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愛で殴る(2/2)

2018.08.28.Tue.
<前話>

「一緒に気持ちよくなろうよ、先生」
「う、わ、お前、なに擦りつけてんだっ」

 尻に固いものが当たる。

「優しくするから」
「ちが、そういう問題じゃ」
「だから、早く、俺のこと好きだって言ってよ」

 言えるか。言ったらもう俺、超絶うっとうしい男になる。毎日だってキスしたいし、好きだって言いたいし言って欲しいし、おはようからおやすみまでメールとか電話したいし、休みの日はずっと一緒にいたいし、異性だろうが同性だろうがこいつに近づく奴全員に嫉妬するし、独占欲半端ないし、束縛だってしたい!

 前島と付き合っている時、無理して我慢してきたものが、こいつと付き合ったら全部爆発する。自分でわかる。

「う、ううっ、もう、その手やめろって」
「先生、乳首弱いんだね? 開発する必要ないくらい」

 それを確かめるように水沢が俺の乳首を弄る。前島は淡白な男だった。性的に強いほうじゃなかったんだと思う。仕事で疲れてるんだとセックスの誘いを何度も断られた。セックスは月一程度で、しかも前島は早くてすぐ終わった。一晩に二度なんて絶対なくて、俺がイケないまま終了することも多々あった。

 自然と一人で処理することが増えた。中途半端に火照った穴におもちゃを突っ込んで、前島にして欲しいこと言って欲しいことを想像しながら自分でやった。そのせいですっかり乳首は性感帯に育った。

「もともとここ、自分で触ってたの?」
「触ってないっ」
「じゃ、天然? やらしい体してんな、先生」

 ああ、なんてことだろう。俺が妄想していた理想のタチ様みたいなことを言いやがる。

「乳首だけでイッちゃったりして」
「そんなわけあるか!」
「だよね、こっちも触って欲しいよね」
「あっ、違う、そういう意味じゃな……!」

 シコシコシコと勃起を扱く手つきが早くなった。俺の膝はもうガクガク。

「あっ、あ、ばか、やめろ……ッ」
「先生の声、色っぽい」
「変なこと言うな」
「ほんとだって。その声、好き」

 前島と付き合いたての頃、俺はまだ経験が浅くて、とにかく相手を悦ばせるため、ネットで見た動画みたいにアンアンおおげさに喘いでみせた。そしたら「盛りすぎ。気持ち悪い」とバッサリ。以来、前島とセックスする時は声を抑えるようになった。ひとりよがりなセックスだったから、声なんか抑える必要もほとんどなかったわけだけど。

「待っ……、手、止めろ、やばい、出る」
「出す前に言うことあるよね、先生」
「なに……?」
「俺のこと、好きでしょ?」
「またそれか」
「だって先生言ってくれないから」

 どうして言わないとわからないんだ。嫌ならとっくに逃げている。ここまでされるがままなのは、好きって意外、どんな理由があると思っているんだ?

「言ってくれなきゃ、先生の気持ちわかんないよ。このまま続けていいのか不安になる。先生、俺のこと、ほんとはどう思ってる?」

 水沢の言葉にハッとなった。俺が前島に求め、結果与えられなかったもの。好きという言葉だとか、毎日の連絡とかじゃなく、それらがもたらす安心感。本当に俺が欲しかったものはそれだったんだ。

 水沢もそれを求めている。そりゃそうだ。気のある相手から思わせぶりな態度を取られているのに、肝心な言葉は言ってもらえないんじゃ、遊ばれていると思っても仕方がない。

 ただ自分が傷つきたくないために、俺は前島みたいなことを水沢にしてしまっていた。

 前島にはなりたくない。あいつと付き合っていた頃の俺みたいな気持ちを水沢にさせたくない。

 一世一代の勇気を振り絞るしかなさそうだった。

「安心しろ、ちゃんと好きだから」

 首をむりやりひねって水沢にキスする。自分から舌を絡め、水沢の勃起に尻を押しつけた。

「だから、続きはベッドで」

 水沢スイッチが入ったのが手に取るようにわかった。俺をベッドに押し倒すとすぐ馬乗りになってキスしてきた。俺は下から水沢のベルトを外し、ズボンと下着を脱がせてやった。

 ブルンと外へ飛び出したものは年相応にいきり立っていた。刺し貫く瞬間をいまかいまかと待ち構えている。

「先生、もっかい好きって言って」
「さっき言っただろ」
「何回だって聞きたい」
「好きだ」
「もっと」
「好きだ。水沢が好きだ。大好きだ」
「俺も! 俺も先生のこと大好き」

