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亀の恩返し(2/2)

2015.08.11.Tue.
<前話はこちら>

 たどたどしいのは最初のキスだけで、その後の亀山くんは積極的だった。俺の服を脱がせると体中にキスの雨を降らしていった。

「受け入れてもらえるなんて思ってもいませんでした」

 感動したように言いながら俺の股間のものを手で扱く。もう焼肉どころではない。夢なんだからと開放的になった俺は自ら箍を外して、どうすれば気持ちいいかを亀山くんに伝え「して欲しい」とねだった。亀山くんは要求通りにしてくれた。

「あ、ああっ、気持ちいいよ、亀山くん……っ」
「僕もかつてないほど昂ぶっています」

 見ると亀山くんはびっくりするほど立派なものを持っていた。やっぱり亀だからだろうか。頭に浮かんだオヤジ臭い言葉は飲み込んで、かわりに「入れて欲しい」と尻を開いた。

「いきなり入れたら吾妻さんを傷つけてしまいます」
「待ってて」

 箪笥の引き出しからローションを取り出して亀山くんに渡した。亀山くんはムッと眉間にしわを作った。

「どうしてこんなものを持っているんですか? 恋人はいないはずじゃ」
「いないよ。それは……オナホを使うときに……」
「オナホとはなんですか?」

 真顔で聞かれて恥ずかしくなってしまう。亀だから人間のアダルトグッズなんか知らないのだろう。

「一人でやる時に使う道具のことで……」
「本当に恋人はいないんですか?」
「いないよ」
「良かった。嫉妬してすみませんでした」

 嫉妬されたと言われて舞い上がってしまう。こんなに可愛い子が、亀だなんて。亀に戻らず、このまま人間の姿で俺のそばにいて欲しい。

「ではまず、指から入れますね」

 亀山くんは手でローションを濡らし、俺の尻穴に指を入れて来た。他人にそこを弄られるなんて何年振りだろう。

「痛くはないですか?」
「気持ちいいよ」
「じゃあ動かしますね」

 ローションのおかげでスムーズに指が動く。内側から擦られる感覚が久し振りで最初は異物感が勝る。それも時間をかけて解されるうちに薄れて消えていった。

 指が2本に増やされ、グリグリ回しながら出し入れされる。関節を曲げられ広げられていく。

「うぁ……あぁ……ん……も……きて、亀山くんっ……」

 わかりました、と生真面目に返事をして亀山くんは指を抜いた。大きなペニスにローションを馴染ませギュッギュッと扱いてさらに育たせる。俺の咽喉がごくりと鳴った。

 大きな亀頭がギュムと押し込まれた。

「ふあっ、あっ……っ!」
「きついですか?」
「すごいね、亀山くんのちんぽ」
「僕の家系は代々巨根らしいです。吾妻さんに負担をかけてすみません」

 亀にも家系なんてあるのか。

「負担なんかじゃないよ。むしろ……興奮してる……早く、それで中を擦って欲しい」

 亀山くんは眼鏡を外して横に置いた。俺の大好物なアイテムがなくなっても、亀山くんは俺好みのもさいイケメンだった。夢はいろいろ好都合に出来ている。

「明日、腰がつらいかもしれませんよ」

 俺の腰を抱えなおして亀山くんが言う。目が覚めてもこの感覚を覚えていられるなら本望だ。

「早くきて」

 亀山くんの尻をつかんで引き寄せた。ずぶぶと深く挿入される。ピリピリとした痛みはあるが、亀山くんのペニスで内部を押し広げられていくのは何とも言えない幸福感があった。

