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待田くんに春の気配(3/3)

2015.09.01.Tue.
<前話はこちら>

 ゴムの上から手で擦って馴染ませたあと、「できた」と俺のちんこを軽くビンタした。うっ……あまり刺激を与えないでほしい。

「ヤル時は相手が誰であれちゃんとつけるんだぞ」

 言うと遠野は俺の膝を開いてその中心に勃起したちんこを宛がってきた。そういうお前はゴムつけてないじゃないか! というかまじで入れる気かよ!!

「待てっ! もういい! わかったから!!」
「何がわかったんだよ。穴の位置さえわかんねえ奴が」
「ううっ……うわ、あ、と、遠野っ……入ってる! 入ってきてるって……!!」
「そりゃ入れてるからね」

 ゆっくり、だけど確実に、遠野のちんこが俺の中へ中へと侵入してくる。指で慣らされたおかげか意外と簡単に入ってくる。奥へ、奥へ。途中、前立腺をゴリッとやられて、不覚にも上擦った声が出てしまった。

「もう少しで全部入るぞ」
「う、ううっ……まじかよぉ……なんでこんな……っ」
「すげえきついな……佐々木はきっとゆるゆるだから楽だな」

 あぁ、そうだった、ここは佐々木んち。まだシャワーの音は聞こえるけど、いつ出てきてもおかしくない。

「濡れない場合はローションが便利なんだけど、流石にいま持ってねえからな」
「とお、の……、お前、もしかして、男と……したことあるのか?」
「……さあ」

 返事をはぐらかした遠野が俺のちんこを握る。

 遠野は男同士でセックスしたことがあるのかもしれない。だから俺とキスするのもちんこ扱くのも平気なのかもしれない。相手はどんな奴だったんだろう。俺よりイケてる奴なのか。経験したのは一人なのかもっと多いのか。

 気になるけど、遠野の指が鈴口をグリグリ刺激してきたのでそれどころじゃなくなった。

「んっ、あ、それっ」

 指を動かしながら、遠野はゆっくり腰も動かしだした。指より太くて大きいものが中を擦り上げる。さっき指でやられていた時みたいに根本の奥が熱くなって、一旦引いていた射精感が押し上げられてきた。

「はっ……ぁあ……あ、んっ……!」
「腰動いてるぞ」
「だって……勝手にっ」
「痛くない?」
「い……たく、ないっ……」
「良かった」

 ほんとはちょっと痛いけど、それを凌駕する気持ち良さとか興奮とか背徳感とかがあった。佐々木の家で、友達の遠野と、俺はセックスしている。しかも俺が遠野に掘られるほうだ。遠野のちんこで前立腺をゴリゴリやられて、直接的な刺激では味わえない感覚に溺れそうになっている。

 実は前回のあれ以来、頭のどこかでまた同じことが出来ないかと思っていた。遠野としたキスは嫌じゃなかった。遠野のちんこを触っても気持ち悪いなんて思わなかった。むしろまた、触って触られたいと思っていた。

 もしかして俺は遠野のことを好きになってしまったんだろうか。ただ気持ちいいことをしたいだけなんだろうか。どっちなんだか判断がつかない。

 とにかく今は気持ちが良くて、早くイカせてもらいたい、それだけだ。

「あっ、あ、遠野っ……」
「イキそう?」
「とおの、は……?」
「俺ももう少し」

 なぜだか遠野は嬉しそうに目を細めて笑った。初めて見る優しい表情だ。やらしいことをすると、毎回遠野の新しい一面を知る。もっといろんな面を知りたい、なんて思って、こいつが女の子にモテる本当の理由に気付いた気がした。外見とか、わかりやすい優しさとか、分け隔てない気さくさがウケてるわけじゃないんだ。たぶん。

「はぁ……ん、あ、あぁ……っ」
「いつでも出していいぞ」
「あぁ……っ……ほんと……出るっ……」

 ティッシュを探しかけてコンドームをつけてたんだったと思い出した。このまま出しちゃっていいのか。後始末が楽だな。

「はぁっ……あ……先に……イッて、いい?」
「いいよ」

 遠野の腰の動きが早くなった。中からグチグチと濡れた音を響かせながら、ズンズンと奥を突き上げられる。

「あぁ…ああぁ……あっ……イッ……!!」

 遠野に中を擦られて、熱い塊が体から飛び出して行った。前に遠野にしてもらったのとはぜんぜん違う気持ちよさだった。今回は体の奥から快感の熱が広がって手足にまで力が入らなくなるような感じだ。しかも恐ろしいことに遠野が動くたびにまた気持ちよくなってる。いつもの虚脱感はなく、射精ギリギリの敏感な状態がまだ続いていた。

