そのことをついポロッと漏らしてしまった。

「熱?! あら、大変! 大丈夫かしら。あ、そうだ、田舎から送ってきたイチゴ、あれ、持って行ってあげなさい」

 そう言うと母ちゃんはイチゴを取りに椅子から腰をあげた。先日箱で届いたイチゴはご近所に配ってもまだ3パック余っている。毎日食卓に並び弁当にも詰められて家族全員イチゴにはもう飽きて消費が鈍っていた。

「はい、持ってって!」

 丸々手つかずの2パックを入れた袋をテーブルに置く。

「いや、いいよ。ただの熱なんだし」
「ビタミンCが豊富なんだから!」

 だからなんだよ、風邪じゃねえんだよ。と言いたいところだが、ゲロまみれの俺を助けてくれた恩があるのは確かなので、夕飯のあとバイクを走らせ、西山の家に向かった。

 家の人か、お手伝いさんにイチゴを渡して帰ろうと思っていたのに、チャイムを鳴らして聞こえてきたのは西山の声だった。

「中根くん、どうしたの?」

 声は意外と元気そうだ。

「イチゴ。田舎から送ってきたやつなんだけど。親が持ってけって」
「いま開けるから」

 キィと自動で開いた門からバイクを押して中に入った。スエット上下の西山が玄関から出て来る。

「大丈夫か、お前」
「うん、ちょっと頭がぼーっとするけど」
「早く寝とけ」

 イチゴの入った袋を押し付け帰ろうとしたら、西山が覆いかぶさって来た。

「おいっ、熱あるんだろっ」
「ちが……ふらっとして……」

 と額に手を当てて言う。

「何度?」
「えと……さっき測ったら39度だったかな」

 思っていたより高熱だ。体を支えて玄関のなかに入った。

「家の人は?」
「いないよ」
「お手伝いさんは?」
「もう帰った」

 じゃあ今日はほんとに家に一人きりかよ。

 こんな状態の西山を見捨てて帰るわけにもいかない。仕方なく部屋まで連れて行ってやった。
 重い体をベッドに下ろす。はぁ、と辛そうに息を吐き出す西山の目はよく見ると少し充血していた。

 ベッドのそばに小さなテーブルがあり、その上に空になった食器がいくつか並んであった。お手伝いさんが作った食事だろう。平らげる元気はあるようだ。

「イチゴ、食う?」
「食べさせてくれる?」
「……今日だけな」
「じゃあ食べる」
「洗ってくるから待ってろ」

 部屋を出てキッチンへ行き、イチゴを洗って適当な皿に移してから部屋へ戻った。
 部屋に現れた俺を見て西山は弱々しく微笑む。口で息をしていて辛そうだ。こんな時に一人だなんてさぞ心細いだろう。

「病院には?」
「かかりつけの先生に来てもらった」
「薬は?」
「飲んだ」
「お手伝いさんに残ってもらえなかったのかよ」
「熱くらいで」

 と西山は笑った。

「子供じゃないんだし。それに一人には慣れてるから」

 なんて寂しいことを笑顔で言うもんだから胸が痛くなる。俺の場合は母ちゃんがずっと専業主婦で家にいたから、ちょっとの熱や風邪でもつきっきりで看病してもらっていた。盲腸で入院したときだって毎日世話をしにきてくれたし、退院したあともなんだかんだ手伝いをしてくれた。

 そんな自分と比べると、こんな広い家に一人きりで苦しんでいた西山が可哀そうになってくる。

「そんなに親がいないことは多いのか?」
「母さんは海外だし、父さんも仕事あるし」
「なんの仕事してんの?」
「母さんは国連職員で、父さんは自分の会社があるから」

 国連職員に会社経営かよ……すげえな。でもそのために小さい頃から両親不在が当たり前になり、高熱におかされても「熱くらい」と一人で耐えて過ごすなんて寂しいだろうな……。

「俺のこと、可哀そうって思ってる?」
「べっ、別にそんなこと」
「優しいね、中根くん」

 手を握られた。熱のせいかしっとりしている。

「イチゴ、食べさせて」
「あっ、ああ……」

 一個摘まんで口元へ運んでやる。頬張り、大儀そうに咀嚼する。一粒が大きいから、切ってやったほうが良かったかもしれない。

 西山は長い時間をかけてやっと一個を食べ終わった。

「切ってくる?」
「ここにいて」

 掴んだままの手を引かれた。今まで一人で本当は心細かったのかもしれないと思ったら、子供みたいなことを言うなと振り払えなかった。

「でも、でかいだろ?」
「中根くんが噛んで小さくして」
「えっ」

 渋ると西山は潤んだ目を向けてくる。捨てられた仔犬みたいな目だ。

「こっ……こういうの、ほんとに今日だけだからな」
「うん」

 途端に子供みたいに嬉しそうに笑う。
 仕方なく、イチゴを半分口に入れて歯を立てた。

「口移しで」

 さらに調子に乗った注文が追加される。睨み付けたらまた捨て犬の目で見上げてくる。あぁもう! 元気になったら覚えとけよ!

 西山は雛鳥みたいに口を開いて待っていた。ベッドに手をついて顔を近づける。腰に西山の手がまわされる。

 西山の舌がイチゴを迎えにやってきた。俺の唇を舐め、舌をかすめて、イチゴを奪って行く。

「おいしい」

 瑞々しい音を立てながら咀嚼する。濡れた唇を舐めて「もう一個」と催促してくる。

 同じことを何度か繰り返すうち、口移しはただの口づけにかわっていった。イチゴの味がする唾液を交わらせながら、舌を絡ませ、荒い息を吐き出した。

「中根くん……」

 色の付いた声で呼ばれて我に返る。西山の手はもうすでに服の中だ。

「ばかっ……お前、熱……」
「次は中根くんを食べたい」
「なに言って……ンっ!」

 脇腹を撫でていた指の先が乳首にあたった。指の腹で潰され、こねくり回される。

「んっ、ぁあ……やめ……っ」
「食べてもいい?」
「や……っ……だめ、やだ……っ」
「こんなに尖って……おいしそう」

 クニクニと指で摘まんで引っ張られる。

「ばか……やっ、あっ、やだ……ぁ……」

 服を首元までたくしあげられた。ベッドの上で体をずらした西山が胸に吸い付く。口の中で乳首を舐められ吸い上げられる。

「んあ……あっ…やっ、に……し、やまっ……!」

 胸をしゃぶりながら西山の手は下半身へ移動してジーンズの隙間から侵入してきた。直に尻を掴んで揉み上げる。人差し指が尻の中心に当たるのはきっとわざとだ。

「やっ、やめ……ろっ……ばかっ、触る、なっ……!」

 体を抱えられてベッドの上を反転する。いつの間にか俺が西山を見上げていた。

「熱、あるんだろ、お前……っ」
「好きな人がそばにいたら余計熱があがるよ」

 西山は俺の手を自分の股間に押しつけた。柔らかなスエット生地を押し上げる固くて熱い存在。

「ちょ……なに立たせてんだよ!」
「中根くんが来てくれたから喜んでるんだよ」

 腰を曲げて乳首にしゃぶりついてくる。チュウチュウと音を立てて吸いながら、器用に手を動かして俺を全裸に剥いた。あっちこっちにキスしながら徐々に西山の頭が下がっていく。

「これ、盲腸のあとだ」

 手術痕を舐められてゾクゾク震えた次の瞬間には、足の付け根に舌を這わされため息みたいな声が漏れた。

「やだ…っ……にし、やま……ぁあ……」
「触ってないのに、もうこんなだよ?」

 ふぅと息を吹きかけられた。ぶっちゃけ、イチゴを口移しで食べさせていた時から半立ちだった。それは西山も気付いているはずだ。

 竿にキスされた。食むように唇でなぞられ、チロチロと舌の先で舐められる。

「んっ、あぁっ……、あっ、あっ……」
「中根くんのって、しゃぶるのにいいサイズだよね」

 ナチュラルに男を傷つける言葉を吐きながら西山は先端を口に含んだ。熱い口腔内。熱がある病人だったと思い出す。

「あっ、や、だめ……だ……っ、西山、だめ、はなせ……!」
「いやら」
「やぅ、ん!!」

 咥えたまんま喋んじゃねえよ!

