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日常茶飯事(5/5)

2020.11.15.Sun.


 俺は真由とキスをしていた。官能的なキスですぐ股間が元気になる。真由はそれを直で握って上下に擦った。

「真由……」

 もっと舌を味わいたくて吸い寄せると真由もそれに応えるように深く入り込んで口蓋や舌の裏まで舐めてくる。腰がじんと痺れた。俺も真由に触れたい。手を伸ばしたそこに熱い膨らみ。布越しに、にょきっと伸びた肉の棒。

 はっと目を覚ました俺の目の前に翔の顔。いま俺の口内を貪っているのは真由ではなく、翔。夢から覚めて混乱したのも一瞬で、すぐ我に返って翔を突き飛ばした。翔は上半身裸でズボンを穿いた股間はしっかり隆起している。さらによく見ると俺のワイシャツははだけ、下半身は何も身につけていなかった。

「おまえ、なにしてるんだよ! 何もしないって言っただろ!」
「今日は何もしないって言ったんですよ。ちゃんと約束守ったじゃないですか」

 今日はって……まさか……。

 にっこり笑って翔はスマホの待ち受けを俺に見せた。時刻は0時3分。日付が変わっている。今日は手出ししないが、日付がかわったから手を出しましたって? そんな馬鹿な話があってたまるか! 

「騙されたって思ってるでしょ」
「実際そうだろ!」
「でも一回俺にヤラれてるのに飯につられてホイホイやってきて酒飲んでベッドで寝る数矢さんにも問題がありますよ。鴨ネギもいいとこじゃないですか。無防備にベッドに寝転がって、好きにしてくれって言ってるようなもんでしょ。ほんとはちょっとは期待してたんじゃないですか?」
「ばっ、馬鹿なこというな。俺はホモじゃないんだぞ」
「俺だって誰でもいいわけじゃないですよ。女の子の守備範囲は広いけど、男の基準はかなりシビアなんです。数矢さんは俺の性癖ドンピシャですよ」

 翔は俺の目の前でズボンのチャックをおろした。パンツのゴムを引っ張ると中から勢いよくちんこが出てくる。もうすでに勃起状態だ。

「俺ね、こんなにお預けくらったの初めてですよ。さすがにもう待てないです」

 と俺に迫ってくる。

「待て待て待て! やんねえよ! 何考えてんだお前!」
「じゃあ、扱き合いだけ。それならいいでしょ。一宿一飯の恩義ってやつですよ」

 むずっと翔は俺のちんこを握った。ずっと勃ちっぱなしなのはさっき見た夢のせいだ! 断じて翔に反応してるんじゃないぞ!

「しっ、扱くだけだからな!」
「じゃあほら、俺の掴んで」

 そそり立つ翔のちんこに手を伸ばす。すでに太くて硬い最終形態。

「キスするなよ」
「しませんって」
「手だけだからな!」
「はいはい」

 手の焼ける子供をあしらうような口調。あとでほえ面かくなよ。前はそんな下手な手コキじゃイケないと言われたが、今日こそ翔を先にイカせてやる。翔の反応を窺いながら手を動かす。

 翔も俺の顔を見つめながら擦った。妙に優しくてエロい目で俺を見やがる。翔の視線が息苦しいし恥ずかしい。俺も見ているのに見るなとは言えない。ひたすら我慢大会だ。

「数矢さん、顔赤いよ」
「う、うるさい」
「照れてんの? かわいい」

 カウパーの滲む鈴口に軽く爪を立てられた。思わず体がビクンと飛び跳ねる。数矢は俺の体を抱きよせ、肩に顎を乗せた。頬と頬が触れ合う。今日も翔はいい匂いがする。こんなに近くにいると翔の匂いと体温に包まれて変な気分になってくる。俺はホモじゃない。男と寝た経験は翔と一回だけ。それまでは自分が男と寝るなんて考えたこともないし、男を意識したこともなかった。ところが今は男の翔を相手に胸をドキドキさせている。性の対象として認識している。自分がその対象になっていることも許容している。たった一度の経験で俺の性的価値観は変わってしまった。

「数矢さん、そこもっと擦って。そうそう、そこ。上手」

 翔が目を伏せて深く息を吐く。睫毛長い。若いから肌もハリがあるし、きれいだ。俺なんてもうおっさんと呼ばれる年齢に片足突っ込んでて寝起きの顔もひどいもんだ。そのうち加齢臭も漂うようになって、店で出されたおしぼりで顔を拭くようになってしまうんだろう。翔のそんな姿は想像できなかった。

 気付くと翔の手が止まっていた。気持ち良さそうな息遣いの合間に漏れる小さな声。エロ動画を見ている時は邪魔なだけの男の喘ぎ声なのに、翔の場合はなぜかエロい。卑猥だ。可愛いとも思う。

「イク?」

 俺が訊いたら素直に頷いて、小さく呻いたあと俺の手のなかに吐き出した。

「早いな」
「違うって今日は……、中途半端にムラついてたから」

 俺と入れ違いで追い出された女の子を思い出した。翔はパンツ一丁だった。それもきっと慌てて穿いたに違いないパンツ。もう挿入寸前まで事は進んでたんだろう。もしかしたら挿れてたかもしれない。そんな状況でどうしてこいつは俺を選んだんだ。無視すりゃ良かったのに。

「今日は数矢さんの勝ちですね」

 翔はティッシュでちんこを拭くとズボンのチャックをあげた。さっぱりした顔で立ちあがるとキッチンで手を洗い、冷蔵庫を開ける。ほったらかしにされて俺は自分のちんこを見下ろした。こっちこそ中途半端にムラつかされて処理に困っているんだが。

