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Tedious story(10/15)

2018.11.22.Thu.


 純がスマホで調べた近場のホテルに直行する。まだ日が出ている明るいうちから、男子高校生を隣に乗せてホテルに乗り込む。須賀が住んでいる近くで純とセックスすることに興奮を覚えている。

 ホテルの部屋に入るなり、純を抱きしめてキスした。服を脱がしてベッドに押し倒そうとしたら「シャワーが先」と純は腕からするりと逃げた。

「あとでいいだろ」
「だめだよ。準備があるんだから」
「そんなの必要ない。ゴムを使えばいい」
「俺が嫌なんだって」

 ヒラヒラと手を振ると純はバスルームへ消えた。シャワーの音が聞こえてくる。頭のなかで純の白い裸体がちらつく。我慢できなくなってバスルームへ駆け込んだ。

「待てない、無理だ」
「そんなに興奮してんのって、やっぱ須賀さんのせい?」
「かもしれない」
「俺のせいじゃないんだ。残念」
「すまん、違う、お前のせいだ」
「謝られたら余計に傷つく」
「どうしたら許してくれる」
「俺とやりたいから許して欲しいだけでしょ?」
「純……! いまの俺に言葉遊びしてる余裕はないんだ」

 なにを言っても純に言い負かされる。それがもどかしくて大きな声が出た。

「じゃあ、俺のせいで余裕がないんだってこと、証明してよ」
「どうやって?」
「そのくらい自分で考えなきゃだめだよ」

 純は俺に背を向けシャワーを浴びた。純の背中。腕が動くたびに肩甲骨が動く。背を丸めた時には背骨が見えた。引きしまった臀部。細く長い足。涎が出るような均整の取れた肉体。

 俺は床に膝をついた。純の尻たぶを親指で広げ、その奥の窄まりにキスした。

「今井さん」

 優しい声がシャワーとともに降ってくる。

「服、濡れちゃってるよ」
「構わない」
「このあと須賀さんに会いに行くんだよ」
「須賀より、お前を抱くことのほうが大事だ」

 襞を舐め、舌を尖らせて先を中に入れた。

「ほんとはさ、家出る前に、ちゃんと準備してきたんだよ、俺」

 奥まで舌を差し込む。跪いて純の尻に顔を突っ込む自分はまるで犬みたいだ。

「今井さんが須賀さんに興奮してんの見て嫉妬しちゃったんだ。だから今井さんに意地悪したくなって、わざと焦らした」

 中を丹念に舐めた。舌の付け根が攣りそうになりながら、純のなかを押し広げる。

「他の男のことなんか忘れるくらい俺に夢中になって欲しくてさ。今井さんのこと、全部俺のものにしたいんだ」

「俺はもうとっくに、お前のもんだ」
「まだ足りないよ。俺って欲張りだから」

 純に手を取られて立ちあがった。俺の首に純の腕が巻きつく。純の体を抱きよせてキスした。下腹部に純の勃起したペニスが当たる。

「ベッド行く?」

 囁くような純の声に、俺は子供みたいに頷いた。



 純の舌がペニスから離れていく。完全に勃ちあがった俺のものに、純はコンドームをつけた。

「今日は俺が上ね」

 コンドームにローションを垂らし、純がその上に跨る。ゆっくり俺のペニスを中に埋めていく。少し苦しそうに純の顔が歪む。

「痛いのか?」
「最初だけだよ」

 全部を収めると純は大きく息を吐いた。

「ゆっくりすれば、そんなに痛くないから」

 純が腰を揺らす。最初は慣らすように前後に。俺と目が合うと悪戯っぽく笑ってキスしてくる。純とのキスは気持ちいい。逸って腰を突き上げたら、乳首をギュッと摘ままれた。

「痛い」
「俺のなかにいること、もっとちゃんと感じてよ」
「感じてるよ。気持ち良すぎてもう出したいくらいだ」
「今日は俺を気持ち良くしてくれなきゃだめだよ」
「わかってる。前立腺だろ」
「さっき俺の言うこときいてくれるって約束したよね」
「何をすればいい?」
「俺より先にイッちゃだめ」
「無理だ」
「先にイッたら、今井さんとはもう二度とやらない」
「純」
「情けない声を出してもだめ。約束だからね」

 純は上下に腰を動かし始めた。ベッドのスプリングを利用して跳ねるように腰を振る。俺が動けばまた乳首をつねられるかもしれない。だから腰に手を添え、上下運動を手伝ってやった。

