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雨の日の再会(2/2)

2017.11.21.Tue.
(前話はこちら)

 結局、仕事が終わるまで生田のことが頭から離れなかった。高校生の頃にした色々なこととか、今頃可愛い彼女とセックスしてんのかな、とか。

 俺もそうだけど、あの頃生田はまだ童貞だった。今はもう童貞じゃないんだろうな。もしかしてまだ童貞だったりして。とか。そんなくっだらないことばかり考えていた。

 仕事が終わり、従業員通用口へ向かう。意外な再会にずっと胸がザワザワと騒ぎっぱなしだ。普通に帰る気になれない。いつもと違うことをして気を紛らわせたい。

 今日は一人で飲みに行こうか。いつもの安酒じゃなく、ちょっと値の張る……お姉ちゃんのいる店とかでもいいかもしれない。

 そんなことを思いながら守衛さんに挨拶をして店を出た。駅に続く角を曲がる。柱にもたれて立っていた男が俺を見つけて手をあげた。

「お疲れ」

 親しみのこもった笑顔で近づいて来るのは生田だ。

「お前、なんでここに……」
「待ってた。良かったー。ラストまでだったらかなり待つなーって思ってたから」
「だからなんでここに……彼女は?」
「振られた」
「はあ?」
「その話はいいから。このあと時間ある?」
「ねえよ」

 咄嗟に嘘をついた。だって、生田のことで頭いっぱいになってる時にいきなり目の前に現れて「待ってた」とか言われたらどういう態度取ればいいかわかんなすぎる。

「デート?」
「ちげえよ」
「じゃ何」
「別に。飲みに行こうと思ってただけ」
「誰と?」
「……一人で」
「じゃ今度一緒に飲みに行こう。奢るし」

 言うと生田は俺の肩に腕を回してきた。生田に押されるように足を踏み出す。

「村上って彼女は? 結婚はしてなさそうだけど」

 俺の左手を見て生田が言う。

「彼女も嫁もいねえよ」
「なら良かった。約束、覚えてるよな?」
「約束?」

 さっき会った時に何か約束したっけ? やり取りを思い出してみるがそれらしきものはない。

「次は全部使うって約束。ローション、いっしょに買いに行く?」

 生田の言葉の意味がわかってさらにパニクッた。高校時代の約束のことを言っているのだ。生田と会った最後の日、今度はスカート、マニキュア、口紅、全部使ってやろうという約束を。

「なっ、なに言って……!」
「駅の裏手、ちょっと行ったとこにラブホあったよな。そこ、いこっか」
「ほ、本気かよ?!」
「やだ?」
「やじゃないけど」

 何も考えず即答したあと急激に顔が熱くなった。前にもこんなことがあった気がする。

「ラブホならローションあるよな。スカートはないけど」
「別に……必要ないだろ」

 肯定的な俺の言葉に生田は笑って頷いた。

 まじか。数年ぶりの予期せぬ再会を果たした直後、心の準備も出来てないのにラブホに行くことになっちまった。もう俺たちは大人だ。素股なんかじゃ終わらないに決まってる。ついにやってしまうんだ。本番を!!



 生田とこれからやることにドキドキしすぎていて男同士でホテルに入る羞恥や抵抗感などすっかり忘れていた。

「さきシャワー浴びる?」

 と生田に訊かれなんとなく頷いた。気が付いたら腰にバスタオルを巻いてベッドに座っていた。記憶が飛ぶほど緊張と興奮がすごい。

 同じくシャワーを浴びた生田が戻って来た。前は図体がでかいという印象しかなかったけど、こうしてみると逞しいというか羨ましいというか男として嫉妬するというか、まぁなんだ、つまりはエロいよな。直視できずに俯いてしまう。

「あった、ローション」

 ベッドに乗った生田から無邪気な声がした。ろーしょん? ああ、ローション。あったんだ。ローション。

「じゃ、素股からする?」

 手に中身を出しながら生田が言った。素股から順番にやってく気かよ。こっちはもう心臓爆発しそうなんだぞ。

「それは……もうやったし……どうせならしてないこと、しよう」
「それもそうだな」

 笑みを濃くすると生田はいきなり俺に覆いかぶさりバスタオルの中に手を入れて来た。むぎゅっとちんこを握る。ローションがヌルヌルする。その手でグチュグチュと扱かれた。

「じゃあ、なにしよっか」

 ハァハァする俺を見下ろしながら生田が呟く。なにってもう決まってんじゃん。

「い、生田のしたいことで」
「いいの?」

 頷いたらバスタオルをはぎ取られた。勃ったちんことそれをしごく生田の手が丸見えだ。なんてエロい光景だろう。

「村上ってほんと、快楽に流されやすいよな。昔っから」
「お前だってっ」
「俺はさー、けっこう我慢と忍耐の人だったよ。雑だったけど計画的犯行だったし。あんなにうまくいくと思わなくて逆にびっくり」
「なっ、なんのことだよ」
「ほんとにまだわかんない?」

