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更新履歴・お知らせ

2018/8/16
生温い2、更新完結

2018/8/15
生温い1、更新

2018/6/28
続・盲目の狼2完結

2018/6/27
続・盲目の狼1更新

2018/6/23
盲目の狼2更新完結

2018/6/22
盲目の狼1更新

2018/6/21
往事渺茫…15更新完結

2018/6/20
往事渺茫…14更新

2018/6/19
往事渺茫…13更新

2018/6/18
往事渺茫…12更新

2018/6/17
往事渺茫…11更新

2018/6/16
往事渺茫…10更新

2018/6/15
往事渺茫…9更新

2018/6/14
往事渺茫…8更新

2018/6/13
往事渺茫…7更新

2018/6/12
往事渺茫…6更新

2018/6/11
往事渺茫…5更新

2018/6/10
往事渺茫…4更新

2018/6/9
往事渺茫…3更新

2018/6/8
往事渺茫…2更新

2018/6/7
往事渺茫としてすべて夢に似たり1更新

2018/5/6
妄想2、更新完結

2018/4/13
おいくら?2、更新完結

2018/4/12
おいくら?1、更新

2018/3/31
ズッ友だょ、更新完結

2018/3/2
利害関係の終了2、完結

2018/3/1
利害関係の終了1、更新

2018/2/23
勝手にやってろ2、完結

2018/2/22
勝手にやってろ1、更新

2018/2/20
続・嫁に来ないか2、完結

2018/2/19
続・嫁に来ないか1、更新

2018/1/20
嫁に来ないか2、完結

2018/1/19
嫁に来ないか1、更新

2017/11/21
雨の日の再会2、完結

2017/11/20
雨の日の再会1、更新

2017/11/19
ピンクの唇、完結

2017/11/2
赤い爪、完結

2017/10/28
スカートめくり、完結

2017/10/23
続続続・ひとでなし2、完結

2017/10/22
続続続・ひとでなし1、更新

2017/10/21
続続・ひとでなし2、完結

2017/10/20
続続・ひとでなし1、更新

2017/10/19
続・ひとでなし2、完結

2017/10/18
続・ひとでなし1、更新

2017/09/08
ひとでなし2、完結

2017/09/07
ひとでなし1、更新

2017/09/02
ほんとにあったら怖い話2完結

2017/09/01
ほんとにあったら怖い話1更新

2017/07/28
コンビ愛更新、完結

2017/07/06
第二ボタン2更新、完結

2017/07/05
第二ボタン1更新

2017/05/25
ちょろくない2更新、完結

2017/05/24
ちょろくない1更新

2017/05/16
やっぱちょろい2更新、完結

2017/05/15
やっぱちょろい1更新

2017/02/11
メリクリあけおめ2更新、完結

2017/02/10
メリクリあけおめ1更新

2016/11/14
義父の訪問更新、完結

2016/10/27
覗き2更新、完結

2016/10/26
覗き1更新

2016/10/22
終わらない夜2更新、完結

2016/10/21
終わらない夜1更新

2016/10/16
凹の懊悩2更新、完結

2016/10/15
凹の懊悩1更新

2016/09/28
可愛さも憎さも百倍2更新、完結

2016/09/27
可愛さも憎さも百倍1更新

2016/09/22
利害の一致2更新、完結

2016/09/21
利害の一致1更新

2016/09/16
楽しい記憶喪失!3更新、完結

2016/09/15
楽しい記憶喪失!2更新

2016/09/14
楽しい記憶喪失!1更新

2016/09/13
楽しい同棲!2更新、完結

2016/09/12
楽しい同棲!1更新

2016/09/11
Phantom15更新、完結

2016/09/10
Phantom14更新

2016/09/09
Phantom13更新

2016/09/08
Phantom12更新

2016/09/07
Phantom11更新

2016/09/06
Phantom10更新

2016/09/05
Phantom9更新

2016/09/04
Phantom8更新

2016/09/03
Phantom7更新

2016/09/02
Phantom6更新

2016/09/01
Phantom5更新

2016/08/31
Phantom4更新
リンク一件追加

2016/08/30
Phantom3更新

2016/08/29
Phantom2更新

2016/08/28
Phantom1更新

2016/08/04
嘘7更新、完結

2016/08/03
嘘6更新

2016/08/02
嘘5更新

2016/08/01
嘘4更新

2016/07/31
嘘3更新

2016/07/30
嘘2更新

2016/07/29
嘘1更新

2016/07/18
Love Scars3更新、完結

2016/07/17
Love Scars2更新

2016/07/16
Love Scars1更新

2016/07/13
行きつく先は5更新、完結

2016/07/12
行きつく先は4更新

2016/07/11
行きつく先は3更新

2016/07/10
行きつく先は2更新

2016/07/09
行きつく先は1更新

2016/07/04
電話が鳴る7更新、完結

2016/07/03
電話が鳴る6更新

2016/07/02
電話が鳴る5更新

2016/07/01
電話が鳴る4更新

2016/06/30
電話が鳴る3更新

2016/06/29
電話が鳴る2更新

2016/06/28
電話が鳴る1更新

2016/06/16
今日の相手も2更新、完結

2016/06/15
今日の相手も1更新

2016/06/08
今日の相手は2更新、完結

2016/06/07
今日の相手は1更新

2016/05/25
いおや2更新、完結

2016/05/24
いおや1更新

2016/05/14
奇跡2更新、完結

2016/05/13
奇跡1更新

2016/04/28
ターゲット2更新、完結

2016/04/27
ターゲット1更新

2016/03/02
視線の先2更新、完結

2016/03/01
視線の先1更新

2016/02/23
性癖の道連れ2更新、完結

2016/02/22
性癖の道連れ1更新

2016/02/15
DL販売お知らせ

2016/01/20
尾行2更新、完結

2016/01/19
尾行1更新

2015/12/07
遺作2更新、完結

2015/12/06
遺作1更新

2015/12/02
昼夜2更新、完結

2015/12/01
昼夜1更新

2015/11/26
大小2更新、完結

2015/11/25
大小1更新

2015/11/15
彼はセールスマン2更新、完結

2015/11/14
彼はセールスマン1更新

2015/10/22
2度あることは2更新、完結

2015/10/21
2度あることは1更新

2015/09/18
死神さんいらっしゃい2更新、完結

2015/09/17
死神さんいらっしゃい1更新

2015/09/08
Congratulations2更新、完結

2015/09/07
Congratulations1更新

2015/09/01
待田くんに春の気配3更新、完結

2015/08/31
待田くんに春の気配2更新

2015/08/30
待田くんに春の気配1更新

2015/08/11
亀の恩返し2更新、完結

2015/08/11
亀の恩返し1更新

2015/08/07
Aからのメール2更新、完結

2015/08/06
Aからのメール1更新

2015/07/06
5年後2更新、完結

2015/07/05
5年後1更新

2015/07/04
待っててね2更新、完結

2015/07/03
待っててね1更新

2015/05/11
その後3更新、完結

2015/05/10
その後2更新

2015/05/09
リクエスト小説
その後1更新

2015/05/05
待田くんに春はこない2更新、完結

2015/05/04
待田くんに春はこない1更新

2015/04/30
楽しいシーソーゲーム!2
更新、完結

2015/04/29
楽しいシーソーゲーム!1更新

2015/04/21
楽しい親子喧嘩!1
楽しい親子喧嘩!2更新、完結

2015/04/16
楽しい放課後!2更新、完結

2015/04/15
楽しい放課後!1更新

2015/04/06
楽しい合コン!2更新、完結

2015/04/05
楽しい合コン!1更新

2015/04/01
楽しいお見舞い!2更新、完結

2015/03/30
楽しいお見舞い!1更新

2015/03/24
楽しい旧校舎!2更新、完結

2015/03/23
楽しい旧校舎!1更新

2015/03/16
楽しい入院生活!2更新、完結

2015/03/15
楽しい入院生活!1更新

2015/03/05
楽しい遊園地!2更新、完結

2015/03/04
楽しい遊園地!1更新

2015/02/27
楽しいロッカールーム!2更新、完結

2015/02/26
楽しいロッカールーム!1更新

2015/02/16
楽しいOB会!2更新、完結

2015/02/15
楽しいOB会!1更新

2015/02/14
一周年!!
いつもありがとうございます!
君は日向の匂い更新、完結
シンデレラアイドルのSSです

2015/02/13
保健室の先生2更新、完結

2015/02/12
保健室の先生1更新

2015/02/11
teeth2更新、完結

2015/02/10
teeth1更新

2015/02/09
楽しい初カノ!2更新、完結

2015/02/08
楽しい初カノ!1更新

2015/01/31
楽しい勉強会!2更新、完結

2015/01/30
楽しい勉強会!1更新

2015/01/23
楽しいお泊り!2更新、完結

2015/01/22
リクエスト小説
楽しいお泊り!1更新

2015/01/08
明けましておめでとうございます!
本年も宜しくお願い致します!
リクエスト小説
両想い1、2更新、完結

2014/12/12
楽しい合宿!2更新、完結

2014/12/11
楽しい合宿!1更新

2014/12/01
アガルタ2更新、完結

2014/11/30
リクエスト小説
アガルタ1更新

2014/11/23
朝のお楽しみ2更新、完結

2014/11/22
リクエスト小説
朝のお楽しみ1更新

2014/11/14
即位式2更新、完結

2014/11/13
即位式1更新

2014/11/04
裏ドSくん3更新、完結

2014/11/03
裏ドSくん2更新

2014/11/02
裏ドSくん1更新

2014/11/01
ひみつのドSくん2更新、完結

2014/10/31
ひみつのドSくん1更新

2014/10/30
伴侶1、2更新、完結

2014/10/27
支配人3更新、完結

2014/10/26
支配人2更新

2014/10/25
支配人1更新

2014/10/24
隣人3更新、完結

2014/10/23
隣人2更新

2014/10/22
隣人1更新

2014/10/15
元上司2更新、完結

2014/10/14
リクエスト小説
元上司 1更新

2014/10/10
ニコニコドッグⅡ 2更新、完結

2014/10/09
リクエスト小説
ニコニコドッグⅡ 1更新

2014/10/04
茶番2更新、完結

2014/10/03
リクエスト小説
茶番1更新

2014/09/12
「ちょろい 2」更新、完結

2014/09/11
「ちょろい 1」更新

2014/09/08
「新雪の君」更新、完結

2014/09/06
コメントお返事させて頂きました

2014/09/05
「すばらしい日々3」更新、完結

2014/09/04
「すばらしい日々2」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/09/03
リクエスト小説
「すばらしい日々1」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/09/01
「好きと言って4」更新、完結

