楽しいシーソーゲーム!(2/2)
2015.04.30.Thu.
<前話はこちら>
部室の壁にかかっている時計を見る。後輩たちが戻ってくるまで二十分もない。何かの用事で誰かがここに来る可能性だってある。なのに俺たちは止めることが出来なかった。
キスしながらお互いの服を脱がせあった。
西山の手が俺の肌の上をすべり、乳首を指でこね回す。全身が痺れたようになる。
「ん、あっ」
「ここ、触られるの好きだよね」
ふふっと笑った西山が俺の胸に吸い付く。口のなかでねっとりと蹂躙されて思わず西山の頭を掻き抱いた。
「やぁ……あ、あっ」
「こっちも、もう、こんなだ」
緩めた前から西山の手が忍び込み直接俺のものを握った。触られる前から完立ちだ。少し扱かれただけでもうイキそうになる。
「ん、や、やめ……出ちゃう、からっ」
「先走りがすごいよ、祐太。口でやってあげようか?」
「や、いやだ……っ」
「どうしてやなの? フェラ好きでしょ?」
西山は余裕のある目を俺に向ける。なんかもう全部お見通しって感じだ。むかつきから胸がつかえる。だけど、素直になりたいって思うから、俺はそのつかえを取っ払って口を開くのだ。
「お、お前で、イキてえから……や、だ……」
俺が顔真っ赤にしながら言った言葉に、西山は軽く目を見張って息を吸い込んだ。
「祐太がかわい過ぎて別人みたいだ」
「死ね馬鹿」
「なに言われても全部かわいい」
「早くちんこ入れろ」
「それはちょっと萎える」
とか言うけど、西山の股間にそびえ立つものは全然萎える気配がない。今日も血管ビキビキだし、凶暴なまでに極太だし、嘘みたいにカリ高だし、西山が2、3回扱いただけでまだムクムクと育っていくし。寝てる子起こすなよ。
「ベンチの上に横になって」
言われてベンチに寝そべる。
「膝、持ってて」
言われた通りにしてから、これすっごい恥ずかしい格好だと気付いた。子供におしっこさせる時の体勢だ。それを一人で、自分でやっているのだ。高3にもなって!
「西山、はやく……っ」
西山の目に俺のあらゆるところが見えている。はやく隠して欲しいのに、西山はカウパーを亀頭に馴染ませながら、薄く息を吐き出した。
「…………祐太を一生、部屋に閉じ込めていられたらいいのに」
「な、なに言ってんだよ」
「さっきは二番目でもいいって言ったけど、やっぱ嫌だよ。祐太を誰にも渡したくない。誰の目にも触れさせたくないって思っちゃったんだ」
自嘲するように笑い、西山は覆いかぶさってきた。俺の体中に唇を押し付けながら、指を中に入れてくる。中で指を回したり、関節を曲げたりして筋肉を解している。
「ひう、う……んぁ……」
「彼女にもそんな顔見せてるの?」
「彼女……?」
あぁ、遥のことか、と気付くと同時に思い出したくない記憶が甦って来た。
ライブのDVDを貸してあげると呼び出されて遥に会いに行った。暇だから映画でもと誘われ、そのあと軽く食事をした。これってデートみたいだなと思ったとき、思わず「俺たちまだ付き合ってないよね?」と遥に確認してしまった。頬を赤く染めた遥に「まだだよ」と言われて、つい「良かった」と本音が漏れた。
怒って帰った遥から、それ以来、なんの連絡もない。毎日きていたラインもピタリとやんだ。
「付き合ってねえ、し…っ…」
「毎日連絡してるんだろ?」
「もう、してねえよ」
「どうして?」
「俺はモテるタイプじゃないって……お前が…っ…言ったくせに……」
「だって意外にモテるんじゃん」
意外は余計だろうが。
クスリと笑った西山が俺の前立腺をゴリゴリと押し込む。腰から力が抜けていく。
「…っ…う、あっ……あ、や…ぁ……っ」
「誰かのものにもなっちゃ駄目だよ」
「なん……ねぇ……よ……!」
「そんなのわからないだろ。すごく不安だ。怖いよ」
「ふぁ……あっ……俺は……お前の、もん、だろ……っ?!」
目を見開いたと思ったら、西山は顔を伏せて肩を震わせた。
「……西、山……?」
「――――っあぁ……やっばい……イキそうになった」
と顔をあげて苦笑する。俺はその頬に手を添えた。
「イクなら、お、俺ん中にしろ、よ」
「祐太、デレすぎ……!」
抱き付いてきた西山は洪水になるほどのキスの雨を降らしながら指を抜いた場所に熱い怒張を宛がった。
「充分に慣らしてないから辛いかも」
「いい……時間っ……中途半端はお前も、嫌、だろ」
「後輩が戻ってきても、俺は最後までやるけどね」
ふふっと笑って腰を押し進めてくる。こいつならやりかねない。いや、そういう実績を今まで築いてきた男だ、きっとやるだろう。
興奮の裏で焦りが生じる。早いとここの馬鹿イカせねえと。
西山の首に手をかけて引き寄せる。自分からキスしたのはこれが初めてだった。驚いた気配を感じながら舌を入れたら倍の力で吸い込まれた。西山の口のなかで絡まり、唾液まみれになる。
「んぅ…んっ……あ、はぁ……あ……っ」
「きつくない?」
たぶん半分が収まったくらいで、西山が声をかけてきた。
「へい、きっ……ぁ……んっ……だから、はやく……もっと、奥、きて……っ」
「そんなこと言われたら祐太のこと滅茶苦茶にしたくなるよ」
俺に覆いかぶさってきながら、西山は膝の裏に手を当てるとぐいと頭のほうまで押し上げて来た。俺の尻がほぼ真上を向く。その上から西山が蓋をするように腰を打ちこんできた。俺のなかを異物がゴリッと擦り上げる。
「ん、ぁああ……っ……あっ、あぁっ」
「どう? 奥まで届いた?」
「と……どいた……っ」
「根本まで、祐太のなかに入ってる。わかる?」
「わかるっ……おく、まで……きてる……っ」
この体勢でキスを求められた。膝が俺の顔の横にまで届く。きつい体勢だ。でも俺は必死に唇を突き出して、西山の舌を吸っていた。
「動いて大丈夫?」
「早く、うごい、て……!」
西山が体を浮かしたので圧迫感がなくなった。俺のなかにある熱い強直が蠢いているのがわかる。ゆっくりと引いて、ゆっくり押し戻ってくる。
「んあぁっ、あっ、や……やぁ……んっ」
「祐太のなか、すごく熱いよ。気持ちいい?」
「…っ…んっ……いい……、気持ち、い……っ」
「どこらへんが?」
ゆっくりとじれったいほどの抜き差しを繰り返しながら楽しげに問うてくる。
「はぁ…ンッ……にしやまが……こすってる、とこ……全部……きもちい……!」
