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楽しい記憶喪失!(3/3)

2016.09.16.Fri.
1話2話


「次は僕の番ですよね」

 西山の体が伸びあがる。俺の視界を塞ぐ大きな体。体格差以上の強い力が簡単に俺の両足を持ち上げ、折りたたんだ。上を向いて丸見えになった俺の穴に、西山のぶりんとでかい亀頭が押し当てられる。

 童貞宣言した中3の西山は少し緊張の面持ちだ。唇を舐めながら、ゆっくり押し進めて来る。途中、不安げな顔で俺を見た。いつもこのあたりで痛がる彼女に止められてしまうのだろう。

「……来いよ」

 俺の一言に、西山はパッと顔を明るくした。膝の位置を前に進め、慎重に亀頭を押し込んだ。そして竿にローションを塗ると、掘削するドリルのように小刻みに前後に動かしながら中に入って来た。

 俺の肛門はもう目いっぱい開き切っている。決壊寸前だ。極太の竿の中央に差しかかったのが、慣れた日頃の感覚でわかる。メリメリと押し広げられ、括約筋が悲鳴をあげている。

 ずん、と奥に重い衝撃があった。どうやらなんとか全部が収まったようだ。ぴっちりと蓋をされる感覚に息苦しさを覚えるほど馬鹿でかい。

「すごい……ほんとに入った……」

 西山が驚きと関心の入り混じった表情で呟いた。結合部をまじまじ見て、その事実に感動している。

「僕、正直誰ともセックスできないんじゃないかって諦めかけてたんですよね。これで女の子の体壊しちゃうんじゃないかって思うと、怖くって。中根さんすごいですよ。僕のを根本までぐっぽり咥えこんで、感じちゃってるんですから」

 嬉しそうに笑う西山の視線の先にあるのは、生まれたての小鹿のようにフルフルと頭を持ち上げる俺のちんこだ。さっきイッたばかりなのに、時間をかけてちんこを突っ込まれる間にまた復活を遂げていたのだ。

「動いて大丈夫ですよね?」

 だってちんこ勃たせてるんですから、って後に続く言葉の幻聴が聞こえた。俺が返事をしないでいるのを肯定と取って、西山はゆっくり腰を引いた。俺の中で西山が大移動する。内臓引っ張られるような感じに俺は顔を顰める。

 抜け出たところに西山はまたローションを足した。そしてまた押し戻してくる。

「苦しくないですか?」

 ぶっちゃけすごく苦しい。でもそれを上回るものがある。だからこの苦しみは気持ちいいものになる。こんなのお前だけなんだぞ。

「だい、じょ……ぶ……っ……気持ちい、からっ……」
「僕も気持ちいいです。美衣に口でやってもらうより、自分でするより、中根さんの中が一番気持ちいい」

 うっとりした目で俺を見つめながら、中3の西山が言う。こういう場面で他の女と比べる無神経さはさすが西山という感じだが、これが今のこいつの正直な感想なんだと思ったらその拙さも愛しく思えて来る。

「これで思い出さなかったら……許さねえからな」
「ははっ……怖いなぁ……、でも、なんだろ、すごく嬉しい」

 息を弾ませながら俺を見て目を細める。あんまり見かけない優しい笑い方で俺の方がどきっとしてしまう。

「ドМか」
「僕が中根さんのこと好きになったの、わかる気がする」

 そう言うと、腰の動きを速くした。ガンガンに掘られまくって俺の体がずり上がる。それをたまに引き戻しながら、西山はピストンを繰り返した。

「んんっ、あっ、ああぁっ、はあんっ」
「中根さんの中、グッチョグチョだよ。男でも濡れるの?」
「知らね……っ……んっ、あぁ……んっ…」
「柔らかいのにきつい……、あ、やば……!」

 いきなり西山は腰の動きを止めた。俺のへそのあたりを凝視しながら、ぴくりとも動かない。大量の精液も出ていないようだから、イッたわけでもない。

「どうした?」

 西山の視線が俺の顔へと辿りつく。すると「あっ」と目と口を開いた。

「なんだ?」
「やばかった。イキそうになっちゃった」
「お前いつも遅いんだから、たまには俺より先にイケよ」
「やだよ。僕のほうが先に終わっちゃうなんて、かっこ悪いでしょ」

