死神さんいらっしゃい(2/2)
2015.09.18.Fri.
<前話はこちら>
ほどなくして上司がやってきた。いつも以上に眉間の皺が深く、目つきが鋭い。僕を一睨みしたあと、上司は彼に向き合い、再度説明と謝罪をして肉体に戻って頂きたいと頼んだ。
「そっちのミスなのに、手ぶらで帰すわけ?」
「哭彦からも説明があったと思いますが、我々は生きている人間に干渉できない立場なのです」
「じゃあ、あんたの出来る範囲で誠意見せてよ」
「私に出来る範囲というと?」
「つまり、こういうこと」
彼は言うなり上司を抱きしめて股間を鷲掴んだ。
「なっ……なにをするんですか! はなしなさい!」
「死神は全員感度がいいのか? もうでかくなってきたぞ」
「馬鹿なことはおやめなさい……! こんなことを……して……ッ……ぁ……やめ……っ」
上司の股間は僕の目にもはっきりわかるくらい勃起してその形を布越しに浮き上がらせていた。彼の指がその形をなぞり、先端を弄ると染みが出来た。
「んっ……あぁ……手を……はなして……っ……は、あ、アァ……」
彼の手が上司の服の中に忍び込んだ。僕の時のように乳首を弄りながらペニスを扱いている。上司は初めて見る切なげな表情で唇を震わせていた。
彼は相当慣れているのか、上司の体を弄びながらいつの間にかベルトを外し、シャツのボタンも外してしまった。
はだけたワイシャツ一枚になった上司の体は、彼の手によって面白いほどビクビクと反応し、股間のペニスは泣いているかのようにダラダラと透明な汁を零していた。
「アァ……もう、やめて……これ以上、私に……さわ……な……っ」
「後ろにハメて欲しいか、夜錫耳」
上司がはっとしたように目を見開いた。そして泣きそうな顔で、ふるふると首を左右に振った。
「俺のちんぽ欲しいんだろ、夜錫耳」
「やめ……私の名前を呼ばないで下さい……っ」
「俺が誰だか知ってるんだろ? 俺もあんたを知ってるぜ。じいちゃんから聞いてたからな。ボケたじじいの戯言だと思ってたけど、まさか本当だったとは」
二人は知り合いだったのかと驚いて説明を求めると、彼は上司の尻の穴を弄りながら教えてくれた。
彼の祖父がまだ若い頃、彼と同じように手違いで一度「死んで」しまい、その処理にあたったのが上司だった。さすが図太い彼の祖父とあって、ただで帰れるか、と上司を抱いたのだそうだ。
行き返った祖父はその出来事をしっかり覚えていて、それを家族に話して聞かせていたのだという。そんな過去があったなんて驚きの事実だ。
ほとんど裸の上司は頬を赤く染めて僕の視線から顔を背けた。僕の失敗を叱ったくせに。いつもより小言が少なくておかしいと思ったんだ。しかしこんな偶然があるものだろうか。
「そろそろいいか」
彼は言うと上司の尻穴から指を抜いた。上司と正面から向かい合うと、広げた足の中心にペニスをゆっくり嵌め込んだ。
「あ、あああぁ……なんてこと……なんてことを……!」
彼のペニスに押し上げられるように上司は顎をあげ、体を仰け反らせていった。
あれが中を擦り上げる感触を思い出して僕まだぞくりとおかしな気分になりかける。
「奥まで届いたぞ」
上司の腰をつかんで彼が言った。確かに二人の結合部は隙間なくぴったりくっついていた。
「じいちゃんと俺の、どっちがいい?」
ゆっくり腰を動かしながら彼が上司に尋ねる。
「知りませんっ……そんな……動いては駄目ですっ!」
「あんた、相当な淫乱だって聞いてるぜ」
「違います!!」
顔を真っ赤に上司は否定した。ただの強がりにしか見えなくて僕は思わず苦笑いした。僕もさっき彼のペニスで新境地を見たばかりだ。過去の上司も僕と同じように乱れたに違いない。
「嘘かほんとかは、そのうちわかるよ」
彼は余裕たっぷりの笑顔で上司の足を広げると肉棒を抜き差しし始めた。上司の穴を、長い竿が出たり入ったりしているのが見える。
「あ、んっ……だめ、そんなにしては駄目です! いや、ああっ、私を困らせないで下さい!」
嫌だの駄目だの言いながら、上司のペニスはしっかり立ち上がって自分の腹に涎を零していた。彼の腰の動きが早くなると、上司の声は止まらなくなった。
「ああっ、いやっ、だめ、だめです! やめて! あぁっ、あっ、あっ!」
「ちんぽ好きなんだろ? じいちゃんから聞いてるぜ。あのあとも、あんたと何度もやりまくったって。死んでからもやってんのかよ?」
「ちが……んっ……隆之介が……死んで……会えなくなっ……あっあぁっ」
