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嘘が真になる(2/2)

2014.04.21.Mon.
<前話はこちら>

 翌朝、学校に行くと下田は先に教室にいた。俺を見つけると昨日までの比じゃないくらい憎しみのこもった目で睨まれる。そりゃそうだ。

「あの…昨日の…」
「話しかけんな、カス」
「じょ、冗談だろ、お前の、あれも…」
「冗談だと思いたいだけだろ、クズ」
「すまん……」
「…………」

 下田はそっぽを向いた。限界まで首をねじって俺から顔を背けてるんだけど、立ってる俺からは泣く寸前みたいな、泣きそうなのを必死にこらえてる顔が見えちゃって胸が痛んだ。

「ごめん」
「だから話しかけんな、ど腐れ」

 これ以上なに言っても火に油注ぐだけだと思い、俺は黙った。チャイムが鳴った。


 授業中、やっぱり気になるのは下田のことで、俺は頬杖をつきながら、黒板、下田、教科書、下田、ノート、下田の順番で何度もチラチラ盗み見していた。下田もこうやって俺のことを見てたのか。俺は全然気づかなかったが、下田は気づいてるんだと思う。俺に背を向けるように半身に構えて授業を受けている。絶対こっちは見ない。
 俺が好きで、ずっと俺のこと見てたって言ってたのに。
 消しゴムを小さくちぎって下田にぶつけた。消しゴムが半分の大きさになったところで下田がやっとこっちを見た。

「うぜえことすんな」

 睨みながらドスの利いた声で言ってくる。それでもこいつは俺のこと、好きなんだよなぁと思ったらただの強がりにしか見えなくなった。
 休み時間になると俺に話しかけられるのを避けてか下田は教室の外へ逃げた。俺はそれを追いかけて、わざと下田にぶつかった。

「おまえ、いい加減にしろよ」
「おまえこそ、俺から逃げんじゃねえよ」
「にっ、逃げてねえよ、お前のツラ、視界に入れたくねえだけだろ」

 昨日までの口の悪い下田が戻って来る。俺への嫌味も全部、好きの裏返しだったのだ。なんだかいじらしい奴に見えてきた。

「にやついてんじゃねえよ、気持ち悪い」

 舌打ちして下田はその場から立ち去った。


 体育の授業で俺と下田は準備体操でペアになった。下田が露骨に嫌そうな顔をする。昨日なんて言っていたっけ。触るとバレるから嫌だって言ってたっけ?

「ほらやるぞ」

 ペアをかえろと騒ぐ前に、下田の背中を押して無理矢理座らせた。下田がしぶしぶ両足を開く。開脚前屈。俺が後ろから背中を押した。体操服越しに体温を感じる。下田の体を感じる。下田も俺の体温や体つきを感じてるだろうか。下腹部に血液が集まっているのを感じて慌てて下田の体から手をはなした。

「今度は俺な」

 自分から座り込んで足を広げて前屈する。なんとか気を紛らわせないと。遠慮がちな下田の手が俺の背中を押してくる。ぜんぜん力がこもってない。控えめな手つきに、下田が俺のことをほんとに好きなんだと実感した。
 一通り準備体操が終わってから下田に聞いてみた。

「お前も勃起した?」

 一瞬で下田の顔が真っ赤になった。おお、と驚いていると、腹に下田の拳がめり込んでいた。


 放課後、急いで帰ろうとする下田を再度、話があると呼び止めた。当然断ってくるだろうと思っていたが下田は意外にもあっさり承諾して、俺と一緒に誰もいなくなるのを待っていた。今日も秒針の音が聞こえる。

「もうこれっきりにしろよ。話って」

 喧嘩腰というより、投げやりな聞き方。横を向いて俺と目を合わせない。

「怒ってると思うんだけどさ」
「当たり前だろ」
「俺と…付き合ってみる?」
「……は?なに言ってんの?」

 ゆっくり振り返った下田は、心底、理解しがたいと言ったふうに、唇を歪めて笑い飛ばした。

「また騙されると思ってんのかよ。俺もそこまで馬鹿じゃねえよ」
「騙しじゃなくてさ。わりとまじで」
「二日連続とか、お前らも頭使えよ、騙されるわけねえだろ。いつ来るんだよ、お前の彼女。またわざとらしい演技が見られるのか?」
「美亜はこないし、あいつ、俺の彼女じゃないし」
「一緒に帰ってるだろ」
「家が近所だからたまにな」
「クラス違うのに、仲いいだろ」
「だから家が近所だからだって」
「……別に俺に関係ねえけど」

