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奔走(3/3)

2019.08.07.Wed.


 反射的に中腰になって振り返えると、下半身丸出しの男がいた。

「あ、まだDKいたんだ」

 粘ついた声が嬉しそうに言った。こいつが冴木を殺したんだと直感でわかった。俺はその目撃者。見逃してくれるはずがない。俺も殺される。

「そっちの子も良かったけど、君もかわいい顔してるね。残ってて良かった」

 男が笑った。暗闇に白い歯が浮かびあがる。逃げだしたいのに、蛇に睨まれたカエルのように動けない。叫ぶ声さえ出ない。目の前に迫った死が、俺を縛りつけている。

「怖いの? あんな書きこみしておいて? 君もめちゃくちゃに犯して欲しいんでしょ?」

 近づいてきた男が手を伸ばしてくる。捕まったらおしまいだ。わかっていても、体はピクとも動かなかった。ただ目の前に迫ってきた男の手を見つめることしかできない。むんず、と肩を掴まれた。男の手の肉感と体温。絶望の感触。

「い──や、いや、いやだ、いやっ」

 やっと出た声は女のすすり泣きのようだった。

「急に怖気づいちゃった? なんか本当のレ/イプみたいで興奮するね」

 服のなかに男の手が忍び込んできた。顔にかかる男の息遣い。腹の奥がギュウッと縮んだ。殺される前に犯される! 嫌だ。嫌だ、誰か助けてくれ!!

 男の手が奥にこようとした時、急に男が吹っ飛んだ。文字通り俺の目の前から消えた。かわりに立っていたのは全裸の冴木だ。

「こいつに手は出すなよ」

 冴木は吹っ飛んだ男へ向かって冷たい声で言った。男は腹を押さえて呻いている。上目遣いに冴木を睨み「なにしやがんだよ、クソガキが、舐めてんじゃねえぞ」と苦しそうに凄む。

「もう充分だろ。5人がかりで寄ってたかって俺をいたぶって上からも下からもあんたらの精液注ぎ込んだくせにまだ足りないのか」
「めちゃくちゃに犯してくれって書きこんだのはお前たちだろうがっ!」

 男がわめく。ダメージから復活してきているのか、よろよろ立ちあがった。

「書き込んだのは俺だよ。だからおとなしく犯されてやっただろ。こいつはただの通りすがり。これに手出したら、あんたのこと殺すよ」

 冴木は笑ってみせた。男が叫びながら飛びかかってくる。冴木は男の顎にまわし蹴りを決めた。一瞬の出来事だった。俺の理解がおいつかない。まわし蹴りだとわかったのも、残像を反芻した結果だ。失神した男はグニャリと崩れ落ちた。

「危なかったね、藤園くん」

 にこりと笑顔で冴木は俺に向き直った。俺は茫然と冴木を見た。

「おまえ……、生きてたのか……」
「死んでるように見えた? さすがの俺も5人相手はしんどくてさ、ちょっと放心状態だったけど、ちゃんと生きてるよ。藤園くんが俺を見て腰抜かしたのも見てた。どうやって隠蔽しようか必死に考えてたでしょ」

 安堵はすぐ消えた。そして、蘇る恐怖。冴木は柱に縛られていない。掲示板を使ってホモをおびき出し、犯させたのは俺。そしてなぜか冴木は喧嘩慣れしている。仕返しされて勝てる気がしない!