さらに驚きの新事実だ。上司は彼の祖父の魂を肉体に戻したあとも逢瀬を重ねていたらしい。これは職権乱用の規則違反だ。
「だったら尚更、懐かしいだろ? 俺ってじいちゃん似だから」
「懐かしいなんて……ああっ! そこは……!! だめ、そこを、そんなに……しては駄目……っ!!」
彼がペニスの先に爪を立てグリグリすると、上司の声が悲鳴のような声音にかわった。髪を振り乱して嫌々と首をふり、止めさせようと彼の腕に指を食い込ませる。
「ひっ……ひい……ぁあああっ!! だめっ……嫌です!! あぁっ! そんなに……されたら……イッてしまう……!!」
やはり上司も僕と同じ目に遭っていたのだ。イクという感覚を身をもって知っている。
「いや、いやっ……ああぁっ……隆之介、私を許して……ッ!! あっ、あああぁぁんっ!!」
言うと上司のペニスから白いものが飛び出した。
なぜ彼の祖父に許しを乞うのか僕にはわからなかった。しかしあの上司の目から涙と言われるものが流れているのを見て、この行為が彼と祖父にとっては特別なものだったのだろうと推測できた。
人間同士が愛を確かめ合う手段として行っていたように、上司と祖父もそうだったのかもしれない。つまり二人は愛し合っていたのだ。
優秀で、ミスを許さない厳しい上司が、規則を破ってまで人間と愛し合うなんてにわかには信じられない話だ。だが上司は彼に突き上げられるたびに「隆之介! 隆之介!」と叫んでいる。
「そんなにじいちゃんが好きだったのか?」
彼は少し興ざめしたような顔で言った。
「好きなんて言葉では足りない……私たちにはお互いが必要不可欠なのです。隆之介に会えるのなら、私はなんだってします」
僕は上司が急に昇格試験の勉強を始めたことを思い出した。昇格すれば、ここより上の層での仕事を担当することになる。上の仕事とはつまり、人間が天国と呼んでいる場所での仕事だ。おそらくそこに隆之介がいるのだろう。
彼はため息をついて頭をガシガシと掻いた。すっかり気分が削がれてしまったのか、それとも祖父の恋人を犯す罪悪感を抱き始めたのか、一切の動きを止めていた。
「じいちゃんには世話になったからな」
呟くように言って、彼は上司の中からずるりとペニスを引き抜いた。上司はすぐさま膝を閉じ、乱れたワイシャツの前を合わせた。
「では体へ戻ってくれますね?」
すぐさま仕事の顔に戻る上司はさすがだった。
「戻る戻る。けっこう時間経っちゃったけど、脳に障害残ったりする?」
冷静にそんな心配をする彼も、ある意味さすがだ。
「こちらのミスによる死亡なので、死んでいた間に生じた障害は一切残りません。ただ、事故で負った傷はそのままです」
「俺って昔から体が丈夫だから、そっちは多分大丈夫じゃないかな」
「隆之介もそう自慢していました」
と上司が柔らかい微笑を浮かべる。
「では、あとのことは哭彦の指示に従って下さい。哭彦、あとで報告を」
そう言って上司は去って行った。
後ろ姿が見えなくなってから、僕は彼に向き直って言った。
「生島さんはまだイッてませんよね。生島さんには大変ご迷惑をおかけしましたので、イッてから帰って頂きたいのですが」
彼は一瞬呆気にとられた顔をしたが、すぐニヤリと笑って僕の手を取った。
「ちょっと萎えちゃったから、舐めて大きくしてくれる?」
「舐めて?!」
「そう、この口で俺のちんぽをおしゃぶりすんの」
彼は僕の口の中に指を入れてきた。それに舌を絡めながら、これが彼のペニスだったら、と想像すると僕の股間がグンと熱くなった。
「おしゃぶりします……生島さんのおちんぽ……」
僕も上司のように、今後も彼に会いに行ってしまうかもしれない。
ほどなくして上司がやってきた。いつも以上に眉間の皺が深く、目つきが鋭い。僕を一睨みしたあと、上司は彼に向き合い、再度説明と謝罪をして肉体に戻って頂きたいと頼んだ。
「そっちのミスなのに、手ぶらで帰すわけ?」
「哭彦からも説明があったと思いますが、我々は生きている人間に干渉できない立場なのです」
「じゃあ、あんたの出来る範囲で誠意見せてよ」
「私に出来る範囲というと?」
「つまり、こういうこと」
彼は言うなり上司を抱きしめて股間を鷲掴んだ。
「なっ……なにをするんですか! はなしなさい!」
「死神は全員感度がいいのか? もうでかくなってきたぞ」
「馬鹿なことはおやめなさい……! こんなことを……して……ッ……ぁ……やめ……っ」