「全部入りました」
「すごい…っ……入ってるだけで……感じるっ……!!」

 思いのほか広げられた内部が元に戻ろうときゅうきゅうと亀山くんを締め付けている。動いていないのに全体が感じてしまい、軽い絶頂が津波のように押し寄せる。

「……あ! 待っ……て……、まだ……!」

 ズルリと亀山くんが動いた。その一擦りで目の前が真っ白になって俺は射精していた。

「吾妻さん、もうイッたんですか?」

 亀山くんが俺の出した精液を確かめるように指に絡める。

「イッ……た……気持ち良すぎて……っ!!」
「早漏なところも可愛いです」

 俺はこんなに早漏じゃないと反論しようとしたら口を塞がれ、舌を差し込まれた。クチュクチュと音が立つほど中を舐めまわされる。俺の精液にまみれた手が、ペニスをつかんで扱き始める。

「はぁ……あ……あ、ん……っ……んん……」

 亀山くんはキスしながら、ペニスを扱きながら、ゆっくり腰も動かしだした。刺激が多すぎて脳みそが蕩けてしまいそうだ。

「吾妻さんに出会えてよかったです」
「……ん、あ、俺も…っ…君に、会えてよかっ……あぁっ、あ、あっ!」

 一番敏感な前立腺をごりっと擦られ声が飛び跳ねた。見つけたと言わんばかりに亀山くんはそこを重点的に擦りあげる。

「んあぁ! あっ、あん! だ……駄目……そんなに、しないで……っ!!」
「中はもうトロトロです」
「ああぁんっ、あっ、あ、ああっ!!」

 律動が繰り返される。中でローションと体液が掻きまわされてグチュグチュと音がする。このまま中に出して欲しい。亀山くんが亀だろうがなんだっていい。亀山くんのものが欲しい。

「出してっ……亀山くん! 俺の中でイッて!! 俺も…もう……イクから……あ、あ、あ……や…ぁはあぁぁんっ!!」

 激しいピストン運動にがくがく揺さぶられながら、俺は亀山くんより早く、二度目の射精をしていた。出している最中も亀山くんは動き続け、そして俺の願い通り、最後は中に出してくれたのだった。



 目が覚めるのが怖いな、と俺は目を開けられずにいた。外は朝の気配がある。朝になってしまった。夢の終わる時間がきてしまった。

 俺の望む恩返しが終わったのだ。亀山くんは姿を消してしまっているだろう。それを確かるのが怖い。

 布団のなかでグズグズしていたら、隣で誰かがもぞりと動いた。目を開けると亀山くんが寝惚け眼で布団から手を出して何か探している。眼鏡を見つけてかけると、俺を見た。起きていると気付くと「おはようございます」とにこりと笑う。

「まだいたんだ」
「すみません、すぐに帰ります」

 体を起こそうとする亀山くんに抱き付いた。

「まだ行かないで」
「迷惑では」
「いて欲しい」
「でも……仕事の時間が……僕も今日は朝から授業なんです」
「授業?」
「はい、大学の」
「亀なのに……?」
「それは名前だけです」

 亀山くんは苦笑した。

「亀でしょ? 人間なの?」
「吾妻さんの目には僕が本物の亀に見えているんですか?」

 ふるふると首を振る。

「だって、恩返しに来たって言ったじゃないか」
「それは僕の亀を助けていただいたから……本当に僕を亀だと思ってたんですか?」

 信じられない、という顔で言ったあと、亀山くんは事の真相を話してくれた。

 先日俺が助けた亀は亀山くんが実家で飼っている亀で、甲ちゃんという名前らしい。お母さんが日光浴をさせようと庭に放していたら、来客があって少し目を離したすきに家から出てしまったのだそうだ。

 そして偶然俺の前に甲ちゃんは現れ、探し回っていた亀山くんは、俺が甲ちゃんを河川敷へ連れて行く姿を見たのだという。その時はとにかく甲ちゃんの無事を確認することで頭がいっぱいで、立ち去る俺へのお礼など忘れて甲ちゃんのもとへ飛んでいったらしい。