 じり、と冴木から一歩離れた。冴木は笑みを濃くする。

「いい顔するねえ。やめてよ、まじでSに目覚めちゃうじゃん。俺ドMなのにさ、知ってるでしょ」

 離れたぶん、冴木は距離を詰めてくる。背を向け逃げだしても、冴木に捕まるイメージしかわかない。逃げおおせる気がしない。

「今日のは最高だった。いつも妄想してたシチュエーションだったから、すごく興奮した。これでも一応自制してたから実際に俺を犯しにきてって書きこんだことはなかったけど、藤園のおかげで夢がいっこ実現したよ。ありがとう」

 いつの間にか壁際に追い詰められていた。目前に冴木が迫る。息が荒い。目が、あの時の目をしている。

「おまえ、なに考えてる……」

 聞くのが怖い。なのに、確かめずにはいられない。

「さすが。勘がいいね。藤園くんが考えてることで正解だと思うよ」

 冴木の手が伸びてくる。頬を掴まれ、口で口を塞がれた。乱暴な舌が中をまさぐる。

 冴木に犯されたあの日の記憶が蘇る。またあんな目に遭わされるのか。いやだ。ぜったいにいやだ。

 冴木の胸を押し返した。自分で思うほど力がでない。悪夢で全速力で走れない感じに似てる。もどかしい。怖い。逃げたい。なのに体が動かない。

 キスをやめた冴木がしゃがみ込んだ。俺のズボンの前を開け、ちんこを引っ張りだす。

「なにすんだよ、やめろ」

 力のこもらないスカスカの声で拒否する。当然冴木はやめない。口に咥えてフェラを始める。萎えたちんこはすっぽりと冴木の口内に収まった。舌で転がされ、強く吸われたり、唇で扱かれた。

「いやだ、やめろ、やめてくれ」

 逃げるために腰を引く。壁のせいで横へずれるしかない。冴木が腰にしがみついているせいで体勢をくずし、尻もちをついた。

「大丈夫、犯さないよ」

 舌なめずりしたあと、冴木はまた俺のちんこを咥えた。恐怖でなにも知覚しなかった体が、冴木の言葉のせいか感覚が戻ってきた。冴木の口の熱さとか、ぬるぬると蠢く舌の動きとか、吸われる気持ちよさとか。

「もうやめ…、やめてくれ、頼む……っ」

 意思に反して冴木のフェラで勃起した。葵のフェラとは比べ物にならない。それが悔しくて情けなくて勝手に涙が滲む。

「ずっと待ってたんだよ。いつもABCにばっかりやらせて、藤園くんは俺に触りもしない。焦らしプレイはもう飽きたよ」

 完全に勃起したちんこの上に冴木は跨った。手で位置を調整しながらゆっくり腰を落としてくる。トロトロに熟した窮屈で熱い穴に俺のちんこが飲みこまれていく。中から液体が押しだされる。いったいどれほど中出しされたのか。考えたらぞっとした。

「きたねえ、ふざけやがって……! 病気になったらどうしてくれるんだよ」
「俺は病気持ってないよ。でも俺を犯した奴らはどうかわかんないけどね」

 全部収まると冴木は長く息を吐いた。

「やっと藤園くんに犯してもらえた」

 と満足げに笑う。俺を犯さないと言ったくせに。突っこまれなかっただけでこれもれっきとした強/姦だ。この嘘つき野郎。

 冴木は俺の上で腰を揺らした。卑猥な言葉を口にしながら、自分で乳首やちんこを弄る。

「藤園くん、俺にイケって言って! 淫乱メスブタ野郎、ザーメン撒き散らせって言って!」

 完全に自分の世界に没入している。ただの棒として扱われて、だんだん腹が立ってきた。

「誰が言ってやるかよ。早くそのきたねえ穴から俺を出せ、このド変態サイコ野郎」
「んっ、あ──アァ──ッ!!」

 冴木のなかがギュッと締まった。体を痙攣させる冴木のちんこから精液が飛び出す。さっき5人のホモにさんざん犯されたんじゃないのかよ。その前はABCにも犯されているのにこいつの体力どうなってるんだ。

「藤園くんもイキなよ」

 また乗馬みたいな動きで冴木の腰が揺れる。誰がイクか、と抵抗したが数分後には冴木のなかに吐きだしていた。どこの誰とも知らないホモの精液と俺の精液が冴木のなかで混ざり合う。気持ち悪い。吐きそうだ。

