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再会(2/2)

2014.08.14.Thu.
<前話はこちら>

 斉藤に触れられるだけでそこから体が疼き始める。
 姫泣き油など不要で、俺は自ら体を開き、入れてくれと懇願した。

「ずいぶん慣らされてるな」
「誰のせいだ…っ」
「自業自得だろ」

 指が抜かれてかわりに斉藤のペニスがなかに入ってきた。顎が疲れるほどしゃぶって大きくしたものがメリメリと俺を引き裂き奥をこじ開ける。

「う…うっ…あ…!」
「喜んで中がビクビクしてるぞ」
「…るせ…あ…っ、はやく動けよ…!」
「いちいちうるさいお姫様だ」

 苦笑交じりに言うと斉藤は腰を動かした。一擦りに体が震える。全身が感じる。山城のときには得られなかった限界を超えた快感が恐ろしいくらいだった。山城のセックスと何が違うのかわからない。強烈な記憶を呼び起こす斉藤の低い声だろうか。無骨な手だろうか。

 刑務所のなかにいるとき俺は毎日斉藤を思い出していた。山城に犯されるたび、斉藤と比べていた。ただ憎いだけじゃないのはうすうす気づいていた。苦痛と表裏一体の快楽を俺に教えた斉藤を思い出しては焦がれていた。

「アッ、アァッ…いい…っ!…もっと、もっとしてくれよ!」
「おいおい、姫泣き油は塗ってないんだぜ」

 俺の足をつかんで左右に大きく開かせると、斉藤は激しく腰を振った。長大なものが俺の最奥に叩きこまれる。

「アァッ!!…うっ、アッ、あぁ…ん!当たってる…っ、奥まで…もっと、アァッ…!」
「すっかり淫乱な雌犬に仕込まれたようだな」

 山城にこんなふうにねだったことはない。山城は俺をレイプした最初の頃を除くと、抵抗しない俺に乱暴はしなかった。触手を伸ばして獲物を捕食する軟体動物のように、言葉や視線でじっくりじわじわと間合いをつめて俺をがんじがらめにしてから俺を抱いた。
 ねちっこいセックスだった。強い快感はあった。だが頭の芯まで痺れるほどじゃなかった。ところがどうだ。相手が斉藤だと、言葉で辱められるだけで先走りが滲み出る。少し触れられただけで乳首がピンと立ち上がる。
 斉藤のちんぽを進んでしゃぶり、煽るように足を開いて見せつけた。顔色一つかえない斉藤に見られているだけで、体がガクガク震えた。息遣いが荒くなった。斉藤にまつわる記憶が俺を狂わせたとしか思えない。

「はぁ…ん…!アッ、出るっ…あぁ…出る…!」

 自分で屹立を握って扱いた。勢いよく精液が飛び出す。それでもまだ収まらない。

「物欲しそうに締め付けるんじゃねえぞ。イッたばかりで欲張りな奴だ」

 笑う斉藤に見下ろされながら奥をガンガンに突きあげられる。布団の上で俺の体がずりあがっていくほど激しい。

「あぁっ、あっ、あんっ、あっ、あぁっ!気持ちいい…っ、あんたのちんぽ、気持ちいいんだよぉ…っ!ムショで他の奴にやられてても…ずっと、あんたのことばっか思い出してたんだ…っ…」
「可愛いことを言えるようになったじゃないか。俺のペットになるか?え、どうだ?」
「な、る…俺を、あっ、あんたのペットにして…っ、ペットでいい、から…!」
「出所祝いに、中に出してやるぜ」

 体の奥に熱いものが吹き上がるのがわかった。ビクビクと脈打つものから大量の精子が俺のなかに注ぎ込まれる。

「う…ん…あ、アァ…、イク…イクゥ…!」

 俺も二度目の射精をした。



 突然脇腹に痛みを伴う衝撃が与えられ俺は目を覚ました。すでにスーツに着替えた斉藤が、ネクタイを締めながら俺を見下ろしていた。起こすために俺の脇腹を蹴ったとみえる。ずいぶん乱暴な目覚ましだ。