「俺のこと好き?」
口調をかえず、今まで一度も聞いてこなかったことを訊いてきた。目を合わせると顔は笑ってはいるが目は真剣だ。
また胸がつかえた。のどが詰まった。たった一言を送りだすのがこんなに困難だなんて。
「好き?」
返事の遅い俺に、西山が少し不安げに首を小さく傾ける。
俺は口を開いた。息を吸い込んで、今までずっとのどの奥で留まっていた言葉を声にした。
「好きに……決まってんだろ……!」
そしたらなぜか涙まで零れてきて、西山をぎょっとさせてしまった。
「祐太?!」
「お前……ずっと俺のそばにいろよ!」
「いるよ!」
「離れたら許さねえからな」
「離れないよ!」
二人とも同時に顔を寄せ合って唇を重ねていた。
俺のなかをまさぐりながら西山の手が胸を撫でる。腰を動かして奥を押し開く。
「あ…はぁ、んっ……あ、そこっ……やだ……!」
「ここだよね」
驚異的な厚さのカリが俺の前立腺をゴリゴリと刺激する。かと思いきや、極太の竿で全体を擦り上げられて、絶妙な緩急に射精感が押し寄せてくる。
「んあっ! 西山! あっ、あん! や、だっ……もう、それ……待っ……て……!」
「イキそう?」
コクコクと頷く。
「前、触ってないのに?」
「…っ…や、あっ、あ……っ、も……で、る……ッ!」
快感が波紋みたいに全身に広がって、もう止められなかった。なんの刺激も与えられていないのに俺は射精していた。
「イッちゃったね」
まだタラタラと吐き続ける俺のちんこを西山が握った。最後の一滴を絞り取るみたいに手を動かす。
「やめっ……触んな!」
「ほんとに中に出していいの?」
「いいっつってんだろ……いつも、駄目って言っても出すくせに」
「じゃあ、少し急ぐよ」
言われて時計を見るともういつ部員が返ってきてもおかしくない時間だった。
「きつくなった」
呑気に西山は笑う。
「馬鹿っ、早くイケよ!」
「もうデレ終わり? 早いなぁ」
って言いながら西山は腰を動かした。もうすっかり大きさに馴染んでいる。でも動かれると予想以上の範囲を擦られて改めてそのでかさを実感する。
摩擦で滲み出た腸液がグチョグチョと音を立てる。イッたばかりなのに、奥を擦られてまた火が広がる。
「はぁ……あ、あぁっ……」
「かわいい、祐太」
「眼科、行け…っ……の、ばかっ……んあぁ、あっ、や……!」
「祐太のなか、あったかい」
「お前も、熱い……!」
「……もうすぐイキそう」
「……なかっ……西山ぁ……!」
「わかってる。全部、祐太にあげる」
西山の腰の動きが激しくなった。浮き上がりそうになる俺の体を手で押さえながら叩き込んでくる。
全身で西山を受け入れているような感覚に陥って頭が真っ白に溶けていった。
「あっ! あぁ! きもちい……! 気持ちいい、西山ぁ……!! も……っと、して……!! おく……欲し……ぃっ!」
「いっぱいあげるよ」
「あっ……や、だ、なんでっ……また、あっ、うそ……俺、イッちゃ……っ!!」
西山が「一緒に」って俺の手を握った。大きな手を握り返して、体をビクビク震わせながら俺はまた射精した。ほとんど同時に体の奥で西山が爆ぜる。
熱い迸りが俺の最奥で跳ね返った。
換気のために窓を全開にして、急いで服を着た直後、後輩たちが部室に戻って来た。
俺たちを見た後輩が「どうしたんですか?」と不思議そうに言うのを「ちょっと」とかわしてそそくさと部室を出る。
途中で園とすれ違った。すれ違い様、園が挑発的な目を俺に向けてくる。その目をまっすぐ見返した。
「お前にはやらねえぞ」
「今だけですよ」
相変らず憎たらしいことを言う一年だ。
校舎に向かって歩いていたらチャイムが鳴った。
「お前先行ってろ。俺、トイレ行くから」
「あ、俺も手伝うよ」
見ると西山は満面の笑顔。自然とため息が出る。
「お前ほんと、変態な」
「祐太に会って目覚めたんだよ」
「俺のせいかよ」
「そうだよ」
「じゃあ手伝わせてやる」
「うんっ」
「変な気起こすなよ」
「もう起こしてる」
さわりと尻を撫でられて、驚いた拍子にさっき中出しされたものが漏れ出た気がする。西山を睨み上げると、待ち構えてたみたいに顔がすぐ近くにあって、止める間もなくキスされた。
「ばっ……かっ!」
「誰も見てないよ」
確かに校舎の外れだから誰もいない。
「だったら、ちゃんとやれよ」
西山の腕を掴んで、踵をあげた。
部室の壁にかかっている時計を見る。後輩たちが戻ってくるまで二十分もない。何かの用事で誰かがここに来る可能性だってある。なのに俺たちは止めることが出来なかった。
キスしながらお互いの服を脱がせあった。
西山の手が俺の肌の上をすべり、乳首を指でこね回す。全身が痺れたようになる。
「ん、あっ」
「ここ、触られるの好きだよね」
ふふっと笑った西山が俺の胸に吸い付く。口のなかでねっとりと蹂躙されて思わず西山の頭を掻き抱いた。
「やぁ……あ、あっ」
「こっちも、もう、こんなだ」
緩めた前から西山の手が忍び込み直接俺のものを握った。触られる前から完立ちだ。少し扱かれただけでもうイキそうになる。
「ん、や、やめ……出ちゃう、からっ」
「先走りがすごいよ、祐太。口でやってあげようか?」
「や、いやだ……っ」
「どうしてやなの? フェラ好きでしょ?」
西山は余裕のある目を俺に向ける。なんかもう全部お見通しって感じだ。むかつきから胸がつかえる。だけど、素直になりたいって思うから、俺はそのつかえを取っ払って口を開くのだ。
「お、お前で、イキてえから……や、だ……」
俺が顔真っ赤にしながら言った言葉に、西山は軽く目を見張って息を吸い込んだ。
「祐太がかわい過ぎて別人みたいだ」
「死ね馬鹿」
「なに言われても全部かわいい」
「早くちんこ入れろ」
「それはちょっと萎える」
とか言うけど、西山の股間にそびえ立つものは全然萎える気配がない。今日も血管ビキビキだし、凶暴なまでに極太だし、嘘みたいにカリ高だし、西山が2、3回扱いただけでまだムクムクと育っていくし。寝てる子起こすなよ。
「ベンチの上に横になって」
言われてベンチに寝そべる。
「膝、持ってて」
言われた通りにしてから、これすっごい恥ずかしい格好だと気付いた。子供におしっこさせる時の体勢だ。それを一人で、自分でやっているのだ。高3にもなって!