 俺はいつもかっこ悪かったのか。

「中根さんも、セックスに強い僕が好きでしょ」
「ばか、それだけじゃねえよ」

 西山は意外そうに目をぱちくりさせた。

「じゃあ、僕のどこが好き? 教えてくれたら何か思い出すかもしれない」

 ゆっくりと体の中の西山がまた動きだした。さっきので学習したのか、性欲を持てあました十代のがっつきはなくなって、自制を効かせたいやらしくもねちっこい動き方だ。

「馬鹿だし、変態だし、悪乗りするし……ぁ……絶倫で疲れる、しっ……あ、あと……すぐ調子に乗るし……っ……けどっ……」
「けど、なあに?」

 幼い子供をあやすような優しくも妖しい口調で先を促される。拳のような亀頭でグリッと前立腺を擦られて、腰が跳ねあがった。

「お、俺のこと、いつも最優先にして、くれて……我が儘言っても笑って許してくれ、て……優しくて、頼り、なる、しっ……」

 言ってる途中で自分が失ったものの大きさに悲しくなってきた。このまま思い出さなかったらどうしよう。どうして俺のこと忘れちゃうんだよ。

「いつも、うっとうしいくらい俺のこと好きだって言ってくるくせに……なのに……なんで……なんで俺のこと忘れんだよ!」

 最後は叫ぶように言っていた。ずっと心に押し込めていた俺の本音。俺だけは特別、俺の事だけは忘れない、忘れていたとしてもすぐ思い出してくれる、そう思っていたのに。

 いつまで経ってもこいつは思い出さないし。俺のことは「くん」付けだし、敬語だし、自分のことは「僕」って言うし、気持ち悪いんだよ馬鹿野郎!

 本音をぶちまけてしまうと、堰を切ったように勝手に涙も出て来た。ついでに不満も爆発した。

「園のことは覚えてるくせに! なんで高校入ってからのことは全部忘れてんだよ! 俺のこと忘れたかったのかよ! 散々好きだとか言っといて! お前の好きはその程度だったのか!!」
「泣いて……?! ちょ、えっ、泣かないで、ごめん」

 眉を下げた西山がオロオロした顔で腕を伸ばしてくる。それを叩き落とした。

「触んな! お前は西山じゃねえ! 俺の西山を返せ! ちんこも抜け! いつまで入れてんだ、このばか!」

 来いよ、と自分で言った過去も忘れて、俺は西山の胸を蹴り、顔面を引っぱたいた。

「いっ、痛いっ、ちょっと……、祐太! 痛いって!」
「呼び捨てすんなボケがあぁぁっ!!」
「祐太! 俺だってば! ごめん! 俺! 記憶戻ったから! ほんとに俺なんだって!」

 嘘つけゴラアアッと叫びながら西山のちんこから逃れた俺は立ちあがって西山を見下ろした。赤くなってる西山のほっぺに少し正気を取り戻す。

 手負いの獣よろしくフーフー鼻息荒くしながら、見覚えのある、媚びつつもどっか余裕たっぷりな感じの西山の笑顔に気付いた。俺の機嫌を損ねたときの西山の顔にそっくり。もしかして本当に記憶が……?!

「お前……っ!」

 俺の唸り声を聞いて、西山は、待って、というふうに胸の前で手を広げた。

「記憶喪失だったのは本当だから! ついさっき思い出したとこだから!」
「いつだ! いつ思い出した!」
「イキそうになった時! ぶわって、全部!」
「だったらすぐ言えよ!!」
「記憶喪失なんてレアな出来事この先ないし! だったら楽しんじゃおうって。それに、珍しく祐太が素直だったから、つい、調子に乗ってしまいまして。おかげで、祐太にどれだけ愛されてるか聞くことできたし」