上司の股間は僕の目にもはっきりわかるくらい勃起してその形を布越しに浮き上がらせていた。彼の指がその形をなぞり、先端を弄ると染みが出来た。
「んっ……あぁ……手を……はなして……っ……は、あ、アァ……」
彼の手が上司の服の中に忍び込んだ。僕の時のように乳首を弄りながらペニスを扱いている。上司は初めて見る切なげな表情で唇を震わせていた。
彼は相当慣れているのか、上司の体を弄びながらいつの間にかベルトを外し、シャツのボタンも外してしまった。
はだけたワイシャツ一枚になった上司の体は、彼の手によって面白いほどビクビクと反応し、股間のペニスは泣いているかのようにダラダラと透明な汁を零していた。
「アァ……もう、やめて……これ以上、私に……さわ……な……っ」
「後ろにハメて欲しいか、夜錫耳」
上司がはっとしたように目を見開いた。そして泣きそうな顔で、ふるふると首を左右に振った。
「俺のちんぽ欲しいんだろ、夜錫耳」
「やめ……私の名前を呼ばないで下さい……っ」
「俺が誰だか知ってるんだろ? 俺もあんたを知ってるぜ。じいちゃんから聞いてたからな。ボケたじじいの戯言だと思ってたけど、まさか本当だったとは」
二人は知り合いだったのかと驚いて説明を求めると、彼は上司の尻の穴を弄りながら教えてくれた。
彼の祖父がまだ若い頃、彼と同じように手違いで一度「死んで」しまい、その処理にあたったのが上司だった。さすが図太い彼の祖父とあって、ただで帰れるか、と上司を抱いたのだそうだ。
行き返った祖父はその出来事をしっかり覚えていて、それを家族に話して聞かせていたのだという。そんな過去があったなんて驚きの事実だ。
ほとんど裸の上司は頬を赤く染めて僕の視線から顔を背けた。僕の失敗を叱ったくせに。いつもより小言が少なくておかしいと思ったんだ。しかしこんな偶然があるものだろうか。
「そろそろいいか」
彼は言うと上司の尻穴から指を抜いた。上司と正面から向かい合うと、広げた足の中心にペニスをゆっくり嵌め込んだ。
「あ、あああぁ……なんてこと……なんてことを……!」
彼のペニスに押し上げられるように上司は顎をあげ、体を仰け反らせていった。
あれが中を擦り上げる感触を思い出して僕まだぞくりとおかしな気分になりかける。
「奥まで届いたぞ」
上司の腰をつかんで彼が言った。確かに二人の結合部は隙間なくぴったりくっついていた。
「じいちゃんと俺の、どっちがいい?」
ゆっくり腰を動かしながら彼が上司に尋ねる。
「知りませんっ……そんな……動いては駄目ですっ!」
「あんた、相当な淫乱だって聞いてるぜ」
「違います!!」
顔を真っ赤に上司は否定した。ただの強がりにしか見えなくて僕は思わず苦笑いした。僕もさっき彼のペニスで新境地を見たばかりだ。過去の上司も僕と同じように乱れたに違いない。
「嘘かほんとかは、そのうちわかるよ」
彼は余裕たっぷりの笑顔で上司の足を広げると肉棒を抜き差しし始めた。上司の穴を、長い竿が出たり入ったりしているのが見える。
「あ、んっ……だめ、そんなにしては駄目です! いや、ああっ、私を困らせないで下さい!」
嫌だの駄目だの言いながら、上司のペニスはしっかり立ち上がって自分の腹に涎を零していた。彼の腰の動きが早くなると、上司の声は止まらなくなった。
「ああっ、いやっ、だめ、だめです! やめて! あぁっ、あっ、あっ!」
「ちんぽ好きなんだろ? じいちゃんから聞いてるぜ。あのあとも、あんたと何度もやりまくったって。死んでからもやってんのかよ?」
「ちが……んっ……隆之介が……死んで……会えなくなっ……あっあぁっ」
さらに驚きの新事実だ。上司は彼の祖父の魂を肉体に戻したあとも逢瀬を重ねていたらしい。これは職権乱用の規則違反だ。
「だったら尚更、懐かしいだろ? 俺ってじいちゃん似だから」
「懐かしいなんて……ああっ! そこは……!! だめ、そこを、そんなに……しては駄目……っ!!」
彼がペニスの先に爪を立てグリグリすると、上司の声が悲鳴のような声音にかわった。髪を振り乱して嫌々と首をふり、止めさせようと彼の腕に指を食い込ませる。
「ひっ……ひい……ぁあああっ!! だめっ……嫌です!! あぁっ! そんなに……されたら……イッてしまう……!!」
やはり上司も僕と同じ目に遭っていたのだ。イクという感覚を身をもって知っている。
「いや、いやっ……ああぁっ……隆之介、私を許して……ッ!! あっ、あああぁぁんっ!!」
言うと上司のペニスから白いものが飛び出した。