 缶ビールを飲みながら翔が戻ってきた。

「どうしたんですか?」
「あ、いや」
「ふはっ、素直じゃないなあ。俺もイカせろって言えばいいのに」

 缶ビールをテーブルに置いて翔が戻ってきた。俺を押し倒しながらキスをしてくる。それに抵抗しながら顔を背けた。

「キスだめ? もう勝負は終わったんだからいいじゃないですか。あとは数矢さんがいくだけですよ。出したいでしょ」

 剥き出しの股間に翔がむしゃぶりつく。ずるり、と口腔の奥深くまで飲みこまれて、当たった粘膜の気持ちよさに腰が蕩けそうになった。

「ちょっ……やめろ、それやばい……!」

 グポグポと音を立てながら翔の頭が上下に動く。翔の口を俺のちんこが出たり入ったりするのを目の当たりにして頭のなかが沸騰しそうになった。どうしてこいつはこんなことが平気でできるんだろう。

「はっ?! おまっ……どこ触ってんだよっ」

 フェラしながら翔の指が俺の後ろをまさぐっていた。撫でるように周辺を触ったあと指先を中へと入れてくる。今まで自分は突っ込む側としてそれが当たり前だと生きてきたのに、それが根底から覆される瞬間だ。

 グニグニと翔の指が中で動き前立腺を探し当てた。どうしてそんなところに性感帯があるのか不思議で仕方がない。

「ここ、覚えてるでしょ」
「触んなよっ」
「中イキできるようになって欲しいじゃないですか」

 にっこり笑って翔は激しく指を動かした。摩擦でなかが熱くなる。お腹も温かくなって、ちんこの根本がジンジンしてきて、嫌でも翔に突っ込まれて犯された日のことを思い出してしまう。ちんこもしゃぶられてもう何も考えられなくなっていく。イキたい。出したい。だからもっと強く。

「いっ……入れろよ……ッ!」
「えっ? なんて? よく聞こえなかった。もう一回言って」
「聞こえてただろ、入れろって言ったんだよ」
「どこになにを?」
「うるさい」
「仕方ないなあ。やっと素直に言ってくれたから、おまけですよ」

 嬉しそうに笑う。勝負じゃないけど負けた気分だ。でももう負けでもいい。新しく知ってしまった快感をおさらいしたい。

「じゃあ俺の、おっきくしてくださいよ」

 耳に寄せて翔が囁く。恥ずかしかったが翔のちんこを掴んで扱いた。これじゃ俺がめちゃくちゃ翔のちんこを欲しがってるみたいじゃないか。自分からねだったんだから間違いじゃないのか。いや、でもこれはなかなか屈辱的。

「そういえばもうゴムが切れちゃってんですよね。生でいいですか?」
「えっ」

 生はまずくないか。

「やめときます?」
「……そのままでいい」

 どうせ前も生で犯られているんだ。

「じゃ、ご開帳」

 翔が俺の膝を左右に抱えあげた。大股開きで自分の恥ずかしい場所が丸見えだ。しかも腰が痛い。

「明日体が辛いかもしれないけど、数矢さんに繋がってるとこちゃんと見て欲しいから我慢してね」

 ネチャネチャと粘着質な水音を楽しむように亀頭を俺の尻穴に擦りつける。期待と興奮と恐怖とで俺の息は自然と早く荒くなった。

「翔、早く……! 焦らすなよっ」
「かわいいー。見てて、ゆっくり入れるよ」

 翔が俺に体重をかける。亀頭を押しつけられた肛門がぐいと押し広げられる感覚。あんなでっぷりしたものが入るのか、身をもって前例を体験していても不思議で仕方なかったが、案外あっさりと亀頭は飲みこまれた。中途半端な場所に留まられているぶん圧迫感がすごい。奥まで一思いに入れてくれ。よくわかんない感情から目の表面がじわりと濡れる。

「つらいでしょ? 奥まで入れて欲しい?」

 無言で何度も頷く。胸が詰まって何も言えない。

「ほんとかわいいね。めちゃくちゃにしたくなっちゃうじゃん。俺、気に入った子はとことん甘やかしてあげたい派なのにさ。数矢さんのことは、ズクズクに泣かせてよがらせて俺に縋りつかせたいよ」
「翔……もう無理っ……早く奥まで来てくれ……!」

 半泣きで訴えかける。翔はうっとり俺を見下ろして「いくね」と言うとその強直を奥まで突きさした。

「ほら見て数矢さん。奥まで咥えこんでるよ。わかる? わかるよね? 奥まで俺のが届いてるの、体でも感じてるでしょ?」

 必死に頷いた拍子に目尻から涙が零れた。言われなくても翔のちんこが信じられないところまで入っているのを感じている。体勢のせいか背骨にまで当たってるんじゃないかって気がするし、入っちゃいけないところにまで届いてそうな気もする。

「また泣いちゃった? 今時、処女喪失くらいで泣く女の子もいないってのに、数矢さんは二回目でも泣いちゃうの?」
「ちがっ……お前の腹まで届いて……なかが熱いんだよぉ……! 熱くて気持ちいとか、俺、変だろっ」

 今まで突っ込む側だった俺が、体だけじゃなく心まで突っ込まれる側に作り替えられてしまった。それもこれも翔のせいだ。こいつの顔がいいから。キスとセックスがうまいから。引き際を心得てて料理がうまくて口八丁手八丁で俺を翻弄するから。これだからモテる男は嫌いなんだ!

