楽しい旧校舎!(2/2)
2015.03.24.Tue.
<前話はこちら>
西山は片手で俺を抱えると、机の上の椅子を薙ぎ払い、その上に俺を座らせた。一糸まとわぬ姿で抱き合った。腹に勃起したお互いのものがくっつく。
頭を下げた西山がそれを口に咥えた。
「あぁん! やっ……ぁあ」
足の間で頭を動かす西山を見下ろす。俺のちんこが西山の口を出入りしている。唾液の絡む濡れた音が真っ暗な教室に響き渡る。
「あっ、あぁんっ、やだ、やっ……それ、気持ちい……っ、気持ちいいのっ! 僕、変になっちゃう……っ!」
ぎょっとしたように西山がしゃぶりながら目をあげる。そりゃそうだ。
舌を噛み切って死にたいと思っているのに、俺の体は勝手に動いて、西山の髪をかき乱し、腰をゆらゆら揺らした。
「あぁ……いやぁ……ん……だめ、僕、もう……イッちゃう、我慢できないっ……イッちゃうよぉ……!」
俺のなかの誰かが西山の頭を押さえつけるように掴んで口に中に精を放った。全部を出し終えると「ここへ出して」と、西山の口元で手を受ける。
えっ、て顔しながら西山は俺の手に生温かくてドロッとしたザーメンを吐きだした。
どうするのかと思ったら、俺のなかの誰かは机の上で膝立ちになると後ろに手をやってそれを尻穴に塗りたくった。
「中根くん……?」
さすがの西山も唖然としている。
「にいさんはまだでしょ? 僕のお尻の穴を使ってよ。僕の中でイッて欲しいの」
って尻穴を弄りながら俺は言っちゃってた……。貧血おこしたみたいに目の前が一瞬真っ暗になる。恥ずかしいなんてもんじゃない。いますぐ腹を切るから誰か介錯してくれってレベルだ。
「もしかして脱法ハーブ?」
怪訝そうに言いながら、西山の手はしっかり俺の腰を掴んでいる。尻を撫で、割れ目から奥へ指を進ませて、秘孔を探り当てると指を入れて来た。
「危ないのはやっちゃ駄目だよ」
咎めるように言うくせに、指を出し入れしながら俺のちんこや睾丸を揉む。
「あぁっ、あっ、いや、だめ……ぇ……っ…あぁんっ」
喘ぎながら俺は西山に抱き付いてキスをせがむ。クチュクチュ音を立てて舌を絡ませ合い、西山の体に手を這わせ、最終的に勃起した逸物を握りしめた。
「お願いっ……早く入れて…・・・・っ! これで僕をめちゃくちゃにして! ねぇ、お願い……!」
「いま入れてあげるから、足を開いて座って」
すぐさま言われた通りの体勢を取る。恥ずかしい場所がすべて晒される格好だ。暗くて見えにくいのが唯一の救いだが、俺の顔はペンキをかぶったみたいに真っ赤になってるはずだ。
「たまにはこういうプレイもありだな」
って呟いた西山が俺の尻を引き寄せる。掴んだ勃起の先で挿入口を探り出し、見つけるとゆっくり押し入ってきた。
「あ…っ…ひ…ぃっ…!! すご…いっ……なんて、大きいの……っ! っはぁぁ! あっ…!! あ、はぁあん……っ!!」
俺は髪を振り乱しながら嬌声をあげ続ける。俺の乱れすぎる痴態に西山も若干引き気味だが、楽しんじゃおうという気持ちが勝って腰を振るのをやめない。
手と足とで体を支えながら、ズンズン打ち込んでくる西山の動きに合わせて俺も腰を揺らす。
「あっ! あんっ! すご……いっ……!! 奥まで、くる……っ! ふか、い……っ……僕、壊れ……っ……ちゃうっ! んっ、気持ちいいっ、気持ちいいのっ……あはぁっ……もっ…と…奥、きてっ……! 僕のおまんこ壊してぇっ……!」
西山が「今日の中根くん、やばい」って呟くのが聞こえた。
頼む、このままヤリ殺してくれ……!!!!
西山は腰の動きを激しくした。俺の尻を掴んでパンパンと打ち付ける。その勢いを支えきれずに腰を下ろすと、膝をすくいあげられた。引っくり返ったカエルのような無様な姿で奥を抉られる。
「あっ! あぁん! あっ、あっ……やぁっ……すご……ぃっ…ひ……気持ち、い……!! あっ、あんん…! 気持ちぃ……っ、に……さっ…きも、ちぃ……っ!!」
「そんなに気持ちいいの?」
「うんっ…きもち、い…っ…い、あっ、あぁんっ! いっぱ…い……奥、擦って……おっきい……おちんぽでっ……突いて欲し……のっ……ッ!」
「こんなに素直なのも、たまにはいいね」
素直とかいうレベルじゃねえだろうが!
