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楽しい初カノ!(2/2)

2015.02.09.Mon.
<前話はこちら>

 曽我さんと一緒に帰らなくなったからと言って西山を誘えるほど俺の面の皮は厚くないので、部活が終わるとそそくさと一人で下校し、部活がない日は教室で少し駄弁ってから帰るようにしていた。

 事情を知らない連中は興味津々に詮索してきた。事情を知ってる一部の部員は俺に優しくなり、なぜか西山への当たりが強くなった。

 持つべきものは仲間だと実感したとき、そばに西山がいないことを寂しく思った。

 今日もクラスの連中と話をしてから教室を出た。門を抜け、一人で帰路につく。ふと気が向いて、いつも西山と別れる角を曲がってみた。西山の家までの道順は割と単純で迷わず行ける。
 近くまで来たとき、聞き覚えのある男女の話し声が聞こえて俺は足を止めた。

「だから好きでもない子とは付き合えないよ」

 西山の声だ。

「それって私への嫌味?」

 こっちは曽我さんの声だ。
 二人は角を曲がってすぐのところで会話しているようだった。壁に張り付き耳をそばだてた。

「やっぱり中根くんのことは好きじゃないんだろ」
「好きだよ。だから付き合ってるんだもん」
「じゃあどうして俺にも好きだって言うんだよ」
「中根くんは友達としての好きだもん。西山くんの好きとは違う」
「これ以上中根くんを振り回すような真似はやめろ」
「西山くんが私と付き合ってくれたらやめる」
「話にならない」

 珍しく西山の声は苛立っていた。いや、初めて聞く。

「俺から中根くんに全部話す」
「友達思いの優しい西山くんがそんなこと出来るわけない」

 曽我さんはせせら笑った。なんて意地の悪い笑い方をするんだ。

「黙ってた俺がいけなかったんだ。明日正直に全部話す。中根くんに嫌われてもいい」
「私が嘘だって言えば信じるから!」

 ヒステリックに叫んだ曽我さんが角から飛び出してきた。俺に気付かないまま、反対方向へ走っていく。
 その後ろ姿を呆然と見送った。どうしてあんな女を一瞬でも可愛いと思って好きになりかけていたんだろう。底なしの馬鹿野郎だ俺は。

 角を覗いたがもう西山はいなくなっていた。追いかけるように家へと向かう。でかい家の前でチャイムを鳴らした。

『中根くん、どうしたの?』

 スピーカーから驚いた様子の西山の声が聞こえてきた。

「入れてくれ」
『いま開ける』

 自動で門が開いていく。



 俺を招き入れた西山はいつものようににこやかだった。でもその目はいつもと違って揺らいでいた。同情とか罪悪感とか疑問とかが浮かんで見える。いろんな感情の元になってるのが俺への優しさだってことはよくわかってるつもりだ。

「飲み物持って来るよ」
「俺、曽我さんと別れることにしたから」

 部屋を出て行こうとする西山の背中に言った。ドアノブを掴んだ西山が立ち止まる。

「まぁ、付き合ってたかどうか怪しいけど」
「聞いてた?」

 背を向けたまま西山が問う。大きな背中が頼りなく見えるほど西山は動揺して不安がっていた。

「綾瀬に聞いた」

 さっきの曽我さんとのやり取りは聞かなかったことにした。西山の肩から力が抜ける。

「黙っててごめん」
「お前の言う通り、俺がモテるわけねえよな」
「そんなことないよ。中根くんは可愛い」

 振り返った西山がぎゅっと俺を抱きしめる。可愛いとかペット扱いかよ。

「言っとくけど、俺のこと好きになってくれる子が絶対どっかにいるからな」
「ここにいるよ」
「男に言われても嬉しくねえよ」
「俺は中根くんに好きって言われたら嬉しい」
「死んでも言わねえ」
「死ぬまでに絶対言わせてみせる」