 気分が悪い俺と違い、冴木はさっぱりした顔で立ちあがると、自分でケツに指を突っ込んで中の精液を掻き出した。それが終わると制服を着た。まだ下半身を出したまま寝転がっている俺の横に屈み、ズボンの前を閉めた。

「立てないくらい、俺のなかは気持ちよかった?」
「ばかじゃねえか、死ね」
「俺が死んでなくて安心したくせに。かわいくない口だな」
「……おまえ、喧嘩に慣れてんのかよ」
「小/学生の時から格闘技やってたからね。マゾに目覚めたのもそれきっかけだし。殴られるのも、蹴られるのも、締められるのも、ぜんぶ気持ちよくて夢中で練習してたらけっこう強くなったんだよ。物足りなくなって、もう辞めたけど」
「きめえ」
「そ、気持ち悪いんだよ俺。だから藤園くんに会えて良かった。これからも好きなだけ俺を痛めつけていたぶってくれよ。今日みたいなのも大歓迎。だけど人にやらせてばっかで手は抜くなよ。俺は心中相手に藤園くんを選んだんだ。藤園くんもちゃんと堕ちてきてくれなきゃだめだ」
「勝手に気持ち悪いこと決めんな。誰がてめえなんかと心中するか」

 立ちあがり、制服についたドロを払った。

 スマホは水没させた。パソコンのHDDも壊した。俺を脅す材料はもうこの世に存在しない、はずだ。

 廃工場を出た。少しあとを冴木がついてくる。駅のホームでも、電車の中でも、冴木は少し離れた場所にいた。纏わりつく様な視線が息苦しかった。

 先に電車を下りたのは冴木だ。ホームに降りた冴木は遠ざかる俺をじっと見送っていた。あの変態が、俺を脅すデータが無くなったくらいで諦めるとは思えない。また脅す材料を作るために俺を犯しにくるかもしれない。親には誰もいれるなと念を押しておく必要がある。できるだけ独りにならないようにしないといけない。

 今後の対策を考えていたらすぐ駅についた。改札を出たら江田島がいた。中から出てきた俺を見て、江田島は驚いていた。

「一人で冴木の所へ行ったのか?」
「ああ、塾が早く終わったんだよ。他の誰かに見つかって騒ぎになってもまずいだろ」
「藤が行かなくたって俺が行ったのに」
「あいつを縛って放置しようって言いだしたのは俺だからな」

 そうだけど、と不満そうに江田島が口ごもる。そして何かに気付いたようにハッとした顔をした。

「それ……」
「なんだよ」
「……いや、なんでもない」
「なんでもなくねえだろ、気になる。言えよ」
「じゃあ言うけど、これ」

 江田島の手が俺の服を撫でるように触った。指先を鼻にもっていって匂いを嗅ぐ。江田島の顔つきがかわった。今度は俺がハッとなった。きっと冴木の精液。

「冴木となにしたんだ?」

 責めるような目が俺を見る。できるだけ平静を装って答えた。

「別に何も。いつも冴木にやらせてることだよ」
「だから、なにしたんだよ」

 俺の腕を掴み、珍しく江田島が声を荒げる。

「なにって……、口でやらせただけだよ。いつもあいつにやらせてることじゃねえか」

 江田島の目がかっと見開いた。腕に江田島の指が食いこむ。この馬鹿力。痛えだろ。

「やっぱり藤から離れるんじゃなかった。俺も一緒に行けばよかった。今度からぜったい、冴木とふたりで会わないで」

 こいつがたまに見せる俺への忠犬ハチ公ぶりには辟易とすることもあるが、状況がかわった今は願ったりかなったりだ。

「じゃあお前が俺から離れなきゃいいだろ。べったりくっついてろよ」
「そうする」

 有言実行で、「送る」と江田島は俺の家までついてきた。

 




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奔走(2/3)