「変じゃないよ、数矢さん。俺だってちんこ蕩けそうなくらい気持ちいいんだから」

 翔はゆっくり腰を動かし始めた。俺のなかを翔のちんこが出たり入ったり。それを目の当たりにして顔が熱くなる。俺は自分から望んで男の、翔のちんこで尻を掘られているんだ。

「ふあっ、あっあっ、翔の、好きにうごいてい、からっ、あっ」
「充分、好き勝手させてもらってるよ」

 翔は腰の角度をかえた。さらに深いところまで届く。恐ろしくなって手を伸ばしたら翔は手を握り返してくれた。

「怖くないよ」
「んっああっ、そんな奥……やっ、あっ、翔っ」

 こんなに気持ちよくていいんだろうか。体の隅々まで満たされていくようだ。自分が自分でなくなっていくようで怖い。

「そ、こっ……もっとしてっ……いいっ、そこ気持ちいっ……出るっ」

 最近ネカフェでおちついてマスもかけなかった。そんな俺が翔の手にかかればひとたまりもない。

「数矢さん、俺の名前呼びながらイッて」

 俺のちんこを翔が握ってシコる。

「翔……! 俺もう……イクっ……翔、翔……!」

 グ、と歯を食いしばる。吐き出された生温かい精液が見事顔に命中する。翔のやつ、わざと角度調節しやがったな。片目をうっすら開く。翔は満足げな顔で腰を振っている。

「悪趣味、変態」
「似合ってるよ。俺のもかけていい?」
「殺すぞ」
「ははっ、ウケる」

 浮いていた腰が下ろされた。無理な体勢を強いられていた腰がギシギシ悲鳴をあげる。これ絶対明日痛いやつだ。今度はひっくり返ったカエルみたいな格好で翔に揺さぶられる。足の持って行き場に困って翔の腰に巻きつけた。あ、これはこれで好き者みたいだ。

「俺もそろそろ出すね」
「好きにしてくれ」
「あとで一緒にお風呂入ろ」

 俺にキスしながら翔も達した。翔とのキスもセックスも、もう俺のなかでは異常なことではなくなっている。どうしよう。どうなる俺。

 ※ ※ ※

 朝起きたら案の定、体中が痛かった。原因を作った男の寝顔を睨みつけベッドを抜け出す。朝食になりそうなものはないかと冷蔵庫をそっと開ける。朝食を作ってやるのは昨日飯をご馳走になって泊めてもらったからだし、前回翔がすごく喜んでくれたからじゃないし。

 昨日の夕飯の残りがあったから、とりあえず味噌汁だけ作った。できた頃に、「いい匂いがする」と翔が起きた。寝起きのぼんやりとした顔で嬉しそうに味噌汁を見て、「嫁にきませんか」と俺に抱きついてきた。こういうことを誰にでも言っているくせに。

「次の部屋、たぶん決まったから」

 2人で向かい合ってご飯を食べながら翔に言った。

「良かったですね。ネカフェ難民卒業じゃないですか。どのあたりにしたんです?」
「別に他意はないし、ほんとにたまたま条件に合うちょうどいいのがそこだったってだけで、ほんとになんの意味もないからな」

 と前置きして、物件Bの資料を翔に見せた。最寄り駅が同じだと翔はすぐ気がついて、俺の必死な言い訳の理由を悟ると肩を揺すって笑った。

「ご近所さんですね。嬉しいなあ。これからもちょくちょく会えますね。俺、引っ越しの手伝い行きますよ。ここってちょっと行った先のマンションでしょ。めちゃくちゃ近い」

 俺を見て意味深に笑みを濃くする。

「ほんとにここにしたのはお前とまったく無関係の理由だからな!」
「わかってますって。たまたま条件が良かっただけでしょ。そんなムキにならなくてもいいですよ。逆に、そんなに俺のこと意識してくれてんのかなって勘違いしちゃうじゃないですか」
「してねえよ」

 鏡を見なくてもいまの俺はめちゃくちゃ意識してますって顔をしているに違いない。その証拠に翔がすごく嬉しそうでいやらしげな顔だ。俺も実は満更じゃないかもしれない。たまにこうしてお互いの部屋を行き来して、一緒に飯を食う。もしかしたら流れでセックスとかするかもしれない。俺はもう彼女いないわけだし、誰に責められることでもない。

 食事の後片付けをし、今日も2人そろって部屋を出た。



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日常茶飯事(4/5)

2020.11.14.Sat.


 翔の部屋のインターフォンを鳴らすと、中から人の動く気配があった。近づいてくる足音のあと、扉が開いた。

「数矢さん、来てくれたんすね」

 と言う翔はパンツ一丁。

「ちょっとだけ、五分だけここで待っててください」

 言うと扉を閉める。離れていく足音のあと、中から微かに話し声が聞こえてきた。他に誰かいるらしい。パンツ一丁だったということはもしや……。電話してから来ればよかった。いや、「待ってます」と言っておいて誰か連れこむあいつのほうが悪い。なんにせよタイミングは最悪。

 とりあえず立ち去ってあとで連絡入れておけばいいかと思ったとき、勢いよく扉が開いて中から女の子が出てきた。真っ赤になった顔で軽く俺を睨みつけるとカツカツと靴を鳴らしながら通路を歩いて行った。