「西山、はやく……っ」
西山の目に俺のあらゆるところが見えている。はやく隠して欲しいのに、西山はカウパーを亀頭に馴染ませながら、薄く息を吐き出した。
「…………祐太を一生、部屋に閉じ込めていられたらいいのに」
「な、なに言ってんだよ」
「さっきは二番目でもいいって言ったけど、やっぱ嫌だよ。祐太を誰にも渡したくない。誰の目にも触れさせたくないって思っちゃったんだ」
自嘲するように笑い、西山は覆いかぶさってきた。俺の体中に唇を押し付けながら、指を中に入れてくる。中で指を回したり、関節を曲げたりして筋肉を解している。
「ひう、う……んぁ……」
「彼女にもそんな顔見せてるの?」
「彼女……?」
あぁ、遥のことか、と気付くと同時に思い出したくない記憶が甦って来た。
ライブのDVDを貸してあげると呼び出されて遥に会いに行った。暇だから映画でもと誘われ、そのあと軽く食事をした。これってデートみたいだなと思ったとき、思わず「俺たちまだ付き合ってないよね?」と遥に確認してしまった。頬を赤く染めた遥に「まだだよ」と言われて、つい「良かった」と本音が漏れた。
怒って帰った遥から、それ以来、なんの連絡もない。毎日きていたラインもピタリとやんだ。
「付き合ってねえ、し…っ…」
「毎日連絡してるんだろ?」
「もう、してねえよ」
「どうして?」
「俺はモテるタイプじゃないって……お前が…っ…言ったくせに……」
「だって意外にモテるんじゃん」
意外は余計だろうが。
クスリと笑った西山が俺の前立腺をゴリゴリと押し込む。腰から力が抜けていく。
「…っ…う、あっ……あ、や…ぁ……っ」
「誰かのものにもなっちゃ駄目だよ」
「なん……ねぇ……よ……!」
「そんなのわからないだろ。すごく不安だ。怖いよ」
「ふぁ……あっ……俺は……お前の、もん、だろ……っ?!」
目を見開いたと思ったら、西山は顔を伏せて肩を震わせた。
「……西、山……?」
「――――っあぁ……やっばい……イキそうになった」
と顔をあげて苦笑する。俺はその頬に手を添えた。
「イクなら、お、俺ん中にしろ、よ」
「祐太、デレすぎ……!」
抱き付いてきた西山は洪水になるほどのキスの雨を降らしながら指を抜いた場所に熱い怒張を宛がった。
「充分に慣らしてないから辛いかも」
「いい……時間っ……中途半端はお前も、嫌、だろ」
「後輩が戻ってきても、俺は最後までやるけどね」
ふふっと笑って腰を押し進めてくる。こいつならやりかねない。いや、そういう実績を今まで築いてきた男だ、きっとやるだろう。
興奮の裏で焦りが生じる。早いとここの馬鹿イカせねえと。
西山の首に手をかけて引き寄せる。自分からキスしたのはこれが初めてだった。驚いた気配を感じながら舌を入れたら倍の力で吸い込まれた。西山の口のなかで絡まり、唾液まみれになる。
「んぅ…んっ……あ、はぁ……あ……っ」
「きつくない?」
たぶん半分が収まったくらいで、西山が声をかけてきた。
「へい、きっ……ぁ……んっ……だから、はやく……もっと、奥、きて……っ」
「そんなこと言われたら祐太のこと滅茶苦茶にしたくなるよ」
俺に覆いかぶさってきながら、西山は膝の裏に手を当てるとぐいと頭のほうまで押し上げて来た。俺の尻がほぼ真上を向く。その上から西山が蓋をするように腰を打ちこんできた。俺のなかを異物がゴリッと擦り上げる。
「ん、ぁああ……っ……あっ、あぁっ」
「どう? 奥まで届いた?」
「と……どいた……っ」
「根本まで、祐太のなかに入ってる。わかる?」
「わかるっ……おく、まで……きてる……っ」
この体勢でキスを求められた。膝が俺の顔の横にまで届く。きつい体勢だ。でも俺は必死に唇を突き出して、西山の舌を吸っていた。
「動いて大丈夫?」
「早く、うごい、て……!」
西山が体を浮かしたので圧迫感がなくなった。俺のなかにある熱い強直が蠢いているのがわかる。ゆっくりと引いて、ゆっくり押し戻ってくる。
「んあぁっ、あっ、や……やぁ……んっ」
「祐太のなか、すごく熱いよ。気持ちいい?」
「…っ…んっ……いい……、気持ち、い……っ」
「どこらへんが?」
ゆっくりとじれったいほどの抜き差しを繰り返しながら楽しげに問うてくる。
「はぁ…ンッ……にしやまが……こすってる、とこ……全部……きもちい……!」
「俺のこと好き?」
口調をかえず、今まで一度も聞いてこなかったことを訊いてきた。目を合わせると顔は笑ってはいるが目は真剣だ。
また胸がつかえた。のどが詰まった。たった一言を送りだすのがこんなに困難だなんて。
「好き?」
返事の遅い俺に、西山が少し不安げに首を小さく傾ける。
俺は口を開いた。息を吸い込んで、今までずっとのどの奥で留まっていた言葉を声にした。
「好きに……決まってんだろ……!」
そしたらなぜか涙まで零れてきて、西山をぎょっとさせてしまった。
「祐太?!」
「お前……ずっと俺のそばにいろよ!」
「いるよ!」
「離れたら許さねえからな」
「離れないよ!」
二人とも同時に顔を寄せ合って唇を重ねていた。
俺のなかをまさぐりながら西山の手が胸を撫でる。腰を動かして奥を押し開く。
「あ…はぁ、んっ……あ、そこっ……やだ……!」
「ここだよね」
驚異的な厚さのカリが俺の前立腺をゴリゴリと刺激する。かと思いきや、極太の竿で全体を擦り上げられて、絶妙な緩急に射精感が押し寄せてくる。
「んあっ! 西山! あっ、あん! や、だっ……もう、それ……待っ……て……!」
「イキそう?」
コクコクと頷く。
「前、触ってないのに?」
「…っ…や、あっ、あ……っ、も……で、る……ッ!」
快感が波紋みたいに全身に広がって、もう止められなかった。なんの刺激も与えられていないのに俺は射精していた。
「イッちゃったね」
まだタラタラと吐き続ける俺のちんこを西山が握った。最後の一滴を絞り取るみたいに手を動かす。
「やめっ……触んな!」
「ほんとに中に出していいの?」
「いいっつってんだろ……いつも、駄目って言っても出すくせに」
「じゃあ、少し急ぐよ」
言われて時計を見るともういつ部員が返ってきてもおかしくない時間だった。
「きつくなった」
呑気に西山は笑う。
「馬鹿っ、早くイケよ!」
「もうデレ終わり? 早いなぁ」
って言いながら西山は腰を動かした。もうすっかり大きさに馴染んでいる。でも動かれると予想以上の範囲を擦られて改めてそのでかさを実感する。