 俺の制止を聞かないで、西山はたっぷり唾液を絡めるとジュボジュボと顔を上下に揺すった。本当にしゃぶりやすいお手頃サイズなのかと思うほど、いとも簡単に根本まで咥えこみ、のどの奥で俺を締め付ける。

「あ、あっ……やだ……ぁん……んっ、んん、やだ……っ」

 射精を促すように尿道をこじ開けて啜り上げられる。自分でもカウパーが溢れて止まらないのがわかる。もう先走りなんかじゃなく、精液を垂れ流しているんじゃないだろうか。

「新しいの、買ったんだよ」
「……?」

 何かと思って頭をあげれば、西山の手に見覚えのある小さな容器が握られていた。潤滑剤だ。噛んで先端の蓋を取ると、それを俺の尻の穴に差し込む。

「やっ……あっ、やだ! にしやま……っ! や、やだって……ッ!!」

 冷たい液体が吐きだされるのを感じる。容器が抜かれたあと指が突っ込まれて中をぐちゃぐちゃと掻きまわす。指がある一点を押し込んだ。

「やぁぁっ! あっ、あ、だめ…っ…いや、だ……そこ……いやっ……!」

 指で前立腺をぐりぐりを擦り上げられて、マタタビを与えられた猫みたいに腰から力が抜ける。さらにアイスでも頬張るようにちんこもしゃぶられて声が止まらない。

「ひやぁっ、や…やだ……ぁんっ……んっ、あっ、あぁっ……っ!」

 西山の指が内壁を押し広げながら出し入れされる。ジェルと体液とでそこがすっかり潤って卑猥な水音が立つ。

「ふ、あ……あぁん……んっ…や……あ、ああ……そんな、にっ……したら……あっ……ああっ……でる……も、お……でる……っ!!」

 追い立てるように強く吸われてたまらず射精した。西山の口のなかで自分の吐きだした精液に包まれる感触がする。隙間から漏れたものが陰茎を伝い落ちていく。

 口に残ったものをごくりと飲みこんで西山は体を起こした。自分でズボンをずらし、逞しく育ったペニスを俺に見せつけるように扱く。相変わらず馬鹿でけぇ……。

 西山は俺の足を掴んで左右に開いた。その中心の窄まりに亀頭を宛がいゆっくり身を沈めてくる。





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2015-03-30(Mon) 20:02| 楽しいお見舞い!| トラックバック(-)| コメント 1

楽しい旧校舎!(2/2)

<前話はこちら>

 西山は片手で俺を抱えると、机の上の椅子を薙ぎ払い、その上に俺を座らせた。一糸まとわぬ姿で抱き合った。腹に勃起したお互いのものがくっつく。

 頭を下げた西山がそれを口に咥えた。

「あぁん! やっ……ぁあ」

 足の間で頭を動かす西山を見下ろす。俺のちんこが西山の口を出入りしている。唾液の絡む濡れた音が真っ暗な教室に響き渡る。

「あっ、あぁんっ、やだ、やっ……それ、気持ちい……っ、気持ちいいのっ! 僕、変になっちゃう……っ!」

 ぎょっとしたように西山がしゃぶりながら目をあげる。そりゃそうだ。
 舌を噛み切って死にたいと思っているのに、俺の体は勝手に動いて、西山の髪をかき乱し、腰をゆらゆら揺らした。

「あぁ……いやぁ……ん……だめ、僕、もう……イッちゃう、我慢できないっ……イッちゃうよぉ……!」

 俺のなかの誰かが西山の頭を押さえつけるように掴んで口に中に精を放った。全部を出し終えると「ここへ出して」と、西山の口元で手を受ける。

 えっ、て顔しながら西山は俺の手に生温かくてドロッとしたザーメンを吐きだした。
 どうするのかと思ったら、俺のなかの誰かは机の上で膝立ちになると後ろに手をやってそれを尻穴に塗りたくった。

「中根くん……?」

 さすがの西山も唖然としている。

「にいさんはまだでしょ? 僕のお尻の穴を使ってよ。僕の中でイッて欲しいの」

 って尻穴を弄りながら俺は言っちゃってた……。貧血おこしたみたいに目の前が一瞬真っ暗になる。恥ずかしいなんてもんじゃない。いますぐ腹を切るから誰か介錯してくれってレベルだ。

「もしかして脱法ハーブ?」

 怪訝そうに言いながら、西山の手はしっかり俺の腰を掴んでいる。尻を撫で、割れ目から奥へ指を進ませて、秘孔を探り当てると指を入れて来た。

「危ないのはやっちゃ駄目だよ」

 咎めるように言うくせに、指を出し入れしながら俺のちんこや睾丸を揉む。

「あぁっ、あっ、いや、だめ……ぇ……っ…あぁんっ」

 喘ぎながら俺は西山に抱き付いてキスをせがむ。クチュクチュ音を立てて舌を絡ませ合い、西山の体に手を這わせ、最終的に勃起した逸物を握りしめた。

「お願いっ……早く入れて…・・・・っ! これで僕をめちゃくちゃにして! ねぇ、お願い……!」
「いま入れてあげるから、足を開いて座って」

 すぐさま言われた通りの体勢を取る。恥ずかしい場所がすべて晒される格好だ。暗くて見えにくいのが唯一の救いだが、俺の顔はペンキをかぶったみたいに真っ赤になってるはずだ。

「たまにはこういうプレイもありだな」

 って呟いた西山が俺の尻を引き寄せる。掴んだ勃起の先で挿入口を探り出し、見つけるとゆっくり押し入ってきた。

「あ…っ…ひ…ぃっ…!! すご…いっ……なんて、大きいの……っ! っはぁぁ! あっ…!! あ、はぁあん……っ!!」

 俺は髪を振り乱しながら嬌声をあげ続ける。俺の乱れすぎる痴態に西山も若干引き気味だが、楽しんじゃおうという気持ちが勝って腰を振るのをやめない。

 手と足とで体を支えながら、ズンズン打ち込んでくる西山の動きに合わせて俺も腰を揺らす。

「あっ! あんっ! すご……いっ……!! 奥まで、くる……っ! ふか、い……っ……僕、壊れ……っ……ちゃうっ! んっ、気持ちいいっ、気持ちいいのっ……あはぁっ……もっ…と…奥、きてっ……! 僕のおまんこ壊してぇっ……!」

 西山が「今日の中根くん、やばい」って呟くのが聞こえた。
 頼む、このままヤリ殺してくれ……!!!!

 西山は腰の動きを激しくした。俺の尻を掴んでパンパンと打ち付ける。その勢いを支えきれずに腰を下ろすと、膝をすくいあげられた。引っくり返ったカエルのような無様な姿で奥を抉られる。

「あっ! あぁん! あっ、あっ……やぁっ……すご……ぃっ…ひ……気持ち、い……!! あっ、あんん…! 気持ちぃ……っ、に……さっ…きも、ちぃ……っ!!」
「そんなに気持ちいいの?」
「うんっ…きもち、い…っ…い、あっ、あぁんっ! いっぱ…い……奥、擦って……おっきい……おちんぽでっ……突いて欲し……のっ……ッ!」
「こんなに素直なのも、たまにはいいね」

 素直とかいうレベルじゃねえだろうが!
 実は西山の中の俺って、これを不思議に思わないくらいビッチなイメージなんだろうか……。

 俺の落ち込みをよそに、ギシアン続行中の二人は最高潮にまで上り詰める。

「あぁんっ! あっ! ゃあぁっ!! また、イッちゃ…ぅ…イッちゃうよぉ……!」
「俺もイキそ……っ……!」
「はぁっ、あん……僕に……出してっ…ねぇ…! お願……っ、出してぇ……なかに……ほ、しぃの…! にいさんの、せーし……なかに欲しいの……ッ!!!」