2019.08.06.Tue.
<前話>

「今日はちょっと趣向をかえてみようと思うんだ」

 鞄からロープを出した。昨日ホームセンターで買っておいた。

「その変態をそこの柱に縛りつけて放置してやろうぜ」

 ABCが顔を見合わせる。いつも俺の指示待ちのくせに、ちょっとヤバそうなことだと思ったらすぐ尻込みする。江田島を振り返った。こういう時、江田島は何も言わない。俺のやることに意見しない。俺の意図を組んでくれる理解者だ。

 江田島は俺からロープを受け取ると、冴木の横に屈んだ。冴木が弱々しく体を持ち上げる。

「な、なに、する気……?」

 三人にかわるがわる犯され、口にもケツのにも中出しされて、演技ではなく本当に疲れ果てているように見えた。

「放置って? どういうこと? 藤園くん」
「お前が喜ぶことだよ、ド変態野郎」

 江田島に腕を掴まれて冴木がヨロヨロ立ちあがる。下半身は誰のものかわからない精液でドロドロに汚れている。はだけたシャツから見える胸も白いものが付着していた。

 そのままの格好で一番太い柱に縛りつけた。冴木は慌てた。演技なのか、本気なのか、俺にはわからない。

「やめてよ、藤園くん! こんなところにこんな格好で…ひ、一人にしないでくれよ!!」
「大丈夫だって、夜には迎えに来てやるから」

 鞄を拾い上げ、工場を出た。ついてくるABCがヒソヒソと「これヤバイんじゃね」と囁き合う。こいつらのなかじゃ、強/姦はヤバくないらしい。クソだな。

「夜は俺が来るから、お前らは来なくていいぞ」

 俺の一言で三人はほっと胸をなでおろした。

「俺も行くよ」

 江田島ならそう言うと思っていた。だが断った。なにか言いたげだが無視した。

 ABCとは駅で別れた。

「何時ごろに戻って来る気なんだ?」

 電車のなかで江田島が訊いてくる。時間を合わせて来る気だ。

「22時半くらいじゃね。塾が終わったあとついでに寄るわ」

 ふうん、と江田島。わざと遅い時間を言った。こいつを騙すのは少しだけ心苦しい。

 最寄りの駅で江田島と別れたあと、俺はまた電車に乗ってとんぼ返りした。来た道を急いで引き返し廃工場へ戻る。

 冴木はまだ柱に縛りつけられたままだ。足音に気が付いて顔をあげる。俺だとわかると嬉しそうに笑った。

「藤園くん、もう迎えに来てくれたの?」
「まさか。お楽しみはこれからだろ」
「放置プレイ以外に、まだ何かあるの?」
「とっておきがな」

 冴木の鞄を見つけ、中からスマホを出した。ロックがかかっている。俺が訊いて冴木が素直に答えるとは思えない。雨水の溜まった錆びたバケツにスマホを水没させた。

「あ、なんてことするんだよ」
「わり、手が滑った」
「あー、あの時の動画? 拡散されないか心配だった?」
「ずいぶん余裕だな、お前。自分の置かれてる状況わかってる?」
「なにされるのか、すごくドキドキしてる」

 興奮した顔で笑う。股間の汚いものが半立ちだ。変態め。

「ホモの掲示板に書きこんどいてやったぜ。廃工場で待ってるからメチャクチャ犯してくださいって。何件か返信があったから、待ちぼうけはねえだろうよ」
「いいね。最近マンネリだったからね。藤園くんなら何か楽しいことやってくれるって信じてたよ」
「遠慮なく楽しめよ」

 鼻息を荒くする冴木を放ってまた駅へ戻った。電車で家とは反対方向へ移動する。初めて下りる駅。冴木の家がある土地。冴木に勘づかれないよう、同じ中学出身の奴を探しだして家の場所を訊いておいた。あいつがしたようにネットの地図で下調べもした。

