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続・盲目の狼(2/2)

2018.06.28.Thu.
<前話>

「どーせ要のことだから、俺のこと好きだって思ってても、プラトニックでいいとか思ってたんでしょ。俺を穢すような真似はしない!とか決意しちゃってさ。そうやって我慢ばっかし続けるから俺の挑発でいきなり爆発しちゃうんだよ。要のことだから男同士でどうやるかなんて、なーんも調べてないだろ。調べることも悪だとか決めつけちゃってさ。おかげで俺、すっげえ痛かったんだかんね。初めてが強/姦とか。拷問じゃん。せめてちょっとくらいは解してほしかったよね。俺、痛いって何回も言ったよね。ぜんぜん潤い足んなかったもん。要には絶対そんな思いさせたくないからさ。予習復習ばっちりしてきたよ」

 ローションでぬるぬるになった指がさっきから要の尻穴を出たり入ったりしている。要はベッドに突っ伏し、尻を高く掲げた格好を取らされている。この屈辱的なポーズも、古瀬曰く「昨日のお仕置き」なのだそうだ。それを言われたら従うほかない。

「こうやって潤わせながら中を解してやんなきゃ。いきなりちんこ突っ込んだら怪我しちゃうでしょ」
「う、ごめん」
「ああ、ほら、これだ、きっと。ここが前立腺。わかる?」

 古瀬の指が中をグッグッと圧迫してくる。膀胱を刺激されるような感覚。要のペニスの先がピクピク揺れた。

「ここを俺のちんこで何回も何回も擦ってあげるからね。グリグリやられると気持ちいんだってさ。もう普通のオナニーじゃイケなくなるくらい。知ってる? 男も潮吹くんだって。俺、要に潮吹かせたいなぁ。メスイキもさせたい」

 指の腹で何度も前立腺を強く擦りながら古瀬がうっとり夢を語る。後半、なにを言っているのか要には理解できなかった。

 要は息を荒くしながら、重点的に責められている場所から体が熱く火照っていくのを感じていた。半立ちだったペニスは完全に立ちあがり、違和感しかなかった古瀬の指使いに体がビクビク震える。弾んだ声も危うく出そうになって、要は手で口を塞いだ。

「もう充分解れたかな。そろそろ入れるよ? 辛かったら言ってね。ま、俺より辛いことはないだろうけど。最初はやっぱ生でいいよね。要だって生中出ししたんだから、俺もしたい」

 指が抜け、今度はさらに太いものが押し当てられた。

 古瀬のことがずっと好きだったが、古瀬にそんな俗物的なものがついているなんて想像は避けてきた。守るべき存在として意識することで、自分の煩悩から遠ざけるためだった。

 昨日はそれを目の当たりにした。古瀬に似つかわしくないグロテスクなものが、立派な形を示して天を睨んでいた。冒しがたいはずの古瀬がただの男だと思い知らされた。

 そればかりか、いまはそれが自分をこじ開けようとしている。

 男の欲望息づく熱くて硬い肉棒は、ローションのぬめりを借りてズブズブと要の中へ飲みこまれていく。むりやり広げられ、奥まで異物が嵌めこまれる。

 想像以上の負担だった。これを昨日はローションも何の準備もなしにやってしまったのだ。一歩間違えば古瀬の体を壊してしまったかもしれない。

「うわっ……す……っごい、要のなか、熱い」

 背後で古瀬が呟く。中で古瀬が蠢く。粘膜でそれを感じて要は恥ずかしくなった。

「あは、締め付けきつくなったよ。痛い?」
「痛くない」
「良かった。今から動くよ。痛くなったら言ってね。やめないけど、加減はするから」

 ヌーッとペニスを引くと古瀬はまたローションを垂らした。要の尻にもかかり、冷たさに鳥肌が立った。

 ゆっくり古瀬がピストンを始める。古瀬のペニスが出たり入ったりしている。カリが中をひっかく。さっき教えられた前立腺を擦る。ローションが卑猥な音を立てる。だんだん古瀬の腰の動きが速くなっていく。