「はっ、はあっ、はあっ」
「きつそうだな、俺が動いがほうがよくないか?」
「ううん、今井さんが入ってるだけで、気持ちいい」
「ほんとかよ」
「体熱い」

 純が抱きついてきた。本当に体が火照っている。

「もう少しこのまま」

 中が収縮して俺を締め付ける。それを何度も繰り返す。腹に挟まれた純のペニスは勃ったまま萎える様子はない。本当にこれで気持ちいいらしい。

「純、俺が限界だ。動いてもいいか?」
「いいよ、ゆっくり」

 純の体を抱えたまま腰をあげた。そのまま体勢を入れ替え、純を下に、俺は上になった。

「前立腺てとこに当てればいいんだろ」

 言われた通り、優しく撫でるように純のなかを動いた。入り口に近い場所を擦ったとき、純の眉がピクッと動いた。

「ここか?」
「わからないけど、たぶん、そのへん」
「痛くないか? 擦りすぎると痛くなる奴もいるらしい」
「よく知ってるね。もしかして調べたの?」
「ああ。お前を気持ち良くさせてやりたくて俺も調べた。昨日はお前に断れて暇だったからな」
「昨日は学校の奴らと遊ぶ約束してあったんだ。別に断っても良かったんだけど、今井さんは焦らされたほうが興奮するタチだと思ってさ」
「お前は俺のこと、なんでもお見通しなんだな」
「俺もずっと今井さんのこと考えてるからね」

 嘘か本当かわからない言葉。真に受けちゃいけないと思いつつ、喜んでしまう。信じてしまいたくなる。

「俺が嘘ついてると思ってるでしょ」
「思ってない」
「今井さんの顔見りゃわかるよ。最初に今井さんのこと騙したから仕方ないけどさ。俺もう、今井さんに嘘はつかないよ」
「わかってる。本当に、お前が嘘を言ってるなんて思ってない」

 疑わしそうな純の目。純も俺が嘘をついていると思っている。お互いに相手の言葉が信じられないのだ。

「俺の言うこと信じてくれなくてもいいけど、今井さんのことを一番よくわかってるのは俺だよ。それは間違いない」
「そこは俺も否定しない」

 電車を降りた純に声をかけたあのときから、純は常に優位に立って俺を支配している。俺が欲しがる言葉をくれる。それを信じきれないことも見抜いている。俺の不安を楽しんでいるんだ、こいつは。

 前立腺と呼ばれる場所を擦るように腰を動かす。純は横を向いて目を閉じた。薄く開いた唇から吐息が漏れる。赤く色づいた白い体。きれいだ。

「気持ちいいか、純」
「気持ちいいよ」

 純のペニスを握って扱いた。熱くて固い。

「はあっ、ああ、気持ちい……、手、あんまやんないで……すぐイッちゃうから」

 すぐイカせたい。純が射精する瞬間を見たい。そのあと俺も出したい。

 ほんとはいますぐ思いきり腰を振りたい。でもそれをしたら俺のほうが先にイッてしまう。純に怒られて二度とさせてもらえなくなる。

 自分を押し殺して純の前立腺を責めた。純は嫌々をするように首を振った。

「んん! はあっ、あ、それ、ヤバ……そこっ、あっ、あ!」
「ここか?」
「い……っ、あ、ああぁ……! 今井さん、これ、やばい、気持ちいい……!」

 いつもの余裕ぶった純はいなくなっていた。俺の一擦りに声を漏らしながら中をギュッと締め付けてくる。ペニスは先走りをダラダラ垂らして震えていた。純もそれを触りたいらしい。伸ばした手を途中で止めて、縋りつくように俺の腕に爪を立てた。

「もっと、して……! 気持ちいいから、もっと、して、今井さん……!」

 切ない表情で言われて俺の理性も吹き飛んだ。足を掬い上げて、押しつぶすように純を組み敷いた。純の呻き声が聞こえたが無視して叩きこんだ。純の口を塞いだ。舌を奥まで差し込んで、貪るようにキスした。純が苦しそうに喘ぐ。呼吸も辛そうだ。

「あ、出、る……! はあっ、あ、あ、出る、今井さん……! 出る!」

 俺の首に抱きついて純は体を強張らせた。胸に生温いものがかかる。純の精液。純と抱き合ってそれを体に擦りつけた。純はとてもきれいな人間とは言いがたいが、純の体から吐きだされたものを汚いとは思わなかった。ゲロでも小便でも、純のものなら俺は平気かもしれない。

 純が俺の頬を両手で挟んだ。

「今井さんもイッていいよ」

 やっと許しが出て、俺も射精した。





Tedious story(9/15)

2018.11.21.Wed.