なぜ彼の祖父に許しを乞うのか僕にはわからなかった。しかしあの上司の目から涙と言われるものが流れているのを見て、この行為が彼と祖父にとっては特別なものだったのだろうと推測できた。
人間同士が愛を確かめ合う手段として行っていたように、上司と祖父もそうだったのかもしれない。つまり二人は愛し合っていたのだ。
優秀で、ミスを許さない厳しい上司が、規則を破ってまで人間と愛し合うなんてにわかには信じられない話だ。だが上司は彼に突き上げられるたびに「隆之介! 隆之介!」と叫んでいる。
「そんなにじいちゃんが好きだったのか?」
彼は少し興ざめしたような顔で言った。
「好きなんて言葉では足りない……私たちにはお互いが必要不可欠なのです。隆之介に会えるのなら、私はなんだってします」
僕は上司が急に昇格試験の勉強を始めたことを思い出した。昇格すれば、ここより上の層での仕事を担当することになる。上の仕事とはつまり、人間が天国と呼んでいる場所での仕事だ。おそらくそこに隆之介がいるのだろう。
彼はため息をついて頭をガシガシと掻いた。すっかり気分が削がれてしまったのか、それとも祖父の恋人を犯す罪悪感を抱き始めたのか、一切の動きを止めていた。
「じいちゃんには世話になったからな」
呟くように言って、彼は上司の中からずるりとペニスを引き抜いた。上司はすぐさま膝を閉じ、乱れたワイシャツの前を合わせた。
「では体へ戻ってくれますね?」
すぐさま仕事の顔に戻る上司はさすがだった。
「戻る戻る。けっこう時間経っちゃったけど、脳に障害残ったりする?」
冷静にそんな心配をする彼も、ある意味さすがだ。
「こちらのミスによる死亡なので、死んでいた間に生じた障害は一切残りません。ただ、事故で負った傷はそのままです」
「俺って昔から体が丈夫だから、そっちは多分大丈夫じゃないかな」
「隆之介もそう自慢していました」
と上司が柔らかい微笑を浮かべる。
「では、あとのことは哭彦の指示に従って下さい。哭彦、あとで報告を」
そう言って上司は去って行った。
後ろ姿が見えなくなってから、僕は彼に向き直って言った。
「生島さんはまだイッてませんよね。生島さんには大変ご迷惑をおかけしましたので、イッてから帰って頂きたいのですが」
彼は一瞬呆気にとられた顔をしたが、すぐニヤリと笑って僕の手を取った。
「ちょっと萎えちゃったから、舐めて大きくしてくれる?」
「舐めて?!」
「そう、この口で俺のちんぽをおしゃぶりすんの」
彼は僕の口の中に指を入れてきた。それに舌を絡めながら、これが彼のペニスだったら、と想像すると僕の股間がグンと熱くなった。
「おしゃぶりします……生島さんのおちんぽ……」
僕も上司のように、今後も彼に会いに行ってしまうかもしれない。

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死神さんいらっしゃい(1/2)
2015.09.17.Thu.
僕の担当地区でまだ死ぬ予定のない人が手違いで死んでしまったと連絡があり、急いで現場へ向かった。
ぽつんと空に浮かんでいる霊体を見つけた。手許の端末によると17歳の男子高校生、生島亮太。彼は83歳になる春、大往生を遂げるとある。やはり手違いであるようだ。
「すみません、生島さん」
近づいて声をかける。彼は眼下に広がる世界を見たまま、「あれは俺か」と呟いた。
彼の視線を辿ってみると何やら交差点が騒がしい。魂の回収を仕事にしている僕には見慣れた交通事故現場。大型トラックにはねられた生島亮太が地面に倒れている。頭の方から大量の出血も見られる。
僕はもう一度端末を操作し、本部へ問い合わせた。彼は事故で本当に死んだように見える、手違いではないのではないか、もう一度確認願いたい、と。すぐに返事はきた。間違いではない、彼は83歳まで生きる、とあった。
あの状態で本当に83歳までもつのかと思いつつ、魂を体へ戻せとの命令なので僕は彼に説明をした。
「かくかくしかじかで、こちらの手違いだったようなのです。あの事故では間違っても仕方がないですよね」
「お前は死神か」
「人間の皆様にはそう言われてます」
「黒い服着てカマ持ってねえのかよ」
「以前は威厳を持たせるためにそのような制服を着ていた時期もあったのですが、現在は、ご霊体を怖がらせないよう教育されていますので、制服もこのようにスーツが決まりです」
「ふぅん。で、俺はあんたらの間違いで殺されたわけね」