実は西山の中の俺って、これを不思議に思わないくらいビッチなイメージなんだろうか……。
俺の落ち込みをよそに、ギシアン続行中の二人は最高潮にまで上り詰める。
「あぁんっ! あっ! ゃあぁっ!! また、イッちゃ…ぅ…イッちゃうよぉ……!」
「俺もイキそ……っ……!」
「はぁっ、あん……僕に……出してっ…ねぇ…! お願……っ、出してぇ……なかに……ほ、しぃの…! にいさんの、せーし……なかに欲しいの……ッ!!!」
なんて言いながら俺は西山に微笑みかけていた。それを見た西山が「くっ」って息を詰めて射精する。体の奥深い場所でそれを感じながら俺はまた幸福感に包まれていた。
「うれし…ぃ……僕、嬉しい……っ」
目尻から涙を流しながら、俺もあとを追うように射精した。
誰もいないからって素っ裸のまま廊下を移動してトイレに向かった。幸い残っていたトイレットペーパーで体の汚れを拭き取る。
体力もあまり残ってないうえに、精神的ダメージがでかくて、俺のケツから嬉々として精液を掻きだす西山を止めることもなく、そのあとワイシャツのボタンも留めてもらった。
射精後、体が自由に動かせるようになった。声も出る。にいさんという声も聞こえないし、寒気もなくなってむしろ暑いくらいだ。
何から説明しようか。どう説明しようか。幽霊を信じない西山に、憑りつかれたのだと言ったって鼻で笑われるだけだろう。
ニヤニヤしている西山を横目に、どう切り出そうか考えながら結局無言のままトイレを出た。
「そろそろ帰ろう」
西山に促され階段を下りる。一階の窓から外へ出た。
「あのな、西山」
「ん?」
えびす顔で西山が振り返る。腹立つわ……
「さっきの……俺じゃ、ねえから……あの教室入ってすぐ、体動かなくなって……なんか、誰かに、憑りつかれたっていうか……」
「あぁ……そういう設定?」
案の定信じやしない。
「ほんとにっ……誰かが俺に乗り移って、勝手に……相手もほんとはお前じゃないみたいだし……だから、プレイとか、そういう勘違いだけは……っ」
「二重人格って設定?」
「ちげえよ」
「憑依病?」
「ほんとなんだってば!」
俺が声を荒げると西山は「あははっ」と笑った。
「あれが中根くんじゃないってわかってるよ。白昼夢かと思うくらい俺の願望通りだったからね。幽霊がいるって噂を聞いて自己催眠にかかったんだよ、きっと」
後半部分を聞いてがっくり脱力した。こいつ全くわかってねえじゃん!
「でもすごかったなぁ。いくら思い込みでも、あんなにやらしいこと言えるんだから。また言ってよ、俺のおちんぽでいっぱい突いて欲しいって」
「誰が言うか馬鹿!」
思い出したら顔に熱が戻ってきた。見られたくなくて、足を速めた。西山が追いかけて来る。
「また旧校舎でヤッたら言ってくれる?」
「死ね! 糞山! まじで俺の前から消えろ!」
「大好きって言ってよ」
いつの間にやら駆け出して、俺たちは部室へと戻った。
※ ※ ※
後日、部員の一人が、旧校舎の幽霊について情報を仕入れて来た。
もう何十年も昔、在学中に、交通事故で亡くなった男子生徒がいたらしい。その生徒が3年6組だったと聞いて全身に寒気が走った。俺に憑りついたのはきっとその生徒の霊だったに違いない。
西山は無感動に「へぇ」と言うだけで、先日のアレとは結びつけていないようだ。お前を誘ったのはそいつなんだぞ!