2014/08/31
「好きと言って3」更新

2014/08/30
「好きと言って2」更新

2014/08/29
リクエスト小説
「好きと言って1」更新

2014/08/24
「純粋に近付いた何か2」更新、完結

2014/08/23
リクエスト小説
「純粋に近付いた何か 1」更新

2014/08/15
コメントお返事させて頂きました

2014/08/14
再会2更新、完結
コメレスさせて頂きました

2014/08/13
リクエスト小説「再会1」更新
「ノビ」の続編です

2014/07/26
コメントお返事させて頂きました

2014/07/25
息子さんを僕にください2更新完結

2014/07/24
リクエスト小説「息子さんを僕にください1」更新
娘さんを僕に下さいとは無関係ですw

2014/07/22
コメントお返事させて頂きました

2014/07/20
久しく為さば須らく2更新、完結
コメントお返事させて頂きました

2014/07/19
リクエスト小説「久しく為さば須らく1」更新
コメントお返事させて頂きました

2014/07/18
コメントお返事させて頂きました

2014/07/16
コメントお返事させて頂きました

2014/07/15
コメントお返事させて頂きました

2014/07/14
コメントお返事させて頂きました

2014/07/13
リクエスト小説「嫉妬せいでか2」更新、完結
コメお返事させて頂きました

リクエスト小説「嫉妬せいでか1」更新

2014/07/11
拍手お返事させて頂きました
お知らせ一件

2014/07/10
コメント、拍手お返事させて頂きました

2014/07/09
拍手お返事させて頂きました

2014/07/08
コメント、拍手お返事させて頂きました
耽溺 2更新、完結

2014/07/07
拍手お返事させて頂きました
リクエスト小説「耽溺 1」更新

2014/07/06
拍手お返事させて頂きました

2014/07/05
拍手お返事させて頂きました

2014/07/04
コメント、拍手、お返事させて頂きました

2014/07/03
コメント、拍手、お返事させて頂きました
吉原と拓海その後 2更新、完結

2014/07/02
コメント、拍手、お返事させて頂きました
吉原と拓海その後1更新しました

2014/07/01
コメントお返事させて頂きました
シンデレラアイドル2更新、完結

2014/06/30
拍手お返事させて頂きました
シンデレラアイドル1更新しました

2014/06/29
リクエスト募集してます

2014/06/27
拍手お返事させて頂きました

2014/06/24
目は口ほどに 更新、完結

2014/06/17
茶々丸更新、完結
獣姦っぽい

2014/06/11
連鎖 2更新、完結

2014/06/10
連鎖 1更新

2014/06/07
拍手お返事させて頂きました

2014/06/06
拍手お返事させて頂きました

2014/06/05
拍手お返事させて頂きました

2014/06/04
元旦那さん 2更新、完結

2014/06/03
元旦那さん 1更新
旦那さんの続きです

2014/05/29
昨日の記事の続きで拍手お返事させてもらっています

2014/05/28
旦那さん 2更新、完結

2014/05/27
旦那さん 1更新

2014/05/22
夢の時間2更新、完結

2014/05/21
アンケート1位小説「親子」
夢の時間1更新

2014/05/16
この物語はフィクションです更新、完結

2014/05/14
アンケート1位小説「教師と生徒」で先生受け。
信じて下さい更新。完結

2014/05/11
純粋とは程遠いなにか2更新。完結
ダウンロード販売のお知らせ

2014/05/09
純粋とは程遠い何か1更新

2014/05/01
長男としての責務2更新。完結

2014/04/30
長男としての責務1更新

2014/04/27
セフレ更新。完結

2014/04/21
嘘が真になる2更新。完結

2014/04/20
嘘が真になる1更新。
アンケート終了しました
投票してくださった皆さんありがとうございました!

2014/04/15
親切が仇になる2更新。完結

2014/04/14
親切が仇になる1更新

2014/04/11
家庭教師更新。完結

2014/04/09
惚れ薬2更新。完結

2014/04/08
惚れ薬1更新

2014/04/05
ニコニコドッグ更新。完結

2014/04/03
健やかなるときも病めるときも更新。完結
アンケート設置1ヶ月記念更新
回答ありがとうございます!

2014/04/02
お隣さん2更新。完結

2014/04/01
お隣さん1更新

2014/03/28
B3-17 はるか更新。完結

2014/03/27
会話の語尾は常にハートマーク更新。完結

2014/03/24
僕の居場所更新。完結

2014/03/21
兄弟愛(3/3)更新。完結

ストックを全て出し切ってしまいましたので毎日更新は今日で終わりになります。
これからは書き終わり次第更新していきますので、引き続きよろしくお願い致します。

2014/03/20
兄弟愛(2/3)更新。

2014/03/19
兄弟愛(1/3)更新。

2014/03/18
7歳の高校生更新。完結

2014/03/17
7歳の高校生更新

2014/03/16
裏の顔更新。完結
アンケート2位「教師と生徒」
少し違う感じになりました。

2014/03/15
残業も悪くない更新。完結
アンケート結果を反映させてみました。
アンケートに答えてくださった皆さんありがとうございます。引き続きお願い致します

2014/03/14
片思い更新。完結

2014/03/13
クラスの地味男更新。完結

2014/03/12
吉原と拓海更新。完結

2014/03/11
罠更新。完結

2014/03/10
同級生更新。完結

2014/03/09
目覚め更新。完結
FC2小説にて、
閃光戦士フラシュレッド!公開。完結。

2014/03/08
やってられない更新。完結

2014/03/07
地下の城ピュラタ更新。完結

2014/03/06
地下の城ピュラタ更新。

2014/03/05
部室にて更新。完結

2014/03/04
すべからく長生きせよ更新。完結

2014/03/03
秘め事更新。完結
アンケート設置。ご協力お願いします

2014/03/02
映画館にて更新。完結

2014/03/01
大迷惑@一角獣更新。完結

2014/02/28
大迷惑@一角獣更新。

2014/02/27
僕はセールスマン更新。完結

2014/02/26
俺のセールスマン更新。完結

2014/02/25
夏の夜更新。完結

2014/02/24
妄想更新。完結

2014/02/23
先生 その2更新。完結

2014/02/22
洞窟更新。完結

2014/02/21
洞窟更新。

2014/02/20
先生 その1(1-2)更新。
先生 その1(2-2)更新。完結

2014/02/19
娘さんを僕にください更新。完結

2014/02/18
ノビ更新。完結

2014/02/17
ノビ更新。

2014/02/16
1万3千円更新。完結

2014/02/15
1万3千円更新。

2014/02/14
ファンレター更新。完結

2014/02/14
ブログ始動。
「ファンレター」公開。

よろしくお願いします。

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生温い(2/2)

<前話>

 2、3時間って言ったくせに、実際五木から電話がかかってきたのは4時間も経ってからだった。わかってたけどむかつく。しかも五木は一旦家に帰ったのか、スーツに着替えていた。俺、パーカーにジャケットって学生みたいな格好なんだけど。

 五木の車でホテルに乗りつけて、いつの間に予約取ってたのか五木の名前で席に案内された。ディナータイムなので静かで上品な雰囲気、ドレスアップした客も多い。ますます俺が浮くじゃん。

「好きな物頼めよ」

 メニューを広げる俺に五木がニヤニヤ笑う。メニューが難解すぎてどんな料理か想像できねえよ。

「あんたに任せる」

 五木はこなれた感じで注文するとメニューをウエイターに返した。荒稼ぎした金でこういう店に女連れて来てたんだろうってのがわかる。

「そういえば何歳になったんだ?」
「えっ」
「誕生日だったんだろ」
「25」
「初めて会ったのが18の時だから、もう7年になるのか」
「なかなか濃い7年だったよな。騙されて犯されるわ、AV出演させられるわ、あんたはやくざの奴隷になって、刑務所入れられるしさ」
「そう言われると、お前と出会ってからろくなことがないな。疫病神か」
「こっちの台詞だし」

 ワインが運ばれてきたので会話を一旦中止する。白ワイン。口当たりがよくておいしい。

「そういえばさっき電話でえらく不機嫌だったな。何があった?」
「別に。あんたに関係ないことだよ」
「ならいい」

 またさっきのウエイターが料理を運んできた。大きな皿に少しの料理。小洒落た盛り付けでそれっぽく見えるだけじゃん、こんなの。一皿食べ終わるとまた次の皿がくる。これがコース料理か。25歳にして初めて食うわ。メインの肉も少なっ。こんなことならやっぱ焼肉にしときゃよかったかも。

「カードキー。忘れる前に渡しとく」

 デザートを待つ間、五木が思い出したようにポケットからカードを出した。

「ほんとに部屋取ってくれたんだ?」
「誕生日プレゼントだ。もう俺に集るなよ」

 テーブルのカードキーと五木の顔を交互に見る。

「なんだ」
「あんたは帰んの?」
「俺はお呼びじゃねえんだろ」

 確かにそう言ったけど。あんな本心隠したやり取りなんていつものことだろ。わかれよそんくらい。口をモゴモゴさせる俺を見て、五木は「クッ」と笑った。

「そんな顔で誘われちゃ仕方ねえな」

 って言うとテーブルのカードをまた自分のポケットに戻した。

「誘ってねえし」

 誘ってはいないが、縋る顔をしていた自覚はあったので抗議の声も自然と控えめ。五木はずっとニヤついている。恥ずかしくって顔あげられない。



 デザートを食べてすぐ部屋に向かった。五木をベッドに押し倒し、その上に馬乗りになる。ベルトを外して前を緩め、もどかしく引っ張りだしたちんこにしゃぶりついた。

「そんなにこれが欲しかったのか」

 口の中で五木のちんこがピクピク動く。俺は無言でしゃぶり続けた。完全に勃ちあがるとそこへ跨り、尻を落としていった。久し振りでけっこうきつい。歯を食い縛って五木を咥えこむ。