 西山の顔が近づいて来きたので少し首を傾けてやった。唇が合わさる。西山の背中に腕をまわした。



 ベッドの上で裸に剥かれ転がされた。躊躇なく真っ裸になった西山が覆いかぶさってくる。

「最近、綾瀬くんと仲いいからちょっと焼きもちやいてた」

 俺の乳首を嬲りながら西山が言った。

「綾瀬は、事情知ってるから……ッ」
「だからあいつ俺に冷たかったんだ」

 クスクスと笑ったあと、急に西山は真顔になって、「ヤラれてないよね?」真剣に聞いてきた。

「んなわけねえだろっ」
「他の誰かにヤラれたら許さないよ」
「あっ、う」 

 ジュッと強く吸われながら乳首を噛まれて顔を顰めた。痛いのに快感もあって俺のちんこが立ち上がる。それを西山が握って上下に扱いた。

「はぁ……あ、ん……あっ、あっ」
「中根くんは俺のものだから」

 首筋や肩、胸に吸い付いて自分の印をつけていく。

「あっ、やめ……見えるとこにつけんなよ……っ」

 西山の口がどんどん下がっていく。最終的に俺の勃起したちんこを咥えてしゃぶりだした。

「はぁ…んっ……あ、あぁ……あ、やだ……西山、出る……はなせ、出るからっ!」

 根本まで咥えこまれた。このまま出せってことみたいだけど、口に出すのは躊躇してしまう。必死に堪え抵抗してみたけどみるみる上達していく西山のテクの前には無意味だった。

「あっ、やだ、やっ、アッ、西山ぁ、出る…出ちゃうからぁ……っ!!」

 吸いだされるように射精していた。加減なんか出来ずに結構な量を吐き出した気がするが、西山はそれを一口で飲み干してしまった。

「だんだんマズいと感じなくなるのって中根くんの味に慣れたってことかな?」

 なんて口を拭いながら言って俺を赤面させた。そんなこと俺が知るか!

 使い捨てのローションを取り出して「これもまた買い足しとかないと」と西山が呟きながら俺の足を抱え上げて中心に注入してくる。
 体の中に冷たい液体が注ぎ込まれるのを感じて眉を寄せた。それを掻きまわすように押し込まれた西山の指が動く。

「んっ、あぁ……ん! あんま、動かすなよっ」
「今日っていつも以上に感じやすくなってない?」
「あっ、あぁ! やっ…やだっ……! あっ、そこ、擦んなぁ……っ!」

 一番敏感な場所を重点的に揉まれて尿意に似たあやうい感覚に体から力が抜けていく。本当に漏らしちゃいそうな気がして不安なのに、西山は嬉しそうにそこばっかり弄ってくる。

「いやっ、あっ、あぁんっ、やだって、西山ぁ…っ! も、待って……もうそこ、しないで…!」
「中根くんは女の子と付き合うより、俺とこうしてるほうが似合うよ」

 どういう意味だゴラァッ! といつもなら怒鳴り散らしているところだが、それどころじゃないくらい、気持ち良くて声が止まらない。

「もう、いいかな」

 西山は独り言ちると指を抜いた。開いた俺の足の間から、西山の馬鹿みたいにでかい一物が見えて咽喉が鳴った。

 恐怖と、期待から。

 シュッシュッと扱かれてさらに大きくなるのを目の当たりにするとさすがに恐ろしさが上回る。どこを取って比べても男として敵わないと本能で思い知るほどの威圧感が全身から発せられるのだ。俺みたいな平凡な雄はただ怖れをなしてひれ伏すしかない。

 先端が押し付けられた。

「ゆっくり……っ!」
「わかってる」

 掠れた声で答えた西山のものがゆっくり俺を押し開く。亀頭が入るこの瞬間だけはいつも恐くてたまらない。セックスをする女の子は毎回、男の強直で性器を刺し貫かれているなんてすごいことだ。これで快感がなければただの拷問だ。

 西山は俺の腰を引き寄せて隙間なくぴったり中へ埋めるとはぁ、と満足げに息を吐いた。

「あいかわらず、きついな」
「お前がでかすぎんだよ」
「でもだいぶ、慣れてきたみたいだ」

 そういえばこいつと何回ヤッたんだっけ。部活が一緒で知り合った、ただの友達ってだけの西山と。普通、友達とこんなのやったりしないよな。しかも今日は誘われてもないのに、のこのこ自分から家までやってきたりして。
 あんまり深く考えないほうが良さそうだ。自己嫌悪で死にたくなる。

