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洞窟(2-2)

2014.02.22.Sat.
<前話はこちら>

 床がゴツゴツして痛いので、立ってヤルことにした。

 やり方がわからずテンパる俺に対し、矢野は案外冷静に「濡らすものがないから……驚くなよ」と跪き、俺のちんぽを咥えた。驚くなと言われていたからか、声はあげずに済んだが、矢野の行動は俺をたまげさせた。

 視界が悪いせいで他の五感は研ぎ澄まされ、俺のちんぽをしゃぶる矢野の舌の動きや唾液の流れ、息遣いが生々しく伝達される。

 こういう危機的状況だからか、もともと俺にそういう素質があったのか、今まで付き合ったどの女とヤル時より興奮していた。

 大きくなったちんぽから口をはなし、矢野が立ち上がった。壁に手をついて俺に背を向け「いいよ、きて」と言う。

 きてと言われても……

「本当にいいのか? 痛いんじゃないのか?」
「死ぬまえにちょっとした痛みなんか怖がってらんないよ。早くしろよ、決心が鈍る前に」

 矢野はとうに覚悟を決めているらしかった。男前だぜ、矢野。

 じゃ、と矢野の尻を掴んで広げながら、ちんぽをあてがった。場所を探していると「あっ、そこ」と言われたところで止め、ゆっくり腰を押し進めた。

 キツくてとても全部中に入れられるとは思えなかった。強張る矢野の背中にキスしながら、やっと亀頭を押し込んだ。

「どうする? やめる?」

 矢野は首を左右に振った。

 手を前にまわし、矢野のちんぽを掴んだ。柔らかい。揉んでいたら硬くなった。

「扱きながら入れると、痛みが和らぐだろ。この痛みすら、快感になってくる」

 矢野の耳元で囁きながら手と腰を動かした。全部が中におさまり、体がぴったり密着する。矢野が長い溜息をついた。

「入ったね」と矢野。
「あぁ、入った」と俺。

 矢野のちんぽを扱きながら、そのリズムに合わせて腰を動かした。矢野の先走りで手はヌルヌルだ。柔らかい亀頭の先をクチュクチュ揉むと、矢野が俺をしめつけてくる。

「は、あんっ……手、止めて……出るよ」
「出せばいいだろ、そのためにヤッてんだから」

 手付きを激しくして、腰も突きあげるように打ちつけた。矢野が壁にしがみつく。

「あっ、はぁ……んっ……あっ、あっ……!」
「あー……すげぇ、おまえん中熱くてトロトロだ……やらしい穴してるな」
「だって……俺、思ってたより……気持ちいい……」
「だったらもっと突きまくってやる」

 矢野を引き寄せながら腰を打ちつけた。パンパンという音が洞窟のなかで反響する。その合間に、グチュッグチュッという濡れた音と矢野の喘ぎ声が混じる。洞窟風のラブホテルを作ったらはやるんじゃないだろうか。

「あぁっ! あっ、やめっ……て……もうっ……んあぁ! あ! でる! あ、あぁぁぁ……!!」

 矢野が体を丸めて固まった。それと同時に俺のちんぽをキュウキュウに締めつけてくる。どうやらイッてしまったらしい。

「どうせなら死ぬほどやろうぜ」

 矢野の片足を腕に抱え、半身を翻した矢野とキスした。こんな状況で男同士だということは実に些細なことだった。

 くの字に体を折った矢野を後ろから突いた。突かれるたび、矢野は声をあげた。視界が悪い上、洞窟の中、自分が獣になったような気がする。気がつくと、鼻息荒く、夢中で腰を振っていた。

 ※ ※ ※

 目が覚めた時、辺りが明るくなっていた。見上げると、夜の気配がすっかり消え去った青い空が見えた。動いたことで起こしてしまったのか、俺の隣でもたれるように座って寝ていた矢野が頭を持ち上げた。