「お前、最後に女とセックスしたの、いつだ?」
「なんで? 覚えてないけど」
「覚えてないくらい前か?」
「出会いがないんだから仕方ないだろ。あんたみたいに、3Pしてる暇もないし」
「女抱けるのか?」
「どういう意味だよ」
「前に言ってたよな、お前、男とヤルとき俺がいなきゃ勃たないって。もしかして、女とヤルときも勃たないんじゃねえのか?」
「勃つよ! 今日だって勃ってたじゃん」
「なかなかイカなかっただろ。最後は俺の顔を見ながら扱いてた。あれ、俺を見ながらじゃなきゃイケなかったんじゃねえのか?」

 内心ぎくりとしてたら五木がにっと笑った。

「図星だな。中が締まった」
「あんたの顔なんか見なくてもイケるし」
「じゃあまた仕事頼もうかな」

 俺の腰を掴んで五木が下から突きあげてきた。

「ハッ、あっ」
「あいかわらずキツいな。男ともしてねえのか? ああ、俺がいなきゃ勃たねえんだっけ」

 楽しそうな声。リズムをつけて突きあげてくる。いいところに当てるために俺も腰を動かし、振り落とされない態勢を取る。

「ちゃん、と、勃つ、しっ!」

 家で一人でするときは勃起もするし射精もする。でもなぜか生身相手になると気分が乗らなくなって射精にまで至らなくなる。

 今日、女優さんにぶっかけるって時にその感覚に陥って焦った。五木を探したのはほとんど無意識だ。若い女の裸を見ても興奮はしなかった。射精のプレッシャーのほうが大きかった。そんな時に五木を見るとその気になれる。刷り込まれた反射。いつまで俺を縛りつけるんだ。

「一回抜くぞ、腰が痛い」

 五木は体を起こすと俺を押し倒し、また挿入した。

「3Pなんかするから痛いんじゃないの」

 俺の嫌味をフンと鼻で笑う。

「まだ根に持ってんのか」
「ケーキとられたんだぞ。あんたと食べようと思って買ってったのに」
「悪かったって。撮影のいろはを教える名目なだけで、あいつらも仕事欲しさに枕営業必死なんだよ」
「役得だね」
「馬鹿言え。興味ない女相手に勃起させ続けるのも大変なんだぞ」
「年だからじゃないの? あんたこそ、何歳だっけ」
「舐めんな、まだ32だ」

 足を押し広げられた。叩きこむように五木が腰を振る。

「ふあっ、あっ」
「今度好きなだけケーキ食わせてやるよ」
「あっ、あんっ、一緒に……食ってくれんの?」
「ああ、歌も歌ってやるぜ」
「はあっ、あ、もっと奥、来て……!」

 五木が俺の膝を押しあげた。体が曲げられて、自分のちんこはおろか、五木との結合部も見える。ほとんど真上から五木のちんこが中を抉るように突き刺さる。深い挿入に息がつまりそうになる。

「ああっ、やっ……! もっと、来てよっ」

 目の前に垂れるネクタイを引っ張った。五木の顔が近づいてくる。俺も首を伸ばして口を合わせた。無理な体勢。ぴったりくっつかない唇。必死に舌を絡め合う俺たち。獣じみている。

「はあっ、はっ、ん、んんっ」
「キス好きだな、お前」
「あの女優ともした?」
「しねえよ」
「他の誰かとしたら、許さねえかんな」
「そんな相手、お前しかいねえよ」

 五木の顔から余裕が消えた。腰の動きも早くなる。ちんこを扱きたい衝動を我慢する。擦ったらすぐ出ちゃいそうだから。五木の顔を見ただけで。匂いを嗅いだだけで。それだけで俺は反応する。

 結局長くはもたなくて、五木がイクまえに俺が先にイッてしまった。



 朝の六時半に叩き起こされた。五木はすでにワイシャツにネクタイを締めている。

「出るぞ。お前も仕事だろ」
「あー、うん」

 寝惚けながらベッドを出て洗顔と歯磨きを済ませる。部屋を出て五木の車に乗った。

「そうだ、俺、またあんたのとこで働こうかな」
「ホモビデオか? どうした急に」
「店畳むかもしんないんだって。オーナーから連絡あってさ。俺無職になるかも」
「今まで潰れなかったのが不思議なくらいだ」
「とりあえず食ってかなきゃなんないから、何かしないと」
「せっかく足洗えたのにか?」
「俺馬鹿だし学歴ないから、他に稼ぎ方知らねえもん」
「もっと慎重に考えろよ」
「あんただってまた仕事手伝えって言ったじゃん」
「本職にするのとはわけが違うだろうが」
「この道に引きずり込んだのはあんたのくせによく言うよ」

 いつもの軽口のつもりだったのに、五木は口を閉ざして黙り込んだ。なんだよ、マジな空気出されたら俺が気まずいだろ。

「まあ、ずるずる続けたのは俺だけどさ」

 なに五木をフォローするようなこと言ってんだ俺。

「……ほんとにやる気ならちゃんとした事務所紹介してやるよ」

 妙に低い五木の声。

「あんたんとこは?」
「うちはメーカー会社のほうだからな。プロダクションじゃねえんだ。専属がいることはいるが女ばっかだ」

 五木がいない他の事務所じゃ入る気がしないな。

「現場に俺がいなきゃ勃たねえのに、どうすんだよ」

 いつもの口調に戻って五木が俺を茶化す。確かにその通り、かもしれないので、ぶすっと口を尖らせていたら五木に頭を撫でくり回された。

「まあ、ちょっと待て。お前の働き口くらい、俺がなんとかしてやる」

 五木にそう言われると。なんかものすごく安心する。



 ネパールにいたオーナーが帰国した。ネパール人の彼女を連れて。実家にはもう挨拶に行って、結婚の話もしたそうだ。両親は最初驚いていたが祝福してくれたらしい。

 という話をネパール土産を持って店にやってきたオーナーから聞いた。その時、この店の話もした。俺がここを買い取ることは無理で断った。ローンを組む甲斐性も将来性もない。

 オーナーはしきりに残念だと惜しんでくれた。それなりにこの店と俺に愛着を持っていてくれたのだろう。

 店は他の誰かに売るらしい。すでに実家の両親に話を持ちかけてきた人物がいたそうだ。そのことがあったから、オーナーは急に俺に店を買わないかと言いだしたのだそうだ。

 レンタルビデオ店は他の誰かの手に渡る。今月一杯で営業も終了。俺は無職確定。

 働き口をなんとかしてやると言っていた五木からは連絡がない。俺、どうなっちゃうの。

 不安になって五木に電話してみた。いま忙しいとなかなか時間を作ってくれない。そうこうしているうちに店は閉店、俺は無職になった。

 一人暮らしの金もなくなり実家に戻った。はやく次の仕事を見つけて来いと毎日親から言われて肩身が狭い。家に居づらく高校時代の友達と遊びに行ったりして貯金を使い果たした頃、やっと五木から連絡してきた。

「おっせーよ、ハゲ」
『ハゲてねえよ。迎えに行ってやる。いまどこだ?』

 毎度毎度、俺に用事があるとか考えないのかこの自己中は。あいにく予定もなかったので、実家近くの駅を指定した。待つこと十分、五木の車がやってきて助手席に乗り込んだ。

「とうとう俺、無職なんだけど。いつ俺に仕事紹介してくれんの」
「今日」

 見覚えのある道を車が走る。雨の日も風の日も、働くのが面倒だった日も、毎日通ったレンタルビデオ店への道。ほらもう見えてきた。

 店の窓からポスターの類は全部剥がされ、ベニヤ板のようなものが全面に貼られていた。出入り口だった扉には、俺が手書きした閉店のお知らせの紙がまだ残っている。

 店のまえを車が通りすぎた。少し行った先のマンションの駐車場に入って車は止まった。

「なんの仕事紹介してくれんの?」
「デリヘルの店長」
「はあ?!」

 目を剥く俺の背中を押して五木はエレベーターに乗り込み、5階のボタンを押した。

「とりあえず、AV女優志望の女何人かこっちに引っ張って来てるから。将来的にはAV女優とヤれる店って売りにしようと思ってる。超VIP向けのメニュー作ってな。オーナーが俺でお前がフロント。仕事内容は女の子の管理と送迎、電話番。いまのとこ男の従業員はお前ひとり。仕事が増えて来たらドライバーを雇う」
「ちょちょ、ちょっと待てよ、俺そんなのできねえよ」

 勝手に喋り続ける五木を慌てて止めた。

「お前ならできる。むしろ適任だろ。お前のその当たり障りない人付き合いしかできねえところとか、勃たねえから商品の女に手を出しようもないところとか」
「褒めてねえじゃん、悪口じゃん。あんたは? あんたは何すんだよ」
「俺はまだ今のところを辞められねえんだよ」
「なんで?」
「最初のうちは向こうから嬢をレンタルさせてもらうから、いい女の引き抜き防止と、こっちが失敗したとき俺が飛ばねえように監視目的だな」
「ああ、あんた、やくざの奴隷だもんな」
「そういうこと。当面、お前ひとりで頑張れ」

 止まったエレベーターを出て通路を進む。505と書かれた部屋の前で止まり、五木は鍵を差し込んだ。部屋の間取りは1K。手前のキッチンにパソコンと電話が乗ったデスク。奥の部屋にはテーブルとソファ、テレビが置いてある。ここが女の子たちの待機場所。

「まじで? 俺、自信ない」
「売上次第だが、うまくいけば同年代の平均年収は軽く稼げるぞ」
「金の問題じゃなくって」
「なにが問題だ?」
「一人じゃ不安だって」
「俺がいるだろ。何かあれば連絡してこい。営業は明日からだ。しばらく暇だろうが、客から電話があったらオーダー聞いて俺に電話しろ。女はこっちで見繕う。お前はここで待機して俺の指示で車を出せ」
「車は?! 持ってない!」
「下に用意してある」

 用意周到だ。ここ最近忙しいと言っていたのは、これの準備のためだったのかもしれない。

 いきなりの展開すぎて頭がついていかない。戸惑う俺を五木はソファに座らせた。

「やりたくないならしなくていい。ゲイビでも男優でも、好きなことをやればいい」

 少し前まで本気でAV業界に戻ろうかと考えていた。でも五木が言う通り、俺は五木がいないと男相手に勃たないし、女相手でも射精できなくなってしまった。こんなんじゃどこも使ってくれない。