 西山の口がニヤリと左右に開く。中3の西山だと油断して、普段言わないようなことを口走った。思い出したら顔から火が出た。

 下を向いても西山には丸見えなので後ろを向いた。ベッドのスプリングが軋んだと思ったら、西山に抱きしめられていた。肩に顎を乗せて、頬にキスしてくる。

「心配させてごめんね。不安にさせてごめんね。祐太のこと、忘れたかったわけないでしょ。忘れたくないから、実家に戻らずここに帰って来たんだよ。祐太のこと忘れてても、祐太の匂い嗅いだだけで変な気分になっちゃったし、祐太に触っただけで勃っちゃったんだよ。好きだって気持ちだけは忘れなかった証拠だよ」
「それただ、ヤリたいだけだろ」
「誰でもいいわけじゃないよ。祐太だけ」

 頬に手が添えられた。優しい力で西山のほうへ向かされる。涙のたまった俺の目を見て、西山は本当に申し訳なさそうな顔をした。

「ふざけすぎたね。ごめんね、祐太」
「こんなの二度と嫌だ」

 西山に抱きついた。あやす手が俺の頭を撫でる。大きくて優しい手。やっと俺の西山が戻って来た。

 ※ ※ ※ 

 そのあといつも通り、仲直りセックスをした。次の日は学校を休んで朝からイチャイチャしていた。昼過ぎ、合鍵を使って勝手に入ってきた西山父に現場を見られたが、記憶を取り戻したことがわかると「明日から学校に行くように」と父親らしいことを言って帰った。

 動じない西山父もそうだが、硬直する俺に挿入したまま平然と受け答えるする西山も相当おかしい。

「一日一回だっけ」

 西山がすっとぼけて言ったのは、夕食の最中、急にムラついた西山に押し倒されて、今まさにちんこを入れられんとする時だ。

 俺が良いと言った日は例外という抜け道を発見して、西山はご機嫌だった。




王子の箱庭

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楽しい記憶喪失!(2/3)

2016.09.15.Thu.
<前話はこちら>

 歯磨きを済ませた西山は「おやすみなさい」と俺に挨拶すると、寝室のほうへ移動した。西山のいなくなったリビングで俺はため息をついた。

 西山に記憶が戻る様子は少しもない。一度家に戻ろうとした西山が引き返してくれたときは何か思い出すんじゃないかと期待したが、甘かった。

 父親を追い出したあとの西山は俺を知らない中3の西山のままで、名前にさん付けのままだし、敬語も崩さない。

 高校時代の話を教えて欲しいというから話して聞かせたが、自分が経験した人生の話なのに、いちいち驚いたり関心したりする。

 西山は色恋のことも知りたがった。梨香という彼女がいたことを話したら、なぜ別れたのかと聞かれて返答に困った。俺が原因だと言ったらきっと俺を恨むだろ。性格の不一致ということにして、園孝雄が高校まで西山を追いかけてきたぞ、と話題を変えた。

 園の好意を知っていながら、好きじゃないからと冷たくあしらって来た西山なのに、小中一緒だった園のことはちゃんと覚えていた。「困った奴だなあ」と親しみのこもった苦笑に嫉妬した。

 どうして俺と出会う前までのことしか覚えていないのだろう。どうして高校1年では駄目だったのだろう。喧嘩した直後の記憶喪失。俺のことが面倒になったから、存在そのものを忘れたかったのだろうか。

 このまま思い出さなかったらどうしよう。いまの西山も充分に西山らしい。でも俺の知ってる西山じゃない。俺の隣に座らないし、風呂を覗きにこないし、隙あらば触ってこないし、甘えてキスもしてこない。

 数日ならいいけど、何週間、何カ月と記憶が戻らない可能性だってある。俺のことを忘れた西山と暮らしていくのはけっこう辛い。

 悪いことばかり考えて気持ちが落ち込む。だから考えるのはやめにして、俺も寝ることにした。

 電気を消してソファに寝転がり、毛布を被った。西山の温もりや、肌が懐かしい。恋しい。泣きそうになって毛布を頭まで引きあげた。

「あのー、中根さん」

 いきなり声がした。毛布から顔を出すと、リビングの入り口に西山が立っている。

「どうした?」
「もしかして、僕たちって一緒に寝てたんじゃないですか?」

 西山は指をもじもじさせながら、恐る恐るというふうに訊ねる。心臓がバクン! と跳ね上がった。なにか思い出したのか?!