摩擦で滲み出た腸液がグチョグチョと音を立てる。イッたばかりなのに、奥を擦られてまた火が広がる。
「はぁ……あ、あぁっ……」
「かわいい、祐太」
「眼科、行け…っ……の、ばかっ……んあぁ、あっ、や……!」
「祐太のなか、あったかい」
「お前も、熱い……!」
「……もうすぐイキそう」
「……なかっ……西山ぁ……!」
「わかってる。全部、祐太にあげる」
西山の腰の動きが激しくなった。浮き上がりそうになる俺の体を手で押さえながら叩き込んでくる。
全身で西山を受け入れているような感覚に陥って頭が真っ白に溶けていった。
「あっ! あぁ! きもちい……! 気持ちいい、西山ぁ……!! も……っと、して……!! おく……欲し……ぃっ!」
「いっぱいあげるよ」
「あっ……や、だ、なんでっ……また、あっ、うそ……俺、イッちゃ……っ!!」
西山が「一緒に」って俺の手を握った。大きな手を握り返して、体をビクビク震わせながら俺はまた射精した。ほとんど同時に体の奥で西山が爆ぜる。
熱い迸りが俺の最奥で跳ね返った。
換気のために窓を全開にして、急いで服を着た直後、後輩たちが部室に戻って来た。
俺たちを見た後輩が「どうしたんですか?」と不思議そうに言うのを「ちょっと」とかわしてそそくさと部室を出る。
途中で園とすれ違った。すれ違い様、園が挑発的な目を俺に向けてくる。その目をまっすぐ見返した。
「お前にはやらねえぞ」
「今だけですよ」
相変らず憎たらしいことを言う一年だ。
校舎に向かって歩いていたらチャイムが鳴った。
「お前先行ってろ。俺、トイレ行くから」
「あ、俺も手伝うよ」
見ると西山は満面の笑顔。自然とため息が出る。
「お前ほんと、変態な」
「祐太に会って目覚めたんだよ」
「俺のせいかよ」
「そうだよ」
「じゃあ手伝わせてやる」
「うんっ」
「変な気起こすなよ」
「もう起こしてる」
さわりと尻を撫でられて、驚いた拍子にさっき中出しされたものが漏れ出た気がする。西山を睨み上げると、待ち構えてたみたいに顔がすぐ近くにあって、止める間もなくキスされた。
「ばっ……かっ!」
「誰も見てないよ」
確かに校舎の外れだから誰もいない。
「だったら、ちゃんとやれよ」
西山の腕を掴んで、踵をあげた。

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楽しいシーソーゲーム!(1/2)
2015.04.29.Wed.
<楽しい合宿!→楽しいお泊り!→楽しい勉強会!→楽しい初カノ!→楽しいOB会!→楽しいロッカールム!→楽しい遊園地!→楽しい入院生活!→楽しい旧校舎!→楽しいお見舞い!→楽しい合コン!→楽しい放課後!→楽しい親子喧嘩!>
※完結!
5回戦敗退、8強入りも果たせずに俺たちの夏は終わってしまった……。
高校野球が終わった寂しさを噛みしめる間もなく中間試験が始まり、受験生だという現実を嫌というほど眼前に突き付けられた。
たまに息抜きで野球部に顔を出し、グラウンドの隅っこでキャッチボールなんかをさせてもらいながら、来年こそは甲子園に行ってくれと練習する後輩を眺めたりした。
「恵護さん、俺のボール受けてくれませんか!」
西山を見つけた園が隙を見つけては声をかけてくる。
「それは俺じゃなくて捕手の奴に言えよ」
「恵護さんだって捕手じゃないですか!」
「俺は補欠だし、それに引退したんだぞ」
「関係ないっすよ! 大学行っても野球は続けるんでしょう?!」
「どうだろう?」
となぜか西山は俺の顔を見た。
「勉強もあるし、バイトもしてみたいし、いろいろ忙しくなるから野球はやらないかもしれないな」
いろいろ、という言葉が湿っている気がしてぞわぞわと尻のあたりがむず痒くなった。西山の視線と言葉だけで、あれこれ思い出して恥ずかしくなってくる。
俺はグローブで顔を隠して舌打ちした。
西山の親父さんのお許しをもらってすぐ、西山の家に呼ばれて仲直りエッチのようなものをした。
親父さんは留守なのかとか、家政婦さんはいないのかとか、どうでもよくなるくらい俺は感じまくって、よがりまくって、枯れるくらい声をあげた。
西山には何度も好きだと言われた。「愛してる」と赤面ものの台詞も囁かれた。そのたびに俺は胸をつかえさせて、照れ隠しの暴言を吐いた。
こんなのが続いたら確実にほだされてしまう。いやもう、ほだされてんのか。
エッチの最中にまた「卒業したら一緒に暮らそうよ」と西山に言われてはっきり断れなかった。別にいいんじゃねと気持ちが傾いていた。
親父さんっていう第一関門突破したところで、現実にはまだ問題山積みの関係だっていうのに。
二人でベッドの中にいるときは忘れていることも、外の世界へ一歩踏み出すと否応なしに問題が浮き彫りになる。俺たちが男同士だっていうこと。まだまだ子供だっていうこと。俺の相手は西山で、西山の相手が俺だってこと。
いつか破綻するの目に見えてるじゃん。そう冷静になったとき、親父さんに言われた言葉を思い出して、こんなの今だけだと素直になれなくなる。
一方的に浴びせられる西山の愛情に溺れそうだ。
能天天気に突っ走れる園が羨ましい。
「たまには園の相手してやれよ、俺は先に帰るから」
「えっ、祐太?!」
西山を園に押し付けてグラウンドをあとにした。着替え終わった頃、西山が部室に駆けこんできた。
「一緒に帰ろう」
「園は?」
「知らない」
とあっさり言い放つ。知らないことねえだろ。
西山は基本優しいれど、こういう切り捨て方も出来る奴なんだと気付いて、俺もいつか……と考えたらちょっと怖くなる。
「あいつ、ほんとにお前に惚れてんだぞ」
「知ってる」
あっけらかんと答えてユニフォームを脱ぐ。
「ちょっとは気持ち、考えてやれよ」
好意がないと、こうも簡単に手を振りほどいて背中を向けられるなんて辛すぎる。
つい、自分に置き換えて西山を非難したら、西山はちょっと驚いたように俺を見た。
「孝雄の気持ちを考えたらどうかなるの? おとなしく諦めてくれるの?」
「そうじゃなくてさ……高校だけじゃなくて、大学まで追いかけていくって決めてるくらいお前のこと好きなんだから、もうちょっと優しくしてやってもいいだろ」
「優しくしたら期待させちゃうじゃん。突き放しはしないけど、特別優しくする必要はないよね」
至極真っ当な意見を返される。でもちょっとドライすぎないか? 西山にとって好きな奴以外、相手にする時間ももったいない程、どうでもいい存在なのか?