 はたからみたらただのバカップルだろう。それでいい。俺はバカップルに憧れてたんだ。

「待って、ローション持ってきた」

 水沢はポケットからボトルを取り出し手に出した。ベトベトになった手を俺の尻の間に差し込み、指を穴に入れてきた。人に触られるのは久しぶり。ゾクゾクと喜びに震えてしまう。

「ここに今から俺のいれるんだって、すごくね」
「う、うん、すごいな」
「男同士でも繋がって気持ちよくなれるんだよ」
「ああ」
「俺、猿みたいに毎日ヤリたくなるかも」
「ま、毎日はさすがに」
「高校卒業したら一緒に暮らそうよ、先生」
「えっ、一緒に?!」
「先生が嫌がるときはやんないからさ」

 違う。違う、違う。俺が驚いたのは、水沢が当たり前みたいに未来のことを口にしたから。俺がいる前提で。ずっと一緒にいると、言ってくれたから。

「お前、ほんとに俺でいいのか?」
「なに、なんの予防線張ろうとしてんの?」
「じゃなくて、俺、嫉妬深いからな」
「へー! 意外」
「束縛するし、かなりうっとうしいからな」
「上等じゃん。俺も相当重いほうだから」

 束縛したい、されたい。口出ししたい、されたい。もう、我慢しなくてもいいのか?

「別れたくなっても、しつこいからな」
「まず別れたくなんないよ」
「そんなのわからないだろ」
「行動で示して信じてもらうしかないね」

 もういいかな? 独り言みたいに呟いて水沢は指を抜いた。同じく用意しておいたのだろうコンドームの袋を破って装着し、俺に押し当てた。

「もう、先生と生徒には戻れないね」
「とっくにそうだろ」
「たしかに」

 水沢が笑う。笑いながら挿入してきた。比べるなんて失礼な話だが、前島とぜんぜん違う。固さも、太さも、熱さも、大きさも、なにもかも。

「すごい、きつい。先生、大丈夫?」
「大丈夫」
「動くよ?」

 頷いたら水沢がゆっくり動きだした。この年頃ならもっとガンガン腰を動かしたいだろうに、俺を気遣ってそうはしない。本当に俺を大事に思ってくれている証拠だ。

「もっと早くして大丈夫だから」

 ほんと? と目が問う。頷き返したら叩くリズムが早くなった。男らしいものが中を掻きまわす。俺の勃起がブルンブルン揺れる。

「上から見る先生、すっごいエロい」

 気持ち悪がられないよう、口を塞いで声を我慢する。

「何してんの、声聞かせてよ」

 手を剥がされた。

「はあっ、あっ」
「うわ、エッロい」
「や、だ、あ、あんっ」
「先生ってこんなエロかったんだ」
「違う、あぁっ、ああっ」
「しばらくこれをオカズにしよう」
「なに、言って、あっ、奥、だめっ」
「奥いいの? もっと?」

 俺の腰をぐっと掴んで自分のほうへ引きよせた。前島では届かなかった場所をこじ開けられる。

「やめ…そんな、中まできたら……イクッ……!」
「もうイキそう? ほんとに?」

 ガクガク頷いたら「かわいい」と笑われた。

「もうちょっと我慢してよ。一緒にイキたい」

 俺の根元をぎゅっと掴んで悪魔の微笑み。楽しげなピストン運動が始まった。俺にとっては地獄の時間。いや、至福の時間。こんなに快楽を与えられたことなんてなかった。

 口を塞ぐことも忘れて、喘ぎ声を出しまくった。気持ち良すぎて辛くなって、水沢にイカせてと頼んだ。

「だめ、初めてのときはやっぱ一緒じゃないと」

 水沢はなかなかイカない男だった。「一緒」にこだわって俺をイカせてもくれない。確かに水沢は重いというより面倒臭い男かもしれない。俺にはちょうどいい。

「先生、手、離すよ?」
「は、早くっ、イカせてくれ!!」

 水沢の手が離れる。勢いよく精液が飛び出す。水沢は俺の射精の瞬間をじっと見ていた。収まるのを待って、

「このまま二回目してもいい?」

 俺が望んできたものを、水沢はエスパーみたいに読み取って与えてくれる。これはもう愛の殴打だ。ノックアウトされた俺は、だらしない顔で頷くのだ。





例えば雨が降ったなら

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愛で殴る(1/2)