 突かれる振動が体のてっぺんにまで伝わってくる。シーツに押しつけた顔が擦れる。要のペニスがブルンブルンと弾む。

「んっ、んふぅ……う、んんっ」
「あれ、要、口塞いでんの? 駄目じゃん。ちゃんと声聞かせてよ。俺は昨日聞かせてあげたでしょ」

 古瀬に両手を掴まれた。手綱を握るように要の手頸を握る。手を後ろに伸ばされて、要は口を塞げなくなった。

「そろそろ激しめにいくよ」

 腕を短めに持ち直すと、古瀬は宣言通り、強く打ってきた。最初はあった痛みも、すぐに慣れて消えた。摩擦された内部が熱い。ペニスが痛いくらい勃起している。

「古瀬、いや、ああっ、いやだっ」
「やじゃないでしょ。ちんぽバッキバキじゃん」

 あの古瀬がちんぽなんて単語言うんだ。そんな驚きも一瞬で消えた。突き破らんばかりの勢いで中を抉ってくる。

「いっ、ああっ、奥、来すぎ……! 壊れるよぉ、古瀬、俺の体が壊れる……!」
「このくらいで壊れねえよ。これね、結腸責め。男のなかにも、女の子宮みたいなところがあるんだって。どうしても俺、要の子宮に中出ししてやりたくてさ。俺の子、孕めよ。なぁ、まじで、要」

 熱っぽい口調で言いながら激しく奥を突きあげてくる。要は目を白黒させながら射精した。責められ続けてペニスがまた強制的に立ちあがる。

「ううっ、あっ、いやだ……俺もうイッたのにっ! またイクッ……なんで、古瀬、なんで?! またイクッ」
「イキそう? 潮か? ドライか? すげえな、要。お前素質あんじゃん」
「いやあっ、あ、あぁん、やだ、止めろ! いやだあぁっ、イクのやだ、怖いよ、古瀬!! んっ、あああぁっ!!」

 ほとんど叫びながら要はまた絶頂を迎えた。わくわく顔の古瀬が覗きこむ。ペニスからは何も出ていない。ドライオーガズムだ。古瀬は目を輝かせると、腰の動きをさらに速めた。

「俺もイクぞ。お前の子宮にたっぷり出してやるからな」
「いやだっ、もうやめ……! 強いの……だめってば……!!」

 要の目からは涙がボロボロ零れた。全身性感帯にでもなったかのようにあちこちが敏感になっている。そんな状態で一番過敏な場所を激しく擦られては正気でいられない。

 気が狂うまえに要は意識を失った。


 翌朝、要は古瀬を迎えに家に向かった。インターフォンを鳴らすと古瀬が出て来て「おはよう」と微笑む。いつもの古瀬の笑顔だ。

「お尻大丈夫? いくら充分解したっていっても、俺のちんこ出たり入ったりいっぱい擦りまくったから痛いんじゃない?」

 要は咄嗟に古瀬の口を手で塞いだ。

「だ、大丈夫だから、そんなこと大声で言うなよ」

 古瀬が手をはがす。あらわれた口元はニヤリと笑っていた。

「気絶するほどヤッちゃったから責任感じてるんだよ。初めてで種付けメスイキは辛かったでしょ。腰、怠いんじゃない? 今日くらい学校休めば? 今度は俺がお見舞い行ってあげるから」

 こんなの俺の知ってる古瀬じゃない。と要は頭を抱えたくなる。純情で奥手で俺にだけ懐くかわいい古瀬はどこへ行ってしまったのだろう。

 これが古瀬の本性だったというのだろうか。だったら今まで自分が見てきた古瀬はなんだったんだ。どこの誰だったんだ。

「こんな俺、幻滅する? 嫌い?」

 寂しそうな声にハッと顔をあげた。古瀬が泣きそうな顔でこちらを見ていた。要はこの顔に弱い。長年抱いてきた古瀬のイメージはこれだ。俺が守らなくては、そう思わせてきたのはこの顔だ。

「嫌いになったりするわけないだろ。どんな古瀬でも俺の気持ちはかわらない。これからもずっと好きだよ」
「えへへ。嬉しい。俺もずっと好きだからね」

 照れ笑いの古瀬を見て胸がじんわり温かくなる。昨日の古瀬は夢だったんじゃないだろうか。尻の怠さはただの気のせい……と自己暗示をかけようとしたとき、古瀬が要の耳に口を寄せて囁いた。

「だからまた犯らせろよ。たまに俺のケツ掘ってもいいから」

 慌てて飛びのく要の頭に、犯されて泣いた古瀬の姿が蘇る。すわ股間が反応をみせる。今度古瀬を抱くときは、昨日の自分のように古瀬をいかせたい。古瀬言うところの「種付けメスイキ」をさせてみたい。リベンジだ。

「順番だ。次は俺だぞ」

 前かがみになりながら言うと、古瀬は嬉しそうに笑った。いや、愉しそうに。

 脱ぎすてた羊の皮。身も心も、軽い。




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続・盲目の狼(1/2)