 迷っている時間はない。駅前で拾ったタクシーで周辺まで行く。表札を見ながら冴木の家を見つけ出した。

 普通の一軒家。車一台分しかないカーポート。似たような見た目の隣家とはとても近い。表札の横のチャイムを押したら女の声で応答があった。

『はい?』
「冴木くんはいますか?」
『啓介はまだ学校から帰ってませんけど』

 そりゃそうだ。あいつはまだ廃工場でほとんど全裸で縛られている。そろそろ気の早いホモに見つけられている頃かもしれない。

「あれ、おかしいな。もう家にいるから来てくれって呼ばれてきたんですけど」
『えっ、そうなの? ちょっと待って』

 しばらくしたら玄関の戸が開いた。出てきたのは中年のおばさん。これが冴木の母親。どこにでもいる普通のババアだ。どういう育て方をしたらあんな変態になるんだと小一時間問い詰めたい。

「部屋を見たけどやっぱり啓介はまだ帰ってきてないみたいなのよ」
「じゃあ、駅からこっちに向かってる途中なんですかね。迎えに行ってみます。あ、入れ違いになるかもしれないから、もし冴木くんが帰って来たら駅にいるって伝えてくれませんか?」

 精一杯爽やかな笑顔を作った。おばさんはちょっと迷ったあと、

「もうすぐ帰ってくると思うから、中で待ったら?」

 と俺を家にあげてくれた。いくら息子と同じ制服を着ているからって不用心すぎる。それは俺の母親にも言えることだ。友達だと名乗られて、ホイホイ冴木を家に入れやがった。おかげで俺がどんな目に遭ったか。クソ。

 冴木の部屋は二階の奥にあった。ふすまを開けた和室にベッドと勉強机、タンスの横に衣装ケースが積まれている。母親が掃除をしているのか部屋は綺麗だった。布団も乱れていないし、ゴミも落ちていない。

 机の横に鉄アレイがあった。筋トレをしているのかあいつ。道理で犯されたとき力が強いと思った。

 いやいや違う。あいつの部屋を観察しに来たんじゃない。俺の目的は机の上のノートパソコン。用意しておいたドライバーでHDDを取り出した。あの日、冴木は俺を犯しながら動画の撮影をしていた。データをスマホからパソコンに移しているかもしれない。だから念のため、HDDを破壊する。あれがある限り、俺は安心して眠れない。

 HDDを鞄に入れ、冴木の部屋を出た。

「やっぱり駅まで行ってみます」

 と声をかけてから冴木の家を出た。駅に行く途中で見つけた公園に入り、拾った石でプラッタを粉々に破壊した。

 もう18時半だ。掲示板には18時と指定しておいた。地方の、しかも少し駅から離れた廃工場。地元の人間だって近づかない。うっかり誰かに見つからないかわりに、待ち合わせには不向きな辺鄙な場所。書きこみを見てやってくるホモも迷っているかもしれない。

 ホームにやってきた電車に飛び乗り、一旦家に帰った。咽喉がカラカラに乾いていた。水を飲んで潤す。気持ちが焦っている。家に帰ってきてもぜんぜん落ち着かない。

 冴木のスマホは水没させて使い物にならなくした。でもまだ心配だから、あとで様子を見に行ったときに壊しておこう。冴木のパソコンのHDDも壊した。俺が冴木に犯されたときの動画は、もうこの世に存在しないはずだ。

 でもまだ安心できない。抜かりがないか不安で仕方がない。始めた塾の課題にも集中できない。

 何度も時計を見た。家に帰ってきてから時間の進むのが遅い。気持ちだけ昂っている。やっと20時になった。キャップをかぶって家を出た。

 江田島はきっと来るだろう。江田島より先に廃工場へ行って、冴木のスマホを破壊しなければいけない。問題は掲示板で集めたホモがまだ残っているかどうか。集まったホモは多くて5人程度だろう。二時間もあれば充分だとは思うが、まだ残っていたらこっそり撮影をしておこう。いつか脅しに使えるかもしれない。冴木のスマホを壊すのはホモがいなくなってからでもいい。

