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勝手にやってろ(2/2)

2018.02.23.Fri.
<前話はこちら>

 大谷君と仲直りできないまま下校時間になった。それまで何度か僕のほうから話しかけてみたけどちゃんと返事はしてもらえなかった。いやらしいことを言う僕のことが嫌いになったのかもしれない。

「部活、頑張ってね」

 教室を出る前にもう一度大谷君に声をかけてみた。無言で頷くだけだった。

 悲しい気持ちのまま学校を出て駅に向かう。このまま駄目になってしまったらどうしよう。もう普通に女の子を好きになれる気がしない。大谷君以上の男がいるとも思えない。僕には大谷君しかないのに。

 ホームにやってきた電車に乗り込む。二つ先の駅でたくさん人が乗り込んできた。近くにある体育大学の学生がほとんどだ。僕は車両の奥へと押しやられた。電車が動きだしてから嫌な予感がした。背後から僕にぴたりと密着する人がいる。満員電車とは言え不自然なほどだ。

 しばらくして耳元に荒い息遣いが聞こえてきた。首筋に息もかかる。深く吸いこむ音が聞こえた。僕の体臭を嗅いでいるような音だ。また痴/漢かもしれない。

 後ろの人物から離れるために少し体をずらした。肩先で牽制する。横目に見たらスーツ姿の男だった。

 息は届かなくなったが、尻になにかが当たった。人の手だ。その手は僕の尻を鷲掴み、揉みしだいた。

 なんでこんな最悪な日に痴/漢なんてされなきゃいけないんだ。泣きそうになりながらまた体を動かした。手は追いかけてきた。尻の間に指を伸ばして奥を突いてきた。

「!!」

 僕が体をビクつかせると、近くで「ククッ」と笑い声がした。背後の男だ。抵抗しないと見ると指先に力を入れてグリグリ押してきた。ちゃんと的確に奥のすぼまりを。

 カーブで電車が大きく揺れた。そのどさくさで男は僕の前にも手を伸ばしてきた。僕のペニスの形をなぞり、先端に爪を立てた。

「……ッ……や……やめ……っ」

 亀頭とグニグニと揉まれるとそこが熱くなってきた。尻穴にも指が食いこむ。膝が震えた。見ず知らずの痴/漢なんか気持ち悪いだけなのに、物理的な刺激に僕の体が勝手に反応してしまう。

 助けて誰か……! 大谷君……!!

「ちょっ……! なんだ君は?!」

 背後から慌てた男の声がして振り返った。目の前に大きな壁があった。それは人の背中だった。

「こいつ俺の連れなんで」

 この低い声は大谷君!? ということはこの壁は……!

 大きな背中が振り返り、僕と目が合うと難しい顔で頷いた。

「大谷君、どうしてここに……? 部活じゃ」
「その話はあとだ」

 怒った声で遮られた。痴/漢から助けてくれたんだと喜んだのも束の間、大谷君の怒りを押し込めた表情を見て急に恥ずかしさがこみあげてきて俯いた。

 男のくせに痴/漢に遭うなんて。それを止めさせることも出来ずに、されるがままになっているなんて。挙句、勃たせてしまうなんて。

 大谷君はきっと全部見ていたんだ。そして僕が綺麗なんかじゃないと気付いたんだ。いやらしくて汚らわしい男だと、知ってしまったから怒っているんだ。

 俯く視界が涙で滲む。大谷君に嫌われた。もう僕たちはおしまいだ。

 瞬きを繰り返して涙を散らした。痴/漢された上、電車の中で泣くような女々しい男にはなりたくない。

「降りるぞ」

 ずっと黙っていた大谷君が口を開いた。僕の家の最寄り駅。ちゃんと知っててくれたんだ。

 ホームに降り立った人をやり過ごしたあと、改札に向かって歩き出した。

「大丈夫か?」
「えっ、うん、大丈夫」
「よく痴/漢されるのか?」
「ううん。たまにだよ。満員電車だとやっぱり……隙がある僕もいけないんだけど」
「お前は悪くねえだろ。どう考えても痴/漢するほうが悪い」