「どうしてそう思うんだ?」

 逸る気持ちを表に出さないよう、声を押し殺した。

「サイドテーブルの引き出しにゴムとジェルを見つけちゃったんですよね。サイズ的に、僕が使ってたって可能性が一番高いなと思って」

 と西山ははにかんだ。確かに、西山が使うコンドームはネットで注文するXLサイズ。それでも窮屈だと嫌がって使わない場合がほとんどだ。

「ゴミ箱みたら、まだ新しいティッシュも捨ててあったし。いつも一人でやる時とティッシュの捨て方が違うから、誰かとエッチしたのかなって」

 俺を窺い見るように西山は小さく首を傾けた。

「で? なんで俺と一緒に寝てたと思ったわけ?」
「一人だけソファなんておかしいですもん。それに思い返してみると、中根さんの僕を見る目つきって、ちょっと普通じゃないですよ。大学の友達だっていう人たちとは明らかに違う。病院に来てくれた時も、事前に記憶喪失だって聞いてるはずなのに、顔色は真っ青だったし、一人だけ泣きそうだったし」
「そりゃ、一緒に住むくらい仲はいいんだから心配するだろ」

 普通じゃないと言われた目を伏せたら、西山が近づいてきた。床に膝をついて、ソファに手を乗せ、顔を覗きこんでくる。

「中根さんは僕の恋人なんですか?」

 核心をつく質問。嘘は許さないくりっと大きな目が俺をまっすぐ見つめてくる。俺はその目を直視できなかった。ソファに置かれた西山の大きな手に視線を落とした。

「もし、そうだったら?」
「一緒に寝ましょう。いつも通りにしていた方が、早く思い出せるかもしれない」

 あっけらかんとした口調だった。俺は顔をあげた。

「気持ち悪いとか思わねえの?」
「父も昔、男と付き合ってたことがあるんですよ。その話を聞いてたからかな、驚きはあるけど、案外受け入れちゃってます」

 西山は俺の頬に手を添えた。俺の顔をじーっと見つめたあと口角を持ち上げた。

「それによく見ると、中根さんって意外にかわいいですよ」

 意外ってなんだよ、意外って。中3でもこいつはとことん失礼だ。何か言い返してやりたいけど、胸が詰まってなんも言えねえ。

 行きましょ、と西山は俺の手を引いた。2人で寝室のベッドに入る。俺が左側、西山は右側。いつもの場所だ。西山本人なのに、別人と一緒に寝ているような緊張感。

 西山に背を向けていたら、背後から抱きつかれた。しかも、手が俺の股間を鷲掴んでいる。

「おい、お前──!」
「僕たち、セックスしてるんですよね?」

 耳元で囁く声。それはスイッチが入った時の西山の声だった。

「お前とはしてねえよっ!」
「……それ、今の僕とはって意味ですよね? 記憶失くす前の僕とはしてたんですよね?」

 大きな手がゴリゴリと玉と竿を一緒に揉みしだく。同じ掌なのに、やはりいつもと触り方が違う。それなのに下半身に血液が集まって勃起させてしまう。

「放せ、よ! この……ばか!」
「頭は忘れても体は覚えてるもんなんですね。中根さんとベッドに入ったら、こんなになっちゃいました」

 尻のあたりにごついものが押し当てられた。焼きゴテかと思うほど熱くて硬い。思わず腰が引けた。

「これを中根さんの中に入れてたんですか?」

 首筋に西山の熱い息が吹きかかる。人の首元でハァハァするな!!

「僕も入れさせて下さい」
「なんでっ……」
「記憶を取り戻すためですよ」

 言いながら俺のズボンとパンツをずり降ろし、直接握った。明確な意図を持った手つきで俺のちんこをしごいている。

「やめ……ろよ、こんなことして思い出すわけねえだろうが!」
「前に読んだ漫画に、手術中に記憶を取り戻す話がありましたよ。セックス中に思い出すかも」

 こいつの口八丁手八丁は昔からだったんだな。関心してる場合じゃない。俺の首筋にキスしながら、先走りを指ですくって全体に馴染まるように上下に動かす。裸に剥かれた尻には西山の勃起ちんこが擦りつけられる。いつの間に外に出したんだ。先端が尻たぶを割って奥をツンツンと叩く。大量の我慢汁が出ているようでネチャネチャと粘ついた音がした。

