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すべからく長生きせよ(1-1)

2014.03.04.Tue.
 定年退職してもう三年になる。食料や日用品は電話一本で配達してくれるので、私が家を出ることはあまりない。結婚もせず、親しい友人も出来なかった私は孤独には慣れていた。
 暇つぶしに始めた油絵にはまり、風景や草花を描くだけでは物足りず、知り合いのつてで紹介してもらったモデルの女性を描き始めたのが二年前。若く美しい娘。豊満な肉体を惜しげもなく私の前に晒し、指示に従い、いろんなポーズを取ってくれる。邪な目で見ている私に気付きながら、モデルの女性は仕事だと割り切ってそれに気付かぬふりをしている。
 私は女性にモテるタイプの男ではない。若い頃はラグビーボールを追いかけまわし、屈強な男たちと肉と肉をぶつけあう野蛮な行為に明け暮れていた。その頃ついた筋肉は、勤め人になってから贅肉へと醜く変貌し、仕事にかまけて運動もしてこなかった私に「自分はスポーツマンだから」というでかい図体の言い訳も立たず、タックルによってひしゃげた鼻と前に突き出たぶよぶよとした腹が私の特徴になってしまっている。
 年を重ねるにつれ体重はいくぶん落ちたものの、依然平均以上のガタイの良さだ。こんな私が女性から好意を持ってもらえるはずがないのだ。おまけに私はもう年だ。若いモデルたちが、私を恋愛の対象になど、夢にも思わないだろう。
性欲が減退してきたとはいえ、投げ出された四肢を見て私の心も騒ぐ。純粋な創作意欲のためだけでない依頼をまた、私はモデル事務所へしていた。
 ところが今日やって来たのは女性ではなく、男だった。まだ二十代前半の若い青年だ。

「すいません、手違いで、今日は女の人はみんな出払っちゃってて、かわりに僕がつかわされたんです。料金は頂かないかわりに、今日一日、僕で我慢してください。結構だとおっしゃるなら、僕はすぐに失礼しますんで」

 彼はそう説明した。詫びていたが、あっけらかんとした口調と表情だった。私を軽視しているのではなく、そういう性格なのだろう。それとも、断られないという自信のあらわれだったのか。
 細身の青年。私は無言で青年の体を四方から観察し、たまには男の子を描いてみるのも一興か、と彼をアトリエとして使っている部屋に招きいれた。

「どういったポーズで?」

 彼は、普段モデルたちが使っているソファの前で振り返ると、笑顔を浮かべながら訊ねてきた。

「では服を脱いで。そう、下着も。ソファに寝そべって。右手を枕に…そう、頭の下で、左手は…うむ、腹の上に。そうそこ、臍のあたりがいい。右足は軽く曲げて、左足はソファから下ろして床に、そう、そのまま」

 私に言われたポーズを取ると、彼は口元に微笑をたたえ、目を閉じた。ソファの背後にある窓から差し込む午前の光が、青年の体を白く輝かせている。着痩せするタイプらしく、彼の胸筋は意外に発達しており、そのしたの腹筋も割れて見事のなものだった。女体にはない美しさを感じ、私は息を飲む思いだった。

 カンバスに下書きのペンを走らせながら、私は彼の肉体をあますところなく、目視した。腋下の暗がりは鼻を近付けなくても甘酸っぱく若い匂いが想像できた。肌の滑らかさはこの手に触れなくてもわかる。その下の筋肉の弾力や固さは、かつて私にも経験のあるものだ。股間の茂みは自信たっぷりで、そこに横たわる彼の男のシンボルも憎たらしいまでに威厳を放っていた。これが若さというものだ。彼はモデルの仕事をするくらいだから、自分の容姿にそれなりの自信を持っている。彼はそれが全身から漏れ出ることを気にも止めていなかった。むしろ、私に見せつけるように、発散させているようにさえ思えた。
 私は敗北感と嫉妬を感じながら、それと同時に、憧憬と興味を彼に抱いた。興味とはつまり、彼の美しさの限界を知りたいという好奇心だ。

「君、さぞかし女性にモテるだろう、その立派なものをどれだけ酷使してきたの」

 私が声をかけると、青年は薄目をあけ、口の端を吊り上げて静かに笑った。

「僕ね、女性に不能なんです、無理すればいけるかもしれないけど、興奮はしない、できないなぁ」

 言葉の真意をつかめずに、私は一瞬呆気に取られて彼の顔を見つめた。青年はさっきのとおりの微笑で私の視線を受け止めている。

「そう…、精神的な問題? それとも事故かなにかで?」
「その二択なら精神的な問題のほうですね、僕は男しか愛せないから」

 持っていたペンを落としそうになった。彼は私の驚いた顔を見て可笑しそうに目を細めた。

「僕はホモ。男が好きなホモです。それも、あなたみたいな人がタイプ」
「な、なにを…、え、ええっ? 私がタイプ?」

 予想外の展開、これまた予想外の言葉に、私は年甲斐もなく取り乱し、慌てていた。彼のような青年が、初老の醜い体型の私がタイプだと言うのだ。からかわれている、そう思いながら、つい、その言葉尻に手を伸ばし掴んでいた。