 よっ、と膝の位置を変えた拍子に、西山の額から汗が滴り落ちてきた。内ももを伝って滑り落ちていく感触に背筋がゾクゾクする。

 西山が腰を動かし始めた。浅いストロークで馴染ませながら、少しずつ深く早くなっていく。俺の中で刀を研いでいるようだ。

「あっ、あっ、あぁぅ」
「俺に絡みついて来る。そんなにいい?」
「はあぁ…ん…いい……っ、あ、あぁっ、気持ちいい……!」
「どこがいいか教えて」
「いっ、あ……はぁ……ぁん! 西山の…ッ…ちんぽで…擦ってる、とこ……っ、あっ、や、そこっ! そこ、い、い……ッ!!」
「また起ってきたもんね」

 笑いながら大きく腰を振って突きあげて来る。

「んあぁ! あっ、あぁっ、やだっ! 奥、そんな……強いの、だめ…ぇ…!」

 ギシギシとベッドが軋む。その音にまじって携帯の着信音が聞こえてきた。

「中根くんの携帯鳴ってるよ」

 動きを止めた西山が、ベッドの端に丸められた制服から携帯電話を探し出し、画面を見ると顔を顰めた。

「曽我さんからだ」
「えっ」
「ちょうどいいじゃん、別れるって言ってやれよ」
「いま?!」

 西山のちんこをケツに入れられたこの状況で話せっていうのか?!

「ほら、早く」

 通話状態にすると西山は俺に携帯を持たせた。西山を睨み付けながら仕方なく耳にあてる。

『中根くん?』
「う、うん」
『最近一緒に帰ってなかったからどうしてるかなと思って』

 猫なで声でなにを白々しい。西山にはしっかり会いに来て付き纏っていたくせに。西山にバラされる前に手を打っておこうって魂胆が見え見えだ。

『明日一緒に帰れない?』

 中でグッと西山が動いた。力を入れているのか、カサがぶわっと広がるのを感じる。

「っ……明日は、無理」
『明後日は?』
「もう、一緒に帰らない」
『どうしてそんなこと言うの?』

 グヌゥと西山が出て行く。段差のあるカリ首に中を捲られて背がしなった。

「…ッ……んっ!」

 出て行った長大なものがまた戻ってくる。焦らすようなゆっくりとしたピストン運動。西山は楽しそうに笑っている。

「やっ…ぱ、曽我さんとは、付き合えない……ッ」
『西山くんに何か言われた?』
「なに、も……んっ…ふ」

 あ、やばい、声が。

『嘘! 何か言われたんでしょ?! 全部西山くんの嘘だから! 実は私、前に西山くんに告白されたことがあって……! 私と中根くんを別れさせる嘘だから!』
「もう、いいよ…っ…とにかく、もう会いに……来ないでほしい。これで、終わりだからッ」

 腰を回しながら出し入れされて声がひっくり返った。段々速度を増していく。掻きまわされるたび中で粘ついた音が立つ。こんなもん絶対聞かせられねえ。

「じゃ、ばいばい!」

 急いで通話を切る。ついでに電源も落とした。

「あっ、も……この馬鹿! 電話中になにやってんだよ!」
「興奮したくせに」
「してねえよ!」
「すっごい締め付けだったよ。根本は千切れるくらい絞ってきて、奥はうねって絡んできた。曽我さんに声、聞かれちゃったね」
「おめえのせいだろうが!」

 曽我さんは自分のことで頭がいっぱいで気付いてなさそうだったけど。

「じゃ、続きしよ」

 煩わしさから解放されたみたいに清々しい顔で言うと、西山は体を前に傾けてピストン運動を再開した。パンパン音を鳴らしながら打ち込んでくる。ぶっとい亀頭が一番奥を叩きつける。