 生田の手がちんこから離れたと思ったらその奥をヌルッと触られた。ちんこの奥。尻の間。本来排泄器官のそこ。今日はそこ使うんだと思ってさっき入念に洗った記憶だけは混乱のなか覚えている。

「引っ越しするってわかってから、なんとかしてお前に触る方法はないかって、苦し紛れの策だったんだぜ。スカートめくりから素股っておかしいと思わなかった?」
「え、お、思わなかっ……あ? あっ、あ……」

 指が俺のなかに入ってきた。ツプリ、と一本。ゆっくり奥まで押し込まれる。

「マニキュア塗って扱き合うとか。口紅塗ってフェラとか。普通、男同士でそこまでするか? もしかして、気持ちよけりゃ誰でも良かったってこと?」
「ちがっ……あ、う……生田の、指、がっ……」

 中でグリグリと回転しながら動かされた。解しながら広げているんだろう。そしてそこに生田はちんこを突っ込むつもりなんだ。

「俺だったからってこと?」
「あ、当たり前だろっ……今だって! こんな恥ずかしいこと……お前とじゃなきゃできねえよ!」
「痛い? ちんこ、小さくなってる」
「痛くないけど……初めてだし、やっぱ怖えよ」
「優しくする」

 生田の言葉を聞いてカァッと全身火がついたみたいに熱くなった。優しくする、だって。現実にそんなこと言う奴いるんだ。そんでもって、処女の女の子みたいな自分が恥ずかしい。

「そろそろ入れるぞ」

 生田は俺の膝を両脇に抱え持ち、ぐいと自分のほうへ引きよせた。それだけでもう股間が密着してしまう。

「さすがにもうわかってると思うけど、俺、お前のこと好きだったんだ」
「いいっ、いま言わなくてっ」
「引っ越して諦めたつもりだったけど、やっぱり忘れられなくてたまに村上の画像見て思い出したりしてた」

 俺の画像というと、例のあのエロ画像か。ゆみりんじゃなく、俺をおかずにして抜いてたんだろうか。そうだとしたら、俺と同じじゃん。

「今日、偶然会って、諦めるなんて無理だってわかった。村上だって気付いた瞬間に、抱きしめてキスしてめちゃくちゃセックスしたいって思ったからな。逆に一緒にいる彼女にまったく性欲わかなくて、正直に言ったら振られたしな」
「だからっ、そういうのいま言うなって」

 恥ずかしすぎて両手で顔を隠した。自分が期待していた以上の出来事にどう対処していいかわからない。

「いま言わないと、次、ないかもしれないだろ」
「なんでないって決めつけるんだよっ、また前みたいに急にいなくなる気かよ!」
「お前に振られたらそうなる」
「振らねえよ! いいからさっさとちんこ入れろよ!」
「やる前にちゃんとしときたかったけど……、流されやすいお前じゃ無理か。いいよ。時間かけて俺のこと好きになってもらうから」

 呆れたように、そしてちょっと楽しげに言うと生田はちんこを俺のなかに入れてきた。でっぷりとした亀頭がまずギュウッと押し込まれ、さすがの苦痛を和らげようと体の力を抜くことに集中している俺のちんこを優しく扱きながらゆっくり竿も入れてきた。

「これを耐えられるってことは、ちょっとは俺のこと好きだよな?」

 生田のちんこが中でグングンと動くのを感じる。熱くて硬くて逞しい。そんなもので貫かれているのに、どうしてこんなに幸せを感じるんだろう。これが愛ってやつだろうか。

「俺のこと好きだったから、フェラしてくれたのか?」
「まだそこ? そうだよ、好きだからフェラしたんだよ。ほんとはお前の精子飲みたかったけど、引かれると思ってやめた。あれが今でも悔やまれる」