 かと言って何かやりたい仕事もないし、選べるほど優秀な人間でもない。

 もうずっと流されるだけの人生だった。いまさら流れに逆らったりなにか考えるなんて性に合わない。これまでなるようになってきたんだ、なんとかなるだろう。ならなけりゃ、その時また考えればいい。

「あんたもたまにはここに顔出してくれる?」
「当たり前だろ、俺の店だ」
「じゃあ、やってみようかな。できるかわかんないけど」
「よし、決まりだ」

 ソファから立ちあがると、五木は小さな冷蔵庫を開け、ケーキとシャンパンを持ってきた。

「これって」
「一緒にケーキ食うって約束しただろ」

 プレートに「誕生日おめでとう ミワ」って書いてある。こういうとこ、ずるいと思う。女嫌いのくせに女をこますことがうまいのも、こういう天性のたらし気質のせいだ。

「ローソクつけるか?」

 ライターを探す五木に抱きついた。

「なんだ、ケーキだけじゃ足りねえのか」
「足りない」
「なにが欲しい」
「あんたが欲しい」

 言い終わるや、五木にキスした。五木が俺を抱き返し、ソファに押し倒す。勃起に触られただけでイキそうになる。

 もしかしたら俺、一生五木から離れられないかもしんない。





会いたくなかった1



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2018-08-16(Thu) 20:07| 生温い| トラックバック(-)| コメント 0

生温い(1/2)

<「ちょろい」→「やっぱちょろい」→「ちょろくない」>

※男女性描写あり

 仕事終わりにスマホ見たら誕生日オメってメールが何通が来てた。すっかり忘れてたけど、今日って俺の誕生日じゃね? 気付いたらケーキが食べたくなった。1人で食べるのも寂しいし、コンビニ寄ったあと五木のマンションに向かった。

 刑務所から出所後に借りたマンションも相変らずオートロック。あいつは人を信用してないから。っていうか、被害者から呪いかけられるほど悪いことしてきたから、ビビッてんだな、情けない奴。

 刑務所に入ったからって禊が済んだわけじゃない。言っておくが俺だって被害者の一人で五木にされたことを許したわけじゃない。俺にも落ち度があったし、そのあと特殊性癖に目覚めたりして、まあ今のところ不問にしてやってもいいという気分なだけ。

 それに、こうして夜いきなり押しかけたりできるのって五木くらいだし。高校の友達にはやっぱ前もって連絡しとかなきゃ悪いなーって思うけど、五木だったら怒らせたって別にいいやって思える。だってあいつ、俺にさんざん嫌なことしたんだから、このくらいで目くじら立てんなって感じ。

 23時21分。五木ならまだ起きてるだろう。刑務所出てまともな職につけるわけもなく、五木はまた元鞘に戻ってやくざのフロント企業で働いている。女をこますことが相当うまと思われているみたいで、またAV撮影の仕事。もちろん男優じゃなく、制作側の人間。

 前に会った時、「もうまんこもちんこも見たくない」って疲れた顔してぼやいてたっけ。男遊びが激しい母親を呪い、女を嫌い、その女を道具のように扱ってきた罰だと思う。そう言ったら心底嫌そうな顔してたけど。

 五木の部屋のチャイム鳴らそうとしてたら、ちょうどマンションの住人が外へ出かけていくところだった。なのでそのまま中に入って、エレベーターに乗り込んだ。五木の部屋は最上階。バカとなんとかは高いところが好きってやつ? 言ったらぶん殴られそうだから言わないけど。

 廊下の一番奥。五木の家のチャイムを鳴らした。しばらく待つと『お前、何しに来た』って不機嫌そうな声が聞こえてきた。

「ハッピーバースデー!」
『誕生日じゃねえよ』
「俺俺!」
『帰れ』
「ケーキも買ってきたのに。あんたの分もあるよ」
『いらねぇ……あっ、こら、待て!』

 お? なんか他に人の気配? 誰かと一緒? あの用心深い五木が自宅に誰か呼ぶなんて珍しい。

 ガチャッと解錠の音。そのあと勢いよく扉が開いたと思ったら、俺を出迎えたのは五木ではなく、裸の女。それもすっごくかわいくて、スタイルのいい、俺より若そうな女の子。

「ケーキ? これケーキ? あたしがもらってあげるー!」

 俺から許可なくコンビニ袋を奪うと裸の女は部屋の奥へ走って行った。なにあの股だけじゃなく頭も緩そうな女。

 ケーキ奪われたけど、せっかくここまで来たんだから、お茶の一杯くらい出してもらわないと。ついでに五木がいまどんな顔してんのかも見てやらないと。

 靴をぬいで勝手に家にあがる。リビングへ行くと、腰にタオル巻いただけの五木が超絶不機嫌な顔で俺を睨んでた。

「あっ、お取込み中? お邪魔しちゃった?」
「ふざけるな。来る前連絡しろっていつも言ってるだろ」
「優しいあんたのことだから、俺のサプライズパーティー準備してくれてると思ったのに」
「するわけないだろ。お前の誕生日すら知らねえよ」
「ひどーい。自分だけ楽しんじゃって」

 さっき俺のケーキを強奪していった女の姿が見えない。たぶん、寝室? チラッと寝室のほうへ視線をやると、偶然扉が開いて、女が顔を出した。

「五木さーん、まだ?」

 さっきと違う女が、甘えた声で五木を呼ぶ。

「すぐ行くから、そっちで待ってて」

 俺と話す時とはぜんぜん違う優しい声と言葉遣い。なにそれ。すっげえむかつくんだけど。

 女は「はぁい」と返事して顔を引っこめた。

 視線を五木に戻す。五木はうんざりした顔つきで小さく息を吐いた。

「3P?」 
「うるさい」

 もうまんこなんか見たくないんじゃなかったのかよ。

「あんたって、ああいう女がタイプなんだ? へー、ふーん」
「仕事だ、馬鹿」
「撮影? もしかしてまた素人強/姦もの? 懲りたんじゃないの?」
「あの二人は新人女優なんだよ。撮影はまだ緊張するって言うから」
「で、なんであんたと3Pの流れになんの? 意味わかんない」
「カメラが回ってないところで、撮影のあれこれを教えてやるんだ」
「社長自ら手取足取り?」
「俺はもう社長じゃねえよ」
「あっ、今はプロデューサーだっけ?」

 厭味ったらしく笑ってやると五木は鬱陶しそうに顔を顰めた。

「お前いつからそんなに性格歪んだんだ」
「あんたに騙されて輪姦された時じゃない?」

 五木はなにか言い返しかけたけど、途中で面倒になったのか口を閉じて溜息をついた。

「俺は戻る」

 俺を押しのけて寝室へ向かう。

「邪魔して悪かったな! 俺の誕生日に! さっきの女にケーキとられたけど!」

 五木は振り返らない。何も言わない。むかつく。腹の虫が収まらない。なに女連れこんでんだよ。まんこは見飽きたんじゃないのかよ。女嫌いのくせに二人も相手にしてんじゃねえよ。

「インポ野郎! お前なんかちんぽ腐って死ね!!」

 大声で捨て台詞を吐いて五木の家を出た。まだムカツクので扉を思いっきり蹴ってやった。最悪な誕生日じゃん。

 

 俺が働いているレンタルビデオ店の唯一のアルバイト君が、知り合いのツテで就職が決まったから今月いっぱいで辞めたいと言ってきた。聞けば俺も知ってる会社名、条件もいい。代わってくれという言葉をなんとか飲みこんで、店長らしく「良かったな」とバイト君を送りだした。

 店は俺一人になった。小さな個人経営のレンタルビデオ店。微々たる売り上げ。バイト君がいなくなった分人件費が浮いて赤字は解消されたけど、朝から晩まで俺一人でまわさなきゃならない。いくら暇な店でもきつい。

 俺も他に就職先を探そうか。考えてみるけど、こんな気楽な職場に慣れてしまったら、他でやっていける自信がない。

 こうやって何度も同じことをグルグル考えて結局行動しないまま今まできた。この先もきっと同じことを繰り返すんだろう。俺の人生ってそんなもんだ。

 今日もあくびしながら一人店番をする。正午過ぎが一番暇な時間帯。映画館で見たいと思いながら結局行かなかった洋画を見ながら昼飯を食べる。

 食後のコーヒーを飲んでいたらスマホが鳴った。「五木のアホ」って表示。今度「五木の腐れちんこ」って登録変えてやろう。

「なんだよ、俺いま仕事中で忙しいんだけど」

 洋画を一時停止して五木からの電話に出た。

『潰れかけのレンタル屋がなにほざいてやがる』
「あんたこそ、新人女優の相手が忙しいんじゃないの?」
『仕事でするセックスはもう飽きたって言ってんだろ。お前暇だろ。いまから出て来いよ。晩飯奢ってやる』

 もしかして、この前の誕生日のことちょっとは悪かったと思ってその埋め合わせしようとしてる? 可愛いとこあるじゃん。

「なに奢ってくれんの?」
『ただし条件がある』
「無理!」

 こいつから出てくる条件なんて嫌な予感しかしない。

『話聞いてないだろ。これから午後の撮影なんだが汁男優が一人使い物にならなくなった。お前、代わりに出ろ。そんな店、営業してるだけで赤字なんだから』
「やだって。俺、あんたがパクられた時足洗ったのに」
『今回だけだ。お前ならAV撮影の勝手もわかってるだろ』

 そりゃまあ何本も撮影してるからわかってはいるけど。迷う俺の耳に『好きな飯奢ってやる』って五木の声。俺の目が店の出入り口を確認してる。客は来ない。

「わかったよ。肉、奢れよ。鉄板焼き」
『場所はあとでメールする。すぐ来い』

 返事を聞いたらもう用はないとばかりに無遠慮に通話が切られた。そういう奴だとわかちゃいるがむかつく。結局あいつの頼み事をきいてしまう自分が馬鹿みたいに思えるから。



 わざと遅く行ってやろうかと子供じみた復讐心がないではなかったが、撮影にはたくさんの大人とそれなりのお金がかかっていることは知っているので、店を臨時休業させると急いでメールに書かれた住所へ向かった。前に俺も使ったことがある撮影スタジオだった。

