行きつく先は(5/5)
2016.07.13.Wed.
<前話はこちら>
数日後の夜、俺は実家に帰った。この時間なら父がいる。
菱川くんから別れを告げられたあの日から、ある考えが頭から離れなくなっていた。このまま花井さんの言う通り結婚するのは嫌だ。俺だって愛情の持てない相手と一緒にいたくない。好きな人と一緒にいたい。菱川くんの言う通り、決断するしかないのだ。
母が夕飯を作っている間、父はいつも通り一人で晩酌をしていた。いつもある小言がないほど上機嫌なのは、俺と花井さんがうまくいっていると思っているからだろう。
「お前も呑むか」
勧められた酒を断り、膝を父のほうへ向けた。
「話があります」
「なんだ。日取りが決まったのか?」
結納か結婚式の話をしているのだろう。黙って首を振り、俺は切りだした。
「花井さんと結婚はしません。今後誰とも、結婚はないです」
緩んでいた顔を引き締めて、父はグラスをテーブルに置いた。
「彼女のなにが不満だというんだ」
「そういう問題ではないんです。僕は……ゲイなんです。男しか好きになれません。だから女性とは結婚できません。今まで黙っていてすみませんでした」
頭を下げた。父がテーブルを叩き、上に乗っていたグラスや皿が音を立てた。
「ふざけたことを言うな! 冗談でもそんなことを言うんじゃない!!」
「冗談なら良かったんですが。僕は父さん達に孫の顔を見せてやることは出来ません」
「彰博、お前……ッ!!」
父の拳が飛んできた。
信号待ちで、腕に白い粒を見つけた。実家を追い出された時に撒かれた塩だ。
「二度と戻って来るな! 親子の縁を切る!! お前みたいな奴は俺の息子ではない!!」
そう言われて。予想通り父は激怒し、母は泣いた。
「先方さんにはなんて言えばいいの」
と。父も母も常識にとらわれ、世間体を気にする人だった。そこから抜け出た俺は世間体の庇護を受けないかわりに自由を手に入れた。
菱川くんのバイト先へ向かい、いないとわかると家に車を走らせた。明かりのついた部屋のチャイムを連打し、急かすようにノックをする。驚いた顔で出て来た菱川くんに抱きついた。
「君が好きだ。だから俺は君を選ぶ」
「えっ、ちょっと、早瀬さん?!」
靴を脱ぎ棄て彼に抱きついたまま奥のベッドに倒れ込む。彼の上に馬乗りになって服を脱いだ。
「早瀬さん、その顔……っ」
殴られた跡を見て菱川くんは眉を顰めた。
「ハハ、ゲイだって言ったら殴られた」
「婚約者に?!」
「父に。母は泣いたよ」
「僕のせいですね」
さっと顔を曇らせる。
「違うよ。俺が自分で決めた。花井さんなんかと結婚したくない。これでもう彼女に脅される材料はない」
「脅されてたんですか?」
驚いて目を見開く彼にキスした。キスをしながら、菱川くんの服も脱がせていく。顔を見せた胸の突起を口に含み舌で転がした。
「早瀬さん……ッ、脅されたって、ちゃんと説明して……!」
「ゲイだってバラされたくなければ、結婚しろって花井さんに脅されてただけだよ」
「そんな……! 僕、知らなくて……どうして教えてくれなかったんですか」
「言わなかったのは俺の判断だ。それに、君が俺に決断させてくれたんだ」
ズボンと下着をずりおろし、出て来たペニスにしゃぶりつく。今後のことはわからない。でも今はこれだけが欲しいと思う。人から遊ぶお許しをもらった男では満足できない。
口の周りを唾液まみれにして彼を勃たせると、俺はそこへ跨った。
「あっ、待って、まだゴム……!」
「いらない。必要ない」
菱川くんの肩につかまりながらゆっくり腰を下ろしていった。今までは病気の心配や後々の腹痛を理由にコンドームを使用していた。でも今日は生で欲しい。
「ふぅ……うっ……あ、はああぁっ……」
奥深くまでこじ開けられていく感覚。ペタンと尻がくっついて腹の中にある熱い存在に震えが走った。腰を浮かせ、また下ろす。上げ下げを繰り返していたら少し潤いが出て来てスムーズになった。
「早瀬さん、辛くないですか」
「い……からっ……俺の、ちんこ触って……!」