 優しい言葉にまた泣きそうになる。話題をかえよう。

「どうして大谷君、電車に乗ってたの? 部活は?」
「お前が心配で部活どころじゃなかった。喧嘩別れみたいになったまんま、明日まで待てねえだろ」
「僕を心配してくれたの?」
「当たり前だろ。お前を傷つけないって決めたのに悲しませちまったからな」
「僕を嫌いになったんじゃないの?」
「なるわけないだろ」
「でも、昼休みとか、さっきだって怒ってたじゃない」
「さっきのは怒るだろ。恋人が知らねえおっさんに痴/漢されたんだぜ。昼休みのは……」

 口ごもると大谷君はガシガシと頭を掻いた。

「あれはただの八つ当たりだな。こっちは必死で我慢してんのに、お前が煽るようなこと言うから、理性ぶっ飛びそうでよ」
「どういうこと?」
「この際だからはっきり言うけど、俺、お前の事初めて見た一年の時からぶち犯してやりてえってずっと思ってんだぞ。お前の穴にちんぽ捻じ込んでハメまくってやりてえって、毎日そればっかだ」
「うそ!」
「引くだろ? 嫌だろ? ただでさえ細っこいお前の体に俺のちんぽなんか入れたらぶっ壊れんだろ。だから部活で発散して、朝晩お前をオカズに抜いて、なんとか堪えてきたってのに」
「どうして我慢する必要があるの?」
「だからお前が大事だから……!!」
「大谷君がグズグズしてるから、さっきのおじさんにお尻の穴まで触られたんだよ!」
「なに?!」

 大谷君は目を吊り上げた。もういなくなった電車を追って線路の彼方を睨みつける。

「野郎……やっぱボコボコにぶん殴ってやりゃよかったな。お前が恥ずかしい思いすんじゃねえかって遠慮すんじゃなかった」
「僕、知らない人に触られるのやだよ」

 そっと大谷君の手を握った。

「触って欲しいのは大谷君だけなのに」
「井上……」
「家まで送ってくれる? まだ親は二人とも仕事だから、誰もいないんだ」

 ゴクリ、と大谷君が咽喉を鳴らす音が聞こえた。



 家までの道のり、大谷君は言葉少なく緊張している様子だった。僕の部屋に案内した時も「綺麗に片付いてるな」ってぎこちなく笑った。

 大谷君に抱きついた。踵をあげて口を合わせた。舌を滑り込ませ、奥で縮こまってる大谷君の舌を吸い出した。いつもみたいに絡めあっただけで僕のペニスは勃った。

「触って、大谷君」

 それを大谷君の太ももに押しつけた。僕の腹に当たる大谷君のものもしっかり立ちあがっている。嬉しい。

 僕たちはお互いのペニスを扱き合った。

「舐めてあげる」

 大谷君の大きな体をトンと押した。簡単にベッドに倒れ込んだ。馬乗りになり、ズボンとパンツを脱がせた。ブルンッと飛び出したペニスを握った。熱くて硬くて太くてグロテスク。だけどとても愛おしい。

 舐めて、咥えて、しゃぶった。

「ああ……はあっ……はあ……」

 気持ち良さそうな声が聞こえてきた。僕ははりきって口を動かした。

「もういい……っ……今日はやばい、すぐイキそうだ……」

 いつも人を早漏呼ばわりする大谷君が一分ももてないなんて愉快だった。

「まだイッちゃ駄目。今日こそ僕のなかに出してもらわなくちゃ」
「でも、井上……」
「僕は大谷君が思うような綺麗な人間じゃないんだ。スケベでエッチでいやらしくて汚れてる。ごめんね、幻滅した?」
「いや、お前が一番綺麗に見える時は、スケベなことしてる時だからな。発情してフェロモンでまくりでめちゃくちゃエロい」
「じゃあ今の僕、綺麗?」
「ああ。見てるだけでイキそうなくらい、綺麗だ」
「大谷君もすっごくエロくてかっこいい」
「そんなこと思うのお前だけだぞ」
「大谷君は誰にも渡さない。僕だけのものにする。だから、僕が大谷君を犯すんだよ」

 布団の下に隠しておいたローションを取り出し、大谷君のペニスにたっぷり垂らした。手で全体になじませたあと、尻にあてがい、ゆっくり腰をおろした。

 口で感じる以上の大きさが僕の尻穴をこじ開ける。まだ亀頭も入っていないのにすでに限界まで開いている。

「無理するなよ」
「大谷君の、おっきくて太くて熱くて、僕大好きなんだよ……っ」
「俺のちんぽ好きか?」
「好き……、大好きっ……ぅん……ぁ……ッ……」
「いつもうまそうにしゃぶってくれるもんな」
「でしょ……? あ……あ、はあっ……あ、入……った……ッ…」