「あぁ、んっ……遠野……まっ……待って! なんか、俺……変! また、んっ! まだ気持ちいいっ」
「すっげー、初めてなのに、ケツで感じちゃってるの?」
「……ぁんっ、ん! あ、や、やだっ、遠野……っ!!」
「待田、かわいい」

 かわいいとか言われても、頭が茹っててどう反応すればいいかわからない。恥ずかしいんだけど、妙に嬉しくもあったりして。頭の中ぐちゃぐちゃだ。

「俺ももうイクから」
「……っ…イッって……遠野、早く……っ」

 早く終わらせてくれ! でないと俺はおかしくなりそうだ!

 俺の足を抱えなおして遠野はラストスパートをかける。激しいピストンに理性が溶かされて行く。

「あっ、あぁっ! あ、そんな、強く……やめっ……遠野、イクっ、また、出るから……!!」
「ごめん、待田……!」

 なぜ謝るのか不思議に思った直後、体の奥に熱い迸りを感じて、怒るよりも、嬉しいなんて思っちゃった俺はどうしたらいいんだろう……。



 駆け込んだトイレの中。遠野の出したものを出していたら浴室から戻った佐々木の声が聞こえて来た。

「あれ、待田は?」
「お腹壊したみたいでトイレ」
「やだぁ、ださい」
「だからもう俺たち帰るよ」
「えー、待田だけ帰して遠野は残ってよ」

 心配をするどころか俺を追い出したがってるみたいな佐々木に落胆はなくて、やっぱりあいつの狙いは最初から遠野だったんだなと賢者タイムの聡明な頭で確信した。

 遠野は最初からそれに気付いていたんだろう。だから佐々木はお勧めしないと言い、今日の誘いにもいい顔しなかったんだ。色欲に目がくらんだ俺って馬鹿だ。

 水を流してトイレを出る。不機嫌そうな佐々木が俺を睨むように見る。バスタオル巻いただけの姿にびびる。ほんとにこいつ、3Pやるつもりだったんだ。

「遠野、帰ろう」
「おう」

 俺たちが玄関に向かうと佐々木が「待ってよ!」と追いかけて来た。振り返って俺は言った。

「この前の返事なんだけど、佐々木と付き合うって無理だから」
「はあ?! なんで?!」
「俺、好きな奴が出来たっぽい」
「こっちだってあんたなんか無理よ! っていうか最初から相手にしてないし!」  

 顔を真っ赤にした佐々木が遠野を見る。

「俺も無理。好きな奴がいるから」

 遠野にも振られて佐々木は鬼の形相になった。ヒステリックに喚く佐々木を置いて二人で部屋を出た。外の通路を歩いていてもまだ佐々木の叫び声が聞こえてくる。おっかない。

「待田の好きな奴って誰?」

 エレベーターを待っていたら遠野が訊いてきた。

「遠野の好きな奴って誰?」

 到着したエレベーターに二人で乗り込む。扉が閉まると同時に、俺たちはどちらともなくキスをしていた。



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待田くんに春の気配(2/3)

2015.08.31.Mon.
<前話はこちら>

 部屋は散らかっているというのでリビングに通された。本当に親の姿はなかった。もし遠野がいなかったら今頃佐々木と二人きりで、どうしていいかわからず逃げ出したくなっていただろう。

 佐々木はキッチンで俺たちのお茶を用意してくれている。俺はベランダに出た。マンションの最上階とあって景色がいい。ついてきた遠野が「友達とやらはいつ来るんだよ」と小突いてきた。

「俺に言われても知るか。佐々木に聞けよ」
「ほんとにその友達とやらは来んのかね」
「来るだろ。お前のこと好きって言ってるんだから」
「嘘くせえ」
「そんな嘘ついてどうするんだよ」
「いや……まぁいいや。そのうちわかんだろ」

 遠野の機嫌が微妙に悪い。かろうじて笑ってはいるけど、目つきがいつもの柔らかい感じとは違う。いきなりダブルデートみたいなものに連れ出されたのだから怒るのも無理ないかもしれない。