2018.08.27.Mon.
<前話「宙ぶらりん」>

「先生!」

 階段を降りていたら呼び止める声。振り返らずとも誰だかわかる。うちのクラスの水沢。

 水沢は俺の隣に並ぶと、「土曜日、先生んち行っていい?」と囁いた。

「だめ」
「いっつもだめじゃん。いつならいいの」
「来てどうする」
「先生とキスしたり」
「ばか」
「それ以上のこともしたいし」
「男同士だぞ」
「昨日、先生思ってマスかいた」
「そんな報告しなくていいから」
「だって先生のこと好きだし」
「う」
「好きな人にキスしたり触ったりしたいでしょ」
「わ、わかった、土曜日来ていいから」
「やった。約束ね」

 目の前に立てられた小指。水沢はニコニコ顔。若さって怖い。人の目がないことを確認してから水沢の小指に指を絡めた。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます」

 指切った! 冷静に考えたら嘘ついたくらいで針を千本も飲ませられるって代償えぐいな。そんなことでも考えていなきゃ、俺の顔はどんどん熱くなって赤くなってしまう。

 恥ずかしげもない告白。惜しみない愛の言葉。意味のない約束。

 今まで俺が欲しくて、だけど与えられることのなかったものばかりだ。

「じゃあ、先生、土曜日、いつものコンビニで」

 階段を駆け下りて行く水沢の背中を見送る。俺も昔はあれくらい身軽に走れた。後先考えず、自分の欲望のままに、気持ちのままに。

 純粋な水沢を大人の俺に付き合わせていいのかと、何度目かの疑問が頭をグルグルする。

 本当はそんなきれいごとじゃなくて、また捨てられたくないっていうのが本音のくせに。

 ♢ ♢ ♢

「男同士ってやっぱり将来性ないから」

 将来性がないってどういう意味だ。子供産むことか? 男女の恋愛だって子供を作る目的じゃないだろ。子供を持たない選択をする夫婦だっている。だいたい男同士だって付き合う前からわかってんのに、いまさら別れる理由がそれ?! 馬鹿にしてんのか?

 と、3年付き合った前島から別れを切りだされた時、俺は頭の中でたくさんの言葉が浮かんだが全部飲みこんだ。

 前島が、ギャーギャーやかましく言われることを嫌う奴だと知っていたから、自然と我慢を覚えた。

「わかった。そういうことなら、俺がどうこうできる問題じゃないしな」
「君ならわかってくれると思ってた。それと、誰かから聞くより俺の口から知らされるほうがいいと思うから言うけど、年末に結婚する予定なんだ。祝福してくれとは言わないけど、邪魔だけはしないでくれるか」

 読書家で小難しそうな本が家に千冊以上もあって、寡黙で、どんな時も冷静で、俺より5歳年上の落ち着きがあって、論理的で理論的な話し方も、無駄を嫌う合理的なところも、全部俺にはないもので魅力的に見えていたけど、こいつが実は人の心を思いやれない冷血漢で自分優先の自己中野郎で、損得勘定が得意な奴だってことに、この時やっと気付いた。

 いや、今までもそれに気付く場面は幾度となくあった。惚れた弱みで見てみぬふり、気付かないふりをしてきただけだった。

 そんな奴だと薄々気付きながら3年も付き合い、挙句バカみたいな振られ方をした自分が情けなくって情けなくって、しばらく立ち直れなかった。前島は宣言通り、管理栄養士だという女と結婚した。いまでもこうして夢に見るくらいには、引きずっている。

 でも最近は夢に見る頻度は減ってきた。誰のおかげか。水沢のおかげだ。それがわかるくらいには、俺は水沢を意識している。惹かれている。ぶっちゃけ、好き。

 水沢と付き合ったら。水沢は俺の理想の彼氏になってくれそうな気がする。

 前島は「そんなこと言わなくてもわかるだろ」と、滅多に、いやほとんど好きだと言ってくれなかった。セックスの時以外、ベタベタすることを嫌ったし、冗談言っても笑わないし、下ネタなんて挟んだら汚物でも見るような目で見られたし、遊園地デートを提案したら「男同士で行くような場所じゃない」と即却下、挙句俺を子供扱い。

 思い出せば思い出すほど、どうして俺、あんな男が好きだったんだろうと不思議になる。催眠術にかけられていたとしか思えない。

 水沢は俺がしたいこと全部してくれそうだ。言って欲しいことも、俺が頼む前に言ってくれる。

 だからこそ、水沢の言動を間に受けて突っ走ったら止まれなくなってしまう自覚がある。夢中になってから「やっぱ将来性ないし、男同士とかむり」なんて振られたら号泣して縋りつく自信がある。

