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やっぱちょろい(2/2)

2017.05.16.Tue.
<前話はこちら>

 ワンルームマンションの一室に通された。俺の部屋より片付いてるけど、男の一人暮らしって感じの匂いが充満している。

 本田さんは部屋を軽く片付けたらスーツのボタンを外し始めた。それを脱がれたら俺が本田さんに声をかけた意味が消滅してしまう!

「待って!」

 本田さんに抱きついてキスした。呆気に取られる口に舌を突っ込んで、めちゃくちゃに中で動かした。我に返ったように本田さんも舌を動かした。

「スーツ着たままがいいな」
「あ、そういう……? いいよ」

 鼻の下を伸ばした顔はなんでもOKしてくれそうだった。俺はその場に膝をついて、本田さんのベルトに手をかけた。ヤル気になってもらうにはこれが一番手っ取り早い。

 ズボンとパンツをずらしたらすでに半立ちのちんこが出て来た。蒸れたちんこにしゃぶりつく。売り上げのためだと実戦で演技指導を受けたから俺のフェラはなかなかのもののはずだ。

 あっという間に口のなかでちんこが大きくなった。

「うまい、ね……っ……はぁ……っ……」

 早く出したいって感じの、気持ちよさそうな声。

「あたしの中に入れてくれる?」
「もちろん」
「お尻の穴でも?」
「いいよ」

 本田さんは鼻を膨らませて言った。男の娘のアダルトDVDを借りるだけあって、やはりそっちにも興味があるらしい。

 俺はパンツを脱いでから四つん這いになった。

「早く入れてぇ」
「待って、いま入れてあげるからね」

 本田さんの手が俺のスカートをめくりあげる。しばらく無言で、動きも止まる。俺が男だと気付いたのだ。どんな反応をするだろう。酷く俺を罵ってくれ。

「これは……これ……」

 ぶら下がる玉をつん、と指で突く。

「見た目に似合わず立派だね」

 きゅっと全体を手で包みこまれた。握り潰されるのかと肝を冷やしたが、本田さんは優しく揉んでくれた。予想外の行動にこちらがびっくりする。

「あたしが男だってわかって、怒らないの?」
「最初はわからなかったけど、話してたら途中でもしかしたらって気付いたよ。やっぱり、声が」

 必死にか細い裏声を使っていたが、声でバレていたようだ。見た目は女に近づけても声には限界がある。

「どうしてあたしを中に入れてくれたの?」
「ちょうど昨日、男の娘のビデオを見たばっかりだったから。その中の一人に似てるなって思って」

 たぶん俺のことだ。似てるんじゃなくて、本人なんだけど。

「そのビデオ見て、男の娘でもいいって思った?」
「うん。前から興味はあったから。ミワちゃんみたいに可愛い子なら、ぜんぜん余裕かも」

 本田さんはそれを証明するように俺のちんこを握った。

「緊張してるの?」

 俺のちんこは小さく萎れたままだ。

「本田さんがおちんちん入れてくれたら、立っちゃうかも」
「ほんと? じゃあ入れてあげなきゃね」

 俺のケツ穴に本田さんの勃起が捻じ込まれる。更衣室のシャワーで洗いながら解しておいたけど痛くてきつい。ローションを忘れていた。

「ねえ、本田さん、ローションある? 痛くって」
「あっ、ごめん、いま用意するね」

 持ってるんだ。彼女いるのかよ。ちょっとがっかりだ。

 ローションで慣らしたあと、再度挿入してきた。今度はぬるんと入った。

「ああぁんっ、本田さんのおちんちん、おっきいよぉおっ」

 女装してるからこんな言葉も難なく言える。これも五木たちに仕込まれたことだ。

「動いてっ、奥まできてぇっ」

 本田さんは言われた通り腰を振って奥まで突っ込んできた。なかなかのでかいちんこ。存在感がすげえ。

「あたしのケツマンコ、ぐちょぐちょに掻きまわしてぇ! 本田さんのおちんぽでメスマンコにしてぇっ!」
「ミワちゃんはいやらしい子だね」

 俺の腰を抱えもち、本田さんは激しく腰を動かした。カリが俺の中をゴリゴリ抉る。前立腺にもヒットしてちんこの根本へ刺激を送る。

「ああぁっ、あんっ、それ、だめぇ! 気持ちいいのっ、そこおちんぽで擦られるとすぐイッちゃうのぉお!」