視線に気づいた西山が俺を見る。少しして、「またにいさまごっこしよう」と耳打ちしてきた。頭のなかそればっかのこいつが幽霊なんか気にするわけないのだ。
西山は片手で俺を抱えると、机の上の椅子を薙ぎ払い、その上に俺を座らせた。一糸まとわぬ姿で抱き合った。腹に勃起したお互いのものがくっつく。
頭を下げた西山がそれを口に咥えた。
「あぁん! やっ……ぁあ」
足の間で頭を動かす西山を見下ろす。俺のちんこが西山の口を出入りしている。唾液の絡む濡れた音が真っ暗な教室に響き渡る。
「あっ、あぁんっ、やだ、やっ……それ、気持ちい……っ、気持ちいいのっ! 僕、変になっちゃう……っ!」
ぎょっとしたように西山がしゃぶりながら目をあげる。そりゃそうだ。
舌を噛み切って死にたいと思っているのに、俺の体は勝手に動いて、西山の髪をかき乱し、腰をゆらゆら揺らした。
「あぁ……いやぁ……ん……だめ、僕、もう……イッちゃう、我慢できないっ……イッちゃうよぉ……!」
俺のなかの誰かが西山の頭を押さえつけるように掴んで口に中に精を放った。全部を出し終えると「ここへ出して」と、西山の口元で手を受ける。
えっ、て顔しながら西山は俺の手に生温かくてドロッとしたザーメンを吐きだした。
どうするのかと思ったら、俺のなかの誰かは机の上で膝立ちになると後ろに手をやってそれを尻穴に塗りたくった。
「中根くん……?」
さすがの西山も唖然としている。
「にいさんはまだでしょ? 僕のお尻の穴を使ってよ。僕の中でイッて欲しいの」
って尻穴を弄りながら俺は言っちゃってた……。貧血おこしたみたいに目の前が一瞬真っ暗になる。恥ずかしいなんてもんじゃない。いますぐ腹を切るから誰か介錯してくれってレベルだ。
「もしかして脱法ハーブ?」
怪訝そうに言いながら、西山の手はしっかり俺の腰を掴んでいる。尻を撫で、割れ目から奥へ指を進ませて、秘孔を探り当てると指を入れて来た。
「危ないのはやっちゃ駄目だよ」
咎めるように言うくせに、指を出し入れしながら俺のちんこや睾丸を揉む。
「あぁっ、あっ、いや、だめ……ぇ……っ…あぁんっ」
喘ぎながら俺は西山に抱き付いてキスをせがむ。クチュクチュ音を立てて舌を絡ませ合い、西山の体に手を這わせ、最終的に勃起した逸物を握りしめた。
「お願いっ……早く入れて…・・・・っ! これで僕をめちゃくちゃにして! ねぇ、お願い……!」
「いま入れてあげるから、足を開いて座って」
すぐさま言われた通りの体勢を取る。恥ずかしい場所がすべて晒される格好だ。暗くて見えにくいのが唯一の救いだが、俺の顔はペンキをかぶったみたいに真っ赤になってるはずだ。
「たまにはこういうプレイもありだな」
って呟いた西山が俺の尻を引き寄せる。掴んだ勃起の先で挿入口を探り出し、見つけるとゆっくり押し入ってきた。
「あ…っ…ひ…ぃっ…!! すご…いっ……なんて、大きいの……っ! っはぁぁ! あっ…!! あ、はぁあん……っ!!」
俺は髪を振り乱しながら嬌声をあげ続ける。俺の乱れすぎる痴態に西山も若干引き気味だが、楽しんじゃおうという気持ちが勝って腰を振るのをやめない。
手と足とで体を支えながら、ズンズン打ち込んでくる西山の動きに合わせて俺も腰を揺らす。
「あっ! あんっ! すご……いっ……!! 奥まで、くる……っ! ふか、い……っ……僕、壊れ……っ……ちゃうっ! んっ、気持ちいいっ、気持ちいいのっ……あはぁっ……もっ…と…奥、きてっ……! 僕のおまんこ壊してぇっ……!」
西山が「今日の中根くん、やばい」って呟くのが聞こえた。
頼む、このままヤリ殺してくれ……!!!!
西山は腰の動きを激しくした。俺の尻を掴んでパンパンと打ち付ける。その勢いを支えきれずに腰を下ろすと、膝をすくいあげられた。引っくり返ったカエルのような無様な姿で奥を抉られる。
「あっ! あぁん! あっ、あっ……やぁっ……すご……ぃっ…ひ……気持ち、い……!! あっ、あんん…! 気持ちぃ……っ、に……さっ…きも、ちぃ……っ!!」
「そんなに気持ちいいの?」
「うんっ…きもち、い…っ…い、あっ、あぁんっ! いっぱ…い……奥、擦って……おっきい……おちんぽでっ……突いて欲し……のっ……ッ!」
「こんなに素直なのも、たまにはいいね」
素直とかいうレベルじゃねえだろうが!