「わ、私のどこがいいんだ?」
「僕、あなたみたいに体の大きい人が好き。その鼻、どうして曲がってるんです? そういう不恰好な男らしさも、たまらなく好き」

 彼は熱っぽく言った。無意識に鼻を撫でさすりながら、私は生まれて初めてされた告白に、無様に動転し、心臓はでたらめに踊っていた。

「いや、いや、しかし、私はねぇ…」

 中学生のように顔を真っ赤にさせながら、もつれる舌でうまくしゃべれず俯く私に、彼は熱い視線を投げかけてくる。それを痛いほど感じて私は更に下を向いた。

「男はムリだって言うんでしょ、わかってます。でも、どうせ今日限りのことなら、僕の暴走を許してもらえませんか?」
「えっ?」

 顔をあげた。彼は自分のちんぽを握りしめ、私が見ている前でそれを扱き出した。

「先生は僕の絵を描いてください。僕はあなたの視線に犯されながら一人でやります、そんな僕の絵を……描いて、ください」

 彼のちんぽがムクムクと大きくなり、反りあがってくる。私はそれに釘付けになりながら、取り憑かれたように、カンバスに描写していった。
 彼の腹筋が荒い呼吸に合わせて上下する様を。顎の仰け反らせる彼の口から覗く白い歯を。悩ましげに寄せられた眉の皺を。上気して色づく湿った肌を。興奮して尖る小さい乳首を。それを弄ぶ彼の長い指を。血管を浮き上がらせた太い性器を。広がったエラの反り具合を。亀頭の先から零れる透明に光る液体を。
 いままでに感じた事のない創作意欲。精神の昂ぶり。それに任せてペンを走らせながら、確かに私は彼の言葉通り視線で彼を犯していた。

「もっと強くだ」

 考えるより先に言葉が口をついて出た。彼はかすかに頷いたように見えた。手付きが早くなった。

「あぁ……、気持ちいいっ……、先生に見られながら僕……オナニーしてます……、恥ずかしいのに、気持ち良くてもうイッちゃいそう…!!」
「よし、よし、イケ! 雄汁を出すところを私に見せてくれ……!」
「ン…アンッ……アッ、アッ、先生、見ててください、僕が精子を出すところ、見ててください…っ、僕、僕…アッ、アァァァッ!!!」

 彼のちんぽから盛大に白いザーメンが噴き上がった。飛び出したものは彼の腹に落下し、傾斜にドロリと垂れた。大量に吐き出したのにもかかわらず、彼のちんぽはまだ大きさを保ったままだ。やはり若い。

「体を起こして、背もたれにもたれて、私に向かって足を広げながらセンズリしなさい」

 彼は頷くとソファにもたれて座り、大きく開脚した格好でチンポを扱き出した。正面から向き合う形になり、私は彼の視線を真正面から受け止めながら絵を描いた。

「先生……、見てるだけじゃなくて、その手で触って確かめてごらんになりませんか?」
「え……いやいい、いまは調子がいいんだ、このまま描いていたい」
「前は窮屈じゃありませんか? 先に僕の口で慰めてさしあげましょうか?」

 と艶かしく笑う。彼に言われて初めて私は勃起していることに気付いた。羞恥と同時に、近頃なかったまでのちんぽの勢いに私は嬉しくなった。

「口で…口でか…、君は平気なの」
「ううん、平気じゃない、正気でいられないくらい、先生のチンポをしゃぶりたくてたまりません」

 いままでこれほど他人から欲せられたことはなかった。それがまた私を嬉しくさせた。同性ということはもう気にならなかった。

「じゃあ、頼むよ」

彼はソファから立ち上がると私の前までやってきて、跪いた。はにかむような顔をしながら私の前をくつろげ、中からちんぽを取り出す。

「あぁ、ごめん、私は汗かきだから……汗臭いだろう」
「うん、とっても。頭も体も芯まで痺れちゃう」

 うっとり言うと、彼は私のちんぽを口に咥え、唾液をたっぷり絡ませながら音を立ててうまそうにしゃぶり出した。しゃぶらせながら、私はそんな彼をカンバスに描いた。芸術作品とういより、ただの春画になってしまいそうだ。それでも私の手は止まらない。

「ごめんね、私はもう年だから、なかなかイケないんだ、疲れたら休んでいいよ」
「先生……足でいいから、僕のちんぽ、触って」

 遠慮がちに言う彼がかわいくて、私は言われた通り足で彼のちんぽを擦った。我慢汁が足裏にべったりついたが不快には思わなかった。
 何度か彼が私のちんぽを口から抜いて舌でベロベロ舐めたり、上から吸ったりして休憩を挟んだ後、私はついに彼の口へと射精した。久し振りに味わう快楽の終末。命を削られるような刹那。赤子に戻る無防備な解放。私はぐったりとなり、椅子から転げ落ちそうになった。私を咄嗟に抱きとめてくれた彼の逞しい腕。その腕の中で彼を見上げた。

「大丈夫ですか? 無理をさせてしまったみたいで……ごめんなさい」

 と、すまなさそうに目を伏せる。
 私をソファに寝かせると、彼は叱られた子供のようにシュンと肩をおとしていた。

「なんだか今日は持てる気力体力の全てを使いきってしまったような気がするよ」
「ごめんなさい……」
「謝らないでくれ、君には感謝してるんだ。ただ、今日はもう絵は描けそうにない。また君を頼むから、これからも私のモデルになってくれないか」

 彼は弾かれたように顔をあげた。

「モデルだけじゃなく、今日みたいなことも……、君さえ良ければ、それ以上のこともさせてもらえる?」
「先生なら、僕、専属モデルになってあげる。僕の連絡先を教えますから、いつでも呼んで下さい、僕の家、ここから電車ですぐだから飛んできます、もちろん、無料!」

 私は彼と特別な契約を交わした。彼が私の家に転がりこんできたのはそのすぐあとだ。孤独に過ごしてきた私に、若い男の恋人が出来た。人生と言うのはなにが起こるかわからない。

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