 なんて言いながら俺は西山に微笑みかけていた。それを見た西山が「くっ」って息を詰めて射精する。体の奥深い場所でそれを感じながら俺はまた幸福感に包まれていた。

「うれし…ぃ……僕、嬉しい……っ」

 目尻から涙を流しながら、俺もあとを追うように射精した。



 誰もいないからって素っ裸のまま廊下を移動してトイレに向かった。幸い残っていたトイレットペーパーで体の汚れを拭き取る。

 体力もあまり残ってないうえに、精神的ダメージがでかくて、俺のケツから嬉々として精液を掻きだす西山を止めることもなく、そのあとワイシャツのボタンも留めてもらった。

 射精後、体が自由に動かせるようになった。声も出る。にいさんという声も聞こえないし、寒気もなくなってむしろ暑いくらいだ。

 何から説明しようか。どう説明しようか。幽霊を信じない西山に、憑りつかれたのだと言ったって鼻で笑われるだけだろう。

 ニヤニヤしている西山を横目に、どう切り出そうか考えながら結局無言のままトイレを出た。

「そろそろ帰ろう」

 西山に促され階段を下りる。一階の窓から外へ出た。

「あのな、西山」
「ん?」

 えびす顔で西山が振り返る。腹立つわ……

「さっきの……俺じゃ、ねえから……あの教室入ってすぐ、体動かなくなって……なんか、誰かに、憑りつかれたっていうか……」
「あぁ……そういう設定?」

 案の定信じやしない。

「ほんとにっ……誰かが俺に乗り移って、勝手に……相手もほんとはお前じゃないみたいだし……だから、プレイとか、そういう勘違いだけは……っ」
「二重人格って設定?」
「ちげえよ」
「憑依病?」
「ほんとなんだってば!」

 俺が声を荒げると西山は「あははっ」と笑った。

「あれが中根くんじゃないってわかってるよ。白昼夢かと思うくらい俺の願望通りだったからね。幽霊がいるって噂を聞いて自己催眠にかかったんだよ、きっと」

 後半部分を聞いてがっくり脱力した。こいつ全くわかってねえじゃん!

「でもすごかったなぁ。いくら思い込みでも、あんなにやらしいこと言えるんだから。また言ってよ、俺のおちんぽでいっぱい突いて欲しいって」
「誰が言うか馬鹿!」

 思い出したら顔に熱が戻ってきた。見られたくなくて、足を速めた。西山が追いかけて来る。

「また旧校舎でヤッたら言ってくれる?」
「死ね! 糞山! まじで俺の前から消えろ!」
「大好きって言ってよ」

 いつの間にやら駆け出して、俺たちは部室へと戻った。

 ※ ※ ※

 後日、部員の一人が、旧校舎の幽霊について情報を仕入れて来た。

 もう何十年も昔、在学中に、交通事故で亡くなった男子生徒がいたらしい。その生徒が3年6組だったと聞いて全身に寒気が走った。俺に憑りついたのはきっとその生徒の霊だったに違いない。

 西山は無感動に「へぇ」と言うだけで、先日のアレとは結びつけていないようだ。お前を誘ったのはそいつなんだぞ! 

 視線に気づいた西山が俺を見る。少しして、「またにいさまごっこしよう」と耳打ちしてきた。頭のなかそればっかのこいつが幽霊なんか気にするわけないのだ。



凛−RIN−!



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2015-03-24(Tue) 20:27| 楽しい旧校舎!| トラックバック(-)| コメント 2

楽しい旧校舎!(1/2)

楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!楽しい入院生活!

※若干ホラー風味

 部活終わりに誰かが「旧校舎に幽霊が出るらしい」と言い出したのがきっかけだった。

 半分はそんなのはただの勘違いだと取り合わなかったが、残りの半分は自分の友達も見たとか、昔あそこで誰かが自殺したらしいとか、割と本気で信じている様子で、否定派と肯定派とでちょっとした言い合いになったとき西山が言った。

「俺が確かめて来るよ」

 と。

 夜。当然外は真っ暗。取り壊しが決まっているため電気が点かない旧校舎は言わずもがな。不気味な噂があるだけでも敬遠したいのに、日没後に足を踏み入れるだなんて正気じゃない。

 さすがに大多数は「やめておけ」とまともな意見を言ったが、一部の馬鹿が「いいぞ、それでこそ西山だ、行って来い」と焚き付けてしまった。
 制服に着替えた西山は俺の腕を掴んだ。

「中根くんも一緒に行こう」
「はあぁっ?! 行くわけねえだろ!」

 腕を振り払おうとしたが、「じゃあ、行ってくる」と部員たちに挨拶した西山に難なく引きずり出されてしまった。

「行くならお前一人で行けよ! 俺はやだよ!」
「もしかして怖いの?」

 俺を見下ろしてニヤリと笑う。
 そういえばこいつ、幽霊とかまったく信じてない奴なんだった。

「肝試しとか遊び半分でやんないほうがいいんだって」

 俺はため息をついた。

「旧校舎に行って戻ってくるだけだよ」
「祟られるのはお前一人だけにしろ。俺は入り口まで付いて行くだけだからな」
「デートみたいだね」
「呪い殺されろ!」

 というわけで、俺たちは旧校舎へと向かったのだった。



 旧校舎は木造の二階建てで、数年前まではここが3年棟として使われていたが、老朽化のため取り壊されることとなった。当然施錠されていて入れないのだが、誰かが鍵のかかっていない窓を一つ見つけて、そこから悪い奴らが出入りしているらしかった。

 その窓を探して一つ一つ確かめていたら大きな桜の下の窓がガラリと音を立てて開いた。

「ここだ」

 西山は窓枠に飛び乗って校舎の中に入ってしまった。ずっと締め切っていたせいか、窓から漏れ出てきた空気は外よりひんやりと冷たい気がした。

「じゃあ一階と二階と見てまわるから、中根くんはここで待ってて」
「わかった。気を付けろよ」
「心配してくれてありがとう」
「早く逝け」

 あはは、と朗らかに笑って西山は廊下を進んでいった。すぐに暗闇に飲まれて姿が見えなくなる。聞こえていた足音ももう届かない。
 風が吹いて頭上の木の葉がカサカサと音を立てた。肌寒さに震えが走る。

 数分が経った。西山は戻ってこない。

「西山」

 窓から呼びかけたが返事はない。

「西山っ」

 少し大きな声を出したが応えはない。

「西山!」

 怒鳴ると「どうした?」と少し離れたところから西山の声がした。足音が戻ってきて西山の姿もどんどん近づいてきた。

「どうしたの、中根くん」
「もういいだろ、戻ろうぜ」
「まだ一階を見ただけだよ」
「なにもなかったって言やいいじゃん」
「嘘は駄目だろ」

 すぐ裸になってちんこ出すくせに変に真面目なんだから。

「だったら俺も行く」
「怖いの?」
「寒いんだよ!」

 窓枠に乗りあがって廊下に下りた。風はないのに、やっぱり中のほうが空気が冷たい気がする。
 二階への階段をあがっていたら西山が手を繋いできた。

「なにする」
「寒いんだろ」

 西山の大きな手はカイロのように温かかった。俺たち以外誰もいないし、別にいっか。

 階段の右手に教室、左手にはトイレがあった。トイレだけは絶対入りたくないので外で待つ。西山は平気な顔してトイレに入って行くと、バタンバタンと一個ずつ個室を開けて確かめていた。やっぱり神経が図太いんだと思う。

「なにもない」

 戻ってくるとそう言ってまた俺と手を繋ぐ。暖を取るだけじゃなく、俺は心細さから西山の手を握り返した。

 次は反対側の教室のほうへ向かった。一組から順に扉に手をかけて開くか確かめる。鍵がかかっているので窓ガラスから中を覗く。椅子を乗せた机が教室の後ろで固められている。

 二組も同様。五組まで確認して六組で扉がガラッと開いた。俺と西山は顔を見合わせた。さすがの西山も神妙な面持ちだ。

「入ってみよう」

 教室の中に足を踏み入れる。埃っぽさと黴っぽい臭いがする。長く誰も立ち入っていないとわかる澱んだ空気。

 急に悪寒がして鳥肌が立った。ここは他の場所より一段と空気が冷たい。嫌な予感がしたとき、遠くから耳鳴りがやってきた。その直後、ズシリと肩が重くなった。

 まるで誰かを背負ったみたいに。

 ――ニイサン。

 鼓膜のすぐそばで声がした。背筋が凍る。西山の声ではない。もちろん俺の声でもない。教室の中にいるのは俺たち二人だけ。じゃあ一体誰の声だというんだ。

 全身の毛が逆立ち鳥肌が立った。早くここから出たい。こんな場所一分一秒だって長くいたくない。

 西山の腕を引こうとして愕然とした。体が動かない。首さえ動かせない。まさか金縛りだっていうのか?! 起きて立っているのに?!