実は西山の中の俺って、これを不思議に思わないくらいビッチなイメージなんだろうか……。
俺の落ち込みをよそに、ギシアン続行中の二人は最高潮にまで上り詰める。
「あぁんっ! あっ! ゃあぁっ!! また、イッちゃ…ぅ…イッちゃうよぉ……!」
「俺もイキそ……っ……!」
「はぁっ、あん……僕に……出してっ…ねぇ…! お願……っ、出してぇ……なかに……ほ、しぃの…! にいさんの、せーし……なかに欲しいの……ッ!!!」
なんて言いながら俺は西山に微笑みかけていた。それを見た西山が「くっ」って息を詰めて射精する。体の奥深い場所でそれを感じながら俺はまた幸福感に包まれていた。
「うれし…ぃ……僕、嬉しい……っ」
目尻から涙を流しながら、俺もあとを追うように射精した。
誰もいないからって素っ裸のまま廊下を移動してトイレに向かった。幸い残っていたトイレットペーパーで体の汚れを拭き取る。
体力もあまり残ってないうえに、精神的ダメージがでかくて、俺のケツから嬉々として精液を掻きだす西山を止めることもなく、そのあとワイシャツのボタンも留めてもらった。
射精後、体が自由に動かせるようになった。声も出る。にいさんという声も聞こえないし、寒気もなくなってむしろ暑いくらいだ。
何から説明しようか。どう説明しようか。幽霊を信じない西山に、憑りつかれたのだと言ったって鼻で笑われるだけだろう。
ニヤニヤしている西山を横目に、どう切り出そうか考えながら結局無言のままトイレを出た。
「そろそろ帰ろう」
西山に促され階段を下りる。一階の窓から外へ出た。
「あのな、西山」
「ん?」
えびす顔で西山が振り返る。腹立つわ……
「さっきの……俺じゃ、ねえから……あの教室入ってすぐ、体動かなくなって……なんか、誰かに、憑りつかれたっていうか……」
「あぁ……そういう設定?」
案の定信じやしない。
「ほんとにっ……誰かが俺に乗り移って、勝手に……相手もほんとはお前じゃないみたいだし……だから、プレイとか、そういう勘違いだけは……っ」
「二重人格って設定?」
「ちげえよ」
「憑依病?」
「ほんとなんだってば!」
俺が声を荒げると西山は「あははっ」と笑った。
「あれが中根くんじゃないってわかってるよ。白昼夢かと思うくらい俺の願望通りだったからね。幽霊がいるって噂を聞いて自己催眠にかかったんだよ、きっと」
後半部分を聞いてがっくり脱力した。こいつ全くわかってねえじゃん!
「でもすごかったなぁ。いくら思い込みでも、あんなにやらしいこと言えるんだから。また言ってよ、俺のおちんぽでいっぱい突いて欲しいって」
「誰が言うか馬鹿!」
思い出したら顔に熱が戻ってきた。見られたくなくて、足を速めた。西山が追いかけて来る。
「また旧校舎でヤッたら言ってくれる?」
「死ね! 糞山! まじで俺の前から消えろ!」
「大好きって言ってよ」
いつの間にやら駆け出して、俺たちは部室へと戻った。
※ ※ ※
後日、部員の一人が、旧校舎の幽霊について情報を仕入れて来た。
もう何十年も昔、在学中に、交通事故で亡くなった男子生徒がいたらしい。その生徒が3年6組だったと聞いて全身に寒気が走った。俺に憑りついたのはきっとその生徒の霊だったに違いない。
西山は無感動に「へぇ」と言うだけで、先日のアレとは結びつけていないようだ。お前を誘ったのはそいつなんだぞ!
視線に気づいた西山が俺を見る。少しして、「またにいさまごっこしよう」と耳打ちしてきた。頭のなかそればっかのこいつが幽霊なんか気にするわけないのだ。

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楽しい旧校舎!(1/2)
2015.03.23.Mon.