 土曜日の昼過ぎに、レンタカーを借りて純を迎えに行った。今日の純はアクセサリーの類は一切つけておらず、ジーンズに無地のシャツとニットというおとなしい格好だった。

「どうした、その格好は」
「今井さん、こういうほうが好きでしょ?」

 助手席に乗り込んで純が笑う。こうしていれば進学校に通ういいとこのお坊ちゃんにしか見えない。素行の悪さは完全に隠せている。

「同級生の居場所わかった?」
「ああ、わかった。本当にいくのか? ここから車でも一時間かかるぞ」
「行こうよ。今日はそれがメインなんだから」

 純の好奇心はかわらないらしい。俺も欲望を満たしたい。

「お前よりきれいと言ったが、それは見た目の話じゃないぞ」
「え、話違くない?」
「あいつは人としてきれいなんだ。お前みたいにホモのクラスメートを利用しないし、年上の女をダッチワイフにもしない。高校卒業するまで童貞だったしな」
「その人に夢見過ぎじゃない?」
「夢なんか見てない。事実だ」
「そうかな。須賀さんって言ったっけ? その人にも裏の顔はあったと思うよ。好きな女の子を犯す想像してオナッてたかもしれないし、実はロリコンだったのかもしれないし」

 純の声と言葉が俺の須賀を汚す。初めて純に怒りが湧いた。

「怒った?」

 押し黙った俺の太ももに純は手を乗せた。また俺を操作しようとしている。

「ごめんごめん、誰だって初恋の人悪く言われたら頭くるよね。ごめんね、今井さん。俺ちょと嫉妬したのかも、須賀さんに」

 ズカズカ人の思い出に土足で入り込んだくせに、すぐさま飛びのいてごめんねと謝る。かわいい仕草と表情で。心をくすぐる言葉をすらすら口から出しながら。効果的な自分の見せ方を熟知している。腹立たしいが、わかっていても怒りが削がれる。許してしまう。

「お前の初恋とやらはいつなんだよ」
「俺の?」

 機嫌がなおったとみるや、純の手はもとの場所へ戻った。それを残念に思う。

「俺の初恋っていつなのかな。ないかも」
「ないことないだろ。今まで付き合った女、いるんだろ」
「いるけど、向こうから告られたから付き合っただけだし。俺、誰かを好きになったことないかもしれない。好きって気持ちがよくわかんないんだよね。今井さんみたいに誰かを犯したいほど好きになったことがない。この女の子犯したいなってのはたまに思うけど、それってただの性欲だし」
「まだ誰も好きになったことがないって言うのか?」
「実を言うとさ、人が恋愛に夢中になってるの見て、ばかだなって思うんだよね。くだらないことで喧嘩して仲直りしてまた喧嘩して。人目も憚らずイチャついたり。恥ずかしくないのかな。恋愛事で頭がいっぱいになる奴って単細胞だよね。なかには振られたくらいで自殺する人もいるじゃん。ありえないよ。ちょっと気持ち悪い」
「辛辣だな」
「今井さんはわかってくれると思ったけど」
「わかる部分もあるけど、気持ち悪いとまでは思わない」
「自分を見失った人の姿って、すごく醜いよ。俺はいつも自分を保っていたいし、冷静でいたいんだ」

 純の声にほんのわずかな変化。いつもより少し熱のこもった声。これは意図した言葉じゃなく、純の本心だとわかる。珍しく純が正直に自分の本音を明かしたのだ。

「今井さんは俺の友達にボコられた時もずっと冷静だったじゃん。強がってたわけでもなく、冷静に状況読んでそう判断したわけでしょ。ずっと言わなかったけど、あの時の今井さん、かっこよかったよ」
「鼻血流してた俺が?」
「うん」

 全力で純が頷く。かわいらしい顔で笑っていれば年相応の、むしろ世間知らずな高校生に見える。しかしてその実体は。俺もこの外面に騙された一人でもあるわけだが。

「俺は冷静じゃあないよ。その逆だ。欲望のまま、本能のままに動いてる。お前に声をかけたのも、須賀を犯したのも、冷静とは真逆だろ」
「それを冷静に実行できるところが今井さんのいいところだよ」

 こんなところをいいところだと言ってくれるのは、世界中で純ただ一人だろう。

 少し迷いながら、純のナビで年賀状に書かれた住所の近くまできた。ここからは歩いて移動したほうがいいと判断して、見つけたパーキングに車を入れた。

「もうすぐ初恋の人に会えるね。どんな気分?」
「別に。あっちは俺の顔なんか見たくもないだろうし。第一、会えるかどうかもわからないしな」
「会えるまで粘ろうよ。どうせ今日、泊まるでしょ?」
「やらせてくれるのか?」
「いいよ。でも今日はちゃんと俺のことも気持ち良くしてよ。前のときは痛くて苦しくて、ぜんぜん良くなかったんだから」
「じゃあ、今からホテルに行こう」
「駄目だよ、何しにここまできたのさ。先に須賀さんに会ってからだよ。ほら、このマンションじゃない?」