 足の裏に根が生えたようにびくともしない。呼吸は出来ているのに胸が苦しい。助けて。助けて、西山!

「特にかわったところもないな」

 金縛りにあっていない西山は、あたりを見渡したあと「次行こうか」と俺に向き直った。

 また「ニイサン」と耳の奥で誰かが囁いた。怖い! にいさんって誰だよ!!!!

「中根くん?」

 動かせる目だけで必死に助けを訴えかける。動かずじっと見て来る俺に西山は首を傾げた。

「もしかして俺を怖がらせようとしてる?」

 ちげえよ! 俺の異変に気付け馬鹿!

「それとも……俺を誘ってる?」

 目つきをかえて西山は笑った。こいつぶん殴ってやりてえええぇぇっ!!!

「興奮してるのは俺だけだと思ってたのに」

 俺の顎に手をかけると上を向かせる。さっきまでピクともしなかった体が、西山が軽く力を入れただけですんなり動いた。この調子で他の場所も、と動かそうとしてみたが無駄だった。

 そうこうしている間に、こんな状況にもかかわらず興奮して盛る西山にキスされていた。柔らかく、温かい唇の感触。目に見えない鎖から解き放たれたように体が軽くなった。

「にいさん」

 声は俺の声だった。声は俺の口から出ていた。

「にいさん?」

 西山が怪訝そうに俺を見る。その目を見ていたら胸が締め付けられた。痛くて痛くてたまらなくて涙が溢れて来た。

「大好き」

 そう言って俺は西山に抱き付いていた。

「中根くん?!」
「大好き! 大好き! お願い、僕を強く抱きしめて。めちゃくちゃに抱いて。お願い!」
「どうしちゃったんだよ、中根くん?!」

 ほんとどうしちゃったの俺?! 西山を見てたら胸がズキズキと痛くなって、気が狂いそうなほど愛おしくなって、気が付いたらあんなことを口走っていた。

「僕を忘れた? 僕のこと嫌いになった?」

 西山の首にしがみついたまま、ボロボロ涙を流して叫ぶ。

「ええっ……?!」

 西山もかなり混乱しているようだ。俺も何がなんだかわからない。金縛りが解けたと思ったら、今度は自分が自分じゃないみたいになったのだ。これじゃまるで別人……。

 再び、全身総毛だった。まさか俺、旧校舎の幽霊に憑りつかれたんじゃ?!

「お願い、僕を抱いて、抱いてよ!」

 こんなことを必死に西山に頼むだなんてそうとしか考えられない。つうか、なんてこと言わせてくれてんだよぉぉぉっ!!

「中根くん、まさか薬キメてる?」

 んなわけあるか! しかしそう疑われても仕方ない豹変ぶりだろう。

「そういうプレイ?」
「早くっ……して……!」

 俺じゃない俺に見つめられて、西山はごくりと咽喉を鳴らした。

「中根くんがそんなに欲しがるなんて、初めてだね」

 西山はすっかり勘違いして嬉しそうに笑いやがった。否定したいが俺の体は勝手に動いて西山の口に唇を重ねている。あとで誤解を解くのに骨が折れそうだ……。

 水音を立ててキスしながらお互いの服を脱がせ合う。はだけた俺の胸に西山が吸い付いた。

「あぁ……んっ」

 俺じゃないのに俺の口から甘ったるい声が出た。

 頭の中でずっと「ニイサン、ニイサン」と誰かが呼び続けている。愛しさと、哀しみと、嬉しさと、申し訳なさと……いろんな感情が渦巻いている。

 いまや幽霊と一心同体となった俺は、『彼』が誰かを強く想っていたことに気付く。おそらく相手は男で、「ニイサン」と呼ぶところを見ると年上、もしかすると血の繋がった兄弟だったのかもしれない。

 西山を見ていると胸が締め付けられる。こんなに愛おしい。肌を合わせられることが嬉しくてたまらない。触れられるだけで幸福感に包まれる。俺が西山に抱く形容したがい感情と、霊の想いがリンクしているのかもしれない。



仕方ないミーくん



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2015-03-23(Mon) 20:29| 楽しい旧校舎!| トラックバック(-)| コメント 3

楽しい入院生活!(2/2)

<前話はこちら>

 触れ合った西山の唇は柔らかい。ぷっくりした唇が開くと同時に中から舌が入り込んでくる。
 深く挿し込まれて、さっき西山が食べていたチョコ菓子の味が移って来た。甘い。俺からも舌を絡めた。

 西山の体が一回り大きくなったような気がした。全体から雄の匂いが立ち上がってくる。興奮しているのが伝わってくる。
 乾いていた唇がお互いの唾液で濡れるほど、何度も角度をかえてキスをした。

 トレーナーをたくしあげて西山は手を入れて来た。無骨だが温かい手が俺の体を労わるように優しく肌の上を滑る。

「……ンッ」

 乳首に指が当たった。指の腹で円を描くように周囲をなぞられて勝手に息が跳ねる。
 弾かれたり挟まれたりすると小さな声が漏れたが、それは全部西山の口のなかに吸収された。

「ふっ…っ…ん、んん……ッ」
「静かにね」

 俺の耳に口をつけて囁くと、西山ははだけた胸元に吸い付いた。強く吸われて細かい針で刺されたような強い刺激にぎゅっと目を瞑った。

「んっ!」

 肉厚な舌で押しつぶすように捏ねくりまわされた。もどかしそうな甘噛みによって下腹部がジンジン熱を持ち始める。そこが濡れそぼっているのがわかる。西山の熱い息遣いが俺の呼吸まで乱れさせた。

 西山の手がズボンのゴムを持ち上げて中に入ってきた。傷口に触れぬよう慎重に遠回りをして股間に辿りつく。

「ん…あ、ちょ……おい…っ」
「痛かったら言ってね」

 また耳に声を吹き込むと、パンツのなかで窮屈そうにしている俺のものを握った。

「あ、ぁっ……!」

 当然ながら盲腸になってから今日まで自慰はしてこなかった。だから久しぶりの雰囲気と直接的刺激に、西山を止める手に力は入らなくて、ただ添えているだけだ。

「退院は明日だっけ?」

 手で扱きながら普通の会話を始めやがる。だけどその目はすっかり発情しきった雄の目だ。

「う、ん」
「俺も来ていい?」
「来るな…ぁ…ッ」
「意外に早い退院だね。あっ、腹腔鏡手術って入院期間が短くて済むんだっけ」

 こくこく頷く。

 ズボンの中では西山の手が動き続けている。亀頭はもう先走りでヌルヌルだ。先端を揉まれるとくちゅくちゅ、といやらしい音がかすかに聞こえるほど。

「傷跡も小さくて済むんだろ? 治ったら見せてよ。そういえば下の毛は剃った?」

 セクハラ高校生を睨み付けた。

「剃って……ねぇ、よ……、産毛、だけ……」
「中根くん、体毛薄いもんな」

 熱い息を吐き出しながら舌なめずりすると、西山は大きな手で俺の口を塞いだ。それと同時にズボンをずり下げて先端を口に含む。

「ン――ッ!!」

 静かに、というように西山が横目で俺を見る。だったら病院のなかでこんなことおっぱじめるんじゃねえよ!