「朝?」

 目ボケ眼で言う。

「そうみたいだ……ん? なんだ、あれは」

 壁伝いに視線を下に落とすと、鎖が奥まで伸びているのが見えた。洞窟が明るくなったことで初めてその存在に気がついた。

 色や錆び具合からかなりの年代物のようだが、人為的なそれは途中で切れるほど痛んではおらず、俺の予想が正しければ、出口へと続いているはずだ。

「出られるぞ」

 矢野も神妙な顔で頷いた。

 予想通り、鎖は出口まで続いていた。外に出たときは嬉しくて泣きそうだった。天井のない空を見ながら何度も深呼吸した。スコップとツルハシを置いてきてしまったが、もう二度と洞窟には入りたくない。今回のことで、暗闇閉所恐怖症になったかもしれない。

 二人とも空腹で、山を下り、車を走らせ、見つけた一軒目の店にメニューも見ずに飛び込んだ。腹を満たし、俺の運転で家に向かった。

「今回も散々な目にあったな」

 欠伸をしながら隣で矢野が言う。

「あぁ、まったく。おまえといるとろくなことがない。宝の地図は誰にもらったんだ?」
「えーと、誰だったかな……知り合いの知り合いだったかな……」
「怒らないから正直に言え」
「……実はニセモノ」

 消え入りそうな小さな声で言う。

「やっぱりな。おまえが仕組んだことだったんだろ? 今回のことだけじゃなく、今までの全部。いくらなんでも、こう毎回毎回、危ない目に遭うはずがない。今回のでさすがの俺も気付いたぜ」
「し、仕組んだなんて人聞きの悪い」

 そういう矢野の頬がピクリと動く。

「危機的状況にあるとき、人は恋に落ちやすいってなにかで読んだな。恐怖や興奮で胸がドキドキするのを、いっしょにいる相手への恋心と錯覚するんだ。おまえはそれを狙ってたんだ、違うか?」

 でなければ、俺とあんなことしない。横目に睨むと、矢野はびっくりするほど顔を真っ赤にさせていた。

「まじで?」

 思わず聞いてしまった。

「ハメようってつもりじゃなかったんだ……俺、俺、ずっとおまえのこと好きで……おまえにも好きになってもらいたくて……」

 俯き、口ごもる。

 俺がずっと黙っていると、観念したように「ごめん」と吐き出した。

「こういう状況で結ばれた恋人同士は、すぐ別れるらしいぜ」

 顔をあげた矢野がじっと俺を見る。頬が赤くなるのを感じ、睨むように前を見ながらステアリングを握りなおした。

「それでも付き合ってみる?」

 次の瞬間、矢野が抱きついて来た。危うくハンドル操作を誤り、ガードレールにぶつかるところだった。心臓がバクバク鳴っている。もう危ない目に遭わなくたっていいんだから、とりあえず無事に家まで帰してくれ。




熱伝導

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洞窟(1-2)

2014.02.21.Fri.
 矢野が持ってくるうまい話にはいつも必ず重大な欠点や欠陥があった。

 ある年の夏、人に知られていない穴場のビーチがある、と二泊の予定で出かけて行くと、漁船でおろされた先は、ゴミが打ち上げられる汚く小さな無人島で、漁船が迎えに来るまでの間、サバイバルさながらの生活を送った。

 また別の時は、車を新調したからドライブに連れて行ってやると言うので、矢野が極度の方向音痴だということも忘れて助手席に乗っていると、いつしか車通りの少ない山道になり、暗くなったころには山に囲まれた廃村に迷い込んでいた。荒廃した家屋の群れ、不気味に立ち並ぶ地蔵に、戦々恐々となりながら矢野と運転をかわって来た道を引き返した。

 また別の時は安い航空券が手に入ったから、と見るからにオンボロな小型飛行機に乗せられ、どういうサービス精神か知らないが、パイロットは奇声をあげながら蛇行運転し、時に一回転などしながら俺たちを目的地まで送り届けてくれた。飛行機からおりた途端、俺たち二人がゲロを吐いたのは言うまでもない。