 亀頭を飲みこみ、刺し貫かれるような苦痛の中なんとか竿も収めた。僕の尻が大谷君の腹に乗っている。足の力を抜くと自重でさらに深く入り込み最奥を圧迫される。それが少し恐い。

 大谷君のお腹に手をついて腰を前後左右にグラインドさせた。腹を掻きまわされるような感覚に顔が歪む。

「大丈夫か?」
「前立腺っていうのが……ある、らしいんだ……そこに当たれば僕も気持ちよくなるから……っ」

 男同士のセックスはネットで調査済みだ。ただ実践となると難しいだけで。

「ちょっと動くぞ」

 僕の背中に手を当て、大谷君がゆっくり体を起こした。向き合うように座った格好を経て、今度は僕が下、大谷君が上になった。

「そんな奥じゃねえだろ」

 ズルリと大谷君が引いていく。やっと入れたものを抜かれるのかと焦ったが、亀頭を残したところで止まり、小刻みにまた中に入って来た。

「このへんか? 案外わかりにくいもんだな」

 前立腺を探して大谷君のペニスが直腸を擦りあげる。

「大谷君、前立腺知ってるの?」

 まさか僕の前に男と?!

「お前を初めて見た一年の時にとっくに調べてあんだよ」

 僕より先に大谷くんがそんなことを調べていたなんて驚きだ。その姿を想像したらちょっと可笑しい。

「あっ……大谷君、そこかも……」
「どこ? ここ?」
「あっ、うん、たぶんそこ」
「……ああ、確かにちょっとポコッとしてるな」

 場所がわかると大谷君はそこめがけてペニスを動かした。小さく刻むような繊細な動き。大谷君の性格を考えたらきっともっと大胆に動きたいはずなのに。

「んっ、あっ、変な感じっ」
「痛い?」
「違くて……変っ……ぁあ……なに、これ、変だよ、大谷君……っ」

 苦痛で萎れていたペニスが触ってもいないのに立ちあがる。それどころか痛いくらい勃起した。

「ここ、硬くなったぞ」
「あっ、だめっ、ああんっ」

 前立腺をゴリゴリやられてあられもない声が出た。

「気持ち良くなってきたみたいだな」
「やあっ、あ、あんっ、だめ、動いちゃだめっ」
「気持ちいいんだろ。すごくエロい顔してるぞ」
「あはあっ、ああっ、あぁんっ、やだっ、おちんちん当てないでっ」
「お前の好きな俺のちんぽだぞ」
「大谷君のおちんぽ…好きぃ……! あっ……やぁあっ、だめっ、あっ、あはぁんっ」

 いつの間にか大谷君の腰の動きが大きくなっていた。ローションだけじゃないぬめりも感じる。

「そんなにしちゃやだ! あっ、あんっ、大谷君だめっ」
「お前のちんぽもガッチガチじゃねえか」

 大きな手が僕のペニスを軽く扱いた。

「いやあっ、しごいちゃだめぇっ! あぁあっ、出ちゃう、イッちゃうぅーっ!!」

 ビクビクッと体が震えた。ペニスからは勢いよく精液が飛び出した。

「いつもより早いんじゃないか?」
「はあ……はぁっ……きっと、大谷君が僕のなかにいるからだよ……」
「もうきつくねえのか?」
「うん……変なこと言うとね、大谷君を感じられて安心してる……ずっとこのまま繋がってたい」
「俺も。お前のなかは温かくて気持ちよくて、ずっとここにいたいよ」
「嬉しい。大谷君が好きな時にいつでもきて」
「お前も俺のちんぽが欲しくなったらいつでも言えよ。お前相手ならすぐ勃つから」
「じゃあ、もっと動いて欲しい。今度は大谷君が僕のなかでイッて。いっぱい中に出して」