「ごめん」 
「お前に謝ってもらってもね」

 遠野は肩をすくめて部屋に戻って行った。見ると、お茶の用意が終わった佐々木が俺たちを手招きしている。俺も部屋に入った。

「佐々木の友達っていつ来るわけ?」

 ソファに腰をおろして遠野が訊ねた。

「それがね、さっき連絡きて、用事が出来たから来られないんだって」

 遠野の隣に座って佐々木が答えた。テーブルの横で立ったままの俺を、遠野がちらりと見上げてきた。遠野に無駄足を踏ませてしまった。申し訳なくて「帰ろうか」と提案しようと口を開いた時、

「今日は三人でいいじゃない! せっかく集まったんだし楽しくしようよ! 失恋したばっかりだから、人数多いほうが気が楽になるんだよね。ね、いいでしょ、待田」

 佐々木が捲し立てるように言って俺の手を握って来た。しっとりしてて、細くて、男とは違う感触に動転した俺は、勢いにおされて頷いてしまった。遠野にはあとできちんと謝ろう。遠野が居づらくならないように、佐々木がいちゃついてきても相手にしないようにしよう。

 佐々木が「ゲームでもする?」と言い出し、三人でもできるカーレースのゲームをすることになった。子供の頃からあるシリーズもののゲームでつい夢中になった。遠野も楽しそうでほっとする。佐々木がジュースやらお菓子やらを次々出して来るので腹も満たされた。

「なんか、ムキになりすぎて汗かいちゃった。軽くシャワー浴びてくるね」

 ゲームを始めて小一時間が経った頃、佐々木はそう言うと本当にゲームをやめて浴室へと消えた。いろいろ生々しい想像をして俺はもうゲームどころじゃない。

「確かにちょっと汗かいたかも」

 別の意味で興奮していることを誤魔化すためにゲームに疲れたふりをするも、童貞の白々しい演技なんて遠野にはバレバレだったようで、「お前には刺激が強すぎるだろうな」と笑われた。

「俺はお前と違って女の家とか慣れてないんだ」
「あのビッチ、三人でヤル気だ」
「ヤ……まさか!」

 ぎょっとして大きな声が出た。

「俺が渡したゴムはちゃんと持ってるか? いつでも使えるように出しやすいとこに移動させとけよ」
「使わないよ! っていうか三人でとか、いくら佐々木でもそれはないだろ!」
「あいつの股の緩さをお前が知らないだけだよ。ゲームの最中、すげえわざとらしいボディタッチが何度もあっただろ。あれ、誘ってんだよ。最初からそのつもりだったんじゃね? 友達の話とか、嘘臭かったもん」

 確かにボディタッチは多かった。正直、下半身が反応しそうになるくらいに多かった。佐々木はただ楽しんではしゃいでいるだけだと思っていたのに、あれは罠だったのか! しかも最初からそのつもりで遠野を誘ったなんて……!

「さ、ささ、さん、さ、さんっ……まじでっ」
「落ち着けよ、俺はお前と佐々木で3Pなんてちんこ腐っても嫌だから安心しろ」
「俺だって嫌だわ! どーすんだよ! 佐々木はその気なんだろ?!」
「俺はバックレる。先に帰るから、お前は佐々木にゆっくりじっくり手解きしてもらえ」
「えっ、帰んの?!」

 腰をあげかけた遠野の腕を咄嗟に掴んで引き留めた。遠野が帰ったら俺は佐々木と二人きりになってしまう。

「俺も帰る! 俺に佐々木の相手は無理だ! 怖い! だ、だって、俺、童貞だぞ?! 彼女いたことないんだぞ?! どうしていいかわかんねえよ!」
「この前教えてやっただろ。向こうはもうわかりやすいくらい乗り気なんだから、キスして押し倒して乳揉めばいいんだよ」
「そのあとはどうするんだよ! 簡単に言うな! 俺はお前と違うんだ! 途中までしか教えてくれなかったくせに! ちゃんと最後まで教えろよ!!」

 テンパりすぎて俺は遠野を責めるように声を荒げていた。怒鳴られた遠野が驚いた顔して俺を見つめてる。とんでもない責任転嫁だ。自信がないのを遠野のせいにしている。

「お前、自分がなに言ってるかわかってる?」

 薄く目を細めて遠野が囁くように言う。怒らせた! 無理もない。騙されて連れてこられた上、逆切れされたんじゃ俺だってキレる。

「ご、ごめん、俺……やっぱり俺も一緒に帰――ッ」

 言い終わる前に俺の口は遠野の唇で塞がれていた。いきなりのことで固まって至近距離にある遠野の目を見返した。怒ったような遠野の目も、まっすぐ俺を見つめ返して来る。肩を掴まれ押し倒された。軽く押されただけだったのに、俺は簡単に床の上に寝転がっていた。