少しの痛みと腸を刺激する異物感から俺のペニスは萎れていた。それを菱川くんが握って優しい手つきで扱く。
「すご……奥まで……っ! 菱川く……ちんぽ、気持ちいい……?」
「俺は気持ちいいですけど……早瀬さんは苦しそう」
「菱川くんの精子……中に欲し……ッ……いっぱい、俺のなかに……注いで……!」
「だったらこっちの方が早いです」
俺の背中と腰を支えながら菱川くんは体を起こし、俺の上になった。
「ほんとに中に出していいんですか?」
「君の精液まみれになりたい」
「……ほんと、早瀬さんて綺麗な顔してエロいですよね」
苦笑した菱川くんが中で動く。慣れた正常位。俺の敏感な部分を熟知した動き。あっという間にペニスが立ちあがってしまう。
「奥まできていいから……菱川くんも、気持ちよくなって……」
「充分気持ちいいです」
菱川くんの手が俺のペニスを扱く。ぬかるむ尿道に指の先を突っ込んでくる。
「はぁっ……あっ、あ……や、だ……ちんぽっ、そんな……したら……出るっ」
「僕も早瀬さんにいっぱい出して欲しいです」
手つきが激しくなって、濡れた音が経つ。
「あぁぁ……あぁあんっ……だめっ……て、ばぁあっ……あ、ひぁ……し、かわくぅ……んっ! んあぁ……ほんと……出……ちゃ……っ!! ちんぽ、も…ぉ…いくっ、いくっ!!」
熱い精液が駆け抜けていく。頭が真っ白になる解放感。無様なほどだらけきった顔をしているだろうに、菱川くんは愛しいものを見るように目を細めている。
「いっぱい、出ましたよ」
菱川くんの手は俺の吐きだした精液まみれた。それを菱川くんはペロリと舐めた。
「……菱川くん、正直に答えて欲しいんだけど……ほんとに男と寝たことないの?」
「ないですよ」
きょとんと菱川くんが答える。
「じゃ、どうしてそんな……慣れてる、気がする」
「笑わないでくださいね。早瀬さんに喜んでもらうために勉強しました」
「勉強?」
俺の足を大きく広げると、菱川くんは体を前に倒してきた。
「ネットで調べたり、動画を見たり。ここ、前立腺ってとこですよね?」
「ひんっ」
ぐりゅっと擦られて素っ頓狂な声が出た。菱川くんの笑みが濃くなる。
「そういう反応見せてくれるから、僕も止まらなくなるんです」
言うと菱川くんはピストン運動を始めた。正確に俺の前立腺を責め立てる。
「やっぱり生だと違う……直で早瀬さんを感じられて、すごくいい」
「……俺、もっ!! ああぁっ……いつもよりおっき……いいっ! ああぁっ……はあぁ……ん……菱川くんのっ、ちんぽ……気持ちいいっ……!!」
もっとして、とねだればその通りに動いてくれる。菱川くんに気持ちよくなってもらいたかったのに、それも忘れて俺は再び勃起したペニスから先走りを撒き散らした。
「ああぁん、あっ! あぁ!! また……キタッ……菱川くんっ、俺また、イク……!! 菱川くんのおちんぽで、射精する!!」
「待って……僕も、いきそう……っ」
「なかに出して……! 菱川くんの…ッ…ナマ中出し、欲しいぃ……!!」
口を突きだすと菱川くんはキスをくれた。必死にそれに舌を絡める。俺たちはほとんど同時に射精した。
二人一緒にシャワーを浴びた。浴室から出るとスマホの着信に気付いた。
「花井さんだ」
俺の呟きに頭を拭いていた菱川くんがそばにやってきた。
「僕がかわりに出ましょうか?」
「俺が自分で言う」
通話ボタンを押すなり『どういうこと!!』と怒鳴り声が聞こえた。スピーカーにする必要もなさそうな音量だ。菱川くんと顔を見合わせ、苦笑した。
『さっきお父様からお断りの電話が来たんですけど! 何かの間違いですよね?!』
「間違いではないです。あなたの夫にはなりたくありません」
『そんなこと言っていいんですか? どうなるかわかってるんですか? ご両親や職場の方たちにバレても……』
「両親には自分でバラしました。職場のほうは好きにしてください。もう、クビになってもいいです。高望みしなけば、食い扶持には困らない業界なので」