 純は小走りでマンションの集合ポストに近寄った。振り返り「あった!」と俺を手招きする。

 ポストには「須賀」と手書きのプレートが差し込んであった。心臓がドクンと高鳴った。須賀がここにいる。もう目と鼻のさきにまで近づいた。俺の顔を見てどんな反応をするか。恐れにも似た興奮が体中を走り抜ける。

「行こう」

 楽しそうな純に腕をひかれエレベーターで3階までのぼった。一番手前の301号室。純はためらいもなくインターフォンを鳴らした。

「おいっ、勝手に押すな」
「なんで? 会いにきたんでしょ?」
「心の準備が」
「初恋の人に会うから緊張してるの? 今井さん、そんな繊細な人じゃないでしょ」

 純と会話しながら俺の目は扉に釘付けだった。耳は扉の向こうの音を聞き逃すまいとそばだっていた。

 扉は開かない。物音も聞こえない。待ってもなにも起こらない。

「……留守っぽいね」

 ホッとすると同時に落胆もした。

 純は俺の気持ちなんかお構いなしに、踵を返すとさっさとエレベーターに乗り込んだ。

「行くよ、今井さん。来る途中にあったファミレスでちょっと時間潰してから、また戻ってこよう」
「まだ諦めないのか」
「顔見に来たんだから、これくらいで諦めるわけないじゃん」

 エレベーターの扉が閉まってから、俺は純に抱きついた。

「どうしたの? 甘えちゃって」
「わからん。ガッカリもしたし、安心もした」
「複雑だよね。レ/イプした相手だし、あとから好きだったって気付いたわけだしさ。いまもまだ好きだったりするわけ?」
「いや、そういう感情はもう残ってない。これはもう、俺の性癖だな」
「性癖って?」
「きれいなものを汚したくなるんだ。須賀は俺に犯されてもきれいなままで……、その須賀が俺の顔を見たらどんな表情になるか想像しただけでやばい」
「とんだ変態だね」
「ファミレスは後回しにして先にホテル行かないか。やらせてくれ」
「想像して興奮しちゃった? がっついた今井さんとやるの、嫌だなあ。俺またイケないじゃん」
「ちゃんとお前の事も考えるから」
「やってる間に須賀さん帰ってきちゃうかもしれないよ?」
「なあ、純、頼む、意地悪しないでくれ。いますぐお前を抱きたいんだ。お前のなかに入ったら収まるから。どうしたらやらせてくれる?」
「今度は駄々っ子? 仕方ないなあ。そこまで言うなら、先にホテル行く?」
「行く」
「じゃあ、一個、俺の言うこときいてくれる?」
「なんでもきく」

 エレベーターが一階につくまでのわずかな時間で純は簡単に主導権を握る。





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Tedious story(8/15)

2018.11.19.Mon.



 純から電話がかかってきた時、俺は出張先のホテルだった。

『今井さん、今から出てこれる?』

 屋外なのか電話の後ろが少し騒がしい。

「お前な、俺のことなんだと思ってるんだ。呼び出されてほいほい出ていくお前の暇な仲間とは違うんだ」
『そんなふうに思ってないよ。今井さんの顔が見たくなったから。それに今日は俺の友達いないよ。予備校の帰りなんだ。迎えに来てよ』
「あいにく俺は出張で名古屋だ」
『そうなの? なんだ。それじゃ仕方ないね』
「なにか俺に用か? この前の奴らがまた来てるのか?」
『違うよ、言ったじゃん、今井さんの顔が見たくなっただけだって』
「お前が言うと営業トークにしか聞こえない」
『ひでえ。オオカミ少年の気分。いま、ひとりなの?』
「ああ」
『デリヘル呼ばないの?』
「疲れてそんな気分じゃない。お前が出張してくれたら勃つけどな」

 電話口から純の笑い声。本性を知っていても、涼やかで耳に心地がいい。

『いっしょにホテル泊まってからもう……二週間? 俺のこと思い出してひとりでシテるの?』
「ああ。あれからずっとオナネタはお前だ」
『気持ち悪くてウケるんだけど』
「金出すから今から来いよ。させろ」
『もうちょっとマシな口説き方ないの?』
「お前の穴の具合、最高に良かった。またブチ込ませろ」

 純が爆笑する。

『嫌いじゃないよ、その誘い方。でも名古屋は遠いかな。俺明日も学校あるし。帰って来たらまた遊ぼうよ。じゃね、ばいばい、今井さん』

 勝手に話を切りあげて通話を切られた。音の聞こえなくなった受話口。純に切り捨てられたような焦りが全身を蝕む。いてもたってもいられなくなった。

 一回、純の誘いを断ったらつまらない人間だと判断されてアウトになるのか? 言うことを聞かない人間は必要ないのか? 純ならどう考える?