 中に入ったら、撮影スタッフの面子のなかに知った顔もあった。向こうも覚えてたみたいで「ミワちゃんじゃん」と声をかけてきた。

「お久しぶりです」
「ミワちゃん復活?」
「まさか! 今日はただのピンチヒッター」
「男優さんが一人、勃たなくなっちゃったんだよね」

 と、部屋の隅へ視線を向ける。つられてそっちを見ると、バスローブ姿の男が椅子に座ってベソかいてた。

「もともと経験浅い子で、急に緊張して勃たなくなったみたい」
「あちゃー。かわいそう。俺もインポになりかけたことあるから気持ちわかるわー」
「ミワちゃんがインポ? 初耳だなあ」
「もう治りましたけどね。でなきゃ来ないよ」
「だよね」

 ワハハって笑ってたら「おい!」って五木が遠くから指で「来い」ってしてる。俺は犬かよ。

「急に呼び付けておいてその態度」
「監督、男優揃いました。午後の撮影始めましょうか」

 俺の肩をグイッと掴んだと思ったら、いかにも監督ぽい男のほうへ体を向かせられた。

「へえ、この子が前に男の娘やってた子?」
「そうです。勝手はわかってるんで、そこらの素人よりは使えます。ほら、さっさとシャワー浴びて来い」

 挨拶もそこそこにシャワーを浴びてこいと命令され、しぶしぶ従った。そのあと、女優待ちのスタンバイ。その間に今回の撮影の設定と自分の役回りを確認し、空いた時間は一緒に出演する他の男優と軽く世間話をした。

 控室から女優さんが出てきた。ラッキーなことに若くて可愛い。なんかどっかで見たことある。最近みたAVだっけ?

「五木さん、私頑張るね」

 とガッツポーズを作る女優の声を聞いて思い出した。俺の誕生日に五木の部屋にいた女。俺のケーキを強奪してった女だ。

 五木を見た。五木はスタッフと真面目な顔で話し中。あいつが寝た女かよ。なんか急に萎えたわ。

 監督の声があがり、撮影スタート。主演女優と男優のわざとらしい演技が始まる。騙されて男の部屋に連れて来られた女の子が、待ち受けていた男たちから輪姦されるという、見たことのあるストーリー。まぁ、ありがちっちゃありがちなんだけど。

 俺は待ち受けていた男Dの役。カメラの位置を確認しながら女優さんの手足を動かして視聴者を煽るポーズを取らせる。だいたい俺が取らされたことのあるポーズだったりする。

 髪の毛で顔が隠れないよう、乱れた前髪を撫でつけてやったり。気分高めてもらうためにも乳首触ったり吸ったり。女優さん相手のAVは奉仕精神がないとやっていけないから大変だ。

 ふと思い出して五木を見た。腕組しながら壁にもたれて白けた顔をこっちに向けている。店で一番高い肉奢らせてやるからな。

 撮影もクライマックス。ちんこ扱いて女優にぶっかけるのが俺の仕事。勃起はするけどなかなか出ない。他の汁男優は次々出していく。焦ってつい、五木の顔を探した。まっすぐ俺を見ていた五木と目が合った。感情が死んだような目だ。毎日こんな現場じゃ、まんこもちんこも見たくなくなるのも無理ないだろうな。

 急に五木がフッと笑った。俺の目を見つめたまま。ブワッと全身の毛穴が開いたような感じになって、俺も無事、女優さんに精液をぶっかけて仕事は終了した。



「さすがミワちゃん、撮影慣れしてるから助かったよ」

 と、かつての顔見知りスタッフに褒められながらスタジオをあとにした。五木は当然このあと仕事が残っている。終わったら連絡をくれることになっているが、いったい何時になるやら。

 待ってる間近くの漫画喫茶で時間を潰すことにした。漫画読んでたら、いまネパールにいるレンタルビデオ店のオーナーから電話がかかってきた。

 簡単な近況報告のあと、オーナーは申し訳なさそうに『急な話で悪いんだけど』と切りだした。

「なんですか?」
『うち、売り上げ悪いじゃない? バイトも雇えないくらいに。だからいっそ店畳もうかなって思ってんのよ。実はこっちで彼女が出来てさ。このまま結婚もありかなーって。うちの親ももう年だからまた店やる気もないし、売るとしても建物が古いから買い叩かれるだろうし、それならうちでずっと働いてくれた北野くんに買って欲しいなって思ってんのよ。もちろん北野くんに買う気があればの話だけどね。北野くんが買ってくれるなら、知り合い価格で20坪で2200万。どうかな? 買う気がなければいいのよ。他に売る前に北野くんに話持ってきただけだから』

 いきなり店を畳むというのも寝耳に水の話で驚くのに、さらに2200万で買わないかだって? そんな大金、俺に用意できるはずがない。ローンだって、店を畳まれたら無職になる俺が組めるわけないし、経営を続ける条件であっても店の売り上げを考えたら銀行が貸してくれると思えない。

「ちょ、ちょっと、オーナー、急すぎだって!」
『ま、考えてみてよ。すぐ店閉めるってわけじゃないし。僕もそっち帰ってからの話だから』
「いつぐらいですか?」
『んー、早ければ今月中? 遅くても来月中かな。帰る前にまた連絡するから、考えてみて』

 その時お土産渡すねーとのんびり言ってオーナーからの電話は切れた。まじかよ。俺無職かよ。2200万なんて金ない。貯金残高16万しかないんだぞ。今日の稼ぎは実質汁男優の1000円のみ。満喫入ったから完全赤字だ。こんなことなら店番しときゃよかった。全部五木のせいだ。

 腹いせに五木に鬼電かけたら『仕事だっつってんだろうが』と怒られた。うるせえ。こっちはむかついてんだ。

「晩飯、ホテルのレストランに変更な。あんたのせいで赤字になったんだから、このくらいいいだろ」
『なに怒ってるんだ?』
「ついでに一泊したいなー」
『誘ってんのか?』
「お呼びじゃねえよ」
『出したばっかでもう欲求不満かよ』
「違うって言ってんだろ。それに3Pしてたあんたに欲求不満とか言われたくないし! 今日の女優、あん時あんたがヤッた女優じゃん! なんであんたが仕込んだ女優に俺がぶっかけなきゃなんないんだよ」

 電話の向こうから『面倒臭え』って小さな声と舌打ちが聞こえた。

『あと2、3時間で終わらせるから、それまで待ってろ』
「あんたの2、3時間は4、5時間じゃん!」

 って俺の喚き声が五木に届く前に通話は切られていた。








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2018-08-15(Wed) 20:10| 生温い| トラックバック(-)| コメント 0

続・盲目の狼(2/2)

<前話>

「どーせ要のことだから、俺のこと好きだって思ってても、プラトニックでいいとか思ってたんでしょ。俺を穢すような真似はしない!とか決意しちゃってさ。そうやって我慢ばっかし続けるから俺の挑発でいきなり爆発しちゃうんだよ。要のことだから男同士でどうやるかなんて、なーんも調べてないだろ。調べることも悪だとか決めつけちゃってさ。おかげで俺、すっげえ痛かったんだかんね。初めてが強/姦とか。拷問じゃん。せめてちょっとくらいは解してほしかったよね。俺、痛いって何回も言ったよね。ぜんぜん潤い足んなかったもん。要には絶対そんな思いさせたくないからさ。予習復習ばっちりしてきたよ」

 ローションでぬるぬるになった指がさっきから要の尻穴を出たり入ったりしている。要はベッドに突っ伏し、尻を高く掲げた格好を取らされている。この屈辱的なポーズも、古瀬曰く「昨日のお仕置き」なのだそうだ。それを言われたら従うほかない。

「こうやって潤わせながら中を解してやんなきゃ。いきなりちんこ突っ込んだら怪我しちゃうでしょ」
「う、ごめん」
「ああ、ほら、これだ、きっと。ここが前立腺。わかる?」

 古瀬の指が中をグッグッと圧迫してくる。膀胱を刺激されるような感覚。要のペニスの先がピクピク揺れた。

「ここを俺のちんこで何回も何回も擦ってあげるからね。グリグリやられると気持ちいんだってさ。もう普通のオナニーじゃイケなくなるくらい。知ってる? 男も潮吹くんだって。俺、要に潮吹かせたいなぁ。メスイキもさせたい」

 指の腹で何度も前立腺を強く擦りながら古瀬がうっとり夢を語る。後半、なにを言っているのか要には理解できなかった。

 要は息を荒くしながら、重点的に責められている場所から体が熱く火照っていくのを感じていた。半立ちだったペニスは完全に立ちあがり、違和感しかなかった古瀬の指使いに体がビクビク震える。弾んだ声も危うく出そうになって、要は手で口を塞いだ。

「もう充分解れたかな。そろそろ入れるよ? 辛かったら言ってね。ま、俺より辛いことはないだろうけど。最初はやっぱ生でいいよね。要だって生中出ししたんだから、俺もしたい」

 指が抜け、今度はさらに太いものが押し当てられた。

 古瀬のことがずっと好きだったが、古瀬にそんな俗物的なものがついているなんて想像は避けてきた。守るべき存在として意識することで、自分の煩悩から遠ざけるためだった。

 昨日はそれを目の当たりにした。古瀬に似つかわしくないグロテスクなものが、立派な形を示して天を睨んでいた。冒しがたいはずの古瀬がただの男だと思い知らされた。

 そればかりか、いまはそれが自分をこじ開けようとしている。

 男の欲望息づく熱くて硬い肉棒は、ローションのぬめりを借りてズブズブと要の中へ飲みこまれていく。むりやり広げられ、奥まで異物が嵌めこまれる。

 想像以上の負担だった。これを昨日はローションも何の準備もなしにやってしまったのだ。一歩間違えば古瀬の体を壊してしまったかもしれない。

「うわっ……す……っごい、要のなか、熱い」

 背後で古瀬が呟く。中で古瀬が蠢く。粘膜でそれを感じて要は恥ずかしくなった。

「あは、締め付けきつくなったよ。痛い?」
「痛くない」
「良かった。今から動くよ。痛くなったら言ってね。やめないけど、加減はするから」

 ヌーッとペニスを引くと古瀬はまたローションを垂らした。要の尻にもかかり、冷たさに鳥肌が立った。

 ゆっくり古瀬がピストンを始める。古瀬のペニスが出たり入ったりしている。カリが中をひっかく。さっき教えられた前立腺を擦る。ローションが卑猥な音を立てる。だんだん古瀬の腰の動きが速くなっていく。