そういえば合コンのあの日、今すぐ梨香と別れてくると言い出した時も、本当にみんなの前で宣言しそうな勢いだった。そんなことをされたら梨香がどれほど傷ついたことか。
それがわからない奴じゃないのに。
「お前、冷たすぎんだろ」
つい、感情に走ってぽつりと零した。西山は少しむっとしたように眉間を寄せた。
「俺が好きなのは祐太だ。そのことは孝雄にも言ってある。それでも俺を好きでいるかどうかは孝雄の自由だから、俺や祐太が気にすることじゃないと思うけど」
「待て、お前、園に俺が好きだって言ったのか?!」
「言ったよ、夏の大会の前に」
その頃の園の態度を思い出すと納得した。確かにあいつ、俺と西山の関係について断定するような言い方をしていた。
というか……後輩に知られていたなんて……!
羞恥心と怒りから体が熱くなってぶわっと全身の毛穴が開いた。
園もこいつも、どうして周りのことなんかお構いなしで、一途に盲目的に突き進めるんだよ。色々考えて悩んでる俺が馬鹿みたいじゃん。
「お前と園ってお似合いだよ」
鞄を持って部室を出ようとしたら、まだ着替え途中の西山も追いかけて来た。パンツ丸出しの馬鹿みたいな姿を見たら、自分がつまらないことにこだわる小さな人間みたいに思えて、泣きたくなるくらい情けなくて腹が立って……西山に八つ当たりしたくなったので、俺はその場から逃げ出した。
「祐太!」
西山がズボンに足を取られて走れないのいいことに、呼び止める声を無視して学校を飛び出した。
※ ※ ※
アラームの前に西山からのラインで目が覚めた。
『おはよう。昨日はごめんね』
相変らずの内容にため息が出た。
昨日部室の前で別れたあと、西山からの電話はジャンジャン鳴っていたし、メールもラインも次々送られてきていた。『どうしたの?』『怒ってる?』『ごめんね』という内容が半分。残り半分は『電話に出て』『返事ちょうだい』『心配してる』と俺の安否を気遣うものだ。
まったく俺を責めやしない。
一貫した態度にまた苛々する。秋広をいつまでも思い続ける親父さんそっくりだ。あいつもいい大人になってもまだ俺を好きだなんて言っていそうだ。
腹がグルグルする。胸がムカムカする。朝っぱらから気分が悪い。
のろのろ起き上がった頃、また西山からラインが入った。
『確かに俺が少し冷たかったのかもしれない。孝雄に優しくするよ』
自分の意思を曲げて俺に媚びた形の打開案だ。俺は自分で言い出したことなのにむしょうに腹が立って、思わずスマホをベッドに叩きつけていた。
もう朝練に出る必要もないのに、早めの時間に学校についた。教室に行ったって一人なのでグラウンドのほうへ足を向ける。
掛け声が近くなり、野球部の後輩たちが練習している姿が見えてきた。俺もあそこにいた頃は、こんな気持ちになることもなかったのに。もうすぐ受験なのにこんなんで大丈夫か俺。
ぼうっと眺めていたら園がいないことに気付いた。年中元気印の園が休みだなんて珍しい。
目を動かして探すとバックネット裏を歩く園を見つけた。その横にはなぜか西山もいる。あの大きな体は間違いない。
どうして西山が?
二人は部室のあるほうへ向かって行き、俺の視界から消えた。俺の足も、二人のいる方へと動いていた。
グラウンド側を歩くと他の部員に見つかるので中庭を抜けていく。気持ちが急いて早足になる。
こんな朝早くから二人きりでどこへ何をしに行くんだ。
『孝雄に優しくするよ』
頭には今朝のラインの内容がちらついて胸が重くなる。
西山の言うことが正しいのは俺だってわかっていた。ただ、引っ込みがつかなくなって、自己弁護するみたいに西山を責めていただけだ。
西山が絶対園を好きにならないとわかっていたから、だから優しくしろと言えた。西山が俺以外の男にまったく興味がないとわかっていたから、園がどんなにアピールしても平気でいられた。
冷たく園をあしらう西山に安心していたくせに。本当は『優しくするよ』って一言でこんなに不安になるくせに。
そのくらい、西山のことが――。
校舎を左に曲がって進んだら部室棟が見えてきた。野球部はグラウンドに近い一番端。
ほとんど小走りになって扉の前に立った。中から人の気配がする。かすかに聞こえる話し声に耳をすまし、その内容に頭の中が一瞬で茹った。
「……っ……恵護さ……」
「痛いか?」
「ちが、……ぁ……気持ち、い……」
「こら、孝雄、変な声出すなよ」
「だって……あっ、そこ……っ!」
「ここがいいのか?」
「あっ、あっ」
「こんなに硬くなるまで我慢して、馬鹿だな」
「うぅっ、あぁ……そこ、そんな、したら……恵護さんっ」
全身の血液が沸騰しそうなほどの怒りに我を忘れた。
あいつの優しくするってのは、セックスしてやるって意味になるのか?!
ふざけんじゃねええぇぇぇぇっっ!!!
「なにやってんだゴラアァァッッ!!」
肺活量マックスの大声で叫びながらドアを蹴破った。
「祐太?!」
「中根さん?!」
ベンチに寝そべる園と、その上に跨る西山が飛び上がらんばかりに驚いて俺を見る。
あれっ、二人とも服着てる……!?
って気付いたけど怒りで暴走モードの俺はそのままズカズカ中に入って西山の胸倉を掴むと園の上から引きずりおろした。
床に尻もちついた状態の西山を見下ろす。
あれ、ちんこ出てない。ベルトも閉まってチャックもちゃんとあがってる。
「朝っぱらからなにやってんだよ!!」
「なにって……え、どうしてそんなに怒ってるの?」
浮気現場を押さえられたはずなのに、西山はまったく言い訳をするでもなく、ただ俺の剣幕に驚いた様子で目をぱちくりさせる。ベンチから身体を起こして茫然と俺を見つめる園にも着衣の乱れは見られない。っていうか肩にタオルがかけられている。
「西山、お前っ、お前……っ!」
まだ興奮状態だけれど、二人の状態を見る限りセックスしてたわけじゃないことがわかってきた。
というか、これ、ただマッサージしてただけじゃね?
自分の壮大な勘違いに気付いて動機が激しくなって卒倒しそうになった。
「おま、お前、お前ら……こんなとこで何やってんだよ! 紛らわしいことしてんな! 馬鹿じゃねえの! 園、お前、一年だろうが! 三年になにやらせてんだよ! 西山、お前もお前だ! この馬鹿が!!」
完全に八つ当たりモードに入って喚き散らした。
「祐太に言われて反省したから、孝雄に今までの態度を謝ろうと思って。ついでに練習見てたら孝雄の肩の調子が悪そうだからマッサージしてやってたんだけど……」
まだ事態を把握しきれていない様子の西山が俺に怒られていると思って体を小さくする。こいつが馬鹿でよかった! 馬鹿でよかった!
「素人がマッサージとかなぁ! 揉み返し起こしたらどうすんだよ馬鹿! バァーカ!」
「ごめん……」
思いっきり理不尽に怒られているのに西山が謝罪を口にする。すると、
「ばっかばかしー……恵護さん、謝る必要ないっすよ」
白けた顔の園が吐き捨てた。
「この人たぶん、恵護さんが俺と浮気してると思って怒鳴り込んできたんですよ。外で盗み聞きして、セックスしてるとでも思ったんじゃないですか。自分の勘違いだってわかって、いま顔真っ赤にして誤魔化そうとしてるだけですから」
俺を見てせせら笑う。園は馬鹿じゃなかった……!