 溢れるカウパーをちゅちゅと啜り上げ、準備運動するみたいに亀頭部分を口の中に入れたり出したりして徐々に深く咥えて行った。

「んんっ、んふぅ…ッ…! ん! んんっ!」

 気道確保さえ怪しいほど西山の手がしっかり口を塞いでくれているので声は漏らさずに済んでいるが、西山の咽喉の奥深く、根本まで粘膜に包まれた時は腰が蕩けてどうにかなってしまいそうだった。

「んぅっ……ンッ、んっ、んん……っ!」

 西山が顔を上下に動かすたびに、ぐちゅ、ぐちょ、ぐぼって音がする。

 隣からしわぶきが聞こえてぎょっとした。わざとか? 気付いてんのか?!
 確か隣の人はイヤホンを繋いでテレビを見ていた。聞こえていないはずだが……実は聞き耳立ててんのかも。

 もうひとりの相部屋の人はさっきから物音ひとつしない。寝てるか起きているのかもわからない。もし起きていたら、こちらの妖しげな気配に勘付いてるかも。

 そんなことに動揺も頓着もしない西山は唾液を絡めて激しくしゃぶりあげる。もうプロの称号を差し上げたいほど絶妙なフェラテクだ。あっという間に限界がきた。

「っ! あふっ、んんっ! んっ、んんぅっ……!」

 ビュルッと飛び出したザーメンを西山は難なく飲み干した。最後のお掃除フェラまでやってから顔をあげ、俺の口から手を退けた。

「わ、ごめん、力入れ過ぎたみたい。口許、赤くなっちゃってる」
「はぁッ…はぁ……はぁ……ばか、おまえ、ほんとばか」
「ごめんごめん」

 って笑いながら俺にキスしてくる。今度はチョコ味じゃなく、精液の味が口の中に広がる。西山は毎回これを飲んでいる。

 俺がゲロにまみれた汚い体だろうと躊躇なく抱き上げて、自分の上着が汚れるのも厭わず敷物がわりに使ってくれた。俺のちんこをしゃぶって、くそまずい精液を飲むのも、西山曰く「俺のことを本気で全部を愛して」くれているからなんだろう。でなきゃただの友達同士であんなこと無理だ。

 愛とか。男同士なのに。愛とか。こっちが恥ずかしくって赤面することを西山は平然と口にするから参る。
 俺はそんなの人に言われたことないから、免疫なくてどうしていいかわからないってのに。

「退院して元気になったら続きしよう」

 キスのあと、鼻をこすり合わせたまま西山が言ってくる。
 うん、って返事してやってもいいかなって思っちゃった俺相当やばい。助けられたことにかなり恩義感じちゃってんだな。一時の感情ってやつに流されて承諾したらあとでとんでもないことになりそうだったから、「いやだ」って返事をしておいた。

 だってどうせ俺が拒否ったところで最後にはやることやっちゃうんだし。

※ ※ ※

 来るなと言ったのに西山は翌日もやってきた。好青年みたいな顔して俺の母親と談笑中だ。なので俺が帰り支度をしなければならなかった。一応手術したばっかなんですけど。

 三人で病室を出た。母ちゃんが会計に行き、俺たちはソファで待つことにした。

「お前、なんで来るんだよ」
「お母さん一人じゃ大変だろうと思って」
「お母さんて言うな」
「このあと一緒にご飯どうぞって誘われてるんだけど、いいよね?」

 いつの間に!

「母ちゃんの前で絶対くっついてくんなよ」
「もちろん。今は気に入ってもらえるようにいい子でいるよ」

 やけに西山がニッコニコなのでなんだか嫌な予感がした。

「お前、なに考えてる?」
「息子さんをくださいって挨拶しに行く日がくるかもしれないだろ。だから印象良くしておこうと思って」
「おっ、お前なに言ってんの?! 誰がお前のもんになるか!」
「中根くんも長男なんだよね。そこはおいおい二人で考えよう」

 長男とかおいおい二人でとかまったく意味がわからない。こいつどこまで本気でこんなこと言ってるんだ? まさか全部本気? 何年先まで俺たちの関係が続くと思ってるんだ?! 

 心臓に蔦が這うような苦しさが胸を締め付ける。指先どころか髪の先まで西山に絡め取られるイメージが頭に浮かび、西山の本気を少し見くびっていたことに俺はやっと気付いた。





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2015-03-16(Mon) 20:41| 楽しい入院生活!| トラックバック(-)| コメント 2

楽しい入院生活!(1/2)

楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!楽しい遊園地!

※未挿入

 両親が毎年恒例の結婚記念旅行に出かけた。その間の食費と雑費として、一万じゃ少ないとごねてなんとか二万をせしめた。

 姉は友達のところに泊まるらしいので、家には俺一人。一人パラダイスを満喫してテレビ見放題、ジュース飲み放題、ゲームし放題。

 二万もあるし初日の夜は同じクラスの友達を誘ってファミレスで食事をし、そのあとカラオケに移って朝まで歌った。

 二日目の午前中、腹痛で目が覚めた。カラオケでも飲み食いしたのでそのせいだろうと考えて、トイレで腹のなかのものを出してまた眠った。

 午後。遅めの昼食のカップラーメンを食べていたらまたお腹が痛くなってきた。腹を抱えてトイレに駆け込む。あらかた出したはずなのにまだ痛みが続く。脂汗が浮かぶ。

 芋虫のようにソファの上で丸まって、悪いものでも食べたのかと食事の内容を反芻して気を紛らわせながら過ごした。
 まだ痛み続けるのでトイレに籠ってみたが、ケツがヒリヒリと痛むだけで何も出ない。痛みだけが居座り続ける。

 夕方になって西山から電話がかかってきた。こんな時に、と無視しようと思ったが、そうすると出るまでしつこいので仕方なく電話に出た。

『いま一人なんだって?』

 昨日遊んだ奴らから聞いたんだろう。面倒臭いやつに知られてしまった。

『遊びに行ってもいい?』
「来るな」
『……なんか具合悪そうな声だけど、どうかした?』
「腹が痛えだけだよ」
『大丈夫? 薬飲んだ?』
「なにも飲みたくねえ」
『やっぱり心配だから行くよ』

 こちらの返事を聞かずに西山は通話を切ってしまった。舌打ちする元気もない。来るなと行ってもどうせ無駄だろうから、先に玄関へ行って鍵を開けておいた。勝手に入れとメールをしてソファに寝転がる。

 なんだか熱っぽい気がする。風邪だろうか。お腹にくる風邪があるらしいし。
 無理矢理眠ろうと目を閉じる。ウトウトしても痛みのせいで目が覚める。そんなことを繰り返していたら、また激しい痛みの波がやってきてトイレに座った。

 いきなり嘔吐した。マーライオンのように口から大量の吐しゃ物が噴き出る。向きをかえる間もなかったので、トイレの床に吐き散らした。

 慌てて便器に顔を近づけ、立て続けに吐いた。ゲロと涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。
 そんなときに西山がやってきた。メールを見たようで「お邪魔します」と言いながら中に入ってくる。

「中根くん?」

とリビングのほうから声がする。俺を探して家を歩き回ったあと、トイレをノックした。

「中根くん、いる?」

 返事をする気力も言葉も見つからず、トイレの扉を撫でた。小さな物音に気付た西山が、「開けるよ?」と扉を開け、なかの惨状に息を飲む音が聞こえた。

「大丈夫?!」

 しゃがみこんで俺の体を支える。

「俺、汚ねえから……」
「なに言ってるんだよ」

 トイレットペーパーをカラカラ巻き取り、俺の顔を拭う。

「動かすよ」

 俺を抱き上げて臭気のこもるトイレから連れ出してくれた。あ、俺、パンツあげてねえ。

 俺を膝に乗せたまま器用に上着を脱いでソファに置くと、その上に俺を寝かせた。その時下げたままのパンツを無造作に引き上げてくれた。

「待ってて」

 リビングを出てどこかへ行き、バケツを持って戻って来る。

「吐きたくなったらここに吐いて」

 とソファの下に置いてまたどこかへ消え、今度はタオルを持って戻って来た。キッチンで濡らしたタオルで俺の顔や首、手を拭く。

「ん……っ」

 西山の手を払いのけてバケツに顔を突っ込む。ゲェゲェ吐いている間、背中をさする西山の大きな手が心強かった。
 またゲロにまみれた俺の顔を拭くと、西山は二階から着替えを持ってきた。床に膝をついて俺の前髪をかきあげる。

「食中毒かな?」
「わかんねえ……風邪かもしれねえし……」
「まだお腹痛い?」
「痛い」

 痛む場所に手を当てる。それを見て西山は顔つきをかえた。

「そこってもしかして盲腸じゃないか?」

 盲腸?!