2018.06.27.Wed.
<前「盲目の狼」>

※リバ注意

「古瀬透です」

 と、教壇の横で自己紹介した転校生を見た瞬間、要の心臓は爆発した。不明な動悸に顔が熱くなり、目は古瀬から離せなくなった。古瀬は教壇の廊下側一番後ろの席を用意された。隣になったクラスメートに激しい嫉妬を感じた。

 転校初日の緊張もあって、古瀬はぜんぜん笑わなかった。誰かに話しかけられても「うん」か「ううん」と首を少し動かすだけ。人見知りなのだな、と要は庇護欲をかきたてられた。

 古瀬はヒョロガリだった。洒落た服から伸びる手足の細いことモデルが如しで、女子受けは良かったが、男子受けは悪かった。案の定、クラスの馬鹿が古瀬にちょっかいをかけ、人見知りの古瀬は何も言い返さなかった。

 要は意気軒高に止めに入った。守らねば。俺が古瀬を守らねば! 小学五年生が抱くには熱すぎる使命感が要の胸に燃えた。

 その炎が消えたことはない。

 古瀬の過度なスキンシップは信頼の証。その証拠に古瀬は他の誰にも抱きついたりしない。自分に向ける特別な笑顔は他の奴には見せない。優越感という燃料を投下され続け、炎はいつしか要の全身を覆った。古瀬を独占したい。自分のものにしたい。そんな欲求を抱くようになった。

 中学に入っても古瀬は全幅の信頼を寄せてくれていた。雛のように無防備に近づいてきて、子猫のように甘えてくる。クラスが別れ、常に見守れなくなった不安から、休み時間はちょくちょく様子を見に行った。

 人見知りはまだ治っていなくて、古瀬はいつも不機嫌そうな顔つきだった。それが要を見つけるとパッと笑顔になる。その瞬間が見たくて、何度も古瀬の教室に足を運んだ。

「あいつって、すげえ二重人格だよな」

 小学校から一緒だった友達の妻夫木が古瀬をそう評した。

「古瀬は人見知りなんだよ」
「そうかなあ? 猫かぶりって言うんじゃない? 上村がいないときの古瀬が、本物の古瀬だと思うけど」
「本物の古瀬って?」
「あいつ、短気じゃん。絡まれたらすぐ手出すし、女子に鬱陶しくされたらブスだのなんだの容赦ないし。上村が思ってるほど、おとなしい奴じゃないよ」
「あっはは、古瀬がそんなことするわけないだろ。妻夫木の勘違いだよ」

 笑い飛ばすと、妻夫木は憐れむような呆れるような顔で要を見た。なにを言っても無駄だと悟ったように「ま、そのうち上村もわかるよ」と諦めの溜息をついた。

 そんな話、要が信じるわけがなかった。古瀬は同性から嫉妬されやすい男だと思いこんでいた。実際、そういう部分もあったので、要の思いこみは砕けなかった。

 前に一度、男同士の恋愛について、どう思うかと古瀬にきかれたことがあった。ギクリとしながら素知らぬ顔でありえないと否定した。お前を恋愛対象としては見られないと。それ以外言う言葉がなかった。

 女子と接することも苦手としている奥手な古瀬が、男同士の恋愛に興味を持ったことは意外だった。誰かに何か吹きこまれたのだろう。

 何年経っても、要もなかで古瀬は純真無垢であり、守り慈しむ存在だった。

 それなのに。

 いつもの古瀬のスキンシップはクリアできた。心頭滅却の精神でやましい気持ちなど浄化できる術をこの数年で育てた。だが、この日は無理だった。

「……要のすごく固くなってきたよ」

 要の一物を古瀬が握りながらそんなことを耳に吹きこんだのだ。堆積した欲望に火花を落とされたも同然。要は古瀬に襲いかかった。古瀬は泣いて痛がった。

 それを見て罪悪感はわかなかった。愛しい、と。ただその思いをぶつけた。自分がこんな冷酷無比な人間だったのかと、要自身初めて自覚した人格だった。

 優しい古瀬は強/姦した相手に「このくらい平気」と微笑んでみせた。菩薩か。

「俺も、要のこと好きだもん。ぶっちゃけ嬉しい。ちょっと予定と違ったけど……、今度はちゃんと準備してしようね」

 罪悪感を抱かせないために古瀬はそんな嘘をついた。仏か。泣きそうになった。

 古瀬が股の間を拭うティッシュがチラリと見えた。白い液体と赤い液体が付着していた。それを見た瞬間、窓から飛び降りようと思った。そうしなかったのは、外へ遊びに行っていた妹の華が「ただいまー!」と元気よく帰って来たからだ。