「はい、大変申し訳ありません。ですがご安心ください。すぐに体に戻して生き返って頂きますので」
「詫びは? 間違いで殺されてはいそうですかじゃ済まねえよな。生き返らせるから許せって? 俺は器が小さいから、そんなの納得できねえな」
彼の言葉は僕には意外だった。死ぬ予定のない人が死んでしまう手違いはたまにある。その時は今の様に事情を説明すれば、ほとんどの人は安心して今すぐ生き返らせろと言う。自殺者ならともかく、ただの事故で若い青年が間違って死んでしまったのに、この落ち着きというか図々しさは一体なんなのだろう。
「ですが我々は人間界のお金を用意することはできませんし、今後の人生に便宜を図ることもできません。謝罪しかできないのです」
「ほかに出来ることがあるんじゃねえの」
「そう言われましても……僕に出来ることは、あなたを体に戻して差し上げることしか」
いきなり彼が僕の肩を掴んだ。
「触れるのか」
「暴力は意味がないですよ」
「暴力なんてふるわねえよ、ただちょっと、試してみたいだけだ」
「試すって何を」
掴んだ肩を引き寄せられた。唇同士がぴたりと密着する。キスという行為だと知っていた。それがおもに男女間で行われるということも。
なぜ僕にこんな真似をするのか理解できないまま固まっていると、口の中に彼の舌がぬるりと入り込んできた。僕の歯や口蓋をべろべろと舐めあげる。なんだろう、このくすぐったい感じは。
「やめて下さい」
「死神でも感じるわけ?」
「僕たちは仕事上、人間の形をしているだけですので、痛みはもちろん快感もありません」
「ほんとかな」
股間部分をぎゅっと掴まれた。本部はそんな部分まで人間と同じに作ったので、僕の股間には飾りだけの生殖器がくっついている。彼はそこをグニグニと揉んだ。
「触っても何もかわりませんよ」
「でも少し、大きくなってるぜ」
「嘘です」
ほんとだよ、と彼は僕のズボンを脱がした。いつも小さく垂れ下がっているだけのペニスが、別の生き物のようにむくむくと膨らみながら立ち上がって行くではないか。
人間界でたまに腹上死のご霊体を引き上げるが、その時見たように、ペニスが大きくなって天を向いていた。
「死神でも感じるんだな」
「こんなことありえません」
「先走りも出て来たぞ」
彼は僕のペニスの小さな口から溢れる液体を指の腹でくるくると撫でまわした。体がぞくぞくっと震えて、僕は思わず彼の腕を掴んだ。
「顔が赤いぞ、死神」
「僕のペニスを触るのをやめて下さい」
「僕のおちんぽって言うんだよ」
「それははしたない言葉です、それくらい知っています」
「じゃあちんぽを扱き続けたらどうなるかも知ってるか?」
「あっ、あっ、そんなに手を動かさないで下さいっ」
彼は空中をすいと移動して僕の隣に並ぶと、ペニスを扱きながら耳をべろりと舐めてきた。ぞわぞわと首筋に鳥肌が立つ。
「息も荒いぞ。やっぱ感じてんだろ」
「違います、これはっ……ん、あぁっ……あ、耳の中……舐めないでっ」
今度は背後にまわると、彼は僕の服の中に手を入れて乳首をつねってきた。出産をした女には授乳に必要なものだが、乳も出ない男の体になぜこれがついているのかわからない。
彼は乳首を捏ねるように指を動かし、時に引っ張ったり弾いたりした。そのたびに、僕の体がビクビクッと反応を見せた。
「んっ、あぁっ、嫌、嫌です! どうして感じてしまうんですか?!」
「気持ちいいからだろ?」
僕の耳に息を吹き込むように彼が言う。僕たちには痛覚がない。そして快感もない。そう聞いていたのになぜ僕のペニスは硬くそそり立ち、弄られる乳首からむず痒いような感覚が生まれて来るのか。僕の口から声が止まらないのはなぜなのか。
彼の手つきが一層早くなった。グチグチと濡れた水音が聞こえるほど、僕のペニスからは液体がダラダラと溢れている。
「あっ、あぁっ、そんなにしないで下さい! だめ、本当にだめです!!」
「イキそうなんだろ」
これがイクという感覚なのか。彼の手が僕を刺激する動きと連動して、僕の体の奥にある熱い塊を一刻も早くどうにかしたくてたまらなくなるのだ。
人間たちの営みをずっと見て来た。性交する彼らの姿を浅ましいと思っていた。だが、自分が経験してみると納得した。普段と違う声が出てしまうのも、いやらしい気分になってしまうのも、陰部を擦り合わせてしまうのも、すべて気持ちが良すぎて仕方のないことだったのだ。
「生島さんっ、僕はイクようです、もう耐えられません!!」