 急いで純に電話した。

『どうしたの?』
「明日帰る予定だ。明日の夜は?」
『それ言うために?』
「俺もお前に会いたい」
『ヤリたい、の間違いじゃない?』

 俺をからかうような口調。

「ヤリたい。お前の顔が見たい。声が聞きたい。お前を抱きたい。本物の純を抱きたい」
『必死過ぎ』
「どうなんだ、明日は?」
『明日は予定があるから無理』

 あっさりと断られて落胆する。

『明後日の土曜日ならいいよ。泊りで遊びに行こうよ』

 純の言葉に簡単に浮上する。

『じゃあ、今井さんに宿題。土曜日までに、ラッシュ嗅がせて犯したっていう同級生の居場所つきとめといてよ。俺よりきれいなんて言われたら、一回見てみたいからさ』
「須賀の居場所?!」

 思わず大きな声が出た。今まで何度となく思い出すことはあったが、いまどこでなにをしているかなんて調べようとも思わなかった。

「なんで、そんな必要があるんだ」
『セックス以外の目的があったほうがデートも楽しいじゃん』
「調べられるかどうか、わからないぞ」
『大丈夫、今井さんならできるよ。じゃ、土曜日に迎えに来て』

 さっきと同じように純は言いたいことを言うと電話を切った。

 須賀の居場所を調べる、だと。

 大人になった須賀を想像したことはあった。想像の須賀は、大人になっても高校生の頃と同じように周りの空気を結晶化させた凛と美しい姿だった。

 俺のせいで綺麗な人生に黒く消せない染みができた須賀は、以前のように屈託なく笑わない。静かな微笑を浮かべるのだ。不幸を背負った細い体。色気のある物憂げな眼差し。もしその目が俺を見つけたら──?

 想像した瞬間、体中に震えが走った。鳥肌も立っている。

 絶対に俺を許さないと言った。金輪際近づくなとも。

 もし俺が須賀の前に姿を現したら。須賀のきれいな目は驚いて見開かれるだろう。そして怒りと怯えと屈辱の表情を浮かべるだろう。もしかすると殴りかかってくるかもしれない。胸倉を掴まれるほど須賀を間近で見られたら。

 俺のこと、俺にされたことを必死に忘れようとして生きてきたに違いない。その努力を台無しにしてやったとき、あのきれいだった須賀をまた、汚せるかもしれない。

 急いでズボンとパンツをずり下ろしペニスを握った。久し振りに純ではなく、須賀で抜いた。

 その夜、連絡先を知っている昔の知り合いに片っ端からメールを送った。世間話という前置きも思いつかないほど切羽詰まった内容になった。

 須賀の連絡先を知らないか。知ってたら連絡をくれ。

 返信のなかに、なんとか須賀に繋がりそうなものがひとつだけあった。須賀と仲の良かった男を知っている、というメールに、すぐそいつに連絡を取って須賀のことをなんでもいいから教えてくれと返事をした。理由を訊かれ、高校時代須賀に借りたCDを送りたいと嘘をついた。

 金曜の夜になってそいつから画像付きのメールが送られてきた。年賀状の画像だった。きれいな文字で書かれた差出人の名前と住所が写っている。須賀公作。住所は実家ではなかった。マンション名から地図で調べると単身者向けのマンションに住んでいることがわかった。

 あいつは生きている。暮らしている。俺のマンションから車で一時間ほどの場所に。生活圏は被らないが、出先で偶然会う可能性は決してないと言えない距離に。高校からずっと付き合いを続けている友達に年賀状を送る律儀さは須賀らしい。几帳面な性格を表した文字。須賀は須賀のまま、俺と同じ空の下に暮らしているのだ。





Tedious story(7/15)

2018.11.18.Sun.


「もういいだろ」
「まだ無理だよ……ちょっと、今井さん、まだ無理だって……!」

 手のローションをペニスに馴染ませて純の穴に捻じ込んだ。逃げようとする腰を引きよせてさらに奥へ侵入する。

「いっ……てえ…まじ痛いよ、今井さん」
「痛いの好きだろ」
「好きじゃないよ」
「マゾだろ、お前」
「どっちかって言うと、虐めて興奮するたちなんだけど」

 誰かを虐げる純を想像したら胸の底がカッが熱くなった。改めて言われるまでもなく、純はそっちのタイプだ。優位に立って人を弄ぶことが似合う。似合いすぎるほどに。

「女にされた気分は?」
「ウケる。今井さんじゃなかったら、絶対こんなこと許さないから」

 まだ言葉を操る余裕があるのか。

 一度抜いて純をひっくり返した。驚いた顔に少し胸がすく。純の足を持ち上げ、また突っ込んだ。

「ちょっ……、無茶しすぎ!」

 無理な態勢を取らせているせいか純の声は苦しそうだった。構わずに腰を打ち付ける。純の処女のケツの穴に、俺の汚れきった肉の棒を突き立てる。

「お前、本当に男とヤルのは初めてか?」
「初めてだよ」
「若松とも?」
「しつこいな、ほんとだってば。今井さん、処女厨っぽいもんね」

 なぜ見抜かれる。俺はそんなにわかりやすいか? 今まで付き合った女は三人。全員、男経験のない女だった。そういう女が好みだった。男慣れした女には興味がわかなかった。誰にも侵入を許さなかった場所へ、苦痛を伴いながら俺のものを迎え入れるときの女の表情にたまらなく興奮した。