 大谷君はふと真面目な顔つきになると「今でのイキそうになった」と呟いた。

「お前が俺と同じくらいスケベな奴で良かったよ」
「これからいっぱいエッチしようね」
「ああ。動くぞ」

 早くしても大丈夫だとわかると、大谷君は大胆に腰を動かした。パンパンと音を立てて僕にぶつけてくる。尻に当たる玉が痛いくらいだ。激しい出し入れにまた僕も勃起した。

「気持ちいいか?」
「いいっ……はあぁん、そんなに擦られたら…またイッちゃう……!」
「俺もそろそろイキそうだ」
「一緒に…ッ…中に出して! 大谷君の精子、僕にちょうだいっ!!」

 大谷君の動きが止まった。その直後ビュービューッと熱いものがたっぷりと僕の中に注がれた。念願のセックスと、生中出し。僕たちは正真正銘、恋人になった。





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勝手にやってろ(1/2)

2018.02.22.Thu.
<前話「やってられない」>

 鏡に映る自分を見つめる。小さい頃はよく女の子に間違えられた。オカマだなんだとからかわれるこの顔が嫌いだった。「かわいい」「きれい」を褒め言葉だと思って言ってくる人たちも嫌いだった。

 でも今は違う。そう言われると嬉しくなる相手ができた。体が大きくて顔も性格も男らしい大谷君。少し乱暴だけど僕は彼が大好きだ。

 以前は僕の容姿と頼りない性格のせいで大谷君からいじめられていた。恥ずかしくて屈辱的で嫌悪感しかなかったのに、大谷君の男らしさを見せつけられていたらいつの間にか羨望を抱くようになり、憧れが好意にかわっていった。

 汗と体臭の混じる逞しい体から発せられる熱は僕の体まで熱くした。僕の細い首なんて簡単に折ってしまいそうな大きな手で触られると甘美な感覚に包まれた。体どころか、僕の尊厳や命まで、すべてを大谷君の手に委ねてしまいたい、そんな思いを抱くようになった。

 大谷君のペニスを舐めろと言われた時は嫌だった。その大きさは僕と比較にならなくて、色も大きさも正直グロテスクだった。

 嫌々舐めた。臭いがきつかった。しょっぱい味も吐き気がした。咥えるよう言われてその通りにした。亀頭だけで口の中に隙間がなくなるくらいの大きさだった。

 辞書みたいな分厚い手で頭を押さえられ、咽喉の奥まで押し込まれた。嘔吐きながら頭を上下に動かした。驚いたことに大谷君のペニスはさらに太さと硬さを増した。血液が集中しているのが口の粘膜で感じ取れた。とても熱かった。これぞ男の象徴という雄々しさだった。

 精液の量も驚きの量だった。最初は口の外へ出して射精していたからその量を目の当たりにすることができた。僕が一飛ばしで終わるところを、大谷君は二度、三度と飛ばした。10ml、もしくはそれ以上あったかもしれない。

 何もかもが、僕以上。いや平均の男子高校生以上だと思う。

 腕っぷしも強かった。大谷君にいじめられている僕を、他の奴もいじめようとしてきたことがあった。大谷君はそいつを打った。太い腕が軽くしなっただけで、そいつの体は吹っ飛んでいった。思えばあれが、大谷君が僕を守ってくれた最初の出来事だった。

 大谷君に倣って僕をからかったりいじめようとしてくる奴は他にもいた。そのたび大谷君は暴力という方法で僕を守ってくれていた。あの頃はその圧倒的な力の差と、躊躇ない暴力に怯えるだけでそれに気付かなかった。

 いじめられている僕を大谷君から助けようとしてくれた奴もいた。そいつのおかげで僕は自分の本当の気持ちに気付き、大谷君の気持ちも知ることができた。僕たちは恋人同士になった。

 大谷君は今までの罪滅ぼしだととても優しくしてくれる。毎日とろけたような顔で僕を見つめては「かわいい」「好きだ」と言ってくれる。僕も同じようにとろけた顔で頷く。

 今まで僕にさせてきたことを、今度は自分がしてやるんだと、僕の体を愛撫する。

 僕を気持ち良くさせるために長い時間僕の体をまさぐる。射精まではいかない快楽を与えられ続ける。ソファみたいな大谷君の膝の上で僕は体をくねらせ、息を乱れさせ、物欲しそうに大谷君を見上げて、甘えた口調でイキたいと訴える。その時見せる大谷君の嬉しそうな顔が好きだ。