「おう、イケ、死神の精液見せろ」
「はぁっ、あぁ……あっ、イクっ、おちんぽ熱いですっ、生島さん、僕のおちんぽッ……あぁぁっ……!」
体の奥にあった熱い塊がペニスの中の管を通って体外へと飛び出していった。ビュッビュッと大量に出て来る。なんという強烈な快感だろう。一瞬だが頭の中が真っ白になったように意識も思考も消え去った。こんなことを経験しては、また次がしたくなるのも納得だ。
「どうだ死神。初めての射精は」
「はい……とても……気持ち良かったです……」
そう答える僕の顔はだらしなく緩んでいることだろう。「もう一度」と言ってしまわないのが不思議なくらい、僕は快楽の虜になってしまっていた。
「もっと気持ちいいことしようぜ」
これ以上に気持ちのいいこと、といったら……
「男同士でも可能なのですか」
「こっちの穴を使えば問題ない」
彼は僕の尻の奥にある穴を探りあて、指を突き入れて来た。僕たちには必要ないが、人間の場合そこは排泄に使われる器官である。男同士なのに、本当にそんなところで気持ちよくなれるのだろうか。
僕の心配は杞憂に終わった。彼の指が僕のなかを押し広げるように動いているうちに、ジンとした気持ち良さを感じる場所があることに気付いた。その快感はペニスに直結していて、何度も擦られているうちにまた勃起した。
「あぁ……生島さん……そこ、気持ちがいいです……あっ、そこっ!! あっ、あんっ! もっとグリグリしてください……生島さんのペニスで擦って下さい……っ」
「俺のちんぽ欲しいか?」
「欲しいです……僕のそこに」
「ケツマンコって言うんだよ」
「僕のケツマンコに……生島さんのおちんぽ、下さい……!」
「淫乱な死神だなぁ。名前は?」
「名前……? 僕の名前はっ……なき、哭彦っ……あっ、あ、入って……あぁっ、おっきぃ……生島さんのおちんぽ、おっきくて僕……困ってしまいます」
後ろから僕の両腕を掴んで彼は腰を振った。彼の肉棒で刺すように奥まで貫かれる。僕をおかしくしてしまう場所を硬くて熱い特大ペニスがゴリゴリと擦り上げる。
「あぁぁ! そんなに強くされたら……!! 僕、またイッてしまいそうです! また精液出してしまいます!!」
「初めてのくせに、感じまくりだな。っとに、スケベな体しやがって。ここか? ここがいいのか?」
彼は少し角度をかえ、強弱つけながら僕を狂わせるポイントを責めてくる。僕は仕事中だということも、彼が人間であることも忘れて、ひたすら与えられる快感を追い求めた。
「あ、あぁん! そこ、です! そこが好きっ……でも、やだっ、だめ、あっ! 感じすぎて……怖いです! またイキます! 精液でます! 生島さん、僕イッちゃいます……!!」
僕は自分でペニスを扱いて射精をした。一度目とかわらない衝撃。恍惚となったあとに襲い掛かってくる疲労感。体が重いと感じたのは初めてのことだ。
「詫びる立場のお前が俺より先に2回もイッてちゃ世話ねえな」
「す、すみません……なにぶん初めてのことで、慣れておらずに……」
「お前じゃ話にならねえな。上司呼べ。そいつに謝罪してもらうわ」
「えっ、上司ですか……」
いつも眉間にしわをよせて不機嫌そうな上司の顔が思い出される。人にも自分にも厳しい人がこの状況を知ったらどうなることやら。しかも今は昇格試験の勉強をしていていつも以上にピリピリしているというのに。
「それだけは勘弁してもらえませんか」
「勘弁ならん。早く呼べ」
仕方なく僕は上司に連絡を取った。性交したこと以外の事情を話すと案の定叱られた。しかし今すぐ行くと言ってくれたので待つことにした。
「上司の名前はなんていうんだ?」
「夜錫耳です」
「ヨスズジ? どんな奴?」
「優秀で厳しい人です」
「楽しみだな」
彼は舌なめずりをして笑った。
ぽつんと空に浮かんでいる霊体を見つけた。手許の端末によると17歳の男子高校生、生島亮太。彼は83歳になる春、大往生を遂げるとある。やはり手違いであるようだ。
「すみません、生島さん」
近づいて声をかける。彼は眼下に広がる世界を見たまま、「あれは俺か」と呟いた。
彼の視線を辿ってみると何やら交差点が騒がしい。魂の回収を仕事にしている僕には見慣れた交通事故現場。大型トラックにはねられた生島亮太が地面に倒れている。頭の方から大量の出血も見られる。
僕はもう一度端末を操作し、本部へ問い合わせた。彼は事故で本当に死んだように見える、手違いではないのではないか、もう一度確認願いたい、と。すぐに返事はきた。間違いではない、彼は83歳まで生きる、とあった。