 冷静になってから思い出しても時すでに遅く、亀山くんはお礼を言うために、あれから毎日、あの近くで俺を探していたという。

 そして俺を見つけたのだが、なぜか緊張して声をかけられない。タイミングを計りながら俺のあとをついて歩いていたら自宅まで突き止めてしまった。直接自宅へ行ったら不審がられてしまう。ではいつなら自然で気持ち悪がられないだろうかと考えていたら、どのタイミングでも不自然なような気がして八方塞がりの気分になってしまった。そして気が付くと、マンションの入居者募集の看板にある連絡先に電話していたというのだ。

「お礼を言うためだけに、わざわざ引っ越してきたのか?」
「昨日も言いましたが、お礼はただの口実だったような気がします。僕は一目見たときから、貴方のことが気になって頭から離れず、だから余計に意識してしまって、声をかけられなかったんです。甲ちゃんを助けて頂いたお礼よりも、吾妻さんと仲良くなることのほうが、いつからか重要になっていました。ストーカーのような真似事をしてすみません」
「いや、別に、いいんだけど」

 好みでもない女の人に同じことされたらドン引いてしまうだろうけど、モロ好みの亀山くんなら許してしまう。むしろ俺なんかにそこまで情熱かけてもらって嬉しいくらいだ。

「僕が亀じゃなくて人間でも好きでいてくれますか?」

 手を握って真摯に見つめられた。

「もちろん」

 俺もその手を強く握り返した。亀山くんが嬉しそうに笑う。これ以上ない恩返しをしてもらった。



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亀の恩返し(1/2)

2015.08.11.Tue.
 仕事からの帰りのことだ。道の真ん中で亀が歩いていた。おもちゃなんかじゃない。本物の亀だ。結構でかい。20センチは越えている。近づくと亀は方向をかえた。

 前方から車が走ってくるのが見えた。このままだと亀は轢かれてしまう。しかたなく両手で掴みあげた。思っていたより重たい。

 亀を持ったまま少し先の河川敷まで行きそこで放した。草の根をわけてズンズン行く亀は一度俺を振り返ると、まるでお礼でもするみたいに頭をさげた――ように見える仕草のあと、亀は雑草の中へ消えた。

 これで轢き殺されることはないだろう。

「恩返し、頼むぞ」

 浦島太郎の気分で呟いて俺も家に帰ることにした。



 亀を助けてやったことなんか忘れかけていた数日後、部屋でテレビを見ていたらチャイムが鳴った。モニターを見ると俯き加減の男が立っている。知らない奴だ。なにかの勧誘だったら面倒だなと思いつつ扉を開けた。

「夜分にすみません。隣に越してきました亀山といいます」

 のしのかかった箱を俺に向かって差出しながら、20歳前後に見える男は深々と頭を下げた。

「わざわざすいません」

 単身向けのマンションなのに挨拶に来るなんていまどき律儀な青年だ。しかも、近くで見ると俺好みの男だ。緑のTシャツを着て、手入れを怠ったボサボサ頭と、黒縁眼鏡。俺はこういうもさい男が大好きなのだ。

「あ、俺は吾妻です」
「これからよろしくお願いします、吾妻さん」

 亀山くんが右手を出してきた。それをおずおず握り返す。だって握手なんて滅多にしたことないから。亀山くんにぎゅっと強く握られて、おじさんの心はキュンとなった。



 翌日、亀山くんが夕飯のお裾分けだと言っておかずを持って来てくれた。ちょうど夕食前だったのでありがたく頂戴した。

 その数日後、人にたくさんもらったからと梨を持ってきた。初物だ。しかも好物だ。それもありがたく頂戴した。

 そのまた数日後、くじ引きで当たったが下戸なのでもらって下さいと酒を持ってきた。幻の酒と言われている銘酒だ。一度は遠慮したが是非にと言うのでやっぱりありがたく頂戴した。

 そのまた数日後、実家からお肉が送られてきたので一緒に焼肉しませんかと誘われた。さすがの俺もここまで貢がれているとなにか裏があるのではと疑い出した。

 あとになって法外な代金を請求されるのだろうか。それともなんだ、赤毛連盟のように留守にさせた間に悪事を働くつもりか。三階の真ん中に位置する俺の部屋からどこへ行こうと言うんだ。それはさすがに現実味がなさすぎる。