『……ッ!! でも、お相手の菱川さんはどうでしょうね?! 学校や親に知られたら……』
「僕なら平気です。もうカミングアウト済みだから」
横から菱川くんが言った。ちゃんと聞こえたようで、電話の向こうで花井さんは絶句していた。
「そういうわけです。もう脅しの材料はなくなりました。あなたともこれきりということで。しつこいようだと、脅迫と名誉棄損で訴えることも考えます」
ガサガサッと慌てたような音のあと、通話が切れた。
結局あの人はなにがしたかったのだろう。男を自分の意のままに操るのが好きなタイプの人間だったのだろうか。ゲイである俺に執着したって、生産性などないのに。
「これですっきりした」
「でもまだ気を付けてください。早瀬さんが嫌な思いをするのは嫌ですから」
心配そうに言って菱川くんは俺を抱きしめた。
俺だって不安がないわけじゃない。職場や近所にゲイだと言いふらされるのは困るし迷惑だし、二次被害、三次被害がないとも言いきれないからやめてもらいたいのが本音だ。
でもそらすら、どうだっていいと思えたのだ。菱川くんに振られた夜に感じた孤独と絶望に比べれば、数十人、数百人が俺を非難したって構わないと。大げさに言えば、世界中が敵にまわったって、菱川くん一人がいてくれればいい。
こんな感情は一時的なものかもしれない。俺が冷めるより先に菱川くんに飽きられて捨てられるかもしれない。それでもいい。どんな結果になっても後悔しないと今なら言えるから。
スポンサーサイト

数日後の夜、俺は実家に帰った。この時間なら父がいる。
菱川くんから別れを告げられたあの日から、ある考えが頭から離れなくなっていた。このまま花井さんの言う通り結婚するのは嫌だ。俺だって愛情の持てない相手と一緒にいたくない。好きな人と一緒にいたい。菱川くんの言う通り、決断するしかないのだ。
母が夕飯を作っている間、父はいつも通り一人で晩酌をしていた。いつもある小言がないほど上機嫌なのは、俺と花井さんがうまくいっていると思っているからだろう。
「お前も呑むか」
勧められた酒を断り、膝を父のほうへ向けた。
「話があります」
「なんだ。日取りが決まったのか?」
結納か結婚式の話をしているのだろう。黙って首を振り、俺は切りだした。
「花井さんと結婚はしません。今後誰とも、結婚はないです」
緩んでいた顔を引き締めて、父はグラスをテーブルに置いた。
「彼女のなにが不満だというんだ」
「そういう問題ではないんです。僕は……ゲイなんです。男しか好きになれません。だから女性とは結婚できません。今まで黙っていてすみませんでした」
頭を下げた。父がテーブルを叩き、上に乗っていたグラスや皿が音を立てた。
「ふざけたことを言うな! 冗談でもそんなことを言うんじゃない!!」
「冗談なら良かったんですが。僕は父さん達に孫の顔を見せてやることは出来ません」
「彰博、お前……ッ!!」
父の拳が飛んできた。
信号待ちで、腕に白い粒を見つけた。実家を追い出された時に撒かれた塩だ。
「二度と戻って来るな! 親子の縁を切る!! お前みたいな奴は俺の息子ではない!!」
そう言われて。予想通り父は激怒し、母は泣いた。
「先方さんにはなんて言えばいいの」
と。父も母も常識にとらわれ、世間体を気にする人だった。そこから抜け出た俺は世間体の庇護を受けないかわりに自由を手に入れた。
菱川くんのバイト先へ向かい、いないとわかると家に車を走らせた。明かりのついた部屋のチャイムを連打し、急かすようにノックをする。驚いた顔で出て来た菱川くんに抱きついた。
「君が好きだ。だから俺は君を選ぶ」
「えっ、ちょっと、早瀬さん?!」
靴を脱ぎ棄て彼に抱きついたまま奥のベッドに倒れ込む。彼の上に馬乗りになって服を脱いだ。
「早瀬さん、その顔……っ」
殴られた跡を見て菱川くんは眉を顰めた。
「ハハ、ゲイだって言ったら殴られた」
「婚約者に?!」
「父に。母は泣いたよ」
「僕のせいですね」
さっと顔を曇らせる。
「違うよ。俺が自分で決めた。花井さんなんかと結婚したくない。これでもう彼女に脅される材料はない」