 矢野はばかだ。本当にばかだ。しかし、毎回それに乗ってしまう俺もそうとうのばかだ。今後一切、矢野が持ちかけてくる話には手を出さないでいよう。もっともここから生きて帰られたらの話だが…。

 ここは暗い洞窟の中。少し離れたところから、ポチョンポチョンと沸き出る水の滴る音が聞こえてくる。見上げれば、日が落ちて暗くなった空が、岩の裂け目から小さく遠くに見える。

 ここで休憩することにしたのは、沸き水があることと、ずっと狭く暗い洞窟を歩きまわっていた閉塞感が、この小さな裂け目で少しでも紛れると思ったからだ。

 今回もまた、矢野が持って来た話だった。

「星野! 見てくれよ、宝の地図だぜ! 次の休みに探しに行こう!」

 目を輝かせながら、コピー紙に書かれた地図を見せてくる。どうせデタラメに決まっていると思いながらも、ちょっとした探検のつもりで「行こう!」と返事をしていた。

 地図に書かれた山のふもとで車を降り、そこからスコップとツルハシを持って山をのぼった。中腹に着くと、確かに洞窟らしき入り口があった。

 何枚かの板で乱暴に入り口を塞いでいるが、何者かによって下の板が剥がされ、身を屈めれば入れるようになっていた。俺たちもそこから失礼した。

 懐中電灯で照らしながら地図の通り進んだが、地図には書いていない横道がたくさんあり、俺たちはすぐ迷った。こっちの道だ、あっちの道かもしれない、と行ったり来たりしているうちに、自分たちの居場所さえわからなくなったのだ。

 かすかな不安を感じながら、闇雲に歩きまわった。宝のありかを探しているのか、出口を探しているのか、それすらはっきりしない。いったい何時間歩いていたのか。

「疲れたから休もうよ」

 座りこんだ矢野を叱り飛ばそうとしたとき、ポチョンポチョンという音が聞こえた。水が飲める、と音のありかを探し、咽喉の渇きを潤した。気分が少し落ち着くと、わずかだが風の流れを感じ、岩の裂け目があることに気付いた。そこから見える小さな空の色で日が落ちていることを知り、落胆するような気持ちになって休憩することにしたのだ。

「俺のせいでごめんね」

 しょんぼり肩を落とした矢野が、何度目かわからない謝罪を口にする。

「下手に歩きまわらずに、朝がくるまでここにいよう。とりあえずは体力温存だ」

 とは言ったが、朝になったからといって事態が好転するとは思えなかった。矢野もそれを感じてか、あるいは責任を感じてか、元気なく黙りこんでいる。

 もしかしたらこの洞窟から出られないまま餓死してしまうかもしれない。半日の予定で来たから食料も持っていない軽装。あとで俺たちの死体が見つかったとき、何の準備もなく洞窟に入った無謀でばかな若者だと呆れられてしまうだろう。

 そんな想像をしたら急に気が滅入った。

「俺たちここで死ぬのかなぁ」

 つい弱音を吐いてしまった。

「死んじゃうかもね」

 隣の矢野も同じ気分だったらしく、陰鬱に呟く。

「死ぬ前に、なにがしたい?」

 宝くじが当たったらなにを買う? そんな調子で聞いてくる。

「なにを……うーん、そうだなぁ、ラーメン食いたい」
「おなか減ったもんな」
「矢野は?」
「俺は……セックスしたい。星野、おまえのケツ貸せよ」
「ばか言え、おまえが貸せよ」
「いいよ」

 あっさり返事が返って来たので、驚いて隣の矢野を見た。節約のため、懐中電灯は消しているので、ほとんど矢野の顔は見えない。いったいどんなツラで「いいよ」なんて言ったんだ?

「本気かよ」
「最終的には三大欲求でしょ。食べるものはないし、死んだらいくらだって寝られるし、いま出来ることはセックスくらいだろ。どうせ死ぬなら気持ちいいことして死にたい」

 暗闇の中見つめあった。地面が揺れているような錯覚を感じながら、どちらともなく顔を近づけ、キスしていた。