「イッていいんだよ」

 本田さんがまた俺のちんこを握る。いまだに小さいままの俺の息子。俺を仰向けにひっくり返す本田さんの動きにも焦りが見える。

 服をたくしあげ、平らな胸に吸い付いてきた。

「やあぁっ、あぁんっ、乳首やだっ、乳首感じちゃうの、だめぇ!」
「乳首弱いの? 女の子みたいだね」

 そうだ。確かに俺は乳首が弱い。舐められたり摘ままれたりしたらすぐ乳首も勃起する。ちんこからもカウパー出まくりなんだが。なぜか……。

 本田さんがちゅうちゅう吸っても舐めても指でこねくりまわしても、俺のちんこはうんともすんとも言わない。気持ちいいのに。快感の回路がちんこの根本で遮断されてるみたいにちんこが立たない。

 本田さんも追い詰められたような表情をしている。

「男の子とするの、初めてだからな……ハハ、下手、だよね? ごめんね」

 なんて謝ってきちゃう。同じ男だから、相手の体が感じてないことへの焦りは申し訳ないほどよくわかる。

「あたしも、知らない人に声かけて、こういうことするの初めてだから……思ってる以上に緊張してるみたい」
「あっ、そうなの? 俺が初めてなの?」
「うん。本田さんはあたしのお尻で気持ちよくなってね?」

 ちょっと申し訳なさそうに、途中なんとか俺を立たせようと試行錯誤していたけど、どうあっても無理だとわかると本田さんは諦めて俺のちんこから手を離した。自分でもどうして立たないのかさっぱりわからない。

 五木たちに犯された時でも勃起したのに。その後、撮影だと言ってカメラの前でセックスしても勃起した。気持ちよかった。やくざの下請けになってスタッフの人数が増えても同じだった。

 なのにどうして、俺が唯一タイプだと思える男とセックスしてるのに立たないんだろう。気持ちいいと思うし、そういう行為をしているのに、ぴくりとも反応しない。

 本田さんに悪くておおげさに喘いでみせた。終わったらそそくさ退散した。本田さんも俺を引き止めなかった。レンタル店の店員だとバラさなくて良かった。

 更衣室に戻ってシャワーを浴びた。自分の服に着替えてから五木へ電話をかけた。出ない。あのクソ野郎。

 しつこく何度もかけ続けたら『うるせえ殺すぞ』とやっと電話に出た。

「腹減ったから飯奢ってよ」
『こっちは仕事中なんだよ、ニートが』

 お前はやくざの奴隷だろうが。それに俺はフリーターだ。

 受話口からキャアキャアと女の嬌声が微かに聞こえて来た。他に複数の話し声。撮影の合間か、女優さんをつれて親会社の幹部連中を接待中か、どちらかだろう。後者だとしたら、ざまあみろって感じだ。

「じゃあ俺は家でカップラーメンでも食って寝るよ」
『おい、待て』

 通話を切ろうとした手を止める。

「なんだよ」
『なんか話があったんじゃないのか』
「別にもういいよ」
『っんだよ、さっさと言え』
「俺さー、インポになったかも」

 電話の向こうで五木が吹き出した。

『その齢でか?』
「あんたらに酷使されたせいなんですけどー。どう責任取ってくれるんですかぁー?」
『マジで言ってんのか? インポになったお前になんの価値があるっていうんだよ?』

 心配するどころか俺の商品価値を冷静に考えている。こういう男だ。

「あんたほんと、誰かに刺されればいいのに」
『セキュリティーばっちりのマンションだし、常に誰かと一緒に行動してるよ』
「びびってやんの」
『長生きはできねえだろうな』

 って他人事みたいに笑った。

『ほんとに勃たねえのか確かめるから今度事務所来い』
「もういいよ。ミワちゃんは引退ってことで」
『いまさらこの業界から完全に足洗えるかよ。そうだ、ついでに仕事の話もあるから、今日俺んちに来い』
「仕事中なんだろ? 何時になるんだよ」
『終わったら連絡する。社長が働いてるんだ、そのあいだ寝るなよ』

 俺に命令を残して五木は電話を切った。名ばかり社長のくせにあいかわらず勝手で自己中心的だ。

 何も今夜じゃなくてもいいのに。仕事の話ということはまた男の娘企画でDVDを出すといことだろうけど、俺もう勃たないのに。

 それを確かめるって、どう確かめる気だ? あいつ、俺のちんこに触る気か?

