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以心伝心(2/2)

2020.11.17.Tue.
<前話>

 待ち合わせの駅に斉藤の姿があった。今日は非番なのにスーツ姿でポケットに手を突っ込んで改札を出入りする利用客を睨みつける姿は堅気には見えない。みんな斉藤と目を合わさないようにしているのが可笑しかった。

「お疲れ」
「おう」

 俺を見つけて少し表情が和らいだ気がするのは気のせい? 俺の願望?

「焼肉でいいんだな」

 と斉藤は切符の料金表を見上げた。

「焼肉は今度にしようよ」
「あん?」

 小銭を握りしめて斉藤が振り返る。

「先にあんたの部屋行きたい」

 何か言いかけた斉藤は、俺の表情を見て口を閉じた。ニヤリと笑って、ポケットに手を戻す。

「そんな顔すんな。公然わいせつで捕まるぞ」
「どんな顔だよ」
「ダダ漏れの物欲しそうな顔だっつってんだよ、エロガキ」

 カッと顔が熱くなる。

「あんたのせいだろ」

 言い返す声も小さい。またからかわれるかと思ったが、斉藤はそれ以上何も言わずに俺の肩を抱くと駅を出た。近くにいるだけですごく緊張する。見上げた斉藤の横顔に、むしゃぶりつきたくなった。

 斉藤の家に入ると同時に抱きついてキスをする。服を脱ぎながら奥へ進み、斉藤をベッドに押し倒した。パンツごとズボンをずらし、半立ちのものを咥えこんで口で扱く。

「ケツこっちに向けろ」

 言われた通り斉藤の腹を跨いで尻を向けた。冷たいローションが尻に垂らされる。斉藤はそれを手に馴染ませると指を入れてきた。最初の出会いは最悪。姫泣き油で散々泣かされたあと犯された。あの時はこんな関係になるなんて思いもしなかった。

 ずるり、と口から斉藤のちんこが逃げていく。追いかけようとしたが体を起こした斉藤に尻を押されて前につんのめる。尻の間にぴたりと肉厚なものが押し当てられた。

「早く入れろよ」
「待てもできねえのか、仕方ねえな」

 苦笑交じりに言いながら斉藤は俺をこじ開け、中に入ってきた。俺の体のなかに、斉藤の一部が飲みこまれている。斉藤の所有物にされたような、倒錯した幸福感がある。

 俺の腰を掴み、斉藤は抜き差しを始めた。中に留まっているときより、動かされているときのほうが斉藤の形を感じられる気がする。太い竿とか、男らしいカリ首とか。

「あっ、はあっ、気持ちいっ……いっ、ああっ」
「そんなにいいか」
「いいっ、もっと……ッ、おく……きて……!」
「誰にでも言ってんだろうが」

 ぶわ、と胸のなかが熱くなった。ぶんぶん首を振って否定する。

「あんたにしか、言ってねえよ」
「怪しいもんだぜ」

 背中に斉藤がのしかかってきた。筋肉に覆われた重くて硬い体。息苦しいほど斉藤は重たい。その重みすら、俺には快感だった。それが全身にぴったり押しつけられている。それだけで俺は斉藤を締め付けてしまう。

「おい、きつくなったぞ。やましいことでもあるのか?」

 顔の横で斉藤が言う。横目に斉藤を見た。最近、斉藤がらしくもない優しい言葉を俺にかけてきたわけ。いまの言葉を聞くに、どうやらそれは俺の願望じゃなさそうだ。

「今日、山城に会った」

 ぴったりくっついた肌から斉藤の動揺が小さく伝わってくる。

「誰だそりゃ」

 斉藤の嘘がわかるくらいには、俺たちはいま以心伝心だ。

「月30万やるから俺の愛人になれだってさ」
「どこの誰か知らねえが、物好きがいたもんだな」
「ほんとだよ。俺なんかに月30万だよ? 俺もう働く必要ないじゃん」
「受けたのか」

 今まで通り余裕を装ってはいるが、声が少し硬くなったのが俺にはわかった。

「受けるわけないだろ。俺に手を出したら証拠ねつ造してでもムショに戻してやるって、やくざを脅すような男がそばにいるのにさ。浮気したらなにされるかわかったもんじゃねえよ」

 首をひねって斉藤を見上げる。バツの悪そうな、しかめっ面が俺を睨む。

「なんの話かわからねえな」
「ははっ、素直じゃねえな、あんたも」

 顎に手を添え顔を寄せる。斉藤は噛みつくように俺にキスした。実際何度か唇を甘噛み以上の強さで噛まれたし、引っこ抜けそうなほど舌を吸われた。そうしている間も腰がねっとりと動く。密着する体はもう緊張が抜けて、斉藤の興奮が伝わってきた。俺の興奮も斉藤に伝わっているだろう。