「そう、なの?」
園から俺に向き直った西山の顔が徐々ににやけていく。
「はあ?! そんなわけねえだろ! 勝手にしろよ、お前ら二人が何しようがどうだっていいし!」
「嫉妬、してくれたの?」
「するわけねえだろ!」
腰をあげて立ち上がった西山が俺の手を掴んで顔を覗きこんでくる。見んな馬鹿!
「俺が孝雄と浮気したと思って、あんなに怒ったの?」
「違うっつってんだろ!」
「祐太の手、熱い。顔も真っ赤だよ」
俺を抱きしめて「体も熱い」と呟く。
「浮気なんかするわけないだろ。こんなに祐太が好きなのに。愛してるって言ったよね? 俺は本気だよ。祐太は? そろそろ祐太の気持ち、聞かせてよ」
「……っ、うっせ……お前の好きなんか、聞きたくねえ……っ!」
「死ぬまで言い続けるよ。いや、死んでも言い続ける。祐太が好き。祐太を愛してる。一生そばにいる」
「うるせえっ、お前……男同士で……」
「関係ないよね」
「あるだろっ! 差別とかされんだぞ?! 親に紹介も出来ねえんだぞ?! 結婚出来ねえし、子供も作れねえんだぞ?!」
「祐太の両親には俺が土下座して謝るから!」
西山の口から俺の親の話が飛び出てきて面食らった。いきなりなにを言い出すんだ。
「な……えっ?!」
お前の話をしているんだぞ?!
混乱してたら西山に両肩を掴まれた。
「孫の顔見せられないし、大事な長男を俺なんかが奪っちゃって本当に申し訳ないと思ってる。土下座したくらいじゃ許してくれないかもしれないけど、だけど、俺には祐太が必要だから、これだけは誰にどれだけ反対されても譲れない。俺の出来る限りで祐太を守る。どうしても子供が欲しいなら俺は身を引く。二番目で構わないから、そばにいることだけは許して欲しい。祐太の邪魔にならないようにするから。だから、男同士っていう理由なんかで、俺とのことを諦めようとしないでよ」
今まで見たどの時よりも誠実で、男らしい顔をした西山を、俺は言葉もなくして見上げていた。
こいつは自分のことじゃなくて、俺のことを真剣に考えてくれていたんだ。俺が西山の人生を考えたように。
違うのは、俺は後ろ向きで、西山は前向きに考えてたってことだ。
しがみつくように西山の胸に顔を埋めた。
「お前なぁ……お前は親の会社継ぐんだろ……」
「その必要はないって小さい頃から言われてるんだ。母さんが好き勝手やる人だからね。俺に強制したりしないよ」
広い胸、逞しい腕の中、大きな手で頭をポンポンされる。この世にここほど安心できる場所は他にない。
俺はここにいてもいいんだろうか。ここにいることでいつかこいつを傷つけたりしないだろうか。
「お取込み中申し訳ないんですけど」
突如聞こえた第三者の声に恥ずかしいくらい驚いて顔をあげた。園が白けた顔つきで俺たちを見ていた。
まじでこいつがいること忘れてたわ。
「そうやって見せつけるの、俺が出て行ってからにしてくれませんか」
「あ、悪い」
あまり動じていない西山があっけらかんと謝る。園はちょっとふて腐れた様子でため息をつきながら俺たちの横をすり抜けた。
「今は退散しますけど、俺、恵護さんのこと諦めたわけじゃないっすから。大学はもちろん、就職先まで追いかけて行って、絶対俺のこと好きになってもらいますから」
そう宣言すると園は部室を出て行った。園と西山って、ストーカー気質なところも似ている。
「あいつも諦め悪いな」
苦笑しながら西山が呟く。その目がとても優しい目つきだったので、俺はちょっと危機感を抱いてしまう。
西山のことなんて、最初は馬鹿騒ぎが好きな下品な奴って印象だったのに、合宿のあの日を境にぐいぐい言い寄られるようになって、一緒にいる時間も増えて、知らぬ間に、その存在が俺のなかでどんどんでかくなっていて。
今じゃ、そばにこいつがいないと落ち着かなくなってしまった。失うことを考えると怖くなるほどに。好きだと言われると、蕩けるくらい幸せを感じてしまうほどに。
いつの間にか西山と同じくらい、いや、もう西山以上に俺のほうが好きになっているのかもしれない。
「あいつと浮気したら、ぶっ殺すかんな」
俺の声に西山は視線を落とした。
「するわけないだろ。祐太がいるのに」
さっきより百倍優しい笑顔で俺にキスしてくれた。
※完結!
5回戦敗退、8強入りも果たせずに俺たちの夏は終わってしまった……。
高校野球が終わった寂しさを噛みしめる間もなく中間試験が始まり、受験生だという現実を嫌というほど眼前に突き付けられた。
たまに息抜きで野球部に顔を出し、グラウンドの隅っこでキャッチボールなんかをさせてもらいながら、来年こそは甲子園に行ってくれと練習する後輩を眺めたりした。
「恵護さん、俺のボール受けてくれませんか!」
西山を見つけた園が隙を見つけては声をかけてくる。
「それは俺じゃなくて捕手の奴に言えよ」
「恵護さんだって捕手じゃないですか!」
「俺は補欠だし、それに引退したんだぞ」
「関係ないっすよ! 大学行っても野球は続けるんでしょう?!」
「どうだろう?」
となぜか西山は俺の顔を見た。
「勉強もあるし、バイトもしてみたいし、いろいろ忙しくなるから野球はやらないかもしれないな」
いろいろ、という言葉が湿っている気がしてぞわぞわと尻のあたりがむず痒くなった。西山の視線と言葉だけで、あれこれ思い出して恥ずかしくなってくる。
俺はグローブで顔を隠して舌打ちした。
西山の親父さんのお許しをもらってすぐ、西山の家に呼ばれて仲直りエッチのようなものをした。
親父さんは留守なのかとか、家政婦さんはいないのかとか、どうでもよくなるくらい俺は感じまくって、よがりまくって、枯れるくらい声をあげた。
西山には何度も好きだと言われた。「愛してる」と赤面ものの台詞も囁かれた。そのたびに俺は胸をつかえさせて、照れ隠しの暴言を吐いた。
こんなのが続いたら確実にほだされてしまう。いやもう、ほだされてんのか。
エッチの最中にまた「卒業したら一緒に暮らそうよ」と西山に言われてはっきり断れなかった。別にいいんじゃねと気持ちが傾いていた。
親父さんっていう第一関門突破したところで、現実にはまだ問題山積みの関係だっていうのに。
二人でベッドの中にいるときは忘れていることも、外の世界へ一歩踏み出すと否応なしに問題が浮き彫りになる。俺たちが男同士だっていうこと。まだまだ子供だっていうこと。俺の相手は西山で、西山の相手が俺だってこと。
いつか破綻するの目に見えてるじゃん。そう冷静になったとき、親父さんに言われた言葉を思い出して、こんなの今だけだと素直になれなくなる。
一方的に浴びせられる西山の愛情に溺れそうだ。
能天天気に突っ走れる園が羨ましい。
「たまには園の相手してやれよ、俺は先に帰るから」
「えっ、祐太?!」
西山を園に押し付けてグラウンドをあとにした。着替え終わった頃、西山が部室に駆けこんできた。
「一緒に帰ろう」
「園は?」
「知らない」
とあっさり言い放つ。知らないことねえだろ。
西山は基本優しいれど、こういう切り捨て方も出来る奴なんだと気付いて、俺もいつか……と考えたらちょっと怖くなる。
「あいつ、ほんとにお前に惚れてんだぞ」
「知ってる」
あっけらかんと答えてユニフォームを脱ぐ。
「ちょっとは気持ち、考えてやれよ」
好意がないと、こうも簡単に手を振りほどいて背中を向けられるなんて辛すぎる。
つい、自分に置き換えて西山を非難したら、西山はちょっと驚いたように俺を見た。
「孝雄の気持ちを考えたらどうかなるの? おとなしく諦めてくれるの?」
「そうじゃなくてさ……高校だけじゃなくて、大学まで追いかけていくって決めてるくらいお前のこと好きなんだから、もうちょっと優しくしてやってもいいだろ」
「優しくしたら期待させちゃうじゃん。突き放しはしないけど、特別優しくする必要はないよね」
至極真っ当な意見を返される。でもちょっとドライすぎないか? 西山にとって好きな奴以外、相手にする時間ももったいない程、どうでもいい存在なのか?