 唇を尖らせて意地を張る。そっかー…、そうきたかー…。まさか男のこんな仕草を可愛いなんて思う日が来るなんてなー…。キュンとしている自分にびっくりだよ!
 昨日みたいに机に腰をおろして、下田の顔に手を当てる。振り払われた。また手を添える。また振り払われる。何度やっても俺がやめないとわかると、下田は舌打ちして、抵抗をやめた。添えた手から熱が伝わってくる。だんだん下田の顔が赤く染まってく。熱い。

「下田のこと、好きになった」
「はいはい、芝居乙」
「キスしていい?」
「そんなに俺をからかうのがおもしr…!」

 言葉の途中で唇を合わせた。舌を入れると、下田が目を見開いた。

「これで信じた?」

 隠すように手で口元を押さえながら、下田が俺の顔をまじまじと見つめる。その目が不安そうに揺れている。俺の言葉を信じていいのか、また騙されているのか、そう怯えていた。

「体育の授業で、お前も勃起した?って聞いただろ、俺」

 恥ずかしい話題なのか、下田は目を伏せた。

「俺は勃起した。勃起しかけた。やばいって思ったからお前とかわった。あのまま触り続けてたら、完全に勃起してた。俺、お前とセックスしたい」
「は……」

 笑い声ともため息ともつかない声を漏らしながら、下田は笑った。ほとんど泣き笑いの顔で。


 今の状態を誰かに見られるとかなりまずいことになるだろう。下田が跪いて、椅子に座ってる俺のちんぽをしゃぶっている。男にフェラされてるのに、俺の海綿体はどんどん血液を集めて大きくなる。頭には、下田に入れたい、それしかない。
 下田も同じかもしれないと思うと、俺が入れたいとは言いにくい。凸凸同士なのだから、どちらかが女役にならなきゃセックスできない。俺は無理。とりあえず今日はちんこ触ってイカせあうだけにしよう。下田、お前のちんこ寄こせ。しゃぶんのはまだ無理だけど触ってやるから。肩を叩く。上目づかいに俺を見る。おお。エロDVDでよく見るやつだ。
下田が床から立ち上がり、パンツごとズボンをおろした。右の上靴を脱いで右足を抜く。
 なんのために?その疑問はすぐ解消された。下田は向き合うように俺の腰に跨った。自分で俺の勃起したちんこに手を添えて、ケツの穴に導く。

「下田、いいのかお前」
「もう、騙されててもいい」

 下田のケツがゆっくり落ちていった。俺のちんこが下田のきついケツの穴に飲み込まれる。

「ううっ…あぁ…」

 やべえ。気持ちいい。体重が乗ってるせいか、しっかり根本まで入っている。
下田も相当キテるみたいで、フルフル震えながら俺の首にしがみついて、はぁはぁ荒い息遣い。

「大丈夫か?」
「すげぇ…奥…あたった…」
「誰がデカチンか」
「言ってねぇ」

 ククッと下田が笑うと、その振動がちんこから伝わってくる。動きたい。動いて欲しい。もっと気持ちよくなりたい。下田の尻をわし掴んで持ち上げた。椅子の隙間に足を乗っけて下田も腰を浮かせてくれる。ゆっくり上げ下げをする。

「ハァ…ん…あぁ…あ…」

 女みたいな喘ぎ声。下田の声に興奮する。男でもそんな声、出せるのか。両手が塞がっているから、ついばむように下田の唇を求めれば、気付いた下田が顔をあげ、俺と口を合わせた。音を立てて舌を絡ませ合いながら腰を動かす。二人の腹の間にある下田のちんこははちきれそうなほど勃起していた。
 下田の尻を俺の股間へ押し付けながら下から突き上げる。