 夕飯の支度がまだだ。こんなところを妹に見せるわけにはいかない。我に返った要は床に落ちていた制服を拾い「急げ」と古瀬に投げつけながら自分も服を着た。

「お前は帰れ」

 と部屋から追い出したことをあとになってから酷く後悔した。いくら慌てていたからと言って、あれはない。やることだけやったら女を追い返す最低なヤリチンカス野郎みたいじゃないか。合意を得ていないから、それよりもっと悪い。

 死んで詫びよう。その前にこうなったわけを伝え、きちんと謝罪してから死のう。天国の母さんに顔向けできない。いや、俺は死んだら地獄行きだ。

 その夜、要は一睡もできなかった。



 いつも朝迎えに来る古瀬が今日はこなかった。当たり前だ。強/姦した相手の顔なんか見たくないに決まっている。あの細い体に相当な負担をかけた。繊細な古瀬には耐えられないような仕打ちだ。

 顔を合わせずらかったが心配だったので古瀬の家のインターフォンを鳴らした。古瀬の母親が出た。

『あっ、要くん? 透から連絡きてない? 今日あの子熱出しちゃって学校お休みなの』
「熱?! 大丈夫ですか?」
『大丈夫、大丈夫。熱はあるけど、本人は元気だから』

 熱が出たのは昨日のあれのせいだ。要は母親に「すいませんでした」と詫びてから学校へ向かった。

 下駄箱で靴を履き替えていたら、古瀬と同じクラスの女子が「今日、古瀬は?」と声をかけてきた。名前は確か伊木。古瀬につきまとう姿をよく見る。古瀬は見た目がいいから女の子にモテる。その古瀬を昨日は自分が女の子にしてしまった。う、と要は自分の胸を押さえた。

「大丈夫?」
「俺は大丈夫。古瀬は今日、熱が出て休みだよ」
「珍しいね。お見舞い行こうかな」
「病人に迷惑だろ」

 もっともらしいことを言ったがただの嫉妬だ。誰も古瀬に近づけたくない。人見知りの古瀬が気を許せる相手は自分一人でいい。

「案外、ただの仮病かもよ」

 伊木は笑った。古瀬がそんな姑息なことをするわけがない。古瀬のことを何も知らない。わかってない。そんな奴ならなおさら、古瀬には近づいて欲しくない。

 学校にいる間、ずっと古瀬のことを考えていた。昨日のこと。これまでのこと。この先のこと。死んで詫びてもいいと昨日は思っていたが、そんなことをしたら優しい古瀬は気に病むかもしれないと思い直した。

 土下座でもなんでもする。慰謝料を払えというなら、この先何年かかっても払う。殴られるくらいなんでもない。死ねと言われたら、その時は死のう。

 伊木には「迷惑だろ」と言ったが、放課後になると要は古瀬の家へ寄った。古瀬のお母さんが出てこない。ということは今日は仕事の日のようだ。家には古瀬一人。好都合だった。

 もう一度インターフォンを鳴らした。しばらくして中からドタドタと足音が聞こえ、玄関の戸が勢いよく開いた。

「要! 来てくれたの?」

 おでこに冷却シートを張りつけた古瀬が、いつもの子犬みたいな笑顔で駆け寄ってくる。昨日のことなんかなかったみたいに。要はまたう、と胸を押さえた。罪悪感で心臓が痛い。

「熱出たんだろ。大丈夫か? 一応ポカリとかアイス買ってきたけど」
「ほんとに? ありがとう、要。今日親が仕事だからドラッグストア行って薬とか買ってきたんだけど、アイス買うの忘れちゃってさ。一緒に食べようよ。入って入って」

 熱い手が要の腕を掴む。昨日繋がった時のことを思い出して、要は顔を赤くした。

「その、あっちは大丈夫か? 昨日、俺、無茶なことして……本当に悪かった」
「……そのことについて、話もあるし。ほら、要、入って」

 こくんと頷いて要は足を踏み入れた。戸が閉まる。日の光が遮断され、薄暗くなった玄関で、古瀬がにんまりと笑ったことに、要は気付かない。



 古瀬の部屋に入るなり、要は土下座した。

「昨日はごめん! 煮るなり焼くなり、好きにしてくれ!」

 ギシッとベッドの軋む音がした。古瀬はベッドに足を組んで座った。

「昨日はほんとにびっくりしちゃった」
「古瀬にあんなことされて、我慢できなくなったんだ。古瀬のせいだって言ってるんじゃない! もちろん俺が悪い! ずっと好きだった相手にあんなことされて、理性がもたなかった」
「俺のこと、ずっと好きだったの?」
「ああ。初めて見たときからずっと。お前を守ってやらなくちゃって思ってたのに、まさかこの俺がお前を傷つけるなんて……殴るなり蹴るなり、お前の気が済むようにしてくれ」