「ごめんごめん、お待たせ。入って」

 ズボンだけ穿いた翔が扉を押さえながら手招きする。

「悪かったな、連絡すればよかった。ていうかおまえ何考えてんだ。女連れこんでたならそう言ってくれれば帰ったのに」
「帰る家もないくせに何言ってるんですか。いいから入って」

 俺の腕を掴み強引に中に引っ張り込む。パンツ一丁の翔や、髪が乱れた女の子を見たあとなせいか、部屋の空気が籠っているような気がする。俺に断られたからすぐ別の女を呼んだんだろう。義理立てする関係でもないから、俺には関係ないけど節操というものがないのか。

「さっきの子は俺が呼んだんじゃないですよ。会いたくなっちゃったって、急に来たんです」
「別に何も聞いてないだろ」
「飯に誘ったくせに女連れこんだのかって顔してましたよ」

 あいかわらずエスパー並みに人の顔を読む。

「先に風呂入りますか?」
「いや、飯だけでいい」

 また人の考えを読もうとしているのか、翔は俺の顔をじっと見つめた。

「じゃあ、温めなおすんで、手洗って待っててください」

 床に落ちていた服を着ると翔は台所に立った。慣れた様子で食事の用意を始める。なにを言われるかと身構えていたのに、肩透かしを食らった気分だ。

 鞄を廊下に置いて手を洗った。俺はまた翔に引き止めるんじゃないかと思っていた。前みたいにヤラせろと迫られるもんだと決めつけていたが、女に不自由しない翔が俺にこだわる理由がなかった。自分が自意識過剰みたいで少し恥ずかしい。でもそうなると、翔がなんの目的で俺に連絡してくるのかわからない。知りあって日も浅い。寝取った女の彼氏を寝取るような男の考えることなんて、俺みたいな平凡な人間にはわからない。

「なにか手伝おうか?」
「じゃあこの皿持ってってください」

 渡された二つの皿。トマトソースで煮込まれたたくさんのキャベツと鶏肉。想像していた以上に美味そうだ。顔も良くて、ちんこでかくて、セックスもうまくて、料理もできる。そりゃモテるわ。

 食事の用意が整い、翔が「乾杯」と俺にビールを勧めてくる。一本だけなら、と乾杯に応じ口をつけた。冷えててうまい。翔が作った鶏のトマト煮も美味しかった。箸で鶏肉が簡単に崩れるほど柔らかく味も良く染み込んでいて、さっぱりとしたトマトソースなのに充分おかずになって箸が進む。一緒に煮込まれたキャベツがまた美味い。翔に勧められるままおかわりをしていた。

 満腹になってご馳走さまをして、気付いたらビールは3本目。いったいいつの間に。

「風呂入っちゃいますか?」

 食事の後片付けを済ませた翔が、台所から戻ってきて言った。

「いや、いい。ご馳走さま、美味かった」

 膝に手をあて立ちあがったらフラついた。

「酔ってるじゃないですか。今日は泊まって行ったらどうですか? どうせ今までネカフェで寝泊まりしてたんでしょ。たまには足伸ばしてゆっくり寝たいんじゃないですか? ベッド代わってあげますから、そっちで寝てくださいよ」
「いやいや、そんな口車に乗るか。お前になにされるかわかったもんじゃない」
「腹満たして酒も飲ませたのに、警戒心強いなあ。今日はなにもしませんから安心してくださいよ。信用できないって顔してるけど、俺、意外と約束守る男なんですよ」

 確かに前回、絶対手を出してきそうなのにこいつは何もしてこなかった。やっぱり俺が自意識過剰なだけなのかもしれない。男が男相手に自意識過剰だなんて恥ずかしすぎる。

「ほんとに信用していいんだな?」
「もちろん。今日は安心して眠ってください」

 嘘くさい翔の笑顔。でもこいつはこう見えて無茶なことはしない。相手から言質を取るまでは手出ししてこない。信用しろと言うなら、してもいいのかもしれない。ぶっちゃけ満腹になって酒も飲んだから今からネカフェを探してウロウロするのは億劫だった。それに時間も遅くなったからフラットシートの座席はもう空いてないかもしれない。座椅子タイプの部屋で一晩寝るのはきつい。

 俺の心の迷いなんて翔には筒抜けなんだろう。笑みを濃くして「強情はってないで」と俺の体を反転させ、背中を押した。目の前のベッドにつんのめる。どこの誰が触ったのかわからないブランケットに包まって、隣のブースの物音やいびきに眠りを妨げられることもなく、手足を思いきり伸ばせるベッドに抗う気力はいまの俺には残っていなかった。

「じゃあ、ちょっとだけ、一時間だけ横になる」

 ベッドに寝転がり、目を瞑ったのが間違いだった。



日常茶飯事(3/5)

2020.11.13.Fri.