「やっと起きたか。今日はどうする気だ」
「どうって…」
「家に帰るのか。このままここにいるのか」
「いてもいいのかよ」
「構わんが金目の物はなにもないぞ」
「もう盗みはやんねえよ」

 斉藤は無言でにやりと笑うと部屋を出て行った。真っ裸のままトイレで用を足して布団に戻り、俺はまた眠った。昼過ぎに目を覚まし、台所を漁って出てきたカップラーメンを食べるとまた眠った。
 物音で目が覚めた。部屋が薄暗いところを見るともう夕方のようだ。玄関のほうからガサガサとビニールの音がする。もう帰って来たのかと体を起こすと、コンビニの袋を手にした斉藤が部屋に入ってきた。

「今日は帰りが遅くなる」

 とテーブルに袋を置く。弁当のようだ。

「仕事?」
「ああ」
「女じゃなくて?」

 からかうつもりで言った言葉。斉藤に無言でじっと見つめられ、急に恥ずかしくなった。

「別に俺には関係ねえけど」
「嫉妬か」
「んなわけあるか」
「昨日の女とは利害の一致ってやつだ」
「はぁ?」
「昔の男に付き纏われているから俺に用心棒になってくれって頼まれたんだ。礼は自分の体で払うからってよ」
「あんたってほんとろくでもねえおまわりだな」
「そんな俺に惚れてんだろ」
「ぬかせ」

 はは、と笑った斉藤が俺に背を向ける。

「もう行くのかよ」
「あぁ、仕事中だからな」
「…俺も配達の仕事あるからこれ食ったら出てくよ」
「そうか」

 玄関で靴を履く斉藤の背中に抱き付いた。振り返った斉藤の口に吸い付く。音を立てて激しく舌を絡め合う。斉藤の腕が俺の体を抱きしめる。

「仕事だっつってんだろうが」

 ベルトを外す俺に斉藤が呆れたように言う。それを無視し、股間に顔を埋めた。嫌悪感とは反対の感情がわきあがってくるソレを咥えてしゃぶりつくす。立ち上がったものに跨り自ら腰を下ろした。
 斉藤が下から俺を突き上げる。

「盛りのついた犬みたいに、誰彼かまわず腰振るんじゃねえぞ」
「嫉妬?」
「馬鹿が」

 斉藤がにやりと笑う。
 憎い相手なのに…。笑みを浮かべる唇に自分の口を押し付けた。


恋のつま先

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再会(1/2)

2014.08.13.Wed.
<前話「ノビ」はこちら>

 一年半の実刑をくらった。
 仮釈放が認められ、迎えに来た母親と一緒に実家へ戻った。父親は仕事でいなかった。本当は一緒に迎えに来たがっていたのよと母親は言うが嘘だろう。
 久し振りの我が家で手持無沙汰になる俺に母親は飯を勧めた。飯の支度をしながら声を殺して泣く母親の背中に猛烈に罪の意識がわいた。
 まともになろう。本当に更生しよう。数年ぶりのおふくろの味に俺まで泣きそうになった。

 それから俺は真面目に仕事探しをし、新聞販売店で働くことになった。面倒な保護観察官との面接もきっちり行い真面目に暮らしていた。初めての給料で両親を食事に誘った。母親は珍しくめかしこみ、まともに口をきいてくれなかった父親は「お疲れさん」と俺にビールを注いでくれた。

 遊んで過ごしたために単位を取り損ね、学費は自分で働いて払えと親に突き放され、仕返しの気分で大学を辞めてから友人知人の部屋を転々とした。いろんなバイトをやったがどれも長続きしなかった。ホストになったこともある。水商売の女のヒモになったこともある。
 悪い知り合いばかりが増えていき、そのなかで空き巣に入る方法を教わった。その日食べるために盗みに入った。収穫はまちまちだったが、たいした苦労もせず、むしろスリルを味わえながら金が入る。ちょろい商売だ。他人が働いて得た金を、なんの呵責も感じずに懐に入れていた。