「脅されてたんですか?」
驚いて目を見開く彼にキスした。キスをしながら、菱川くんの服も脱がせていく。顔を見せた胸の突起を口に含み舌で転がした。
「早瀬さん……ッ、脅されたって、ちゃんと説明して……!」
「ゲイだってバラされたくなければ、結婚しろって花井さんに脅されてただけだよ」
「そんな……! 僕、知らなくて……どうして教えてくれなかったんですか」
「言わなかったのは俺の判断だ。それに、君が俺に決断させてくれたんだ」
ズボンと下着をずりおろし、出て来たペニスにしゃぶりつく。今後のことはわからない。でも今はこれだけが欲しいと思う。人から遊ぶお許しをもらった男では満足できない。
口の周りを唾液まみれにして彼を勃たせると、俺はそこへ跨った。
「あっ、待って、まだゴム……!」
「いらない。必要ない」
菱川くんの肩につかまりながらゆっくり腰を下ろしていった。今までは病気の心配や後々の腹痛を理由にコンドームを使用していた。でも今日は生で欲しい。
「ふぅ……うっ……あ、はああぁっ……」
奥深くまでこじ開けられていく感覚。ペタンと尻がくっついて腹の中にある熱い存在に震えが走った。腰を浮かせ、また下ろす。上げ下げを繰り返していたら少し潤いが出て来てスムーズになった。
「早瀬さん、辛くないですか」
「い……からっ……俺の、ちんこ触って……!」
少しの痛みと腸を刺激する異物感から俺のペニスは萎れていた。それを菱川くんが握って優しい手つきで扱く。
「すご……奥まで……っ! 菱川く……ちんぽ、気持ちいい……?」
「俺は気持ちいいですけど……早瀬さんは苦しそう」
「菱川くんの精子……中に欲し……ッ……いっぱい、俺のなかに……注いで……!」
「だったらこっちの方が早いです」
俺の背中と腰を支えながら菱川くんは体を起こし、俺の上になった。
「ほんとに中に出していいんですか?」
「君の精液まみれになりたい」
「……ほんと、早瀬さんて綺麗な顔してエロいですよね」
苦笑した菱川くんが中で動く。慣れた正常位。俺の敏感な部分を熟知した動き。あっという間にペニスが立ちあがってしまう。
「奥まできていいから……菱川くんも、気持ちよくなって……」
「充分気持ちいいです」
菱川くんの手が俺のペニスを扱く。ぬかるむ尿道に指の先を突っ込んでくる。
「はぁっ……あっ、あ……や、だ……ちんぽっ、そんな……したら……出るっ」
「僕も早瀬さんにいっぱい出して欲しいです」
手つきが激しくなって、濡れた音が経つ。
「あぁぁ……あぁあんっ……だめっ……て、ばぁあっ……あ、ひぁ……し、かわくぅ……んっ! んあぁ……ほんと……出……ちゃ……っ!! ちんぽ、も…ぉ…いくっ、いくっ!!」
熱い精液が駆け抜けていく。頭が真っ白になる解放感。無様なほどだらけきった顔をしているだろうに、菱川くんは愛しいものを見るように目を細めている。
「いっぱい、出ましたよ」
菱川くんの手は俺の吐きだした精液まみれた。それを菱川くんはペロリと舐めた。
「……菱川くん、正直に答えて欲しいんだけど……ほんとに男と寝たことないの?」
「ないですよ」
きょとんと菱川くんが答える。
「じゃ、どうしてそんな……慣れてる、気がする」
「笑わないでくださいね。早瀬さんに喜んでもらうために勉強しました」
「勉強?」
俺の足を大きく広げると、菱川くんは体を前に倒してきた。
「ネットで調べたり、動画を見たり。ここ、前立腺ってとこですよね?」
「ひんっ」
ぐりゅっと擦られて素っ頓狂な声が出た。菱川くんの笑みが濃くなる。
「そういう反応見せてくれるから、僕も止まらなくなるんです」
言うと菱川くんはピストン運動を始めた。正確に俺の前立腺を責め立てる。
「やっぱり生だと違う……直で早瀬さんを感じられて、すごくいい」
「……俺、もっ!! ああぁっ……いつもよりおっき……いいっ! ああぁっ……はあぁ……ん……菱川くんのっ、ちんぽ……気持ちいいっ……!!」