 今日も翔と一緒に家を出て、「行ってらっしゃい」と手を振る翔と駅で別れた。

 昨夜の宣言通り、今朝は翔が朝食を作った。フレンチトーストなんて洒落たものが出てきた。キッチンには一通りの調味料や調理器具が揃っていたから多少は料理をする奴なんだろうとは思っていたが、実際にやるのはほとんど連れこんだ女だと高を括っていた。まさかこれほどとは。

「両親死んで親戚の家に引きとられたって話はしましたよね。そこで虐待されてたって。家事もほとんど俺がやらされてたんでこのくらいの料理ならできるんですよ。当時はむかつくし嫌だったけど、一人で暮らし始めたらあの頃の経験が役に立ってるんですよね。朝これ出してあげると女の子たちすごい喜んでくれるんですよ」

 重い話をさらっと言われて反応に困る。人の彼女を寝取ったこいつを心底憎めないのはこの境遇に同情しているせいかもしれない。

 会社についてからスマホをチェックする。真由からは相変わらず音沙汰なしだ。部屋の解約や家具の処分やら、本当なら話しあって決めるべきことはたくさんあると思うのだが、向こうが俺の顔も見たくないと言うならもう全部任せてしまおう。

 昼休みはコンビニで弁当を買い会社のデスクで食べた。そのあいだに即入居可の部屋を探す。会社からは近すぎず遠すぎず。交通の便がよくて、駅からそれほど離れてない場所。できるだけ静かで、でもコンビニやスーパーやドラッグストアが近くにあるとありがたい。駅周辺に飲食店があるとなおよし。欲を張ればはるほど検索結果の件数が少なくなる。見つかっても家賃が高かったり、部屋が狭すぎたり。今まで2LDKに住んでいたからワンルームは手狭に感じてしまう。最低でも1DKは欲しい。家賃は管理費みで10万以下。

 探していたら翔からメール。

『今日何時に終わります? 俺ちょっと遅くなりそうなんで、どっかで飯食って時間潰しといてくれませんか』

 今日も翔の家に行く前提の内容。荷物は受け取ったしもう行く必要はない。

『今日はネカフェに泊まる。お前の家には行かない』

 送信したらすぐ返事がきた。

『了解』

 ずいぶんあっさりしてやがる。また泊まって行けと粘られると思っていたのに。こういう引き際を心得てるところがモテる秘訣なのかもしれない。参考にしよう。

 もう昼休みも終わる時間だった。何件か資料請求と内見の予約を入れておいた。

 ※ ※ ※

 真由に追い出されてから五日目。コインランドリーで洗濯が終わるのを待ちながら不動産屋からもらった資料を見比べる。駅から少し遠いが一番家賃が安いAか、真下がコンビニでスーパーも近いBか、家賃は高いが新築で収納も充分なCか。非常に悩ましい。

 仕事で疲れた日に長い距離を歩くのは嫌だ。新築で綺麗な方がいいが家賃が予算オーバーしている。駅からそんなに遠くもなく利便性もよくて家賃も予算内のBが最有力候補だが、如何せん、最寄り駅が翔と同じ。真下のコンビニは以前、翔に頼まれた牛乳を買ったコンビニだ。朝な夕なにあいつの顔を見たくない。こんなことで悩むくらいなら、あいつの家の場所なんか下手に知りたくなかった。それもこれも翔が真由を寝取るからだ。

 翔からはどういうつもりか知らないが一日一回メールがくる。真由が部屋を解約しただとか、真由が俺のことを最低くそ野郎だと同僚に話しているだとか、知りたくもないことを教えてくれる。嫌がらせだろうか。返事はしないで放置だ。

 乾燥が終わった着替えを鞄につめていたら翔から電話がかかってきた。今日はメールではなく電話だ。ちょうどいい、余計な報告は必要ないと言っておこう。

「なんだ」
『数矢さんいまどこ?』
「……どこだっていいだろ」
『飯どうすか。急に予定空いちゃって』
「振られたのか」

 いい気味だ。

『そうなんですよ。かわいそうでしょ。あ、真由ちゃんじゃないですよ。あれっきり真由ちゃんとは何もしてないですから』
「うるさい」
『どうせ数矢さんも一人でしょ。だったら一緒に飯食べましょうよ。俺作りますよ。そろそろ家庭の味に飢えてるんじゃないですか? リクエストくれたら作りますよ』

 真由と同棲したばかりの頃を思い出した。あの頃は真由も俺に電話をして、帰りの時間と夕飯のリクエストを訊いてくれたもんだ。半年もしたら電話もしてくれなくなったが。

「お前、忘れてないか? 俺はお前が寝取った女の彼氏なんだぞ。普通気まずくて連絡なんかできないだろ」
『俺そういう感覚ないんですよね。それに数矢さんとは1回ヤッちゃってるし、遠慮する仲でもないかなって』
「遠慮しろ。飯は行かないし、もう妙な報告もいらないから」
『それじゃ数矢さんとの繋がりなくなっちゃうじゃないですか。そんな寂しいこと言わないでくださいよ。俺数矢さんのこと気に入ってるのに』

 男相手にもこういうことが言えるこいつは真性の人たらしなんだろう。それかただ面の皮が厚いか。

「じゃ、そういうことだから。もう連絡してくるな」
『鶏のトマト煮作ろうと思ってるんで、気が向いたら来て下さいよ。待ってますから』
「行かねえよ」

 通話を切り、コインランドリーを出た。飯の話をしたからか腹が鳴った。飲食店の看板を見ながら歩くがどれもいまいちそそられない。頭にあるのは鶏のトマト煮。もう鶏のトマト煮の舌になっている。近い味といえばトマトソースを使ったパスタだがそういう気分でもない。煮込まれてホロリと崩れる鶏肉が食べたいのだ。

 またぐうと腹が鳴った。翔の言う通り俺はいま家庭の味に飢えている。真由と同棲している間、帰りの早いほうが料理当番という決まりだった。料理は嫌いじゃないが、帰宅して夕飯の匂いのする部屋に入る瞬間が好きだった。自分で作ったものより、真由に作ってもらった料理のほうが何倍もおいしく感じた。俺のために手間暇かけてくれたということが単純に嬉しかった。