 前島のときは自制できたものが、水沢との蜜月を経験したあとではできなくなる、それがわかるから、簡単に水沢の気持ちを受け入れられない。

 精一杯ブレーキを踏んでいる。水沢が素直に感情表現してくれる度、ブレーキが壊れそうになる。大きな音を立てて火花を散らせて。ブレーキを踏む足の力を緩めたい誘惑と常に戦いながら。

 そのくせ、水沢と会う約束をするとその日が楽しみでたまらない。家の掃除もせっせとするし、水沢が好きそうな飲み物やスナック菓子を用意したり、楽しめそうなDVDを買っておいたりしている。嫌われたくない。好かれたい。愛想を尽かされたくない。いつまでも好きでいてほしい。

 俺はなんてずるい大人だ。

 ♢ ♢ ♢

 土曜日、水沢をコンビニで拾って自宅へ連れ帰った。車中、俺をじっと見つめながら「いますぐキスしたい」と俺を舞い上がらせる台詞を言う。「運転中だぞ」ってもっともらしいことを言いながら、顔がニヤけそうになるのを必死に止めた。

 部屋に入るなり、水沢は俺に抱きついてきた。

「先生のにおい好き」

 とうなじに鼻をこすりつけてくる。出る前シャワーを浴びておいてよかった。

 水沢の手が腹のあたりでゴソゴソ動いてると思ったら、服の下に手が入ってきた。

「おい、水沢っ」
「触るだけ」
「おっさんの腹なんか触ってなにが楽しい」
「先生の裸を想像してる」
「あ、おい、動かすな」

 水沢の手がじりじりと上へ移動する。触り方が性的でゾクリと体が震えた。

「先生とエッチなことしたい」
「なんてこと言うんだ、お前は」
「好きな人に触ったらしたくなんの、ふつうだろ」

 平気で好きだと言い、平気でセックスしたいと言う。俺が前島に言いたかったこと。言ってほしかったこと。でも言えず、言ってもらえなかったこと。水沢は言うのが当たり前みたいに自分の感情を素直に言葉にする。心臓がもたない。

「あっ、ちょっと」

 水沢の指が俺の乳首に触れた。人差し指でこねまわしたり、押しつぶしたり。簡単にそこが立ちあがる。指でつままれ、引っ張られた。

「も、やめっ」
「やだ」
「ばかっ、シャレにならん」
「シャレじゃないし」

 いきなり股間を鷲掴まれた。手の平で揉むように撫でられる。そこに血液が集まり、固くなっていく。

「水沢! いい加減にしろ」
「先生、俺のこと好き?」
「なっ」

 いまこの状況でそんなことを聞くか?! 嫌いなわけがない。好きだ。好きに決まってる。でも俺がそんなこと言えると思うか?!

 言ったら最後、こいつに全部さらけ出してしまうことになる。年上のプライドとかそんなの関係なく、こいつに夢中になって、みっともない姿をさらすことになる。そのあと、「やっぱ男同士ってない」と振られたら、一生立ち直れない。

 だから、なにも聞かずそのままことを進めてくれたら、口ではやめろと言いながら流されるつもりだったのに。

「どっち? 好き?」
「嫌いじゃ、ない」
「嫌いじゃないなら、好き?」
「どっちだっていいだろっ」
「良くないよ。愛のないセックスなんてだめじゃん」
「ただヤリたいだけのくせに、なにもっともらしいことを」
「違うよ、俺、先生に無理強いしたくないし」

 器用にベルトを外すと水沢の指がなかに侵入してきた。

「それにやっぱ、ちゃんと好きって言ってもらいたいし」

 指先が先端に触れる。ぬるりとした感触。先走りのせいだ。恥ずかしくて死にそう。

「前はゆる勃ちだったけど、今日はすごいね」

 パンツから引っ張りだされた。見なくてもわかっているのについ下を確認してしまう。完全に勃起している。それを水沢が握っている。

「男同士がどうするのか、ちゃんと調べたよ俺」
「そんな時間があるなら勉強しろ」
「俺の、入れていい?」
「駄目に決まってるだろ」
「気持ちいいんだって」
「知るか」

 いや、知ってるけど。そんなふうに耳元で求められ続けたら腰が砕けそうになる。もしかしてわざとか? こいつ、知っててわざとやってんのか?!





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