 肉食獣みたいな大谷君の大きな口に僕の小さなペニスが咥えこまれる。アイスキャンデーでも食べてるみたいに口のなかで転がされて僕は果ててしまう。もちろん大谷君は僕の精液を飲む。おいしいぞ、おかわりが欲しい、なんて言う。

 僕を傷つける言葉も、無理強いもない。ひたすら僕に優しく甘い。あの乱暴者の大谷君が。

「これからはお前の嫌がることは一切しない。お前を大事にして大切にする。俺の宝物だ」

 そう言って僕を抱きしめてくれる。壊れやすい陶器でも扱うかのような優しい手つきで。

 僕が大谷君のものをしゃぶろうとしても「お前はもうそんなことしなくていい」と言う。僕がやりたいのだと言ってやっとやらせてくれる。前は口に出されていた精液も今は必ず外へ出す。

「僕は平気だよ。ううん、飲みたい」
「いいんだ、舐めてくれるだけで。お前は本当に綺麗な人間だ。綺麗なお前にこんなもの飲ませられない。あんな酷いことをしてた自分が許せねえんだ」
「大谷君は僕のを飲んでくれるじゃない」
「お前のは小便も綺麗だからな。俺、お前の小便だったらほんとに飲めるぞ」

 なんて僕を赤面させることを言って。

 大事にしてくれるのは嬉しいけど、扱いがだんだんお姫様かなにかと同じになってきてる気がする。僕はそこまで綺麗でもなければ純情でもない。大谷君とキスしただけで勃起するし、家では大谷君を思って自慰だってする。なんだったら頭のなかそればっかりで、一日中だって大谷君とイチャイチャしていたい。

 鏡に映る僕は欲求不満の顔。自分でもぞっとするほど女の顔だ。だから最近電車で痴/漢される回数が増えたんだろうか。

 息を吐いた。熱い息だ。

 ※※※

 最近、昼休みは校舎裏の非常階段で過ごしている。付き合う前はクラスの中で辱めを受ける地獄の時間だった。大谷君に触られることは気持ちよくても、それを他のみんなに見られることは嫌だった。

 今は僕たち以外誰もいない。好きな時に大谷君に触れることができる。

 お弁当を広げる前に大谷君の太い首に腕をまわし、口に吸い付いた。柔道部の練習があるから大谷君と二人きりになれるチャンスは学校の休み時間しかない。

 大谷君の手が僕の背中にまわされる。熱くて少し汗ばんでいるのが制服のシャツ越しにもわかる。

 僕が口を開けば舌が入ってくる。大きい蛭みたいな舌だ。ヌルヌルと僕の中を動きまわる。口蓋をなぞられると体から力が抜ける。誘うような甘ったるい息遣いを漏らしながら、大谷君の股間に手を伸ばした。そこはもう硬く膨らんでいた。

 ベルトを外し、チャックをおろす。パンツのゴムを引っ張ったらブルンと亀頭が飛び出した。先端を捏ねるように撫でた。すぐ先走りが出てきて手の平が濡れた。滑りのよくなった手で竿を握り上下に扱いた。

「気持ちいい?」
「ああ、気持ちいいぞ」

 ちょっと目を伏せて、頬を上気させて、口を半開きにする。大谷君のこの表情が好きだ。もっとこの顔を見たいから頭を下げた。

「井上っ」
「やりたいの。僕にもさせて」

 先端の汁をペロッと舐める。最初は嫌で仕方がなかったのに、いまはもっと舐めたい。独特の味と臭気とのどに絡む感じが吐きそうだったのに、好きだと言う言葉以上に気持ちを伝えたくて飲んであげたいと思う。それ以上のことも──。僕は顔だけじゃなく、心まで女に近づいているのかもしれない。

 ぱくりと咥えた。あいかわらず大きい。ドクドク脈打つ血管は、大谷君も興奮している証。何度も触ってきた僕だからわかるが、まだ余裕がある。これからもっと太く逞しく成長するはずだ。