 俺を抱きしめるようにしがみついて、斉藤は激しく腰を振り始めた。布団に俺のちんこが擦れる。我慢汁でグチョグチョだ。

「んんっ、あんっ、あっ、あっ!」

 喘ぐ俺の項や肩に斉藤がガブガブ噛みつく。

「いっ、うぅ、ば……っか、痛えな……ッ!」
「俺のもんにマーキングして何が悪い」
「じゃあっ……おくっ……俺のなかにも、マーキング……しとけよっ……」
「言われねえでも、そのつもりだ」

 単調で早いピストンにかわり、斉藤は俺の奥へ放った。

 ◇ ◇ ◇

 髪をかきあげられて目を覚ました。ベッドに腰をかけた斉藤が俺を見下ろしている。

「いま……何時?」
「24時。まだ寝かせておいてやりてえけど、お前仕事あるだろ」
「あ、そうだった。やべえ」

 体を起こした拍子に尻からぬるりと何かが漏れそうになり、慌てて肛門を締めた。

「シャワー借りる」

 ベッドを抜けて風呂場へ行った。頭からシャワーを浴びながら尻穴に指を突っ込んで斉藤が出した精液を掻き出す。生温かい液体が内股を伝う感触に、数時間前散々ヤッたのにまた妙な気分になりかけた。

 部屋に戻ったら斉藤がカップラーメンを作っていた。

「仕事の前に食ってけ」
「焼肉がカップーラメンか」
「それはまた次食わせてやる」
「へえ、ペット相手に優しいじゃん」
「ペットじゃねえだろ」
「えっ」
「恋人だろ」

 のどに何か詰まったような声だったが、斉藤がガラにもないことを言って顔を赤くしているのを見たらもうたまらなかった。抱きついてキスした。

「お前なあ、毎度毎度、出勤前の時間がねえときに盛んじゃねえよ」
「あんたのせいだろ」

 斉藤の目が時計を見た。早く終わらせる気だろうが、俺はもう遅刻したってなんだっていい気分で、斉藤に抱きついたままベッドに倒れ込んでやった。




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以心伝心(1/2)

2020.11.16.Mon.
<「ノビ」→「再会」→「その後」>

 俺が作った朝食を斉藤と一緒に食べ、その後片付けが終わったら洗濯。部屋の掃除をしていたら、テレビを見ている斉藤にムラムラしてセックスした。シャワーを借りて出勤の支度をし、玄関に立った。

「今日は仕事終わったら飯でも行くか」

 珍しく見送りに来た斉藤が急に言い出した。

「あんたの奢り? どういう風の吹きまわしだよ」
「毎日毎日仕事終わりに俺の家に来て甲斐甲斐しく飯作って行くお前に、たまにはご褒美をやらねえとな」

 とニヤっと笑う。恥ずかしさ半分、嬉しさ半分。

「っせえな、別にあんたのために作ってるんじゃねえよ、自惚れんな。1人分作るのも2人分作るのもかわらねえだけだし」
「わかったわかった」

 子供をあやすような口調も不思議と腹が立たない。ただくすぐったい感じがするだけ。

「焼肉な。いっぱい頼むから金おろしとけよ」
「仕事終わったら連絡しろ」

 たかがこんな約束事ひとつで浮かれてしまう。それを斉藤に気取られたくなくて背中を向けた。

「じゃあな」
「ああ、気を付けろよ」

 ドアノブに手をかけた俺に斉藤が言う。ここ数日、帰り際に毎度言われるようになった。

「なんだよ、過保護ぶって。最近のあんた変だぞ」
「お嬢ちゃんの心配してやってんだろうが」
「うっせ、ばーか!」

 照れ隠しで急いでドアを閉めた。通路を歩きながら自分の頬に触れる。熱くなっている。俺を飯に誘ったり、気を付けろなんて心配したり、あいつ案外俺に惚れてんじゃね?