そういえば合コンのあの日、今すぐ梨香と別れてくると言い出した時も、本当にみんなの前で宣言しそうな勢いだった。そんなことをされたら梨香がどれほど傷ついたことか。
それがわからない奴じゃないのに。
「お前、冷たすぎんだろ」
つい、感情に走ってぽつりと零した。西山は少しむっとしたように眉間を寄せた。
「俺が好きなのは祐太だ。そのことは孝雄にも言ってある。それでも俺を好きでいるかどうかは孝雄の自由だから、俺や祐太が気にすることじゃないと思うけど」
「待て、お前、園に俺が好きだって言ったのか?!」
「言ったよ、夏の大会の前に」
その頃の園の態度を思い出すと納得した。確かにあいつ、俺と西山の関係について断定するような言い方をしていた。
というか……後輩に知られていたなんて……!
羞恥心と怒りから体が熱くなってぶわっと全身の毛穴が開いた。
園もこいつも、どうして周りのことなんかお構いなしで、一途に盲目的に突き進めるんだよ。色々考えて悩んでる俺が馬鹿みたいじゃん。
「お前と園ってお似合いだよ」
鞄を持って部室を出ようとしたら、まだ着替え途中の西山も追いかけて来た。パンツ丸出しの馬鹿みたいな姿を見たら、自分がつまらないことにこだわる小さな人間みたいに思えて、泣きたくなるくらい情けなくて腹が立って……西山に八つ当たりしたくなったので、俺はその場から逃げ出した。
「祐太!」
西山がズボンに足を取られて走れないのいいことに、呼び止める声を無視して学校を飛び出した。
※ ※ ※
アラームの前に西山からのラインで目が覚めた。
『おはよう。昨日はごめんね』
相変らずの内容にため息が出た。
昨日部室の前で別れたあと、西山からの電話はジャンジャン鳴っていたし、メールもラインも次々送られてきていた。『どうしたの?』『怒ってる?』『ごめんね』という内容が半分。残り半分は『電話に出て』『返事ちょうだい』『心配してる』と俺の安否を気遣うものだ。
まったく俺を責めやしない。
一貫した態度にまた苛々する。秋広をいつまでも思い続ける親父さんそっくりだ。あいつもいい大人になってもまだ俺を好きだなんて言っていそうだ。
腹がグルグルする。胸がムカムカする。朝っぱらから気分が悪い。
のろのろ起き上がった頃、また西山からラインが入った。
『確かに俺が少し冷たかったのかもしれない。孝雄に優しくするよ』
自分の意思を曲げて俺に媚びた形の打開案だ。俺は自分で言い出したことなのにむしょうに腹が立って、思わずスマホをベッドに叩きつけていた。
もう朝練に出る必要もないのに、早めの時間に学校についた。教室に行ったって一人なのでグラウンドのほうへ足を向ける。
掛け声が近くなり、野球部の後輩たちが練習している姿が見えてきた。俺もあそこにいた頃は、こんな気持ちになることもなかったのに。もうすぐ受験なのにこんなんで大丈夫か俺。
ぼうっと眺めていたら園がいないことに気付いた。年中元気印の園が休みだなんて珍しい。
目を動かして探すとバックネット裏を歩く園を見つけた。その横にはなぜか西山もいる。あの大きな体は間違いない。
どうして西山が?
二人は部室のあるほうへ向かって行き、俺の視界から消えた。俺の足も、二人のいる方へと動いていた。
グラウンド側を歩くと他の部員に見つかるので中庭を抜けていく。気持ちが急いて早足になる。
こんな朝早くから二人きりでどこへ何をしに行くんだ。
『孝雄に優しくするよ』
頭には今朝のラインの内容がちらついて胸が重くなる。
西山の言うことが正しいのは俺だってわかっていた。ただ、引っ込みがつかなくなって、自己弁護するみたいに西山を責めていただけだ。
西山が絶対園を好きにならないとわかっていたから、だから優しくしろと言えた。西山が俺以外の男にまったく興味がないとわかっていたから、園がどんなにアピールしても平気でいられた。
冷たく園をあしらう西山に安心していたくせに。本当は『優しくするよ』って一言でこんなに不安になるくせに。
そのくらい、西山のことが――。
校舎を左に曲がって進んだら部室棟が見えてきた。野球部はグラウンドに近い一番端。
ほとんど小走りになって扉の前に立った。中から人の気配がする。かすかに聞こえる話し声に耳をすまし、その内容に頭の中が一瞬で茹った。
「……っ……恵護さ……」
「痛いか?」
「ちが、……ぁ……気持ち、い……」
「こら、孝雄、変な声出すなよ」
「だって……あっ、そこ……っ!」
「ここがいいのか?」
「あっ、あっ」
「こんなに硬くなるまで我慢して、馬鹿だな」
「うぅっ、あぁ……そこ、そんな、したら……恵護さんっ」
全身の血液が沸騰しそうなほどの怒りに我を忘れた。
あいつの優しくするってのは、セックスしてやるって意味になるのか?!
ふざけんじゃねええぇぇぇぇっっ!!!