 電車をおり、廃工場への道を急ぐ。昼間でも人通りの少ない場所、夜になると人の気配すらなくなる。外灯も少なく、用事がなければ絶対近づきたくない場所だ。

 行く途中、ひとりの男とすれ違った。目を合わさなかったが、視線は感じた。この先にあるのは廃工場だけ。男は廃工場のほうからやってきた。掲示板を見たホモかもしれない。心臓がドクンと鳴った。冴木を犯したホモか? 他にもまだ残っている?

 足音を忍ばせ、工場の裏手へ回った。破れた窓から中を覗く。外灯の明かりが中を照らす。見慣れた工場のはずが、今は様子が違って見える。耳を澄ますが話し声はおろか物音ひとつ聞こえない。

 足音を立てないよう、そっと中に忍び込んだ。冴木を縛りつけた柱が見えたが、冴木の姿はない。逃げられた? どこへ行った?

 動悸が早まる。出口を意識しながら奥へ進む。床に転がる大きな物体に気付いたとき、体中の毛穴が開いた。心臓が壊れたみたいに高鳴る。頭のてっぺんがキュウッと尖ったような感覚と同時に血の気が引いた。

 冴木の、死体……?

 まさかあいつ、ホモたちに嬲られ、挙句の果てに殺されたんじゃ……?!

 恐ろしかったが確かめないわけにはいかない。恐る恐る近づいて、顔を覗きこんだ。悲鳴をあげて腰を抜かした。物体は冴木だった。虚空を見つめる生気のない目、力の抜けた半開きの口元、まさに死人の顔だった。

 やばい、やばい、やばい!!

 冴木が死んだ! 殺された!!

 俺の責任だと必ずバレる。この廃工場に冴木を縛りつけ、解きに来たのは俺だと、江田島は黙っていてくれるかもしれないが、ABCは絶対俺を売る。冴木の家にも行った。冴木のババアにも顔を覚えられているだろう。タクシーの車内カメラにも俺が映っている。電車を何度も乗り降りする、不自然な俺の姿も防犯カメラの映像に残っているはずだ。警察が調べればネカフェでホモ掲示板に書きこんだのも俺だとわかる。

 真っ先に疑われるのは俺だ!

 どうしよう。どうすればいい。冴木の死体。こいつをどうにかしなければ。死体がなければ警察は捜査のしようがない。家出とか失踪で片付けるしかないはずだ。

 死体。どうやって処分する? 埋める? バラバラにして細かくしてどこかへ捨てる? どっちも駄目だ。道具も時間もない。第一、道具を用意したら、状況証拠で俺が犯人になる。

 どうしよう。どうしよう。どうしてこんなことになった? くそったれめ!

 逃げだしたいのを必死に抑える。これをどうにかしなければ、俺の人生は破滅だ。

 混乱と恐怖のなか、頭をフル回転させて、打開策を探る。ストレスが溜まったときの癖で爪を噛んだ。

 目の奥がじんと熱くなった。泣きそうだ。涙があふれた時、物音が聞こえた。目撃者か、冴木を殺した犯人。どちらにせよ、俺の脅威。

 反射的に中腰になって振り返えると、下半身丸出しの男がいた。




お騒がせ!ぼくの暴君


奔走(1/3)

2019.08.05.Mon.
お触り禁止成長痛

※彼女登場、モブ姦

「優希、まさか浮気してる?」

 フェラされても勃たないちんこ越しに葵が俺を睨む。

 葵はかわいい。読モをしていて自慢の彼女。振られたくない。

 出会いは数週間前。たまたま入ったカラオケボックスは繁盛していて一時間待ち。そろそろ呼ばれそうな頃、「どうしよう」って女の声に振り返ったら、いま店に来たばかりらしい制服姿の女が3人。そのなかに葵がいた。飛びぬけてかわいかった。だから「俺らもうすぐ呼ばれると思うんだけど一緒にどうかな?」って声をかけた。