「ふ……ぅ……っ……あ、ああ……」
「実は僕、童貞なんです。美衣って彼女がいるんですけど、痛がって入れさせてくんなくて」

 猫の鳴き声みたいな名前の彼女は、きっと中3当時に付き合っていた子だろう。彼女はいるのにサイズの問題でさせてもらえないのは盛んな年頃には気の毒な話だ。

 しかしなんだ、この感覚。どっかで見たような光景。デジャヴュ? 違うわ、高3の時の合宿だ。みんなの前で西山に犯されたあの日、同じようなやりとりしたんだ。こいつ全然変わってねえ。

「だから入れてもいいですか?」
「駄目に決まってん……あっ!」

 ちんこから手が離れたと思ったら、今度は俺のケツを撫でてきた。そろそろと中心へ近づいて来る。割れ目にそって指を滑らせ、穴に辿りつくと軽く押した。

「男同士ってここに入れるんですよね」
「ばかっ、入れんな……入れん、なっ、あっ! やだっ……!」

 グググ、と指が捻じ込まれる。潤いが足りなくて痛い。

「抜けよ……! も……っ……ちが……ぁ……痛えからっ……ローション使えこのクソ馬鹿!!」
「あっ、そっか」

 指を抜くと西山はサイドテーブルの引きだしからローションを出した。そしてそれを俺の穴に突っ込んで一気に中身を押しだした。

「最初は慣らしたほうがいいですよね」

 独り言みたいに呟いて指をそっと入れる。中のローションを擦りつけるように指を回したり、出し入れしたりする。

 いつもなら指で刺激される場所がスルーされる。中3の西山が前立腺の場所や存在なんか知るわけないのだ。たまに当たってもすぐ行き過ぎてしまう。10段階で言うと、2か3程度の快感しか与えられない。物足りなくて、もっと欲しいと勝手に腰が揺れる。

「気持ちいい? 中根さん」

 耳元で西山が囁く。俺は返事に困って黙った。気持ち悪くはないのだが、気持ちいいと言うと嘘になる気がする。西山だったらもっとうまくやる。俺が欲しがるところは過剰なほどに、気付かないところも愛撫して、俺を善がり狂わせる。

「なんか、思い出したかよ……?」

 返事をせずに、祈る気持ちで問い返した。今度は西山が返事をしなかった。訝しんでいると仰向けにひっくり返された。いきなりの乱暴な動作に驚いて西山を見上げる。怒りと戸惑いの入り混じったような顔が俺を見下ろしていた。尖った唇は拗ねた子供みたいだ。

「西山……?」

 西山は無言で俺の足の間に陣取ると、またローションを継ぎ足して指を入れてきた。グチュグチュと音を立てながらあちこち指で擦る。

「んっ」

 俺が声をあげたところで一瞬動きを止めた。見つけた、と言わんばかりの顔でそこを執拗に弄りまくる。

「んっ、あっ、あっ」
「ここだ。ここがいいんだね?」
「あぁっ、やっ……あ…ッ…あ、いっ……」

 勝ち誇った顔で舌なめずりしたかと思ったら、頭を下ろして俺のものをぱくっと咥えた。いつもの西山なら驚かないが、今は中3の西山だ。女とセックスしたことはおろか、男なんて性の対象外だったはずなのに、いきなりなんだ、この順応性は! 応用力は! 躊躇のなさは!!

「なっ、なに……やってんだよ、お前っ!」
「だって、負けたくないじゃないですか」
「誰に?!」
「記憶を失う前の僕に。僕のやり方じゃ気持ちよくなかったんでしょ? 前の西山だったらこうするのにって考えてたでしょ? 言わなくてもわかりますよ。セックスしてる最中、他の男のこと思い出されるの、むかつくじゃないですか。それが自分でも、誰かと比べられたら負けたくないじゃないですか」

 バレてた……!! 西山の勘の鋭さにびっくりだ。気まずさに目が泳ぐ。西山は意に介さず、フェラを再開した。飴を転がすように口に含んだ亀頭を舐め回し、蜜を吸うように先走りを啜った。