 女とは数えきれないほどセックスをした純も、後ろは初めてだ。俺が初めての男だ。

 夢中で腰を振り、射精した。

 疲労した純の顔に安堵が浮かぶ。俺がまた腰を振り始めると、うんざりとした表情にかわった。苛立ちを抑えた純の顔。いままで付き合った処女の女たちとは違う反応。なのにどうして俺はこんなに興奮するのだろう。

「今井さん、いい加減終わってよ。疲れた」

 二度、抜かずに射精し終わった俺の腕を純が叩いた。

「お前はイッたか?」
「イケるわけないじゃん」

 挿入したまま純のペニスを扱いた。立派に育つ。これで何人の女を泣かせた。

「もっと、先っぽも扱いて」

 腕を枕にしながら純が俺に指図する。陰毛もそうだが、体毛が全体的に薄い。大人になってもあまり髭が生えないタイプだろう。

「そうそう、気持ちいい。大きな手で扱かれるのも悪くないね」

 手の中のものが熱く硬い。女みたいな見た目のくせに、こっちはちゃんと男らしい。

「今井さん、俺、もうイキそう」

 純の息遣いが荒くなる。平らな胸と腹が大きく上下している。

 入れたままだった俺のちんこがまた大きくなってきた。それを感じて純が俺を睨むように見上げる。

「また? もう勘弁してよ」
「一緒にイクか」
「俺はオナホじゃないんだけど」

 俺が腰を動かすたびに苦痛の表情を見せる。怒りと呆れ。結局諦めて純は目を閉じた。長い睫毛だった。射精の瞬間引き抜いて純の顔に向けた。知らずに目をあけた純は眼前に迫ったものを理解して慌てて目を閉じた。

 白い液体が純の長い睫毛にかかる。目頭のくぼみに溜まる。形のいい鼻に流れ、赤い唇に落ちた。

「今井さん、なんでこんなことすんの。顔射とか趣味悪すぎでしょ」

 文句を言う唇に精液が伝う。無事なほうの片目をあけて、純は俺の精子を舐めた。赤い舌が動く様にちんこの先がぴくりと動く。

 俺に精液をぶっかけられても、純はきれいなままだった。どうすれば純を汚すことができる? すでに汚れているからこのくらいでは損なわれないのか? それとも汚れたままでもきれいなのか? この程度では純を汚すことはできないのか?

「まあ俺もするのは嫌いじゃないけどさ」

 俺の体の下から純が這い出る。少しふらつきながらベッドをおりた。

「どこに行くんだ」
「風呂。疲れたからお湯張って浸かってくる」

 腰をかばうように歩いてバスルームへ行き、浴槽に湯を溜め始めた。その間にシャワーを浴びて体の汚れを落としている。尻のあたりで手を動かしているのは、俺の吐きだしたものを出すためだろう。

 シャワーが終わると純は湯船につかった。それを見たら急に疲労を感じた。俺もシャワーを浴びて湯船に浸かった。男二人ではさすがに狭いが純は文句を言わなかった。

「今日はもう疲れたから泊まっていかない?」
「学校は? 制服に着替えないとだめだろ」
「朝になったら着替えに戻るよ。ね、いいでしょ、今井さん」
「また俺にヤラれるかもしれないぞ」
「今井さんがしたくなったらしていいよ」
「本気かよ」
「今度はちゃんと前立腺に当てて俺を気持ち良くしてくれるならね」
「前立腺?」
「ここにあるんだって」

 浴槽のなかで純が距離を詰めてきた。俺の足の間に入り込んで股座に手を突っ込んでくる。純の指が俺の肛門に触れた。

「ばかっ、なにするんだ」
「触るのもだめなの?」
「冗談でもやめろ」
「でも、ここだって教えなきゃわかんないじゃん」
「いらねえよ、お前が勝手にそこに当ててくりゃいいだろ」
「指一本だけ、いいでしょ、今井さん、お願い」