 女に不自由したことはない。親が医者だってことを差し引いても俺は優良物件のはずだ。容姿は人並み以上だし、成績だってトップクラスを維持してる。

 3人は俺らを、特に俺の品定めをしてから「いいの? ありがとう」と好意的な笑顔になった。Aが「藤くんの親は医者なんだぜ」とバラしたら俺を見る目がまたかわった。これだけで俺にする寄ってくる女はたくさんいる。その中から気に入ったのをつまみ食いする。つまらない女は使い捨てる。

 葵は別だ。読モでスタイルもいいし、かわいいし、馬鹿じゃない。俺にふさわしい女だ。葵にとっても、俺はふさわしい男のはずだ。

 はずだったんだ。

「浮気なんかするわけないだろ」

 疑いの目を向けてくる葵に言う。

「でも最近、様子変だよ? 平日は忙しくって会えないって言うし。デートは土日ばっかじゃん」

 背中まである髪をかきあげながら、葵はベッドから身を起こした。冷ややかな目が俺を見る。

 他の女は食事代を奢るだけで感謝する。ホテル代を出したら進んで足を広げる。服やアクセサリーを買ってやったらつけあがる。葵は違う。モデルの仕事をしているせいか、俺よりブランド物に詳しいし、俺でも買ってやれない値段のバッグを持っていたりする。高校生の俺が使える程度の金では尻尾を振らない。葵がその気になれば、もっと金を持った男をたらしこめる。

 俺がそいつらに勝てるのは若さ? 見た目? 将来性?

 変態ドM野郎に目を付けられて弱みを握られた俺に、将来性? 笑える。

 平日葵に会えなくなったのは変態野郎を痛めつけるためだ。あいつがそれを望むから。俺は脅されて仕方なくあいつをいたぶる。この俺が毎日あいつに怯える日々。

 あいつが望む通りにABCのちんこをしゃぶらせて、この前はとうとう変態のケツを犯させた。

 自分のときもああだったのかと思ったら目の前が真っ暗になって死にたくなる、そんな見るにおぞましい光景だった。

 あの変態に犯された日のことを思い出すと変な汗が出て体が震える。あの日以来、変態野郎に犯された夢を何度も見る。葵とセックスしようとすると、フラッシュバックが起きる。

 あいつに穢された。汚いちんこで尻の穴を何度も何度も出し入れされて中出しされた。俺の体のなかをあいつの汚い精液で汚された。クソと血と精液まみれのちんこを舐めさせられた。上からも下からもあいつの汚いもので穢された。

 葵の体液がついた自分のちんこにさえ吐き気を催す。気持ちいいことが気持ち悪いことになってしまった。だから葵とセックスできない。あの変態野郎のせいで。

「もうすぐ試験だろ。ちょっと真面目に勉強してるから寝不足なんだよ」
「優希はお医者さんになるんだから、勉強頑張らないとね。医学部入れたらインスタで私の彼氏って紹介してもいい?」
「葵がしたいならいいよ」

 医学部に入れるかどうか。入れなかったらきっと葵に捨てられる。「ちょっと裕福で医者になる可能性のある年相応な彼氏」がいまの葵の価値を下げないベストな彼氏像なんだろう。医学部に落ちたら俺に価値はない。そんな理由でこの俺が振られるなんて許しがたい。だからそれまでに擦り切れるくらいセックスして俺から振ってやる。