 突かれる振動が体のてっぺんにまで伝わってくる。シーツに押しつけた顔が擦れる。要のペニスがブルンブルンと弾む。

「んっ、んふぅ……う、んんっ」
「あれ、要、口塞いでんの? 駄目じゃん。ちゃんと声聞かせてよ。俺は昨日聞かせてあげたでしょ」

 古瀬に両手を掴まれた。手綱を握るように要の手頸を握る。手を後ろに伸ばされて、要は口を塞げなくなった。

「そろそろ激しめにいくよ」

 腕を短めに持ち直すと、古瀬は宣言通り、強く打ってきた。最初はあった痛みも、すぐに慣れて消えた。摩擦された内部が熱い。ペニスが痛いくらい勃起している。

「古瀬、いや、ああっ、いやだっ」
「やじゃないでしょ。ちんぽバッキバキじゃん」

 あの古瀬がちんぽなんて単語言うんだ。そんな驚きも一瞬で消えた。突き破らんばかりの勢いで中を抉ってくる。

「いっ、ああっ、奥、来すぎ……! 壊れるよぉ、古瀬、俺の体が壊れる……!」
「このくらいで壊れねえよ。これね、結腸責め。男のなかにも、女の子宮みたいなところがあるんだって。どうしても俺、要の子宮に中出ししてやりたくてさ。俺の子、孕めよ。なぁ、まじで、要」

 熱っぽい口調で言いながら激しく奥を突きあげてくる。要は目を白黒させながら射精した。責められ続けてペニスがまた強制的に立ちあがる。

「ううっ、あっ、いやだ……俺もうイッたのにっ! またイクッ……なんで、古瀬、なんで?! またイクッ」
「イキそう? 潮か? ドライか? すげえな、要。お前素質あんじゃん」
「いやあっ、あ、あぁん、やだ、止めろ! いやだあぁっ、イクのやだ、怖いよ、古瀬!! んっ、あああぁっ!!」

 ほとんど叫びながら要はまた絶頂を迎えた。わくわく顔の古瀬が覗きこむ。ペニスからは何も出ていない。ドライオーガズムだ。古瀬は目を輝かせると、腰の動きをさらに速めた。

「俺もイクぞ。お前の子宮にたっぷり出してやるからな」
「いやだっ、もうやめ……! 強いの……だめってば……!!」

 要の目からは涙がボロボロ零れた。全身性感帯にでもなったかのようにあちこちが敏感になっている。そんな状態で一番過敏な場所を激しく擦られては正気でいられない。

 気が狂うまえに要は意識を失った。


 翌朝、要は古瀬を迎えに家に向かった。インターフォンを鳴らすと古瀬が出て来て「おはよう」と微笑む。いつもの古瀬の笑顔だ。

「お尻大丈夫? いくら充分解したっていっても、俺のちんこ出たり入ったりいっぱい擦りまくったから痛いんじゃない?」

 要は咄嗟に古瀬の口を手で塞いだ。

「だ、大丈夫だから、そんなこと大声で言うなよ」

 古瀬が手をはがす。あらわれた口元はニヤリと笑っていた。

「気絶するほどヤッちゃったから責任感じてるんだよ。初めてで種付けメスイキは辛かったでしょ。腰、怠いんじゃない? 今日くらい学校休めば? 今度は俺がお見舞い行ってあげるから」

 こんなの俺の知ってる古瀬じゃない。と要は頭を抱えたくなる。純情で奥手で俺にだけ懐くかわいい古瀬はどこへ行ってしまったのだろう。

 これが古瀬の本性だったというのだろうか。だったら今まで自分が見てきた古瀬はなんだったんだ。どこの誰だったんだ。

「こんな俺、幻滅する? 嫌い?」

 寂しそうな声にハッと顔をあげた。古瀬が泣きそうな顔でこちらを見ていた。要はこの顔に弱い。長年抱いてきた古瀬のイメージはこれだ。俺が守らなくては、そう思わせてきたのはこの顔だ。

「嫌いになったりするわけないだろ。どんな古瀬でも俺の気持ちはかわらない。これからもずっと好きだよ」
「えへへ。嬉しい。俺もずっと好きだからね」

 照れ笑いの古瀬を見て胸がじんわり温かくなる。昨日の古瀬は夢だったんじゃないだろうか。尻の怠さはただの気のせい……と自己暗示をかけようとしたとき、古瀬が要の耳に口を寄せて囁いた。

「だからまた犯らせろよ。たまに俺のケツ掘ってもいいから」

 慌てて飛びのく要の頭に、犯されて泣いた古瀬の姿が蘇る。すわ股間が反応をみせる。今度古瀬を抱くときは、昨日の自分のように古瀬をいかせたい。古瀬言うところの「種付けメスイキ」をさせてみたい。リベンジだ。

「順番だ。次は俺だぞ」

 前かがみになりながら言うと、古瀬は嬉しそうに笑った。いや、愉しそうに。

 脱ぎすてた羊の皮。身も心も、軽い。







2018-06-28(Thu) 20:03| 続・盲目の狼| トラックバック(-)| コメント 3

続・盲目の狼(1/2)

<前「盲目の狼」>

※リバ注意

「古瀬透です」

 と、教壇の横で自己紹介した転校生を見た瞬間、要の心臓は爆発した。不明な動悸に顔が熱くなり、目は古瀬から離せなくなった。古瀬は教壇の廊下側一番後ろの席を用意された。隣になったクラスメートに激しい嫉妬を感じた。

 転校初日の緊張もあって、古瀬はぜんぜん笑わなかった。誰かに話しかけられても「うん」か「ううん」と首を少し動かすだけ。人見知りなのだな、と要は庇護欲をかきたてられた。

 古瀬はヒョロガリだった。洒落た服から伸びる手足の細いことモデルが如しで、女子受けは良かったが、男子受けは悪かった。案の定、クラスの馬鹿が古瀬にちょっかいをかけ、人見知りの古瀬は何も言い返さなかった。

 要は意気軒高に止めに入った。守らねば。俺が古瀬を守らねば! 小学五年生が抱くには熱すぎる使命感が要の胸に燃えた。

 その炎が消えたことはない。

 古瀬の過度なスキンシップは信頼の証。その証拠に古瀬は他の誰にも抱きついたりしない。自分に向ける特別な笑顔は他の奴には見せない。優越感という燃料を投下され続け、炎はいつしか要の全身を覆った。古瀬を独占したい。自分のものにしたい。そんな欲求を抱くようになった。

 中学に入っても古瀬は全幅の信頼を寄せてくれていた。雛のように無防備に近づいてきて、子猫のように甘えてくる。クラスが別れ、常に見守れなくなった不安から、休み時間はちょくちょく様子を見に行った。

 人見知りはまだ治っていなくて、古瀬はいつも不機嫌そうな顔つきだった。それが要を見つけるとパッと笑顔になる。その瞬間が見たくて、何度も古瀬の教室に足を運んだ。

「あいつって、すげえ二重人格だよな」

 小学校から一緒だった友達の妻夫木が古瀬をそう評した。

「古瀬は人見知りなんだよ」
「そうかなあ? 猫かぶりって言うんじゃない? 上村がいないときの古瀬が、本物の古瀬だと思うけど」
「本物の古瀬って?」
「あいつ、短気じゃん。絡まれたらすぐ手出すし、女子に鬱陶しくされたらブスだのなんだの容赦ないし。上村が思ってるほど、おとなしい奴じゃないよ」
「あっはは、古瀬がそんなことするわけないだろ。妻夫木の勘違いだよ」

 笑い飛ばすと、妻夫木は憐れむような呆れるような顔で要を見た。なにを言っても無駄だと悟ったように「ま、そのうち上村もわかるよ」と諦めの溜息をついた。

 そんな話、要が信じるわけがなかった。古瀬は同性から嫉妬されやすい男だと思いこんでいた。実際、そういう部分もあったので、要の思いこみは砕けなかった。

 前に一度、男同士の恋愛について、どう思うかと古瀬にきかれたことがあった。ギクリとしながら素知らぬ顔でありえないと否定した。お前を恋愛対象としては見られないと。それ以外言う言葉がなかった。

 女子と接することも苦手としている奥手な古瀬が、男同士の恋愛に興味を持ったことは意外だった。誰かに何か吹きこまれたのだろう。

 何年経っても、要もなかで古瀬は純真無垢であり、守り慈しむ存在だった。

 それなのに。

 いつもの古瀬のスキンシップはクリアできた。心頭滅却の精神でやましい気持ちなど浄化できる術をこの数年で育てた。だが、この日は無理だった。

「……要のすごく固くなってきたよ」

 要の一物を古瀬が握りながらそんなことを耳に吹きこんだのだ。堆積した欲望に火花を落とされたも同然。要は古瀬に襲いかかった。古瀬は泣いて痛がった。

 それを見て罪悪感はわかなかった。愛しい、と。ただその思いをぶつけた。自分がこんな冷酷無比な人間だったのかと、要自身初めて自覚した人格だった。

 優しい古瀬は強/姦した相手に「このくらい平気」と微笑んでみせた。菩薩か。

「俺も、要のこと好きだもん。ぶっちゃけ嬉しい。ちょっと予定と違ったけど……、今度はちゃんと準備してしようね」

 罪悪感を抱かせないために古瀬はそんな嘘をついた。仏か。泣きそうになった。

 古瀬が股の間を拭うティッシュがチラリと見えた。白い液体と赤い液体が付着していた。それを見た瞬間、窓から飛び降りようと思った。そうしなかったのは、外へ遊びに行っていた妹の華が「ただいまー!」と元気よく帰って来たからだ。

 夕飯の支度がまだだ。こんなところを妹に見せるわけにはいかない。我に返った要は床に落ちていた制服を拾い「急げ」と古瀬に投げつけながら自分も服を着た。

「お前は帰れ」

 と部屋から追い出したことをあとになってから酷く後悔した。いくら慌てていたからと言って、あれはない。やることだけやったら女を追い返す最低なヤリチンカス野郎みたいじゃないか。合意を得ていないから、それよりもっと悪い。