「あっ、あぁっ…あんっ…アッ、アッ…あぁっ…!」

 突き上げるたび、下田は感じた声をあげた。そして俺をキュウキュウと締め付けた。蠢く内部に引きずり込まれる。熱く蕩けた下田の中。苦しそうな下田の顔。…色っぽい。

「俺が本気だってわかっただろ?」
「わかっ…たっ…アンッ…ンッ…あぁ…」
「俺と付き合ってくれるんだろ?」
「う、ンッ…きあうっ…つ、きあう…ッ」

 下田の腰つきが早くなる。手をそえてそれを手伝いながら、俺も腰も突き上げる。

「下田…下田…気持ち、いい…」
「はぁっ…ンッ、アァッ、お、俺、もっ…ハァンッ…あぁっ…お前の、好き…お前の全部、すきっ…アッ…んんっ…出る、出るっ!」

 右手で自分のちんこを扱く。

「あっ…ハァ、ンッ…はっ、あぁ…ァア…イク…イク…ッ」

 腹に生暖かいものが飛んできた。下田の出した精液だった。ギュウッと締め付けられながら、俺も下田のなかに射精した。
 その後俺たちは当然付き合いだした。相思相愛。ラブラブだ。家でも学校でも、見境なく盛ってしまい学業が疎かになっていることを除いては、すべて順調、これホントね。


同級生

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嘘が真になる(1/2)

2014.04.20.Sun.
 授業中、使っていた消しゴムが落っこちて、隣の下田の足元まで転がった。

「下田、下田」

 囁き声で呼びかけると下田がこっちを見た。俺は指で下田の足元を指さしながら、

「消しゴム。悪いけど、取ってくんない?」

 と頼んだ。下田が机の下を覗きこみ、消しゴムを見つけると…なんと反対側へ蹴りだした。

「えっ、ちょ、おま」

 冗談。ふざけてるだけ。そう思ったのに、下田はつんと前を向いて、それきり俺のほうを見もしなかった。授業終わりに下田に食ってかかると「取ってもらえて当たり前みたいな態度が嫌だった」と、なぜか奴のほうが怒ってるみたいな口調で言われた。
 それまでも気になることがあった。下田は俺が話しかけるとそれまでの笑顔を消して無表情でそっぽを向いたり、つまんなそうなため息をついたりしていた。そして今回の消しゴム。

 もしかして、嫌われているのかも。

 嫌われるようなことをした覚えはなかったが、下田の態度は俺も気に食わなかったので、それから積極的に関わることはせず、距離を保っていた。
 話しかけもせず、下田を視界に入れないようにして数日、なにがむかつくのかしらないが、下田は物理的な攻撃に出てきた。
 廊下ですれ違いざまわざとぶつかってきたり、俺が友達と話をしていたら、机の脚を蹴って「声でかいからうるせえんだよ」と文句を言ってきたり。体育の準備体操で俺と組むことになると「なんでこんな奴と。誰かかわってくんねえかな」と本当にペアを交換させたり。
 いい加減頭にきて下田にわけを問い詰めても、奴は「は?お前が鬱陶しいからに決まってんだろ。意味わかんねえし」とか言いやがる。意味がわかんねえのは俺のほうだ。なぜそこまで俺が鬱陶しいのか、なぜそこまで俺が嫌いなのか、その理由をはっきり言いやがらない。嫌いなら関わってこなけりゃいいのに、毎日毎日嫌味と地味な攻撃を続けてくる。

 俺ってもしかしていじめられてる?

 ってことを近所に住む幼馴染みの美亜に話したら、

「下田くんって確かになに考えてるかわかんない人だよね」

 と訳知り顔で頷く。

「なに。下田のこと知ってんの」
「一年で同じクラスだったもん。この前廊下で話しかけてきたんだけど、なんか言ってることが意味不明でちょっと不気味だった」

 と笑う。

「なに言われたんだ?」
「なんかぁ、お前のこと、嫌いじゃないけど好きでもないとか。そんなのお互い様だよ!他にも女だってことに胡坐かくなよとか。もっと女らしくしろだとか。私はお前の彼女かよ!それいちいち言ってくんなよ!ってことばっか言われた」
もしかして…
「下田っておまえに気があるんじゃ…」
「えーっ!うっそぉ、やだぁ、どうしよう!」

 そう考えれば下田が俺に攻撃的なのも納得できる。俺と美亜は家が近所で帰り道が一緒になることがたまにある。今もそうだ。仲も悪くないから付き合ってると誤解されることがよくある。下田もその勘違いをしてるんじゃ…。

「絶対そうだ。お前に気があるんだよ」

 だったら明日下田に俺と美亜は付き合ってないって言えば、下田の鬱陶しい嫉妬攻撃も止まるはず。いや、待てよ、その前にこれまでの憂さを晴らさせてもらうか。あとにはきっと笑い話だ。

「なぁ、美亜、ちょっと協力してほしいんだけど」
「なになに」
「ごにょごにょ」


 今日も下田は俺を目の敵にして攻撃してきた。これも今日で終わる。晴れ晴れとした気持ちで、帰り支度の終わった下田に声をかけた。

「なぁ、ちょっと話あるんだけど」
「俺はない」

 鞄を持って席を立つ。その腕を掴んだら、下田は体を震わせて驚いた。そんなにびっくりせんでも。

「触られるのも嫌なくらい、俺が嫌いなんだ?」

 美亜の彼氏だと思ってるからだろ?