 やくざの下請けになってから、五木は現場に顔は出すが完全に撮影する側の人間という立ち位置だ。カメラの前で体を使うことは一切なくなった。

 五木に触られるのはいつぶりだろう? かれこれ一年半? あいつが俺のちんこ掴んで扱くの? 「お前みたいな頭悪い奴がインポになってどうすんだよ」って口の端で笑いながら?

「インポじゃねえよ」

 思わず声が出た。

 さっきまでピクリともしなかった俺のちんこが。
 なぜか今、ビンビンに勃起しております。

 遅えよ。




本能

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やっぱちょろい(1/2)

2017.05.15.Mon.
<前話「ちょろい」>

 高校卒業してから個人が経営しているレンタルビデオ店で週5でバイトしている。

 頭はもともと悪くて大学進学なんて夢の話で、じゃあ手に職つけるために専門学校行くって親に言ったらお前に投資しても無駄になるからどうしても行きたいなら自分の金で行けって就職を勧められた。

 担任も親寄りの意見で、でも俺は就職なんて面倒臭いからのらりくらりしてたらニートになっていた。せめて生活費を入れろと親に雷落とされて、仕方なく始めたのがここのバイトだ。

 今時個人のレンタル店なんて流行るわけもなく、ちょうどいい塩梅に暇だから、怠け者の俺にはうってつけのバイト先だ。

 店長も親の代から引き継いだだけのやる気のない人だから必要最小限の店番さえやっていれば文句は言われない。

 勤務時間は10時から18時まで。いつの間にか朝の開店は俺の仕事になっていて、12時にやってくる店長と入れ替わりで昼休憩に入る。13時からは店長と二人体制になるが、客が極端に少ない昼過ぎは店長は近くの自宅へ戻るので、ほとんどの時間俺一人。

 時給は安いが、忙しくもなく気を遣う相手もいないので気楽なもんだ。

 気楽すぎて、昼ご飯を食べたあとは眠たくってしょうがない。いつもなら椅子に座りながら居眠りできるのだが、今日は納品があるので寝てもいられない。

 小さな段ボール箱を開けて中身を出していく。話題の新作DVDだろうが入荷数は1本。それもよほどの話題作のみ。洋画、邦画合わせて5本。残りの3本はアダルトDVDだ。

 映画は流行り廃りがはっきりしているが、アダルトDVDはそれほど顕著じゃない。いまや店の3分の1がアダルトコーナーになっている。

 旧作に落ちればバイトの特権で無料で借りられるので、俺はどんなDVDが入荷したのか1枚1枚、丁寧に見て行った。店長が好きな女教師もの。お天気お姉さんもの。そして最後の一枚を手に取って俺は失神しかけた。

『ノンケカップルをナンパ!男の娘のボクと3Pしませんか?』

 3ヶ月ほど前に俺も出演したオムニバスのアダルトDVDだ。震える手でパッケージを裏替えしたら、男のちんこを咥えてる女装した俺が写っていた。まさかこれが発注されていたなんて……!

 女ともヤッたから、ノンケ向けのアダルトDVDに分類されてしまったんだろう。店長が俺だとわかって注文したとは考えたくない。

 俺がこの道に堕ちたのは、高校の時にふざけて家出掲示板に書きこみなんかしたからだ。クラスの女子が飯食っただけで一万もらったなんて言うから、こんなちょろいバイトはないと思って軽い気持ちからだった。

 女装した俺は意外に可愛くて待ち合わせ場所に現れたスーツの男にバレることもなかった。調子に乗って男に言われるままマンションまで行って、そこで俺は男たちに犯された。

 マンションにはスーツの仲間が二人いて、保険と販売用だと言って撮影までされた。口止め料に一万もらったけど、そんなのもらわなくても誰にも言えることじゃなかった。

 しばらくしてまたスーツの男から呼び出された。俺はまた女装して犯された。死ぬほど嫌なのになぜか勃起して射精した。認めたくないが、気持ちよかったのだ。

 出演料として3万を受け取った。俺の動画は人気だったらしい。また次も頼むぞと言われた。脅されなくても断る気はなかった。きついし痛いし大変だけど、女装して別人になって犯されるのは、正直興奮した。