<楽しい合宿!→楽しいお泊り!→楽しい勉強会!→楽しい初カノ!→楽しいOB会!→楽しいロッカールム!→楽しい遊園地!→楽しい入院生活!>
※若干ホラー風味
部活終わりに誰かが「旧校舎に幽霊が出るらしい」と言い出したのがきっかけだった。
半分はそんなのはただの勘違いだと取り合わなかったが、残りの半分は自分の友達も見たとか、昔あそこで誰かが自殺したらしいとか、割と本気で信じている様子で、否定派と肯定派とでちょっとした言い合いになったとき西山が言った。
「俺が確かめて来るよ」
と。
夜。当然外は真っ暗。取り壊しが決まっているため電気が点かない旧校舎は言わずもがな。不気味な噂があるだけでも敬遠したいのに、日没後に足を踏み入れるだなんて正気じゃない。
さすがに大多数は「やめておけ」とまともな意見を言ったが、一部の馬鹿が「いいぞ、それでこそ西山だ、行って来い」と焚き付けてしまった。
制服に着替えた西山は俺の腕を掴んだ。
「中根くんも一緒に行こう」
「はあぁっ?! 行くわけねえだろ!」
腕を振り払おうとしたが、「じゃあ、行ってくる」と部員たちに挨拶した西山に難なく引きずり出されてしまった。
「行くならお前一人で行けよ! 俺はやだよ!」
「もしかして怖いの?」
俺を見下ろしてニヤリと笑う。
そういえばこいつ、幽霊とかまったく信じてない奴なんだった。
「肝試しとか遊び半分でやんないほうがいいんだって」
俺はため息をついた。
「旧校舎に行って戻ってくるだけだよ」
「祟られるのはお前一人だけにしろ。俺は入り口まで付いて行くだけだからな」
「デートみたいだね」
「呪い殺されろ!」
というわけで、俺たちは旧校舎へと向かったのだった。
旧校舎は木造の二階建てで、数年前まではここが3年棟として使われていたが、老朽化のため取り壊されることとなった。当然施錠されていて入れないのだが、誰かが鍵のかかっていない窓を一つ見つけて、そこから悪い奴らが出入りしているらしかった。
その窓を探して一つ一つ確かめていたら大きな桜の下の窓がガラリと音を立てて開いた。
「ここだ」
西山は窓枠に飛び乗って校舎の中に入ってしまった。ずっと締め切っていたせいか、窓から漏れ出てきた空気は外よりひんやりと冷たい気がした。
「じゃあ一階と二階と見てまわるから、中根くんはここで待ってて」
「わかった。気を付けろよ」
「心配してくれてありがとう」
「早く逝け」
あはは、と朗らかに笑って西山は廊下を進んでいった。すぐに暗闇に飲まれて姿が見えなくなる。聞こえていた足音ももう届かない。
風が吹いて頭上の木の葉がカサカサと音を立てた。肌寒さに震えが走る。
数分が経った。西山は戻ってこない。
「西山」
窓から呼びかけたが返事はない。
「西山っ」
少し大きな声を出したが応えはない。
「西山!」
怒鳴ると「どうした?」と少し離れたところから西山の声がした。足音が戻ってきて西山の姿もどんどん近づいてきた。
「どうしたの、中根くん」
「もういいだろ、戻ろうぜ」
「まだ一階を見ただけだよ」
「なにもなかったって言やいいじゃん」
「嘘は駄目だろ」
すぐ裸になってちんこ出すくせに変に真面目なんだから。
「だったら俺も行く」
「怖いの?」
「寒いんだよ!」
窓枠に乗りあがって廊下に下りた。風はないのに、やっぱり中のほうが空気が冷たい気がする。
二階への階段をあがっていたら西山が手を繋いできた。
「なにする」
「寒いんだろ」
西山の大きな手はカイロのように温かかった。俺たち以外誰もいないし、別にいっか。
階段の右手に教室、左手にはトイレがあった。トイレだけは絶対入りたくないので外で待つ。西山は平気な顔してトイレに入って行くと、バタンバタンと一個ずつ個室を開けて確かめていた。やっぱり神経が図太いんだと思う。
「なにもない」
戻ってくるとそう言ってまた俺と手を繋ぐ。暖を取るだけじゃなく、俺は心細さから西山の手を握り返した。
次は反対側の教室のほうへ向かった。一組から順に扉に手をかけて開くか確かめる。鍵がかかっているので窓ガラスから中を覗く。椅子を乗せた机が教室の後ろで固められている。
二組も同様。五組まで確認して六組で扉がガラッと開いた。俺と西山は顔を見合わせた。さすがの西山も神妙な面持ちだ。
「入ってみよう」
教室の中に足を踏み入れる。埃っぽさと黴っぽい臭いがする。長く誰も立ち入っていないとわかる澱んだ空気。
急に悪寒がして鳥肌が立った。ここは他の場所より一段と空気が冷たい。嫌な予感がしたとき、遠くから耳鳴りがやってきた。その直後、ズシリと肩が重くなった。
まるで誰かを背負ったみたいに。
――ニイサン。
鼓膜のすぐそばで声がした。背筋が凍る。西山の声ではない。もちろん俺の声でもない。教室の中にいるのは俺たち二人だけ。じゃあ一体誰の声だというんだ。
全身の毛が逆立ち鳥肌が立った。早くここから出たい。こんな場所一分一秒だって長くいたくない。
西山の腕を引こうとして愕然とした。体が動かない。首さえ動かせない。まさか金縛りだっていうのか?! 起きて立っているのに?!