「はっ! あぁん! あっ、あん! やめ……っ、そんな激しいの、やだっ、ぁんっ! あっ、やだっ、やめろってばぁっ、はぁっ、ああぁ……んん!!」
「もう、出すよ」

 手を取られ、股間へ導かれた。突かれるたびにブルンブルンと揺れる俺の勃起したちんこを握って自分で扱いた。

「んぁっ、あっ、あ、西山ぁ、やだ、気持ちいい、あはぁっ、あっ、出る、出るぅ……! 西山、俺、イク……!!」
「中根くん…ぁ…俺も…はっ…あぁ…出る、出る……ッ」
「あッ――!! 西山……っ!!」

 俺たちはほとんど同時に精液を噴き上げていた。



 曽我さんは姿を見せなくなった。
 俺が見る景色もいつも通りに戻った。

 だけどあれ以来、西山の家に誘われる回数が増えて、以前に増してベタベタ構われるようになってしまった。
 操は自分で守らなきゃいけない。流されるまま友達の西山とあんなこと続けてたら後戻りできなくなってしまう。

 家でマスかいてるとき西山を思い出しながらやってる時点でもう相当やばいんだけど。



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楽しい初カノ!(1/2)

2015.02.08.Sun.
楽しい合宿!楽しいお泊り!楽しい勉強会!

 部活が終わり、西山と門を出たところで一人の女の子が飛び出してきた。彼女はここから数キロ離れた場所にある高校の制服を着ていた。

「あの、中根さん、良かったらこれ!」

 と小さな紙袋を俺に差し出してくる。

「えっ?」
「甘いもの、嫌いですか?」
「え、いや、別に……えっ?」

 男子校にいて女の子と話す機会が滅多にない上、上目使いの彼女はよく見ると結構可愛くてテンパッてしまい状況把握に時間がかかった。

 そうだ、今日はバレンタインデーだ!
 この紙袋はチョコか? 俺に?! まじで?! もらっていいの?!

 驚きと、こんな往来でチョコをもらった気恥ずかしさとで、なんとなく西山の顔を窺ってしまう。西山は冷やかすでもなく、少し顔を険しくして口も真一文字に閉じていた。

「中に手紙が入ってるので読んで下さい。それじゃあ」

 女の子はスカートの裾を翻すと走り去ってしまった。俺はと言えば、受け取った紙袋をどうしようかとやり場に困っていた。

「バレンタインとか……男子校にいると忘れちまうよな」

 照れ隠しに頭をポリポリ掻く。

「どうするの、それ」

 西山は冷ややかな目線で紙袋を見た。

「どうって……もらっちゃったから食うけど」
「見ず知らずの子がくれた物を?」
「毒でも入ってるっていうのか?」
「何か裏がありそう」
「なんでだよ」
「だって中根くんはモテるタイプじゃないから」

 本人目の前にしてよくそんな失礼なことが言えるもんだ! 逆に感心する。

「モテない俺がチョコもらったからって僻んでんじゃねえよ」
「浮かれてないで冷静に考えてって言ってるだけだよ」

 悪かったな浮かれてて!! 鏡見て冷静になれとでも言いたいのかこいつは!!

「もうお前なんか知らねえ」

 西山を置いて先を歩いた。「待ってよ」と追いかけてきた西山に腕を掴まれたが、力任せに振り払ったあと道路を渡って距離を取った。

「中根くん!」
「うるせえ、明日から話しかけてくんな」

 がくりと肩を落とす西山から顔を背け、早足でその場から離れた。



 手紙にはこう書いてあった。

『登下校のときに何度か見かけて、いつも楽しそうでいいなぁと思っていました。私もあなたのお友達にして欲しいです。良かったら電話かメール、下さい。曽我志穂』

 電話番号とメールアドレスも書き添えられていた。もしかして悪戯かも、なんて思ったけど、男だったら危険とわかっていてもあえて踏み込む勇気も必要だとまずはメールを送ってみた。

『中根です。チョコレートありがとうございました。おいしかったです』

 送信する指が震えた。以前の俺なら怖くて恥ずかしくて自分から連絡なんて取れなかっただろう。でも今の俺は違った。西山にお前がモテるはずがないと言いきられた怒りから、それに反論するためにどうしても事の真偽を確かめる必要があったのだ。

 俺だって。西山の隣に並ぶとチビでガリの貧相な男に見えるけど、身長も体重も平均ど真ん中の平凡な俺だって! 世界のどこかには俺のことを唯一無二の存在だと見つめてくれる子がいるんだ! 