 死んで詫びよう。その前にこうなったわけを伝え、きちんと謝罪してから死のう。天国の母さんに顔向けできない。いや、俺は死んだら地獄行きだ。

 その夜、要は一睡もできなかった。



 いつも朝迎えに来る古瀬が今日はこなかった。当たり前だ。強/姦した相手の顔なんか見たくないに決まっている。あの細い体に相当な負担をかけた。繊細な古瀬には耐えられないような仕打ちだ。

 顔を合わせずらかったが心配だったので古瀬の家のインターフォンを鳴らした。古瀬の母親が出た。

『あっ、要くん? 透から連絡きてない? 今日あの子熱出しちゃって学校お休みなの』
「熱?! 大丈夫ですか?」
『大丈夫、大丈夫。熱はあるけど、本人は元気だから』

 熱が出たのは昨日のあれのせいだ。要は母親に「すいませんでした」と詫びてから学校へ向かった。

 下駄箱で靴を履き替えていたら、古瀬と同じクラスの女子が「今日、古瀬は?」と声をかけてきた。名前は確か伊木。古瀬につきまとう姿をよく見る。古瀬は見た目がいいから女の子にモテる。その古瀬を昨日は自分が女の子にしてしまった。う、と要は自分の胸を押さえた。

「大丈夫?」
「俺は大丈夫。古瀬は今日、熱が出て休みだよ」
「珍しいね。お見舞い行こうかな」
「病人に迷惑だろ」

 もっともらしいことを言ったがただの嫉妬だ。誰も古瀬に近づけたくない。人見知りの古瀬が気を許せる相手は自分一人でいい。

「案外、ただの仮病かもよ」

 伊木は笑った。古瀬がそんな姑息なことをするわけがない。古瀬のことを何も知らない。わかってない。そんな奴ならなおさら、古瀬には近づいて欲しくない。

 学校にいる間、ずっと古瀬のことを考えていた。昨日のこと。これまでのこと。この先のこと。死んで詫びてもいいと昨日は思っていたが、そんなことをしたら優しい古瀬は気に病むかもしれないと思い直した。

 土下座でもなんでもする。慰謝料を払えというなら、この先何年かかっても払う。殴られるくらいなんでもない。死ねと言われたら、その時は死のう。

 伊木には「迷惑だろ」と言ったが、放課後になると要は古瀬の家へ寄った。古瀬のお母さんが出てこない。ということは今日は仕事の日のようだ。家には古瀬一人。好都合だった。

 もう一度インターフォンを鳴らした。しばらくして中からドタドタと足音が聞こえ、玄関の戸が勢いよく開いた。

「要! 来てくれたの?」

 おでこに冷却シートを張りつけた古瀬が、いつもの子犬みたいな笑顔で駆け寄ってくる。昨日のことなんかなかったみたいに。要はまたう、と胸を押さえた。罪悪感で心臓が痛い。

「熱出たんだろ。大丈夫か? 一応ポカリとかアイス買ってきたけど」
「ほんとに? ありがとう、要。今日親が仕事だからドラッグストア行って薬とか買ってきたんだけど、アイス買うの忘れちゃってさ。一緒に食べようよ。入って入って」

 熱い手が要の腕を掴む。昨日繋がった時のことを思い出して、要は顔を赤くした。

「その、あっちは大丈夫か? 昨日、俺、無茶なことして……本当に悪かった」
「……そのことについて、話もあるし。ほら、要、入って」

 こくんと頷いて要は足を踏み入れた。戸が閉まる。日の光が遮断され、薄暗くなった玄関で、古瀬がにんまりと笑ったことに、要は気付かない。



 古瀬の部屋に入るなり、要は土下座した。

「昨日はごめん! 煮るなり焼くなり、好きにしてくれ!」

 ギシッとベッドの軋む音がした。古瀬はベッドに足を組んで座った。

「昨日はほんとにびっくりしちゃった」
「古瀬にあんなことされて、我慢できなくなったんだ。古瀬のせいだって言ってるんじゃない! もちろん俺が悪い! ずっと好きだった相手にあんなことされて、理性がもたなかった」
「俺のこと、ずっと好きだったの?」
「ああ。初めて見たときからずっと。お前を守ってやらなくちゃって思ってたのに、まさかこの俺がお前を傷つけるなんて……殴るなり蹴るなり、お前の気が済むようにしてくれ」

 額を床に擦りつけた。

「お尻、すっごく痛かったんだよ」
「ごめん! お前が今日熱出たのも俺のせいだ」
「ほんとそうだよ。なんの準備もなしにさあ。あれ、強/姦だからね」
「警察につきだしてくれ。お前が死ねって言うなら死ぬ。本当に後悔してるんだ」

 じわっと目が熱くなり、どっと涙が溢れてきた。こんなに涙が出るのは母親が死んだ時以来だ。床を汚しちゃいけないと思って鼻を啜りあげた。

「要?! 泣いてるの?!」

 ベッドから古瀬が飛びおりてきた。肩に腕をまわされて、抱き起こされる。要の泣き顔を見た古瀬は顔を綻ばせた。

「意地悪してごめんね。ちょっとだけ、お仕置きしたくなったんだ。だって俺が下だなんて、想定外だったんだもん。どう考えても要が下でしょ。こんなにかわいいのに」

 要の頬を両手で挟んで古瀬が顔を近づけてくる。唇が重なる。上唇を舐められて要は口を開いた。すぐさま熱い舌が入ってきた。ぬるりと歯を舐められる。いやらしく舌にからみつく。歯茎をなぞられ、唾液を送り込まれた。

 要はショックで涙が止まった。

「なんで俺がこんなことするんだって思ってる?」

 至近距離で目を合わせながら古瀬が問う。要は茫然と頷く。

「要と同じ理由だよ。俺も我慢できなくなった。理性の限界。ずっと要が好きだった。俺の場合、気付いたのは中学入ってからだったけど、長さなんか関係ないよね。ようは思いの強さだなんだから。それは要に負けない自信があるよ。ドラッグストアでコンドームとローション買っておいたんだ。熱出てんのになにしてんだって思わないこともなかったけど、要のためを思ったらこのくらいなんでもないよ」

 とニコリと笑う。

「古瀬、俺のことが、好きなのか……?」
「好き好き、大好き。ほら、これが証拠」

 要の手を取り、古瀬は自分の股間へ押し当てた。盛りあがって固い。要はぎょっとなった。

「中/学生のときは、要のそばにいるときほとんど勃起してたと言っても過言じゃないよ。高校生になってさすがに落ち着いたけど、いつでもこの通り。ほんとにレ/イプされた相手に、こうはならないでしょ?」
「ほんとに?」

 声が震えた。古瀬は優しく微笑みながら頷いた。夢みたいだ。昨日は窓から飛び降りて死のうと思っていたのに、まさか両想いだったなんて。嬉しさと安堵、そしてまた湧きあがる罪悪感から要はボロボロと涙を零した。

「ほんとにごめん、俺、お前にひどいこと……っ」
「まあ、やり方はあれだったけど、俺にはひどいことじゃなかったよ。嬉しかったって昨日も言ったじゃん」

 古瀬は優しいから、あの言葉は自分のためを思っての嘘だと思っていた。

「もー、泣くなよ。まったくどっちが泣き虫なんだか。ほんとに要はかわいいなあ」

 古瀬に頭を抱きかかえられた。拒絶されて当然の腕のなかにいる。信じられない。あんなにひどいことをしたのに、古瀬はそれを許すどころか嬉しかったとさえ言ってくれるのだ。天使か。

「じゃあ、今日は俺の番だよね」

 要の肩に古瀬がぽんと手を置いた。

「俺の番?」
「今度は俺が要を抱く番」
「──えええっ?!」

 思わず古瀬の胸を押し返していた。古瀬が眉を寄せる。

「俺の好きにしていいんでしょ? 気の済むようにしてくれって、さっき土下座してたじゃん」
「そ、それはそうだけど……! お、お前が俺を?!」
「そんなに意外? 要は俺のこと買いかぶり過ぎだと思うよ。っていうか、夢見過ぎ? 俺だって男なんだよ。性欲の塊。要に抱きついたり触ったりしてたのって、全部下心だからね」
「う?! 嘘だ……ッ」
「ほんとほんと。今日は要を犯るつもりで学校終わるの待ってたし。要の性格考えたら、絶対謝りに来るだろうと思ってたから」

 ドラッグストアの袋からローションとコンドームを出し、古瀬はにこっと微笑んだ。

 本当に買ってた! しかもそれを要に使うという。要は眼前に迫りくる古瀬を見上げてゴクリと唾を飲みこんだ。

 獲物を前にした肉食獣のように古瀬が目を細め唇を舐める。

「逃がさねえからな……、要」

 誰?!