「いつから痛い?」
「今日の朝……9時くらい」
「もうすぐ10時間だよ。立てる?」
「むり」
「救急車呼ぼう」
「えっ」
「俺が付きそうし、家の人にも連絡するから」

 そう言うと西山は本当に119に電話をかけた。

 救急車を待つ間に、俺の携帯から親に電話をし、またゲロを吐いた俺の始末をしたついでに着替えも手伝ってくれた。

「もう少しだから頑張れ」

 そう言って額に軽いキスをしたあとは、トイレの掃除に向かった。西山の言葉と存在に今日ほど安心したことはない。

※ ※ ※

 西山は今日も見舞いにやってきた。こいつのおかげで痛みから解放されたと言っても過言ではないので無下に来るなとも言えない。

 あのあと救急車が到着し、近所の人がやじ馬で見に来るなかストレッチャーで運ばれて、診察と検査のあと翌朝手術と決まった。

 西山から連絡を受けた俺の親は旅行先からすっ飛んで帰って来た。西山に礼を言って名産品の土産を手渡し、なぜか俺は「ほんとに馬鹿なんだから!」と理不尽な叱られ方をした。

 全身麻酔だったので眠っている間に手術は終わり、ちんこにはカテーテルが挿入されていた。翌日見舞いに来た西山がそれを見てにやにやと笑った。

 入院2日目にカテーテルを抜いてもらった。経験したことのない激痛に耐えた俺の気も知らないで、西山はそれを残念がった。ちんこもげて死ね。

 点滴ばかりでまともに西山の相手をする体力もなかったが、病院食が始まってから徐々に復活して、西山と軽口を叩きあい、一緒に売店へ行けるまでになった。

 つまめるお菓子とお茶を買って病室に戻る。四人部屋でベッドは三つ埋まっている。
 俺は窓側。廊下側のお隣さんはイヤホンをつけてテレビを見ている。廊下側のもう一人は寝ているのかカーテンを引いていて見えない。

 傷口が痛むのでまだ大きな動きはできない。西山の手をかりてベッドにあがった。

 よろけて手をついた拍子に部室の壁をぶち破ったことのある西山が、その有り余るエネルギーで傷つけてしまわないよう注意しながらそっと俺を横たえて布団をかけてくる。
 いつも大雑把な力配分をしている西山には神経を使う作業だったろう。

 ゲロまみれのトイレから俺を救い出したときも、西山は大きな体に似つかわしくない細やかな対応をしてくれた。ソファを汚さないよう自分が着ていた上着を下に敷いたり、バケツを置いたり、顔を抜いてくれたり、トイレ掃除をしてくれたり。

 まず、電話の声だけで具合が悪そうだと気付いてくれた。来るなと言ったのに心配だと駆けつけてくれた。
 俺一人だったら、風邪か食い物にあたっただけだと病院に行こうなんて考えなかっただろう。

 あのまま我慢し続けていたら盲腸が破裂していたかもしれない。盲腸でも死ぬ場合があると聞いたことがある。西山は命の恩人と言うわけだ。 

「西山」
「ん?」

 いつかきちんと言わなきゃと思っていた。でも気恥ずかしくてなかなか言いだせなかった。

「あのさ……、今回は、ほんとに助かった。色々やってくれて……ありがとう……」

 西山がびっくりした顔で俺を見る。あんま見るな。傷痕痛むくらい恥ずかしいんだから。

「あと、ジャケットも弁償するから」
「クリーニングに出したからいいよ」
「他人のゲロがついたのなんか嫌だろ」
「中根くんのだから嫌じゃないよ」
「なんで……平気なんだよ。普通汚れたら嫌だろ」
「愛する人のゲロだったら平気でしょ。むしろやつれて弱ってるレアな中根くんを見られたし、ご褒美って感じだったけど」

 愛する人とかしれっと言うなよ。ていうか人が苦しんでるときになんてこと考えてたんだ。

「ト、トイレも、掃除してくれて……ありがと」
「しおらしい中根くん、かわいい」
「っせえ、タコ」
「中根くんのほうがタコみたいに真っ赤だけど」

 クフッと吹き出して西山が顔を近づけてくる。あ、と思ったけど、よけることが出来なかった。

 カーテンを引いているとは言え、すぐ隣に人がいるのに、ベッドに手をついて体重を乗せてくる西山に合わせて角度を調整していた。




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2015-03-15(Sun) 18:59| 楽しい入院生活!| トラックバック(-)| コメント 1

通販開始のお知らせ

(一ヶ月ほど上にくるよう記事を固定させておきます。)

販売が始まりましたのでお知らせに参りました!
こちらからどうぞ。

もっと時間がかかると思ってたのに意外とすんなり書店委託の審査が通ったので一周年より先に販売開始です^^

sample1.jpg

「不埒な短編集」
A5/オンデマンド/総ページ48
本体価格500円+税。
配送料はとらのあなさんにてご希望の発送方法でご確認下さい。

短編
「酒は飲んでも飲まれるな」
  …酔いからさめたら知らない男とヤッてた
「現実はコントより奇なり」
  …コントの練習してたら相方とヤッてた
「僕の救世主」
  …人生に悲観したら同居人とヤッてた

の三本です。


続きにサンプル置いておきます。良かったら読んで下さい。



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2015-03-06(Fri) 21:08| お知らせ・コメントお返事| トラックバック(-)| コメント 2

楽しい遊園地!(2/2)

<前話はこちら>

 息を潜めて待っていたら、服の上を西山の手が動き出した。隙間から侵入して地肌に触れてくる。冷てえっ!

「やめろ」

 声は出さずほとんど息遣いだけで西山に言う。西山は駄々っ子みたいに首を振って手を這わせる。脇腹を触られてビクッと体が跳ねた。

「…っ…ばかっ」
「聞こえちゃうよ」

 耳で囁かれる声にもゾクゾクして思わず西山のダウンジャケットを掴んだ。
 こんなふうに直接触られるのは久し振りで、感度が増して敏感になっているようだった。
 前にまわった手の先が乳首にあたる。

「んっ!」

 電気が流れたみたいに刺激が駆け抜けた。自分でも乳首が立ちあがるのがわかる。

「やだ、やめ……ッ」
「中根くん、すごくエロい顔してる」

 足の間に西山の太ももが当てられた。押さえつけるように揉まれてそこが固くなる。

「やっ……ぁあ……」
「声聞かれるとますいから」

 ってキスしてくる。レロッと舌が入ってきて、唾液たっぷりの濃厚なディープキスでクチュクチュ音が漏れる。

 幸い個室の外から水を流す音が聞こえてきた。ほっとする俺の股間に西山の手が伸びる。布越しに先をトンと叩かれて腰骨にビリビリと快感が走り抜けた。

「ふぅっ……んんっ!」
「祐太? 大丈夫か?」
「!! 大丈夫……ッ!! 外で、待っててッ」
「わかった。辛かったら言えよ」

 足音がトイレから出て行く。完全に聞こえなくなった。俺は西山を睨み付けた。

「この……バカッ」

 思い切り怒鳴りたいのを我慢して小声で罵倒する。小さく肩をすくめるだけの西山に反省した様子はない。それどころか興奮しきった顔で外に出した俺のちんこを上下に扱いている。

「中根くんも興奮した? 先っぽ、グチョグチョだよ」
「お前が足で押すからだろっ」
「口でやってあげるよ」
「えっ、あ、わっ」

 その場に屈むと西山は躊躇いなく俺のを口に含んだ。濡れた先を綺麗にするように広げた舌で舐められる。

「う、ん……あ……っ」

 亀頭を舐めまわしたあと、のどの奥まで咥えこんで竿を絞られる。練習試合が終わって二週間、西山は俺に指一本触れてこなかった。その間俺は自己処理だけで済ましてきた。右手なんかじゃ味わえない感触が俺のものを包み込む。

「んんぅ…あっ…や……西山ぁ……あぁ、ん……」

 ジュルジュルと唾液の音を立てながら西山の顔が前後に動く。耳まで犯されているような錯覚に陥って体温が上がった。

「あっ、あっ、や、だぁ……もう……出る……西山、出ちゃうから…っ…はなしてっ……くち、もう、やっ、やだっ」

 さらに速度を増してしゃぶる。痛いほどペニスが充血している。

「いや、だっ……西山、おねが……いっ……も、いくっ…いくから、ぁ……っ!」

 ドクンと下腹部で弾けたそれを西山は口で受けとめた。ビクビク足を震わせる俺を見上げて先っぽを啜り上げる。

「ひぅ……んんっ!」

 射精後の強烈な刺激に腰が抜けそうになった俺を支えながら立ち上がると、西山は自分の手に精液を吐きだした。ドロリと白い液体が糸を引く。

「中根くんは先に出てて」
「お前は……?」
「俺はちょっと」

 西山は綺麗な手で前をくつろげると、精液まみれの手で勃起した自分のものを握った。耳を塞ぎたい卑猥な音を立てながらグチグチと扱きはじめる。

 こいつまじで変態……っ!