足の裏に根が生えたようにびくともしない。呼吸は出来ているのに胸が苦しい。助けて。助けて、西山!
「特にかわったところもないな」
金縛りにあっていない西山は、あたりを見渡したあと「次行こうか」と俺に向き直った。
また「ニイサン」と耳の奥で誰かが囁いた。怖い! にいさんって誰だよ!!!!
「中根くん?」
動かせる目だけで必死に助けを訴えかける。動かずじっと見て来る俺に西山は首を傾げた。
「もしかして俺を怖がらせようとしてる?」
ちげえよ! 俺の異変に気付け馬鹿!
「それとも……俺を誘ってる?」
目つきをかえて西山は笑った。こいつぶん殴ってやりてえええぇぇっ!!!
「興奮してるのは俺だけだと思ってたのに」
俺の顎に手をかけると上を向かせる。さっきまでピクともしなかった体が、西山が軽く力を入れただけですんなり動いた。この調子で他の場所も、と動かそうとしてみたが無駄だった。
そうこうしている間に、こんな状況にもかかわらず興奮して盛る西山にキスされていた。柔らかく、温かい唇の感触。目に見えない鎖から解き放たれたように体が軽くなった。
「にいさん」
声は俺の声だった。声は俺の口から出ていた。
「にいさん?」
西山が怪訝そうに俺を見る。その目を見ていたら胸が締め付けられた。痛くて痛くてたまらなくて涙が溢れて来た。
「大好き」
そう言って俺は西山に抱き付いていた。
「中根くん?!」
「大好き! 大好き! お願い、僕を強く抱きしめて。めちゃくちゃに抱いて。お願い!」
「どうしちゃったんだよ、中根くん?!」
ほんとどうしちゃったの俺?! 西山を見てたら胸がズキズキと痛くなって、気が狂いそうなほど愛おしくなって、気が付いたらあんなことを口走っていた。
「僕を忘れた? 僕のこと嫌いになった?」
西山の首にしがみついたまま、ボロボロ涙を流して叫ぶ。
「ええっ……?!」
西山もかなり混乱しているようだ。俺も何がなんだかわからない。金縛りが解けたと思ったら、今度は自分が自分じゃないみたいになったのだ。これじゃまるで別人……。
再び、全身総毛だった。まさか俺、旧校舎の幽霊に憑りつかれたんじゃ?!
「お願い、僕を抱いて、抱いてよ!」
こんなことを必死に西山に頼むだなんてそうとしか考えられない。つうか、なんてこと言わせてくれてんだよぉぉぉっ!!
「中根くん、まさか薬キメてる?」
んなわけあるか! しかしそう疑われても仕方ない豹変ぶりだろう。
「そういうプレイ?」
「早くっ……して……!」
俺じゃない俺に見つめられて、西山はごくりと咽喉を鳴らした。
「中根くんがそんなに欲しがるなんて、初めてだね」
西山はすっかり勘違いして嬉しそうに笑いやがった。否定したいが俺の体は勝手に動いて西山の口に唇を重ねている。あとで誤解を解くのに骨が折れそうだ……。
水音を立ててキスしながらお互いの服を脱がせ合う。はだけた俺の胸に西山が吸い付いた。
「あぁ……んっ」
俺じゃないのに俺の口から甘ったるい声が出た。
頭の中でずっと「ニイサン、ニイサン」と誰かが呼び続けている。愛しさと、哀しみと、嬉しさと、申し訳なさと……いろんな感情が渦巻いている。
いまや幽霊と一心同体となった俺は、『彼』が誰かを強く想っていたことに気付く。おそらく相手は男で、「ニイサン」と呼ぶところを見ると年上、もしかすると血の繋がった兄弟だったのかもしれない。
西山を見ていると胸が締め付けられる。こんなに愛おしい。肌を合わせられることが嬉しくてたまらない。触れられるだけで幸福感に包まれる。俺が西山に抱く形容したがい感情と、霊の想いがリンクしているのかもしれない。
※若干ホラー風味
部活終わりに誰かが「旧校舎に幽霊が出るらしい」と言い出したのがきっかけだった。
半分はそんなのはただの勘違いだと取り合わなかったが、残りの半分は自分の友達も見たとか、昔あそこで誰かが自殺したらしいとか、割と本気で信じている様子で、否定派と肯定派とでちょっとした言い合いになったとき西山が言った。
「俺が確かめて来るよ」
と。
夜。当然外は真っ暗。取り壊しが決まっているため電気が点かない旧校舎は言わずもがな。不気味な噂があるだけでも敬遠したいのに、日没後に足を踏み入れるだなんて正気じゃない。