「……っ……んっ……あ、あ……まっ……ああ、あ……ッ」

 なかに入れた指を動かすことも忘れない。中を押し広げつつ、俺が反応を見せる場所を指の腹で擦りあげる。俺は腰をガクガク揺らしながら、西山の髪の毛を搔き乱した。

「だめ……、西山ぁ……! ああっ……も…ぉ…イクッ……から、はなせ……!」

 軽く頭を押した。なのに西山は根本まで咥えこんで頭を上下に動かした。

「や、ん、あああっ……やめ……出ちゃ……っ……からっ……!! 西山……あっ、はあぁ……ん、あっ……あ、ああ──……ッ!!」

 達する瞬間、気が遠のいた。俺が出し続けている間、西山は咥えたまま全部口の中に溜めた。出し終わると口を離し、ごくりと音を立てて飲みこんだ。

「飲ん……! なんで!? 馬鹿、飲まなくていいんだよ!」
「中根さんのだったらいいかなって」

 唇を舐めつつ、にこりと爽やかに笑う。抵抗感なしかよ。そういえば合宿でヤラれたあともトイレでこいつにフェラされたんだっけ。そのあと中出しされたザーメン吸い出してあげるとも言われた。さすがにそれはさせなかったけど、俺が嫌だと言わなければこいつのことだ、きっとやっていただろう。それも喜々として。

 ずっと一緒にいて忘れかけてたけど、こいつ根っからの変態なんだった。




楽しい記憶喪失!(1/3)

2016.09.14.Wed.
高校生編第1話大学生編第1話

 西山と喧嘩したから家に戻りづらい。どうせ猫なで声でご機嫌取ってくるんだ。俺もなんだかんだで許しちゃって、そのあと調子に乗った西山にまたヤラれるんだ。

 今までそういう流れを嫌というほど経験してきたから、今日は絶対帰らない。だから大学から漫喫へ移動して、漫画を読んでいた。

 そんな時に、知らない番号から電話がかかってきた。無視するか悩んだ末、電話に出ると西山父だった。どうして俺の番号知ってるんだ?

『実は恵護の奴がね、大学の階段で足を滑らせて頭を打ってしまってね』
「えっ?!」

 一瞬で血の気が引いた。わざわざ本人じゃなく西山父が電話してくるということは……

「大丈夫なんですか、あいつは?!」

 今いる場所も忘れて声を荒げていた。

『心配いらない。大丈夫だよ。体だけは丈夫な奴だからね。頭にこぶが出来ただけで、ピンピンしているよ』

 ああ、良かった。安堵の溜息が出る。スマホを持つ手が震えていた。最悪の事態が頭を過った。心底怖くて、どうにかなりそうだった。

『でもちょっと問題があってね』
「問題?」
『ぶつけどころが悪かったとしか言いようがないんだが、どうもここ数年の記憶がないらしくてね。いま医者が詳しく検査をしているところなんだが、あいつは自分を中/学生だと思っているようなんだ』
「中/学生?! き、記憶喪失ってことですか?!」
『作り話のようだが、そういうことになるね』
「じゃあ、俺のことも……」
『覚えていないかもしれない』

 俺は言葉を失った。



 病院からマンションに戻って来た西山は、部屋を見渡し「なんにも思い出せないや」と軽く肩をすくめた。見た目は普通の大学生。なのに中見は中学3年生。どことなく言葉遣いや仕草が子供っぽい。