「なにやってんだゴラアァァッッ!!」
肺活量マックスの大声で叫びながらドアを蹴破った。
「祐太?!」
「中根さん?!」
ベンチに寝そべる園と、その上に跨る西山が飛び上がらんばかりに驚いて俺を見る。
あれっ、二人とも服着てる……!?
って気付いたけど怒りで暴走モードの俺はそのままズカズカ中に入って西山の胸倉を掴むと園の上から引きずりおろした。
床に尻もちついた状態の西山を見下ろす。
あれ、ちんこ出てない。ベルトも閉まってチャックもちゃんとあがってる。
「朝っぱらからなにやってんだよ!!」
「なにって……え、どうしてそんなに怒ってるの?」
浮気現場を押さえられたはずなのに、西山はまったく言い訳をするでもなく、ただ俺の剣幕に驚いた様子で目をぱちくりさせる。ベンチから身体を起こして茫然と俺を見つめる園にも着衣の乱れは見られない。っていうか肩にタオルがかけられている。
「西山、お前っ、お前……っ!」
まだ興奮状態だけれど、二人の状態を見る限りセックスしてたわけじゃないことがわかってきた。
というか、これ、ただマッサージしてただけじゃね?
自分の壮大な勘違いに気付いて動機が激しくなって卒倒しそうになった。
「おま、お前、お前ら……こんなとこで何やってんだよ! 紛らわしいことしてんな! 馬鹿じゃねえの! 園、お前、一年だろうが! 三年になにやらせてんだよ! 西山、お前もお前だ! この馬鹿が!!」
完全に八つ当たりモードに入って喚き散らした。
「祐太に言われて反省したから、孝雄に今までの態度を謝ろうと思って。ついでに練習見てたら孝雄の肩の調子が悪そうだからマッサージしてやってたんだけど……」
まだ事態を把握しきれていない様子の西山が俺に怒られていると思って体を小さくする。こいつが馬鹿でよかった! 馬鹿でよかった!
「素人がマッサージとかなぁ! 揉み返し起こしたらどうすんだよ馬鹿! バァーカ!」
「ごめん……」
思いっきり理不尽に怒られているのに西山が謝罪を口にする。すると、
「ばっかばかしー……恵護さん、謝る必要ないっすよ」
白けた顔の園が吐き捨てた。
「この人たぶん、恵護さんが俺と浮気してると思って怒鳴り込んできたんですよ。外で盗み聞きして、セックスしてるとでも思ったんじゃないですか。自分の勘違いだってわかって、いま顔真っ赤にして誤魔化そうとしてるだけですから」
俺を見てせせら笑う。園は馬鹿じゃなかった……!
「そう、なの?」
園から俺に向き直った西山の顔が徐々ににやけていく。
「はあ?! そんなわけねえだろ! 勝手にしろよ、お前ら二人が何しようがどうだっていいし!」
「嫉妬、してくれたの?」
「するわけねえだろ!」
腰をあげて立ち上がった西山が俺の手を掴んで顔を覗きこんでくる。見んな馬鹿!
「俺が孝雄と浮気したと思って、あんなに怒ったの?」
「違うっつってんだろ!」
「祐太の手、熱い。顔も真っ赤だよ」
俺を抱きしめて「体も熱い」と呟く。
「浮気なんかするわけないだろ。こんなに祐太が好きなのに。愛してるって言ったよね? 俺は本気だよ。祐太は? そろそろ祐太の気持ち、聞かせてよ」
「……っ、うっせ……お前の好きなんか、聞きたくねえ……っ!」
「死ぬまで言い続けるよ。いや、死んでも言い続ける。祐太が好き。祐太を愛してる。一生そばにいる」
「うるせえっ、お前……男同士で……」
「関係ないよね」
「あるだろっ! 差別とかされんだぞ?! 親に紹介も出来ねえんだぞ?! 結婚出来ねえし、子供も作れねえんだぞ?!」
「祐太の両親には俺が土下座して謝るから!」
西山の口から俺の親の話が飛び出てきて面食らった。いきなりなにを言い出すんだ。
「な……えっ?!」
お前の話をしているんだぞ?!
混乱してたら西山に両肩を掴まれた。
「孫の顔見せられないし、大事な長男を俺なんかが奪っちゃって本当に申し訳ないと思ってる。土下座したくらいじゃ許してくれないかもしれないけど、だけど、俺には祐太が必要だから、これだけは誰にどれだけ反対されても譲れない。俺の出来る限りで祐太を守る。どうしても子供が欲しいなら俺は身を引く。二番目で構わないから、そばにいることだけは許して欲しい。祐太の邪魔にならないようにするから。だから、男同士っていう理由なんかで、俺とのことを諦めようとしないでよ」
今まで見たどの時よりも誠実で、男らしい顔をした西山を、俺は言葉もなくして見上げていた。
こいつは自分のことじゃなくて、俺のことを真剣に考えてくれていたんだ。俺が西山の人生を考えたように。
違うのは、俺は後ろ向きで、西山は前向きに考えてたってことだ。
しがみつくように西山の胸に顔を埋めた。
「お前なぁ……お前は親の会社継ぐんだろ……」
「その必要はないって小さい頃から言われてるんだ。母さんが好き勝手やる人だからね。俺に強制したりしないよ」
広い胸、逞しい腕の中、大きな手で頭をポンポンされる。この世にここほど安心できる場所は他にない。
俺はここにいてもいいんだろうか。ここにいることでいつかこいつを傷つけたりしないだろうか。
「お取込み中申し訳ないんですけど」
突如聞こえた第三者の声に恥ずかしいくらい驚いて顔をあげた。園が白けた顔つきで俺たちを見ていた。
まじでこいつがいること忘れてたわ。
「そうやって見せつけるの、俺が出て行ってからにしてくれませんか」
「あ、悪い」
あまり動じていない西山があっけらかんと謝る。園はちょっとふて腐れた様子でため息をつきながら俺たちの横をすり抜けた。
「今は退散しますけど、俺、恵護さんのこと諦めたわけじゃないっすから。大学はもちろん、就職先まで追いかけて行って、絶対俺のこと好きになってもらいますから」
そう宣言すると園は部室を出て行った。園と西山って、ストーカー気質なところも似ている。
「あいつも諦め悪いな」
苦笑しながら西山が呟く。その目がとても優しい目つきだったので、俺はちょっと危機感を抱いてしまう。
西山のことなんて、最初は馬鹿騒ぎが好きな下品な奴って印象だったのに、合宿のあの日を境にぐいぐい言い寄られるようになって、一緒にいる時間も増えて、知らぬ間に、その存在が俺のなかでどんどんでかくなっていて。
今じゃ、そばにこいつがいないと落ち着かなくなってしまった。失うことを考えると怖くなるほどに。好きだと言われると、蕩けるくらい幸せを感じてしまうほどに。
いつの間にか西山と同じくらい、いや、もう西山以上に俺のほうが好きになっているのかもしれない。
「あいつと浮気したら、ぶっ殺すかんな」
俺の声に西山は視線を落とした。
「するわけないだろ。祐太がいるのに」
さっきより百倍優しい笑顔で俺にキスしてくれた。