 そのためにはなんとしてもこの不能になったちんこを元に戻さないといけない。俺のトラウマを取り払わないといけない。

「問題が片付いたらまた会えるようになるから、それまでの我慢だよ」

 自分に言い聞かせるように、葵に言ってきかせた。

◇◇◇

 放課後、いつかの廃工場へ冴木を連れ出し、因縁と暴力という前戯のあと、ABCに冴木を犯させた。少し前までは渋っていた三人も一度ヤッたら味を占めた猿で、俺が用意したコンドームを使い終わったら生で突っ込んで中出しまでした。

 犯され、精液まみれになる冴木の姿を直視できない。俺が冴木にされた姿とダブる。俺のときもこの醜悪さだったのかと思うと反吐が出そうになる。何度見ても慣れない。

 俺の普通じゃない様子に江田島は気付いているようだ。冴木と何かあるのかと、何度か探られた。江田島にも誰にも言えない。冴木に犯されたなんて知られたら俺はもう生きていられない。

 順番最後のCが冴木を犯していた。その口にAがちんこをつっこんでしゃぶらせる。嫌だやめて、とわざとらしく拒否ってみせながら、冴木はノリノリでちんこを咥えこむ。恍惚とした顔。ゆらゆら揺れる腰。ずっと精液垂れ流しのペニス。一生モノのトラウマだ。

「もうすぐ夏休みだけど、予定は?」

 視界を遮るように、江田島が間に立った。中学からグングン伸びていまは185センチあるそうだ。力も強くて、うっかりすると物をよく壊す。ポテンシャルが高いくせにスポーツや格闘技に興味がない。貧相な俺からしたら羨ましくて妬ましい。

「親がヨーロッパ行くつってた」
「藤も?」
「俺は行かねえよ。予備校の夏期講習もあるし、遊んでる暇はねえよ」
「じゃあ一人? 飯どうすんの?」
「なんとかなんだろ。三日に一回は家政婦が来るって言ってたし」

 冴木とのあれこれを忘れられるなら俺も旅行に行きたかったが、父親から「そんな余裕あるのか」と言われたら留守番するしかなくなった。

 父親から言われていた高校に行かないと宣言してから父親の俺への風当たりは前よりきつくなった。「自信がないから逃げるのか」と挑発もされたが聞き流した。

 県外のその学校に行くことは、当たり前のことだとずっと思いこんできた。物心つく前からお前は医者になるんだぞと言われて疑いもしなかった。

 父親が言う高校に受かったら確実に寮住まいになる。俺を追い出したいんだ。そのことに気付いたから、違う高校を選んだ。

 父親の洗脳が解ける最初のきっかけは中学受験に失敗したことだ。プレッシャーから体調を崩し、試験を受けはしたが結果は散々。慰められるどころか叱責を受け、父親への反発心が生まれた。

 見返す一心で勉強に励んだ。それこそ友達も作らず、言われるままに毎日塾にも通い、結果を出すことだけに集中した。

 学校の試験結果は参考にならない。トップで当たり前。塾でやる全国テストの順位でしか父親は俺を評価しない。そして褒められたことは一度もない。

 医師国家試験に受かり、医者にはならない。それが父親への最大の復讐だと思っている。

「じゃあ、夏休み、藤んち遊びに行ってもいいか?」
「おお、来いよ。みっちり勉強合宿な」

 江田島は中/学でできた唯一の友達だ。当時俺をからかって悦に浸っていた松田や川崎を、大きくなり始めた体でぶっ飛ばしてくれた。あれは本当にスカッとした。

 高校を変えたのは江田島も理由のひとつだ。江田島は俺と同じ高校に行くと猛勉強をした。最初は無理だと思っていたが、意外と地頭が良かったみたいでどんどん点数が良くなり、順位もあがっていった。

 最後は担任と親の反対を押し切って受験し、奇跡的に合格した。合格してからも落ちこぼれないよう勉強は続けている。やる時はやる男だ。

「藤くん、終わったよ」

 Aが声をかけてきた。江田島を躱してみると、地面に横たわる冴木が見えた。ABCはすでに身なりを整え満足げな顔だ。