もっとして、とねだればその通りに動いてくれる。菱川くんに気持ちよくなってもらいたかったのに、それも忘れて俺は再び勃起したペニスから先走りを撒き散らした。
「ああぁん、あっ! あぁ!! また……キタッ……菱川くんっ、俺また、イク……!! 菱川くんのおちんぽで、射精する!!」
「待って……僕も、いきそう……っ」
「なかに出して……! 菱川くんの…ッ…ナマ中出し、欲しいぃ……!!」
口を突きだすと菱川くんはキスをくれた。必死にそれに舌を絡める。俺たちはほとんど同時に射精した。
二人一緒にシャワーを浴びた。浴室から出るとスマホの着信に気付いた。
「花井さんだ」
俺の呟きに頭を拭いていた菱川くんがそばにやってきた。
「僕がかわりに出ましょうか?」
「俺が自分で言う」
通話ボタンを押すなり『どういうこと!!』と怒鳴り声が聞こえた。スピーカーにする必要もなさそうな音量だ。菱川くんと顔を見合わせ、苦笑した。
『さっきお父様からお断りの電話が来たんですけど! 何かの間違いですよね?!』
「間違いではないです。あなたの夫にはなりたくありません」
『そんなこと言っていいんですか? どうなるかわかってるんですか? ご両親や職場の方たちにバレても……』
「両親には自分でバラしました。職場のほうは好きにしてください。もう、クビになってもいいです。高望みしなけば、食い扶持には困らない業界なので」
『……ッ!! でも、お相手の菱川さんはどうでしょうね?! 学校や親に知られたら……』
「僕なら平気です。もうカミングアウト済みだから」
横から菱川くんが言った。ちゃんと聞こえたようで、電話の向こうで花井さんは絶句していた。
「そういうわけです。もう脅しの材料はなくなりました。あなたともこれきりということで。しつこいようだと、脅迫と名誉棄損で訴えることも考えます」
ガサガサッと慌てたような音のあと、通話が切れた。
結局あの人はなにがしたかったのだろう。男を自分の意のままに操るのが好きなタイプの人間だったのだろうか。ゲイである俺に執着したって、生産性などないのに。
「これですっきりした」
「でもまだ気を付けてください。早瀬さんが嫌な思いをするのは嫌ですから」
心配そうに言って菱川くんは俺を抱きしめた。
俺だって不安がないわけじゃない。職場や近所にゲイだと言いふらされるのは困るし迷惑だし、二次被害、三次被害がないとも言いきれないからやめてもらいたいのが本音だ。
でもそらすら、どうだっていいと思えたのだ。菱川くんに振られた夜に感じた孤独と絶望に比べれば、数十人、数百人が俺を非難したって構わないと。大げさに言えば、世界中が敵にまわったって、菱川くん一人がいてくれればいい。
こんな感情は一時的なものかもしれない。俺が冷めるより先に菱川くんに飽きられて捨てられるかもしれない。それでもいい。どんな結果になっても後悔しないと今なら言えるから。
- 関連記事
-
- 行きつく先は(5/5)
- 行きつく先は(4/5)
- 行きつく先は(3/5)
- 行きつく先は(2/5)
- 行きつく先は(1/5)

[PR]

この急転直下の夜逃げ感、打ち切り感。もっとうまいまとめ方はなかったのでしょうか。自問自答せずにおられません。本当にラストシーンって苦手です。さらっと、うまい具合に余韻残す感じで書けるようになりたいです。というセルフハンディキャッピング。言い訳が必要ないものを書けるように頑張ります!
この二人の話のネタで残っていたのが「親へのカミングアウト」で、見合い相手にネチネチやられるところに重きを置いてというか喜々として書いてしまって、肝心なところがおろそかになってしまって反省でございます。
この二人はどこに惹かれ合ったのでしょう。書いた私も実は…体の相性が抜群に良かったのだと思いますw いや大事!体の相性は大事ですよね。あでも不感症な受けもいいなぁ。「ケツ使っていいから、さっさと終わらせろよ」的な。「あ、終わった?」みたいな。ワンコ攻めが似合うなぁ。新しい妄想が生まれました。ありがとうございます(真顔)