 床に手をついた遠野が俺の顔を覗きこんでくる。

「ほんとに最後まで教えて欲しいか?」
「さ、最後……?」

 遠野がいつもと違ってまじな顔をするから、俺は怖くなって目を泳がせた。最後まで教えろって確かに言ったけど。そんなの本気で言ったんじゃ……

「この前の続き。教えて欲しいんだろ? 今から教えてやる」

 そう言うと遠野はまた俺にキスしてきた。今度は舌まで入れて来て中を舐め回しながら、それと同時に股間を揉んできた。

「んあ?! ちょ、まっ」
「時間あんまねえぞ」

 遠野の目がすばやく何かを窺うように動いたのを見て、浴室の佐々木のことを思い出した。まだシャワーの音は聞こえるが、いつ出て来るかわからない。

「じゃ、ちょ、やめ……っ」
「今更遅い」

 ズボンのチャックを下ろされ、中から半立ちのものを引っ張り出された。相手は遠野なのに、キスされただけでもうこれだ! 恥ずかしくて顔から火が出そうになる。

 片手で俺のものを扱きながら、遠野はもう片方の手で前をくつろげ、自分のものも取り出した。ついこの前見たばかりの、勃起した遠野のちんこだ。

 遠野は腰を近づけて、亀頭同士を擦り合わせた。手とは違う感触に体がゾクゾク震える。なんだよ、これ……!!

「うっ……」
「これ、兜合わせっていうの」

 ズリズリと大きく動かしながら楽しそうに遠野が言う。裏筋にぬるっとした感触。遠野の先走りだ。そして俺の亀頭もすでにヌルヌルになっていた。

「ふ…っ…ん、あ、あぁ……!!」
「結構いいだろ」
「ひぁ……っ、い、う、んっ……」

 今度は二本をまとめて握って扱かれた。手と遠野のちんこ、両方で擦られてるようで、なんかもうたまんない感じになる。腹がビクビク脈打って、呼吸も乱れて、変な声が出る。

「あっ、あ、そんなにコスるな……!」
「こうやって感じさせて、相手の気持ちが昂ぶってきたら、次のステップな」

 いきなり尻の後ろに手を突っ込まれ、指先で穴を探り当てられた。次のステップって……もしかして突っ込むとこまでやるつもりなのか? 本気?! 俺が突っ込まれる方?!

「なんで!? どこ触ってんだよ!」
「最後まで教えろって言ったの、お前だろ。ここが嫌なら口に突っ込んでやろうか?」
「どっちも嫌だ……って、遠野! おま、指入れんなぁ!!」

 ぐりぐり回しながら遠野の指が奥へと入り込んでくる。本来出す器官だ。半端ない異物感に粟立つ俺を無視して、遠野は指をまわしながら出したり引いたりを続ける。

「遠野っ、お前……おま……う、あっ」

 指の関節を曲げられて中が広げられる。上向きの指でぐっと押されたところが何かのツボなのか、根本の奥のほうがジンと熱くなった。そこを何度も擦られていると射精感が高まって、気持ちいいんだか悪いんだかわけがわからなくなる。

「も…おっ……やめ……ぁっ……あッ……!」
「腰抜けそうになるだろ? ここ、前立腺っつって、男のGスポットみたいなもん」

 なんか聞いたことある名前! だけど、それってだいたい病気かホモネタのときに耳にするんだが。あ、いま俺たちがやってる行為ってホモセックスになるのか! 俺、遠野とセックスしてるのか?!

「う、あぁ……あっ、やめ、遠野っ……あぁ……ん」
「気持ちいい?」

 足の間、俺の息子越しに遠野のニヤついた顔が見えた。なぜにこいつはこんなに楽しそうなんだ!