 洋食屋を見つけてメニューを覗きこむ。どれも美味そうだが鶏のトマト煮はない。またぐうと腹が鳴った。鶏のトマト煮が食べたい。誰かと一緒に食事をしたい。

 誘われたから行ってやるだけだ。来た道を引き返し、駅へ向かった。





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日常茶飯事(2/5)

2020.11.12.Thu.
<1>

 というわけで急遽始まった翔との手コキ対決。

 向かい合って座る。余裕たっぷりに翔が笑う。俺はもともと女一筋できたんだ。男もイケる翔とは違う。こいつ相手にそんな簡単に勃たせてたまるか。

「フェラはなしだぞ、手だけだからな!」
「わかってますって」

 お互いのちんこを握り合う。なんだこの構図は、と思わないでもないが貞操の危機がかかっているんだ、勝負に集中だ。しゅっしゅと擦ると翔のちんこが大きくなりはじめた。昨日も思ったがでかい。カリ高で太さと固さも申し分ない。これで何人の女を泣かせてきたんだ。その中に自分も含まれているんだと思い出したら急に翔のちんこを握りしめていることが恥ずかしくなってきた。これが俺のなかを擦りまくってたんだよな。ちょうどこんな風に、俺の尻を肉筒みたいにして……思わず生唾を飲みこんでしまった。

 視線を感じて目をあげたら翔はじっと俺を見ていた。目が合うとにこりと笑う。近くで見るとイケメン度は倍増だ。世の中不公平だ。俺もこんな顔とモノを持って生まれていたら、彼女を他の男に寝取られることも、俺自身が寝取られることもなかったのに。

「強いよ、数矢さん。もっと優しく愛情込めて扱いてくれなきゃイケないですよ」
「愛情なんかこめてられるか」
「勝負に負けてもいいの?」

 そうだった。俺が負けたらまた翔に犯される。少し力を緩めた。翔のちんこはもう完勃ちして先走りを滲ませている。やる気がないのか翔は俺のちんこをゆるゆる扱くだけだ。そりゃ勃ちはするけど射精に至るほどじゃない。これ楽勝なんじゃないか?

「なにニヤニヤ笑ってるんですか、気持ち悪い」
「うるせえ」
「ほら、早く俺をイカせてくださいよ」

 翔に顎を掴まれた。止める前に唇が重なり舌で上唇をめくられた。歯列をなぞる感触がこそばゆくて思わず口を開いたらすぐ舌が入ってきた。翔の舌が俺の舌を絡め取り自分の口のなかへと誘いこむ。歯と唇で優しく食みながら舌の裏や側面をなぞられて腰がゾクゾクと震えた。こんなやり方ずるいだろ。

「んっ、ちょ……やめ……っ!」

 翔の胸を押し戻した。俺を見据える翔の目を見てどきっとした。スイッチの入った雄の目だ。自分が男からそういうふうに見られることに当然ながら俺は慣れていない。体を不自然に硬くなる。

「ずるいぞ」
「しちゃ駄目なのはフェラでしょ」
「キ、キスもだめだ、そんなのされたら俺が不利になる」
「そんなに俺のキス、気持ちいいですか? 嬉しいなあ」

 悔しいが気持ちいいし、それになにより昨日翔にされたフェラを思い出して股間がやばい。咽喉の奥まで咥えてしゃぶられた。イラマチオの経験は初めてで罪悪感と征服感でわけがわからなくなるほど良かった。

「とにかく、だめだ」
「わかりました、いいですよ、手だけで」

 翔が手を動かすとクチュリと音が聞こえた。見ると俺のちんこから我慢汁が垂れて翔の手を汚していた。それを潤滑油みたいに馴染ませながら先端を中心に扱かれる。あ、やばい。思わず翔の手を掴んだ。

「それズルですよ」

 慌てて手を放す。翔の手がクチュクチュ音を立てながら亀頭を揉み、育てるように陰茎を擦る。負けてられないと俺も翔のちんこを扱く。そっちに集中したら昨夜のことをどうしても思い出してしまい、また妙な気分になってきた。

「早く数矢さんの中に入りたいな」
「絶対お断りだ」
「数矢さんだって気持ちよかったでしょ? さんざん焦らされたあとに俺のちんこで前立腺めいっぱい擦られて、お腹のなか熱くなって、勃起止まんなかったでしょ? いま数矢さんが一生懸命扱いてくれてるソレ、ほんとはいますぐハメて欲しんじゃないですか? 穴のなかみっちり塞いで、グチョグチョに掻きまわされるとこ想像してみてくださいよ。ほら、我慢汁止まんない」

 ダラダラと溢れる汁をなすりつけるように亀頭を捏ねくりまわされた。

「やめっ……んぅ……」
「入れて欲しいって顔してますよ」
「だ、誰が……っ」
「強情だなあ。まあそれも攻略しがいあって面白いけどね」

 人をおもちゃにしやがって。

「お前こそさっさとイケ」
「そんな下手な手コキじゃ一生イケないですよ」

 真由にエッチが下手だと言われ、翔には手コキが下手だと言われた。じゃあ俺はなんだったら上手だって言ってもらえるんだ。

「そんな泣きそうな顔しないでくださいよ。またいじめたくなっちゃうじゃないですか」

 腰を浮かせた翔が口を寄せてきた。

「キ、キスはなしって言っただろ!」
「俺の反則負けでいいですからキスさせてくださいよ。もう我慢の限界です」
「お前の負けだからな!」
「はいはい、俺の負けです」

 おざなりに言うと翔は口を押しつけてきた。強い力で押されてそのまま後ろへ倒れこむ。キスをされながら扱かれたらもう駄目だった。

「んっ、はっ……あ、しょう……出るっ……」
「いいですよ、出して」
「俺の勝ち、だからな」
「わかってますって」

 しつこく言う俺に翔が苦笑を浮かべる。優しい手に促されて射精した。吐き出される精液を翔は手の平で受け止める。跳ね返ったものが俺の腹に垂れた。せっかく風呂入ったのに。