あの状態で本当に83歳までもつのかと思いつつ、魂を体へ戻せとの命令なので僕は彼に説明をした。
「かくかくしかじかで、こちらの手違いだったようなのです。あの事故では間違っても仕方がないですよね」
「お前は死神か」
「人間の皆様にはそう言われてます」
「黒い服着てカマ持ってねえのかよ」
「以前は威厳を持たせるためにそのような制服を着ていた時期もあったのですが、現在は、ご霊体を怖がらせないよう教育されていますので、制服もこのようにスーツが決まりです」
「ふぅん。で、俺はあんたらの間違いで殺されたわけね」
「はい、大変申し訳ありません。ですがご安心ください。すぐに体に戻して生き返って頂きますので」
「詫びは? 間違いで殺されてはいそうですかじゃ済まねえよな。生き返らせるから許せって? 俺は器が小さいから、そんなの納得できねえな」
彼の言葉は僕には意外だった。死ぬ予定のない人が死んでしまう手違いはたまにある。その時は今の様に事情を説明すれば、ほとんどの人は安心して今すぐ生き返らせろと言う。自殺者ならともかく、ただの事故で若い青年が間違って死んでしまったのに、この落ち着きというか図々しさは一体なんなのだろう。
「ですが我々は人間界のお金を用意することはできませんし、今後の人生に便宜を図ることもできません。謝罪しかできないのです」
「ほかに出来ることがあるんじゃねえの」
「そう言われましても……僕に出来ることは、あなたを体に戻して差し上げることしか」
いきなり彼が僕の肩を掴んだ。
「触れるのか」
「暴力は意味がないですよ」
「暴力なんてふるわねえよ、ただちょっと、試してみたいだけだ」
「試すって何を」
掴んだ肩を引き寄せられた。唇同士がぴたりと密着する。キスという行為だと知っていた。それがおもに男女間で行われるということも。
なぜ僕にこんな真似をするのか理解できないまま固まっていると、口の中に彼の舌がぬるりと入り込んできた。僕の歯や口蓋をべろべろと舐めあげる。なんだろう、このくすぐったい感じは。
「やめて下さい」
「死神でも感じるわけ?」
「僕たちは仕事上、人間の形をしているだけですので、痛みはもちろん快感もありません」
「ほんとかな」
股間部分をぎゅっと掴まれた。本部はそんな部分まで人間と同じに作ったので、僕の股間には飾りだけの生殖器がくっついている。彼はそこをグニグニと揉んだ。
「触っても何もかわりませんよ」
「でも少し、大きくなってるぜ」
「嘘です」
ほんとだよ、と彼は僕のズボンを脱がした。いつも小さく垂れ下がっているだけのペニスが、別の生き物のようにむくむくと膨らみながら立ち上がって行くではないか。
人間界でたまに腹上死のご霊体を引き上げるが、その時見たように、ペニスが大きくなって天を向いていた。
「死神でも感じるんだな」
「こんなことありえません」
「先走りも出て来たぞ」
彼は僕のペニスの小さな口から溢れる液体を指の腹でくるくると撫でまわした。体がぞくぞくっと震えて、僕は思わず彼の腕を掴んだ。
「顔が赤いぞ、死神」
「僕のペニスを触るのをやめて下さい」
「僕のおちんぽって言うんだよ」
「それははしたない言葉です、それくらい知っています」
「じゃあちんぽを扱き続けたらどうなるかも知ってるか?」
「あっ、あっ、そんなに手を動かさないで下さいっ」
彼は空中をすいと移動して僕の隣に並ぶと、ペニスを扱きながら耳をべろりと舐めてきた。ぞわぞわと首筋に鳥肌が立つ。
「息も荒いぞ。やっぱ感じてんだろ」
「違います、これはっ……ん、あぁっ……あ、耳の中……舐めないでっ」
今度は背後にまわると、彼は僕の服の中に手を入れて乳首をつねってきた。出産をした女には授乳に必要なものだが、乳も出ない男の体になぜこれがついているのかわからない。
彼は乳首を捏ねるように指を動かし、時に引っ張ったり弾いたりした。そのたびに、僕の体がビクビクッと反応を見せた。
「んっ、あぁっ、嫌、嫌です! どうして感じてしまうんですか?!」
「気持ちいいからだろ?」
僕の耳に息を吹き込むように彼が言う。僕たちには痛覚がない。そして快感もない。そう聞いていたのになぜ僕のペニスは硬くそそり立ち、弄られる乳首からむず痒いような感覚が生まれて来るのか。僕の口から声が止まらないのはなぜなのか。
彼の手つきが一層早くなった。グチグチと濡れた水音が聞こえるほど、僕のペニスからは液体がダラダラと溢れている。