 これもやっぱり愛なんだろう。生田は俺が好き。ちんこ突っ込まれることが気持ちいい俺も、生田が好きなんだ。俺だってちゃんとわかっている。

「俺も、生田のちんこしゃぶって精子飲んでみたいかも」

 ぎょっと生田は細い目を目いっぱい見開いた。

「お前なに言ってるかわかってる?」
「わかってるよ」
「ああもう! 絶対わかってない!」

 もどかしそうに大きな声を出したあと、生田は俺の腰を抱えなおすとモノを出し入れし始めた。

「痛くないか?」
「気持ちいい……っ」
「お前なあっ」

 俺は正直に答えたのに生田のほうは変な顔つきだ。怒っているようにも、困っているようにも見える。とりあえず俺の体のことを考えてくれたのか、ローションを注ぎ足した。

 滑りがよくなって生田の腰の動きが早くなった。摩擦で中が熱い。

「気持ちい……もっと、なか擦って」

 さっきまであんなにおしゃべりだったくせに今は黙って腰を振っている。だからグチュグチュとか、パンパンとか、セックスのいやらしい音がよく聞こえる。生田の息遣いも荒い。俺も変な声が出る。

「あ、あっ、生田、そこ! そこがいいっ……そこもっとして……!」
「ここ?」
「ああっ、あっあんっ」

 尾てい骨をビリビリっと電気が走ったみたいだった。そこに狙いをつけて腰を動かす生田の顔は元に戻っていた。

 高校の頃より精悍で、男の色気が増した顔。

「俺と付き合ってくれる?」
「それ、俺の台詞だから」
「生田、チューしたいっ」

 ねだったら生田の顔が近づいて来た。ベロチューのあまりの気持ちよさに俺はあっけなく昇天してしまった。





オロチの恋 (2)

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雨の日の再会(1/2)

2017.11.20.Mon.
(「スカートめくり」→「赤い爪」→「ピンクの唇」)

 夕方になって店内のBGMが変わった。どうやら外は雨が降って来たらしい。

 朝に見た天気予報では降水確率は60パーセント。出かける前の空は明るかったから大丈夫だと思って傘をもってこなかった。駅直結の百貨店だから店から駅まで濡れる心配はないが、最寄り駅から家までの道のりを考えると帰りが憂鬱だ。

 しかもあと二時間ほどであがりの時間。止んでいる可能性は低い。

 今日の晩飯は何にしよう。実家を出て早3年。一人暮らしスキルはぜんぜん向上していない。汚部屋だし、洗濯は洗濯機任せ、皺のついたシャツでも平気で着てるし、炊飯器はあるけど米を炊いたのは一人暮らしを始めた頃の数回だけだ。

 見かねた母ちゃんが頃合いを見て掃除をしに来てくれる。そのたびに「早く彼女作りなさいよ」と急かされるのが鬱陶しい。

 大学の頃に一度彼女はできた。おとなしめでかわいい子だった。何度か家に来て掃除や料理もしてくれた。彼女っていいもんだなと実感してたのは俺だけだったようで、突然「村上くんとは合わないと思う」と言われて振られた。

 言われた瞬間は腹が立った。その理由もなんだ、と納得できなかったが、問い詰めて話し合うことを考えたら面倒臭くなって腹立ちは収まった。

 その後も、好きになれそうないい子はいたけど、付き合えたあとを想像したら急に面倒になって、1人のまま25歳になってしまった。
 別に不便も不満もない。洗濯はなんとかなってるし、掃除はたまに母ちゃんがやってくれるし、食事は外食やコンビニで充分。下の処理は雑誌やDVDで間に合ってる。

 不便も不満もないけど、たまに漠然とこのままでいいのかなーってのはある。今日みたいに雨が降ってなんとなく憂鬱な気分の時に、女連れでやってくる客を見たときなんか。

「啓ちゃん、これ似合いそう」

 売り場であがる女の声。新作のニットカーディガンを恋人らしき男に合わせている。若くて可愛い子だ。そんな子に服を選んでもらっている男の顔は後ろ姿で見えない。タッパはある。これで顔も良くて収入も高かったら世の中不公平だよな

「あ、こっちもいいかもー」

 女の子が男の腕を引いて移動した。すかさず男の身なりをチェックする。スーツも時計も靴も安くはないけど高くもないものばかりだ。ファッションにあまり興味がないタイプなのかもしれない。