 精液でベトベトになって手で、翔はいい子いい子するみたいに俺のちんこを数回撫でた。その指先が玉を越え、さらに奥へと滑り込んでくる。ぎょっと頭を持ち上げた。

「しない約束だろ!」
「しませんって。ちょっと触っただけ。ここ使ってえっちしたの初めてだったんでしょ? 今日つらくなかったですか?」
「ん、そりゃ……股関節? ちょっと痛かったかも。歩くとき違和感あったし」
「体かたいんすね。回数こなせば慣れますよ」
「もうしないって言ってんだろ。いつまで触ってんだ。どけ、重いだろ」
「勝負は勝負ですからね。今日は俺の負けでいいです。絶対手は出しません。どうします? 汚れちゃったし、また風呂はいります?」

 言いながら翔は体を起こした。もっと粘られると思っていたから、こんなにあっさり引き下がれると拍子抜けしてしまう。しかも翔のちんこは勃起状態のままだ。俺はあれをイカせてやらなくていいんだろうか。俺ばっかり悪い気がしないでもない。

「軽くシャワーで流してこようかな」

 自分で抜くなら俺はいないほうがいいだろう。気を利かして風呂場へそそくさ移動した。シャワーで汚れを洗い流して戻ると、翔は「飲みませんか」と俺に缶ビールを寄越す。股間を見たらもう収まっている。抜いたのか根性で鎮めたのかは知らない。

 翔とビールを飲みながらテレビを見た。こいつのことだから隙あらば襲いかかってくるかもと身構えていたが、そんな気配は一向にない。ちゃんと約束を守るタイプには思えないのに。

「そろそろ寝ますか。今日はソファとベッド、交代しましょうか?」
「いいよ、俺はソファで」
「それとも、一緒にベッドで寝ます?」
「寝言は寝て言え」

 あはは、と翔が笑う。寝支度を済ませると「おやすみなさい」と翔はベッドに潜り込んだ。

「明日の朝飯は俺が作るから、数矢さんは時間まで寝ててくれていいですよ」
「お、おう、ありがとう」

 俺もソファに寝転がり、客用の布団を被った。……あれ? なんでまた翔の家に泊まってるんだ? 手コキの勝負から風呂、ビール、寝る、とあまりに自然に誘導されてしまった。

『じゃあどっちが先にイクか勝負しましょうよ。俺が負けたら今日は絶対手は出しません。数矢さんが先にイッたら今日もヤラせてくださいよ』

 これどっちに転んでも俺は泊まる流れだったな。これが翔の手口。口八丁手八丁で他人を自分の意のままに操る。あいつは詐欺師向きだ。

 いまさらネカフェに行くのも面倒だし、今日はもう寝る。




泣キ顔ミマン

日常茶飯事(1/5)

2020.11.11.Wed.
<前作「NO!サプライズ!」>

※日常系終わり方(なんそれ?)


「おい翔、起きろ」

 なかなか起きない頭を遠慮なく引っぱたいた。翔が寝惚け眼で俺を見つけ「誰あんた」と寝ぼけたことを言う。

「忘れたのかよ、お前が寝取った真由の彼氏だよ」
「ああ、真由ちゃんの元カレね」

 にやりと笑ってベッドから出てきた翔は素っ裸だ。股間でブラつくものに否が応でも目がいってしまう。あれが真由のなかを出たり入ったり……

 昨夜、サプライズしようと寝室のクローゼットに隠れて真由を待っていたら真由は男連れで帰宅した。そして俺が隠れているとも知らずに二人はおっぱじめやがった。

「俺が寝取ったって、真由ちゃんに係ってんの? それとも彼氏さん?」

 ボクサーを穿いて翔が振り返る。言われてみれば確かに「真由」と「彼氏」の両方にかかっている。真由のあと、俺もこの翔に食われた。あのちんこは、俺のなかも出たり入ったりしたわけだ。その現場を真由に見つかり「最低! 浮気者!」と自分のことを棚上げした真由に家から追い出され、自分のせいでもあるからと言う言葉に甘えて昨夜は翔の家に泊めてもらった。

 下関係はダラしなさそうなのに部屋は驚くほど整理整頓されてきれいなのが意外だ。そもそも物が少ないから散らかりようがないだけかもしれないが。

「そんなことはどうだっていい。さっさと顔洗って飯食え」
「えっ、ご飯作ってくれたの?」
「お前のせいとは言え、放りだされた俺を泊めてくれたんだから、このくらいの恩返しはしてやる」
「うわー、こういうの憧れだったんですよね。俺より先に起きた恋人がご飯作って起こしに来てくれるの。感動だなあ。まじ嬉しいですよ、数矢さん」

 子供みたいに顔をキラキラさせているがどうせ口だけだ。顔だけはいいコイツのことだ、朝飯どころか夕飯だって作りに来てくれる彼女はゴロゴロいるはずだ。本当に口がうまい。