 3本目の動画を撮影し終えたらスーツからの連絡はぴたりと止まった。俺の人気が落ちたのかと思ったが、高校卒業して半年後、スーツからまた出演依頼がきた。

 今度はちゃんとしたビルの一室に呼ばれ、撮影スタジオが用意され、スタッフの数も増えていた。スーツたちの荒稼ぎが、本業の怖い人たちに見つかって、ずいぶん怒られたのだそうだ。

 そしてその怖い人たちの会社の下請けとして今は真面目に働いているというわけだ。売上金という高い上納金を納めるのはかなり大変だと俺にも愚痴ってきた。

 強/姦して金儲けしてたんだから一生怖い人たちの奴隷となって働けと言ったら苦虫かみつぶした顔をされた。

 そんなわけで、俺もそこの専属モデルとしてちょこちょこ仕事をしていた。レンタル店でのバイトが本業なら、アダルトビデオ出演はほんの副業感覚で。

 女装のおかげか今までバレたことはない。でもまさか自分がバイトする店で取り扱う日がくるなんて思ってもいなかった。これを店長に見られたらさすがにバレるかもしれない。店長が男の娘なんて特殊なものに興味を持たないことを祈るばかりだ。

 貸し出しのための作業を終え、新作コーナーの棚に並べた。表に俺の画像が使われてないことだけが救いだ。

 入荷当日、ドキドキしていたが借りて行く客がいなくてほっとするようながっかりするような、複雑な気分だった。

 女装して男にハメられ、女にハメる俺を、どんな奴が借りて行くのか、かなり興味がある。

 俺を見て可愛いと思ってくれるだろうか。俺にフェラされたいとか、ケツマンにぶちこみたいとか、そんなこと思いながらオナッてくれるだろうか。レジで受け付けた男が出演してると知ったらどんな反応をするだろう……。

 なんて妄想で二日目も終わりかけたが、急用ができた店長から閉店まで店番して欲しいと頼まれ延長が決まった。

 どうせやることもたいしてない店だ。さすがに昼より客数は多いが一人でこなせない量でもない。長い長い時間が過ぎてやっと21時。あと一時間だと時計の針を見ていたら、いかにも仕事終わりって感じのスーツ姿の男が入って来た。

 髪をきちっとまとめたお堅い感じ。二度見したあと、俺の視線はその男を追い続けた。

 女が好きだし、見るAVも当然女が出てるやつを見る俺だが、ある特定の男にはピクリと反応してしまう。

 最初に俺をブチ犯しやがった最低クソ野郎。待ち合わせ場所に現れた時の優しげな雰囲気から一変して、俺を犯すときのガラの悪さと、人を人とも思わない残忍さ、計算高さ。

 図々しくも二度も三度も俺を呼び出して輪姦し、挙句やくざに目を付けられたことを俺に愚痴ってくる無神経クズ野郎。五木。あいつの最初の印象が強烈に焼きついていて、お堅めなスーツ男を見ると俺のなかに眠っていた嗜虐性がそそられるというやっかいな性癖になってしまったのだ。