 俺が盗みに入って奪ってきた金は、俺が必死に配達先を覚え、午前二時から一軒一軒のポストに新聞を入れて得た給料と同じ、かけがえのない金だったのだ。母親が喜んでめかしこむような、ずっと怒っていた父親の口を開かせるような、そんな大事な金だったのだ。
 保護司との面接でもそのように素直に話すと「よかったですね」と笑って頷いてくれた。
 取り返しのつかないことをした。罪は消えない。時間は戻らない。せめてこれからは真っ当に生きていこう、そう思っていたある日。

 夕刊の配達をしていた俺は、とあるマンションから出てきた一組の男女に気が付いた。二人は俺とは反対方向へ歩いていく。その男の後ろ姿に見覚えがあった。
 動悸が激しくなった。体が熱くなりダラダラと汗をかいた。新聞を持つ手が震えた。膝も笑っていた。俯いた俺の足もとにポタリと汗が落ちた。あれは間違いなく、俺をパクッた三課のデカ、斉藤の姿だった。
 忘れもしないその姿に、一瞬で頭に血が上った。

 刑務所のなかで俺は山城と言う自称やくざの幹部だという男の女だった。若くて少し見た目がいいという、それだけの理由で犯された。精一杯抵抗したが、山城の仲間に押さえつけられてむりやり犯された。プライバシーなどない空間で、俺が女にされたことはすぐ知れ渡り、山城以外の男も俺にちょっかいをだしてきたが、山城の睨み一つでなくなった。
 幹部なのかはわからないが、山城がやくざなのは本当のようだった。
 山城の女でいることは刑務所内ではいろいろメリットがあった。だから抵抗したのは最初の頃だけで、あとは俺も嫌々ながら山城の女でいることにした。

 俺が刑務所で男に犯されている間、こいつはのうのうと日常を送っていたのだ。空き巣に入った俺が悪いのは確かだが、縛って自由を奪った相手を犯す斉藤の警察官としての倫理は?人としての道義は?俺にあんなことをしておきながら、正義のおまわりツラして社会的信用も得ている斉藤が憎いなんてもんじゃなかった。
 二人のあとをつけたい衝動をなんとか押し込め、配達に戻った。ミスせず配達できたことが奇跡に思えた。


 偶然斉藤を見つけたあの日から斉藤のことが頭から離れなかった。
 自分の犯した罪を反省する気持ちはある。二度と同じことはしないと両親に誓って断言できる。だが斉藤のこととなると話は別だった。
 熱いものがマグマのように体の底から噴き上がってくる。あの当時の恥辱を思い出させて俺を狂わせる。近づいてはいけない、関わってはいけない。頭ではわかっていても気付くと斉藤のことで頭がいっぱいになっていた。明日は仕事がない、その条件に気付くと足が勝手に斉藤の勤務する警察署に向かっていた。

 道路を挟んで離れた場所から斉藤が出てくるのを待った。二時間近く経ってやっと斉藤が出てきた。
 斉藤が向かった先は繁華街だった。メイン道路を外れ、細い裏道を何度か曲がり、一軒の店の裏口で立ち止まった。俺も物陰に隠れた。
 裏口から女が出てきた。派手な衣装と化粧。水商売の女。おそらく先日斉藤と一緒にいた女。女は斉藤に抱き付いて熱烈な口づけを交わした。斉藤の手が女の細い腰に回される。その手がだんだん下がっていく。
 斉藤は女をひっくり返すとスカートをたくしあげ、小さな下着をずりおろして女を後ろから貫いた。悲鳴みたいな声が雑居ビルの間でこだまする。斉藤は女の口を手で塞ぎながら女を後ろから犯した。激しい腰使いで音がここまで聞こえてくる。

 しばらく腰を振っていた斉藤がペニスを引き抜いた。女がその場へ膝をつきペニスを頬張る。斉藤に負けないほど激しく顔を前後に揺すって女はペニスをしゃぶっていた。最後は口に出したのだろう。斉藤は女の口からペニスを出すとズボンのなかに仕舞った。二、三言葉を交わすと斉藤がこちらへ向かってきた。俺は慌てて建物のかげに隠れ、斉藤をやり過ごした。