 俺はまだ信じられない気持ちでそんな西山を見つめる。

 電話のあと急いで病院へ向かった。検査室の前には西山父の他に、事故当時一緒にいたという西山の大学の友人も数人いた。西山は彼らのことも覚えていないのだそうだ。

 西山父の取り計らいで西山に会えることになった。俺を見ても西山は戸惑った表情を見せるだけで、何かを思い出すことはなかった。

「高校が一緒だったんだ。部活も同じ野球部で、お前とは卒業後、一緒に住むくらい仲良しだった。中根祐太くん。なにか思い出さないか?」

 父親の問いかけにも困った顔で首を傾げるだけだった。もしかしたら俺のことだけは覚えているんじゃないかと淡い期待を抱いていただけに、その反応には落ち込んだ。

 大学の友人とやらは先に帰った。俺たちは西山父と一緒にタクシーでマンションに戻って来たのがついさっき。

 西山はあちこちを見て回ったあと、寝室の一つしかないベッドを見て、複雑な苦笑いで俺たちを振り返った。

「えっと……、同居、してるんですよね? 僕たちどこで寝てたんですか?」

 どうする? という目を西山父が向けて来る。ここで一緒に寝ていると話せば、中3ならばなにか察する年齢だろう。中3の西山に、男同士で付き合っていると告げていいものだろうか。中3の西山と同じベッドで寝て良いものだろうか。それは猛烈に後ろめたい。

「俺は、リビングのソファで寝てるよ」

 いまはこれが最善と思えて嘘をついた。西山がほっとしたように表情を緩める。中見は中3だとしても、外側は大学生の西山だ。西山にそんな顔をされるなんて、ショックだ。

「僕は明日からどうしたらいい? 大学に行けばいいの?」

 西山は父親に訊ねた。自分の身に起きた出来事に取り乱すこともなく、あっけらかんと指示を仰ぐ態度はさすがだ。病院で記憶喪失だと言われた時も、「高校受験も大学受験も終わってるの? ラッキー!」と喜んだというからこいつの神経の図太さは筋金入りだ。

「大学には事情を説明するからしばらく休ませてもらえばいい。長引くようなら休学も考えよう。それまではおとなしくしていなさい」

 父親の言葉にニヤッと嬉しそうに笑う。そんな西山を見て、本当に中3までの記憶しかないのだと思いしる。

「お腹すかない? 中根さんも、何も食べてないんじゃないですか?」

 と自分のお腹をさする。他人行儀な「さん付け」と、敬語。そりゃ向こうは記憶喪失で自分のことを中3だと思ってるんだから、俺はいきなり現れた見知らぬ年上のお兄さんだろうけど。そんな言葉遣いはけっこう堪える。

 俺の一瞬の表情を読んだのか、西山は少し動揺を見せた。そのあと、取り繕うように笑いかけて来た。見慣れているはずの西山の笑顔なのに、まったく別人のようだ。

 西山父が料理をすることになった。そういえば今日は朝ご飯も作ってくれた。朝、テーブルにあった食器はすべて片付けられている。俺が怒って家を出たあと、西山が片付けてくれたのだろう。

 どうして喧嘩してしまったのかと今更ながら悔やんでしまう。俺が知ってる西山は今朝で途切れている。最後の姿が、機嫌を損ねた俺に困っている西山だなんて。

 豆腐の角にちんこぶつけて死ねばいいなんて言うんじゃなかった。あんなこと言ったから、西山は階段で頭ぶつけて俺との記憶を失くしちゃったんだ。

 じわりと目の表面が熱く潤んだ。

「中根さん」

 西山が顔を覗きこんできた。泣いてると悟られたくなくて、顔を背ける。

「そんなに心配してくれなくて大丈夫ですよ。頭に異常はなかったし、記憶もそのうちきっと戻りますから。だから元気出してください」

 と事故の張本人がにこりと明るく笑う。暗い顔で落ち込む俺を励ますために。何歳でも西山は優しい。ますます胸が痛い。

「早く、俺のこと思い出せよ」

 なんとか笑い返した。

 そのあと西山父が作ってくれた夕飯を三人で食べた。食べている最中に、西山母から電話がかかってきて、しばらく親子の会話が続いた。何か思い出す様子はない。そもそも西山本人に焦ったところがない。鷹揚とした性格は昔からのようだ。

 食事の片づけを済ませた西山父が「そろそろおいとまするよ」とスーツのジャケットを羽織った。それを見た西山もソファから腰をあげ、父親の隣に並んだ。

「恵護はここに残りなさい」
「えっ」

 驚いて父親の顔を見返している。

「ここで寝泊まりするより、家にいたほうが思い出しやすいと思うんですけど。それに前は仲が良かったかもしれないけど、いまの僕には中根さんはよく知らない人だから気を遣っちゃうし」