「中根くんの引いた顔、けっこう好き」

 俺の顔見ながら手動かしてんじゃねえよ!!

 逃げるように個室を出た。手を洗いながら耳を澄ませば西山の荒い息遣いが聞こえてくる。急いでトイレをあとにした。



 日が落ちて、外は暗くなっていた。矢神を探すと少し離れたベンチに座っている。俺を見つけると腹具合を心配してくれる。嘘に心が痛むが大丈夫だと言ってトイレから離れた。

 最後に観覧車に乗ろうと誘われた。「男二人で?」と問えば「そうだ」と頷く。仕方なく、男女のカップルが多い列に並んだ。男二人は俺たちしか見当たらない。

 係員が開けたドアから観覧車に乗り込んだ。そういえば観覧車に乗るのも、遊園地に来たのも、中学の修学旅行で行った以来だ。

 ゆっくり上がっていくゴンドラの中から外の景色を見下ろす。

「今日は楽しかった」

 前に座る矢神が言った。

「試合の勝敗で賭けごとをするのは気が引けたが、いまは勝てて良かったと思ってる」
「うん、俺も楽しかったよ」
「てっぺんに来た時にキスしたカップルはうまくいくそうだ」
「へっ」

 いきなり何を言い出すんだ。
 矢神は立ち上がると俺の隣に腰をおろした。

「キスしてもいいか、祐太」
「や、矢神……」
「俺は本気だ」
「無理だよ」
「西山に遠慮しているのか?」
「そんなわけねえだろっ」
「あいつは心配そうにこっちを見てるぞ」
「えっ」

 逸らされた矢神の視線を辿っていくと自販機の後ろからこちらを窺う大きな体が見えた。確かにあれは西山に間違いない。

「気付いてたのか?」
「あんな目立つのに付け回されたら嫌でも気付くさ」

 矢神は苦笑した。トイレで会うまで気付かなかった俺は鈍いのか?

「あいつか俺か、選んで欲しい」
「選ぶとか……矢神も西山もそういうんじゃねえし……」
「そういうんじゃない西山とあんなことをするのか? だったら俺にもキスくらいしてくれてもいいじゃないか」

 矢神に手を握られた。

 確かに西山とは恋愛感情なしでキス以上のことを何度もしてしまっている。だったら矢神とキスしたって……いや、やっぱ無理だ。矢神と西山は違う。俺は矢神を汚したくないと思ってる。矢神との友情に不純なものを持ち込みたくないんだ。

「矢神とは、純粋に友達でいたい……」

 これがいかに残酷な申し出かわかっている。矢神を振った上、友達として続けたいと言っているんだから。
 矢神は無言だった。二人とも黙ったまま、ゴンドラは頂点を通過した。

「俺は」

 地面が近くなった頃矢神が口を開いた。

「小さい頃からプロ野球選手になるのが夢だった。それを実現させるために死にもの狂いで努力してきたつもりだ。俺は諦めない。祐太が俺を好きになってくれるまで、努力し続ける。西山には負けない」

 真顔からふっと柔らかな笑顔になると、矢神は立ち上がり様、俺の手の甲にキスをした。

「!!」
「さぁ、降りるぞ」

 矢神は平然と言うと先にゴンドラをおりた。

「俺は先に帰るから祐太はあいつと帰ってやれ」

 腕時計を時間を見ながら矢神は言った。あいつとは西山のことだ。

「なんで?」

 そんな敵に塩を送るような真似を。

「余裕があるって演出をしたほうがあいつも焦るだろう? 恋愛にも駆け引きはつきものだ。どうせなら完封して勝ちたいんでね」

 俺が女の子なら一発で恋に落ちそうな笑みを残して矢神はスタスタと帰って行った。客観的に見たら矢神の完全勝利だ。西山が勝てるところなんて体格くらいか。

 キョロキョロ見渡すと植木に隠れようとして隠れきれない西山を見つけた。

「おい、もう隠れなくていいぞ」
「矢神くんは?」
「帰った。お前と帰ってやれってさ」
「矢神くんっていい奴だな」

 送られた塩に素直に喜んで感謝しちゃってる。矢神の心理戦は空振りに終わったようだ。

「観覧車から丸見えだったぞ、お前」
「そういえば矢神くんとキスしたの?」
「?!」

 なんでそれを……?!

「頂上でキスした恋人とはずっとうまくいくって噂があるんだ。デマだけどね。だって俺、前の彼女と別れたし」

 こいつ観覧車のてっぺんでキスしたことあるのかよ。

「で、矢神くんとキスしたの?」
「してねえよ」
「俺としようよ」
「デマなんだろ」
「検証しよう」
「絶対嫌だ」

 気付くと西山は以前の西山に戻っていた。やっぱりもう少し落ち込んでいて欲しかったかも。

「なんで、俺と矢神のデート止めなかったんだ?」
「止めたかったよ。でも俺は一点しか取れなかったから。それに、デートしたら矢神くんの目が覚めるかもしれないし」
「どういう意味だコラ」

 目が覚めるどころか、諦めないと言われたんだぞ。

「中根くんのことを本気で全部愛せるのは俺だけだよ」

 愛とか言うな。西山のふくらはぎに蹴りを入れる。俺の方が痛いとかどういうことだ。

「これからどんどん好きって言う」
「言うなっつってんだろ」
「照れる中根くん、可愛い」
「殺すぞ」
「凶暴なところも好きだ」
「死ね」
「愛情の裏返しだってわかってるから」
「ジェットコースターに轢き殺されろ」
「観覧車でチューしよう」
「帰る」
「じゃあホテル行こう」

 何を言っても無駄だとわかって口を閉ざした。隣に西山が並ぶ。仕方ねえ奴。頬が緩む。

 西山に見せない顔で笑ってたって言うけど、俺、矢神には見せない顔、けっこうお前に見せてると思うんだけど?





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2015-03-05(Thu) 20:43| 楽しい遊園地!| トラックバック(-)| コメント 3

楽しい遊園地!(1/2)

楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!楽しい初カノ!楽しいOB会!楽しいロッカールム!