「お前、なんでこんな……詳し……ンだよ……!」
「男の体も女の体と大差ねえよ。突っ込む穴があって、擦ればお互い気持ちよくなる。現にお前、もうイキそうだろ」

 前立腺をグリグリされながらちんこもゴシゴシ扱かれて強制射精待ったなしといった感じだった。普段一人でやるより正直何倍も気持ちがいい。この快感の中、射精出来たらどんなに……と期待していたら、突然遠野の手が離れて行った。

「……え?」
「ほんとはもっと解した方がいいんだけど、時間もないから短縮バージョン。朝お前にあげたゴム、使うぞ」

 いつの間にか遠野の手にはコンドームが。前回のブラを外す手際といい、こいつにはスリの才能があるようだ。

「お前のことだから付け方もろくに知らないだろ」

 ピリリと袋を破いて中からゴムを取り出すと、遠野は俺の先端にそれを押さえつけ、擦るようにクルクルと巻き下ろしていった。器用だな、と感心する無駄のない動き。逆に言うとどんだけつけ慣れてるんだよ。




待田くんに春の気配(1/3)

2015.08.30.Sun.
<前話「待田くんに春はこない」はこちら>

 冗談だか本気だかわからない感じで「付き合ってよ」と佐々木に言われたわけだけども、それと同じことを遠野にも言っていたことがわかったので俺の心は九分九厘断る方向で決まっていたのだが。

 月曜の朝、教室に入ると佐々木が駆け寄ってきて「今日のお昼、一緒に食べよ?」と耳打ちしてきてつい「お、おう」と承諾してしまった。弱すぎるぞ俺。既成事実とやらで固められて付き合うことになってしまいそうじゃないか。

 佐々木の見た目は悪くない。ただ遠野曰く、男を切らしたことがないのが自慢のビッチらしいし……。そんなに経験豊富なら、すごいテクとか持っていそうだな。

 ピンクな妄想に取りつかれていたら「what’s up!」と強い力で背中を叩かれて体がよろけた。見ると遠野だ。欧米か。

「いてえだろ、この野郎」
「鼻の下伸ばしてなに考えてたんだ、この野郎」
「べっ、別になにも!」

 友達同士で喋っている佐々木のほうをチラっと見てにやりと遠野が笑う。

「付き合うことにしたんだ?」
「付き合わないよ! ただちょっと……昼飯を一緒に……」
「流されやすい奴だなぁ。こっちまで食われないように気を付けろよ」

 ぎゅっと俺の股間を鷲掴んだあと、遠野は自分の席へと向かった。掴まれた感触にちょっと腰が引け気味の俺。ブラのホックを外す練習した週末が嫌でも思い出されてしまう。ただの友達の遠野と、キスしたり、扱きあったりしたんだよな。あいつの唇、柔らかかったなぁ……。

 またピンク色の妄想が始まりそうになり、慌てて追い払った。遠野で妄想とか。いくら今まで彼女がいなかったからって。ファーストキスが遠野だからって。ありえない。ありえないぞ。



 昼になると佐々木は当然のように「一緒に食堂行こ」と誘ってきた。これってもう付き合ってることになるんだろうかと思いつつ、「お、おう」と周りを気にしつつ教室を出る。

 ビッチな佐々木の次の男は待田だという目で見られているのだろうか。それちょっと恥ずかしい。いかにもヤルために付き合うみたいじゃないか。いや、そうなのか。いや、待てよ、俺って佐々木のこと、好きなんだっけ?

 うどんとカレーのセットを頼み、佐々木と並んでテーブルにつく。佐々木ビッチという遠野の情報のせいで、AV女優の隣にいるような恥ずかしさと居心地の悪さを感じる。そんなこと知ったら佐々木は怒り狂いそうだけど。

「一口頂戴」

 佐々木は俺のカレーに手を伸ばしてきた。食べかけのカレーなのに、気にもせず一口食べて「学校のカレーって家のカレーより美味しく感じない?」とか言ってる。

 あれか。これは回し飲みの延長みたいなものか。男の食べかけのカレーでも、いまは平気でシェアできる時代なのか。俺は凄く意識してしまうんだけど。というかきっと、男が同じことしたら女から非難轟々だと思うけど。女ずるいぞ。

「待田っていままで付き合ったの何人?」

 自分のオムライスをつつきながら佐々木が横目に見てくる。「付き合ったことある?」じゃなくて「何人?」だって?!