 と尤もな意見を述べる。以前の俺への態度としては考えられない素っ気なさ。だがこれも西山の一面であることは確かだ。眼中にない人間は冷淡に切り離せるのだ。まさか自分がそっち側に回るなんて。

 父親はゆっくり首を振った。

「恵護の現在はここにある。過去のことを思い出すより、今を思い出さなくては意味がないだろう」
「でも……」
「だったらお前は家に戻りなさい。僕がここに残る」
「え?」

 突飛なことを言い出す父親に目を大きくする。中3の西山は当然、旧校舎の幽霊のことも、豊川秋広に俺が似ていることも忘れているのだ。

 だから、「じゃあ、そうします」とあっさり自分の鞄を肩に担いだ。何度も不思議そうに振り返りながら、本当にマンションを出て行ってしまった。

「送らなくていいんですか?」
「ここには何度か来たことがあるから一人で大丈夫さ」
「いや、一応、頭ぶつけたばっかだし」
「検査に異常はなし、聞いただろう」
「そうですけど……」
「薄情だよね。君を忘れてしまうなんて。僕だったら何があっても愛する人を忘れないけどね」

 目を眇め、薄く笑いかけてくる。息子が大変な時に息子の恋人を口説いてくるかね。まあきっと本気じゃなくて、落ち込んでる俺を励ますためだろうけど。そんなとこまで父子で似てる。

「ソファで寝る必要はないからね。一緒にベッドで寝よう」

 俺の肩に手を置いてにこりと笑う。本気で口説くつもりじゃ……ないと思ってたんだけど、違うかもしれない。

「やっぱり、一緒に帰ったほうがいいんじゃないですか。ていうか、あなたがここに泊まる必要まったくないですよね」
「いい機会だから君との親交を深めようと思ってね」

 と壁に手をついて俺を見下ろす。恥ずかしげもなく壁ドンですよ!

「僕のことはにいさんと呼んでくれて構わないよ」
「構いますって──ちょっと!」

 顎クイされたと思ったら西山父の顔が近づいてきた。させるか! と間に手を挟む。片眉を持ち上げた西山父は俺の掌にキスを落とした。

「なに考えてんですか!! そうだ! 今朝! あんた俺の寝込み襲っただろ!!」
「可愛い寝顔に抑えが効かなくなってしまってね。眠りの姫にキスをする王子の心境だったよ。あのまま連れ帰ってしまいたかったくらいだ」
「そういうのほんとやめてください。俺は豊川秋広さんじゃないんで!」

 西山父の腕から逃れた。すぐ追いかけて来た腕が腰に巻きついて引きよせる。今までのような冗談じゃなく、男の本気を感じさせる力強さ。頭に赤信号が灯る。

 こちらも本気で逃げるための力を体に込めた時──。

 玄関からガチャガチャと音がして、俺たちは思わず顔を見合わせた。近づいて来る足音を聞いて離れる。それとほぼ同時に、リビングに西山が戻って来た。

 不思議そうに首を捻っている。

「どうした、恵護。今日は家に帰るんじゃなかったのか」

 詰るような口調で西山父が訊ねる。

「よくわかんないけど、中根さんを一人にしちゃいけない気がして」

 と、首の後ろを掻きながら、俺をまっすぐ見つめて来た。どうしてそんな感情を抱くのか、理由を探るような目だった。俺は期待を込めて見つめ返した。思い出せ。思い出してくれ。

「一人じゃない。父さんがいるじゃないか」
「僕もそう思ったんだけど、余計に心配になっちゃって」

 お前のその勘は間違ってないぞ。それを糸口に全部思い出せ。

「中3のお前がいたら中根くんも迷惑だろうから家に帰りなさい」

 父親の言葉に西山はぎゅっと眉根を寄せた。

「さっきお前の現在はここにあるとか言ってませんでした? やっぱり帰りません。ここに残ります。父さんこそ、中根さんの迷惑になるから帰ってよ。ほら、帰って、ほら!」

 西山は父親の背中をグイグイ押して、玄関から外へ追い出してしまった。そして扉を閉めると鍵をかけた。パンパンと手を叩きながら振り返り「子供っぽい父ですみません」と笑った。

 それに力なく笑い返した。




俺は性格が悪い。