「あっ、あぁっ、そんなにしないで下さい! だめ、本当にだめです!!」
「イキそうなんだろ」
これがイクという感覚なのか。彼の手が僕を刺激する動きと連動して、僕の体の奥にある熱い塊を一刻も早くどうにかしたくてたまらなくなるのだ。
人間たちの営みをずっと見て来た。性交する彼らの姿を浅ましいと思っていた。だが、自分が経験してみると納得した。普段と違う声が出てしまうのも、いやらしい気分になってしまうのも、陰部を擦り合わせてしまうのも、すべて気持ちが良すぎて仕方のないことだったのだ。
「生島さんっ、僕はイクようです、もう耐えられません!!」
「おう、イケ、死神の精液見せろ」
「はぁっ、あぁ……あっ、イクっ、おちんぽ熱いですっ、生島さん、僕のおちんぽッ……あぁぁっ……!」
体の奥にあった熱い塊がペニスの中の管を通って体外へと飛び出していった。ビュッビュッと大量に出て来る。なんという強烈な快感だろう。一瞬だが頭の中が真っ白になったように意識も思考も消え去った。こんなことを経験しては、また次がしたくなるのも納得だ。
「どうだ死神。初めての射精は」
「はい……とても……気持ち良かったです……」
そう答える僕の顔はだらしなく緩んでいることだろう。「もう一度」と言ってしまわないのが不思議なくらい、僕は快楽の虜になってしまっていた。
「もっと気持ちいいことしようぜ」
これ以上に気持ちのいいこと、といったら……
「男同士でも可能なのですか」
「こっちの穴を使えば問題ない」
彼は僕の尻の奥にある穴を探りあて、指を突き入れて来た。僕たちには必要ないが、人間の場合そこは排泄に使われる器官である。男同士なのに、本当にそんなところで気持ちよくなれるのだろうか。
僕の心配は杞憂に終わった。彼の指が僕のなかを押し広げるように動いているうちに、ジンとした気持ち良さを感じる場所があることに気付いた。その快感はペニスに直結していて、何度も擦られているうちにまた勃起した。
「あぁ……生島さん……そこ、気持ちがいいです……あっ、そこっ!! あっ、あんっ! もっとグリグリしてください……生島さんのペニスで擦って下さい……っ」
「俺のちんぽ欲しいか?」
「欲しいです……僕のそこに」
「ケツマンコって言うんだよ」
「僕のケツマンコに……生島さんのおちんぽ、下さい……!」
「淫乱な死神だなぁ。名前は?」
「名前……? 僕の名前はっ……なき、哭彦っ……あっ、あ、入って……あぁっ、おっきぃ……生島さんのおちんぽ、おっきくて僕……困ってしまいます」
後ろから僕の両腕を掴んで彼は腰を振った。彼の肉棒で刺すように奥まで貫かれる。僕をおかしくしてしまう場所を硬くて熱い特大ペニスがゴリゴリと擦り上げる。
「あぁぁ! そんなに強くされたら……!! 僕、またイッてしまいそうです! また精液出してしまいます!!」
「初めてのくせに、感じまくりだな。っとに、スケベな体しやがって。ここか? ここがいいのか?」
彼は少し角度をかえ、強弱つけながら僕を狂わせるポイントを責めてくる。僕は仕事中だということも、彼が人間であることも忘れて、ひたすら与えられる快感を追い求めた。
「あ、あぁん! そこ、です! そこが好きっ……でも、やだっ、だめ、あっ! 感じすぎて……怖いです! またイキます! 精液でます! 生島さん、僕イッちゃいます……!!」
僕は自分でペニスを扱いて射精をした。一度目とかわらない衝撃。恍惚となったあとに襲い掛かってくる疲労感。体が重いと感じたのは初めてのことだ。
「詫びる立場のお前が俺より先に2回もイッてちゃ世話ねえな」
「す、すみません……なにぶん初めてのことで、慣れておらずに……」
「お前じゃ話にならねえな。上司呼べ。そいつに謝罪してもらうわ」
「えっ、上司ですか……」
いつも眉間にしわをよせて不機嫌そうな上司の顔が思い出される。人にも自分にも厳しい人がこの状況を知ったらどうなることやら。しかも今は昇格試験の勉強をしていていつも以上にピリピリしているというのに。
「それだけは勘弁してもらえませんか」
「勘弁ならん。早く呼べ」
仕方なく僕は上司に連絡を取った。性交したこと以外の事情を話すと案の定叱られた。しかし今すぐ行くと言ってくれたので待つことにした。
「上司の名前はなんていうんだ?」
「夜錫耳です」
「ヨスズジ? どんな奴?」
「優秀で厳しい人です」
「楽しみだな」
彼は舌なめずりをして笑った。