 額を床に擦りつけた。

「お尻、すっごく痛かったんだよ」
「ごめん! お前が今日熱出たのも俺のせいだ」
「ほんとそうだよ。なんの準備もなしにさあ。あれ、強/姦だからね」
「警察につきだしてくれ。お前が死ねって言うなら死ぬ。本当に後悔してるんだ」

 じわっと目が熱くなり、どっと涙が溢れてきた。こんなに涙が出るのは母親が死んだ時以来だ。床を汚しちゃいけないと思って鼻を啜りあげた。

「要?! 泣いてるの?!」

 ベッドから古瀬が飛びおりてきた。肩に腕をまわされて、抱き起こされる。要の泣き顔を見た古瀬は顔を綻ばせた。

「意地悪してごめんね。ちょっとだけ、お仕置きしたくなったんだ。だって俺が下だなんて、想定外だったんだもん。どう考えても要が下でしょ。こんなにかわいいのに」

 要の頬を両手で挟んで古瀬が顔を近づけてくる。唇が重なる。上唇を舐められて要は口を開いた。すぐさま熱い舌が入ってきた。ぬるりと歯を舐められる。いやらしく舌にからみつく。歯茎をなぞられ、唾液を送り込まれた。

 要はショックで涙が止まった。

「なんで俺がこんなことするんだって思ってる?」

 至近距離で目を合わせながら古瀬が問う。要は茫然と頷く。

「要と同じ理由だよ。俺も我慢できなくなった。理性の限界。ずっと要が好きだった。俺の場合、気付いたのは中学入ってからだったけど、長さなんか関係ないよね。ようは思いの強さだなんだから。それは要に負けない自信があるよ。ドラッグストアでコンドームとローション買っておいたんだ。熱出てんのになにしてんだって思わないこともなかったけど、要のためを思ったらこのくらいなんでもないよ」

 とニコリと笑う。

「古瀬、俺のことが、好きなのか……?」
「好き好き、大好き。ほら、これが証拠」

 要の手を取り、古瀬は自分の股間へ押し当てた。盛りあがって固い。要はぎょっとなった。

「中/学生のときは、要のそばにいるときほとんど勃起してたと言っても過言じゃないよ。高校生になってさすがに落ち着いたけど、いつでもこの通り。ほんとにレ/イプされた相手に、こうはならないでしょ?」
「ほんとに?」

 声が震えた。古瀬は優しく微笑みながら頷いた。夢みたいだ。昨日は窓から飛び降りて死のうと思っていたのに、まさか両想いだったなんて。嬉しさと安堵、そしてまた湧きあがる罪悪感から要はボロボロと涙を零した。

「ほんとにごめん、俺、お前にひどいこと……っ」
「まあ、やり方はあれだったけど、俺にはひどいことじゃなかったよ。嬉しかったって昨日も言ったじゃん」

 古瀬は優しいから、あの言葉は自分のためを思っての嘘だと思っていた。

「もー、泣くなよ。まったくどっちが泣き虫なんだか。ほんとに要はかわいいなあ」

 古瀬に頭を抱きかかえられた。拒絶されて当然の腕のなかにいる。信じられない。あんなにひどいことをしたのに、古瀬はそれを許すどころか嬉しかったとさえ言ってくれるのだ。天使か。

「じゃあ、今日は俺の番だよね」

 要の肩に古瀬がぽんと手を置いた。

「俺の番?」
「今度は俺が要を抱く番」
「──えええっ?!」

 思わず古瀬の胸を押し返していた。古瀬が眉を寄せる。

「俺の好きにしていいんでしょ? 気の済むようにしてくれって、さっき土下座してたじゃん」
「そ、それはそうだけど……! お、お前が俺を?!」
「そんなに意外? 要は俺のこと買いかぶり過ぎだと思うよ。っていうか、夢見過ぎ? 俺だって男なんだよ。性欲の塊。要に抱きついたり触ったりしてたのって、全部下心だからね」
「う?! 嘘だ……ッ」
「ほんとほんと。今日は要を犯るつもりで学校終わるの待ってたし。要の性格考えたら、絶対謝りに来るだろうと思ってたから」

 ドラッグストアの袋からローションとコンドームを出し、古瀬はにこっと微笑んだ。

 本当に買ってた! しかもそれを要に使うという。要は眼前に迫りくる古瀬を見上げてゴクリと唾を飲みこんだ。

 獲物を前にした肉食獣のように古瀬が目を細め唇を舐める。

「逃がさねえからな……、要」

 誰?!

 要は目の前にいる人物が誰だかわからなくなった。





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