 その後斉藤は定食屋に入って飯を食い、コンビニに寄って買い物をした。歩きながらコンビニで買ったビールをあけて飲み始める。
 くたびれたサラリーマンのように見えるが、隙がない。少しでも距離を縮めれば斉藤が振り返り俺を見つける絵が頭に浮かぶ。一定の間隔を保ったまま、見覚えのあるアパートのそばまで来た。

 部屋の鍵を開けた斉藤が振り返った。

「いつ出て来るんだ。御礼参りなら近くに公園があるから、そこで頼むぜ」

 俺に気付いているのか?!
 心臓が止まるほど驚いた。声が出せなかった。斉藤は完全に俺に気付いているようだった。民家の門の影に隠れている俺のほうへ視線を注ぎ続けている。その圧力を全身で感じる。
 見つかったなら仕方ない。門から出ると、まっすぐこちらを見ていた斉藤と目があった。

「もう出所したのか、模範囚だったんだな」
「俺のこと覚えてんのかよ」
「忘れねえさ。お前も姫泣き油の効き目は忘れられないだろ」
「…っ!!」

 言葉を失う俺を見て斉藤は薄く笑うと、「まぁ入れよ。外じゃ近所迷惑だ」扉を開けたまま部屋に入ってしまった。迷った末、あとに続いた。


 部屋に入るなり腕を掴まれ引き寄せられた。

「俺が忘れられなかったか」
「当たり前だろ」
「そんなに姫泣き油はよかったか?」
「なわけねえだろ!」

 斉藤がにっと笑ったのを見た直後口を塞がれていた。驚く俺のなかに斉藤の舌が侵入して動き回る。

「ん…めろ…やめ、ろ、よ…!」

 胸を叩いた。分厚い胸板でびくともしない。

「俺に抱かれに来たんだろうが」
「ふざけんな!」
「刑務所ではどうだった?やられまくったんじゃねえのか?」
「あぁ、てめえのせいでな!」
「道理で、前よりガキ臭さが抜けてエロくなってやがると思った」

 斉藤が俺の尻を鷲掴む。太い指がジーンズの上から的確に肛門を狙って押してくる。

「てめ…この、変態野郎が…!」
「んなこと言ってちんぽおっ立たせてたら世話ないな」

 咽喉の奥で斉藤がクックと笑う。事実を指摘された俺は羞恥から顔が熱くなった。

「抱いてほしけりゃ、まずはしゃぶってもらおうか」
「なっ…さっき、女で抜いてただろうが」
「お前に使う分は残してある」

 耳を舐められてぞわりと全身総毛だった。ジーンズの前が窮屈だった。斉藤に触れられ声を聞いただけで条件反射のように勃起した。

「前も言ったと思うがな、俺はお前が言わなきゃ何もしてやらないぞ」

 そう言いながらグイグイ指で後ろを押してくる。

「俺が…、なんかして欲しいみたいな言い方すんなよ…っ」
「してほしくないのか?」
「当たり前だろ」
「だったら帰れ」

 いきなり突き放された。俺に興味をなくした斉藤は背中を向けて、テーブルの上に置いたコンビニの袋をあさっている。
 その背中を見ながら俺は動けないでいた。鼓動の早い胸を押さえていた。
 テレビをつけた斉藤がビール片手にザッピングを始める。完全に俺は無視。いないものとして扱っている。あの時と同じだ。痒みでどうにかなりそうな俺を無視して、弁当を食べていたあの時とまったく同じ。

「…はぁっ…はぁ…っ…」

 思い出しただけで呼吸が苦しくなる。あの一晩で俺の人格は破壊されてしまったのだ。

「抱けよ、俺を……」

 震える舌でなんとか声を送り出した。ザッピングがとまる。
 
「抱いて、くれよ……」

 ゆっくり斉藤が振り返った。俺は斉藤に抱き付いて、ビールの味のする唇を貪った。