 涎を垂らしながら顎が外れるほどの大口を開けて大谷君のペニスを口で扱いた。溢れる我慢汁を啜ったらいやらしい音になった。僕もズボンの前が窮屈になる。

「井上、もういい。口をはなせ」

 もうすぐ出そうなのだろう。僕は首を横に振った。

「充分だ。もういいから。早く」

 嫌だ、とまた首をふる。

「いい加減にしろ、怒るぞ」

 そう言いながら困った声色だ。少し悪い気がしたが、また首を振った。

「井上っ……頼む、はなしてくれ……!」

 僕を引きはがそうと肩を掴まれた。僕を傷つけまいと加減する手では思い通りにはできない。僕はさらに深く咥えこんだ。咽喉の奥まで入り込んだ大きな存在感に目に涙が滲んだ。苦しくても僕の口の中でイッて欲しかった。

「ああ、井上っ、頼む……ああ、あ……だめだ、イッちまう、井上……!」

 ドクンと大きく脈打った。口のなかでペニスがのたうち嘔気がこみあげてきたが耐えた。咽喉の奥に熱いものが注がれる感覚があった。二度、三度、四度も吐きだした。

 少し萎んだペニスがズルリと口の中を動いた。隙間が空いて口で大きく息を吸った。精液の匂いがした。咽喉が粘ついた。久し振りの大谷君の精液。僕は大谷君の腰にしがみつき、体をブルッと震わせた。

「悪い、井上。どうして無茶をするんだ」
「無茶、なんかじゃ……ッ」
「泣いてるのか?」

 僕の声が震えているのを泣いていると勘違いして、焦った大谷君が僕の体を抱き起こした。心配そうに顔を覗きこんでくる。

「大谷君……僕、イッちゃった……」
「……え? 舐めただけで、か?」
「大谷君が僕の口でイッてくれたのが嬉しくて、大谷君の精液でイッちゃった」
「嘘だろ」
「ほんとだよ。確かめて」

 膝で立ち、ズボンをおろした。パンツにできる染み。大谷君は恐る恐るといった感じで僕のパンツを脱がした。ペニスの先端から糸を引いて精液が垂れる。それを見た大谷君は感極まった顔を弾きあげた。

「お前はなんてかわいいんだっ」

 そう言って四つん這いになると僕のペニスについた精液をベロベロと舐め始めた。くたりとしていたものが、その刺激でまた立ちあがった。

「今度は俺がしゃぶってイカせてやる」
「う、うん……」
「嫌なのか?」

 煮え切らない僕の返事に不安そうな顔をあげる。

「そうじゃなくて、僕もまた大谷君をイカせてあげたいの。僕だけはやだ」
「じゃあ扱いてくれるか」

 決して口でやれとは言わない。僕の望みもそっちじゃない。

「出して欲しいんだ……」
「?」

 意味がわからず大谷君は首を傾げた。

「僕の中に……僕のお尻の中に入れてイッてほしい」
「なっ!!!!」

 目がこぼれ落ちそうなほど見開いて大谷君は大声をあげた。

「なっ、なに言ってんだ! 俺はお前にそんなことはしないぞ!」
「僕たち付き合ってるんだよ? セックスしたい、僕を抱いてよ!」
「セッ……そんなことをお前が言うな! 汚れる!」
「僕は綺麗じゃない! ただの男だよ! 大谷君とエッチなこといっぱいしたい!!」
「それ以上言うな!」
「嫌だ! このおっきなおちんちん入れてよ! 僕を抱いて! 僕が好きじゃないの?!」
「好きに決まってるだろ!! 好きだからお前を大事にしてるのに、どうしてわからないんだ!」
「大谷君こそどうしてわかってくれないんだよ! 僕は大谷君のだったらしゃぶりたいし、精液だって飲みたい! 大谷君が言うなら大谷君のおしっ/こだって飲めるよ!」

 大谷君はハッと僕を見つめた。ワナワナと唇を震わせたあと、ギュッと目を閉じた。

「すまん、井上……俺のせいだな、俺が酷いことをしてきたせいで、そんなこと……」
「違うよ! 大谷君が好きだからだよ! どうしてわかってくれないの?!」
「お前こそなんで俺の気持ちがわかんねえんだよ! 俺はもうお前を傷つけることはしないって誓ったんだ!」

 大声で怒鳴ると大谷君は僕を押しのけ立ちあがった。

「どこ行くの?!」
「冷静になれ。俺も頭冷やしてくる」

 大谷君は僕に背を向けると非常階段からいなくなってしまった。




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