 どうしてもそれを証明したかった。だから数分後に『志穂です。チョコ食べてくれたんですね。いきなり渡して不審がられてないか不安だったんです。だから、良かった。嬉しい!』とハートマーク付きのメールが来たとき、すぐさま『良かったら付き合いませんか? とりあえず友達からで』と返信していたのは我ながら大胆で恐れ知らずだと思った。

 それから数時間、返事がこなかった。これ絶対引かれたと自分の行動を悔やんでベッドの上をのたうち回ったいたら、寝る前になってやっと『私でよければ』とメールがきた。

 とりあえず明日の部活が終わる時間、門の前で待ち合わせをした。「付き合うことになったから」と西山に彼女を紹介するためだ。



 今日は朝から落ち着かなかった。朝ごはんを食べていたら曽我さんからおはようのメールがきて顔がにやけた。
 授業中も、今日から俺も彼女持ちかと思うと見える景色が一変したような気がして、教室のクラスメイトたちに優越感を持ったりした。

 クラスの違う西山と一度、休み時間に廊下ですれ違った。西山は何か言いたげな顔で見つめてきた。すぐ目を逸らしたあと、くだらないことで喧嘩をしてると思いなおして、失礼な発言を許してやろうと寛大な気持ちになったりもした。
 だから部室で顔を合わせたとき俺から声をかけてやった。西山は嬉しそうに笑い、「昨日はごめん」と謝ってきた。別にと許したあとはもう普段通りだった。

 そしていよいよ、帰宅の時間。西山と二人で門をくぐると、昨日の約束通り、曽我さんが俺を待っていた。

「お疲れ様」

 と部活が終わったばかりの俺を笑顔とともに労わってくれる。彼女ってこんなにいいもんだったんだ。

「悪い、西山、今日はこの子と帰るから」
「えっ、あぁ……わかった」

 珍しく歯切れの悪い西山が可笑しかった。鳩が豆鉄砲を食らった感じってこういうのを言うのかな。これで昨日のチョコが悪戯や冷やかしじゃないってわかっただろう。

「中根くん、三人で帰ったらいいんじゃないかな? そっちの方が楽しそうだし」

 曽我さんが西山に気を遣ってそんな提案をする。なんて優しい子なんだ。

「曽我さんがいいなら俺は別に」

 しっかり西山に見せつけておくにはちょうどいい。

「じゃあ一緒に帰りましょ?」

 優しい曽我さんを真ん中に俺たちは三人で一緒に帰った。

 曽我さんは気の利く優しい女の子なので、俺だけじゃなく西山にも話を振っていた。西山は緊張でもしているのか、いつもみたいな明るさはなくて言葉少なく別人みたいだった。
 途中、曽我さんを駅まで送るために西山と別れた。

「西山くん、あんまり話さなかったけど怒ってたのかな?」

 曽我さんがぽつりと呟いた。

「そんなことないと思うけど。あいつなりに気を遣ったんじゃない」
「私が遠くから見てたとき、中根くんと西山くん、すごく楽しそうだったから」
「うん、普段はすごくうるさいし、馬鹿」

 ウフフ、と曽我さんは口に手を当てて笑った。男子校でこんな仕草を目にすることはない。何もかも新鮮だ。

「明日、部活休みだから俺が迎えに行くよ」
「ううん、私に行かせて。待ってるの好きなの」
「風邪ひかないように、暖かくね」
「うん。それじゃあ、また明日ね」

 曽我さんは手を振りながら駅の改札を抜けて行った。



 翌日の昼休み、西山の教室へ出向いた。友達と弁当を食べていた西山が、戸口に立つ俺を見つけて廊下まで出て来る。

「どうしたの?」
「今日も彼女が来るらしいんだ」
「あぁ……」

 西山の顔から笑みが消える。

「わかった、今日は一人で帰るよ」
「ん、悪いな」

 あっさり引き下がられて少々拍子抜けする。もっとこう……駄々をこねられるかと思っていたのに。

「付き合うことにしたの?」
「まぁ、そんな感じ」
「ふぅん。じゃあもう今日から一緒に帰れないね。俺は他の奴と帰るから、中根くんは気にしないでよ」
「あぁ」
「良かったね」