※未挿入

 待ち合わせの時間より十分早くついたのに、矢神はもう先に来ていて俺を見つけると手をあげた。

 坊主頭が目立つ。うちの野球部は頭髪に関しては長すぎなければOKという規則でよく他校の生徒から羨ましがられる。でも俺は坊主頭のほうが高校球児っぽいし、なにより楽そうでちょっと憧れる。丸刈りにする勇気はないけど。

「いつ来た?」
「さっきだ」

 矢神は満面の笑顔。嘘かほんとかよくわからない。

「今日は? どうする?」
「遊園地に行こうと思ってる」

 矢神は鞄から二枚のチケットを取り出した。男二人で遊園地デートですか。今更ながら恥ずかしくて顔が火照る。

 先日の練習試合、情けないことに3対11で7回コールド負けを喫した。「命がけで投げる」という言葉通り、矢神は最初から気迫溢れるキレッキレの投球で、甲子園の決勝戦かというほど鬼気迫る様子に、チームメイトも攻守にわたってをエースを支えて勝利に貢献した理想的な形となった。

 女マネの前で負かしてやろうというゲスな下心を持ったうちが勝てるはずもない。

 試合終了後、必死に監督にアピールしてなんとか副捕手としてメンバーに名を連ねた西山の絶望に満ちた顔はいま思い出してもなんとも言えない気持ちになる。

 うちが取った3点のういち1点は、なんと野球センスゼロの西山が、いつもは汚れることのないユニフォームをスライディングで土まみれにしながら、泥臭くもぎ取った貴重な一点だったのだ。

 奇跡に近い一点を取っただけに、西山の落ち込みようは目もあてられないほどだった。
 いつものような明るさは消え、むやみに脱がなくなり、堂々とした背中を丸め、隅っこを選んで歩いた。

 負けた責任でも感じているのか、俺を見てもたまにしか話しかけてこないし、デートに行くなとも言ってこない。あれから一度も「ヤラせて」と迫ってもこないから重症だ。
 おとなしくていいけど。
 とは言え、カビでも生えそうなジメジメした空気でいられるのもいい加減鬱陶しいのだが。

「なにを考えてるんだ? あいつのことか?」

 電車を乗り継ぎやってきた遊園地で、ついボーッとしてしまったらしい。矢神が顔を覗きこんできた。

「西山は関係ねえよ」
「西山とは言ってないがな」
「あ」

 矢神は困ったように微笑む。ごめんと謝るのも違うような気がして俯いた。

「責めたわけじゃない。悪かった」

 と俺の頭を撫でた。犬かよ。

「どうしてあいつとあんなことをするようになったんだ?」

 それを訊いて来るか。

「合宿の……その場のノリで……」
「ノリ……」

 矢神がショックを受けてる。

「俺だって好きでやられたわけじゃ」
「本当に嫌ならきっぱり断らないと駄目だぞ」
「わかってるよ」
「祐太は案外流されやすい質のようだからな。俺がキスしたときも拒まなかった」

 思い出させんなよ。まともに顔、見れなくなるだろ。

「今日は俺とデートしているんだ。他の男のことは頭から追い出してくれ」

 矢神は俺の腕を掴むと「あれに乗ろう」と絶叫マシーンを指さした。まじで?!



 絶叫マシーンでフラフラになったあと激流下りで服を濡らし、休憩に入った店で軽い食事をとった。店を出てまたアトラクションを梯子して、俺が疲れたと音を上げれば、「これくらいなんだ」とアイススケートに連れて行かれた。

 中学のころを思い出して純粋に楽しかった。デートという名目でなければ気の合う友達と遊んでいるのとかわらない。

 恋愛と友情の違いはなんだろう。同性の場合、なにをもって判断すればいいんだろうと考えていたら、へっぴり腰の俺の両手を掴んだ矢神に「祐太にキスしたくなってきた」とリンクの真ん中で囁かれて、これか、と納得した。

 共学で、可愛いマネージャーもいて、エースできっとモテるだろう矢神が俺なんかを好きだと言うのは、男子校にいて身近に女がいない西山の場合とはわけが違う。勘違いや性欲の暴走ではないのだ、きっと。

 本当に、なんで俺なんかを。
 不思議に思って矢神を見つめていたら、「キスしていいのか?」ときかれて我に返った。

「いいわけねえだろ」
「残念だ」

 俺の手を引いてスイスイと滑る。野球だけじゃなくスケートもうまいなんて知らなかった。

「矢神って彼女いたことねえの?」
「ない」
「まじで。モテるだろ?」
「たった一人に好きになってもらえればそれでいい。好きになってもらえるよう努力して、その結果、何人かに告白はされたが断った」

 そのたった一人ってもしかして俺のことか……? 確かめるのが怖いので黙って足を動かした。手摺りに捕まったら「まだまだ」と連れ出される。部活か。

 一時間ほど滑ったあとやっとリンクから出た。いつの間にか夕暮れで辺りが暗くなり始めていた

「ちょっとトイレ行ってくる」
「体が冷えたな。俺は温かい飲み物を買っておくよ」

 矢神は売店へ、俺はトイレに向かった。

 小便を済ませ手を洗う。手許から鏡に視線を移して心臓がとまるかと思った。鏡に映る大きな体。暗い表情の西山が映っていた。

「お――まえ、びっくりするだろ! なんでこんなことにいるんだよ?!」

 振り返ると同時にぎゅっと抱き付いてきた。ダウンジェケットが冷たい。

「おい、西山っ」
「つけてきた」

 ボソッと呟く。大きなため息が出た。

 試合に負けてから毎日さりげなく予定を訊かれていた。デートの日を探るためだとわかっていた。隠すようなやましいところはないので、正直に答えていたがまさかここまでつけてくるとは。

 俺たちが遊びまわっているあいだ、こいつはずっと見張っていたんだろうか。みんなが笑顔になるはずの楽しい遊園地で、男のデートを見張って一人コソコソしていたなんて想像するのも哀れな姿だ。

「馬鹿なことしてんじゃねえよ」
「スケートもうまいってあの男、何者」

 恨みがましい口調。手とり足とり教わっていたのもしっかり見ていたらしい。

「中根くん、楽しそうだった」
「そりゃまぁ……遊びに来たんだし」
「中根くんてこう言っちゃなんだけどモテないほうだし、口は悪いけどどっちかっていうとおとなしいタイプだし、俺以外、誰も好きにならないって安心してたとこがあるんだ」

 言いたい放題だな。

「矢神くんはY高のエースだし、寄ってくる女はたくさんいるはずなのに、なんでそんな奴が中根くんを好きだって言うのさ」

 俺もそう思うけど。

「俺は時間をかけて中根くんに好きになってもらおうと思ってたんだ。なのに矢神くんは、俺が少しずつ詰めてた距離を、祐太ってたった一言で飛び越えて行った。中根くんも俺に見せない顔して笑ってた。前にあいつとなんかあったの? 俺としてるようなこと、あいつとしてたのか?」
「するわけねえだろ」
「ほんとに?」

 至近距離から見つめられた。西山の目は充血して赤い。

「ほんとだ」

 その目を見返しながら頷いた。真偽を確かめるようにしばらくじっと目を見たあと、西山は大きく息を吐き出してまた俺に抱き付いた。

「気長に構えてる場合じゃないってわかったから、俺もこれから遠慮しないことにしたから」
「お前の場合はちょっと遠慮しろ」

 俺が焦って言うと西山はふふっと笑った。

「矢神くんが別の高校でよかった」
「だな。人としてお前の方が劣ってるもんな。あいつはスカウトが見に来るくらい実力があるし、有言実行だし、人格者だし」
「酷いよ」

 さっき俺をこき下ろしておいてなに甘えたこと言ってるんだ。仕返しだ。
 トイレの外で足音が聞こえた。西山も気付いたらしく顔をあげ、解放してくれるのかと思いきや俺を個室に連れ込んだ。

「おい」
「静かに」

 鍵をかけてまた俺に抱き付く。
 足音が中に入ってきた。

「……祐太? いるのか?」

 外から聞こえたのは矢神の声だった。西山を見上げると、声のしたほうを睨むように見ている。ふざけてなければ凛々しい顔つきなのに。

「いるよ、ここ!」

 無視するわけにもいかないので声をあげた。逃がすまいとするように西山の腕に力がこもる。

「遅いからどうしたのかと思って」
「悪い。ちょっと、腹壊して」
「そうか。大丈夫か?」
「平気。すぐ行くから、外で待っててくれよ」
「わかった」

 矢神はすぐには出て行かなかった。トイレのなかを足音が移動して、チャックを下げる音がする。用を済ましてから行くつもりらしい。





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2015-03-04(Wed) 20:53| 楽しい遊園地!| トラックバック(-)| コメント 0

ご挨拶

お越しくださりありがとうございます。 初めに「当ブログについて」をご一読くださいますようお願い致します。
管理人が以前、某掲示板で書いていたものをここで再利用しています。決してパクリでは御座いません。そしてお願い。GKさんの小説を保存しておられる方いましたらぜひご連絡頂けないでしょうか。いまとても読みたいのです…

お世話になってます

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