 あの見た目でヤルとき豹変してくれたら、俺はアヘ顔さらしながら嬉ションするかもしれない。幸か不幸かそんな出会いはまだない。

 男は邦画コーナーの前で立ち止まった。いくつか手に取っては戻す。次は洋画コーナー。あれこれ見たあと、アダルトコーナーへ足を踏み入れた。

 どんなAVを見るんだろう? あの男はどんな嗜好性の持ち主なんだろう? 俺が出てるDVDを持って来たら……想像するだけで鼻血が出そうになる。

 数分して、男が受付にやってきた。カウンターに置かれた一枚を見て咽喉の奥から変な声が出そうになった。

『ノンケカップルをナンパ!男の娘のボクと3Pしませんか?』

 思わず男の顔を見上げてしまった。アダルトを借りて行く時、開き直っているふりをするか、気まずそうにしているかどちらかなのだが男は後者だった。

「会員カードはお持ちですか?」
「ああ、はい」

 男が出したカードを読みこみ名前のチェック。本田というのか。

「新作なので新作料金になります」
「はい」

 男は千円札をトレイに置いた。会計が済んだら男は帰ってしまう。

「この男の娘ってやつ、男なんですけど大丈夫ですか?」

 突っ込んだ質問をしたら男の顔が少し赤らんだ。

「えっ、ああ、大丈夫です」
「男の娘好きなんですか? 最近流行りですもんね」
「ああ、そう、ですね……」

 さすがに鬱陶しく感じ始めたのか、本田さんは眉間を寄せた。よく見ると整った綺麗な顔をしている。俺をさげすんで罵って欲しいもんだ。

「俺も結構持ってるんですよ。良かったら貸しましょうか?」
「えっ? いや、結構です。急いでいるので……」

 これ以上はさすがに怒られそうなので、貸出処理をしてDVDの入ったバッグを男に渡した。今夜これを見るのだろう。パッケージで煽情的な格好をしていた女が男だとわかった上で。あれを目当てに借りたのだから、きっと俺でも興奮してくれるはず。

 今夜は俺のオナニーもはかどりそうな予感だ。



 次の日、バイト終わりに買い物へ行った。荷物を持って事前に調べておいた女装更衣室へ向かう。利用料にメイク代をプラスして払い、シャワーを浴びたあと買った服に着替えてメイクをしてもらった。

 ウィッグをレンタルして更衣室を出た。夜で暗いからかすぐ男に声をかけられた。パッと見で男とバレないどころか、ナンパされるレベルなのだ俺は。

 その格好でバイト先へ向かった。21時前。新作は一泊しか出来ないから、本田さんは今日返却に現れるはずだ。昨日と同じ時間を狙って来たが、もう来店した後だったら無駄足になる。

 そんな覚悟をしていたが、20分も待たずに本田さんはやってきた。店の近くでポツンと立っている俺をちらりと見たあと店に入り、十分ほどで出て来た。

 本田さんは駅と反対方向へ向かって歩き出した。俺はあとをつけた。距離を縮めながら心臓はバクバクと高鳴っていた。

 なんて声をかけよう? 昨日のDVDはどうでしたかって? 俺が店員だとバレると後々困ることになるかもしれない。でも逃したくない。

 ひと気のない住宅街へ入った。本田さんが振り返った。レンタル店からつけてくる俺に気付いた様子。少し歩調が早くなった。

 このまま家に帰られたらこれまでの苦労が水の泡だ。死ぬほど緊張しながら本田さんに声をかけた。

「あの」

 本田さんが振り返る。

「なにか?」

 ものすごく警戒した声。

「あの……、一目惚れなんですけど、良かったら付き合ってくれませんか?」
「えっ?!」

 と素っ頓狂な声をあげる。いきなり見ず知らずの怪しい女から告白されたら誰だってびびるだろう。俺だってびびる。

「え? 俺……僕?! ほんとに? ええ?!」

 戸惑いながらも本田さんの顔がにやけていく。これは良い感触。

「どうして、僕?」
「あたし、スーツフェチっていうか。本田さんみたいな人、大好きなんです」
「あれっ、え、なんで名前……」

 しまった。

「ごめんなさい。実は以前、あとをつけたことがあって」
「そういう……ええ、本当に? ちょっと怖いな……」

 怖いよね。俺だってこんなこと言われたら怖いわ引くわ。でも本田さんの目が俺の体の上を何往復もしている。見定める目。怪しいし騙されているのかもしれないけど、危険を冒すに相応しい女かどうかって目。いいね、本田さん。欲望にまみれた正直な目、ゾクゾクするよ。

「付き合うとか、急にはあれかなぁって」
「駄目ですか」

 慎重派だね、本田さん。俺のこの上目遣いを見ても断れるのかい?

 泣きそうな表情を作って本田さんを見上げる。グラグラ揺れる本田さんの心の天秤が見えるようだよ。

「名前を聞いてもいいかな?」
「ミワって言います」
「ミワちゃん。あ、よろしく」
「立ち話もなんなのでぇ、本田さんちに行ってもいいですか?」
「今から?!」
「ホテルでもいいですよ?」

 本田さんが生唾を飲みこむ音が聞こえた。

「そこだから、僕の家に来る?」
「はぁい」

 男ってやっぱちょろいわ。




曲がり角に、犬

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