 斉藤がどういうつもりで俺の相手をしているのか、正直わからない。空き巣に入ったこそ泥に姫泣き油なんてもんを使って犯すような奴だ。まともな神経をしているわけがない。利害関係が一致したと言って水商売の女と肉体関係を持ったり、お礼参りにやってきたこそ泥を家に招き入れて合鍵まで渡したり。

 性欲の発散対象なんて、ほんとは誰でもいいんだろう。たまたま今そばにいるのが俺なだけで、次に新しい相手が見つかったら俺なんて水商売の女が残したメモのように放置されるに決まっている。

 だから気まぐれに優しくして、変に期待をさせないで欲しい。

 ◇ ◇ ◇

 仕事が終わった18時、販売所を出てすぐ斉藤に電話をした。連絡をしろと言ったくせになかなか出ない。もしかして急な呼び出しをくらったのかもしれない、と嫌な予感がした時、斉藤が電話に出た。仕事が終わったというと、斉藤の家の最寄り駅に着いたらまた電話しろと言う。わかったと通話を切った。

 一回家に帰ってシャワーと着替えをしておけばよかったと思ったがもう遅い。どうせ斉藤に奢らせるのは焼肉だから匂いなんて今更だし、そのあと斉藤の家かホテルに行くつもりだからシャワーはその時でいい。

 携帯をポケットに戻していそいそ駅へ向かう。前からやってきたバンを避けるために端に寄る。バンは手前で止まった。助手席と後部座席から男が二人飛び出してきた。俺を羽交い絞めにすると車のほうへ引きずって行く。

「なっ、えっ、なんだよ!?」

 全身から血の気が引いた。絶対乗っちゃいけないやつだ。手足を突っぱって必死に抵抗しつつ、助けを求めて左右に視線を走らせる。夕方の住宅街、いつもなら帰宅途中のサラリーマンとか学生を見かけるのに、今日に限って一人もいない。

「だれかっ」

 叫ぼうとした口を塞がれた。

「騒ぐな」

 男が低い声で言う。開いたままの後部座席、そこへ押し込まれそうになり、あやうく失禁しかけた。

「久し振り」

 後部座席には男が一人いた。俺に向かって手を振って笑っている。見覚えのある顔。思い出すより先に体が反応してぞわっと全身に鳥肌が立った。

「山城ッ……さん……?!」
「俺のこと覚えててくれたのか。まあ忘れられるわけねえよなあ」

 と舌なめずりする。刑務所にいたころ仲間を使って俺をレ/イプしたやくざ。いつ出所した? 頭を見たら髪はまだ伸びかけで短い。つい最近のようだ。ムショに居た時は坊主頭で気付かなかったが、山城は癖毛のようだ。短い髪がうねっていた。

「なっ、なんでここ……っ」
「まあ乗れよ。通行の邪魔になるだろ」

 男に突き飛ばされて車の中につんのめる。背後でドアが閉められた。見上げた先に、ニタニタと笑う山城。俺にフェラをさせていた時と同じ顔だと思い出し吐き気がこみあげてきた。

「ほら、座れ。ちゃんとシートベルトしろよ」

 車が動き出した。逃げられない。絶望的な気持ちで言われた通り座席についてシートベルトをしめた。口から飛び出そうなくらい、心臓がどきどきしている。

「俺に、なんの用ですか」

 恐る恐る訊ねる。

「薄情者だなあお前は。旦那さんがお勤め終えて出てきたんだぞ、お疲れさまでしたの一言も言えねえのかよ」
「あ……お、お疲れさまでした」

 わざとらしいと思いつつ頭をさげる。ムショの中で俺は山城の女で、山城は俺の旦那という関係だった。山城のイロに収まったから、俺は他の男共に犯されずに済んだ。その点だけは感謝しているが、できれば二度と会いたくなかった。

「お前に会うためにわざわざ居場所調べて会いに来てやったんだ。もっと嬉しそうな顔してくれよ」

 うなじに手をかけ引き寄せられた。反射的に体を突っ張る。怒らせたかもしれないと山城の様子を窺う。山城は悠然と笑ったまま俺を見ている。以前なら少しでも抵抗を見せたらぶん殴られていた。仲間を使って俺を抑え込み容赦なく犯した。結果が同じなら痛い思いをしないほうがいいに決まっている。だからおとなしく犯されるほうを選んで出所の日まで耐えてきた。あの頃、なぜ我慢できたのかと不思議になるほど、今は山城に触られた場所がぞわぞわとして気持ち悪い。

「いきなりだったので、驚いてしまって」

 素早く窓の外を見る。どんどん駅から離れていく。どこへ連れて行かれるのか不安と恐怖しかない。斉藤との待ち合わせに遅れる。そうだ、斉藤だ。一応警察官だから助けを──。山城の目を盗んでポケットの携帯を握る。