 しかし自分の家をあけるのは怖かったので「俺の部屋でやりませんか」と誘ってみたら「いいんですか?」とむしろ乗り気の態度で承諾された。

 俺が部屋を片付けている間に、亀山くんはホットプレートと具材の全てを運び入れた。実家から送られてきたという肉は化粧箱に入った見るからに上等そうなものだ。こんなものをただの隣人と分けようと考えるだろうか。また不安になってきた。

 亀山くんが肉と野菜をプレートに並べ始めた。下戸らしいので亀山くんにはお茶を用意し、自分はこの前もらった日本酒を卓に置いた。再度礼を言ってから乾杯をした。

 肉はとろけるような食感で、いやらしくて確かめにくいがA5ランクだろうと思われた。野菜も味が濃く、そこらのスーパーで安売りされているものとは思えなかった。

 食べれば食べるほど、亀山くんがなぜここまで俺にしてくれるのかわからなくなってしまう。

 ただの隣人というだけの俺になぜ。確かに最近は世間話なんかもするようにはなったけれど。

 わけのわからない不安から酒がすすんだ。自分でも酔っぱらっていると自覚するほどに飲んだ頃、亀山くんが初めて会ったときと同じ服装なことに気付いた。緑のTシャツ。あの日は気付かなかったが、左胸のところに小さな亀の絵がプリントされていた。思わず笑ってしまった。

「どうしました?」

 亀山くんが箸をとめて、いきなり笑い出した俺を見る。

「いや、亀山くんが、亀のTシャツを着てると思って」
「あぁ。僕は亀ですから」

 とプリントされた亀を触る。ふと、先日、亀を助けた記憶が甦った。

「実は少し前に亀を助けたことがあるんだ。恩返ししてくれって放したんだけど、もしかして亀山くんがその亀だったりして。恩返ししに来てくれたの?」

 亀山くんは正座して居住まいを正すと、床に手をついて頭をさげてきた。

「吾妻さんのおっしゃる通りです。恩返しに参りました」

 俺の冗談に乗ってくれたのだと思った。

「わぁ、ほんと? 竜宮城に連れてってくれるの?」
「竜宮城は無理ですが、吾妻さんになにかお礼をしたいと考えています」
「もう充分もらったけど」
「いえ、不十分です。隣に来てからどんなお礼がいいか考えていましたが、吾妻さんはなんでも喜んで下さるので、逆に何が良いかわからなくなってしまいました」
「ちょっと、亀山くん、冗談だって」
「なにが冗談なのでしょうか?」

 亀山くんは首を傾げた。それはもう真剣な顔で。

「冗談……じゃ、ないの?」
「僕は冗談が苦手です」

 ほんとに短い付き合いだが、亀山くんが冗談を言わない真面目な青年であることはなんとなくわかった。俺が自虐ネタを言ったときも、いちいち否定したり励ましてくれたりするようないい子なのだ。そんな亀山くんが俺の冗談に乗るわけがない。

「ほんとに、あの時の亀なの?」
「間違いありません。安全な河川敷に放してくれました。あの時は本当にありがとうございました。おかげで無傷ですみました」
「……嘘……え……」
「嘘ではありません。あの日から貴方の事が忘れられませんでした。恩返しはただの口実なのかもしれません。僕は貴方のことが好きになってしまいました」

 さらに驚愕の事実を告げられ、俺はもう、なにも考えられなくなってしまった。これは夢だ。夢に違いない。現実に亀が恩返しにくるなんてありえない。20歳前後の若い子が、30代半ばのおじさんを好きになるなんて。これはもう絶対に夢だ。

 夢なら何を言っても罪にはならないだろう。俺は開き直って亀山くんに言った。

「俺も、初めて見た時から君のことが好きだった」