 要は目の前にいる人物が誰だかわからなくなった。






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2018-06-27(Wed) 21:06| 続・盲目の狼| トラックバック(-)| コメント 0

盲目の狼(2/2)

<前話>

 要は買った食材を所定の場所へ仕舞うと、一旦自分の部屋へ着替えに行った。もちろんついていく古瀬である。友達の立場を利用して、要の生着替えを見つめる。集中しすぎて勃起しそうになるが見るのを止められない。

「今度どっか遊びにいかない?」

 話しかけたのをきっかけに要に抱きつく。要はTシャツ一枚。下はボクサーパンツ。薄い生地からソレを確かめるために腰を押しつけた。

「どっかって?」

 古瀬のスキンシップに慣れっこの要はそれを怪しいとも思わず話題を続ける。

「どっかさ。二人きりになれる場所」
「いい加減人見知りなおせよ」

 人の多い場所を嫌がる理由を、要は人見知りのせいだと思っている。転校してきたばかりの、ただ周りの様子を窺っておとなしくしていた古瀬をそうだと決めつけた時からその認識が改められることはなかった。

「着替えられないから離れろって」
「えへへ、なんで?」

 おふざけの振りをしてさらに腰をしつける。股間がゴリゴリと擦れる。さすがに要も顔色を変えた。

「ばか、ふざけるなって」
「要、立ってきた?」

 熱を帯び、固くなってきていた。もちろんそうなるように腰を擦りつけたのだ。

「お前のせいだろ。離れろっ」

 要が身をよじる。腕に収まる体が暴れたところで簡単に封じることができる。このまま押し倒してやろうか。凶暴な思考が一瞬過ったが、弱っちい古瀬を演じることを思い出して体を離した。

「俺、立っちゃった。どうしよう?」

 泣きそうな顔を作る。そして要に助けを求める。そうすれば要は絶対怒らない。困った顔をして、どうしようかと考えてくれる。

「立ったのか、お前……? まったく、変なことするからだぞ」
「だって、要がすごくいい匂いするから」
「はあ? 俺今日体育だったから汗臭いぞ」
「ううん、要はいつもいい匂いがするよ。なんの匂いだろう?」

 とまた口実を見つけて要の肩を掴み、首元に鼻を近づけた。

「お前、匂いフェチかよ」
「えへへ」

 照れ笑いもお手の物だ。

 古瀬は匂いフェチではなく、要フェチだ。上目遣いに睨んで見える大きな目も、小さな鼻も、右の鎖骨にある黒子も、健康的に焼けて太陽の匂いがする肌も、薄く光る産毛も、何もかもがその対象だった。特に好きなのは、膝の裏。今は眺めるだけだが、いつかこの思い成就した暁には存分に舐め回したいという野望を抱いている。

「ほっとけば静まるだろ」

 要がズボンに足を通そうとする。思わずそれをひったくった。

「要だって立ってるじゃん」
「お前のせいだろ」
「いつもどうやるの?」
「なにを?」

 問い返した要の顔は質問を理解している顔だった。少し頬が赤い。古瀬は声を潜めて「オナニー」と囁いた。要は困惑の表情になった。

「どうした? 今日のお前、変だぞ」

 はぐらかそうと言う腹だ。そうはいくか。

「教えてよ。要はいつも、どうやるの?」
「おふざけはおしまい」
「俺も教えるから」

 ぎょっとする要の前でズボンとパンツをずりおろした。好きな人の前で恥部を露出させる行為に興奮が高まる。眩暈を起こしたように頭の中がぐらりと揺れて、胸は押しつぶされたように苦しい。古瀬のものはますますいきり立った。

 それを握り扱いた。要を見ると立ち尽くしたまま古瀬の手元を見ている。頬が強張っていた。

「要も一緒にしようよ」
「や、やだよ。どう考えても変だしおかしい」
「俺がここまでしたのに、ずるいよ」

 勝手にしたのを棚に上げ要に抱きついて股間に手を伸ばした。さっきより大きくなっている。

「俺がしてあげよっか?」

 パンツの上から手で包みこむ。薄い布、はっきりその形、固さ、熱が伝わってくる。

「ばかっ、変態なことするな!」

 変態という罵りに傷つく。と同時にゾクゾクとした。それが自分の本性であると古瀬は認めた。

 要は屈んで身をよじる。古瀬は潰さない程度に力を込めて握った。

「いっ……たい……はなせっ」
「……要のすごく固くなってきたよ」

 いやらしい言葉を、かすれ気味の声で要の耳に吹きこむ。要は顔を赤くしてギュッと目を閉じた。諦めか、要の抵抗が弱まる。その隙を見逃す古瀬ではない。パンツのなかに手を入れて直に触った。

 幾度となく思い描いてきたものだ。妄想のなかで、触り、扱き、嬲り、舐め、咽喉の奥までしゃぶりついたものに現実で触れている。射精しそうな勢いで感動した。

「要も俺の触って」
「やだ……こんなの、いやだ」

 顔を背けた要の肩が震えていた。やり過ぎたことに気付いて古瀬は罪悪感から一気に興奮がさめた。

「ごめん、ごめん要。泣いてる?」
「俺の気持ちも知らないで……こっちは必死におさえてきたのに……」

 ブツブツと要が何事か呟く。初めて見る様子に怒らせすぎたと古瀬は焦ってご機嫌取りに回った。

「急にスイッチ入っちゃって。ごめんね、こんなつもりじゃなかったんだ。怒ってる? ねえ、要、無視しないでよ」

 振り返った要の顔を見て古瀬は「誰だ、こいつ」と本能で思った。誰でもない、上村要に間違いないのに、そっくりなマスクを被った別人のように感じた。

「もうお前とは友達でいられないな」

 抑揚のない声が言う。要にそんなことを言われたら情けなく泣き縋って撤回を求める自信がある古瀬だが、いまは違った。蛇に睨まれたカエルのように身動きできない。

「古瀬が甘えてくるの、俺好きだったよ。くすぐったくて、心地よくて、他の奴らにはしないから、優越感もあったし」

 要の口が動いて要の声が聞こえてくる。なのに違和感は消えない。古瀬は茫然と要に見える目の前の人物を見つめた。

「お前に下心なんかないのはわかってても、俺は頼られてすごく嬉しかった。なんか頼りなくて、放っておけなくて、初めて見た時からお前を守ってやらなきゃってずっと思ってたんだ」

 聞いているようで理解は追い付いていない要の言葉を聞きながら、耳にひっかかった「下心」という単語に「いや俺、下心なしで要といたことねえし」と頭の隅で思う。

「純粋なお前に、こんな真似、絶対したくなかったんだぞ。なのにお前が俺を挑発するから……やめろって言ってるのに」

 純粋なんかじゃない。買いかぶり過ぎだ。古瀬の口許に苦笑が浮かぶ。それを見て要は辛そうな顔をした。

「こんな時でも、お前は優しく笑ってくれるんだな。そういうところが俺はほんとに好きなんだ」

 好き、という言葉に古瀬は混乱した。直後、口を塞がれた。焦点を合わすのが疲れるほど近くに要の顔がある。目がある。息がかかる。視線が合った。要の熱がそこから伝わってきて、脳の裏まで這った。

 口の中に要の舌が潜り込んできた。ぬるぬると中を動き、古瀬の舌を絡め取り、吸ったり食んだりと官能的な動きをする。古瀬は思わず要にしがみついた。腰がくだけた。

「こんなことされてショックだよな。ごめんな。でも、まだ終わりじゃないから」

 あれと思う間もなくベッドに押し倒され、上から要がのしかかってきた。古瀬は心臓をドキドキ高鳴らせながら要をみあげた。見たこともない、男らしく大人びた顔に、古瀬の心は乙女になっていた。

「いまから酷いことするよ。ごめんな」

 脱ぎかけのズボンとパンツを足から抜かれて、膝を持ち上げられた。そしてその奥へ張りのある肉の先端が押しつけられた。古瀬が昼夜問わず妄想していた場面が実現している。違うのは自分のおかれた立場。

 俺がこっち?!

 乙女から一瞬我に返ったが、ググッと押しつけられた剛直に顔を顰め、歯を食い縛った。そこが広げられる。ピリピリとした痛みが走る。古瀬は要の腕に爪を立てた。

「あっ、ああ……待って、要っ」
「ごめんな、古瀬。親友の顔してお前のそばにいたくせに、ほんとは俺、こんな最低な奴なんだ」

 内壁を擦って要が押し入ってくる。苦悶の表情を浮かべ、相手の名を呼ぶ。それを見下ろしているのは自分のはずだったのに。してやられた、と悔しさがないではないが、要の熱さと固さが、そのまま自分への想いだと思うと、目尻に涙が滲んだ。

「泣かせてごめんな。ひどいよな、裏切りだよな」

 ごめんごめんと言いつつ、要はちゃっかり奥まで刺しこんだ。もうすでに腰をゆるゆる動かしている。小刻みな振動が苦痛だ。想像してたのとは違う。ぜんぜん痛い。ぜんぜん気持ち良くない。

「痛いよ……要」

 それを聞いた要の体が小さく身震いした。頬を引きつらせたような笑みを浮かべて「かわいいよ、古瀬」とうっとり言った。

 古瀬は自分を犯す要こそが上村要であると悟った。今まで見てきた要は偽物。自分が弱っちい転校生を演じ続けていたように、要も古瀬から甘えられる鈍い兄貴分を演じていたのだ。二人が同じ志を持つ者同士だとやっと理解した。一方、要の方は古瀬の正体にはまだ気付いていないようで、申し訳なさそうな顔を崩さない。

 要はせっせと腰を振る。どうにか気持ちよくならないものかと、古瀬は自分に暗示をかけようとしてみたが、痛いものは痛かった。

「要……痛いっ……痛いってば……優しくしてよ、もっと、ゆっくり……!」

 焦らなくていい。俺も同じ気持ちなのだから。そう伝えようとしても間隙なく突かれて揺さぶられていたので、呻きと泣き言で伝える暇がない。

 この次はちゃんと準備しよう。自分の気持ちを伝え、両想いだとわかってから恋人同士のキスをして、お互いの体を触りあって高め合い、ローションなりで充分解してから事に至ろう。でないと受ける側は大変だ。

「はあっ、あっあぁあん、やだっ、ゆっくりして、要っ、もう、くそっ」

 もちろん次は自分が攻める側だ。涙と鼻水を垂れ流しながら古瀬は心に誓った。

※ ※ ※

 俺の信用が目の前で壊されていく。破壊しているのは自分だ。

 古瀬は痛がって泣いている。嫌だと拒絶している。だがもう欲望は止められない。ずっと我慢してきた。この気持ちを押し殺してきた。古瀬の過剰なスキンシップは俺への愛情と信頼の証だったのに、俺はそれを邪な気持ちでしか受け取れなかった。

 羊の皮を被って、人畜無害な振りをしてきたが、今日はもう誤魔化せなかった。限界だった。

「痛いっ、要、ああっ、やだ、そんながっつくなよっ」

 泣きながら顔を背ける古瀬ののどに俺は歯を立てた。中が締まる。射精した。






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2018-06-23(Sat) 21:14| 盲目の狼| トラックバック(-)| コメント 3

ご挨拶

お越しくださりありがとうございます。 初めに「当ブログについて」をご一読くださいますようお願い致します。
管理人が以前、某掲示板で書いていたものをここで再利用しています。決してパクリでは御座いません。そしてお願い。GKさんの小説を保存しておられる方いましたらぜひご連絡頂けないでしょうか。いまとても読みたいのです…

お世話になってます

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