 自分がどんな顔と仕草をすればいいのか、純はよく理解している。少し首を傾け、上目遣いに、くりっとした目で俺を見つめる。

「だ、だめだ」
「怖い? 指が入ったくらいじゃ、女の子にはならないから安心しなよ」
「やめろって、おい、純」

 純は至近距離で俺の目を見つめながら指をそっと入れてきた。バスタブのなか、逃げる場所もない。純の肩を掴んだ。細い体なのに押し返せない。

「ほら、第一関節まで入った」

 囁くような純の声。息が口元にかかる。

「やめろ、純……!」
「指全部入れたら、ご褒美にキスしてあげるよ」

 しゃべるそばから唇が少し触れた。ビリビリッと電気のような衝撃が走る。フェラをさせてセックスもしたのに、唇が触れ合ったくらいでなんだ。心臓が壊れそうになる。

「今井さん、かわいい顔するね」

 熱っぽい純の目が近づいてくる。ふわりと唇が触れる。さらに押し当てられてピタリと密着した。それと同時に指が奥まで入り込む。

 純の舌が俺の唇を舐める。歯をこじあけ、なかに入ってくる。ぬるりと熱い舌が俺の口のなかを舐め回した。

 純の指もなかで動いた。異物感しかない。純とのキスは気持ちがいい。それが指でいじられる不快感を打ち消す。

「う、もう、いいだろ」

 純の腕を押し返しながら顔を背けた。純とセックスしていたときのような高揚感と、射精後の疲労感が同時に襲ってくる。俺は息を止めていたらしい。胸を上下させながら呼吸を落ち着かせた。

「今井さんは誰かにそこ、触らせたことあるの?」
「あるわけないだろ」
「俺だけ? どうして触らせてくれたの?」
「お前がむりやり入れてきたんだろ」
「今井さんのほうが力が強いんだからいくらでも拒めたでしょ」
「知るかよ、疲れてたんだよ」
「俺が初めての男だね。嬉しいな」

 無邪気に喜んで見せる純とまともに目を合わせられない。汗がどっと噴き出てくる。

 純を拒めなかった理由。純にお願いされたから。きれいな目で。ご褒美が欲しくて。

 きっと全部、見透かされている。

 結局ふたりでホテルに泊まった。テレビを見ている純に欲情してまたセックスした。純は痛い苦しいと文句を言ったが抵抗はしなかった。がっつく俺を笑った。

「今井さん、俺に夢中だね」

 こいつの手中には落ちないぞと心していてもいつの間にか踊らされている。





Tedious story(6/15)

2018.11.17.Sat.


 部屋は純が選んだ。黒を基調にしたシックな部屋。一見普通のシティホテルのような内装だが、壁に大きなXの磔台、ベッドの四方から拘束具があった。純はベッドに腰をおろした。

「今井さんてこういうの好きそうだよね。使ったことある?」

 屈託なく笑いながら純が手錠を手に取る。

「ない」
「バイブとか、クスリも?」

 ない、と首を振りかけて思い出した。須賀を犯した時に当時流行っていたセックスドラッグのラッシュを使った。

「昔、一度だけ使ったことがある」
「どうだった?」
「ただの興奮剤だ」
「やっぱ気持ちいいの? セックスに使ったことないんだよね、まだ」
「他では使ったことがあるのか?」
「好奇心で一回、テスト前に。頭痛が酷くて逆に点数悪くなっちゃった。俺には合わなかったみたい」
「進学校って言ってたな。どうしてわざと危ないことをするんだ」
「逆に訊きたいんだど、今井さんは毎日楽しい? 朝起きて電車乗って仕事して、また電車乗って家に帰って寝るだけ。そんな毎日、楽しい? 同じこと繰り返して、そんな人生楽しい? 生きてる意味ある?」
「意味なんか考えたこともない」
「うちの親父さ、そこそこ会社で重要な役職らしいんだけど、朝家を出て夜帰ってくるじゃない? 家では居場所ないんだよね。リビングのソファが定位置。休みの日なんかテレビの前から動かないもん。見てて哀れになるよ。会社では偉そうにしてるんだろうけど、家じゃ掃除の邪魔だって怒られて。俺の顔を見たら的外れな説教始めたりさ。ああいう大人を見てると、何が楽しくて生きてるんだろうって不思議でたまんない。死ぬのを待ってるだけじゃん」
「俺から言わせれば、そうやって大人批判してる間はまだまだ子供、幼稚な証拠だよ」
「大人はすぐそれ言うよね。そうやって上から目線でいれば安心なんでしょ?」
「俺はお前と討論するために呼ばれたのか? 置いて帰るぞ」
「帰っちゃうの? 泊まっていかないの?」
「明日仕事だ。お前も学校だろ」
「俺、シャワー浴びてこよっと」

 ベッドから立ちあがり純はバスルームへ向かった。ガラス張りで中の様子がよくわかる。素っ裸になった純がシャワーを浴びている。ガラスはすぐ曇った。それでもシルエットは見える。勝手に股間に血液が集まりだした。