「べ、別に、そういうわけじゃ…」
「すぐすむから」
「じゃあ早くしろよ」
「今はあれだから」

 と教室のなかを見渡す。まだ数人残ってる。

「誰もいなくなったら話すよ」
「…………」

 下田はまた席についた。俺も腕をはなした。


 時計に目をやる。誰もいなくなった放課後はとても静かだ。秒針の動く音さえ聞こえてくる。

「で、話って。もういいだろ」

 確かに教室の中にも外にも誰もいなくなった。

「実はさ…」

 ガタッと立ち上がり、俺は下田の机に腰をおろした。下田が俺を睨むように見上げる。その頬に手を添えた。

「実は俺、下田のこと、好きなんだ。友達としてじゃなく、それ以上の意味で…」
「なっ……!!」

 大きく見開かれる両目。それを見て噴き出しそうになる俺。教室の扉がバァン!と音を立てて開いた。タイミングばっちり!

「ちょっと!どういうことよ!ホモだったなんて!詐欺よー!」

 美亜は昨日打ち合わせした通り、そう叫んだあと駆け出した。

「あぁっ!美亜!」

 追いかける演技をする俺の腕を下田が掴んだ。

「いま、言ったこと、ほんと…?」
「え?」
「俺が好きって」
「えっ」
「ほんと?」
「え…」
「ほんとに俺のこと、好きなのかよ?」
「え……」

 なにこいつ顔真っ赤になってんの。なに泣きそうな顔してんの。なんで手が震えてんの。

「お…俺も、好きだ…お前のこと、ずっと、好きだった…」
「え。嘘」
「ずっとお前のこと見てた…なのにお前は俺のこと、ちっとも見てくれないから…少しでも気をひきたくて消しゴム取らなかったり、わざとぶつかったりしてた。お前が彼女のこと話してるの聞きたくなくて、机蹴って邪魔したり。近くにいるだけでも恥ずかしいのに、体に触ったららバレると思って体育のペア組むの嫌がったり。だからぜったい、お前に嫌われてると思ってた」

 走馬灯のように下田の嫌がらせが蘇った。あれにこんな意味があったなんて。まさか下田がマジで俺のこと、好きだったなんて。
 どうしよう。これ芝居でしたって言いにくい雰囲気。っていうか絶対言えねえ。「なんつって。俺は美亜と付き合ってねえよ。おまえ、美亜に惚れてんだろ。告ってこいよ」なんてどの口が言えようか。どうしよう。どうしよう!神様助けて!
 にっちもさっちも行かなくて白目剥いていると、下田が立ち上がった。ゆっくり顔を近づけてくる。キスか?!キスするつもりか?!
 反射的に体が動いて下田を突き飛ばしていた。

「なっ、な、なんちって」

 顔をひきつらせながらなんとか誤魔化そうと笑ってみる。下田はサッと顔色をかえた。

「美亜、あいつ、どこ…ちょ、探してくるわ…」

 しどろもどろに教室を出た。
 美亜が駆けて行ったほうへ向かって早足で歩く。心臓がやばいくらいどきどきしていた。明日からどんな顔して下田に会えばいいんだろう。なんであんな余計なことしたんだろう俺。藪蛇ってこのことか。俺は自ら地雷を踏んだのか。トラップ巧妙すぎ!
 少し行くと壁にもたれて美亜が立っていた。

「どうだった?」

 何があったか知らない美亜は当然wktkで全裸待機だ。

「いや、あの…ダメでした、ぜんぜん、引っかからんかった」
「そう?すごいびっくりした顔してたように見えたけど」
「あのあと俺笑っちゃって。すぐバレ」
「で?」
「で?」
「私のこと、好きだって?」
「いや、聞いてねえ」
「聞いといてよ!」

 あいつは俺のことが好きなんだよ!

「ほんとに私に告ってくるの?」
「いや、あの…たぶんそれ俺の勘違い…」
「っけんな!」

 太もも蹴られた。どんな罰も甘んじて受ける覚悟がある次第です。


東京心中 第一部