さすがに大多数は「やめておけ」とまともな意見を言ったが、一部の馬鹿が「いいぞ、それでこそ西山だ、行って来い」と焚き付けてしまった。
制服に着替えた西山は俺の腕を掴んだ。
「中根くんも一緒に行こう」
「はあぁっ?! 行くわけねえだろ!」
腕を振り払おうとしたが、「じゃあ、行ってくる」と部員たちに挨拶した西山に難なく引きずり出されてしまった。
「行くならお前一人で行けよ! 俺はやだよ!」
「もしかして怖いの?」
俺を見下ろしてニヤリと笑う。
そういえばこいつ、幽霊とかまったく信じてない奴なんだった。
「肝試しとか遊び半分でやんないほうがいいんだって」
俺はため息をついた。
「旧校舎に行って戻ってくるだけだよ」
「祟られるのはお前一人だけにしろ。俺は入り口まで付いて行くだけだからな」
「デートみたいだね」
「呪い殺されろ!」
というわけで、俺たちは旧校舎へと向かったのだった。
旧校舎は木造の二階建てで、数年前まではここが3年棟として使われていたが、老朽化のため取り壊されることとなった。当然施錠されていて入れないのだが、誰かが鍵のかかっていない窓を一つ見つけて、そこから悪い奴らが出入りしているらしかった。
その窓を探して一つ一つ確かめていたら大きな桜の下の窓がガラリと音を立てて開いた。
「ここだ」
西山は窓枠に飛び乗って校舎の中に入ってしまった。ずっと締め切っていたせいか、窓から漏れ出てきた空気は外よりひんやりと冷たい気がした。
「じゃあ一階と二階と見てまわるから、中根くんはここで待ってて」
「わかった。気を付けろよ」
「心配してくれてありがとう」
「早く逝け」
あはは、と朗らかに笑って西山は廊下を進んでいった。すぐに暗闇に飲まれて姿が見えなくなる。聞こえていた足音ももう届かない。
風が吹いて頭上の木の葉がカサカサと音を立てた。肌寒さに震えが走る。
数分が経った。西山は戻ってこない。
「西山」
窓から呼びかけたが返事はない。
「西山っ」
少し大きな声を出したが応えはない。
「西山!」
怒鳴ると「どうした?」と少し離れたところから西山の声がした。足音が戻ってきて西山の姿もどんどん近づいてきた。
「どうしたの、中根くん」
「もういいだろ、戻ろうぜ」
「まだ一階を見ただけだよ」
「なにもなかったって言やいいじゃん」
「嘘は駄目だろ」
すぐ裸になってちんこ出すくせに変に真面目なんだから。
「だったら俺も行く」
「怖いの?」
「寒いんだよ!」
窓枠に乗りあがって廊下に下りた。風はないのに、やっぱり中のほうが空気が冷たい気がする。
二階への階段をあがっていたら西山が手を繋いできた。
「なにする」
「寒いんだろ」
西山の大きな手はカイロのように温かかった。俺たち以外誰もいないし、別にいっか。
階段の右手に教室、左手にはトイレがあった。トイレだけは絶対入りたくないので外で待つ。西山は平気な顔してトイレに入って行くと、バタンバタンと一個ずつ個室を開けて確かめていた。やっぱり神経が図太いんだと思う。
「なにもない」
戻ってくるとそう言ってまた俺と手を繋ぐ。暖を取るだけじゃなく、俺は心細さから西山の手を握り返した。
次は反対側の教室のほうへ向かった。一組から順に扉に手をかけて開くか確かめる。鍵がかかっているので窓ガラスから中を覗く。椅子を乗せた机が教室の後ろで固められている。
二組も同様。五組まで確認して六組で扉がガラッと開いた。俺と西山は顔を見合わせた。さすがの西山も神妙な面持ちだ。
「入ってみよう」
教室の中に足を踏み入れる。埃っぽさと黴っぽい臭いがする。長く誰も立ち入っていないとわかる澱んだ空気。
急に悪寒がして鳥肌が立った。ここは他の場所より一段と空気が冷たい。嫌な予感がしたとき、遠くから耳鳴りがやってきた。その直後、ズシリと肩が重くなった。
まるで誰かを背負ったみたいに。
――ニイサン。
鼓膜のすぐそばで声がした。背筋が凍る。西山の声ではない。もちろん俺の声でもない。教室の中にいるのは俺たち二人だけ。じゃあ一体誰の声だというんだ。
全身の毛が逆立ち鳥肌が立った。早くここから出たい。こんな場所一分一秒だって長くいたくない。
西山の腕を引こうとして愕然とした。体が動かない。首さえ動かせない。まさか金縛りだっていうのか?! 起きて立っているのに?!