 バスルームの戸を開けた。純が振り返る。均整の取れた肉体だった。細いと思っていてもつくべきところに筋肉はついている。

「どうしたの、今井さん」
「今日も助けてやっただろ。そのご褒美をくれよ」
「またフェラすればいいの?」

 何も抵抗を感じていないような口調で言う。男同士は気持ち悪いと言っていたくせに。

「そんなもんじゃ足りないだろ」
「セックスさせろってこと?」
「そうだ」
「いいよ」

 断られると思っていた。その時は力づくで犯してやろうと思って身構えていたから拍子抜けした。

「いいのか?」
「いいよ、でも待って、男とヤッたことないから調べてからね」

 びしょ濡れのままバスルームを出ると純はスマホを操作し始めた。濡れた体。滴り落ちる水滴。その立ち姿があまりにきれいで勃起した。

「時間、かかるか?」
「うーん、ちょっと」

 上の空の返事。スマホで男同士のセックスのやり方を調べているのだろう。まさかそんなに乗り気になられるとは思わなかった。それに、ただのセックスに手順が必要なことも知らなかった。

「今井さん、先にシャワー浴びておいでよ。その間に調べとくから」
「逃げたら家まで追いかけるぞ」
「あいつらが外うろついてるのに一人で帰んないよ。それに俺も興味あるし」
「男同士は気持ち悪いんじゃなかったのか」

 純はスマホから目をあげた。形の良い目が俺をじっと見る。

「今井さんなら、別に嫌じゃないよ」

 口八丁手八丁。これがこいつの手口。人の懐に入り込むのがうまい。懐いたように見せかけ、気持ちのいい言葉で気を許させる。そして自分の思い通りに相手を動かす。

 全部わかっていても、純の言葉はくすぐったい。視線に胸が騒ぐ。

「早くしろよ」

 先に目を逸らした。服を脱いでシャワーを浴びた。純を見るとまだスマホとにらめっこしている。

 俺と入れ違いで純がバスルームに戻ってきた。濡れていた体もあらかた乾いている。

「ねえ、今井さんは俺に入れたいの? 入れられたい?」
「入れるほうに決まってるだろ」
「一応確認しただけ」

 腰にタオルを巻いてベッドに寝転がった。テレビをつけて時間を潰す。純が出てきたと思ったらトイレへ直行した。それを二度繰り返した。

「何してるんだ。腹が痛いのか?」
「今井さんのためにしてるんだよ」

 ベッドから身を起こし、バスルームに戻った純を眺める。純はシャワーを尻に当てた。それを離すと壁に手をついてうなだれるように頭をさげた。心配になってバスルームを覗く。

「大丈夫か」
「うん、もう終わった」

 少し疲れた表情で純が言う。

「何してたんだ」
「腸内洗浄? お尻の穴をきれいにしてたんだよ」
「そんなことする必要があるのか?」
「ほんとに何も知らないんだね」

 バスタオルで体を拭きながら純が呆れたように言う。

「そういえばさ、俺よりきれいだって言ってた今井さんの昔の知り合い、その人とはヤッてないの?」
「ヤッたよ」
「それなのに何も知らないの?」
「むりやりだった。あいつにラッシュを嗅がせて、むりやり犯した」
「好きだった相手によくやるね」
「あの時は気付いてなかった」

 純は声をあげて笑った。

「気付いてないのに犯したの? ほんと、今井さんて面白い人だよね」

 俺の手を取りベッドに導く。純はベッドに乗ると腰からタオルを取った。しなやかできれいな体だ。見惚れていたら、備品のローションが飛んできてキャッチした。

「これで俺の後ろ、ほぐすんだって」
「ほぐす?」
「男はさ、女と違って濡れないでしょ。だからこういうので濡らして慣らさないとだめなんだって」
「俺が?」
「自分の後ろの穴は見えないもん」

 純はベッドの上で四つん這いになり、腰をあげた。「ほら」と俺に尻を向ける。

「俺とヤリたいんでしょ?」
「面倒臭えな」

 蓋をあけ、ローションを手に出す。笑ってしまいそうになるほどきれいな純の穴にローションを塗りたくって指を入れた。指一本でも強い締め付けがある。

 須賀を犯したとき、須賀はとても痛がっていた。苦痛の表情で涙を流して俺にやめてくれと頼んでいた。欲望と苛立ちとラッシュの興奮のせいで聞く耳をもたなかった。気持ち良くなるために、須賀を汚すために腰を振った。

 もしあの時須賀が純と同じような反応を見せていたら興奮は萎え、ヤル気も失っていただろう。

 だがいまの俺は萎えるどころか、早く純に入れたくてウズウズしている。須賀のように純潔でもない、性悪で汚れきった純相手に、いまにもイキそうなくらい興奮している。