「今日はどうするんですか? 真由ちゃんのところに帰るんですか?」
「まあ一回はちゃんと話しあわないとだろ。別れるにしたってあの部屋どうするか決めないといけないし、俺の荷物もあるし」
「別れ話終わったらまた俺んち来ていいですよ。ホテル行くのもお金勿体ないでしょ。新しい部屋決まるまでここに暮らせばいいじゃないですか。かわりにこうやって朝飯作ってくれたらいいんで」

 これ以上間男の世話にはなりたくない。首を横に振って固辞する。翔は気障に肩をすくめたあと「気が向いたら来て下さい。いつでも歓迎しますよ」と言うと顔を洗いに行った。

 朝飯を食べたあと翔と一緒に出勤した。駅のホームで別れるとき「行ってらっしゃい」と翔が手を振るのが恥ずかしかった。

 電車を待つ間真由にメールを送った。会社に着いてからチェックしたが返事はなし。自分が先に浮気をしておいて「浮気者!」とは笑わせる。俺の出張中に男を連れこんだ反省はまるでナシだ。

 昼休みになっても返信はない。退社してから電話をかけたが着拒されているようで繋がらない。あの部屋は俺の家でもある。真由がいようがいまいが俺には入る権利がある。真由の許可は必要ない。

 たった一晩で他人の家のように感じる我が家の前に立ち、鍵穴に鍵を差し込んだ。奥まで入らない。上下間違えたかと入れ直したが結果は同じ。鍵が入らない。どうやら真由は鍵を交換したようだ。行動の早い女だ。俺の荷物もまだ中にあるっていうのに。

 真由に電話しようとしたら見知らぬ番号から電話がかかってきた。真由か? まさか携帯も変えたのか? 通話ボタンを押した。

『あっ、数矢さん? 俺俺、翔だよー』
「なんで俺の番号知ってるんだよ」
『真由ちゃんが教えてくれたんですよ。荷物預かってるんで取りに来てください。俺んちに集合ってことでいいですか? いいですよね。どうせ部屋の中入れてもらえてないんでしょ?』
「どうしてそれを」
『真由ちゃんから伝言で、二度と顔見せんな、だそうですよ』
「ふざけんなっ」
『俺に八つ当たりしないでくださいよ。もう真由ちゃんの心は数矢さんから離れちゃったんだから男らしく諦めましょうよ』
「誰のせいだ」
『俺だけのせいじゃないですよ。数矢さんだって気持ち良くなって俺にイカせてっておねだりしてきたくせに、もう忘れちゃったんですか? ボケるにはまだ早いですよ』
「うるさい! だいたいなんでお前は真由からシカトされてねえんだよ!」
『真由ちゃんのなかでは、俺が数矢さんに寝取られたことになってるみたいですよ』

 絶句した。逆だ。俺がこいつに寝取られたんだ!

『そういうわけなんで、遅くなんないうちに来てくださいね。ついでに牛乳買ってきてくれたら明日の朝は俺が飯作りますよ』
「泊まらねえよ!」

 通話を叩き切った。真由はもう別れるつもりで話しあう気もないらしい。荷物も翔に預けているならここにいても仕方がない。早く荷物を受け取り今夜の宿を確保しないと明日の仕事に響く。とりあえず今日はネカフェに行って即入荷可の部屋を探すとしよう。

 翔のマンションへ行く途中、見つけたコンビニに入った。今日の晩飯と、ついでだから牛乳を一本買ってやった。

 ※ ※ ※

「ほんと馬鹿っていうか学習しないっていうか。そういうとこ、かわいいですけどね」

 翔が俺にのしかかり首筋を舐める。

 本当にただ荷物を取りに来ただけだった。牛乳はただの手土産のつもりだった。弁当を見つけた翔が「俺んちで食べて行けばいいじゃないですか。お茶くらい出しますよ」って俺を引き止めるから弁当を食べたら出て行くつもりで部屋に入った。今夜はネカフェに行くと言ったら「ああいう場所の風呂って落ち着かなくないですか? 俺んちでシャワー浴びればいいじゃないですか。ついでにお湯張りますよ」と言うと俺の返事を待たずお湯張りのスイッチを押してしまった。

 出張中ずっとシャワーで済ませていたからつい湯船が恋しくなった。風呂入ったら出よう、そう思って言われるまま風呂に入って出てきたところを翔に押し倒されてこのザマだ。

「お前最初からこのつもりだったな」
「数矢さんこそ」
「俺はほんとに荷物だけのつもりだったんだ」
「じゃあどうして牛乳買ってきてくれたんですか。それもうOKってことですよね」
「手ぶらじゃ悪いと思ったから」
「のこのこ部屋にあがりこんで、風呂まで入って、女でもそんな言い訳通用しないよ」

 女じゃないからそんな言い訳が通用すると思ってしまったんだ。

 翔は俺にキスをしながら股間を揉んできた。二日連続好き勝手やられてたまるか。俺も翔の股間に手を伸ばした。半立ちのものを掴んでやると驚いた顔をする。

「やる気になってくれた?」
「さっさとイケ、どうせ出したら終わりだろ」

 男なんて出すもの出したら嘘みたいに欲望が消えるものだ。虚脱感からもう何もしたくなくなる。だから先に翔をイカせれば俺が突っ込まれることもない。

「挑発的だなあ」

 翔は目を眇めた。

「じゃあどっちが先にイクか勝負しましょうよ。俺が負けたら今日は絶対手は出しません。数矢さんが先にイッたら今日もヤラせてくださいよ」
「受けて立ってやらあ」



やば!かわいい!最高!