 にこりと笑うと教室へ戻って行った。俺はなんだか廊下に置き去りにされたような寂しい気持ちになって、クラスメイトに笑いかける西山を複雑な気分で眺めた。



 放課後、門を出ると曽我さんが待っていた。

「西山くんは一緒じゃないの?」
「うん、今日から一緒に帰るのやめた」
「私のせい?」
「違うよ。あいつは別の奴と帰るんだって」

 曽我さんは自分のせいじゃないかと落ち込んで黙り込んでしまった。だから俺は励ますように無理して明るく振る舞った。
 学校で起こったことを面白おかしく大袈裟に話した。曽我さんはやっと笑ってくれた。興味を持って質問してくれた。俺は持ってる情報すべて曽我さんに話した。

 駅で別れるとき、曽我さんは笑顔を取り戻していた。見送ったあと、俺は長いため息をついた。



 一週間も経たずに、クラスでも部内でも、俺に彼女が出来たという噂は広まっていた。冷やかされたし、持ち掛けられる猥談の数も増えた。いつの間にかポケットにコンドームを入れられていたこともあった。使う時なんかねえよとゴミ箱に叩きこんだ。

 彼女の顔を見てやろうと、部活終わりに数人の部員が付いてきた。勝手にしろと俺も止めなかった。
 曽我さんは門にもたれて立っていた。近づく俺たちを見つけると門から背を離し、体ごとこちらへ向き直る。
 誰かが「可愛い」と言った。「俺に譲れ」とも聞こえた。俺は目を伏せた。

「中根、ちょっと」

 同じ二年の綾瀬が俺の肩を掴んで引き留めた。他の連中は曽我さんに夢中でどんどん進んでいく。少し距離が空いてから、

「あの子が、お前の彼女?」

 と綾瀬は声を潜めて聞いてきた。

「たぶん」
「まじか……」

 綾瀬は自分の顎を撫でた。

「なんだよ?」
「いや……、俺の見間違いかもしんないんだけど、一ヶ月くらい前、外走ってる時に西山に告ってきた子に似てんだよな」
「たぶん、あの子で間違いないと思うよ」
「お前も知ってたのかよ」
「いや、初耳。でも、曽我さん、ずっと西山の話ばっかだったから」

 綾瀬は口を閉ざし、同情する目で俺を見た。

 一緒に帰りだした二日目、西山がいないことで機嫌を損ねた曽我さんを笑顔にしたのは西山の話をしたときだった。質問されるのはすべて西山のことだった。薄々気づいて情けなくなりながらも俺は西山のことで知っている情報を全て曽我さんに教えた。

 今日までの数日間、俺と曽我さんの話題は西山のことばかりだったのだ。

「あの子と付き合ってること西山は知ってんのか?」

 綾瀬に頷く。綾瀬はまた黙り込んだ。しばらくして、

「今日は俺らも一緒に帰るから」

 と俺の背中をバシンと叩いた。そんなに痛くもないのに、涙が出そうだった。

 今日は綾瀬たちがいるからか、曽我さんは西山の名前は口に出さなかった。終始笑顔でそつなく彼女役を演じると、可愛く手を振って駅の構内へ姿を消した。

 帰ってから、一緒に帰れないからもう待たなくていいと曽我さんにメールをした。わかったとそっけない返事がきただけだった。

 西山の言った通り、俺は浮かれて冷静さを失ってただけだった。俺なんかがモテるわけないんだ。俺はただ西山に近づくための踏み台に過ぎなかったんだ。
 西山は俺が傷つかないよう忠告してくれたのに。見せつけるような真似をした俺はなんて馬鹿だったんだろう。西山に合わせる顔がない。