足の裏に根が生えたようにびくともしない。呼吸は出来ているのに胸が苦しい。助けて。助けて、西山!
「特にかわったところもないな」
金縛りにあっていない西山は、あたりを見渡したあと「次行こうか」と俺に向き直った。
また「ニイサン」と耳の奥で誰かが囁いた。怖い! にいさんって誰だよ!!!!
「中根くん?」
動かせる目だけで必死に助けを訴えかける。動かずじっと見て来る俺に西山は首を傾げた。
「もしかして俺を怖がらせようとしてる?」
ちげえよ! 俺の異変に気付け馬鹿!
「それとも……俺を誘ってる?」
目つきをかえて西山は笑った。こいつぶん殴ってやりてえええぇぇっ!!!
「興奮してるのは俺だけだと思ってたのに」
俺の顎に手をかけると上を向かせる。さっきまでピクともしなかった体が、西山が軽く力を入れただけですんなり動いた。この調子で他の場所も、と動かそうとしてみたが無駄だった。
そうこうしている間に、こんな状況にもかかわらず興奮して盛る西山にキスされていた。柔らかく、温かい唇の感触。目に見えない鎖から解き放たれたように体が軽くなった。
「にいさん」
声は俺の声だった。声は俺の口から出ていた。
「にいさん?」
西山が怪訝そうに俺を見る。その目を見ていたら胸が締め付けられた。痛くて痛くてたまらなくて涙が溢れて来た。
「大好き」
そう言って俺は西山に抱き付いていた。
「中根くん?!」
「大好き! 大好き! お願い、僕を強く抱きしめて。めちゃくちゃに抱いて。お願い!」
「どうしちゃったんだよ、中根くん?!」
ほんとどうしちゃったの俺?! 西山を見てたら胸がズキズキと痛くなって、気が狂いそうなほど愛おしくなって、気が付いたらあんなことを口走っていた。
「僕を忘れた? 僕のこと嫌いになった?」
西山の首にしがみついたまま、ボロボロ涙を流して叫ぶ。
「ええっ……?!」
西山もかなり混乱しているようだ。俺も何がなんだかわからない。金縛りが解けたと思ったら、今度は自分が自分じゃないみたいになったのだ。これじゃまるで別人……。
再び、全身総毛だった。まさか俺、旧校舎の幽霊に憑りつかれたんじゃ?!
「お願い、僕を抱いて、抱いてよ!」
こんなことを必死に西山に頼むだなんてそうとしか考えられない。つうか、なんてこと言わせてくれてんだよぉぉぉっ!!
「中根くん、まさか薬キメてる?」
んなわけあるか! しかしそう疑われても仕方ない豹変ぶりだろう。
「そういうプレイ?」
「早くっ……して……!」
俺じゃない俺に見つめられて、西山はごくりと咽喉を鳴らした。
「中根くんがそんなに欲しがるなんて、初めてだね」
西山はすっかり勘違いして嬉しそうに笑いやがった。否定したいが俺の体は勝手に動いて西山の口に唇を重ねている。あとで誤解を解くのに骨が折れそうだ……。
水音を立ててキスしながらお互いの服を脱がせ合う。はだけた俺の胸に西山が吸い付いた。
「あぁ……んっ」
俺じゃないのに俺の口から甘ったるい声が出た。
頭の中でずっと「ニイサン、ニイサン」と誰かが呼び続けている。愛しさと、哀しみと、嬉しさと、申し訳なさと……いろんな感情が渦巻いている。
いまや幽霊と一心同体となった俺は、『彼』が誰かを強く想っていたことに気付く。おそらく相手は男で、「ニイサン」と呼ぶところを見ると年上、もしかすると血の繋がった兄弟だったのかもしれない。
西山を見ていると胸が締め付けられる。こんなに愛おしい。肌を合わせられることが嬉しくてたまらない。触れられるだけで幸福感に包まれる。俺が西山に抱く形容したがい感情と、霊の想いがリンクしているのかもしれない。