「啓ちゃんも選んでよ」
「なんでもいいよ」
「誕生日プレゼントなんだよ。啓ちゃんが気に入ったものあげたいの」

 ダサくはないけど垢ぬけてもいない彼氏のために、彼女が服を選ぶなんてのはよく見る光景だ。俺の生活のなかにはないけど。

 困ったように頭を掻く男の横顔が見えた。平均ど真ん中のフツメンで安心する。あれならまだ俺のほうがちょっとイケてるはずだ。なのにどうして俺には若くて可愛い彼女がいないんだろう。

 他に欠点はないか男をまじまじ観察する。彼女は冬物小物を見ているのに、男のほうは興味なさそうにコートを眺めている。結婚したら彼女の尻に敷かれるタイプだろうな。

 あんまりジロジロ見過ぎていたので男と目が合ってしまった。営業用スマイルで軽く会釈する。たいてい目礼を返されて目を逸らされるのに、男は俺を凝視していた。

「……村上?」

 男の口から出て来たのは俺の名前だった。驚いて男の顔を見つめ返した。過去の知り合いファイルをひっくり返して目の前の顔と照合する。ヒットしたのは高校時代のあいつ。

「生田?」

 さっきまでつまんなそうだった男の顔に笑みが広がった。細い目がさらに細くなる。見覚えのある笑い顔。生田で間違いない。

「久し振りだな。最初わからなかった」

 ツカツカ近づいてきて生田が懐かしそうに言う。俺は名前を呼ばれるまで気づきもしなかった。きっとこいつとの記憶を封じ込めたせいだろう。

「ここで働いてるの?」
「うん、まあ」
「俺もこの近くで働いてるんだ。まさかこんな近くで村上が働いてたなんて思いもしなかった。偶然だよな」

 よりによって生田と仕事場が近いなんて最悪な偶然だ。

「あれって彼女?」

 手袋を手に取って見ている彼女に視線をやる。生田も彼女を見て頷いた。

「可愛いじゃん。生田が好きだったゆみりんにちょっと似てる」
「ゆみりんね。懐かしい」

 ゆみりんは語学留学したいと言ってアイドルグループを脱退後イギリスへ渡り、その二年後には現地の青年実業家と結婚したと報道があった。アイドルに興味なんかないのに、生田が好きだったという理由だけでゆみりんの動向には詳しくなってしまった。だが今の口ぶりだと生田はもうゆみりんのファンをやめてしまっているのかもしれない。

 あんなにゆみりんゆみりんと言っていたくせに。

 なんだか腹が立つ。腹を立てたら色々なことを一気に思い出した。スカートを穿いて生田に素股されたこととか、俺にマニキュアを塗ったあと「しごいて」と生田がちんこ出してきたこととか、ピンク色の口紅を塗った生田にフェラされたこととか、69したこととか。

 そしてそのあと俺たちはキスしたんだ。口紅を俺に塗るだけならわざわざキスなんかしなくたっていいのに。

 あの時の唇の柔らかさとか思い出したら、まともに生田の顔を見られなくなった。

「あのあと、どうしてたんだよ」
「あのあと?」
「引っ越したあと!」
「黙って行ったから怒ってる?」
「別に!」
「口調が怒ってる」
「俺には一言くらいあってもいいじゃん」
「村上にだけは言えなかったんだよ」
「なんで」

 なんでだろう、と生田は俺をじっと見た。懐かしむようでもあり、寂しげでもある、物憂げな眼差しだ。そんな目で見つめられたらのどがきゅっと狭まるじゃないか。

 気付くと手袋を見ていた彼女がこちらを見ていた。

「彼女のとこに戻ってやれよ。誕生日プレゼント買ってもらうんだろ」
「村上が見繕ってよ」
「やだよ。よその店で買え」
「そんなこと言って。店員失格だろ」
「うるせえ。仕事の邪魔。いちゃつくならよそでやれ」

 生田を彼女の方へ押しやった。やれやれって肩をすくめる生田が不意に振り返り、俺の耳元に顔を寄せて囁いた。

「そういえば、ローションは買ったくれた?」
「は……? え──あ……っ!」

 何のことか思い出した俺を見届けると、生田はにやりと笑みを残して彼女の元へ戻って行った。2、3言葉を交わすと二人は別の店舗へ移動した。

 それを見送る俺の頭の中ではさっきの生田の言葉が何度も何度も繰り返されている。

 生田も高校時代のあの出来事と最後のやりとりを完全に覚えているということだ。俺だってしっかり覚えている。簡単に忘れられるわけがない。生田も同じということだ。

 もし生田の引っ越しがなくて、あの続きがあったなら。俺たちはセックスしたんだろうか。




見せかけ俺さまくん