 佐々木との常識の違いに背中がゾクゾクする。嘘ついたほうがいいのか。見栄はって適当な人数言っといた方が馬鹿にされないのは確かだが、すぐにボロが出そうだ。

 迷いに迷ったすえ「何人だと思う?」と質問に質問で返すと言うタブーを犯した。佐々木は一瞬面倒くさそうに眉を動かしたが「二人くらい?」と笑顔を持ち直した。

「まぁ、そんな……多いような少ないような……」
「私の経験人数知りたい?」
「え、いやぁどうかな」
「たぶんだけど、遠野よりは少ないよ」

 急に遠野の名前が出て来る。遠野もそれなりに多いはずだ。遊ぼうと誘ってもデートだと断られたことがしばしば。あまりプライベートを話したがらないから詳しくは知らないけど、たまに話を聞けば、たいてい前回とは違う子と付き合っているし。学校のなかじゃ常に数人の女の子をはべらせているから誰が本命かわからないし。本命じゃない子も、何人がいるみたいだし。

 あの遠野と張り合える経験人数なのだろうか。

「凄いな」

 素直な感想がぽろりと口から零れ出た。佐々木は気を悪くした様子もなく、むしろ笑みを濃くして「学校終わったら、うち来ない?」とすり寄って来た。

「うちって、佐々木の? 家?!」
「そうだよ。うちの親、共働きでいつも遅いから」

 佐々木は俺の太ももに手を乗せて来た。触れ合っているその場所が、灼熱の棒を押し付けられたみたいに熱い。俺、食われちゃうのか!?



「完全に食う気だな」

 昼休みのやり取りを話すと遠野は断言した。

「どどどどうしよう」
「ゴム持ってるか? あの糞ビッチのことだから性病には気を付けろよ」
「お前、最低……性病持ってるの?」
「知るか」
「遠野でも、佐々木とはヤッたことないのか?」
「残飯食うほど飢えてねえの」
「お前、最t……じゃあ俺はなんなんだよ」
「珍味だと思って行って来い。シュールシュトレミング? だっけ? あれだよ、あれ」

 世界一臭い食べ物か。佐々木がこの場にいたらぶっ殺されそうだ。

「お前も佐々木にビッチ扱いされてたけどな」
「俺はあいつの足元にも及ばねえよ」
「実際、何人なんだ?」
「なにが?」
「経験した人数」
「遊びとか、一回限りも入れて?」

 一回限りとかあるのかよ。もう俺とは別世界の話だ。聞いてて頭がくらっとする。

「やっぱいい」

 同じ男として自信なくしそうだ。

「で、真面目な話、コンドーム持ってるのか?」

 乾く暇もなさそうな遠野と違って、童貞の俺がそんなもの常備しているわけがないだろう。黙って首を振ると「俺に任せとけ」と遠野はどこかへ姿を消した。

 休み時間が終わる頃に戻ってきて、俺の胸ポケットへ何かを滑り込ませる。

「悪い、一個しか用意できなかった」
「コン……ドーム?」

 遠野は笑って俺の肩を叩くと自分の席へ戻って行った。俺は自分の胸ポケットへ手を当てた。カサリと小さな音を立てて確かにそこにある。遠野はこれをどこから調達してきたんだ? というか俺は今日、これを使って本当に童貞を捨ててしまうのか?!



 放課後になって佐々木が俺のところへやってきた。「行こ?」とガッチガチに固まっている俺の腕を掴んで立たせた。しかしそのあと佐々木が動こうとしないので不思議に思って見ると、佐々木は俺じゃなくクラスメートと談笑中の遠野を見ていた。

「ねえ、遠野も誘わない?」
「えっ、なんで」
「待田って遠野と仲良いから」

 確かに仲はいいけど、いまから佐々木の家に行ってヤルんじゃないの? 遠野も一緒に誘うってことはヤルつもりじゃないってことか? それとも本命は遠野ってことか?

「別に二人でもいいんだけど。実は友達に遠野のこと好きって子がいてね、その子も誘ってるんだよね」
「あ、そうなの?」

 じゃあやっぱり今日はするつもりじゃないのか。安心するようながっかりするような。いや、これでいいんだ。付き合ってるかもわからない佐々木とそんなことするなんておかしいし、いきなり部屋に二人きりになるより、気心の知れた遠野が一緒にいてくれたほうが心強い。四人もいれば気まずい沈黙もできなくて楽しい時間を過ごせそうだし。

「だったら遠野も誘ってくるよ」

 俺は遠野へ近寄り声をかけた。話を聞いた遠野が顔をしかめる。

「なんで俺が」
「遠野が来なかったら佐々木の友達かわいそうだろ」

 俺の肩越しに佐々木を睨むように見て、遠野は舌打ちしたあと「仕方ないな」と承諾してくれた。



おれ、被害者