「今日はお前に話があって来た」
「話、ですか」
「お前、俺の愛人になるか?」
「えっ?!」

 思いがけないことを言われて素で大きな声が出た。俺の反応を窺って山城がじっと俺を見ている。どうやら冗談ではないらしい。

「部屋も俺が用意してやるし、月30万手当てを出してやる。どうだ?」

 30万ももらえて、部屋も用意してくれるっていうのか? この俺に?! まじかよ。手当てはいまの月収以上、しかも家賃を負担してくれるとなると30万以上の収入。このおっさんのセックスの相手をしてやるだけで。

 思わずゴクリと生唾を飲みこんだ。

 いやしかし冷静に考えろ。相手は山城だぞ。手で触られただけで気持ち悪いのにキスしてセックスだなんて、もう無理だろ。斉藤ならまだしも。

 山城と愛人契約を結んだら、もう斉藤には会えなくなるんだろうか。普通、そういうものだろう。しかも斉藤は警察だ。山城が許すわけがない。

 心が揺れた。せっかく就いた仕事をやくざの愛人になるから辞めます、なんて馬鹿みたいな話だ。親になんて言えばいい。それに山城に飽きられて捨てられたら、そのあとの生活はどうすればいいんだ。

 それは斉藤だって同じだ。斉藤に飽きられたら俺は捨てられる。姫泣き油なんて使って俺を犯して、男同士のセックスを教え込んだくせに、次の相手を見つけたら簡単に俺を捨てる、あいつはそういう奴だ。

 俺を捨て、次の女の腰に手を回す斉藤を想像したらムカついてきた。

 別に山城の愛人になるくらい。どうせ俺は前科一犯だ。ムショでさんざんヤラれてきた俺がいまさら真っ当に生きようだなんて笑い話だ。

 捨て鉢な気分で山城にOKだと返事をしようとした。息を吸い込んで口を開いたら、もう後悔が始まった。斉藤が恋しい。斉藤に会えなくなるのは嫌だ。期限付きでも斉藤のそばにいたい。

「……すいません、お断りさせてください」

 項垂れるように頭をさげた。こんな土壇場で斉藤を選ぶ自分が腹立たしいやら、呆れるやら。でも悪い気分じゃない。

「断られちまったなあ」

 ハッと、山城を見上げた。機嫌を損ねたらまずい。ヒュン、と玉が縮む。

「悩んでたくせに、なんで断った?」

 と俺の目を覗きこむ。愉しそうな顔。どっちの顔が判別つかない。黙っていると山城がかわりに口を開いた。

「斉藤か?」
「なんで知って?!」

 驚いて山城を見る。

「出所してすぐ、斉藤ってサツが会いに来た。お前に手を出すなって、わざわざ釘さしにな」
「ほっ、ほんとに?」

 あの斉藤が? どうしてそんなことを? 俺がやくざと関わればまた犯罪に手を染めると思って? それとも少しは俺の身を案じてくれたのか? まさか、嫉妬……なんてことはないだろうけど。

「お前らの関係は知ってる。斉藤はお前をパクッたデカだろ。憎くねえのか?」

 俯いて、膝に置いた手をじっと見る。もちろん憎かった。刑務所の中では散々な目に遭ったし、外に出て真面目に働いているときに女と一緒にいるところを見つけて殺してやりたいほど腹が立った。でも今はそれだけじゃない。

「馬鹿だって言われるかもしれないけど、き、気になるんです、あいつのことが。あいつは俺のことなんか、なんとも思ってないだろうけど」

 素直に認めたら体中熱くなるほど恥ずかしくなった。自分で言ってて馬鹿みたいだ。自分をパクったデカを。気まぐれで抱かれているだけで、飽きられたら捨てられるとわかっているのに。俺なんかに月30万出してくれる山城を振ってまで斉藤を選んだ。

「言わねえよ、馬鹿だなんて。それに斉藤のほうも満更じゃあねえようだぜ」

 山城が合図すると車は止まった。顔をあげたら見慣れた景色。元いた場所に戻ってきている。

「お前に手を出したら証拠でっちあげてでも俺をムショに戻してやるって脅されたからな。ああいうタイプのサツは敵にまわすと厄介だ。お前が俺を選んでくれんなら話は別だが振られちまったしな。俺もまた中には戻りたくない」

 苦笑して山城は「出ろ」と顎をしゃくった。恐る恐るドアに手をかける。

「失礼、します」

 ドアが開く。山城も、前に乗る二人も動かない。本当にこれで終わり? 出ていいのか? 山城の気が変わるのを恐れて静かに車からおりた。自動でドアが閉まると同時にバンは走り出した。遠ざかる車が角を曲がって見えなくなって、やっと息を吐き出した。



続き気になるー!(BL希望)